(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護カバーは、前記充填材を覆う保護材と、前記保護材及び前記保護材の周囲を覆う意匠パネルとを備えていることを特徴とする請求項2記載の建物の基礎内の換気方法。
前記開口部を前記充填材で埋めた後に、前記開口部の内周面と前記充填材との間の隙間を塞ぐために、前記外周基礎の外側から気密テープで目張りすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の建物の基礎内の換気方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設途中の建材自身に含まれる水分や降雨の影響により、外周基礎内に湿気がこもる可能性があり、この湿気を床下空間内に残しておくのは好ましくない。一方、上述の通り、基礎断熱の本来の目的を考えると、換気をし続けることは長期的なエネルギー効率面からは得策では無かった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、基礎断熱の本来の目的を極力達成し、外周基礎内の湿度を低減できる換気方法、及び換気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明は、立ち上がり部に断熱材が付設された外周基礎と、外周基礎上に構築された上部構造とを有する建物の基礎内の換気方法であって、立ち上がり部には、外周基礎に囲まれた内側と外周基礎の外側とを連通する開口部が形成されており、開口部に換気装置を着脱可能に設置する工程と、換気装置を駆動させて外周基礎の内側の換気を開始する工程と、建物の完成後も所定期間、換気を継続する工程と、所定期間の経過後に換気装置を開口部から取り外し、開口部を、断熱性を有する充填材で埋める工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
基礎断熱では換気口や換気装置等を設けないのが通常である。しかしながら、発明者の知見では、建物の完成後に外周基礎内に湿気が残る場合があり、その湿気を除去するために所定期間(例えば、1年程度)の換気が有効であるが分かった。本発明によれば、いわゆる基礎断熱であっても所定期間、換気をとることができ、更に、換気後は、開口部を充填材で埋めることで断熱欠損を低減した状態を確保できる。その結果、基礎断熱の本来の目的を損なうことなく、外周基礎内を換気できる。
【0009】
また、開口部を充填材で埋めた後で、開口部の周囲と充填材の外周面を保護カバーで覆うと、充填材を劣化から防止できて好適である。
【0010】
また、保護カバーは、充填材を覆う保護材と、保護材及び保護材の周囲を覆う意匠パネルとを備えていると好適である。保護カバーを保護材のみで構成した場合、保護材によっては、しつらいや周囲のコンクリート等とは劣化速度等が異なる場合があり、その結果、保護材の劣化に伴う変化が目立ち、それによって建物全体の見栄えを損なう虞がある。しかしながら、上記構成では、保護材を更に意匠パネルで覆うので、見栄えの悪化を抑制できる。
【0011】
換気装置は、開口部内に収容される排気扇と、開口部、及び開口部の周囲を覆う表面パネルとを備えており、換気装置を開口部から取り外した後、意匠パネルとして換気装置の表面パネルを用いることができる。その結果、換気装置の表面パネルをリサイクルでき、更に、換気装置を取り外す前と後とで外観印象に変化が無く、補修等を感じさせないようにすることができる。
【0012】
また、開口部を充填材で埋めた後に、開口部の内周面と充填材との間の隙間を塞ぐために、外周基礎の外側から気密テープで目張りすると、その隙間からの熱損失を防止でき、断熱性の向上に有効である。
【0013】
また、防蟻性を有する充填材によって開口部を塞ぐようにすると、白アリが充填材を介して基礎内に侵入することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基礎断熱の本来の目的を損なうことなく、外周基礎内の湿気を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、基礎断熱について説明する。基礎断熱とは、基礎の内側か外側、または両側に断熱材を張り付け、床下空間の熱損失を防止する工法である。本実施形態では、基礎の内側に断熱材を張り付ける工法(以下、「基礎内断熱」)によって断熱性を付与された基礎を例に説明するが、基礎の両側に断熱材を張り付ける工法によって断熱性を付与された基礎であってもよい。
【0019】
図1、
図2、及び
図3に示されるように、建物1は、建物本体(上部構造躯体)10(
