(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載ある場合を除き、必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の図面において、同一の参照符号や参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、実施の形態の説明において、同一の参照符号等を付した部分等に対しては、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置100のブロック構成図である。
【0011】
半導体装置100は、静電容量方式のうち、自己容量方式のタッチキーに好適なタッチセンサ回路を搭載する。半導体装置100に搭載されるタッチセンサ回路は、カレントミラー回路11、スイッチ回路12、電流制御発振回路13、カウンタ14、位相シフト回路15、容量C1、および端子Tを備える。端子Tには、自己容量検出方式のタッチキー(図示せず)が備えるタッチ電極TPが接続される。このタッチ電極TPおよびスイッチ回路12の組み合わせで、スイッチトキャパシタ回路SCCが形成される。
【0012】
(カレントミラー回路11の構成)
カレントミラー回路11は、電源電圧降下回路VDCおよびp型トランジスタMp12を含む。電源電圧降下回路VDCは、電源電圧VDDを降圧し、所望の電圧値に維持される電圧VDDRを、ノードNRに生成する。容量C1は、電圧VDDRの変動を抑制するために、ノードNRと接続される。
【0013】
電源電圧降下回路VDCは、p型トランジスタMp11およびアンプAMPを有する。p型トランジスタMp11のソースには電源電圧VDDが印加され、ドレインはノードNRと接続される。アンプAMPの一方の入力端子には基準電圧Vrefが印加され、他方の入力端子には、ノードNRを介して、p型トランジスタMp11のドレイン電圧が印加される。アンプAMPは、p型トランジスタMp11のドレイン電圧、即ち、ノードNRの電圧が基準電圧Vrefと等しくなるように、p型トランジスタMp11のゲート電圧を制御し、ノードNRには電圧VDDRが生成される。
【0014】
p型トランジスタMp12のソースには、電源電圧VDDが印加され、そのゲートは、p型トランジスタMp11のゲートと接続される。即ち、p型トランジスタMp11およびp型トランジスタMp12は、カレントミラー回路11を形成する。電源電圧降下回路VDCが有するp型トランジスタMp11の電流駆動能力(トランジスタサイズ)は、後述するスイッチトキャパシタ回路SCCで必要な出力電流I1を供給できるように設定される。p型トランジスタMp12の電流駆動能力は、電流制御発振回路13で必要な出力電流I2を供給できるように設定される。
【0015】
(スイッチトキャパシタ回路SCCの構成および動作)
スイッチ回路12は、スイッチSW1およびスイッチSW2を有する。スイッチSW1の一端は、電圧VDDRを出力するノードNRと接続され、その他端は、ノードNSと接続される。スイッチSW2の一端は、ノードNSを介して、スイッチSW1の他端と接続され、スイッチSW2の他端には、電源電圧VSSが印加される。スイッチSW1およびスイッチSW2の導通状態は、位相シフトクロックCLKSに応答して、相補的に変化する。スイッチ回路12のノードNSは、端子Tと接続される。
【0016】
位相シフトクロックCLKSがロウレベルの期間、スイッチSW1は、電源電圧降下回路VDCが出力する電圧VDDRを端子Tへ印加する。位相シフトクロックCLKSがハイレベルの期間、スイッチSW2は、電源電圧VSSを端子Tに印加する。位相シフトクロックCLKSの論理レベルとスイッチSW1およびスイッチSW2の相補的な導通状態(開閉状態)の変化から理解される通り、スイッチ回路12は、CMOSインバータ回路と同一の動作を行う。スイッチ回路12は、位相シフトクロックCLKSの論理レベルを反転させた駆動パルスDRVを生成し、端子Tへ出力する。
【0017】
端子Tには、自己容量検出方式のタッチキー(図示せず)が備えるタッチ電極TPが接続される。タッチ電極TPは、2つの寄生容量Csおよび寄生容量Cfの、それぞれ一方の電極として作用する。寄生容量Csの他方の電極は、タッチ電極TP周辺に形成されるプリント配線基板の接地配線等(図示せず)が該当する。寄生容量Cfの他方の電極は、指FNGおよび人体(図示せず)が該当する。寄生容量Csおよび寄生容量Cfの他方の電極の電圧は、それぞれ、接地配線および指FNG等を介して、接地電圧に設定される。寄生容量Cfの値は、タッチ電極TPおよび指FNG間の距離が短くなるに従い、増加する。
