(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
防音箱内に圧縮機等の作業機本体と,該作業機本体を駆動するモータ,ファン,オイルクーラ等の熱交換器,そして,制御機器を含む,電気機器等の付属機器を収納し,前記防音箱の同一側壁面に防音箱内へ外気を取り入れる吸気口と前記熱交換器等を通過した排風を排出する排気口とを設けた屋外設置型作業機の防音箱において,
前記吸気口に可及的に接近して前記ファンを設置し,
前記吸気口より相対的に高い位置に前記排気口を設け,
前記吸気口において,幅方向を防音箱の外側に向かって下方に傾斜させた複数の吸気ルーバを上下方向に適宜間隔で並設し,
前記排気口において,矩形状の板片で外側ルーバ,内側ルーバにより,幅方向の両端を中央よりも上方に位置させると共に,前記中央を下方に突出する突出部を形成して断面略V字形状又は断面略逆「ハ」の字状とした複数の排気ルーバを上下方向に適宜間隔で並設し,
前記突出部に水抜き部を形成したことを特徴とする防音箱の吸排気口構造。
一枚の矩形状の板片をその幅方向の略中央において角度θで両端縁を上方に屈曲させて,下方に突出する突出部を有する折曲片で断面略V字形状とした複数の排気ルーバを上下方向に適宜間隔で並設すると共に,前記突出部に前記水抜き部を形成したことを特徴とする請求項1記載の防音箱の吸排気口構造。
前記排気ルーバを,矩形状の板片の幅方向を前記防音箱の外側に向かって上方に傾斜させた外側ルーバと,該外側ルーバより前記防音箱の内側に設置される,矩形状の板片の幅方向を防音箱の内側に向かって上方に傾斜させた内側ルーバを,対向配置させて下方に突出する前記突出部を形成し,該突出部に前記水抜き部を形成したものとしたことを特徴とする請求項1記載の防音箱の吸排気口構造。
前記外側ルーバの下端縁と前記内側ルーバの下端縁とを水抜き用の間隙を介して近接させて下方に突出する前記突出部を形成し,全体として断面が略逆「ハ」の字状となるように前記外側ルーバと前記内側ルーバを対向配置させたことを特徴とする請求項3記載の防音箱の吸排気口構造。
対向する前記内側ルーバの下端縁を前記外側ルーバの下端縁より高い位置に水抜き用の間隙を介して近接させて下方に突出する前記突出部を形成し,前記外側ルーバと前記内側ルーバとを上下方向に段違いに対向配置させたことを特徴とする請求項3記載の防音箱の吸排気口構造。
最下段の前記排気ルーバの下方に,案内板をその幅方向を前記防音箱の外側に向かって下方に傾斜するように配置し,前記案内板の下端縁を前記防音箱の側壁に形成された排水口に連通し,前記案内板の上端縁を少なくとも前記最下段の排気ルーバに形成された前記水抜き部よりも前記防音箱の内側まで延設したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の防音箱の吸排気口構造。
前記防音箱の側壁に形成された一の開口部の下部を複数の前記吸気ルーバを上下方向に適宜間隔で並設して前記吸気口とし,その上部を複数の前記排気ルーバを上下方向に適宜間隔で並設して前記排気口としたことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の防音箱の吸排気口構造。
前記吸気ルーバの内側に矩形状の枠体内を縦方向に仕切る複数の整流板を左右方向に配列させた整流ダクトを設けたことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の防音箱の吸排気口構造。
【背景技術】
【0002】
一般に,圧縮機や発電機等の作業機は,モータやエンジン等の構成機器や,これら構成機器を冷却するための冷却ファン等の作動時に生じる騒音が機外に漏出することを防止するために,防音箱内に収容される。
【0003】
そして,前記防音箱には,収容した作業機の各構成機器を冷却するために,機外の空気を導入するための吸気口及び機器の冷却に使用された空気を排出するための排気口が設けられている。
【0004】
しかし,前記吸気口及び排気口は,機器を冷却するための冷却風の吸排気口として機能する一方,防音箱内で発生した騒音の漏出口となり得る。
【0005】
また,屋外に設置される作業機は,風雨にさらされることから,前記吸気口及び排気口から雨水が侵入する恐れが有る。
