特許第6225061号(P6225061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225061
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】鶏舎の換気構造及び鶏舎の換気方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/00 20060101AFI20171023BHJP
   A01K 31/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A01K1/00 F
   A01K31/00
   A01K1/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-79991(P2014-79991)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-198618(P2015-198618A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030661
【氏名又は名称】株式会社ハイテム
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏視
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭59−012934(JP,B1)
【文献】 特開平07−289106(JP,A)
【文献】 実開平02−085931(JP,U)
【文献】 実公昭52−054587(JP,Y1)
【文献】 特開2004−033007(JP,A)
【文献】 特開2009−142588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00
A01K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏舎の壁体の上部に形成された通気口と、
該通気口が形成された前記壁体とは異なる鶏舎の壁体に形成された排気口と、
該排気口に取り付けられた排気ファンと、
前記通気口を開閉する通気調整装置と、
前記通気口を被覆している遮光通気部材とを具備し、
該遮光通気部材は、間隔をあけて並設された複数の薄板材の湾曲、屈曲、及び傾斜の少なくとも何れかにより、光は通過しないが空気は自然通過する通気空間を有しており、
前記通気調整装置は、電力が供給されている通常時は、前記排気ファンの稼働による前記排気口からの排気に伴い前記通気口から強制的に取り込まれる空気の流入量を、前記通気口の開度によって調整し、電力の供給が停止した停電時は、前記通気口を開放することにより前記通気口を介して空気を自然に流通させるものであり、
前記通気口は、前記通常時の強制換気と前記停電時の自然換気に兼用される
ことを特徴とする鶏舎の換気構造。
【請求項2】
記通気口は、前記壁体の全長にわたり設けられていると共に、複数のユニットに分割されており、
前記通気調整装置は、前記ユニットごとに設けられていると共に、前記ユニットごとに前記通気口の開度を調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の鶏舎の換気構造。
【請求項3】
請求項に記載の鶏舎の換気構造を使用した鶏舎の換気方法であって、
電力が供給されている通常時は、
前記排気ファンを稼働させて前記排気口から排気すると共に、これに伴って前記通気口から強制的に取り込まれる空気の流入量を、前記通気口の開度によって調整し、
電力の供給が停止した停電時は、
前記通気口を開放し、前記通気口を介して空気を自然に流通させる換気を行うことにより、
前記通常時の強制換気と前記停電時の自然換気に、前記通気口を兼用する
ことを特徴とする鶏舎の換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎の換気構造、及び、該換気構造を使用した鶏舎の換気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、養鶏のための施設及び設備に関する技術を、これまで種々提案し実施してきているが、その中に、ウインドレスの換気構造を備えた鶏舎に関するものがある(例えば、特許文献1,2参照)。これらは、長いケージ列が収容された鶏舎であり、妻面(棟に直角な側面)の一方に入気口を、妻面の他方に排気口を、それぞれ大きな面積で設ける一方で、棟に平行な両側壁の上部において屋根との間に、側壁の長手方向のほぼ中央から排気口のある妻面に向かって延びる補助入気口を設けたものである。