【0018】
スイッチ回路12およびタッチ電極TPは、スイッチトキャパシタ回路SCCを構成する。スイッチ回路12は、位相シフトクロックCLKSに応答して、タッチ電極TPに形成される寄生容量Csおよび寄生容量Cfの充放電を行う。位相シフトクロックCLKSがロウレベルの期間、スイッチ回路12は、端子Tを介して、タッチ電極TPへ電圧VDDRを印加し、寄生容量Csおよび寄生容量Cfの充電を行う。位相シフトクロックCLKSがハイレベルの期間、スイッチ回路12は、端子Tを介して、タッチ電極TPへ電源電圧VSSを印加し、寄生容量Csおよび寄生容量Cfの放電を行う。
【0019】
位相シフトクロックCLKSの周波数をfcs、タッチ電極TPの容量をCとすると、スイッチトキャパシタ回路SCCは、以下の式1で求められる等価抵抗Rと見なされる。
R=2/(fcs*C) ・・・・・・ 式1
C=Cs+Cf ・・・・・・ 式2
ここで、記号”/”および”*”は、それぞれ、除算記号および乗算記号である。電源電圧降下回路VDCは、電圧VDDRの値を等価抵抗Rの値で除算した出力電流I1を、スイッチトキャパシタ回路SCCへ供給する。
【0020】
式1および式2から理解される通り、スイッチ回路12およびタッチ電極TPからなるスイッチトキャパシタ回路SCCの等価抵抗Rは、指FNGとタッチ電極TP間の距離により変動する。従って、指FNGでタッチ電極TPをタッチする(以下、タッチ時、またはタッチ状態と記載)と、寄生容量Cfの値の増加に伴い、等価抵抗Rの値は減少し、電源電圧降下回路VDCが出力する出力電流I1の値は、増加する。逆に、指FNGをタッチ電極TPから遠ざける(以下、非タッチ時、または非タッチ状態と記載)と、寄生容量Cfの値の減少に伴い、等価抵抗Rの値は増加し、出力電流I1は減少する。なお、確認的に記載すると、”指FNGでタッチ電極TPをタッチする”とは、タッチ電極TP上の絶縁膜(図示せず)に指FNGを置くことを意味する。
【0021】
(電流制御発振回路13、カウンタ14、および位相シフト回路15の構成)
電流制御発振回路13は、カレントミラー回路11の出力電流I2の値に応じて周波数fc2が変化する第2クロックCLK2を生成する。具体的には、電流制御発振回路13は、出力電流I2の値に応答して遅延時間が変化するインバータ回路を、所定段数リング状に接続したリング発振器と、リング発振器の最終段のインバータ回路の出力を増幅し、第2クロックCLK2を生成するバッファ回路で構成される。カウンタ14は、所定時間に設定されたカウント時間に亘り、第2クロックCLK2のクロック数をカウントし、カウント数Nc2として出力する。
【0022】
出力電流I2の値が増加すると、上述のインバータ回路の遅延時間は減少し、クロックCLK2の周波数fc2の値は増加する。逆に、出力電流I2の値が減少すると、インバータ回路の遅延時間は増加し、周波数fc2の値は減少する。指FNGがタッチ電極TPをタッチしている場合(タッチ時)、カレントミラー回路11が出力する出力電流I2の値は増加し、指FNGがタッチ電極TPから離れている場合(非タッチ時)、出力電流I2の値は減少する。この出力電流I2の値の変化は、タッチ電極TPの寄生容量Cfの変化に依存する。従って、設定されたカウント時間におけるカウント数Nc2の変化を検出し、所定の基準カウント値と比較することにより、タッチ電極TPに対する指FNGのタッチ有無を検出することが可能となる。
【0023】
位相シフト回路15は、第1クロックCLK1および位相制御信号PCTLに基づき、位相シフトクロックCLKSを生成する。位相制御信号PCTLの論理レベルを変化させると、第1クロックCLK1の位相が180度、シフトされる。
【0024】
図2および
図3を参照して、実施の形態1に係る半導体装置100が備える位相シフト回路15の動作を説明する。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置100において、位相シフト回路15を停止させた場合のスイッチ回路12の動作を説明するタイミング図である。
【0026】
図2は、位相シフト回路15を具備しない半導体装置の課題を説明する図である。
図2において、横軸は、期間T1から期間T11を示し、縦軸は、各信号の論理レベルの変化と、ノイズNz1およびノイズNz2の波形を模式的に示す。
【0027】
位相シフト回路15は、上述の通り、位相制御信号PCTLに基づき、第1クロックCLK1の位相をシフトさせる機能を有する。
