特許第6224468号(P6224468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6224468
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】巻鉄心および巻鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/25 20060101AFI20171023BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01F27/24 B
   H01F41/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-12416(P2014-12416)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-141930(P2015-141930A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 義典
(72)【発明者】
【氏名】池田 宜史
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−179517(JP,A)
【文献】 特開昭62−14408(JP,A)
【文献】 特開昭62−210609(JP,A)
【文献】 特開平6−45165(JP,A)
【文献】 特開2011−109809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/25
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材が巻回され、中心に矩形の窓部を有する巻鉄心であって、
コーナ部と、前記コーナ部を除く辺部と、を有し、
前記鉄心材は、前記コーナ部を形成する部分が予め折り曲げられた状態で巻回されるものであり、
一の前記鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さは、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げられ、
一の前記鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さは、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げられており、
前記コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心。
【請求項2】
所定枚の前記鉄心材ごとに鉄心材群が形成され、
各鉄心材群に含まれる前記鉄心材は、前記切断部が接合される接合部が相互に周方向にずれて階段状に位置するように巻回されており、
一の前記鉄心材群において最も内側で巻回される前記鉄心材の前記接合部の位置は、当該鉄心材群の内側の鉄心材群において最も内側で巻回される前記鉄心材の前記接合部の位置と一致しており、
一の前記鉄心材群において最も内側で巻回される前記鉄心材の周長は、当該鉄心材群の内側の鉄心材群において最も外側で巻回される前記鉄心材の周長よりも大きくなっている請求項1に記載の巻鉄心。
【請求項3】
前記コーナ部における前記鉄心材は、1枚毎に隙間を有している請求項1または2に記載の巻鉄心。
【請求項4】
前記コーナ部における前記鉄心材は、複数枚毎に隙間を有している請求項1または2に記載の巻鉄心。
【請求項5】
一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材を緩く巻回し、各鉄心材の前記切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部を形成することにより、コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心を製造することを特徴とする巻鉄心の製造方法。
【請求項6】
一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有し、且つ、コーナ部を形成する部分が予め折り曲げられた鉄心材を積層し、各鉄心材の前記切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部を形成することにより、前記コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心を製造する製造方法であって、
前記鉄心材を積層する前に、
一の前記鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げ、且つ、