【0003】
そして、排気口に取り付けられた排気ファンで強制的に排気することにより鶏舎内を陰圧にし、入気口または補助入気口から空気を取り込むことにより換気を行う。鶏舎内に取り込まれた空気は、トリの体温で温められながら鶏舎内を流通し、排気口から排出される。外気温や鶏舎内の温度に基づき、空気の取り込みを入気口と補助入気口とで切り換え、或いは、空気の取り込み量を調整することにより、鶏舎内における空気の流れの上流側と下流側との温度差を小さくすることができる。
【0004】
図5に示すように、上記の技術を適用した実際の鶏舎の換気構造100では、側壁110の上部を外側から被覆する垂壁140が、側壁110との間に空隙を設けて屋根81から垂下されており、側壁110の上端と屋根81との間に設けられた補助入気口120に至る通気路125が、側壁110と垂壁140との間に形成されている。このような垂壁140を用いた構造は、補助入気口120を介して、鶏舎内に太陽光が射し込んだり強風が吹き込んだりするおそれを、垂壁140によって回避したものである。補助入気口120が開放している状態では、図5(a)に矢印で示すように、通気路125及び補助入気口120を介して鶏舎内に外気が取り込まれる。なお、通気路125を介して鶏舎内に鳥や虫が進入することを防止するために、垂壁140と側壁110との間には網体129が張設されている。
【0005】
このように、排気ファンの稼働によって強制的に換気を行うウインドレスの鶏舎では、停電の際には、速やかに自然換気に切り換える必要がある。トリの体温は高いため、換気が停止した状態では短時間で熱死に至るおそれがあるからである。そこで、停電の際には、図5(b)に示すように、補助入気口120を全開にすることにより、通気路125を介して鶏舎内の空気を外部に排出させることを想到し得る。この場合、空気は側壁110と垂壁140との間の通気路125を、垂壁140の下端より低い高さに至るまで下方に向かって流れなければ、外部に排出させることができない。しかしながら、高温の空気は自ずと上昇してしまうため、このような垂壁140を使用する換気構造では、鶏舎内で暖められた空気をスムーズに外部に排出させにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3703168号公報
【特許文献2】特許第3598212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、停電時にスムーズに換気を行うことができる鶏舎の換気構造、及び、該換気構造を使用した鶏舎の換気方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる鶏舎の換気構造は、「鶏舎の壁体の上部に形成された通気口と、該通気口を開閉し、電力の供給が停止したときに前記通気口を開放する通気調整装置と、前記通気口を被覆している遮光通気部材とを具備し、該遮光通気部材は、間隔をあけて並設された複数の薄板材の湾曲、屈曲、及び傾斜の少なくとも何れかにより、光は通過しないが空気は自然通過する通気空間が形成されている」ものである。
【0009】
「壁体の上部に形成された通気口」としては、壁体の上端と屋根との間に空隙を設けることにより形成された通気口、鶏舎が天井を有する場合に壁体の上端と天井との間に空隙を設けることにより形成された通気口、を例示することができる。
【0010】
「通気調整装置」としては、回動により通気口を開閉する方開き、または両開きの開閉板材を有する構成、スライドにより通気口を開閉する開閉板材を有する構成、を例示することができる。また、通気調整装置が「電力の供給が停止したときに前記通気口を開放する」機構としては、電力の供給が停止したときにバッテリからの電力の供給に切り替えて開閉板材を駆動する機構、通気口を開放する方向の付勢に抗して、電磁力により開閉板材で通気口を閉鎖しておく機構、を例示することができる。
【0011】
「遮光通気部材」では、間隔をあけて並設された複数の薄板材の間の空隙が、空気を通過させる通気空間である。そして、薄板材は、湾曲、屈曲、及び傾斜の少なくとも何れかにより、直進する光を遮るものであり、光は通気空間を通過することがない。なお、薄板材の態様としては、湾曲または屈曲のみしている態様、傾斜のみしている態様、湾曲または屈曲しつつ傾斜している態様、を例示することができる。また、空気が「自然通過」するとは、吸気や圧送など強制的に空気を移動させることなく、空気が通気空間を通過することを指している。