【0006】
そこで,前記吸気口及び排気口からの騒音の漏出の防止をするだけでなく,前記吸気口及び排気口を介した雨水の侵入についても併せて防止するための防音箱の吸排気口構造が提案されている。
【0007】
このような防音箱の吸排気口構造の一例としては,
図13に示すように,モータ97,ファン96等の構成機器を筐体81内に収納したパッケージ型圧縮機の上面及び側面を上部防音カバー91と側部防音カバー92とで覆った防音箱90であって,冷却風を吸排気するために,筐体81の天板82に排気口88と側板83に吸気口89を形成し,また,上部防音カバー91に排気口93と側部防音カバー92に吸気口94を設け,該吸気口94を介して雨水の侵入及び騒音の漏出を防ぐために吸気口94に,防音箱90の外側に向かって下方に傾斜する複数のルーバ99を上下方向に間隔を置いて並設し,また,前記排気口93を介して侵入した雨水が前記排気口88側に導入されないように,遮蔽板95と傾斜板85を設け,排気口93を介して排気口88側に吹き込んだ雨水を受け止めて,排水受け86に誘導できるようにしている防音箱の吸排気口構造が提案されている(特許文献1)。
【0008】
なお,ファン96の作動により,吸気口94から冷却風を防音箱90内に導入し,防音箱90内を冷却した後,排気口93から防音箱90外に排出する一連の冷却風の流れが生じる。なお,
図13中の矢印は冷却風の流れを示す。
【0009】
また,特許文献2は,外気を吸排気するために,防音箱の側壁に形成された一の開口部を,特許文献1と同様に,防音箱の外側に向かって下方に傾斜する複数のルーバを上下方向に間隔を置いて並設した防音箱の吸排気口構造を提案している(特許文献2の
図3を参照)。
【0010】
また,特許文献3は,防音箱の側壁に形成された吸排気用の一の開口部に対して,後述する断面形態を有する外側ルーバ101と,内側ルーバ102とを対称的に対向させた状態で近接配置したものを上下方向に間隔を置いて複数段並設する防音箱の吸排気口構造を提案している。
【0011】
前記外側ルーバ101の断面構成は,
図15に示すように,図中の点Aは,外側ルーバ101の先端の位置を示しており,図中の点Aから点B(屈曲点)にかけては,先端から防音箱の外側へ向かい所定の傾斜角度をもって直線状に下がる上端傾斜部101aを形成し,この上端傾斜部101aをB点において屈曲させて,防音箱の外部の側面に沿って上下方向の平面を形成する外側表面部101bを形成し,外側表面部101bの下端の点C(屈曲点)から防音箱の内側に屈曲させ,中間の点D(屈曲点)を介して下端の位置を示す点Eまで連続的に2段階に先下がりに傾斜する傾斜部101cを形成している。
【0012】
一方,内側ルーバ102の断面構成は,
図15中の点aは,内側ルーバ102の先端の位置を示しており,図中の点aから点b(屈曲点)にかけては,先端から防音箱の内部方向へ向かって水平状の上端部102aが形成され,連続する点bから点c(屈曲点)にかけては,点bにおいて前記上端部102aから垂直に屈曲されて,防音箱の内部の側面に沿う上下方向の平面を形成する内側表面部102bが形成され,この内側表面部102bの下方の点c(屈曲点)から外部方向に向けて傾斜し,中間の点d(屈曲点)を介して下端の点eまで連続的に2段階に先下がりに傾斜する傾斜部102cが形成されている。
【0013】
なお,冷却風が上述のルーバ間を通過する際,外側ルーバ101の断面略「く」の字状の屈曲部分である点A−B−C−D間及び内側ルーバ102の断面略逆「く」の字状の屈曲部分である点d−c−b−a間において,通気路断面積が拡大していることで,
図15中の矢印で示すように,ルーバ面に沿う渦流が発生し,その遠心力によって,冷却風に混ざった水滴成分をルーバに付着させて分離させる効果を奏する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の特許文献1〜3に記載の防音箱の吸排気口構造はいずれも,防音箱の側壁に形成された通気用の開口部について,該開口部から防音箱内部への雨水の侵入を防止しつつ,防音箱外部への作業機等の騒音漏れが低減されるものである。
【0016】