一の前記鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げることを特徴とする巻鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数枚の鉄心材が巻回された巻鉄心および巻鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば配電用の小型の変圧器における大きな技術動向として、日本国内ではいわゆるトップランナー制度が適用され、世界的にも、例えば高効率化を定めた規格が制定されるなど、省エネルギー化や効率化が強く推し進められている。とりわけ、鉄心で発生する電力損失である無負荷損、いわゆる「鉄損」を低減するための努力が世界規模で展開されており、各メーカは、鉄心材料の改良や鉄心構造の改良に注力し激しい競争を繰り広げている。ここで、変圧器用の鉄心としては、切断した薄い珪素鋼板を積層した積層鉄心、切断した薄い珪素鋼板を巻回した巻鉄心が知られている。そして、巻鉄心は、鉄心中の磁束の流れが阻害されにくいことから、鉄損の低減の観点からは積層鉄心よりも有利である。
【0003】
例えば特許文献1には、このような巻鉄心の製造方法の一例が開示されている。この種の巻鉄心は、一般的に、次のような方法により製造されている。即ち、薄い珪素鋼板から鉄心材を一巻き分、つまりワンターン分ごとに切断しながら円形の巻き取り型に巻き取る。その後、巻き取った鉄心材の内側と外側に成形型を当ててプレスし、これにより、中心にほぼ矩形の鉄心窓を形成する。このとき、巻鉄心を構成する鉄心材には、鉄損増大の原因となる曲げ応力が生じる。そのため、残留応力を緩和して鉄損特性を回復させるための処理、即ち、巻鉄心を例えば約800℃に加熱した後に冷却する焼鈍処理が行われる。また、巻鉄心に巻線を組み付ける際には、巻鉄心を、各鉄心材の切断部において一旦開き、巻鉄心の辺部に巻線を組み付けた後、再び、巻鉄心を閉じる。このとき、各鉄心材の切断部が接合される接合部にギャップが生じると、例えば巻鉄心の形状が歪むなどして鉄損増大の原因となる。そのため、巻鉄心の周囲を締付バンドで締め付けることにより、ギャップの発生を極力抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−159953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻鉄心の鉄損増大を抑制するためには、各鉄心材の切断部が接合される接合部に生じるギャップを極力小さくしなければならない。そのため、現状では、巻鉄心を製造する一連の各工程、即ち、珪素鋼板の切断工程、巻き取り工程、成形工程、焼鈍工程、巻線の組み付け工程において精密な寸法管理が必要とされている。また、特に巻線の組み付け工程では、上述したように巻鉄心を締め付ける作業が必要であり、製造工数の増大を招いている。
【0006】
そこで、本実施形態は、製造工程における精密な寸法管理を要することなく、また、製造工数の増大を招くことなく製造することができ、且つ、鉄損の増大を抑制することができる巻鉄心、および、当該巻鉄心を製造する製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る巻鉄心は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材が巻回され、中心に矩形の窓部を有する巻鉄心であって、コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている。
【0008】
また、本実施形態に係る巻鉄心の製造方法は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材を緩く巻回し、各鉄心材の前記切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部を形成することにより、コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心を製造する。
【0009】
また、本実施形態に係る巻鉄心の製造方法は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有し、且つ、コーナ部を形成する部分が予め折り曲げられた鉄心材を緩く積層し、各鉄心材の前記切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部を形成することにより、前記コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心を製造する製造方法であって、前記鉄心材を積層する前に、一の前記鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げ、且つ、一の前記鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る巻鉄心の一構成例を示す全体図
図2】コーナ部およびその周辺の一構成例を拡大して示す図
図3】接合部およびその周辺の一構成例を拡大して示す図
図4】相互に隣接する鉄心材の周長の大小関係の一例を示す図
図5】巻鉄心の製造装置の一構成例を概略的に示す図
図6】巻鉄心の成形工程の一例を示す図
図7】巻線の組み付け工程の一例を示す図
図8】第2実施形態に係る図1相当図