【0012】
本構成では、電力の供給が停止したときに開放する通気口は、壁体の上部に形成されている。これにより、トリの体温によって暖められて高温となり、自ずと上昇する鶏舎内の空気を、通気口から外部にスムーズに排出させることができるため、空気の流れが生じ自然換気することができる。そして、通気口は、空気は自然通過させるが光は通過させない遮光通気部材で被覆されているため、解放された通気口を介して、鶏舎内に太陽光が射し込むことが防止される。
【0013】
本発明にかかる鶏舎の換気構造は、上記構成に加え、「前記通気口が形成された前記壁体とは異なる鶏舎の壁体に形成された排気口と、該排気口に取り付けられた排気ファンと」を具備している。更に、本発明にかかる鶏舎の換気構造は、上記構成に加え、「前記通気口は、前記壁体の全長にわたり設けられていると共に、複数のユニットに分割されており、前記通気調整装置は、前記ユニットごとに設けられていると共に、前記ユニットごとに前記通気口の開度を調整可能である」ものとすることができる。
【0014】
本構成では、電力の供給が停止したとき、つまり非常時に開放させる通気口を、非常時のみに使用する専用の設備とするのではなく、通常時における鶏舎の強制的な換気に使用する。これにより、鶏舎の設備を有効に活用することができる。
【0015】
具体的には、電力が供給されている通常時は、排気ファンを稼働させて排気口から空気を排出することにより、通気口から外気を取り込む。通気口の開度は、通気調整装置によって調整可能であるため、鶏舎内の温度や外気温に基づいて、通気口からの空気の流入量を調整することができる。更に、通気口は壁体の全長にわたり設けられているが、通気口から流入した空気は排出口に向かう過程でトリの体温によって暖められるため、鶏舎内では排出口までの距離の違いによって温度差が生じ易い。そこで本構成では、通気口を複数のユニットに分割し、ユニットごとに通気調整装置を設けている。これにより、例えば、排出口から遠いユニットの通気口より、排出口に近いユニットの通気口の方が、外気の取り込み量が多くなるように通気調整装置で通気口の開度を調整することより、鶏舎内の空気の流通における上流と下流との温度差を低減することができる。
【0016】
加えて、通気口が壁体の全長にわたり設けられていることにより、電力の供給が停止したときに通気口が開放されると、壁体の全長にわたり外部と連通する開口が形成される。これにより、鶏舎内で部分的に空気が滞留するおそれを低減して、スムーズに自然換気を行うことができる。なお、通気口が形成される壁体は、鶏舎内に並設される複数のケージ列と平行な壁体とすれば、好適である。ケージの長さは、一般的に数十メートル以上と非常に長いが、通気口がケージに平行であれば、長いケージに収容されているトリを、ケージにおける場所によらず、強制換気の停止に伴う体温の上昇から保護できるからである。
【0017】
次に、本発明にかかる鶏舎の換気方法は、「上記に記載の鶏舎の換気構造を使用した鶏舎の換気方法であって、電力が供給されているときは、前記通気口を開閉し、前記通気口からの空気の取り込み及びその停止を切り換えると共に、前記通気口から空気を取り込む際の前記通気口の開度を調整し、電力の供給が停止したときは、前記通気口を開放し、前記通気口を介して換気を行う」ものである。
【0018】
本構成の鶏舎の換気方法では、同一の設備を使用して、電力が供給されている通常時の強制換気と、電力の供給が停止したときの自然換気との双方を行うことができると共に、電力の供給が停止したときの自然換気を、壁体の上部に形成された通気口を介してスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の効果として、停電時にスムーズに換気を行うことができる鶏舎の換気構造、及び、該換気構造を使用した鶏舎の換気方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態である鶏舎の換気構造における電力が供給されているときの要部断面図である。
図2図1の鶏舎の換気構造における電力の供給が停止したときの要部断面図である。
図3図2の状態における側壁全体の断面図である。
図4図1の鶏舎の換気構造に使用する遮光通気部材の(a)正面図、及び(b)X−X線断面図である。
