(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば金属製品を製造するに際して切削加工を行うと、金属加工屑として切削屑(切粉)であるダライ屑が発生する。
現状このダライ屑は、その多くが再利用されていないのが実情である。その理由は以下の点にある。
【0003】
切削加工で発生したダライ屑の表面には切削油やごみ等の汚れが付着している。
このような汚れの付着したままのダライ屑を溶解用の原料として再利用したとき、次のような様々な問題が生ずる。
即ち、汚れの付着したダライ屑を溶解炉に装入すると油脂分による引火の恐れや、操業中の漏煙の発生、更には油脂分やごみ等の汚れによって溶鋼が汚染され、溶鋼品質が悪化する問題、また操業面では配管内への油脂分の付着,フィルタ目詰まり等の問題が発生する。
従ってダライ屑を溶解用原料として再利用するには、ダライ屑に付着している切削油やごみ等の汚れを洗浄により除去することが不可欠である。
【0004】
またダライ屑には材質(成分)の異なった様々なものがあることから、それら材質の異なったダライ屑を洗浄処理するに際して、成分系が全く異なる異材質のダライ屑が混ざり合わないようにすることが必要である。
異材質のダライ屑が混ざり合ってしまうと、それは文字通り屑となってしまい、もはや再利用するといったことは難しい。
【0005】
更にダライ屑を再利用するためには、材質の様々に異なったダライ屑を短時間で、効率良く、低コストで洗浄処理できることが必要である。
ところがこのような要請を満たし得るダライ屑の洗浄処理設備は、未だ提供されていないのが実情である。
【0006】
ダライ屑は大きさ及び形状が一定でなく様々であり、またカールしているため、これを拭取りにて洗浄することは困難である。
またダライ屑の表面はざらざらしており、単に洗浄液に浸した程度では表面の汚れを落とすことは難しい。
【0007】
そこでダライ屑を洗浄処理するに際して、ダライ屑を位置固定の容器内に上向きの開口部から入れ、更に容器内に洗浄液を入れて、ダライ屑を洗浄液に浸漬した状態で容器を回転させることにより、容器内でダライ屑同士を擦れ合せながら洗浄液に接触させ、表面の汚れを洗浄除去し、そして洗浄後に開口部を下向きとするように容器をひっくり返して(上下逆転させて)ダライ屑を容器外に排出し、これをコンベアに載せて下流工程へと搬送し、下流工程で乾燥その他の処理を行うといったことが考えられる。
【0008】
ところがこうした設備では、容器をひっくり返して内部のダライ屑を排出したとしても、ダライ屑が液で濡れた状態にあるために一部のダライ屑が容器内に付着して残ってしまい、またコンベア上においても濡れたダライ屑が付着して残ってしまう。
従ってその後に別の材質のダライ屑を処理すると、前の処理で容器内やコンベア上等の洗浄処理ライン上に残ったダライ屑が、次の異種(異材質)のダライ屑に混ざってしまう問題を生じる。
【0009】
これを防ぐためには、処理するダライ屑の材質が変るごとに、洗浄処理ライン全体を清掃することが必要となり、その清掃のために多大な手間と時間とがかかってしまい、従って処理コストも高いものとなってしまう。
【0010】
一方、1つの容器でダライ屑の洗浄から乾燥までの一連の各種処理を行うバッチ処理では、異材質のダライ屑の混入防止は可能であるものの、このバッチ処理は非連続処理であるために、処理のために多くの時間を要してしまい、多量のダライ屑を処理することは難しい。
以上、ダライ屑を例として問題点を述べたが、この様な問題は、ダライ屑以外の金属加工屑を再利用するに際しても同様に生じる問題である。
【0011】
尚、下記特許文献1には切削油等の汚れの除去を目的とした「洗浄設備」についての考案が示されている。
但しこの特許文献1に記載のものは、切削加工後の製品を洗浄対象としたもので、ダライ屑などの金属加工屑を洗浄対象としたものでなく、この点で基本的に本発明と異なっている。
【0012】
この引用文献1では、従来技術として、切削加工後の製品をバスケット(60)に入れ、そしてそのバスケット(60)を第1洗浄槽(52)から湯洗槽(56)まで順に浸漬して行き、その浸漬の間に油分を除去し、更に乾燥槽(57)の中に装入して乾燥を行う点が開示されている。
【0013】
しかしながらこの設備は、単にバスケット(60)に入れた製品をバスケットごと洗浄その他の処理のための槽内に出し入れするだけのもので、このような設備を金属加工屑の洗浄設備として適用しても、効率的に金属加工屑を洗浄し、その汚れを十分に除去することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上のような事情を背景とし、効率的且つ短時間,低コストで金属加工屑の汚れを十分に洗浄除去し得、また異材質の金属加工屑を洗浄処理するに際しても異材質の金属加工屑の混入を防ぐことができ、また異材質の金属加工屑の洗浄処理への切替えに際しても殆ど洗浄処理ラインの清掃の負荷がかからない金属加工屑の洗浄処理設備を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、金属加工屑に付着した切削油等の汚れを除去する金属加工屑の洗浄処理設備であって、筒形状の周壁部の内面に、該内面から筒中心側に向って突出し且つ該内面に沿って該周壁部の軸線方向に延びる撹拌羽根を周方向に間隔をおいて複数備えて成り、前記金属加工屑を内部に収容する篭状の容器と、搬送ラインに沿って設けられた洗浄部及びその下流位置の乾燥部を含む複数の処理部に、前記金属加工屑を前記容器ごと該搬送ラインの上流側から下流側に順に搬送し受け渡す搬送装置と、を有しており、前記洗浄部には、洗浄液を収容する液槽と、前記容器を横向きにした状態で該液槽内で前記軸線周りに回転させる回転装置と、
前記容器に対して前記軸線方向の外側から内部に挿入され、複数のノズル部から前記洗浄液を噴射する内ノズル管と、該容器の外部に位置し、複数のノズル部から該容器の周壁部外面に向けて前記洗浄液を噴射する外ノズル管と、が設けられていて、該洗浄部において、前記金属加工屑を前記容器ごと前記液槽内の洗浄液に浸漬させた状態で該容器を回転させ、該金属加工屑を撹拌しつつ
、前記洗浄液への浸漬と前記ノズル部からの該洗浄液の噴射とにより該金属加工屑の洗浄を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において
、前記容器の回転により該容器の下部から前記撹拌羽根にて持ち上げられた前記金属加工屑に向けて
前記内ノズル管の前記ノズル部から洗浄液を噴射し