図9図2相当図
図10】相互に隣接する鉄心材の折り曲げ位置の一例を示す図
図11図6相当図
図12】第1実施形態の変形例を示す図2相当図
図13】第2実施形態の変形例を示す図9相当図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、巻鉄心および巻鉄心の製造方法に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
例えば図1に示す巻鉄心10は、図示しない珪素鋼板を切断することにより得られた複数枚の鉄心材10aが巻回された構成である。この巻鉄心10は、中心にほぼ矩形の窓部11を有する。また、巻鉄心10は、4つのコーナ部12と、これらコーナ部12を除く4つの辺部13を有する。この場合、辺部13は、図示しない巻線が組み付けられる長辺部13aと、この長辺部13aよりも短い短辺部13bからなる。巻鉄心10を構成する複数枚の鉄心材10aは、一巻き分、つまりワンターン分ごとに珪素鋼板から切断されたものであり、従って、この場合、一巻ごとに1箇所の切断部を有している。そして、各鉄心材10aにおいて切断部が接合される部分、つまり、各鉄心材10aの両端部には接合部14が形成される。
【0012】
そして、例えば図2に示すように、巻鉄心10は、コーナ部12における鉄心材10aの占積率が辺部13における鉄心材10aの占積率よりも低くなっている。即ち、辺部13では鉄心材10aが密に積層されているが、コーナ部12では鉄心材10aが密に積層されておらず各鉄心材10a間に隙間を有する状態となっている。この場合、各鉄心材10aは、1枚毎に隙間を有している。なお、占積率とは、巻鉄心10の断面積に対し鉄心材10aが占める面積の割合を示すものであり、占積率が高いほど、各鉄心材10aが密に積層されていることを示す。
【0013】
また、例えば図3に示すように、巻鉄心10は、所定枚の鉄心材10aごとに鉄心材群15a,15b,・・・を形成した構成である。即ち、最も窓部11側となる内側から所定枚の鉄心材10aが積層されるごとに1つの鉄心材群15a,15b,・・・が形成される。なお、1つの鉄心材群を形成する鉄心材10aの数は適宜変更して実施することができる。また、各鉄心材群を形成する鉄心材10aの数を適宜異ならせてもよい。
また、各鉄心材群15a,15b,・・・に含まれる鉄心材10aは、切断部が接合される接合部14が相互に周方向にずれて階段状に位置するように巻回されている。また、例えば鉄心材群15bにおいて最も内側で巻回される鉄心材10aの接合部14の位置Pbは、当該鉄心材群15bの内側に隣接する鉄心材群15aにおいて最も内側で巻回される鉄心材10aの接合部14の位置Paとほぼあるいは完全に一致している。
【0014】
また、例えば図4に示すように、鉄心材群15bにおいて最も内側で巻回される鉄心材10aの周長Lbは、当該鉄心材群15bの内側に隣接する鉄心材群15aにおいて最も外側で巻回される鉄心材10aの周長Laよりも大きくなっている。この場合、周長Lbは、鉄心材10aの板厚dに応じた長さだけ長くなるように設定されており、例えば、次式(1)で示す関係が成立するようになっている。なお、「π」は円周率であり、「α」は適宜変更して設定することができる変数である。
Lb=La+πd+α・・・・・(1)
【0015】
次に、このようにコーナ部12の占積率が低くなった巻鉄心10を製造するための製造方法の一例について説明する。この製造方法は、珪素鋼板の切断工程、鉄心材の巻き取り工程、巻鉄心の成形工程、巻鉄心の焼鈍工程からなる。
【0016】
≪珪素鋼板の切断工程≫
この工程では、例えば図5に示すように、製造装置100は、珪素鋼帯Mをフィーダ101によって順次送る構成である。そして、製造装置100は、順次送られる珪素鋼帯Mから、一巻き分、つまりワンターン分の鉄心材10aを切断刃102により順次切断する。
【0017】
≪鉄心材の巻き取り工程≫
この工程では、例えば図5に示すように、製造装置100は、珪素鋼帯Mから得られた鉄心材10aを、円形の巻き取り型103に順次巻き取る。このとき、各鉄心材10aは、従来よりも緩く巻回される。なお、鉄心材10aを緩める程度は、目標とする巻鉄心10のコーナ部12の占積率に応じて、適宜調整して実施することができる。即ち、鉄心材10aを緩める程度を大きくするほど、コーナ部12の占積率をより低くすることができる。
【0018】
≪巻鉄心の成形工程≫
この工程では、例えば図6に示すように、巻き取られ積層された複数枚の鉄心材10aの内側の4箇所と外側の4箇所に成形型104,105を当てる。そして、成形型104,105により、鉄心材10aの4箇所を積層方向に沿って適宜プレスする。なお、プレスは、各鉄心材10aの切断部を接合した状態で行われる。鉄心材10aの4箇所が適宜プレスされることにより、プレスされる部分つまり成形型104,105によって挟まれた部分にそれぞれ辺部13が形成され、それ以外の部分、つまり、プレスされない部分(成形型104,105によって挟まれていない部分)にそれぞれコーナ部12が形成される。このとき、各鉄心材10aが従来よりも緩く巻回されていることから、プレスに際し、コーナ部12が形成される部分の鉄心材10aが適宜変形する。コーナ部12が適宜変形することにより、プレスに伴う鉄心材10aの変形が吸収される。よって、プレス後に、各鉄心材10aの切断部、換言すれば接合部14が開いてしまうことを防止することができる。
