(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、振動部の少なくとも一端に接続されてその振動部から並行して延びる複数の梁を備えた構成とし、振動部を複数の梁により安定して支持することで、安定した振動を実現できる。たとえば、振動部に鏡面を設ければ、安定した光走査を実現することができる。なお、さらに安定した振動(光走査)を実現するために、振動部の一端および他端のそれぞれから並行して延びる複数の梁が設けられてもよい。
【0011】
以下、振動部の一端に接続されて当該振動部から並行して延びる複数の梁を備えた振動装置の一例として、
図1は光走査装置1を示している。
図2は振動ミラー10の分解斜視図である。本実施形態の梁は、第1の金属梁として機能するねじり梁11、第2の金属梁として機能するねじり梁12とで構成され、これらねじり梁11、12が平行して延びた構成としている。なお、ねじり梁11、12はその一部が導電性部材により形成されていれば十分であり、全体が導電性部材により形成されていなくてもよい。
図1、
図2において、ねじり梁11、12は、同形状であり、回転軸Lに対して対称に配置されている。このような対象配置を採用することで、たとえば、振動部に相当する振動ミラー10の振動を安定させやすくなる。ねじり梁11、12の各一端は絶縁性の固定部材31に固定されている。ねじり梁11、12の各他端は、振動部の少なくとも一部を構成する質量体20を構成する第1の導電性部材13に電気的に接続されている。質量体20は、光を走査する鏡面として機能するミラー21、22と磁石41を有した振動体である。質量体20は、回転軸Lを中心に回転振動する。磁石41および駆動コイル51は、質量体20に回転振動を励起する励起手段として機能する。駆動コイル51には、駆動回路244からの第1の周波数f1の駆動電流が通電され、磁界を発生する。磁石41が発生する磁界(磁力線)と駆動コイル51が発生する磁界(磁力線)とが作用しあうことで、質量体20には回転軸Lを中心にした回転トルクが発生する。ねじり梁11、12はそれぞれ第2の導電性部材および第3の導電性部材の一例である。ねじり梁11、12の各一端は第1の導電性部材13に接続されており、各他端は、第2の周波数f2の駆動電流を発生して出力する駆動回路243に接続されている。
【0012】
図2が示すように質量体20は、第1の導電性部材13を挟むようにミラー21、22が取り付けられている。ねじり梁11、12は第1の導電性部材13を介して電気的に接続され、電流ループを形成している。ねじり梁11、12および第1の導電性部材13は、同じ金属材料で一体に成形されてもよい。これは、製造コストに関して有利となる。材料としては、たとえば、ステンレス材や銅合金のほか、Co−Ni基合金などを採用してもよい。ミラー21、22は、シリコンウエハを主材としてもよい。この場合、主材の表面に増反射膜を成膜することで鏡面が形成される。ミラー21、22は、導電性部材を主材とし、導電性部材のうえ反射膜が成膜されてもよい。この場合、ミラー21、22が第1の導電性部材13として兼用され、部品点数を削減できる。
【0013】
図3は、駆動周波数に対する振幅特性(周波数特性)を示す図である。横軸は振動ミラー10の周波数であり、縦軸は振動ミラー10の振幅である。W1は温度T1における周波数特性を示している。W2、W3は温度T2における周波数特性を示している。駆動回路243は、振動ミラー10の環境温度が温度T1のときに駆動周波数f1の値を共振周波数fs1に設定することで、振動ミラー10の動作点はP1からP2に移動する。つまり、振動ミラー10は、共振点付近で駆動される。
【0014】
ところで、金属材料を主材としたねじり梁11、12は、温度に依存してヤング率が変化する。そのため、周囲の発熱や気流のできかたによりねじり梁11、12のばね特性が変動し、その結果、回転振動の共振周波数が変動する。たとえば、環境温度がT1からそれよりも高いT2に変化したとすると、周波数特性がW1からW2に変動する。すなわち、金属製の梁(ここでは、ねじり梁11、12)は、通電によってばね特性を可変できることから、通電条件によってばね特性を調整することが可能なる。
