特許第6224435号(P6224435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6224435誘電体磁器組成物及びそれを含む積層セラミックキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6224435
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】誘電体磁器組成物及びそれを含む積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/47 20060101AFI20171023BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20171023BHJP
   H01G 4/232 20060101ALI20171023BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C04B35/47
   H01G4/12 358
   H01G4/12 361
   H01G4/30 301E
   H01G4/30 301C
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-241161(P2013-241161)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-51909(P2015-51909A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0106682
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(73)【特許権者】
【識別番号】509017594
【氏名又は名称】成均館大学校 産学協力団
【氏名又は名称原語表記】Research & Business Foundation Sungkyunkwan University
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ソク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、デ ホ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】正木 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドゥー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム、サン フク
(72)【発明者】
【氏名】リム、ジョン ボン
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−068000(JP,A)
【文献】 特開平02−028304(JP,A)
【文献】 特開平09−055332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/46−35/493
H01B 3/12
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、前記xは0.5≦x≦0.9を満た
前記MはMg0.5Ti0.5で表される、
誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である0.5〜3.0モルの第1副成分をさらに含む、請求項1記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含む、請求項1又は2に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
前記誘電体磁器組成物の常温誘電率は1000以上である、請求項1からのいずれか1項に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項5】
誘電体層と第1及び第2内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、
前記セラミック本体の両端部に形成され、前記第1及び第2内部電極と電気的に連結される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、
SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、前記xは0.5≦x≦0.9を満たす誘電体磁器組成物を含
前記MはMg0.5Ti0.5で表される、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である0.5〜3.0モルの第1副成分をさらに含む、請求項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含む、請求項5又は6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記誘電体磁器組成物の常温誘電率は1000以上である、請求項からのいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
誘電体層と第1及び第2内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、
前記セラミック本体の両端部に形成され、前記第1及び第2内部電極と電気的に連結される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、
常温誘電率が1000以上であり、DC電界が0Vから5V/μmに変化するとき、誘電定数(εr)の変化率が10%以下を満たす誘電体磁器組成物を含
前記誘電体磁器組成物は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、前記xは0.5≦x≦0.9を満たし、
前記MはMg0.5Ti0.5で表される、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である0.5〜3.0モルの第1副成分をさらに含む、請求項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含む、請求項9又は10に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記第1及び第2内部電極はパラジウム(Pd)またはパラジウム(Pd)合金を含む、請求項から11のいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化のない高誘電率誘電体磁器組成物及びそれを含む積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、キャパシタ、インダクター、圧電素子、バリスタ、またはサーミスタなどのセラミック材料を使用する電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体と、本体の内部に形成された内部電極と、上記内部電極と接続されるようにセラミック本体の表面に設けられる外部電極と、を備える。