て、該金属加工屑の洗浄を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項1において、前記乾燥部には、前記容器を横向きにした状態で前記軸線周りに回転させる回転装置と、該容器に対して該軸線方向の外側から内部に挿入され、複数のノズル部から熱風を噴射するノズル管と、が設けられていて、該乾燥部において、該容器を回転させながら該ノズル部からの熱風の噴射により前記金属加工屑の乾燥を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記搬送ライン上には、前記洗浄部の下流位置且つ前記乾燥部の上流位置に湯洗部が設けられており、該湯洗部には、前記容器を横向きにした状態で前記軸線周りに回転させる回転装置と、該容器に対して該軸線方向の外側から内部に挿入され、複数のノズル部から湯を噴射するノズル管と、が設けられていて、該湯洗部において、該容器を回転させながら前記金属加工屑に向けての湯の噴射により湯洗を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項5のものは、請求項4において、前記搬送ライン上には、前記湯洗部の下流位置且つ前記乾燥部の上流位置に水切部が設けられており、該水切部には、前記容器を横向きにした状態で前記軸線周りに回転させる回転装置と、該容器に対して該軸線方向の外側から内部に挿入され、複数のノズル部からエア噴射するノズル管と、が設けられていて、該水切部において、前記回転装置にて容器を回転させながら前記ノズル部からのエア噴射により前記金属加工屑の水切りを行うことを特徴とする。
【0021】
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記容器は、前記周壁部が断面多角形状としてあることを特徴とする。
【0022】
以上のように本発明は、篭状の容器を、筒形状の周壁部とその内面から筒中心側に向って突出し、周壁部の内面に沿って軸線方向に延びる撹拌羽根を有するものとして、そこに金属加工屑を入れ、搬送ラインに沿って設けた洗浄部及びその下流位置の乾燥部を含む複数の処理部に、金属加工屑を容器ごと搬送装置にて搬送ラインの上流側から下流側に順次搬送し、受渡しを行うようになしたもので、この洗浄処理設備では、金属加工屑を容器ごと搬送ラインに沿って各処理部に順送りして一連の洗浄のための処理を行う。
【0023】
本発明の洗浄処理設備は、金属加工屑を容器から出して、これを搬送装置により搬送ラインに沿って移動させるものでなく、金属加工屑を容器ごと移動させるものであるため、ある材質の金属加工屑を洗浄処理した後に、別の金属加工屑を洗浄処理した場合においても、前に洗浄処理した金属加工屑が洗浄処理ライン上に残って、これが次に処理される別材質の金属加工屑に混ざり、混入してしまうといったことを防ぐことができる。
【0024】
従って洗浄処理ラインを清掃することなく別材質の金属加工屑の洗浄処理に切り替えることが可能であり、ライン清掃のための負荷を無くし若しくは著しく低減することができる。
また清掃のための作業及び時間を要しないため、異材質の金属加工屑の処理への切替えを含む金属加工屑の洗浄処理のための全体の所要時間を短くすることができる。
【0025】
本発明ではまた、洗浄部に、洗浄液を収容する液槽と、容器を横向きにした状態で液槽内で軸線周りに(周方向に)回転させる回転装置を備え、その洗浄部において、金属加工屑を容器ごと液槽内の洗浄液に浸漬させた状態で容器を回転させ、金属加工屑を洗浄する。
【0026】
このとき、容器内部の金属加工屑は容器の回転により撹拌作用を受けて、金属加工屑同士が洗浄液への浸漬状態で互いに擦れ合い、そのことによって表面に付着していた切削油を含む汚れが効率的に除去処理される。
また容器の内面には、筒中心側に向って突出し、容器の回転とともに回転移動する撹拌羽根が備えられているため、容器内部の金属加工屑が効率的に撹拌作用を受け、洗浄の効率が一層高められる。
これにより金属加工屑の表面に付着していた切削油やごみ等を含む汚れが十分に除去されて、金属加工屑が清浄化される。
【0027】
上記洗浄部には、更に加えて、容器に対し軸線方向の外側から内部に装入され、複数のノズル部から洗浄液を噴射する
内ノズル管
と、容器の外部に位置し、複数のノズル部から容器の周壁部外面に向けて洗浄液を噴射する外ノズル管と、が設けられていて、洗浄液への浸漬と、ノズル部からの洗浄液の噴射とにより金属加工屑の洗浄が行なわれる。
【0028】
ここで、洗浄部において、容器の回転により容器の下部から撹拌羽根にて持ち上げられた金属加工屑に向けて内ノズル管のノズル部から洗浄液を噴射して、金属加工屑を洗浄するようになしておくことができる(請求項2)。
この請求項2に記載の洗浄処理設備では、回転する容器の下部に集合状態で溜っている金属加工屑群のうちの、最下部の奥部に潜っている状態の金属加工屑が、撹拌羽根の回転によりすくい取られて上方に持ち上げられる。そしてその持ち上げられた金属加工屑に対してノズル部から洗浄液が直接噴射される。
【0029】
金属加工屑は、そのノズル部からの洗浄液の噴射と、洗浄液への浸漬状態での撹拌との両方とによって洗浄されるため、金属加工屑に付着していた汚れをより効果的に且つ十分に除去し得て、金属加工屑をより清浄化することができる。
ここでノズル部からの洗浄液の噴射は、これを容器内下部で集合状態となっている金属加工屑に向けての下向きと、撹拌羽根によって持ち上げられる側に向けての横向きに噴射するようになしておくことができる。
【0030】
本発明において、上記乾燥部には、容器を横向きにした状態で軸線周りに回転させる回転装置と、容器に対して軸線方向の外側から内部に装入され、複数のノズル部から熱風を噴射するノズル管とを設けておき、乾燥部において、容器を回転させながらノズル部からの熱風の噴射により金属加工屑の乾燥を行うようになしておくことができる(請求項3)。
このようにすることで、容器内部の金属加工屑を、容器の回転により撹拌しつつノズル部からの熱風の噴射により良好に乾燥処理することができる。
ここでノズル部からの熱風噴射は金属加工屑が持ち上げられる側の横向きと下向きの2方向噴射としておくことができる。
【0031】
本発明において、上記搬送ライン上には、上記の洗浄部の下流位置且つ乾燥部の上流位置に湯洗部を設けて、その湯洗部に、容器を横向きにした状態で軸線周りに回転させる回転装置と、容器に対して軸線方向の外側から内部に装入され、複数のノズル部から湯噴射するノズル管とを設けておき、湯洗部において、容器を回転させながら金属加工屑に向けての湯の噴射により洗浄液を除去する湯洗を行うようになしておくことができる(請求項4)。