【0015】
駆動回路243が第1の周波数f1の駆動電流の振幅(電流量)を一定に制御することで、振動ミラー10には一定の駆動力が付与される。この条件の下で、共振周波数fs1からfs2へ変動する(周波数特性がW1からW2に変動する)と、振動ミラー10は共振周波数fs2から外れた駆動周波数fs1で駆動される(動作点P3)。そのため、走査振幅が変動してしまい、ジッタの原因となる。
【0016】
振動ミラー10の振動振幅をフィードバックして駆動電流の電流量を制御することで、振動振幅を一定にすることができる。しかし、周波数特性W2上で極大値をとる共振周波数fs2付近の周波数を駆動周波数f1とすれば、振幅変動が小さくなり、振幅制御が安定する。ただし、共振周波数fs2から外れた駆動周波数では振幅変動が大きくなるため、振動振幅の制御性が低下し、ジッタの増大に繋がる。
【0017】
そこで、本実施形態では、温度変化やコイルに発生する逆起電力の位相などから共振周波数を検出し、検出した共振周波数が所望の共振周波数に近づくように駆動回路243がねじり梁11、12を加熱することで、ねじり梁11、12のばね特性を安定化することができる。たとえば、ねじり梁11、12の温度が環境温度よりも高い所定の温度に維持すれば、共振周波数の温度ドリフトが抑えられ、安定した光走査を実現することができる。なお、所望の共振周波数とは、環境温度よりも高い所定の温度に対応した周波数特性上の共振周波数である。
【0018】
図4は、光走査装置1の制御部の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、駆動コイル51を振動ミラー10の振動振幅や共振周波数を検出するための検出コイルとして共用するため、スイッチ210が設けられている。なお、駆動コイル51とは別に専用の検出コイルが設けられてもよい。制御回路204はスイッチ切り替え信号を出力することで、駆動回路243と駆動コイル51とを接続したり、増幅回路201と駆動コイル51とを接続したりする。
【0019】
制御回路204は、振動ミラー10の共振周波数を検出する周波数検出回路241と、上述した駆動回路243、244を有している。駆動コイル51は、スイッチ210を介して増幅回路201に接続されている。増幅回路201は、駆動コイル51が出力する検出信号Vdを増幅する。制御回路204が第1の駆動電流を供給することで振動ミラー10が振動しているときに駆動電流の供給を停止すると、振動ミラー10が減衰振動を開始する。減衰振動に伴う磁石41の回転によって、駆動コイル51には逆起電力が発生し、逆起電力に応じた検出信号Vdが駆動コイル51から出力される。このように、制御回路204は、駆動力印加手段(駆動回路243など)を停止させて、振動ミラー10に減衰振動を開始させる制御手段として機能する。なお、振動ミラー10は、振幅に依存した共振周波数で減衰振動する。
【0020】
増幅回路201の後段にはパルス化回路202とピークホールド回路203とが接続されている。パルス化回路202は、増幅回路201により増幅された検出信号Vdを2値化してパルス信号Pdを生成する。このパルス信号Pdの周期は検出信号Vdの周期に一致している。パルス信号Pdの周期は振動ミラー10の減衰振動の周期に相当するため、周波数検出回路241でパルス信号Pdの周期を測定すれば、振動ミラー10の減衰振動の周期(その逆数が共振周波数)が判明する。このようにして周波数検出回路241は振動ミラー10の共振周波数を測定する。
【0021】
ピークホールド回路203は、検出信号Vdの振幅のピーク値Vphをホールドして制御回路204に出力する。ピーク値Vphは振動ミラー10の振動振幅に対応している。よって、ピークホールド回路203は、振幅検出手段として機能する。