【0003】
セラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタは、積層された複数の誘電体層と、一つの誘電体層を介して対向配置される内部電極と、上記内部電極に電気的に接続された外部電極と、を含む。
【0004】
積層セラミックキャパシタは小型で、且つ高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、コンピューター、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く用いられている。
【0005】
一般的に、積層セラミックキャパシタは、内部電極用ペーストと誘電体層用ペーストをシート法や印刷法などにより印刷して積層した後、一緒に焼成することで製造される。
【0006】
従来の積層セラミック高容量キャパシタなどに用いられる誘電体材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)に基づいた強誘電体材料であって、常温で高い誘電率を有し、且つ損失率(Dissipation Factor)が比較的に小さく、絶縁抵抗特性に優れるという特徴がある。
【0007】
しかし、上記誘電体材料として強誘電体(Ferroelectric)材料を使用すると、粒子サイズが小さくなるに伴って誘電率が減少し、時間経過とともに誘電率が減少するエージング(Aging)特性を有し、直流(DC)電界が印加される場合に誘電率が減少する特性を有する。
【0008】
また、還元性雰囲気下で焼成すると、上記誘電体層が還元されて半導体化したり、絶縁抵抗(IR)が低くなるという問題がある。
【0009】
実際、装置回路において積層セラミックキャパシタは大部分直流(DC)電圧が印加された環境で使用されているため、直流(DC)電界で高い容量を具現する必要がある。
【0010】
また、高容量積層セラミックキャパシタが開発されるにつれ、誘電体層が次第に薄くなり、単位厚さ当たりに印加される直流(DC)電界の大きさが次第に大きくなっている。
【0011】
従って、次第に大きくなる直流(DC)電界による誘電率の変化のない常誘電体(Paraelectric)材料を誘電体材料として使用するための試みがあった。
【0012】
上記常誘電体材料は、強誘電体材料に比べて粒子サイズによる誘電率の変化がなく、時間経過とともに誘電率が減少するエージング(Aging)特性がなく、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化がないという特性がある。
【0013】
しかし、常誘電体材料は、強誘電体材料より誘電率が低いという問題があり、その適用に限界がある。
【0014】
従って、直流(DC)電界で高い容量を具現するためには、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化のない常誘電体(Paraelectric)材料であって、誘電率の高い材料が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国公開特許第1999−0075846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化のない高誘電率誘電体磁器組成物及びそれを含む積層セラミックキャパシタに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施形態は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、上記xは0.5≦x≦0.9を満たす誘電体磁器組成物を提供する。
【0018】
上記Mは、Mg0.5Ti0.5で表されることができる。
【0019】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である0.5〜3.0モルの第1副成分をさらに含んでもよい。
【0020】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含んでもよい。
【0021】
上記誘電体磁器組成物の常温誘電率は1000以上であってもよい。
【0022】
本発明の他の実施形態は、誘電体層と第1及び第2内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、上記セラミック本体の両端部に形成され、上記第1及び第2内部電極と電気的に連結される第1及び第2外部電極と、を含み、上記誘電体層はSrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、上記xは0.5≦x≦0.9を満たす誘電体磁器組成物を含む積層セラミックキャパシタを提供する。第1内部電極と第2内部電極は、誘電体層を介して交互に積層されてもよい。
【0023】
上記MはMg0.5Ti0.5で表されることができる。
【0024】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である0.5〜3.0モルの第1副成分をさらに含んでもよい。
【0025】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含んでもよい。
【0026】
上記誘電体磁器組成物の常温誘電率は、1000以上であってもよい。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態は、誘電体層と第1及び第2内部電極が交互に積層されたセラミック本体と、上記セラミック本体の両端部に形成され、上記第1及び第2内部電極と電気的に連結される第1及び第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は常温誘電率が1000以上であり、DC電界が0Vから5V/μmに変化するとき、誘電定数(εr)の変化率が10%以下を満たす誘電体磁器組成物を含む積層セラミックキャパシタを提供する。
【0028】
上記誘電体磁器組成物は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、上記xは0.5≦x≦0.9を満たすことができる。
【0029】