図2において、第1クロックCLK1は、半導体装置100に含まれる機能回路で使用される内部クロックである。その内部クロックの周波数の値は、スイッチ回路12の動作周波数の値より高いため、位相シフト回路15は、第1クロックCLK1を分周して位相シフトクロックCLKSを生成する。
図2は、第1クロックCLK1を1/2に分周して、駆動周期Tcを有する位相シフトクロックCLKSが生成される例を示す。
【0028】
位相制御信号PCTLが、ロウレベル”L”に設定されているため、位相シフト回路15は、第1クロックCLK1を1/2に分周し、位相シフトクロックCLKSを生成する。スイッチ回路12は、位相シフトクロックCLKSの論理レベルを反転させた駆動周期Tcを有する駆動パルスDRVを生成し、端子Tへ出力する。駆動パルスDRVがハイレベルの期間、カレントミラー回路11は、スイッチ回路12を経由して、寄生容量Csおよび寄生容量Cfを充電する(
図1参照)。
【0029】
指FNGとタッチ電極TP間の寄生容量Cfの値は、人体が受ける電磁波の影響を受ける。例えば、タッチ電極TPに、ノイズNz1またはノイズNz2のように、駆動パルスDRVと同期して変化するノイズが重畳する状況を想定する。そのような状況は、人体が、半導体装置100の第1クロックCLK1、または駆動パルスDRVの生成回路が発生する電磁波を、受信した場合に発生し得る。
【0030】
駆動パルスDRVがハイレベルに設定される期間T1において、ノイズNz1は、ノイズレベルが低下する。その場合、寄生容量Cfの値は、人体が電磁波を受信していない場合と比較し、増加したように振る舞う。一方、ノイズNz2は、期間T1において、ノイズレベルは上昇し、その結果、寄生容量Cfの値は、減少したように振る舞う。ノイズNz1による寄生容量Cfの値の見かけ上の増加、またはノイズNz2による寄生容量Cfの値の見かけ上の低下は、カレントミラー回路11の出力電流I1の値に影響を及ぼし、タッチ電極TPのタッチ有無の誤判定が懸念される。
【0031】
図3は、実施の形態1に係る半導体装置100において、位相シフト回路15を動作させた場合のスイッチ回路12の動作を説明するタイミング図である。
【0032】
図3は、
図2でロウレベルに設定していた位相制御信号PCTLの論理レベルを、期間T4および期間T9で、ハイレベルに設定している点が、
図2と相違する。
【0033】
位相シフト回路15は、期間T4でハイレベルに設定された位相制御信号PCTLに応答して、期間T5から180度位相をシフトした期間T6に、駆動パルスDRVを生成する。同様に、期間T9でハイレベルに設定された位相制御信号PCTLに応答して、期間T10から180度位相をシフトした期間T11に、駆動パルスDRVが生成される。従って、
図3に示される通り、期間T1および期間T3におけるノイズNz1に起因するカレントミラー回路11の出力電流I1の増加分は、期間T6および期間T8におけるノイズNz1に起因する出力電流I1の減少分により、相殺される。ノイズNz2がタッチ電極TPに重畳した場合も、同様に、位相シフトされた駆動パルスDRVにより、カレントミラー回路11の出力電流I1の増減値は抑制される。期間T11以降も、期間T1から期間T10までの制御タイミングが繰り返される。
【0034】
カウンタ14は、カウント期間に亘り、カレントミラー回路11の出力電流I2で駆動される電流制御発振回路13が出力する第2クロックCLK2をカウントする。その結果、ノイズNz1およびNz2がタッチ電極TPに重畳した場合であっても、タッチ有無の判定が正確に行われる。
【0035】
実施の形態1に係る半導体装置100の効果を説明する。
位相シフト回路15は、位相制御信号PCTLに基づき、スイッチ回路12が端子Tに出力する駆動パルスDRVの位相をシフトさせる。その結果、端子Tと接続されるタッチ電極TPに、カレントミラー回路11の出力電流I1の値を増加させるノイズNz1が重畳する駆動パルスDRVの数と、タッチ電極TPに出力電流I1の値を減少させるノイズNz2が重畳する駆動パルスDRVの数は、互いに近づき、ノイズNz1およびノイズNz2に起因する出力電流I1の変動は抑制される。
【0036】
この位相シフト回路15による駆動パルスDRVの位相制御は、人体を経由して、駆動パルスDRVの駆動周期Tcと同期したノイズNz1またはノイズNz2が重畳した場合、その効果が顕著であり、ノイズに起因するタッチ電極TPのタッチ誤判定が改善される。
【0037】
<実施の形態2>
図4は、実施の形態2に係る半導体装置200のブロック図である。
【0038】
図4において、