【0019】
なお、成形型104,105は、二組の長辺成形型104a,105aと、二組の短辺成形型104b,105bとからなる。そして、長辺成形型104a,105aによってプレスされる部分に長辺部13aが形成され、短辺成形型104b,105bによってプレスされる部分に短辺部13bが形成される。そして、接合部14は、短辺部13bに位置して形成されるように設定されている。即ち、各鉄心材10aは、接合部14を形成する部分が短辺成形型104b,105bの間に挟まれた状態でプレスされる。
【0020】
≪巻鉄心の焼鈍工程≫
この工程では、巻鉄心10を、例えば約800℃ほどの所定温度に加熱した後に冷却する。これにより、巻鉄心10を構成する各鉄心材10aに生じている残留応力を緩和することができ、残留応力に起因して巻鉄心10の鉄損特性が悪化してしまうことを回避することができる。なお、残留応力が解消されることに伴い各鉄心材10aが若干変形する場合がある。しかし、このような変形が生じたとしても、その変形は、占積率が低いコーナ部12が適宜変形することにより吸収される。よって、この焼鈍工程により接合部14が開いてしまうことも防止される。
【0021】
以上の各工程により、コーナ部12における鉄心材10aの占積率が辺部13における鉄心材10aの占積率よりも低くなっている巻鉄心10が製造される。この巻鉄心10において、各鉄心材10aが形成する接合部14は殆どあるいは全く開いておらず、接合部14においてギャップは殆どあるいは全く発生していない。
【0022】
次に、巻鉄心10に巻線を組み付ける組み付け工程について説明する。この巻線の組み付け工程では、まず、図7(a)に例示する巻鉄心10が、図7(b)に例示するように、各鉄心材10aの切断部、換言すれば接合部14を境界として一旦開かれる。そして、図7(c)に例示するように、長辺部13aに巻線600が組み付けられる。そして、図7(d)に例示するように、再び、各鉄心材10aの切断部が接合するように巻鉄心10を閉じる。これにより、長辺部13aに巻線600が組み付けられた巻鉄心10が製造される。
【0023】
このとき、巻鉄心10を開く前においては、上述した通り、各鉄心材10aの接合部14にはギャップが発生していない。よって、巻鉄心10を一旦開いたとしても、再び閉じて開く前の元通りの形状に戻すことで、接合部14にギャップが発生していない巻鉄心10を巻線600が組み付けられた状態で再生することができる。そのため、巻鉄心10を閉じる際に、接合部14のギャップを縮めるための作業、つまり、巻鉄心10の周囲を締付バンドで締め付けるといった従来の作業を行う必要がなくなり、製造工数の削減を図ることができる。
【0024】
本実施形態によれば、巻鉄心10は、コーナ部における鉄心材の占積率がコーナ部を除く辺部における鉄心材の占積率よりも低くなっている。従って、例えば巻鉄心10の成形時や締め付け時において鉄心材10aに変形が生じたとしても、その変形をコーナ部で吸収することができ、接合部14が開いてしまうことを防止することができる。よって、各製造工程において精密な寸法管理を行わなくとも、接合部14が閉じられた良好な巻鉄心10を製造することができる。また、例えば巻線の組み付け後における巻鉄心の締付工程を不要とすることができ、製造工数の増大を招くことなく巻鉄心10を製造することができる。また、製造される巻鉄心10において接合部14が開いてしまうことを防止できることから、鉄損の増大を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、巻鉄心10は、所定枚の鉄心材10aごとに鉄心材群15a,15b,・・・を形成している。そして、巻鉄心10において、各鉄心材群15a,15b,・・・に含まれる鉄心材10aは、切断部が接合される接合部14が相互に周方向にずれて階段状に位置するように巻回されている。また、巻鉄心10において、一の鉄心材群において最も内側で巻回される鉄心材10aの接合部14の位置は、当該鉄心材群の内側に隣接する鉄心材群において最も内側で巻回される鉄心材10aの接合部14の位置と完全にあるいはほぼ一致している。即ち、巻鉄心10において、接合部14が形成される部分が周方向に階段状にずれるように構成した。これにより、磁路の磁気抵抗が比較的大きくなる接合部14を周方向に沿って順次ずらすことができ、巻鉄心10における磁束の流れをスムーズにすることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、巻鉄心10は、一の鉄心材群において最も内側で巻回される鉄心材10aの周長が、当該鉄心材群の内側に隣接する鉄心材群において最も外側で巻回される鉄心材10aの周長よりも大きくなるように構成した。これにより、コーナ部12の占積率を確実に低くすることができる。