上記Mは、Mg0.5Ti0.5で表されることができる。
【0030】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩である0.5〜3.0モルの第1副成分をさらに含んでもよい。
【0031】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含んでもよい。
【0032】
上記第1及び第2内部電極は、パラジウム(Pd)またはパラジウム(Pd)合金を含んでもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明による誘電体磁器組成物は、常温で誘電率が1000以上の高誘電率を確保することができる。
【0034】
また、本発明による誘電体磁器組成物を利用した積層セラミックキャパシタは、DCバイアス特性に優れた、即ち、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化がなくて容量が減少しないため、高容量特性を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施例及び比較例によるDCバイアスに対する誘電定数(εr)の変化を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
図3図2のA−A'線に沿って切開した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0037】
本発明は誘電体磁器組成物に関するもので、誘電体磁器組成物を含む電子部品にはキャパシタ、インダクター、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどがあり、以下では、誘電体磁器組成物及び電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0038】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、上記xは0.5≦x≦0.9を満たすことができる。
【0039】
本発明による誘電体磁器組成物は、常温で誘電率が1000以上の高誘電率を確保することができる。
【0040】
また、本発明による誘電体磁器組成物を利用した積層セラミックキャパシタは、DCバイアス特性に優れた、即ち、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化がなくて容量が減少しないため、高容量特性を具現することができる。
【0041】
以下、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0042】
a)母材粉末
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含んでもよい。
【0043】
上記式中、xは0.5≦x≦0.9を満たすことができる。
【0044】
上記第1主成分はSrTiOで表されることができ、上記SrTiOはキュリー温度(Tc)が極めて低い常誘電体材料であってもよい。
【0045】
また、上記第2主成分はBiMOで表されることができ、上記MはMgとTiで構成されてもよい。
【0046】
上記MはMg0.5Ti0.5で表されることができ、従って、上記第2主成分はBi(Mg0.5Ti0.5)Oで表されることができる。
【0047】
上記Bi(Mg0.5Ti0.5)Oは、キュリー温度(Tc)が極めて高い強誘電体材料であってもよい。
【0048】
即ち、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の母材粉末は、キュリー温度が極めて低い常誘電体材料と、キュリー温度が極めて高い強誘電体材料を一定割合で混合した形態であってもよい。
【0049】
上記のように、一定割合で常誘電体材料と強誘電体材料を混合して母材粉末を製作することで、常温誘電率が非常に高くなり、DCバイアス特性に優れることができる。
【0050】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、常温誘電率が1000以上であってもよい。
【0051】
また、上記誘電体磁器組成物の母材粉末は、上述した常誘電体材料と強誘電体材料を混合した形態の他に、固溶された形態であってもよい。
【0052】
上記母材粉末が常誘電体材料と強誘電体材料の固溶された形態である場合には、上記母材粉末は単一相の形態であることができ、誘電率、DCバイアス特性、静電容量の変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)及び損失率などの特性が、両材料が混合された形態より優れることができる。
【0053】
上記母材粉末はxSrTiO−(1−x)BiMOで表されることができ、上記xが0.5≦x≦0.9を満たすように調節することで、常温誘電率が極めて高くなり、DCバイアス特性に優れることができる。
【0054】
即ち、上記母材粉末は、キュリー温度(Tc)が極めて低い常誘電体材料であるSrTiOを0.5〜0.9モル含むことで、上記特性を得ることができる。
【0055】
上記xが0.5未満では、常温誘電率が低くなり、損失率(Dissipation Factor、DF)が高くなる問題がある。
【0056】
一方、xが0.9を超えると、常温誘電率が低くなり、DCバイアス特性が悪くなる恐れがある。
【0057】
上記母材粉末は特に制限されないが、粉末の平均粒径は1000nm以下であってもよい。
【0058】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第1副成分としてMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物または炭酸塩をさらに含んでもよい。
【0059】
上記第1副成分としてMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物または炭酸塩は、上記母材粉末100モルに対して、0.5〜3.0モルの含量で含まれてもよい。
【0060】
上記第1副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割を担う。
【0061】
上記第1副成分の含量及び後述する第2副成分の含量は、母材粉末100モルに対して含まれる量であって、特に各副成分が含む金属イオンのモル数と定義されることができる。
【0062】
上記第1副成分の含量が0.5モル未満では、焼成温度が高くなり、高温耐電圧特性が多少低下する恐れがある。
【0063】
上記第1副成分の含量が3.0モルを超えると、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下する恐れがある。