【0022】
制御回路204は、CPUとメモリを有し、入力されたパルス信号Pdおよび検出信号Vdの振幅のピーク値Vphに基づいて第1の周波数f1や第2の周波数f2を設定する。周波数検出回路241、駆動回路243、244は、メモリに記憶されているプログラムをCPUが実行することで実現されてもよいし、のハードウエアによって実現されてもよい。
【0023】
制御回路204は、ときどき駆動電流の供給を停止することで、振動ミラー10の共振周波数を測定し、共振周波数がある範囲を超えて変動したかどうかを監視してもよい。たとえば、
図5が示すように、温度変動により周波数特性がW1からW2に移行すると、共振周波数がfs1からfs2に変動する。
図5の例では、初期状態でねじり梁11、12が雰囲気温度よりも高い温度となるように加熱されており、時間の経過とともにねじり梁11、12の温度が低下したことで、周波数特性がW1からW2に移行したことを示している。
【0024】
制御回路204は、|fs1−fs2|が所定の閾値を超えると、第2の周波数f2の駆動電流を駆動回路244に生成させ、ねじり梁11、12に印加する。これにより、ねじり梁11、12が加熱されて所望の温度に維持される。つまり、振動ミラー10の周波数特性が所望の周波数特性W1に維持される。これにより、振動ミラー10の振動振幅も目標振幅Adrvに維持される。
【0025】
駆動回路244が出力する駆動電流の周波数は、第1の周波数f1とは異なる第2の周波数f2である。また、第2の周波数f2の駆動電流は、DC(直流)電流であってもよい。第2の周波数f2は、振動ミラー10のねじりおよび撓みの共振モードの周波数と重ならない周波数に設定されうる。これにより、フィードバック制御が安定し、ジッタをさらに低減することができるだろう。
【0026】
図1に示した光走査装置1では固定部材31とねじり梁11、12の接触部は絶縁されている。しかし、ねじり梁11とねじり梁12のうちいずれか一方と固定部材31との接触部だけを絶縁性とし、固定部材31のそれ以外の部分は導電性としてもよい。この場合、固定部材31を接地電極として使用することが可能となる。なお、固定部材31側ではなく、ねじり梁11、12側の接触部に絶縁性の部材が設けられてもよい。
【0027】
図6は、光走査装置1の他の構成例を示す図である。
図6において
図1と共通する部分の説明は省略する。
図6において、振動ミラー10の質量体20は、反射膜が形成された導電性部材13によって構成されている。質量体20からは、平行に延びる2本のねじり梁11、12が設けられている。ねじり梁11、12は導電性部材13によって電気的に接続されている。
【0028】
ねじり梁11、12の脇には磁石42、43が配置(併設)されている。磁石42、43が発生する磁界がねじり梁11、12を流れる電流に作用する。
図6において、駆動回路243、
244は、駆動回路245として一体化されており、第1の周波数f1の駆動電流と第2の周波数f2の駆動電流とが重畳された駆動電流をねじり梁11、12に通電する。第1の周波数f1は振動ミラー10の回転振動モード近傍の周波数であり、第2の周波数f2は振動ミラー10の共振モードと重ならない周波数である。ねじり梁11、12および導電性部材13によって電流ループが形成されているため、第1の周波数f1の駆動電流はねじり梁11、12を通過する際に磁石42、43からの磁界による作用を受ける。その結果、振動ミラー10に回転軸Lを中心にした回転トルクが励起される。第2の周波数f2の駆動電流はねじり梁11、12を加熱させるため、ねじり梁11、12の温度が環境温度よりも高い所定の温度に維持される。その結果、ねじり梁11、12のばね特性が所望の特性に安定する。このときの制御方法はすでに説明したとおりである。
【0029】