このようにすることで、洗浄部での洗浄により洗浄液が付着し、その状態で下流側に搬送されて来た金属加工屑から洗浄液を良好に湯洗除去することができる。
【0032】
本発明ではまた、搬送ライン上且つ湯洗部の下流位置で乾燥部の上流位置に水切部を設けて、その水切部に、容器を横向きにした状態で軸線周りに回転させる回転装置と、容器に対して軸線方向の外側から内部に装入され、複数のノズル部からエア噴射するノズル管を設けておき、回転装置にて容器を回転させながらノズル部からのエア噴射により金属加工屑の水切りを行うようになしておくことができる(請求項5)。
このようにすることで、上記の湯噴射により金属加工屑に付着している水を、この水切部において良好に金属加工屑から除去することができる。
【0033】
本発明では、上記容器における周壁部を、8角形状や6角形状等の断面多角形状となしておくことができる(請求項6)。
このようにすることで、例えば洗浄部において容器内部の金属加工屑を容器の回転により撹拌するに際して撹拌効率を高めることができ、ひいては金属加工屑の洗浄能力を高めることができる。
また他の乾燥部等の各処理部において、容器回転時の金属加工屑の撹拌効果を高め得て、乾燥その他の処理を効率的に行うことができる。
【0034】
本発明では、上記ノズル管を容器の軸線方向且つ搬送ラインと直交方向で水平方向に移動可能に設けておくことができる。
このようにすることで、ノズル管の存在にも拘らず、これを後退移動させておくことで容器を搬送ラインに沿って各処理部に対し上流側から下流側へと円滑に搬送装置にて搬送して行くことができる。
【0035】
本発明ではまた、洗浄部における液槽を、搬送ラインと直交方向で水平方向に開閉可能となしておくことができる。
このようにすることで、液槽の存在にも拘らず搬送装置にて容器を洗浄部へと移動させ、或いは洗浄部から更に下流側に移動させることができる。
また洗浄部においては、金属加工屑を容器ごと洗浄部に移動させた後に液槽を閉じることができ、液槽内、詳しくは液槽内部の洗浄液に金属加工屑を浸漬させた状態で容器を回転運動させることができる。
【0036】
また容器には、周壁部の全周に亘って周壁部の外面から軸直角方向外方に突出した円環状の鍔状部を被支持部として設けておくことともに、各処理部の回転装置は、その鍔状部を受けて支持する受ローラを備えておき、その受ローラの回転により容器全体を回転させるものとしておくことができる。
また上記の洗浄部においては、かかる受ローラを液槽内の位置に設けておき、液槽内で容器を回転駆動するものとなしておくことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び
図2において、10は洗浄対象である金属加工屑としてのダライ屑を内部に入れて搬送する篭状の容器で、筒形状をなす周壁部12と、軸線方向の両端に配置された端部部材としての平面視円形状の端部プレート14,16とを有している。
ここで一方の端部プレート16には、中心部に円形の開口部18が設けられている。
後述のダライ屑は、この開口部18を通じて容器10内に投入され、或いは容器10内から排出される。
尚、一方の端部プレート16の
図1中上面の外周部には、平面視円形のドーナツ環状の且つ端部プレート16よりも僅かに小径の補強プレート17が取り付けられている。
【0039】
容器10の移動の際などの取扱中に、端部プレート16の外周部にて構成される後述の鍔状部32が変形を起す恐れがあり、そこでここでは端部プレート16を補強することによって鍔状部32の変形を防ぐべく、補強プレート17が端部プレート16に重ね合せ状態に取り付けられている。ここで補強プレート17は、端部プレート16と一体に構成することもできる。
尚、
図2に示す他方の端部プレート14の側においても、その外面(
図1中下面)に同形状の補強プレート17が取り付けられている。
尚補強プレート17を端部プレート16,14に取り付けておくことは必須ではなく、場合によって補強プレート17の取付けを省くことも可能である。
【0040】
周壁部12は、端部プレート14と16とを周方向に45°ずつ隔たった複数個所で連結する連結材20に対して、内面側のメッシュメタル22と、格子状をなす外面側の補強部材24とを重ねて成るパネルを4周の枠部26にて固定して構成してあり、その断面形状が
図2(B)に示しているように多角形状、ここでは8角形状とされている。
即ち周壁部12は、その大部分がメッシュメタルから成っており、そこには容器10内外を連通させる間隙が多数形成されている。
ここではメッシュメタルとして、メッシュ目が500μmのものが用いられている。
また容器10は、ダライ屑を最大で120kg投入可能な大きさとされている。
【0041】
容器10には、周壁部12の内面から筒中心に向って突出した、合計8枚の撹拌羽根30A,30Bが設けられている。
ここで撹拌羽根30A,30Bは、周壁部12における角部の位置に設けられている。即ち周方向に45°ずつ隔たった位置にそれぞれ設けられている。
撹拌羽根30Aは、撹拌羽根30Bよりも突出高さが高く、この撹拌羽根30Aと、今一方の突出高さの低い撹拌羽根30Bとが周方向に交互に配置されている。
これら撹拌羽根30A及び30Bは、
図2(A)で示すように端部プレート14から端部プレート16側のテーパ状部28の直前位置まで容器10の軸線方向に延びている。
尚テーパ状部28は、内周端が端部プレート16の開口部18縁部に合致せしめられている。
【0042】
周壁部12にはまた、その外面から軸直角方向外方に突出した円環状の一対の鍔状部32と34とが設けられている。
一方の鍔状部32は、端部プレート14,16を周壁部12から突出させることで構成されており、軸線方向の両端位置に設けられている。
今一方の鍔状部34は、これら一対の軸端の鍔状部32から軸線方向内方に所定距離引き込んだ位置に配置されている。
鍔状部32,34は何れも被支持部としてのもので、一方の鍔状部32は、後に明らかにされるように後述の受ローラ132(
図9参照)にて支持される。
また軸端位置から引き込んだ位置の一対の鍔状部34は、搬送装置64(
図5参照)にて支持される。
【0043】
図3は、本実施形態の洗浄処理設備の概略全体構成を示している。
また
図4は、洗浄処理設備の本体部分の概略全体構成を示している。
図3中36は洗浄処理設備を、
図4中38はその本体部を表している。