しかし,例えば,特許文献1に記載の防音箱90のように,排気口93が防音箱90の上面に形成されている場合,必然的に雨水がこの排気口93から防音箱90内へ侵入してしまう。
【0017】
そこで,防音箱90内に雨水が侵入しないように,
図14に示すように,吸気口94を有する側部防音カバー92に前記排気口93を移設して,同一側壁面に吸気口94と該吸気口94より高い位置に排気口93を形成し,この排気口93に,上述した吸気口94におけるルーバ構造を採用することで防音箱90内部への雨水の侵入を防止しつつ,防音箱90外部への作業機等の騒音漏れの低減を図ることが考えられる。
【0018】
しかし,
図14(図中の矢印が冷却風の流れを示す。)に示すように,防音箱90の同一側壁面に吸気口94と排気口93を配置して,吸気口94及び排気口93に対して,防音箱90の外側に向かって下方に傾斜する複数のルーバ99を並設する構造を採用した場合,吸気口94から吸気された冷却風は,防音箱90に収容された圧縮機などを通過して暖められた後,排気口93により防音箱外の下方に排出される。
【0019】
そのため,排気口93により防音箱外の下方に排出された高温の排風が回り込んで,防音箱90の下側に配置された吸気口94を介して再び防音箱90内へ吸い込まれてしまい,防音箱90内の冷却が好適になされずに,防音箱90内の圧縮機のヒートバランスが悪化する。
【0020】
このような問題は,特許文献2に記載の防音箱の吸排気口構造においても,特許文献1と同様に防音箱の外側に向かって下方に傾斜する複数のルーバを並設する構造であるため,同様に発生する。
【0021】
また,特許文献3に記載の吸排気口構造は,雨水の侵入の防止及び騒音の漏出の低減が図れるものの,ルーバの構造が複雑で,製造コストが高騰することになり,又,上述したとおり,ルーバ面において渦流を発生させ,その遠心力によって,冷却風から水分をルーバに付着させて分離させるものであるが,この渦流の発生により通気性が悪くなるため,防音箱内の冷却を適切に行えないという欠点がある。
【0022】
そこで,本発明は,防音箱の同一側壁面に設けられた吸気口と排気口における,騒音の漏出の防止及び,防音箱内への雨水の侵入を防止すると共に,防音箱内の冷却を適切に行うことのできる防音箱の吸排気口の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0024】
上記目的を達成するために,本発明の防音箱1の吸排気口構造は,防音箱1内に圧縮機等の作業機本体と,該作業機本体を駆動するモータ,ファン7,9,オイルクーラ6等の熱交換器,そして,制御機器を含む,電気機器等の付属機器を収納し,前記防音箱の同一側壁面2に防音箱1内へ外気を取り入れる吸気口12と前記熱交換器等を通過した排風を排出する排気口15とを設けた屋外設置型作業機の防音箱1において,
前記吸気口12に可及的に接近して前記ファン7,9を設置し,
前記吸気口12より相対的に高い位置に前記排気口15を設け,
前記吸気口12において,幅方向を防音箱1の外側に向かって下方に傾斜させた複数の吸気ルーバ13を上下方向に適宜間隔で並設し,
前記排気口15において,矩形状の板片で外側ルーバ16a,内側ルーバ16bにより,幅方向の両端16c,16dを中央よりも上方に位置させると共に,前記中央を下方に突出する突出部17を形成して断面略V字形状又は断面略逆「ハ」の字状とした複数の排気ルーバ16を上下方向に適宜間隔で並設し,
前記突出部17に水抜き部18を形成したことを特徴とする(請求項1)。
【0025】
また,一枚の矩形状の板片をその幅方向の略中央において角度θで両端縁を上方に屈曲させて,下方に突出する前記突出部17を有する折曲片で断面略V字形状とした複数の排気ルーバ16を上下方向に適宜間隔で並設すると共に,前記突出部17に前記水抜き部18を形成しても良い(請求項2)。
【0026】
また,前記排気ルーバ16を,矩形状の板片の幅方向を防音箱1の外側に向かって上方に傾斜させた外側ルーバ16aと,該外側ルーバ16aより防音箱1の内側に設けられた,矩形状の板片の幅方向を防音箱1の内側に向かって上方に傾斜させた内側ルーバ16bを対向配置させて下方に突出する前記突出部17を形成し,該突出部17に前記水抜き部18を形成したものとしても良い(請求項3)。