図6に示した光走査装置1では、最も高速で動作する質量体20の周囲に、電磁駆動方式の振動ミラーで必要であった駆動コイル51や磁石41等がなく、気流の乱れを低減することができる。気流の乱れが少なくなれば、温度変化も小さくなろう。たとえば、2本のねじり梁11、12を平行に設けることで、軸ブレの抑制効果が得られるとともに、さらにジッタの低減を図ることができる。すなわち、梁に通電が可能となるため、梁の温度が調整可能となり、安定した振動特性となるように調整が可能となる。また、本実施例は、上述した光走査装置に限定されず、梁によって振動部を振動可能に支持した振動装置に適用され、梁への通電条件を制御することにより、安定した振動特性が実現されてもよい。なお、本実施例を光走査装置に適用した場合、梁の温度が環境温度よりも高い所定の温度に維持可能となるため、共振周波数の温度ドリフトが抑えられ、安定した光走査が実現されうる。
【0030】
図7、
図8は第1の周波数f1の駆動電流および第2の周波数f2の駆動電流を用いた制御方法の一例を示す図である。ここでは、初期状態(
図8の時刻t0)における周波数特性がW1であり、共振周波数がfs1であると仮定する。
【0031】
時刻t0において制御回路204は第1の駆動周波数f1をfs1に設定し、駆動電流を出力している。一方で、制御回路204は、振動ミラー10の共振周波数を所望の共振周波数fs2に調整するために、第2の周波数f2の駆動電流の出力を開始する。
【0032】
時刻t0から時刻t1にかけて、制御回路204は、振動ミラー10の共振周波数を監視しながら、徐々に第2の周波数f2の駆動電流の電流量を増加する。これにより、ねじり梁11、12が加熱され、その温度が上昇する。なお、この期間において、第1の周波数f1の駆動電流については、周波数も電流量も一定に制御される。
【0033】
時刻t1において、制御回路204は、共振周波数がfs2になったことを確認すると、電流量の増加を停止する。
図7によれば、時刻t1で周波数特性がW1からW2に遷移している。
【0034】
時刻t2で、制御回路204は、振動ミラー10の振動振幅を目標振幅Adrvに移行させるための振幅制御を開始する。つまり、周波数特性をW2からW2’に遷移させる。制御回路204は、振動ミラー10の振動振幅を目標振幅Adrvに近づけるために、第1の駆動周波数f1の駆動電流の電流量を徐々に増加させてゆく。制御回路204は、ピーク値Vphを監視することで、振動ミラー10の振動振幅を目標振幅Adrvになったかどうかを判定する。時刻t3において、振動ミラー10の振動振幅を目標振幅Adrvに到達する。つまり、周波数特性がW2’になる。
【0035】
なお、
図6に示した実施形態では、第1の駆動周波数f1と第2の駆動周波数f2とが重畳されてねじり梁11、12に印加されるため、第1の駆動周波数f1も加熱に寄与する。そこで、時刻t2からt3において、制御回路204は、第1の駆動周波数f1の駆動電流の電流量を増加させた分だけ、第2の駆動周波数f2の駆動電流の電流量を減少させる。これにより、制御回路204は、第1の駆動周波数f1の駆動電流による電力量と第2の駆動周波数f2の駆動電流による電力量との合計が一定の電力量になるようにこれらの電流量を制御する。その結果、ねじり梁11、12に生じるジュール熱が一定になるため、共振周波数が一定の共振周波数に維持される。よって、時刻t3以降は、制御回路204が、電力量のみを増減することで、振動ミラー10の振動振幅を目標振幅Adrvに維持する。
【0036】
図1や
図6に示した光走査装置1は質量体20を片側で支持する、いわゆる片持ち構成を採用している。一方、
図9(A)および
図9(B)が示すように、質量体20の両側にねじり梁11a、11b、12a、12bが設けられる、いわゆる両持ち構成が採用されてもよい。
図9(A)および
図9(B)によれば、ねじり梁11a、12aに対して磁石42a、43aが設けられ、ねじり梁11b、12bに対して磁石42b、43bが設けられている。これにより、回転軸Lを中心にした回転トルクが発生する。その結果、
図10に示すように鏡面を設けられた質量体20が回転振動する。