図4に示しているように、本体部38には図中右側から左側に向って、即ち搬送ラインの上流側から下流側に向って洗浄部42,湯洗部44,水切部46,乾燥部48が順に設けられている。
尚図中50は搬入部を、52は搬出部を表している。
【0044】
図3において54,56,58はローラコンベアで、空の容器10がこれらローラコンベア54,56,58によって本体部38側へと搬送されて行く。
具体的には、空の容器10が縦向きで、詳しくは軸線を縦向きとしてローラコンベア54の図中左端に載せられる。
ローラコンベア54に載せられた空の容器10は、続いて図中矢印で示す右方向に搬送される。
【0045】
ローラコンベア54の図中右端に到った容器10は、続いてローラコンベア56へと移し変えられ、更に引続いて図中下向きに搬送される。
そして図中の下端位置で、チップ状のダライ屑K(
図11参照)が、容器10の上端の開口部18から容器10内部に投入される。
【0046】
図中62はダライ屑粉砕機、63は既に細かく粉砕されているダライ屑Kを貯留するダライ屑貯留機で、粗大ダライ屑はダライ屑粉砕機62へと投入され、そこで粉砕される。
そして粉砕後のチップ状のダライ屑Kが、或いはダライ屑貯留機63に貯留されているダライ屑Kが、ローラコンベア56上に待機している空の容器10内へと投入される。
【0047】
投入されたダライ屑は、容器10ごと次のローラコンベア58へと移載され、続いてローラコンベア58にて図中上方、即ち本体部38に向けて搬送され、本体部38への受渡し位置60へと到る。
容器10は、この受渡し位置60において横向きに倒され、軸線が水平方向を向くように寝た状態、即ち横向き状態とされる。
そしてその状態で容器10が、内部のダライ屑Kとともに本体部38の搬入部50へと移される。
【0048】
その後、横向き状態の容器10が内部にダライ屑Kを入れたまま、
図4の洗浄部42,湯洗部44,水切部46,乾燥部48へと順次間欠的に送られて、それぞれにおいて洗浄,湯洗,水切り,乾燥の各処理が行われる。
ここで横向き状態とは、必ずしも容器10の軸線が水平である状態に限定するものではなく、例えば容器10の軸線が水平方向に対して上下に30°の範囲内で傾いた状態であってもよい。
そして乾燥後のダライ屑Kが容器10ごと搬出部52へと送られて、そこから設備外へと搬出されて行く。
【0049】
本体部38における容器10の搬送、即ちダライ屑Kの容器10ごとの搬送は、
図5の搬送装置64によって行われる。
図5,
図6及び
図7にその搬送装置64の構成が示してある。
以下これらの図に基づいて搬送装置64につき説明する。
図5において、搬送装置64は、容器10の送り方向である図中左右の水平方向と上下方向とに移動可能な可動の支持台66を有しており、その上面に、容器10を支持する複数の支持部68が設けられている。
ここで支持部68は、上記の搬入部50,洗浄部42,湯洗部44,水切部46及び乾燥部48に対応した数で且つ図中左右方向に等しい間隔で5個所に設けられている。
【0050】
各支持部68は、
図6に示しているように容器10の送り方向である図中左右方向に対向して配置された、正面形状が3角形状をなす一対の支持片70を有しており、また送り方向に対向配置されたそれら一対の支持片70を1組として、送り方向と直交方向に間隔を隔てて一対の支持片70を2組有しており、それらによって容器10における上記の鍔状部34を支持するようになっている。
尚、支持片70は
図6(B)に示しているように凹部72を有しており、そこに鍔状部34を挿入させることで容器10を送り方向と直交方向、即ちその軸線方向に位置決めするようになっている。
【0051】
図5において、74は架台で、長手方向両端部に固定の支持台76,78を有しており、それら支持台76,78上に支持部68が設けられている。
ここで支持台76上の支持部68は、搬入部50において容器10を支持する。
また支持台78上の支持部68は、搬出部52において容器10を支持する。
尚これら支持台76,78上の支持部68の構成は、上記可動の支持台66上の支持部68と同様である。
【0052】
図5及び
図6に示しているように、上記可動の支持台66には、アーム80の上端部が相対回転可能に連結されている。
またこのアーム80の下端部に対して、これとは別の下側のアーム82の上端部が、軸84を介して一体回転状態に連結されている。
詳しくは、軸84は全体として断面円形をなしているが、
図6(B)に示しているように軸方向の中間部が断面4角形状の雄係合部90とされており、その雄係合部90が、アーム80の下端部に設けられた4角筒状の雌係合部91の係合孔92に係合せしめられており、それらの係合作用によって、アーム80と82とが軸84を介し一体回転状態に連結されている。
ここで軸84は、後述の処理チャンバ112(
図3参照)の壁94に固定の軸受96にて回転可能に支持されている。
【0053】
上記アーム80,82は
図5中左右方向の複数個所に設けられており、そしてアーム82の各下端部に対して連結ロッド86が相対回転可能に連結されている。
連結ロッド86は、
図5に示しているように左右方向に長く延びており、その右端部に対して昇降用シリンダ88が連結されている。
【0054】
この実施形態では、昇降用シリンダ88がシリンダロッドを押し出すと、アーム80,82が
図6の軸受96にて支えられた軸84周りに図中時計方向に回転し、可動の支持台66を上昇移動(リフト)させる。
一方昇降用シリンダ88がシリンダロッドを引き込むと、アーム80,82が反時計方向に回転して、支持台66を下降移動させる。
【0055】
搬送装置64はまた、可動の支持台66を図中左右方向の水平方向に移動させるためのキャリー用シリンダ98を有している。
キャリー用シリンダ98は、支持台66の図中左端から垂下し、支持台66と一体に移動する可動の第1伝達部100と、上下方向に不動の第2伝達部102とを介して支持台66と連結されており、キャリー用シリンダ98がシリンダロッドを押し出すと、その押出しの力が伝達部102,100を介して支持台66に伝えられ、支持台66が
図5中左方向に前進移動せしめられる。
またキャリー用シリンダ98がロッドを引き込むと、その引き込みの力が伝達部102,100を介して支持台66に伝えられ、支持台66が図中右方向に後退移動せしめられる。
【0056】
尚、支持台66の
図5中左右方向の進退移動に際して、上記のアーム80は同一の回転位置を保持したままである。
即ち支持台66は、アーム80の上端部に対して相対移動を生じながら
図5中左右方向に進退移動する。
各アーム80の上端部が、そのような相対移動を許容するように、