【0027】
また,前記外側ルーバ16aの下端縁と前記内側ルーバ16bの下端縁とを水抜き用の間隙18を介して近接させて下方に突出する前記突出部17を形成し,全体として断面が略逆「ハ」の字状となるように前記外側ルーバ16aと前記内側ルーバ16bを対向配置させても良い(請求項4)。
【0028】
この他,対向する前記内側ルーバ16bの下端縁を前記外側ルーバ16aの下端縁より高い位置に水抜き用の間隙18を介して近接させて下方に突出する前記突出部17を形成し,外側ルーバ16aと内側ルーバ16bとを上下方向に段違いに対向配置させても良い(請求項5)。
【0029】
また,最下段の前記排気ルーバ16の下方に,実施形態では,矩形状の平板の,案内板21をその幅方向を防音箱1の内側に向かって上方に傾斜するように配置し,前記案内板21の下端縁22を防音箱1の側壁面2に形成された排水口4に連通し,前記案内板21の上端縁23を少なくとも前記最下段の排気ルーバ16に形成された前記水抜き部18よりも防音箱1の内側まで延設しても良い(請求項6)。
【0030】
また,防音箱の側壁面2に形成された一の開口部31の下部を複数の前記吸気ルーバ13を上下方向に適宜間隔で並設して前記吸気口12とし,その上部を複数の前記排気ルーバ16を上下方向に適宜間隔で並設して前記排気口15としても良い(請求項7)。
【0031】
前記吸気ルーバ13の内側に矩形状の枠体内を縦方向に仕切る複数の整流板44を左右方向に配列させた整流ダクト41を設けても良い(請求項8)。
【発明の効果】
【0032】
以上で説明した,本発明の構成により,防音箱1の吸気口12においては,防音箱1内への雨水の侵入を防ぎつつ,防音箱1内で発生した騒音が吸気ルーバ13との衝突によって減衰され,また,ファン9の作動によって各吸気ルーバ13間の間隔によって確保された吸気路より下方から冷却風を取り込み,取り込まれた冷却風は作業機本体等の機器を冷却して,順次上昇しながら排気口15へと旋回し,一方,排気口15においては,防音箱1内への雨水の侵入を防ぎつつ,防音箱1内で発生する騒音が排気ルーバ16との衝突によって減衰され,また,各排気ルーバ16間の間隔によって確保された排気路より,防音箱1内を冷却した後の高温の排風を上方へ排出することができた。
【0033】
その結果,排気口15から排出された高温の排風が吸気口12に回り込むことを防ぐことが可能となり,吸気口12からは下方の冷たい外気が導入されるため,防音箱1に収容された機器に対して低温の冷却風を供給することができ,防音箱1に収容した機器の性能を確保できた。
【0034】
また,排気ルーバ16の幅方向略中央の突出部17に水抜き部18を形成することにより,排気ルーバ16に侵入した雨水が排気ルーバ16において滞留することを防止できた。
【0035】
また,排気ルーバ16に侵入した雨水を,前記水抜き部18を通じて案内板21まで滴下させ,防音箱1に形成された排水口4からスムーズに排出することができた。
【0036】
また,前記排気ルーバ16として,上記内側ルーバ16bと上記外側ルーバ16aを用いた場合,防音箱の内側に向かって上方に傾斜させた上記内側ルーバ16bにより防音箱1外からの雨水の侵入を防止し,防音箱1の外側に向かって上方に傾斜させた上記外側ルーバ16aにより高温の排風を防音箱外の上方に排出することができた。
【0037】
また,上記水抜き用の間隙18により排気口15に侵入した雨滴の排水を好適に行うことができ,また,上述のように内側ルーバ16bと外側ルーバ16aとを段違いに配置すると,排風が上記水抜き用の間隙18より下方へ流出しにくくなる。
【0038】
また,排気ルーバ16に侵入した雨水を,上記水抜き用の間隙18を通じて案内板21まで滴下させ,防音箱1に形成された排水口4からスムーズに排出することができた。
【0039】
吸気ルーバ13に,縦仕切りの整流ダクト41を設けて格子状を形成することで,吸気口より吸入される冷却風を効果的に整流することができ,また,通路面積を確保しつつ整流ができるため,本来の冷却風の流量を損なわずに防音箱に収容された機器を冷却でき,圧縮機のヒートバランスの向上が図れると共に,整流作用により吸入流速が均一化され,乱流による騒音の発生を抑制でき,低騒音化を図れた。
