特許第6225078号(P6225078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225078
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】リニアエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20171023BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G01D5/347 110X
   G01D5/12 Q
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-142006(P2014-142006)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-17894(P2016-17894A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 康一
(72)【発明者】
【氏名】福井 憲之
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−92625(JP,U)
【文献】 特開2004−36944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 7/00−7/34、
21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールユニットと、当該スケールユニットに沿ってスライドするスライダーと、を備えたリニアエンコーダであって、
前記スライダーは、スライダー保持部と、前記スケールユニットのスケール筐体内に配置される検出ヘッド保持部と、これら二つの保持部を繋ぐべく前記スケール筐体の内外に延びる支柱と、から構成されたスライダー筐体を備え、
前記支柱のうち前記検出ヘッド保持部寄りの一部分と、前記検出ヘッド保持部の前記支柱寄りの一部分と、を前記支柱の厚みよりも大きな厚みでくり貫いている、
ことを特徴とするリニアエンコーダ。
【請求項2】
前記支柱のくり貫きは、前記スケールユニットと組み合わせた場合に、スケール筐体に固定されたシールが前記支柱部に接触する位置よりも、前記検出ヘッド保持部寄りの一部分に行う、ことを特徴とする請求項1に記載のリニアエンコーダのスライダー構造。
【請求項3】
前記スライダー筐体は、前記支柱のくり貫き箇所から前記スライダー保持部までの間に貫通穴を設けたスライダー筐体が一体成型により形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のリニアエンコーダ。
【請求項4】
前記スライダー筐体は、前記支柱部のくり貫き箇所から前記スライダー保持部までの間の貫通穴がミーリング加工により後加工される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のリニアエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や半導体製造装置等に組み込まれ、可動軸の位置を検出するリニアエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のリニアエンコーダの具体的構成を示す図である。図4は、図3のB−B’断面図である。図3の示す従来のリニアエンコーダのスケールユニット1は、図4の断面図に示すように、その底面と正面との角部付近が空いた構造のスケール筐体2からできており、スケール筐体2の内部にはメインスケール3が固定されている。メインスケール3は、ガラスからできており、その表面には、長手方向に一定間隔のピッチで格子状の金属薄膜の目盛が刻まれている。また、リニアエンコーダのスライダーユニット20は、スライダー保持部22と、検出ヘッド保持部23と、その両者をつなぐ支柱24から成るスライダー筐体21とに大別される。検出ヘッド保持部23には、発光部7とミラー8と受光部29から成る検出ヘッドが固定されている。検出ヘッドでは、発光部7が発した光がミラー8で直角に反射して、メインスケール3の格子部に照射され、その透過した光を受光部29で電気信号に変換する。スライダー保持部22は、機械の可動部等にボルト固定される。また、スライダー保持部22は、その内部に受光部29からの電気信号を位置データ信号に変換する回路基板27が組み込まれている。また、支柱24と検出ヘッド保持部23には、検出ヘッドからの電線28を回路基板27まで通すための貫通穴26があけられている。回路基板27が出力した位置データ信号は、スライダー保持部22に設置された防水コネクタ9を介して外部へ出力される。また、スライダー保持部22には蓋4が固定され、回路基板27を水や油等から保護する構造となっている。