図1と同一の符号が付されたものは、同一の構成または機能を備え、それらの重複説明は省略される。
【0039】
図4に示される半導体装置200は、
図1に示される半導体装置100に、乱数生成回路16を追加した構成に相当する。乱数生成回路16は、位相制御信号PCTLRをランダムに生成し、位相シフト回路15へ出力する。乱数生成回路16は、一例として、帰還制御シフトレジスタが適用される。位相シフト回路15は、その位相制御信号PCTLRに基づき、位相シフトクロックCLKSRを生成する。
【0040】
図5および
図6を参照して、実施の形態2に係る半導体装置200が備える位相シフト回路15の動作を説明する。
【0041】
図5は、実施の形態1に係る半導体装置100において、駆動パルスDRVの駆動周期Tcより長い周期を有するノイズが重畳した場合の課題を説明するタイミング図である。
【0042】
図5は、
図3のタイミング図において、ノイズNz1およびノイズNz2を、それぞれ、それらのノイズの2.5倍程度の周期を有するノイズNz21およびノイズNz22に置き換えたタイミング図である。他の信号の生成タイミングは、両図において同一である。
【0043】
図5に示される通り、期間T4および期間T9で生成される位相制御信号PCTLに応答して、期間T5および期間T10で生成される予定の駆動パルスDRVは、それぞれ、期間T6および期間T11にシフトされる。しかしながら、ノイズNz1の周期より長いノイズNz21がタッチ電極TPに重畳した場合、例えば、期間T3および期間T8におけるカレントミラー回路11の出力電流I1の値は、増加する。同様に、ノイズNz22がタッチ電極TPに重畳した場合、期間T3および期間T8における出力電流I1の値は、減少する。
【0044】
図6は、実施の形態2に係る半導体装置200が備えるスイッチ回路12の動作を説明するタイミング図である。
【0045】
図5において、位相制御信号PCTLは、期間T4および期間T9でハイレベルにされるが、
図6において、位相制御信号PCTLRは、期間T4および期間T7でハイレベルに設定される。その結果、ノイズNz21およびノイズNz22におけるノイズレベルの変動は、いずれも、期間T3および期間T9において、打ち消し合うように発生する。カウンタ14のカウント期間に亘り、位相制御信号PCTLRをランダムに生成することで、タッチ電極TPに、カレントミラー回路11の出力電流I1の値を増加させるノイズNz21が重畳する駆動パルスDRVの数と、出力電流の値を減少させるノイズNz22が重畳する駆動パルスDRVの数は、互いに近づき、ノイズNz21およびノイズNz22に起因する出力電流I1の変動は抑制される。
【0046】
実施の形態2に係る半導体装置200の効果を説明する。
駆動パルスDRVの駆動周期Tcより長い周期で変化するノイズに対し、乱数生成回路16で位相制御信号PCTLRを生成することにより、そのノイズに起因するカレントミラー回路11の出力電流I1の値の変動を改善することが可能となる。さらに、帰還制御シフトレジスタを乱数生成回路16に適用することで、乱数生成に一定の確率が保証され、スイッチトキャパシタ周波数の平均周波数を一定にすることができる。
【0047】
<実施の形態3>
図7は、実施の形態3に係る半導体装置300のブロック図である。
【0048】
図7において、
図4と同一の符号が付されたものは、同一の構成または機能を備え、それらの重複説明は省略される。
【0049】
図7に示される半導体装置300は、
図4に示される半導体装置200に、ジッタ付加回路17を追加した構成に相当する。ジッタ付加回路17は、例えば、フリップフロップである。位相シフト回路15が出力する位相シフトクロックCLKSR、およびサンプリングクロックCSMPLは、それぞれ、ジッタ付加回路17(フロップフロップ)のデータ端子、およびクロック端子に入力される。ジッタ付加回路17は、サンプリングクロックCSMPLの立ち上がりエッジで、位相シフトクロックCLKSRのデータを取り込み、取り込んだデータを位相シフトクロックCLKSJとして、スイッチ回路12へ出力する。
【0050】
図8は、実施の形態1に係る半導体装置100において、タッチ電極TPに、高次の偶数倍周波数を有するノイズが重畳した場合の課題を説明するタイミング図である。
【0051】
図8において、位相シフト回路15が出力する位相シフトクロックCLKS(
図1参照)は、駆動周期Tcに対して、Tc/2周期を有するロウレベル期間およびハイレベル期間を有する。この位相シフトクロックCLKSが入力されるスイッチ回路12において、スイッチSW1とスイッチSW2の同時オンを回避するため、さらには、スイッチSW1およびSW2の駆動能力のばらつきにより、駆動パルスDRVのデューティ比は50%に対し、ずれが発生する。