図3参照)の荷重を地面に伝える基礎(布基礎)11を備えている。基礎11は、外周基礎13と中通り基礎17とを備えている。外周基礎13は、建物1の外周に沿うように設けられている。中通り基礎17は、外周基礎13の内側A2を区画するように設けられている。中通り基礎17の端部は、外周基礎13に接続されている。基礎11は、その内部に鉄筋(不図示)が配置されている。
【0020】
外周基礎13は、フーチング部14と立ち上がり部15とを有し、中通り基礎17は、フーチング部18(
図2参照)と立ち上がり部19とを有している。フーチング部14は地盤3内に埋設されており、立ち上がり部15はフーチング部14から立ち上がっている。同様に、中通り基礎17のフーチング部18は地盤3内に埋設されており、立ち上がり部19はフーチング部18から立ち上がっている。
【0021】
建物本体10(
図3参照)は、床Fと外壁Wとを備えており、室内には内装が施されている。床Fは、基礎11の上端レベル、すなわち、立ち上がり部15,19の上端面を含む水平面に沿って設置されている。床Fは、基礎11の上に敷設されたALCパネル(床パネル)Faを備え、更に、床パネルFa上に設置された断熱材、合板、及び木質系の床仕上げ材などを備えて構成されている。外壁Wは、床Fの外縁に沿って設置されている。外壁Wは、ALCパネルなどによって構成されている。
【0022】
基礎11の内側A2には、複数の断熱材21,23,25が配置されている。各断熱材21,23,25は、板状(パネル状)であり、板状の樹脂発泡体を含んでいる。樹脂発泡体としては、発泡ウレタン、発砲スチレン、発泡スチロール、又はフェノールフォームなどが挙げられる。各断熱材21,23,25は、防蟻性を有している。防蟻性を有する断熱材21,23,25は、その製造時に、防蟻剤を添加することにより得ることができる。
【0023】
断熱材21は、外周基礎13の立ち上がり部15の内側A2の側面(内側面)15bに沿うように設けられている。すなわち、断熱材21は、外周基礎13に沿い且つ外周基礎13の内側A2全周にわたって配置されている。断熱材21は、外周基礎13(立ち上がり部15)と中通り基礎17(立ち上がり部19)とが交わる箇所において、立ち上がり部19の側面19bに対向している。
【0024】
断熱材23は、中通り基礎17の端部から所定の長さ範囲にわたって立ち上がり部19の側面19bに沿い且つ断熱材21に連続するように設けられている。すなわち、断熱材23は、断熱材21に当接し且つ外周基礎13側から所定長さだけ中通り基礎17に沿うように配置されている。断熱材23は、立ち上がり部19の両側面19bに設けられている。
【0025】
次に、
図2及び
図3を参照して本実施形態に係る基礎11の換気構造2について説明する。外周基礎13には、立ち上がり部15の上端の一部に凹溝15dが形成されている。凹溝15dは外壁Wや床パネルFaによって上方を塞がれ、その結果、外周基礎13の内側A2と外側A1とを連通する開口部Hが形成される。なお、立ち上がり部15の内側面15bに沿って配置された断熱材21にも、開口部Hを避けるために、開口部Hに対応した形状の凹溝21fが形成されている。
【0026】
外周基礎13の立ち上がり部15と断熱材21との間は、微視的には僅かな隙間Saが在る。断熱材21には防蟻性が付与されているので、断熱材21を介しての白アリの侵入は阻止できるが、立ち上がり部15と断熱材21との隙間Saにも配慮しておくことが重要である。したがって、本実施形態では、立ち上がり部15の上端と断熱材21の上端との間に、隙間Saを塞ぐように防蟻性を付与した防蟻テープ46が貼着されている。防蟻テープ46は、開口部Hの内周面Haにも貼着されている。つまり、防蟻テープ46は、立ち上がり部15の凹溝15dと断熱材21側の凹溝21fとの間の隙間Saを塞ぐように貼着されている。
【0027】
図3、
図4及び
図5に示されるように、開口部Hには、立ち上がり部15の外側A1から換気装置50が着脱可能に取り付けられている。換気装置50は、筐体51aに回転羽根51bが内装された排気扇51を備え、排気扇51は、取り付け板52を介して立ち上がり部15に着脱自在にネジ留めされている。
【0028】
取り付け板52には、通気用の開口52aが設けられており、開口52aには網(グリル)52bが固定されている。取り付け板52には、外側A1から化粧板53がネジ留めされている。化粧板53には多数のスリットが設けられた通気部53aが形成されている。化粧板53とには、排気扇51に電力を供給するコード54が通る孔53bが形成されている。
【0029】
次に、基礎11、及び換気構造2の施工方法を説明し、更に、基礎11の換気方法について説明する。建物1は、基礎内断熱によって外周基礎13を含む基礎11を構築し、基礎11上に建物本体(上部構造)10を構築し、その後、内部設備工事を行って完成する。