【0037】
なお、
図9(A)と、
図9(B)とでは、磁石42a、43aの磁界の方向が反転しているため、駆動回路245と、ねじり梁11a、11b、12a、12bとの接続が異なっている。
図9(A)、
図9(B)には、ねじり梁11a、11b、12a、12bを支持する固定部材31が示されているが、これは図示が省略されているにすぎない。その他の点も、基本的に
図1ないし
図8で説明したとおりである。
【0038】
(ねじり梁の2本の梁部材により構成する効果)
上述したように、最大走査速度を低下させることなく振動ミラーを小型化するには、ミラーを有する振動体(質量体)を軽量にするとともに、ねじり梁を細く、かつ、短くしなければならない。しかし、振動体が軽量になると空気抵抗の影響を受けやすくなり、ねじり梁に軸ブレが発生しやすくなる。たとえば、質量体20を数k〜数十kHzの高速な周波数で回転振動させると、空気抵抗の影響を大きく受ける。また、空気抵抗を避けるようにミラーが移動しようとする。そのため、ねじり梁の剛性が低いと、ねじり梁が変形して撓み振動が発生し、振動特性が変動してしまう。つまり、ねじり梁の剛性が低下することで、やはりねじり梁に軸ブレが発生しやすくなる。軸ブレは回転振動の振幅にジッタをもたらす。質量体の両側をねじり梁で支持する「両持ち構造」よりも、質量体の片側のみをねじり梁で支持する片持ち構造は、小型化に有利である。しかしながら、両持ち構造よりも片持ち構造でジッタが大きくなりやすい。
【0039】
本実施形態によれば、
図1、
図2、
図6、
図9、
図10に示したように、質量体20の一方の片側を少なくとも2本の平行な梁部材(ねじり梁11、12)で支持する構造が採用されている。これにより、ジッタを低減して、安定した光り走査が実現されている。とりわけ、ねじり梁11、12は固定部材31から質量体20まで平行に延びる構造を採用することで、ジッタを削減しやすくなっている。さらに、
図9、
図10に示したように、両持ち構造においても2本の平行な梁部材(ねじり梁11a、11b、12a、12b)で支持することで、さらに、ジッタを削減しやすくなる。なお、本実施形態の技術的効果を確かめるために、比較例と本実施形態とについて実験を行った。
【0040】
図11(A)は、比較例の振幅変化率(ジッタの実測値)を示す図である。
図11(B)は、本実施形態の振幅変化率を示す図である。比較例は、
図1に示した振動ミラー10を一本のねじり梁で構成した例である。本実施形態は、
図1に示した振動ミラー10である。
図11(A)と
図11(B)とを比較してみると、本実施形態では比較例よりも大幅にジッタが削減されていることがわかる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の振動ミラー10は、光を走査するための鏡面を有する質量体20を備えている。
図1、
図2、
図6、
図9、
図10に示したように、質量体20の一方の片側には2本の梁部材としてねじり梁11、12が結合している。ねじり梁11、12は、質量体20から平行に延びている。これにより、安定した光走査を実現できる。上述したようにねじり梁を小型化するために、質量体20を軽量にするとともに、ねじり梁を細く、かつ、短くすると、ジッタが大きくなりやすい。本実施形態では、質量体20を平行な2本の梁部材で支持されているため、回転軸Lがぶれにくくなり、質量体20の振動が安定する。つまり、質量体20の鏡面による光の走査が安定する。
【0042】
図9、
図10を用いて説明したように両持ち構造に本発明を適用してもよい。質量体20の一方の片側は質量体20から平行に延びる2本のねじり梁11a、12aを有する第1の梁によって支持され、質量体20の他方の片側は質量体20から平行に延びる2本のねじり梁11b、12bを有する第2の梁で支持される。つまり、質量体20の両側に2本の平行な梁部材を設けることで、片持ち構造よりもさらに安定した光り走査を実現できる。ただし、小型化の観点からは片持ち構造のほうが両持ち構造よりも有利である。