【0003】
スケールユニット1とスライダーユニット20は、図3に示すように組み合わせられ、検出ヘッドと検出ヘッド保持部23と支柱24の一部がスケール筐体2の内部に組み込まれている。スケール筐体2の開口部付近には、シール5,6が固定されている。シール5,6の先端部どうしが接触し、スケール筐体2の開口部を塞ぐことで、外部からの埃や水や油等の侵入を防ぐ構造となっている。また、支柱24は、スケールユニット1の長手方向に長く、厚み方向には薄い形状をしており、その断面は船形の形状をしている。この形状により、スライダーユニット20が可動すると、進行方向では2つのシール5,6をかき分けて進む。また、この形状により、支柱24の進行方向の反対側では、かき分けたシール5,6の先端部が再度接触するようにできている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライダー保持部22と検出ヘッド保持部23と支柱24とから成るスライダー筐体21は、一般的にロストワックス鋳造やダイキャスト等により、アルミ等の金属で一体成型される。しかし、検出ヘッド保持部23と支柱24の貫通穴26は、穴径が非常に小さいのに対して、その穴の長さが穴径の5倍以上と長いため、一体成型で貫通穴を製造することができなかった。また、貫通穴を後加工する場合でもドリル加工や加工コストの高い放電加工しかなく、配線数が多いと複数個の穴をあける必要があった。また、支柱が非常に薄いため、ドリル加工時に支柱の表面をドリルが突き破るような加工不良も発生し易かった。また、複数本の電線を支柱の貫通穴に通す作業や電線を通した後の電気回路と接続するための半田付け作業やコネクタ端子の圧着作業が必要であり、配線のための作業工数も問題となっていた。なお、配線作業を向上させる方法として、電線に変えてFCC(フレキシブルフラットケーブル)を使用する方法があるが、FCCを貫通穴に通すためには、支柱に長穴を設ける必要があり、これを後加工で行うには、放電加工や、ドリル加工を何度も繰り返して行う必要があった。また、支柱に長穴を設ける方法としては、スライダー筐体の支柱の一部を長穴で分割した形状の2つの成型部品で構成する方法もあるが、この方法では検出ヘッド保持部を支える支柱の強度が低下する問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような事情から成されたものであり、本発明の目的は、スライダー筐体の検出ヘッド保持部と支柱の貫通穴を一体成型又は、ミーリング加工で行うことのできるリニアエンコーダのスライダー構造を実現し、コストの安いリニアエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリニアエンコーダは、スケールユニットと、当該スケールユニットに沿ってスライドするスライダーと、を備えたリニアエンコーダであって、前記スライダーは、スライダー保持部と、前記スケールユニットのスケール筐体内に配置される検出ヘッド保持部と、これら二つの保持部を繋ぐべく前記スケール筐体の内外に延びる支柱と、から構成されたスライダー筐体を備え、前記支柱のうち前記検出ヘッド保持部寄りの一部分と、前記検出ヘッド保持部の前記支柱寄りの一部分と、を前記支柱の厚みよりも大きな厚みでくり貫いている、ことを特徴とする。
【0007】
この場合、前記支柱のくり貫きは、前記スケールユニットと組み合わせた場合に、スケール筐体に固定されたシールが前記支柱部に接触する位置よりも、前記検出ヘッド保持部寄りの一部分に行う、ことが望ましい。
【0008】
また、前記スライダー筐体は、前記支柱のくり貫き箇所から前記スライダー保持部までの間に貫通穴を設けたスライダー筐体が一体成型により形成されてもよい。
【0009】
また、前記スライダー筐体は、前記支柱部のくり貫き箇所から前記スライダー保持部までの間の貫通穴がミーリング加工により後加工されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支柱のうち検出ヘッド保持部寄りの一部分と、検出ヘッド保持部の支柱寄りの一部分と、を支柱の厚みよりも大きな厚みでくり貫いているため、貫通穴の長さを短くできる。このため、貫通穴も含めて、スライダー筐体をロストワックス鋳造やダイキャスト等により一体成型することが可能となる。また、貫通穴の長さによっては、一体成型ができない場合でも、従来のスライダー筐体よりも貫通穴の長さを短くできる上に、ミーリング工具の付け根部が支柱の厚みと同等以上に太くできるため、貫通穴のミーリング加工が容易となる。これにより、FCC用の長穴加工をミーリング加工により、簡単に行うことができ、加工コストをアップせずに配線工数を削減することが可能となる。以上から本発明により、コストの安いリニアエンコーダのスライダーユニットを提供することが可能となる。