【0064】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は0.5〜3.0モルの含量を有する第1副成分をさらに含んでもよく、これにより低温焼成が可能で、高い高温耐電圧特性を得ることができる。
【0065】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第2副成分としてSiを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物を含んでもよい。
【0066】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Siを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜3.0モルの第2副成分をさらに含んでもよい。
【0067】
上記第2副成分としてSiを含む酸化物またはSiを含むガラス(Glass)化合物は、上記母材粉末100モルに対して、0.5〜3.0モルの含量で含まれてもよい。
【0068】
上記第2副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割を担う。
【0069】
上記第2副成分の含量が0.5モル未満では、焼成温度が高くなる恐れがある。
【0070】
上記第2副成分の含量が3.0モルを超えると、高温耐電圧特性が低下する恐れがある。
【0071】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、0.5〜3.0モルの含量を有する第2副成分をさらに含んでもよく、これにより、低温焼成が可能で、高い高温耐電圧特性を得ることができる。
【0072】
図1は、本発明の実施例及び比較例によるDCバイアスに対する誘電定数(εr)の変化を示すグラフである。
【0073】
図1を参照すると、本発明の実施例である誘電体磁器組成物を適用した積層セラミックキャパシタは、DC電圧を印加したとき、DC電圧が0Vから10V/μmに増加しても誘電率の変化がないことが分かる。
【0074】
一方、強誘電体材料である常用X5R誘電体材料を適用した比較例(後述する試料28番)である積層セラミックキャパシタの場合は、DC電圧を印加したとき、DC電圧が0Vから10V/μmに増加するに伴って誘電率が急激に減少することが分かる。
【0075】
従って、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を適用した積層セラミックキャパシタは、DCバイアス特性に優れ、即ち、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化がなくて容量が減少しないため、高容量特性を具現することができる。
【0076】
図2は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な斜視図であり、図3図2のA−A'線に沿って切開した積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な断面図である。
【0077】
図2及び図3を参照すると、本発明の他の実施例による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と、第1及び第2内部電極121、122とが交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部には、セラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2外部電極131、132が形成されている。
【0078】
セラミック本体110の形状は特に制限されないが、一般的に直方体であってもよい。また、その寸法も特に制限されず、用途に応じて適宜選択でき、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であってもよい。
【0079】
誘電体層111の厚さはキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更してもよいが、本発明の一実施例において、焼成後の誘電体層の厚さは1層当たりに0.2μm以上であることが好ましい。
【0080】
薄すぎる誘電体層は1層内に存在する結晶粒の数が少なくて信頼性に悪影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは0.2μm以上であることができる。
【0081】
第1及び第2内部電極121、122は、各端面がセラミック本体110の対向する両端部の表面に交互に露出するように積層されている。
【0082】
上記第1及び第2外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2内部電極121、122の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0083】
上記第1及び第2内部電極121、122に含有される導電性材料は特に限定されないが、本発明の一実施形態による誘電体層の構成材料は、常誘電体材料と強誘電体材料の混合または固溶した形態であるため、貴金属を用いることができる。
【0084】
上記導電性材料として利用する貴金属は、パラジウム(Pd)またはパラジウム(Pd)合金であってもよい。
【0085】
パラジウム(Pd)合金としては、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の元素とパラジウム(Pd)の合金であってもよく、合金中のパラジウム(Pd)の含有量は95重量%以上であることができる。
【0086】
上記導電性材料として利用する貴金属は、銀(Ag)または銀(Ag)合金であってもよい。
【0087】
上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途などに応じて適宜選択でき、特に制限されないが、例えば、0.1〜5μmまたは0.1〜2.5μmであってもよい。
【0088】
上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはこれらの合金を使用してもよい。
【0089】
上記第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて適宜選択でき、特に制限されないが、例えば、10〜50μmであってもよい。
【0090】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を含んでもよい。