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔防音箱〕
本発明の吸排気口構造が用いられる防音箱1は,図に示すように,基台となるフレーム51上に作業機等の機器を載置すると共に,このフレーム51上に載置された機器を包囲する側壁2と天板3により形成された箱形形状を成す。
【0042】
また,防音箱1はその前記側壁2に扉52が設けられており,防音箱1内に収容された機器を保守,点検,交換等を行うことができる。
【0043】
また,防音箱1は,例えば,
図1及び
図2に示すように,同一側壁面2に排気口15及び吸気口12を有し,排気口15が吸気口12より高い位置に設けられているものが好適である。
【0044】
なお,本実施形態の防音箱1の天板6には,
図2に示すように,排気口15の他に冷却風を排出するための排風口5が形成されているが,雨水の侵入を防止するために,天板3に排風口5を有しない防音箱に適用可能である。
【0045】
次に,添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0046】
〔圧縮機〕
防音箱1は発電機や圧縮機等の作業機を収容することができるが,一例として,
図1の防音箱1は油冷式圧縮機を収容している。
【0047】
通常,前記油冷式圧縮機の構成としては,空気を圧縮して得られた圧縮空気を,作用空間を潤滑・密封及び冷却するための冷却油と共に,気液混合流体として吐出する圧縮機本体,この圧縮機本体を駆動するモータ,エンジン等の駆動源,前記圧縮機本体より圧縮空気との気液混合流体として吐出された冷却油を分離する油分離装置,この油分離装置において圧縮空気と分離され回収された冷却油を冷却するためのオイルクーラ6等の熱交換器,前記冷却油の給油配管,消費側へ供給する圧縮空気を乾燥するためのドライヤ8,前記オイルクーラ6やドライヤ8が備える熱交換器に冷却風を供給するファン7,9等から構成されている。
【0048】
また,その他の圧縮機を構成する機器としては,例えば,前記モータの回転数を制御するインバータや前記圧縮機本体の吸気口を開閉制御する弁等の制御機器,電磁弁や圧電端子及び各表示ランプ等の電気機器等がある。
【0049】
〔防音箱内部〕
図1に示すように,前記圧縮機を収容する防音箱1内は仕切板によって,前記圧縮機本体等を収容する圧縮機室61(図中左側),前記ドライヤ8等を収容しかつ前記吸気口12及び排気口15を有するドライヤ室62(図中右上側),前記排風口5を有する排風室63(図中左上側),前記吸気口12を有する吸気室64(図中右下側)の4室と送風通路65(図中中央)に仕切られている。
【0050】
なお,前記吸気室64と前記送風通路65を仕切る仕切板には開口が設けられており,前記吸気室64に導入された冷却風を前記送風通路65に誘導できるように前記吸気室64と前記送風通路65とが一部連通している。
【0051】
同様に,前記送風通路65と前記排風室63を仕切る仕切板には開口が設けられており,前記送風通路65に導入された冷却風を前記排風室63に誘導できるように前記送風通路65と前記排風室63とが一部連通している。なお,
図1に示すように,この前記送風通路65と前記排風室63とを連通する前記開口の形成位置付近において,前記オイルクーラ6を配置しても良い。
【0052】
また,前記圧縮機室61に冷却風を誘導するために,前記送風通路65と前記圧縮機室61を仕切る仕切板及び前記圧縮機室61と前記排風室63を仕切る仕切板に開口を形成して,各室を一部連通してもよい。
【0053】
実施形態1
〔吸気ルーバ〕
開口部からの騒音の漏出を防止するために,前記排気口15及び前記吸気口12に対してルーバが用いられるが,本発明の防音箱の吸排気口構造は,吸気口12と排気口15とで各々その構成が異なる。
【0054】
吸気口12は,
図1に示すように,細長い矩形状を成す複数の吸気ルーバ13について,その幅方向を防音箱1の外側に向かって下方に傾斜させて,上下方向に適宜間隔,ここでは等間隔かつ各吸気ルーバ13が平行になるように並設している。
【0055】