また、各鉄心材10aの周長を適宜調整することにより、コーナ部12の占積率を定量的に低くすることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る巻鉄心の製造方法によれば、一巻ごとに1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材10aを少なくとも従来よりも緩く巻回し、各鉄心材10aの切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部11を形成する。この製造方法によれば、コーナ部12における鉄心材10aの占積率がコーナ部12を除く辺部13における鉄心材10aの占積率よりも低くなっている巻鉄心10を安定的に製造することができる。
【0028】
(第2実施形態)
例えば図8に示す巻鉄心20は、図示しない珪素鋼板を切断することにより得られた複数枚の鉄心材20aを巻回された構成である。この巻鉄心20は、中心にほぼ矩形の窓部21を有する。また、巻鉄心20は、4つのコーナ部22と、これらコーナ部22を除く4つの辺部23を有する。この場合、辺部23は、図示しない巻線が組み付けられる長辺部23aと、この長辺部23aよりも短い短辺部23bからなる。巻鉄心20を構成する鉄心材20aは、一巻き分、つまりワンターン分ごとに珪素鋼板から切断されたものであり、従って、この場合、一巻ごとに1箇所の切断部を有している。そして、各鉄心材20aにおいて切断部が接合される部分、つまり、各鉄心材20aの両端部には接合部24が形成される。
【0029】
そして、例えば図9に示すように、巻鉄心20は、コーナ部22における鉄心材20aの占積率が辺部23における鉄心材20aの占積率よりも低くなっている。即ち、辺部23では鉄心材20aが密に積層されているが、コーナ部22では鉄心材20aが密に積層されておらず各鉄心材20a間に隙間を有する状態となっている。この場合、各鉄心材20aは、1枚毎に隙間を有している。
【0030】
より具体的に説明すると、図10に例示するように、例えば鉄心材20a2は、当該鉄心材20a2において辺部23を形成する部分の長さLa2が、当該鉄心材20a2の内側の鉄心材20a1において辺部23を形成する部分の長さLa1よりも所定量(2×α)だけ長くなるように折り曲げられている。なお、所定量αの値は、目標とする巻鉄心20のコーナ部22の占積率に応じて、適宜変更して設定することができる。また、鉄心材20a2は、当該鉄心材20a2においてコーナ部22を形成する部分の長さLb2が、当該鉄心材20a2の内側の鉄心材20a1においてコーナ部22を形成する部分の長さLb1よりも所定量(2×β)だけ長くなるように折り曲げられている。なお、所定量βの値は、目標とする巻鉄心20のコーナ部22の占積率に応じて、適宜変更して設定することができる。
【0031】
また、この巻鉄心20も、所定枚の鉄心材20aごとに鉄心材群25a,25b,・・・を形成した構成である。即ち、内側から所定枚の鉄心材20aが積層されるごとに1つの鉄心材群25a,25b,・・・が形成される。また、各鉄心材群25a,25b,・・・に含まれる鉄心材20aは、切断部が接合される接合部24が相互に周方向にずれて階段状に位置するように巻回されている。また、例えば鉄心材群25bにおいて最も内側で巻回される鉄心材20aの接合部24の位置Pbは、当該鉄心材群25bの内側に隣接する鉄心材群25aにおいて最も内側で巻回される鉄心材群25aの接合部24の位置Paとほぼあるいは完全に一致している。また、鉄心材群25bにおいて最も内側で巻回される鉄心材20aの周長Lbは、当該鉄心材群25bの内側に隣接する鉄心材群25aにおいて最も外側で巻回される鉄心材20aの周長Laよりも大きくなっている。
【0032】
次に、このようにコーナ部22の占積率が低くなった巻鉄心20を製造するための製造方法の一例について説明する。この製造方法は、珪素鋼板の折り曲げ工程、珪素鋼板の切断工程、鉄心材の積層工程、巻鉄心の成形工程、巻鉄心の焼鈍工程からなる。
≪珪素鋼板の切断工程≫
この工程では、図示しない製造装置は、珪素鋼帯をフィーダによって順次送る構成である。そして、順次送られる珪素鋼帯から、一巻き分、つまりワンターン分の鉄心材20aを切断刃により順次切断する。
【0033】
≪珪素鋼板の折り曲げ工程≫
この工程では、図示しない製造装置は、順次送られる鉄心材20aを折り曲げ機によって適宜折り曲げる。このときの折り曲げ位置を適宜調整して設定することにより、例えば図10に示したように、適宜の位置にて折り曲げられた鉄心材20aが順次得られる。なお、珪素鋼帯を所定位置にて順次折り曲げる折り曲げ工程を行った後に、その珪素鋼帯をワンターン分ごとに切断する切断工程を行うように構成してもよい。
【0034】
≪鉄心材の積層工程≫
この工程では、珪素鋼帯から得られた折り曲げ済みの鉄心材20aを順次積層する。このとき、例えば図9に示したように、コーナ部22となる部分における各鉄心材20a間には隙間が形成された状態となる。なお、この積層工程においては、各鉄心材20aを密に積層する必要はなく、折り曲げられた部分、さらには折り曲げられていない部分も含めて全体的に緩く積層すればよい。