【0091】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、上記xは0.5≦x≦0.9を満たすことができる。
【0092】
上記誘電体磁器組成物に対する具体的な説明は、上述した本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の特徴と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0093】
本発明のさらに他の実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122とが交互に積層されたセラミック本体110と、上記セラミック本体110の両端部に形成され、上記第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結される第1及び第2外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は常温誘電率が1000以上であり、DC電界が0Vから5V/μmに変化するとき、誘電定数(εr)の変化率が10%以下を満たす誘電体磁器組成物を含んでもよい。
【0094】
本発明の他の実施形態によると、上記誘電体層111は常温誘電率が1000以上であり、DC電界が0Vから5V/μmに変化するとき、誘電定数(εr)の変化率が10%以下を満たす誘電体磁器組成物を含むことで、直流(DC)電界が印加されても誘電率の変化がなくて容量が減少しないため、高容量特性を具現することができる。
【0095】
上記誘電体磁器組成物は、SrTiOで表される第1主成分及びBiMOで表される第2主成分を含むxSrTiO−(1−x)BiMOで表される母材粉末(但し、MはMgとTiで構成される)を含み、上記xは0.5≦x≦0.9を満たすことができる。
【0096】
その他の特徴は上述した本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物及び積層セラミックキャパシタの特徴と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0097】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【0098】
原料粉末はxSrTiO−(1−x)Bi(Mg0.5Ti0.5)Oを主成分とし、上記粉末は下記のようにLPP(Liquid Phase Precursor)法を適用して製作した。
【0099】
出発原料はSr(NO)HO、TiCl、Bi(NO)5HO、Mg(NOであり、下記表1に記載した組成比に合わせてこれらを水溶液に溶解させた。
【0100】
該水溶液をセルロース(Cellulose)粉末に含浸させ、これを空気中の700〜900℃の温度範囲でか焼して平均粒子サイズが170nmの原料粉末を製作した。
【0101】
ジルコニアボールを混合/分散媒体として使用し、上記原料粉末をエタノール/トルエン、分散剤及びバインダーと混合した後、20時間ボールミリングしてスラリーを製造した。
【0102】
製造したスラリーを小型ドクターブレード(doctor blade)方式のコーター(coater)を利用して約2.0μm〜3.5μm厚さのシートに成形した。
【0103】
上記約2.0μm厚さのシートにパラジウム(Pd)内部電極を印刷した。
【0104】
上下カバー層としては10〜13μmの厚さを有する成形シートを25層積層し、アクティブ層としては約2.0μm厚さの内部電極が印刷されたシートを積層してバーを製造した。
【0105】
圧着バーは切断機を利用して3216サイズのチップに切断した。
【0106】
製作が完了したチップを仮焼した後、大気中、1150〜1300℃の温度で2時間焼成した。
【0107】
焼成したチップは外部電極の形成工程を行ってから24時間放置した後、常温誘電率、損失率(DF)、DCバイアスに対する誘電率の変化及び高温耐電圧を測定した。
【0108】
比較例である試料28は、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末及び常用X5R特性を具現する添加剤粉末を使用して誘電体層を製作し、内部電極としてニッケル(Ni)を適用し還元雰囲気で焼成したことを除き、上記実施例と同じ規格の積層セラミックキャパシタを製作した。
【0109】
【表1】
*:比較例
【0110】
下記表2には、上記表1の各実施例及び比較例に対する焼成温度、常温誘電率、損失率(DF)、DCバイアスに対する誘電率の変化及び高温耐電圧を示した。
【0111】
各副成分の含量は、母材100モル当たりのモル数で示し、常温誘電率及び損失率(DF)は、LCRメートル(meter)を利用して0.5V/μm、1kHzの条件で測定した容量値を基準として換算した数値である。
【0112】
また、DCバイアスに対する誘電率の変化は、DCバイアス8V/μmの条件で誘電定数を測定した値を意味する。
【0113】
また 単位厚さ(μm)当たりの高温耐電界圧特性は、150℃で5V/μmを10分間印加し、該電圧ステップを増加させながら測定したとき、絶縁抵抗が10Ω以上に耐える電圧を意味する。
【0114】
【表2】
*:比較例
【0115】
上記表2を参照すると、比較例である試料1は、母材粉末の第1主成分のモル比が0.90を超えており、常温誘電率が低く、DCバイアス特性が低下することが分かる。
【0116】
比較例である試料11〜15は、母材粉末の第1主成分のモル比が0.50未満であり、常温誘電率が低く、損失率(Dissipation Factor、DF)が高いことが分かる。
【0117】
比較例である試料16は、母材粉末の第1主成分及び第2主成分のモル比が本発明の数値範囲を満たすため、常温誘電率、損失率及びDCバイアス特性には優れるが、第1及び第2副成分が添加されていないため、その含量が本発明の数値範囲から外れ、焼成温度が高くなることが分かる。
【0118】
一方、比較例である試料28は、本発明の誘電体磁器組成物ではない常用X5R特性を具現する誘電体を適用したニッケル−積層セラミックキャパシタであり、常温誘電率は高いが、DCバイアス特性が低下することが分かる。
【0119】
これに対し、実施例である試料2〜10及び17〜27は、母材粉末の第1主成分及び第2主成分のモル比が本発明の数値範囲を満たし、第1副成分と第2副成分の含量も全て本発明の数値範囲を満たすものであり、常温誘電率、損失率、DCバイアス特性及び高温耐電圧特性の全てに優れ、焼成温度も低いことが分かる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0121】
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3