図6(B)において大ローラ104と小ローラ106とで支持台66の外向きのフランジ部108を上下両側から挟持している。
【0057】
図5及び
図7において110はスライドガイドで、上記の第2伝達部102は、キャリー用シリンダ98によってこのスライドガイド110に案内されて、
図5中左右方向にスライド移動せしめられる。
この第2伝達部102は、上下のスライドガイドとしての働きも有しており、支持台66から垂下した上記の伝達部100は、この第2伝達部102によって上下に昇降案内される。
【0058】
以上の説明から明らかなように、搬送装置64は、昇降用シリンダ88とキャリー用シリンダ98とによって、可動の支持台66を上下及び図中左右方向に進退移動させ、それらの動きによって、容器10を搬送ラインに沿って搬入部50→洗浄部42→湯洗部44→水切部46→乾燥部48→搬出部52へと、上流側から下流側へと順次間欠的に搬送して行く。
【0059】
図3において、本体部38は処理チャンバ112を有しており、かかる処理チャンバ112が洗浄部42,湯洗部44,水切部46,乾燥部48それぞれの個別のチャンバ114,116,118,120に仕切られている。
図4に示しているように各チャンバ114,116,118,120の入口と出口には、それぞれ開閉扉122が設けられており、各開閉扉122が扉シリンダ124によって開閉される。
また各チャンバ114,116,118,120には、
図8に示す排気ダクト126とミストコレクタ128とが付設されている。
【0060】
図8〜
図10に洗浄部42の構成が示してある。
これらの図に示しているように、洗浄部42はチャンバ114内に液槽130を有しており、そしてその液槽130内部に受ローラ132が設けられている。
ここで受ローラ132は、容器10の搬送方向即ち
図5において左右方向に一対設けられており、また一対の受ローラ132を1組として、搬送方向と直交方向即ち
図9において左右方向に2組設けられている。
これら受ローラ132は、容器10の上記の鍔状部32を受けて、これを支持する。
【0061】
ここで受ローラ132には、
図9の部分拡大図に示しているように溝138が設けられており、受ローラ132は、その溝138に鍔状部32を挿入させてこれを支持する。
各受ローラ132は、中間軸134を介してチェーン140により
図8のモータ136に連結されている。
各受ローラ132は、モータ136によって回転駆動される。
尚、受ローラ132にて容器10の鍔状部32を受け、モータ136にて受ローラ132を回転させることにより、容器10全体を回転させる点については、
図4の湯洗部44,水切部46,乾燥部48においても同様である。
【0062】
上記液槽130は、
図8に示しているように図中左右方向(水平方向)即ち容器10の搬送方向と直交方向に開閉可能とされている。
即ち液槽130は、固定部142と可動部144とに分かれていて、その可動部144に開閉シリンダ146が連結され、可動部144がその開閉シリンダ146によって図中左右方向に進退移動せしめられることで液槽130が開閉動作する。
ここで液槽130の容量は1500L(リットル)〜2000L程度である。
【0063】
液槽130の可動部144には、
図8に示すように容器10内部に挿入される内ノズル管148と、容器10の外部且つ液槽130の内側に位置せしめられる外ノズル管151とが一体移動する状態に設けられている。
ここで外ノズル管151は、
図4,
図11にも示しているように、上下方向において内ノズル管148よりも下側に且つ容器10の軸心から同図中左右方向に偏心した位置に設けられている。
ここで内ノズル管148は水平方向に設けられていて、
図8中左右方向の進退移動により容器10に対して上記の開口部18からその内部且つ軸心(筒中心)位置に軸線方向に挿入され、また後退移動によって容器10内部から軸線方向の外部へと抜き出される。
内ノズル管148には、多数のノズル部150が容器10の軸直角方向外方に向けて設けられている。ノズル部150の向きは、ここでは水平方向の横向き(
図11中右向き)と下向きの2方向とされている。
ノズル部150の向きが
図11中右向きと下向きであることの理由については後述する。
尚
図8中164は、内ノズル管148のノズル部150にダライ屑が乗ってしまった場合に、これを容器10内に吹き落とすためのエア吹付ノズルである。
外ノズル管151もまた水平方向に設けられており、多数のノズル部150が、容器10の軸直角方向内方に向けて設けられている。
【0064】
図3において、洗浄部42には洗浄液タンク152が設けられており、洗浄液タンク152内の洗浄液は、容器10への内ノズル管148の挿入状態及び容器10外部に外ノズル管151を位置させた状態の下で、ポンプ154により内ノズル管148及び外ノズル管151へと圧送される。
圧送された洗浄液は多数の内ノズル管148のノズル部150から容器10内へと噴射される。また容器10の外部に位置する外ノズル管151のノズル部150から容器10の周壁部12外面に向けて噴射される。
内ノズル管148及び外ノズル管151のノズル部150から噴射された洗浄液は、最終的にチャンバ114の底部のパン155で受けられて、その後返送管156により
図3のフィルタ158を経て再び洗浄液タンク152へと戻される。
ここで洗浄液としてはアルカリ性の洗浄液(水溶液)が用いられる。但し洗浄液としては様々なものを用いることが可能である。
【0065】
この洗浄部42に対して下流側に隣接した湯洗部44においては、
図3に示しているようにチャンバ116内に湯槽は設けられていない(但し設けておくことも可能)。
【0066】
湯洗部44において、多数のノズル部150を有する内ノズル管148及び外ノズル管151が設けられていて、それら内ノズル管148及び外ノズル管151が容器10の搬送方向と直交方向に一体に移動する点、更に内ノズル管148及び外ノズル管151を移動させる機構については洗浄部42におけるそれと同様である。
【0067】
この湯洗部44においては、内ノズル管148及び外ノズル管151のノズル部150から湯を噴射する。
湯洗部44には湯タンク162が設けられており、内部の湯がポンプ154にて内ノズル管148及び外ノズル管151へと圧送される。
圧送された湯は内ノズル管148の多数のノズル部150から、容器10の内部に噴射され、また外ノズル管151のノズル部150から容器10の周壁部12外面に向けて噴射される。
噴射された湯は、その後洗浄部42と同様に返送管156を通じ、フィルタ158を経て湯タンク162へと戻される。