【0043】
ねじり梁11、12(ねじり梁11a、11b、12a、12b)は金属材料により形成されていてもよい。また、これらの梁を支持および固定する固定部材31は金属材料により形成されていてもよい。この場合、2本の梁部材のうち1本の梁部材のみが固定部材31に対して電気的に導通していてもよい。これは、固定部材31を接地電極などの電極部材として利用できる利点がある。
【0044】
図6や
図11に示したように、質量体20を回転振動させるための磁界を発生する磁石42、43は、質量体20の回転軸Lに直交し、質量体20を通る回転面から離れた位置に配置されてもよい。つまり、磁石42、43はねじり梁11、12(ねじり梁11a、11b、12a、12b)に近接して配置されてよい。このような配置により、磁石42、43に起因した、質量体20が回転振動することによる気流の乱れを削減することが可能となる。つまり、光走査がさらに安定することになる。
【0045】
図6や
図11に示したように、質量体20を回転振動させるための磁界を発生する磁石42、43は、2本の梁部材に対して平行に設けられており、2本の梁部材に流れる駆動電流に作用する磁界を発生してもよい。このような配置も気流の乱れを低減しつつ、効率よく振動ミラー10を駆動する上で有利である。
【0046】
さらに、振動ミラー10の制御方法を工夫することで、さらに光走査を安定させることができる。
図2などに示したように、質量体20は、光を走査するための鏡面と第1の導電性部材13とを有している。梁は、質量体20に結合され、第1の導電性部材13を介して電気的に接続された第2の導電性部材であるねじり梁11と、第3の導電性部材であるねじり梁12を有している。
図1によれば、駆動コイル51が、第1の周波数f1の駆動電流により質量体20に回転振動を励起する励起手段として機能する。
図6、
図9によれば、ねじり梁11とねじり梁12が励起手段として機能している。駆動回路244、245は、第1の周波数f1の駆動電流とは異なる第2の周波数f2の駆動電流をねじり梁11とねじり梁12に流して梁を発熱させる通電手段として機能している。これにより、梁の温度が環境温度よりも高い所定の温度に維持されるため、共振周波数の温度ドリフトが抑えられ、安定した光走査を実現することができる。
【0047】
制御回路204は、第1の周波数f1の駆動電流および第2の周波数f2の駆動電流を制御する制御手段として機能する。とりわけ、第2の周波数f2の駆動電流をねじり梁11とねじり梁12に流して梁を発熱させることで、ねじり梁11とねじり梁12が所望の温度に維持されるため、周波数特性も所望の周波数特性に維持される。その結果、ジッタが小さくなり、光走査が安定する。
【0048】
図4によれば、梁の共振周波数を検出する周波数検出手段として、駆動コイル51や周波数検出回路241が機能している。周波数検出手段としては、フォトセンサや歪ゲージが採用されてもよい。
図5や
図7を用いて説明したように、制御回路204は、周波数検出回路241により検出された共振周波数が所定の共振周波数に近づくよう第2の周波数f2を調整する調整手段として機能してもよい。
図8を用いて説明したように、第2の周波数f2を一定に維持しつつ、第2の周波数f2の駆動電流の電流量を調整することで、振動ミラー10の共振周波数が所定の共振周波数に設定される。その結果、ねじり梁11とねじり梁12の温度を所望の温度に維持することが可能となる。ねじり梁11とねじり梁12の温度が所望の温度に維持されば、振動ミラー10のジッタが減少する。
【0049】
図4によれば、質量体20の回転振動の振幅を検知する振幅検知手段として、駆動コイル51やピークホールド回路203が機能している。