【0035】
≪巻鉄心の成形工程≫
この工程では、例えば図11に示すように、積層された複数枚の鉄心材20aの内側の4箇所と外側の4箇所に成形型104,105を当てる。そして、成形型104,105により、鉄心材20aの4箇所を積層方向に沿って適宜プレスする。なお、プレスは、各鉄心材20aの切断部を接合した状態で行われる。鉄心材20aの4箇所が適宜プレスされることにより、プレスされる部分に辺部23が形成され、それ以外の部分、つまり、プレスされない部分にコーナ部22が形成される。このとき、コーナ部22となる部分における各鉄心材20a間には隙間が形成されていることから、当該部分により、プレスに伴う鉄心材20aの変形を吸収することができる。よって、プレス後に、各鉄心材20aの切断部、換言すれば接合部24が開いてしまうことを防止することができる。なお、接合部24は、短辺部23bに位置して形成されるように設定されている。即ち、各鉄心材20aは、接合部24を形成する部分が短辺成形型104b,105bの間に挟まれた状態でプレスされる。
【0036】
≪巻鉄心の焼鈍工程≫
この工程では、巻鉄心20を、例えば約800℃ほどの所定温度に加熱した後に冷却する。これにより、巻鉄心20を構成する各鉄心材20aに生じている残留応力を緩和することができ、残留応力に起因して巻鉄心20の鉄損特性が悪化してしまうことを回避することができる。なお、残留応力が解消されることに伴い各鉄心材20aが若干変形する場合がある。しかし、このような変形が生じたとしても、その変形は、占積率が低いコーナ部22が適宜変形することにより吸収される。よって、この焼鈍工程により接合部14が開いてしまうことも防止される。
【0037】
以上の各工程により、コーナ部22における鉄心材20aの占積率が辺部23における鉄心材20aの占積率よりも低くなっている巻鉄心20が製造される。この巻鉄心20において、各鉄心材20aが形成する接合部24は殆どあるいは全く開いておらず、接合部24においてギャップは殆どあるいは全く発生していない。
【0038】
次に、巻鉄心20に巻線を組み付ける組み付け工程について説明する。図示は省略するが、この巻線の組み付け工程では、まず、巻鉄心20が、各鉄心材20aの切断部、換言すれば接合部24を境界として一旦開かれる。そして、長辺部23aに巻線が組み付けられる。そして、再び、各鉄心材20aの切断部が接合するように巻鉄心20を閉じる。巻鉄心20を開く前においては、上述した通り、各鉄心材20aの接合部24にはギャップが発生していない。よって、巻鉄心20を一旦開いたとしても、再び閉じて開く前の元通りの形状に戻すことで、接合部24にギャップが発生していない巻鉄心20を巻線が組み付けられた状態で再生することができる。そのため、巻鉄心20を閉じる際に、接合部24のギャップを縮めるための作業を行う必要がなくなり、製造工数の削減を図ることができる。
【0039】
本実施形態によれば、巻鉄心20は、コーナ部における鉄心材の占積率がコーナ部を除く辺部における鉄心材の占積率よりも低くなっている。従って、例えば巻鉄心20の成形時や締め付け時において鉄心材20aに変形が生じたとしても、その変形をコーナ部で吸収することができ、接合部24が開いてしまうことを防止することができる。よって、各製造工程において精密な寸法管理を行わなくとも、接合部24が閉じられた良好な巻鉄心20を製造することができる。また、例えば巻線の組み付け後における巻鉄心の締付工程を不要とすることができ、製造工数の増大を招くことなく巻鉄心20を製造することができる。また、製造される巻鉄心20において接合部24が開いてしまうことを防止できることから、鉄損の増大を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、巻鉄心20は、所定枚の鉄心材20aごとに鉄心材群25a,25b,・・・を形成している。そして、巻鉄心20において、各鉄心材群25a,25b,・・・に含まれる鉄心材20aは、切断部が接合される接合部24が相互に周方向にずれて階段状に位置するように巻回されている。また、巻鉄心20において、一の鉄心材群において最も内側で巻回される鉄心材20aの接合部24の位置は、当該鉄心材群の内側に隣接する鉄心材群において最も内側で巻回される鉄心材20aの接合部24の位置と完全にあるいはほぼ一致している。即ち、巻鉄心20において、接合部24が形成される部分が周方向に階段状にずれるように構成した。これにより、磁路の磁気抵抗が比較的大きくなる接合部24を周方向に沿って順次ずらすことができ、巻鉄心10における磁束の流れをスムーズにすることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、巻鉄心20は、一の鉄心材群において最も内側で巻回される鉄心材20aの周長が、当該鉄心材群の内側に隣接する鉄心材群において最も外側で巻回される鉄心材20aの周長よりも大きくなるように構成した。