図5】(a)従来の鶏舎の換気構造における電力が供給されているときの断面図、及び(b)図5(a)の鶏舎の換気構造において電力の供給が停止したときに想到される換気を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である鶏舎の換気構造1(以下、単に「換気構造1」と称する)、及び、換気構造1を使用した鶏舎の換気方法について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0022】
本実施形態の換気構造1は、鶏舎の壁体である側壁10の上部に形成された通気口20と、通気口20を開閉し、電力の供給が停止したときに通気口20を開放する通気調整装置30と、通気口20を被覆している遮光通気部材40とを具備し、遮光通気部材40は、間隔をあけて並設された複数の薄板材41の湾曲、屈曲、及び傾斜の少なくとも何れかにより、光は通過しないが空気は自然通過する通気空間42が形成されているものである。
【0023】
具体的に説明すると、鶏舎は棟に平行な方向の長さが数十メートルから100メートル、棟に直交する方向の長さが十数メートルから30メートルの細長い形状であり、鶏舎内では棟に平行な方向に延びるケージ列が複数並設されている。そして、棟に平行な一対の側壁10において、側壁10の上端と屋根81との間に空隙が設けられることにより、通気口20が形成されている。より詳細には、屋根裏の空間は、側壁10より内側で、側壁10に沿って屋根81から垂下された仕切り板82で仕切られており、この仕切り板82の下端辺と側壁10の上端辺との間で、通気口20が開口している。
【0024】
また、通気口20は、側壁10の全長にわたり設けられていると共に、複数のユニットに分割されている。更に、通気調整装置30は、通気口20のユニットごとに設けられていると共に、ユニットごとに通気口20の開度を調整可能である。
【0025】
通気調整装置30は、側壁10の上端の近傍に、一辺側で回転自在に軸支された平板状の回動板31と、回動板31を回動させる回動板駆動機構を有している。ここで、回動板31は側壁10に平行な軸周りに回動する構成であり、複数が連設されて全体として一つのユニットの通気口20の長さに相当する長さに形成されている。回動板駆動機構は、モータにより駆動されるウインチ(図示しない)に一端が巻き付けられ、他端が側壁10から突設されたブラケット(図示しない)にスプリングを介して固定されることにより、側壁10に沿って張設された主ワイヤ32を有しており、同一のユニットに属する複数の回動板31それぞれの自由端辺の近傍に一端が取り付けられた副ワイヤ33の他端が、それぞれ主ワイヤ32に連結されている。副ワイヤ33は、回動板31ごとに側壁10から突設された支持板39に取り付けられた第一滑車34及び第二滑車35に掛け回されることにより方向を変え、自重により下方向に回動しようとする回動板31を斜め上方から牽引している。
【0026】
また、鶏舎は、側壁10の外表面に接するように一定間隔で垂設された、複数の外柱85を備えている。これは、鶏舎の内部空間に柱や桟が存在すると、そこに埃などが溜まり易くなるため、鶏舎の内部空間には凹凸部分を極力形成することなく、鶏舎内部を衛生的に保つためである。遮光通気部材40は、外柱85間に架け渡された二本の桟材86によって上下から挟み込むように、外柱85に固定されている。従って、遮光通気部材40と側壁10との間には、外柱85の厚さ分の空隙が存在する。そのため、側壁10の上端と遮光通気部材40を下方から支持する桟材86との間には、側壁10に沿って延びる仕切り壁87が設けられており、遮光通気部材40を上方から支持する桟材86と屋根81の下面との間は仕切り壁88で閉塞されている。このような構成により、通気口20は、遮光通気部材40の通気空間42のみで鶏舎の外部の空間と連通している。
【0027】
ここで、本実施形態の遮光通気部材40は、図4に示すように、横断面がW字状に湾曲した多数の薄板材41が、隣接する薄板材41間に通気空間42を形成するように間隔をあけて並設されるように、枠体49によって支持された構成である。薄板材41の湾曲の度合いは、太陽光の入射角度が変化しても、直進する光が通気空間42を通過しないように設定されている。ここで、遮光通気部材40は、複数個を連設することにより、全体として、側壁10の全長にわたり設けられた通気口20を被覆可能な長さに形成されている。
【0028】