以上のような吸気口12におけるルーバの構成により,防音箱1内で発生した騒音が吸気ルーバ13との衝突によって減衰され,一方,各吸気ルーバ13間の間隔によって冷却風の吸気路が確保される。また,幅方向を防音箱1の外側に向かって下方に傾斜させて配置された吸気ルーバ13によって,吸気口12からの雨水の侵入を防ぐことができ,また,吸気口12より下方の外気を取り込む。
【0056】
なお,上段の吸気ルーバ13の下端が,その下段の吸気ルーバ13の上端よりも低位置に配置されていると,雨水の侵入をより好適に防止できる。
【0057】
また,吸気ルーバ13について,
図1に示すように,防音箱1の内側に位置する吸気ルーバ13の上端部を屈曲させて防音箱1の内部側面に沿うようにした断面略L字状の折曲部14を形成してもよい。
【0058】
〔ファン〕
本実施形態の防音箱1には,冷却風を防音箱1内に導入し防音箱1内を冷却した冷却風を機外に排出する一連の冷却風の流れを生じさせるために,前記ドライヤ室62内に,前記ドライヤ8に備えられる熱交換器に冷却風を供給するファン(ドライヤファン)9が収容されていて,前記吸気室64内に,前記オイルクーラ6に冷却風を供給するファン(冷却ファン)7が収容されている。
【0059】
なお,後述する防音箱1内での冷却風の流れを生じさせるために,吸気口12には,
図1に示すように,前記ドライヤファン9が可及的に接近して設置される。
【0060】
〔排気ルーバ〕
一方,排気口15においては,
図3に示すように,1枚の矩形状の板片をその幅方向の略中央において角度θで両端(外側端16c,内側端16d)縁を上方に屈曲させて,下方に突出する突出部17を有する折曲片(図中の防音箱1の外側に位置する外側ルーバ16aと防音箱1の内側に位置する内側ルーバ16b)で全体として断面略V字形状とした複数の排気ルーバ16を上下方向に適宜間隔,ここでは等間隔かつ各排気ルーバ16が平行になるように並設している。
【0061】
なお,
図3に示すように,排気ルーバ16について,防音箱1の内側に位置する端部を略直角に屈曲させて断面略L字状とした折曲部19を形成してもよい。
【0062】
また,突出部17の角度θは,後述する排気口15からの排風の吸気口12への回り込みを軽減するため,角度θを小さくすることが好ましい。
【0063】
雨水の侵入防止の観点から,
図3に示すように,下段の排気ルーバ16の内側端16dの位置が,その上段の排気ルーバ16の外側ルーバ16aを下端から内側方向へ延長した延長線Lと内側ルーバ16bとの交点Pよりも高い位置に配置されるように,突出部17の角度θ及び内側ルーバ16bの長さを設定することが好ましい。これにより,圧縮機の停止時において,雨水が排気ルーバ16間に侵入したとしても排気ルーバ16の内側端16dを越えて,直接防音箱1内に侵入することを防止することができる。
【0064】
また,騒音の漏出防止の観点から,下段の排気ルーバ16の内側端16d又は外側端16cの位置を,その上段の排気ルーバ16の突出部17よりも高くなるように,前記突出部17の角度θ及び外側ルーバ16aと内側ルーバ16bの長さを設定することが好ましい。これにより,防音箱1内の騒音は直接防音箱外へ漏出せず排気ルーバ16に反射,減衰される。
【0065】
以上のような排気口15におけるルーバの構成により,防音箱1内で発生する騒音が排気ルーバ16との衝突によって減衰され,また,排気口15から防音箱1内への雨水の侵入を防止する。さらに,
図1及び
図3に示すように,断面V字形状を成す各排気ルーバ16間の間隔を通じて,防音箱1内を冷却した後の高温の排風を機外の上方へ排出することができる。
【0066】
なお,排気ルーバ16及び吸気ルーバ13は,吸音材を貼着して使用しても良く,防音箱1内で発生した騒音の漏出をより少なくすることができる。
【0067】
〔冷却風の流れ〕
上述したように,防音箱1はファン7,9を収容している。このファン7,9の作動により,冷却風を防音箱1内に導入し防音箱1内の機器を冷却した冷却風を機外に排出する一連の冷却風の流れが生じる。なお,
図1中の矢印は冷却風の流れを示している。
【0068】
図1において,前記冷却ファン7の作動により,吸気室64の吸気口12から下方の外気が防音箱1内へ取り込まれ,その後,防音箱1の略中央に設置された冷却ファン7まで達した冷却風は前記送風通路65を上昇し,上方に設けられたオイルクーラ6を冷却後,前記排風室63の排風口5から排出される。