【0068】
この湯洗部44に隣接した下流側の水切部46においても、内ノズル管148が、容器10に対して軸線方向の外側から内部に挿入可能且つ容器10から抜き出し可能に設けられている。また外ノズル管151が、容器10の外部においてその軸線方向に移動可能に設けられている。
この水切部46においては、内ノズル管148及び外ノズル管151の多数のノズル部150からエア噴射して水切りを行う。
内ノズル管148のノズル部150の向きは、洗浄部42,湯洗部44におけるのと同様の2方向であり、また外ノズル管151のノズル部150の向きは洗浄部42,湯洗部44におけるのと同様、容器10の周壁部12外面に向けての一方向である。
【0069】
この水切部46に隣接した下流側の乾燥部48においても、同様に容器10に対して軸線方向に挿入及び抜き出し可能な内ノズル管148が設けられている。但しここでは外ノズル管151は設けられていない(但し設けておくことも可能)。
この乾燥部48では、ヒータにより加熱された熱風が内ノズル管148のノズル部150から噴射される。
この乾燥部48においても、内ノズル管148のノズル部150の向きは洗浄部42,湯洗部44,水切部46におけるのと同様の2方向であり、内ノズル管148に送られた熱風はノズル部150から下向きと横向きとに噴射される。
【0070】
この実施形態の洗浄設備では、搬入部50に送られて来た、ダライ屑K入りの篭状の容器10が、搬送装置64によって洗浄部42,湯洗部44,水切部46,乾燥部48へと間欠送りされる。
そして洗浄部42において、洗浄液によるダライ屑Kの洗浄が行われ、そしてこれに隣接した下流側の湯洗部44において、容器10内のダライ屑Kが湯洗され、ダライ屑Kに付着していた洗浄液がここで除去される。
そして更に下流側の水切部46において、ダライ屑Kに付着していた水分が容器10内において水切りされる。
更にその下流側の乾燥部48において、容器10内のダライ屑Kに対する乾燥が行われる。
そして最終的に乾燥後のダライ屑Kが容器10ごと搬出部52へと送られて、そこから設備外へと送られて行く。
【0071】
図11は、洗浄部42においてダライ屑Kを洗浄する際の作用を模式的に示している。
洗浄部42では、液槽130を可動部144の
図8中左向きの移動によって閉じ、同時に内ノズル管148を容器10の内部に開口部18から挿入した状態で、また外ノズル管151を液槽130の内部であって容器10の外部且つ内ノズル管148よりも下側に位置させた状態で容器10を受ローラ132の回転により回転運動させつつ(回転数は1分間に5回転程度)、ポンプ154にて洗浄液タンク152内の洗浄液を内ノズル管148と外ノズル管151とに圧送する。ここにおいて内ノズル管148は、ノズル部150から
図11中右向き(後述するように撹拌羽根30A,30Bにてダライ屑Kが持ち上げられる側の横向き)と、ダライ屑Kが集合状態となっている下向きとの両方向に洗浄液を噴射する。
たとえば、単に容器10内にダライ屑Kを収容した状態でこれを洗浄液に浸漬し、容器10を回転させるだけでは、ダライ屑Kに対する洗浄液の機械的な衝突が得られないため、洗浄能力が十分に得られない。
しかるにこの実施形態では、ノズル部150からの洗浄液の噴射によって、以下に述べるようにダライ屑Kに対する洗浄を良好に行うことができる。
【0072】
容器10内のチップ状のダライ屑Kは、その大部分が容器10の下部に集合状態でかたまっており、その最下部に位置する(潜っている)ダライ屑Kに対して、洗浄液の噴射流をノズル部150から直接当てることは難しいが、この実施形態では容器10の回転に伴って撹拌羽根30A,30Bにより最下部のダライ屑Kがすくい取られた上、撹拌羽根30A,30Bの回転に伴って上方に持ち上げられるため、更にノズル部150から洗浄液が横向き(図中右向き)に噴射されるため、洗浄液の噴射流を撹拌羽根30Aにて持ち上げられるダライ屑Kに対して直接強い勢いで当てることができ、そのダライ屑Kに対する洗浄を効率高く行うことができる。
【0073】
この実施形態では、上記のようにして撹拌羽根30A,30Bにて最下部に潜っているダライ屑Kをすくい上げて更に頂上付近で落下させることで、撹拌羽根30Aによって持ち上げられるダライ屑が次々と更新して行く。このため容器10の回転を継続することによって、容器10内のダライ屑K全体に対して満遍なく洗浄液の噴射流を当てることができ、洗浄液の噴射流によってダライ屑Kを満遍なく洗浄することが可能となる。
但し洗浄液をノズル部150から横向きに噴射するだけであると、撹拌羽根30A,30Bにて持ち上げられるダライ屑Kに対してだけしか洗浄液を直接当てることができない。
しかるに本実施形態ではノズル部150から洗浄液を下向きにも噴射するため、その下向きの洗浄液の噴射流を、容器10の下部の集合状態のダライ屑Kに対して衝突させることができる。そしてそのことによってノズル部150下方のダライ屑Kを洗浄でき、容器10内のダライ屑K全体に効果高く洗浄作用を及ぼすことができる。
【0074】
内ノズル管148のノズル部150から噴射された洗浄液は、ダライ屑Kに当ってこれを洗浄した後、容器10の周壁部12のメッシュの編目即ち間隙を通じて容器10外へと流出する。
流出した洗浄液は液槽130で受けられ、液槽130内の洗浄液の液面(水位)が次第に上昇して来る。
そして洗浄液の液面が上昇することによって、容器10の下部に集合状態にあるダライ屑K群が洗浄液に浸漬した状態となる。
洗浄液に浸漬したダライ屑Kは、容器10の回転による撹拌作用を受け、ダライ屑K同士で擦れ合いを生じながら、洗浄液への浸漬によって洗浄作用を受け、ダライ屑K表面の切削油やごみ等の汚れが除去されて行く。
【0075】
このとき、ダライ屑Kは単なる容器10の回転による撹拌作用だけでなく、これに加えて撹拌羽根30A,30Bの回転による撹拌を受ける。
具体的には、容器10の下部に沈み込んだ状態にある多数のダライ屑Kのうち、奥部に潜っているダライ屑Kが、撹拌羽根30A,30Bによりすくい上げられて上方に持ち上げられ、そして上方で撹拌羽根30A,30Bから離れて落下し、ダライ屑Kの表層に重なる。
そしてそれが繰り返されることによって、容器10内下部のダライ屑Kがその向きを様々に変化させながら表層から最下部の奥部へと次々と位置を変化させ、更には最下部から表層へと位置を次々と変化させる。そしてそのような変化を生じながらダライ屑Kが効率高く撹拌される。
またその際に容器10が8角形状であることによって、その形状効果によってもダライ屑Kに対する撹拌効果が高まる。