図7を用いて説明したように、制御回路204は、周波数検出回路241により検出された共振周波数が所定の共振周波数に一致すると、少なくとも第1の周波数f1の駆動電流の量の調整を開始する。これにより、ピークホールド回路203によって検知される質量体20の回転振動の振幅が、目標振幅Adrvに近づけられる。このように、制御回路204は、振幅制御手段としても機能する。なお、駆動コイル51は、質量体20に設けられた磁石41によって、質量体20の共振周波数に応じた逆起電力が発生するコイルの一例である。
図1において、駆動コイル51は、質量体20の外部に設けられている。
図1によれば、質量体20は、駆動コイル51が発生する磁力線と作用する磁力線を発生する磁石41を有している。
【0050】
励起手段は、第1の導電性部材13と、ねじり梁11と、ねじり梁12とによって形成されたループであってもよい。この場合、第1の周波数f1の駆動電流と第2の周波数f2の駆動電流とが重畳されてループに通電されることで、ねじり梁の加熱と振動ミラー10の駆動力の発生とが同時に実現される。なお、ループが発生する磁界と作用する磁界は、振動ミラー10の外部に設けられた磁石42、43から発生する。磁石41、42、43を永久磁石とすることで製造コストを低減できるが、磁石41、42、43を電磁石などとすることを除外する意思はない。
【0051】
本実施形態において、ねじり梁は、第1の金属梁であるねじり梁11と、第2の金属梁であるねじり梁12とによって構成されてもよい。これにより第1の導電性部材13、ねじり梁11、ねじり梁12を同一の金属材料からプレス加工により製作可能となり、振動ミラー10の製造が容易になる。これは製造コストを削減することにも寄与する。
【0052】
図8を用いて説明したように、制御回路204は、第1の周波数f1の駆動電流と第2の周波数f2の駆動電流とを調整することで、第1の周波数f1の駆動電流と第2の周波数f2の駆動電流とによって発生するジュール熱を制御してもよい。とりわけ、第1の周波数f1の駆動電流と第2の周波数f2の駆動電流とが重畳される場合は、第1の周波数f1の駆動電流も加熱に寄与する。よって、第1の周波数f1の駆動電流を調整して振動ミラー10の振動振幅が目標振幅Adrに一致すると、それに応じて第2の周波数f2の駆動電流が調整される。これにより、ねじり梁11、12が一定の温度に維持される。つまり、振動ミラー10の周波数特性が所望の周波数特性に維持され、ジッタが減少する。
【0053】
図1、
図6に示したように、ねじり梁11、12は、質量体20の回転面から見て片側にのみ設けられてもよい。また、
図9に示したように、ねじり梁11、12は、質量体20の回転面から見て両側に設けられてもよい。回転面とは、回転軸Lに直交した平面であって、質量体20の中心を通る平面である。
【0054】
上述した実施形態では、第1の周波数および第2の周波数の駆動信号の振幅の制御について電流制御を適用する例を用いて説明したが、電圧制御が採用されてもよい。いずれの場合でも電力量を制御できるからである。
【0055】
(その他)
振動ミラー10の振動振幅や共振周波数を検出するセンサとしては、他のセンサが使用されてもよい。たとえば、ミラー21およびミラー22のうち一方を光の走査に利用し、他方を振動の検出に利用してもよい。この場合、他方のミラーに対して光源から光を照射し、そのミラーからの反射光をフォトセンサで検出することで、検出信号Vdが得られる。さらに、駆動方法と検出方法の組み合わせも限定されるものではない。たとえば、電磁駆動方式の振動ミラー10に対して、歪ゲージを設け、歪ゲージによって梁の捩れを検出してもよい。この場合は、歪ゲージからの出力信号が検出信号Vdとして使用される。
【0056】
図12は、光走査装置1を備えた画像形成装置2を示す。光源330から射出されたレーザー光は、射出光学系320を通過した後に振動ミラー10によって走査される。さらにレーザー光は、結像光学系321により感光体310上を主走査方向に走査する。感光体310が回転することで副走査が実行される。これにより、感光体310に静電潜像が形成される。静電潜像は、その後、現像装置によりトナーが付与されて、トナー像へと現像される。トナー像は転写装置によって記録材上に転写され、定着装置によって定着される。