図8は、駆動パルスDRVのハイレベル期間がロウレベル期間に対し、デューティ誤差時間ΔDTYだけ大きい場合を示す。
【0052】
タッチ電極TPに高次の偶数倍周波数を有するノイズNz31が重畳すると、デューティ誤差時間ΔDTYにおいて、ノイズNz31のレベルが上昇する場合が発生する。また、ノイズNz32のレベルが下降する場合も発生する。デューティ誤差時間ΔDTYにおけるノイズNz31の立ち上がり波形は、カレントミラー回路11の出力電流I1の値を減少させる。一方、デューティ誤差時間ΔDTYにおけるノイズNz32の立ち下がり波形は、カレントミラー回路11の出力電流I1の値を増加させる。いずれの場合も、タッチ電極TPのタッチ誤判定の要因となる。
【0053】
図9は、実施の形態3に係る半導体装置300が備えるジッタ付加回路17の動作を説明するタイミング図である。
【0054】
位相シフト回路15(
図7参照)は、周期Tsを有する位相シフトクロックCLKSRを生成する。なお、位相シフトクロックCLKSRは、乱数生成回路16が出力する位相制御信号PCTLRに応答して、生成されない周期も存在する。
図9は、説明の都合上、位相シフトクロックCLKSRが連続して生成される期間を示す。
【0055】
サンプリングクロックCSMPLの周期TCSは、標本化定理に従い、位相シフトクロックCLKSRの周期Tsの1/2よりも、短く設定される。ジッタ付加回路17は、位相シフトクロックCLKSRをサンプリングクロックCSMPLで取り込み、駆動パルスDRVを生成する。サンプリングクロックCSMPLは、位相シフトクロックCLKSRと非同期に生成されるため、駆動パルスDRVの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジは、サンプリングクロックCSMPLの周期TCSの範囲で、変動する。
【0056】
従って、デューティ誤差時間ΔDTYにおけるノイズNz31の立ち上がり、または立ち下がりのタイミングは、駆動パルスDRV毎に異なる。ノイズNz32も同様である。その結果、ノイズNz31またはノイズNz32に起因するカレントミラー回路11の出力電流I1の変動は抑制され、タッチ電極TPのタッチ誤判定が改善される。
【0057】
また、フリップフロップに入力される位相シフトクロックCLKSRを、サンプリングクロックCSMPLで取り込むため、駆動パルスDRVの基本周波数に影響を与えることなく、駆動パルスDRVにジッタを生成することが可能となる。その結果、スイッチトキャパシタ回路SCCの動作に影響を与えることなく、駆動パルスDRVにジッタを生成することが可能となる。
【0058】
以上の説明において、駆動パルスDRVは、位相シフトクロックCLKSRにより位相シフトされていない期間に生成される場合を対象としていた。ジッタ付加回路17は、位相シフトクロックCLKSRにより位相シフトされた駆動パルスDRVに対しても、周期TCSの範囲でジッタを付加することが可能である。さらに、
図7において、位相シフト回路15の位相シフトクロックCLKSRの生成は、乱数生成回路16が出力する位相制御信号PCTLRで制御される構成を示すが、ジッタ付加回路17による駆動パルスDRVへのジッタ形成は、乱数生成回路16が無い構成にも適用可能であることも、容易に理解される。
【0059】
<実施の形態4>
図10は、実施の形態4に係る半導体装置400のブロック図である。
【0060】
図10において、
図7と同一の符号が付されたものは、同一の構成または機能を備え、それらの重複説明は省略される。
【0061】
図10に示される半導体装置400は、
図7に示される半導体装置300のジッタ付加回路17に印加されるサンプリングクロックCSMPLを、スペクトラム拡散クロックジェネレータSSGC(Spread Spectrum Clock Generator)で生成する構成としたものである。その変更に伴い、ジッタ付加回路17が出力する信号名を、位相シフトクロックCLKSSに変更している。
【0062】
サンプリングクロックCSMPLをスペクトラム拡散クロックジェネレータSSGCで生成することにより、駆動パルスDRVに付与するジッタを、より高精度に生成することが可能となる。また、駆動パルスDRVの基本周波数に影響を与えることなく、駆動パルスDRVにジッタを生成することが可能となる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。