【0076】
ダライ屑Kはそのような良好な撹拌を受けつつ、洗浄液への浸漬状態で洗浄作用を受け、その洗浄液への浸漬による洗浄と、更に撹拌羽根30A,30Bにより持ち上げられた状態での、内ノズル管148のノズル部150からの洗浄液の噴射との両方によって、ダライ屑Kが効率高く洗浄される。
【0077】
容器10の回転及びノズル部150からの洗浄液の噴射は、例えば10分程度継続して行われる。
この実施形態では、約3分程度経過したところで液槽130が洗浄液で満タン近くなる。その後は引続く洗浄液の噴射によって液槽130内の洗浄液が、液槽130上部に接続された排出管164を通じて排出され、液槽130からのオーバーフローが防止される。そして排出管164から排出された洗浄液が洗浄液タンク152へと返送される。
【0078】
図11(B)に示しているように、洗浄液の液面が内ノズル管148よりも上まで上昇すると、ノズル部150からの洗浄液は、洗浄液中に噴射されることとなり、このときにはノズル部150からの洗浄液の噴射流が、容器10内の洗浄液を撹拌する作用をなす。
この実施形態では、所定時間上記のような洗浄動作を行った後、液槽130が
図8において左右方向に開かれて、内部の洗浄液がパン155で受けられて洗浄液タンク152へと戻される。
【0079】
この実施形態では、容器10の内部からだけでなく、容器10の外部且つ下側からも、外ノズル管151のノズル部150から洗浄液が容器10の周壁部12外面に向けて、容器10の軸直角方向内方に噴射される。
【0080】
内ノズル管148のノズル部150からの洗浄液噴射だけであると、ダライ屑Kに加わる遠心力の方向とノズル部150からの洗浄液の噴射方向とが同じ方向で、何れも容器10の中心部から軸直角方向外方向きとなるが、外ノズル管151からの洗浄液の噴射流の方向は、容器10に対して軸直角方向内方向きとなって、容器10内部に流れ込むため、容器10内部のダライ屑Kに対する撹拌の効率が、この外ノズル管151からの洗浄液の噴射流によって高まり、ダライ屑Kに対する洗浄効率が高まる。
本実施形態において、外ノズル管151はこうした目的のために設けられている。
【0081】
さて以上のようにしてダライ屑Kに対する洗浄を終えたところで、ダライ屑Kが容器10ごと搬送装置64にて、隣接する下流側の湯洗部44へと移されて、そこでダライ屑Kに対する湯洗が行われる。
このときにも、洗浄部42におけるのと同様にダライ屑Kが容器10内で良好に撹拌され、その良好な撹拌状態の下で、ダライ屑Kに対して内ノズル管148及び外ノズル管151のノズル部150から湯が噴射され、ダライ屑Kに付着していた洗浄液がダライ屑Kから湯洗により除去される。
【0082】
所定時間の湯洗動作が終了したところで、この湯洗部44においても内ノズル管148及び外ノズル管151が
図3中上向きに移動せしめられ、内ノズル管148が容器10から図中上向きに抜き出される。
その状態で湯洗部44のダライ屑Kが、容器10ごと隣接する次の下流側の水切部46へと移されて、そこでダライ屑Kに付着している水が水切りにより除去される。
【0083】
具体的には、容器10の回転と、容器10内に挿入された内ノズル管148及び容器10外部の外ノズル管151のノズル部150からのエアブローによって、ダライ屑Kが水切り処理される。
この水切部46においても、内ノズル管148からの外向き(軸直角方向外向き)のエアブローと、外ノズル管151からの内向きのエアブローとによってダライ屑Kの撹拌の効率、またこれに伴う水切りの効率が高められる。
更に容器10の周壁部12のメッシュ部に多く付着していた水が、外ノズル管151からのエアブローによって直接吹き飛ばされ、周壁部12メッシュ部分からの水切りが効果的に行われる効果も得られる。
このような水切り処理を終えたところで、ダライ屑Kが容器10ごと次の隣接した下流側の乾燥部48へと移される。
【0084】
乾燥部48では、内ノズル管148が容器10に対して軸線方向の外側から内部に挿入され、容器10の回転状態の下で、内ノズル管148のノズル部150から熱風が水平方向横向きと下向き、或いは上下向きその他適宜の方向に噴射される。
これによってダライ屑Kの乾燥が行われる。
尚、ここでは乾燥部48を1つだけ設けた例を示しているが、乾燥部48での乾燥処理には長い時間がかかり、その乾燥処理がダライ屑Kの洗浄処理全体の速度を遅くしてしまうのを防ぐべく、2つの乾燥部48を容器10の搬送方向に直列に設けておいて、ダライ屑Kの乾燥をそれら2つの乾燥部48のそれぞれに分担させるようになすことも可能である。
このようにして乾燥処理された後のダライ屑Kは、容器10ごと下流位置の搬出部52へと移され、更に下流工程へと搬出される。
【0085】
その下流工程では、洗浄処理したダライ屑Kの容器10からの取出しが行われる。
図12はその洗浄処理後のダライ屑Kの、容器10からの取出方法の一例を、取出装置の一例とともに示している。
【0086】
同図において、166はダライ屑Kの搬送手段としてのベルトコンベアで、170はその支持枠である。
ベルトコンベア166は、容器10から取り出されたダライ屑Kを図中左向きに搬送し、回収容器168へと落下させる。
支持枠170には容器10内のダライ屑Kを落下させる強制落下装置が組み付けられている。
この強制落下装置は、支持枠170に下向きに取り付けられた昇降シリンダ172を有している。
昇降シリンダ172は、下向きに延びたシリンダロッド173を有しており、その下端に4本の昇降ロッド174の下端が連結板176を介し連結されている。
他方、昇降ロッド174の上端部には、容器10に対する加振手段としての振動基板180が連結固定されている。
部分拡大図に示すように、振動基板180は平面視コ字形状をなし、その4隅に昇降ロッド174の上端が連結固定されているとともに、その下面側には加振源となる振動モータ178が取り付けられている。
【0087】
この例において、容器10からのダライ屑Kの取出しは次のようにして行う。
先ず容器10をベルトコンベア166上の所定位置(取出位置)まで移動させた上、同位置で横向き状態にある容器10を90°回転させて、開口部18を下向きとする。
これとともに昇降ロッド174を上昇させて振動基板180を容器10の図中下面に当接させる。
ここで昇降ロッド174の上昇運動は次のようにして行われる。即ちシリンダロッド173を引き込める方向に昇降シリンダ172を収縮動作させると、連結板176で繋がった4本の昇降ロッド174が上向きに一斉に上昇移動する。