【0030】
外周基礎13(
図2及び
図3参照)の構築では、まず、地盤3の所定範囲を総掘りした後、所定位置に基礎11(外周基礎13及び中通り基礎17)を打設する。このとき、外周基礎13の立ち上がり部15の一部(通常は、一か所)には、開口部Hとなる凹溝15dが形成されている。なお、中通り基礎17には、各区画を連通するように複数個所に凹溝19c(
図1参照)が形成されている。
【0031】
次に、断熱材21,23を用意し、基礎11に設置する。ここでは、断熱材21を、外周基礎13の立ち上がり部15の内側面15bに沿うように設け、また、断熱材23を、中通り基礎17の立ち上がり部19の側面19bに沿うように設ける。
【0032】
その後、断熱材21と立ち上がり部15とに防蟻テープ46を貼りわたし、断熱材21を位置決めした状態で固定する。同様に、断熱材23と立ち上がり部19とに防蟻テープ46を貼りわたし、断熱材23を位置決めした状態で固定する。
【0033】
次に、地盤3における総掘りした部分を埋め戻す。これにより、外周基礎13のフーチング部14、及び中通り基礎17のフーチング部18が、地盤3内に位置するように埋め戻される。地盤3には断熱材25を敷設し、更に、断熱材25と地盤3とを覆うように防湿シート5を敷設する。次に、防湿シート5上に土間コンクリート7を直接打設する。土間コンクリート7の打設の完了により、基礎内断熱による基礎11が完成する。
【0034】
基礎11(外周基礎13及び中通り基礎17)を構築した後、基礎11上に躯体柱や躯体梁を構築し、更に、外壁Wや床Fを設置して建物本体10を構築する。建物本体10を構築した後で、床仕上げや天井仕上げなどの内装及び配線工事などの内装設備工事を実施するが、内装設備工事の時期に換気構造2の施工も合わせて行う。この施工は、開口部Hに換気装置50を着脱自在に取り付ける工程である。換気装置50は外周基礎13の外側から設置することが好ましい。内部工事の進捗状況に左右されず設置でき、施工業種間の干渉を回避できるからである。また、プラン制約となりうる換気装置50のための点検口も省略しうるからである。
【0035】
図4及び
図5に示されるように、換気装置50は、排気扇51と、化粧板53とを備え、排気扇51には取り付け板52が着脱可能に固定されている。まず、取り付け板52が固定された排気扇51を開口部H内に収容し、取り付け板52を立ち上がり部15の外側A1の側面15cに当接させてネジ留めする。取り付け板52の外形は開口部Hよりも大きく開口部Hから張り出した部分をネジ留めする。また、排気扇51に電力を供給するコード54は、取り付け板52の通気用の開口52a、及び網(グリル)52bを通って外側A1に露出されている。
【0036】
次に、取り付け板52の外側A1から化粧板(表面パネル)53を重ねてネジ止めする。化粧板53は取り付け板52と略同一の形状であるが、取り付け板52を覆い隠すことができる程度の大きさを有する。排気扇51は、実質的に、化粧板53で隠される。化粧板53には、通気部53aとコード54用の孔53bとが形成されている。換気装置50を外周基礎13に取り付けた後、換気装置50を駆動させて換気を開始する工程を実行し、外周基礎13の内側(床下空間)A2から外側A1に向けて空気を排出する。
【0037】
ここで、
図1を参照して換気に伴う床下空間A2の空気の流れについて補足説明する。外周基礎13の換気用の開口部Hは、床下空間A2の外気に対する断熱性の維持という観点から少ない方が好ましく、本実施形態では一か所のみである。一方で、中通り基礎17の立ち上がり部19には、各区画を連通して空気が流動可能な凹溝19cが設けられている。従って、換気の際には、中通り基礎17で区画された各空間も換気される。
【0038】
更に、本実施形態では、換気に伴って外気を取り込む積極的な空気の流入口は設けられていない。従って、換気の際には、室内等につながる僅かな隙間から床下空間A2内に空気が進入することになり、無作為な空気の流れが生じる。
【0039】
仮に、空気の流入口を積極的に設けた場合、その流入口と換気装置50とを結ぶ空気の経路が決まってしまい、換気できる箇所も限られてしまう。一方、本実施形態のように、無作為な空気の流れの発生を前提にすると、床下空間A2の様々な箇所から空気が引き込まれ、床下空間A2全体の換気を図るのに有効である。
【0040】
内装設備工事が完了して建物1が完成した後も、所定期間、換気装置50による換気を継続する工程を実行する。この所定期間とは、床下空間A2の状態や構造、更に建物1の周囲環境(例えば、気候や立地条件)などによっても異なるが、1年程度とすると床下空間の環境は安定した状態に近づき、それ以上とするとさらに安定する。換気装置は必ずしも連続して運転する必要はなく、例えば、日中は運転し、夜間は運転を停止することを繰り返すこととしてもよい。