加えて、本実施形態の換気構造1は、棟に直交する一対の妻面の一方に形成された入気口と、他方の妻面に形成された排気口とを具備している(何れも図示しない)。入気口及び排気口は、それぞれ妻面の面積の1/2以上の大きな面積を有している。そして、入気口は、吸水性に富んだ紙や不織布で形成されたクーリングパッドで被覆されている。一方、排気口には、大型の排気ファンが複数取り付けられている。
【0029】
更に、本実施形態の換気構造1は、側壁10の下部に貫通して設けられた下部開口50を開閉する非常扉51(図3参照)を備えている。詳細な図示は省略するが、非常扉51の内表面には、非常扉51を開方向に付勢する付勢部材が取り付けられている。非常扉51の内表面の上部及び下部開口50の枠体の上部には、非常扉51を閉じたときに軸方向が同一線上に位置する管状部材が、それぞれ取り付けられている。これにより、付勢部材の付勢に抗して非常扉51を閉じ、非常扉51の管状部材と枠体の管状部材に閂部材を挿通することにより、非常扉51は閉状態に保持される。側壁10において枠体の上部近傍には電磁石が設けられており、この電磁石に吸着されて上下方向に延び、非吸着時に傾動する被吸着部材の上端に、ワイヤの一端が引掛けられており、そのワイヤの他端側は、電磁石とは反対側で枠体の上部近傍で側壁10に取り付けられた滑車に巻き掛けられた上で端部に錘が吊り下げられている。従って、電力が供給され被吸着部材が電磁石に吸着されている状態では、ワイヤは枠体の上部において側壁10に沿って張設された状態である。このワイヤに、閂部材が紐状部材を介して連結されている。
【0030】
次に、上記構成の換気構造1を使用した鶏舎の換気方法について説明する。まず、電力が供給されている通常時は、排気ファンを稼働させて排気口から空気を排出し、入気口または通気口20から空気を取り込む強制換気を行う。例えば、夏季など外気温の高いときは、入気口から空気を取り込む。これにより、対向する妻面間で高速で空気が流通し、鶏舎内の温度より低温の外気で鶏舎内を冷却しつつ、換気を行うことができる。この際、入気口を被覆するクーリングパッドに水を流下、滴下、噴霧することにより、水の気化熱が奪われて低温となったクーリングパッドを通過して取り込まれる空気の温度が低下し、より効果的に鶏舎内を冷却することができる。なお、クーリングパッドで被覆されていることにより、入気口から鶏舎内に光が入りにくいものとなっている。
【0031】
一方、冬季など外気温が低いときは、妻面の入気口から外気を取り込むと鶏舎内の入気口側(上流側)の温度が低くなり過ぎるため、入気口を断熱パネルや断熱カーテンで閉塞し、図1に示すように、通気口20から外気を取り込む。側壁10の全長にわたる長さの通気口20は、複数のユニットに分割されているため、ユニットごとに設けられた通気調整装置30により、ユニットごとに通気口20の開度を調整することができる。具体的には、モータの駆動によりウインチで主ワイヤ32を巻き取ると、これに連結された副ワイヤ33によって回動板31は引張られて上方に回動し、通気口20の開度が小さくなる。逆に、ウインチにより主ワイヤ32を繰り出すと、副ワイヤ33が弛緩することにより回動板31は自重により下方向に回動し、通気口20の開度が大きくなる。
【0032】
ここで、鶏舎は側壁10の延びる方向に長いため、鶏舎内の空気の流通における上流側、すなわち入気口が設けられた妻面に近い部分と、下流側すなわち排気口が設けられた妻面に近い部分とで、温度差が大きくなり易い。つまり、鶏舎内を流通する空気はトリの体温で暖められるため、上流側より下流側で空気の温度は高くなり易い。そこで、排気口に近いユニットの通気口20の開度が、入気口に近いユニットの通気口20の開度より大きくなるように、通気調整装置30で調整する。これにより、下流側でより多くの外気が取り込まれ、鶏舎内の下流側における空気の温度の上昇を防ぐことができる。このような通気口20の開度の調整は、例えば、通気口20のユニットごとに、通気口20の近傍に設けられた温度センサの検知に基づき、コンピュータまたはプログラマブルコントローラで制御することができる。
【0033】
なお、夏季と冬季の間の時期など外気温が中間程度のときは、外気の取り込みに入気口と通気口20とを併用することができる。また、通気口20を介して空気を取り込むモードにおいて、複数のユニットの通気口20の全てが開放している必要はなく、一以上のユニットの通気口20が回動板31で閉塞されていてもよい。
【0034】
そして、電力の供給が停止したときは、図2に示すように、全てのユニットの通気口20において、回動板31を開方向に回動させる。例えば、電力の供給の停止により、通気調整装置30において、商用電源から供給される電力によるモータの駆動から、バッテリから供給される電力によるモータの駆動に切り換えることにより、回動板31を回動させる。