そしてこれとともに昇降ロッド174の上端の振動基板180から容器10下面に、振動モータ178で発生させた振動が加えられる。
ここにおいて容器10内のダライ屑Kが、開口部18を通過して取り出され、ベルトコンベア166上に落下せしめられる。
落下したダライ屑Kは、ベルトコンベア166により
図12中左向きに送られて、その先端部から下方の回収容器168へと回収される。
尚、容器10を回転させて開口部18を下向きにした後、容器10内部の大部分のダライ屑Kを開口部18を通じ落下させた後において、昇降シリンダ172を作動させ、振動基板180を容器10の下面に当接させて容器10に振動を加えるようにしても良い。
このようにすることで、容器10から自重で落下できずに容器10内に残っていたダライ屑Kを、振動付加により容器10から排出させる(取り出す)ことができる。
【0088】
図13及び
図14は、ダライ屑Kの他の取出例を示している。
ここでは、
図13に示しているように振動基板180に対して取付枠182が図中下向きに突出する状態に固定されており、その取付枠182に対して突き棒184が上向きに、またこれを駆動する駆動シリンダ188が下向きに取り付けられている。
駆動シリンダ188は、下向きに延び出したシリンダロッド190の端部において、連結部材192により突き棒184の下端に連結されており、駆動シリンダ188の上下方向の収縮及び運動動作により突き棒184が上下移動させられるようになっている。
【0089】
この例では、突き棒184の上方に持ち来された容器10が、
図14(A)に示しているように横向き姿勢から下向き姿勢、即ち開口部18を下向きとする姿勢に90°回転せしめられる。
ここにおいてこの例では、駆動シリンダ188が収縮動作して突き棒184を上向きに突き上げる。
突き上げられた突き棒184は、容器10の開口部18を通過して容器10内部に突入せしめられる。
また同時に振動基板180に取り付けられていた振動モータ178で発生した振動が、振動基板180から容器10に加えられる。
尚、振動基板180の下面に振動モータ178が取り付けられている点は、
図12に示した例と同様である。
【0090】
内部にダライ屑Kを装入した容器10を回転させて開口部18を下向きにしたとき、容器10内部のダライ屑Kが一斉に開口部18に向って移動しようとする。そのため開口部18がダライ屑Kで塞がってしまうことが生じ得、そうなると単に容器10を回転させて開口部18を下向きにしただけでは、ダライ屑Kを落下させ、容器10から取り出すことができない。
【0091】
しかるにこの例では、突き棒184が開口部18を通過して強制的に容器10内部に突入せしめられ、また併せて振動モータ178からの振動が、振動基板180を介して容器10へと加えられる。
そしてこれらの動作によって容器10内部のダライ屑Kが円滑且つ良好に開口部18を通過して下方に落下せしめられる。
開口部18を通過して落下したダライ屑Kは、
図13(A)に示す傾斜したガイド194に案内されてベルトコンベア166上へと移動せしめられ、続いてベルトコンベア166による搬送によって
図12の回収容器168へと回収される。
【0092】
尚通常の場合、開口部18を下向きとした容器10の内部に突き棒184を突入させ、また振動モータ178からの振動を容器10に加えただけでは、容器10内部のダライ屑K全てを開口部18から落下させることは難しい。
そこでこの場合には
図14(C)で示すように容器10を一旦上向きとし、これにより開口部18周辺に残留していたダライ屑Kを容器10の底部側へと重力により落下させ、移動させる。
そしてその後において再び容器10を回転させて開口部18を下向きとし、その状態において再度突き棒184による突上げ動作,振動モータ178からの容器10への振動付加の動作を行う。
【0093】
以上のような2回目の繰返し動作を行った後、場合によって3回目或いは4回目の繰返しの動作を行う。
そうすることによって、容器10内のダライ屑Kを全て良好に開口部18を通じて落下させ、排出することができる。
尚、下向き状態にある容器10を一旦上向きとしたうえで、再び下向き状態として内部のダライ屑Kを取り出す動作を複数回繰り返してもよい点は
図12に示す例においても同様である。
これらの例においては、容器10内のダライ屑Kが既に十分に乾燥した状態にあるため、上記手段により容器10内より容易にダライ屑Kを取り出すことが可能である。
【0094】
以上のような本実施形態の洗浄処理設備は、ダライ屑Kを容器10から出して、これを搬送ラインに沿って移動させるものではなく、ダライ屑Kを容器10ごと洗浄部42から湯洗部44に、更に続いて水切部46,乾燥部48へと移動させて、それぞれにおいて洗浄,湯洗,水切り,乾燥の各処理を行うものであるため、ある材質のダライ屑Kを処理した後に、別のダライ屑Kを洗浄処理した場合においても、前に洗浄処理したダライ屑Kが洗浄処理ライン上に残って、これが次に処理される別材質のダライ屑Kに混入してしまうといったことを防ぐことができる。
【0095】
しかも洗浄から乾燥までの洗浄処理ラインを清掃することなく別材質のダライ屑Kの洗浄処理に切り替えることが可能であり、清掃のための負荷を無くし若しくは著しく低減することができる。
また清掃のための作業及び時間を要しないため、別材質のダライ屑Kの処理への切替えを含むダライ屑Kの洗浄処理のための全体の所要時間を短くすることができる。
【0096】
また本実施形態では、上記のように洗浄部42においてのダライ屑Kの洗浄処理を効率高く行うことができ、ダライ屑Kの表面に付着していた切削油やごみ等を含む汚れを十分に除去し得て、ダライ屑Kを十分に清浄化することができる。
【0097】
更に湯洗部44,水切部46,乾燥部48においても、容器10内のダライ屑Kを十分に撹拌しながら湯洗や水切り,乾燥の各処理を行うことができるため、それら湯洗,水切り,乾燥の処理を高効率で良好に行うことができる。
【0098】
またこの実施形態の洗浄処理設備は、ダライ屑Kをバッチ処理するものではなく、容器10の連続的な移動を伴ってダライ屑Kに対する各処理を連続して次々と行って行くことができるため、処理の能力が高く、短時間且つ低コストでダライ屑Kの洗浄のための各処理を行うことができる。
【0099】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。例えば本発明の洗浄設備はダライ屑のみならず、打ち抜き屑その他の金属加工屑の洗浄に用いることも可能であるなどその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。