【0069】
一方,前記ドライヤファン9の作動により,ドライヤ室62の吸気口12より下方の外気が防音箱1内に導入され,吸気口12より導入された冷却風は,
図1に示すように,上昇しながら旋回し,機器を冷却して,ドライヤ室62の排気口15から排気される。この際,排気口15には断面略V字形状を成す排気ルーバ16が並設されているため,排風は防音箱の外方でかつ上方に向かって排気されることになる。
【0070】
従って,本実施形態の構成により,排気口15から排気された高温の排風が吸気口12に回り込むことを防ぐことが可能となり,吸気口12からは下方の冷たい外気が導入され,防音箱1内の機器へ低温の冷却風を供給することができ,防音箱1に収容した機器を冷却してその性能を確保できる。
【0071】
また,例えば,複数台の圧縮機を隣接して設置する場合,一の圧縮機から排出された高温の排風を隣接する圧縮機が吸気しオーバーヒートする可能性があったが,本実施形態の吸排気口構造を採用した防音箱1は,下方より吸気し防音箱外の上方に排気する構造であり,圧縮機から排出された高温の排風は防音箱内の上方を流れるため,隣接する他の圧縮機への排風の影響を低減することができる。
【0072】
また,
図5に示すように,本実施形態の排気ルーバ16の幅方向略中央の突出部17には,長さ方向に複数の水抜き穴(水抜き部)18が形成されている。これにより,侵入した雨水が排気ルーバ16の突出部17において滞留しない。
【0073】
〔案内板 排水口〕
また,本実施形態の排気口15には,排気口15に配置した排気ルーバ16のうち最下段の排気ルーバ16の下方に,案内板21を設けている。
【0074】
この案内板21は,
図4に示すように,矩形状の平板の幅方向を防音箱1の外側に向かって下方に傾斜し,その下端縁22を防音箱1の側壁2に形成された排水口4に連通され,また,上端縁23が,前記最下段に位置する排気ルーバ16に設けた水抜き部(水抜き穴)18よりも防音箱1の内側まで延設されている。
【0075】
なお,
図4に示すように,案内板21は,その上端部を屈曲させて防音箱1の内部側面に沿うようにした断面略L字状の折曲部24を形成してもよい。
【0076】
〔雨滴の排水〕
図4中の矢印で示すように,排気口15に設けられた排気ルーバ16に侵入した雨水は,各排気ルーバ16に形成された水抜き穴18を通じて案内板21まで滴下し,この案内板21を伝って,案内板21の下端が連通する排水口4より防音箱1の外部へ排出される。
【0077】
実施形態2
次に,本発明の別の実施形態について,
図6を参照しながら以下説明する。
【0078】
〔防音箱〕
上述した実施形態1では,防音箱1の同一の側壁2に二つの開口部を形成して吸気口12と排気口15とを設けたが,本実施形態の防音箱1は,
図6に示すように,側壁2に一の開口部31を形成し,後述する本実施形態の防音箱の吸排気口構造を採用することで,同一の側壁面2に吸気口12と排気口15とを設けている。
【0079】
〔吸排気口構造〕
図6に示すように,防音箱1の開口部31には,その下部に実施形態1と同じ構造の複数の吸気ルーバ13を上下方向に適宜間隔,ここでは等間隔かつ平行に並設し,その上部に実施形態1と同じ構造の複数の排気ルーバ16を上下方向に吸気ルーバ13と同様に適宜間隔で並設し,吸排気一体型の吸排気口構造と成っている。
【0080】
〔ファン〕
防音箱1は,冷却風を防音箱1内に導入し防音箱1内を冷却した冷却風を機外に排出する一連の冷却風の流れを生じさせるファン34を収容している。
【0081】
また,後述する防音箱1内での冷却風の流れを生じさせるために,前記ファン34は,
図6に示すように,吸気口12に可及的に接近して設置されている。
【0082】
〔冷却風の流れ〕
図6に示すように,防音箱1内のファン34の作動により開口部31の下部の吸気口12から吸入した低温の冷却風が,防音箱1内で上昇しながら旋回し,ドライヤ33が備える熱交換器と熱交換して高温となって,開口部31の上部の排気口15より防音箱外の上方に排出される。
【0083】