これにより、コーナ部22の占積率を確実に低くすることができる。また、各鉄心材20aの周長を適宜調整することにより、コーナ部22の占積率を定量的に低くすることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る巻鉄心の製造方法によれば、一巻ごとに1箇所の切断部を有し、且つ、コーナ部22を形成する部分が予め折り曲げられた鉄心材20aを緩く積層し、各鉄心材20aの切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部21を形成する。この製造方法においては、鉄心材20aを積層する前に、一の鉄心材において辺部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において辺部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げ、且つ、一の鉄心材においてコーナ部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材においてコーナ部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げる。この製造方法によっても、コーナ部22における鉄心材20aの占積率がコーナ部22を除く辺部13における鉄心材20aの占積率よりも低くなっている巻鉄心20を安定的に製造することができる。
【0043】
以上に説明した実施形態に係る巻鉄心は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材が巻回され、中心に矩形の窓部を有する巻鉄心であって、コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている。
【0044】
また、以上に説明した実施形態に係る巻鉄心の製造方法は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有する複数枚の鉄心材を緩く巻回し、各鉄心材の前記切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部を形成することにより、コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心を製造する。
【0045】
また、以上に説明した実施形態に係る巻鉄心の製造方法は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有し、且つ、コーナ部を形成する部分が予め折り曲げられた鉄心材を緩く積層し、各鉄心材の前記切断部を接合した状態で中心に矩形の窓部を形成することにより、前記コーナ部における前記鉄心材の占積率が前記コーナ部を除く辺部における前記鉄心材の占積率よりも低くなっている巻鉄心を製造する製造方法であって、前記鉄心材を積層する前に、一の前記鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記辺部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げ、且つ、一の前記鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さを、当該鉄心材の内側の鉄心材において前記コーナ部を形成する部分の長さよりも所定量長くなるように折り曲げる。
【0046】
以上に説明した実施形態によれば、製造工程における精密な寸法管理を要することなく、また、製造工数の増大を招くことなく製造することができ、且つ、鉄損の増大を抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0048】
例えば、鉄心材は、一巻ごとに1箇所の切断部を有するものに限られず、一巻ごとに複数箇所の切断部を有するものであってもよい。即ち、鉄心材は、一巻ごとに少なくとも1箇所の切断部を有するものであれば、本実施形態に係る技術思想に含まれる。
【0049】
また、例えば図12に示すように、巻鉄心10は、コーナ部12における各鉄心材10aが複数枚毎に隙間を有している構成としてもよい。また、例えば図13に示すように、巻鉄心20は、コーナ部22における各鉄心材20aが複数枚毎に隙間を有している構成としてもよい。この場合、隙間と隙間との間に存在させる鉄心材10aあるいは鉄心材20aの枚数は適宜変更して実施することができ、例えば、上述した鉄心材群毎に隙間を有する構成とすることができる。また、図示はしないが、巻鉄心は、コーナ部において、各鉄心材が1枚毎に隙間を有する領域と各鉄心材が複数枚毎に隙間を有する領域とを混在させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
図面中、10は巻鉄心、11は窓部、12はコーナ部、13は辺部、14は接合部、20は巻鉄心、21は窓部、22はコーナ部、23は辺部、24は接合部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13