【0035】
これにより、側壁10の上部に形成されている通気口20が開放するため、トリの体温によって暖められて高温となり、自ずと上昇する鶏舎内の空気が、通気口20から外部にスムーズに排出される。そして、通気口20は、空気は自然通過させるが光は通過させない遮光通気部材40で被覆されているため、解放された通気口20を介して、鶏舎内に太陽光が射し込むことが防止される。
【0036】
加えて、電力の供給が停止したときは、図3に示すように、非常扉51が開いて下部開口50を開放する。具体的には、電力の供給が停止すると、通電時には電磁石に吸着されていた被吸着部材が電磁石から離れて傾動し、その上端に一端が引き掛けられていたワイヤが外れて、錘に作用する重力で引張られて落下する。これに伴い、ワイヤに連結されていた閂部材が外れるため、付勢部材による付勢によって非常扉51が開き、下部開口50が開放される。
【0037】
これにより、鶏舎内で暖められて高温となった空気が、側壁10の上部で解放された通気口20から外部に排出され、側壁10の下部で解放された下部開口50を介して外部から新鮮な空気が流入するという、空気の流れが生じる。従って、電力の供給が停止したときに、スムーズに自然換気を行うことができる。
【0038】
なお、冬季など妻面の入気口から外気を取り込まないモードのときは、入気口が断熱パネル等で閉塞されている一方、夏季など入気口から外気を取り込むモードのときは、クーリングパッドを介して入気口が開放している。これにより、鶏舎内の暖かい空気が通気口20から外部に排出されるのに伴い、下部開口50に加えて入気口からも外気が流入する。従って、停電によって鶏舎内の温度が上昇しやすい夏季など外気温の高い時期であっても、鶏舎内の温度の上昇が効果的に抑制される。
【0039】
以上のように、本実施形態の換気構造1、及び、換気構造1を使用した鶏舎の換気方法によれば、電力の供給が停止したときに鶏舎内から空気を排出するための通気口20が、側壁10の上部に設けられているため、電力の供給が停止したときの自然換気をスムーズに行うことができる。また、通気口20は側壁10の上部に設けられているものの遮光通気部材40で被覆されているため、解放した通気口20から太陽光が入射することがない。
【0040】
また、通気口20が側壁10の全長にわたり設けられていることにより、電力の供給が停止し通気口20が開放された際に、鶏舎内で部分的に空気が滞留するおそれを低減して、スムーズに自然換気を行うことができる。
【0041】
更に、本実施形態では、電力の供給が停止したとき側壁10の上部で開放する通気口20に加えて、電力の供給が停止したとき側壁10の下部で開放する下部開口50を備えていることにより、鶏舎内で暖められた空気が通気口20から排出されるのに伴い下部開口50から外気が流入するため、極めてスムーズに自然換気を行うことができる。
【0042】
加えて、電力が供給されている通常時の強制換気と、電力の供給が停止したときの自然換気との双方が、同一の設備を用いて行われるため、鶏舎の設備を有効に活用できると共に、換気構造1の構築のために要するコストを節減することができる。
【0043】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0044】
例えば、上記では、妻面に形成された入気口がクーリングパッドで被覆されている場合を例示したが、夏季の温度がさほど高くない地域など、クーリングパッドに代替して、遮光通気部材で入気口を被覆してもよい。
【0045】
また、通気調整装置として、回動板の回動により通気口を片開き状に開閉する構成を例示したが、これに限定されず、通気口を両開き状に開閉する構成とすることができる。
【0046】
なお、電力の供給が停止したとき、直ちに通気口及び下部開口が開放される場合を例示したが、自家発電など、商業電源による電力の供給が停止しても、一定時間は自力で電力の供給を継続できる設備を鶏舎が備えている場合は、自力での電力の供給が停止したときに、通気口及び下部開口が開放される構成とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 換気構造(鶏舎の換気構造)
10 側壁(鶏舎の壁体)
20 通気口
30 通気調整装置
40 遮光通気部材
41 薄板材
42 通気空間

図1
図2
図3
図4
図5