【0041】
所定期間が経過すると、換気装置50を開口部Hから取り外す。換気装置50の取り外しは、上述の取り付けの逆の方法で行われる。つまり、まず、ネジを緩めて化粧板53を排気扇51の取り付け板52から取り外す。その後、ネジを緩めて取り付け板52を外周基礎13の立ち上がり部15から取り外し、開口部H内に収容された排気扇51を引き出すようにして換気装置50の取り外しを行う。換気装置50は外周基礎13の外側から取り外しできることが好ましい。プラン制約となりうる換気装置50のための点検口を省略することができたり、住人が了承すれば不在時であっても取り外し作業ができたりするからである。
【0042】
次に、
図6に示されるように、空になった開口部Hを、断熱性を有する充填材60で埋める工程を実行する(
図6(a)参照)。その結果、換気終了後の断熱欠損を無くし、基礎内断熱の断熱ラインがそろった状態を維持できる。また、充填材60は防蟻性を有し、白アリの侵入を阻止する上で有効である。なお、防蟻性を有するとは、例えば、防蟻剤を含有することを意味する。
【0043】
次に、開口部Hの内周面Haと充填材60との間の隙間を塞ぐために、外周基礎13の外側A1から気密テープ61で目張りする(
図6(b)参照)。その結果、開口部Hの内周面Haと充填材60との間の隙間からの熱損失を防止でき、断熱性の向上に有効である。なお、気密テープ61に対し、防蟻性を付与することもできる。
【0044】
次に、
図7に示されるように、開口部Hの充填材60を覆うように、取り付け板52を立ち上がり部15にネジ留めする。取り付け板52は、新品では無く、開口部Hから取り外した換気装置50の取り付け板52を再利用する。なお、取り付け板52から網(グリル)52b(
図5参照)は取り外されている。
【0045】
取り付け板52には、通気用の開口52aが設けられており、この開口52aを塞いで充填材60を覆うように、保護材62を取り付け板52に重ねる。次に、保護材62を挟むように化粧板(意匠パネル)53を取り付け板52にネジ留めする。化粧板53は、新品では無く、開口部Hから取り外した換気装置50の化粧板53を再利用する。保護材62、及び化粧板53は、開口部Hの周囲と充填材60の外周面とを覆う保護カバー65である。
【0046】
次に、本実施形態に係る基礎11の換気構造2、及び換気方法の作用、効果を説明する。通常、基礎断熱では換気口や換気装置等を設けないのが通常である。しかしながら、建物1の完成後に外周基礎13内に湿気が残る場合があり、その湿気は除去することが望ましい。上記の換気構造2、及び換気方法では、基礎内断熱であっても所定期間換気をとることができ、更に、換気後は、開口部Hを充填材60で埋めることで断熱欠損を低減した状態を確保できる。その結果、基礎断熱の本来の目的を損なうことなく、外周基礎13内を換気できる。
【0047】
なお、本実施形態では、外周基礎13の内側面15bのみに断熱材21を付設した場合を説明したが、外周基礎13の外側面15cに断熱材21を付設する態様、外周基礎13の内側面15bと外側面15cの両方に断熱材21を付設する態様においても、実質的に同様の作用、効果を奏する。
【0048】
また、本実施形態では、開口部Hを充填材60で埋めた後で、開口部Hの周囲と充填材60の外周面を保護カバー65で覆うので、充填材60を劣化から防止できて好適である。
【0049】
特に、本実施形態の保護カバー65は、保護材62のみではなく、更に、保護材62の周囲を覆う化粧板53(意匠パネル)を備えている。例えば、保護材62のみの場合、しつらいや周囲のコンクリート等とは劣化速度等が異なるので、保護材62の劣化に伴う変化が目立ち、それによって建物1全体の見栄えを損なう虞がある。しかしながら、本実施形態では、保護材62を更に化粧板53で覆うので、見栄えの悪化を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、充填材60を覆う意匠パネルとして、新品の新たなパネルを準備するのではなく、開口部Hから取り外された換気装置50の化粧板53を用いており、その結果、化粧板53をリサイクルでき、更に、換気装置50を取り外す前と後とで外観印象に変化が無く、補修等を感じさせないようにすることができる。
【0051】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態のみに限定されない。例えば、上記の実施形態では、外周基礎13の立ち上がり部15の凹溝15d及び断熱材21の凹溝21fを、上方から床Fや外壁Wが覆うことで開口部Hを形成したが、立ち上がり部や断熱材を貫通する孔を設けて換気装置が設置される開口部とすることも可能である。