【0057】
制御回路205は、上述した制御回路204を内包しており、さらに、光源330を制御するとともに、フォトセンサ300、301からの光検出信号に応じて振動ミラー10の振幅が一定の振幅となるように制御する。検出回路200には、上述した増幅回路201、パルス化回路202およびピークホールド回路203を内包している。制御回路205は、1枚の画像が形成される毎に、振動ミラー10の駆動周波数f1、f2や電流量を調整してもよい。制御回路205は、光源330にレーザー光の出力を停止させ、さらに振動ミラー10の駆動信号の出力も停止する。これにより、振動ミラー10は減衰振動を開始する。上述した方法にしたがって検出回路200は振動ミラー10の振動振幅に連動した検出信号Vdから、ピーク値Vphとパルス信号Pdを制御回路205に出力する。制御回路205は、ピーク値Vphとパルス信号Pdに基づき共振周波数fを求める。駆動回路243は、設定された駆動周波数fの駆動信号を生成して出力する。なお、制御回路205は、感光体310の回転速度などの画像形成速度に係わる画像形成装置2の本体クロックを駆動周波数fに合わせて調整する。その後、制御回路205は、光源330を駆動してレーザー走査を行い、フォトセンサ300、301の出力信号の時間間隔に基づいて、振動ミラー10の振動振幅が目標振幅となるように駆動信号Drvの振幅を微調整する。これにより、ジッタなどの振動状態の変動を抑えることができる。
【0058】
本実施形態の光走査装置1を画像形成装置2に適用することで、温度などの環境変化に追従して駆動周波数を調整できるため安価で信頼性の高い画像形成装置2を提供できる。また、ジッタの少ない光走査が実行されるため、形成される画像の品質も所望の品質に維持できる。
【0059】
図13は、光走査装置1を用いた映像投射装置3を示す。光源装置331は、RGB3色のレーザー光源を有している。光源装置331から射出されたレーザー光は、振動ミラー10によって水平方向に20kHz近傍の周波数で走査される。レーザー光はさらに、垂直走査装置340によって60Hz程度の周波数で垂直走査される。これらによって2次元的走査が実現され、スクリーン350上に映像が投射される。
【0060】
制御回路206は、上述した制御回路204を内包している。検出回路200には、上述した増幅回路201、パルス化回路202およびピークホールド回路203を内包している。制御回路206には映像信号源360から映像信号が入力される。制御回路206は、映像信号に応じて光源装置331を駆動する。また、制御回路206は、フォトセンサ303の出力信号に基づいて光源装置331の発光タイミングを調整する。
【0061】
制御回路206に内包されている制御回路204は、上述した手順で駆動周波数を調整する。駆動周波数の調整タイミングは、定期的であってもよいし、映像信号源360から信号が入力されたタイミングであってもよい。制御回路206は、光源装置331のレーザー出力を停止させるとともに、振動ミラー10の駆動信号の供給を停止する。これにより、振動ミラー10は減衰振動を開始する。上述した方法にしたがって検出回路200は振動ミラー10の振動振幅に連動した検出信号Vdから、ピーク値Vphとパルス信号Pdを制御回路206に出力する。制御回路206は、ピーク値Vphとパルス信号Pdに基づき共振周波数fを求め、求めた共振周波数fを駆動回路の駆動周波数として設定する。制御回路206は、振動ミラー10の駆動周波数に同期するように、垂直走査装置340の駆動周波数も調整する。駆動周波数の調整が終了すると、制御回路206は、光源装置331の駆動を再開するとともに、振動ミラー10および垂直走査装置340の駆動も再開する。本実施形態によれば、ジッタの少ない光走査が実行されるため、投影される画像の品質も所望の品質に維持できる。