【0011】
なお、従来のリニアエンコーダでは、本発明のように支柱部にくり貫き部を設けることは、リニアエンコーダのシール性能を劣化させるため、非常識と思われていた。しかし、実際に支柱とシールの関係を調査すると、支柱の中央部では、シールはスライダー保持部側に近い面しか接触しておらず、支柱の中央部の検出ヘッド保持部側は、シール性能に対してまったく機能していないことが判明した。以上のような分析によって、本発明を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のリニアエンコーダの具体的構成を示す図である。
図2図1のA−A’断面図である。
図3】従来のリニアエンコーダの具体的構成を示す図である。
図4図3のB−B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は、本発明のリニアエンコーダの具体的構成を示す図である。また、図2は、図1のA−A’断面図である。なお、図1では、分かりやすさのために、シール6や、スケール筐体2の上面(図2における右側端面)の図示は省略している。また、図1図2で、図3図4と同じ機能のものは同じ符号とし、その説明を省略する。スライダー筐体11の検出ヘッド保持部13と支柱14の一部は、支柱14が、シール5,6と接触する手前の検出ヘッド保持部13側の位置までを支柱14の厚みよりも大きな厚みでくり抜いた形状となっている。
【0014】
すなわち、図面から明らかな通り、検出ヘッド保持部13は、スケール筐体2の内部に形成された中空空間に完全に収容されている。また、スケール筐体2の角部には、内外に連通する開口が形成されており、支柱14は、この開口を通して、スケール筐体2の内外に延びている。つまり、検出ヘッド保持部13は、外部に露出せず、支柱14は、その一部が外部に露出している。スケール筐体2には、シール5,6が固定されており、このシール5,6の先端は、支柱14に接触する。支柱14のうち、このシール5,6の支柱14への接触位置よりも、検出ヘッド保持部13寄りの範囲は、外部に露出しない。
【0015】
本実施形態では、この支柱14のうちシール5,6との接触位置よりも検出ヘッド保持部13寄りの範囲、換言すれば、支柱14のうち外部に露出しない範囲と、検出ヘッド保持部13の前記支柱14寄りの一部分と、にくり貫き部15を形成している。なお、このくり貫き部15は、図1に示すように、支柱14のうち、スケール長手方向(図1の左右方向)の略中央部に設けることが望ましい。ただし、スケール筐体2の開口部分のシールを確保できるのであれば、くり貫き部15は、スケール長手方向の中央に限らず、他の位置に形成されてもよい。
【0016】
支柱14のくり貫き部15からスライダー保持部12までの間には、長穴の貫通穴16があけられている。また、スライダー筐体11は、スライダー保持部12と検出ヘッド保持部13と支柱14とくり貫き部15と貫通穴16は、ロストワックス鋳造やダイキャスト等により、アルミ等の金属で一体成型により製造される。受光部29と接続されたFCC18は、くり貫き部15と長穴の貫通穴16を通して回路基板17に実装されたFPCコネクタ19に接続される。
【0017】
図1図2の実施例では、支柱14の貫通穴16を一体成型で製作する例を記したが、貫通穴16の一体成型が困難な場合は、長穴の貫通穴16を後で、ミーリング加工してもよい。また、一体成型時にくり貫き部15を設けず、後加工でくり貫き部15をミーリング加工してもよい。また、実施例では、光学式のリニアエンコーダの例について記したが、磁気式や電磁誘導式のリニアエンコーダでも実現できる。
【符号の説明】
【0018】
1 スケールユニット、2 スケール筐体、3 メインスケール、4 蓋 5,6 シール、7 発光部、8 ミラー、9 防水コネクタ、10,20 スライダーユニット、11,21 スライダー筐体、12,22 スライダー保持部、13,23 検出ヘッド保持部、14,24 支柱、15 くり貫き部、16,26 貫通穴、17,27 回路基板、18 FCC、19 コネクタ、28 電線、29 受光部。
図1
図2
図3
図4