実施形態1と同様,排風を上方へ排出することにより,排気口15からの高温の排風が吸気口12側への回り込みを防止できる。また,本実施形態の防音箱の吸排気口構造は,小型機などの部品サイズがあまり大きくない場合等,吸気ルーバ13と排気ルーバ16とを一体型の部品とすることにより,部品点数の削減,組立工数の低減が可能である。
【0084】
実施形態3
更に,本発明の別の実施形態について,
図7,8を参照しながら以下説明する。
【0085】
〔排気ルーバ〕
本実施形態では,排気口15のルーバの構成について,
図7に示すように,実施形態1及び2の一枚板による排気ルーバ16の代わりに,細長い矩形状を成す板片の幅方向を防音箱1の外側に向かって上方に傾斜させて配置した外側ルーバ16aと,この外側ルーバ16aより防音箱1の内側に配置され,幅方向を防音箱1の内側に向かって上方に傾斜させた細長い矩形状の内側ルーバ16bとを対向させ,さらに,対向する一対の内側ルーバ16bの下端縁と外側ルーバ16aの下端縁とを水抜き用の間隙(水抜き部)18を介して近接させて突出部17を形成し,断面が略逆「ハ」の字状に配置して,上下方向に複数並設し排気口15を覆っている。
【0086】
なお,本発明でいう対向とは,向き合うことをいい,外側ルーバ16aと内側ルーバ16bとが所定の角度を持って向き合うことを含み,また,外側ルーバ16aと内側ルーバ16bが線対称にある場合だけでなく,相互に向き合う面において設けられているものを指す広い概念であり,幅方向中央に向かって下方に傾斜する外側ルーバ16aと内側ルーバ16bとの両下端縁を上下方向に間隙を介して対峙させたものも含むものとする。
【0087】
なお,
図7に示すように,内側ルーバ16bについて,防音箱1の内側に位置する上端部を略直角に屈曲させて断面略L字状とした折曲部19を形成してもよい。
【0088】
また,
図8に示すように,対向する一対の内側ルーバ16bと外側ルーバ16aについて,内側ルーバ16bの下端縁を外側ルーバ16aの下端縁より高い位置に近接させて,外側ルーバ16aと内側ルーバ16bとを段違いに配置することもできる。
【0089】
内側ルーバ16bは,防音箱の内側に向かって上方に傾斜させて配置することにより,防音箱1外からの雨水の侵入を防止し,外側ルーバ16aは,防音箱1の外側に向かって上方に傾斜させて配置することにより,高温の排風を防音箱外の上方に排出する。
【0090】
なお,外側ルーバ16aと内側ルーバ16bとの間には
図7のように,水抜き用の間隙を設けても良いが,防音箱内からの排風がこの水抜き用の間隙より下方へ漏出するのを防ぐため,水抜き用の間隙は最小限に設けた方が良い。
【0091】
また,
図8のように,対向する一対の内側ルーバ16bの下端縁を外側ルーバ16aの下端縁より高い位置となるように,外側ルーバ16aと内側ルーバ16bとを段違いに配置すると,排風が間隙より下方へ流出しにくくなる。
【0092】
実施形態4
更に,本発明の別の実施形態について,
図9を参照しながら以下説明する。
【0093】
〔整流ダクト〕
図9に示すように,本実施形態の防音箱の吸排気口構造は,実施形態1の吸気口12における吸気ルーバ13の内側に縦仕切りの整流ダクト41を設けたものである。
【0094】
本実施形態で使用される整流ダクト41は,
図10に示すように,一対の縦板42,42と,一対の横板43,43を四角形状に枠組みして一体に形成された枠体内に,この枠体を縦方向に仕切る複数の矩形状の整流板44を左右方向に等間隔に配列させたものである。
【0095】
吸気ルーバ13に,縦仕切りを持つ整流ダクト41を配置することで格子状を形成し,吸気口より吸入される冷却風を効果的に整流することができ,また,通路面積を確保しつつ整流ができるため,本来の冷却風の流量を損なわずに防音箱に収容されたクーラ等を冷却でき,圧縮機のヒートバランスの向上が図れる。
【0096】
整流作用により吸入流速が均一化され,雨水の侵入を抑制することができるとともに,乱流による騒音の発生を抑制でき,低騒音化を図れる。
【0097】
また,整流ダクト41の枠体の内側,整流板44の両面に吸音材を貼着することでさらに防音効果を向上させることができる。
【0098】
なお,上述の整流ダクト41は吸気ルーバ13の外側に設けても良く,実施形態2及び実施形態3の吸気ルーバ13にも設けることができる。