(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略円柱状の空間を有する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通するスリットとを有し、前記スリットが、前記内周面に前記接線方向に続く第一の内面と、前記第一の内面に対向し、樹脂シートが挿通可能に前記第一の内面と離間して設けられた第二の内面と、を有する金型を用い、該スリットから該孔部内に前記樹脂シートを挿入しつつ、該樹脂シートを該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸め、その状態で該樹脂シートを加熱して樹脂チューブとすることを特徴とする外装チューブ製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の外装チューブの製造装置及び製造方法にあっては、例えば、帯状に連続した合成樹脂製のシートを先端側から筒状成形機で順次筒状に丸めて、連続した筒状体を形成したり(特許文献1)、あるいは、筒状のシームレスコルゲートチューブ63(
図14)をスリット形成装置64に連続的に送って、連続したスリット入りコルゲートチューブ65を形成する(特許文献2)、といった構成によって、例えば、製造装置61がチューブ送り方向に大型化し、工場内に装置61を設置するための大きなスペースを必要としたり、製造装置61が大型で複雑であるゆえに高コスト化するといった懸念や、連続成形ゆえに少量生産には適さないといった懸念があった。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、外装チューブを省スペースで容易に形成することができ、少量生産にも適する外装チューブ製造用金型及び外装チューブ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る外装チューブ製造用金型は、金属製のブロックに、略円柱状の空間を有する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通するスリットとが設けられ、
前記スリットが、前記内周面に前記接線方向に続く第一の内面と、前記第一の内面に対向し、樹脂シートが挿通可能に前記第一の内面と離間して設けられた第二の内面と、を有し、前記樹脂シートが該スリットから該孔部内に挿入されて、該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸められることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、例えば外装チューブの展開形状の大きさの一枚の樹脂シートがスリットを経て孔部の内周面に沿って押し込まれ、樹脂シートの挿入先端が孔部の内周面に沿って案内されつつ、樹脂シートが孔部の内周面に沿って湾曲状に屈曲され、一周ないしそれ以上に丸められて(巻かれて)チューブ状に形成される。一周以上に丸められる場合、樹脂シートの挿入先端側の部分が樹脂シートの内面に沿ってオーバーラップする。
【0013】
樹脂シートが連続してではなく一枚ずつ孔部内に挿入されることで、外装チューブの少量生産が容易化する。また、金属製のブロックの内部に樹脂シート挿入用のスリットと樹脂シート丸め用の孔部とが設けられたことで、外装チューブ製造用金型の構造がコンパクト化・簡素化・低コスト化される。また、平坦な樹脂シート材を取り扱うことになるので、搬送時にかさばらずに、省スペース化されると共に搬送作業性が高まる。
【0014】
請求項2に係る外装チューブ製造用金型は、金属製のブロックに、略円柱状の空間を有する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通する
、樹脂シートを挿入するスリットとが設けられ、前記孔部の内周面における、前記樹脂シートの丸め方向下流側の前記スリットとの交差部分側の内周面の半径が、その他の部分の内周面の半径よりも小さく規定され、前記樹脂シートが該スリットから該孔部内に挿入されて、該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸められることを特徴とする。
【0015】
上記構成により、孔部内に挿入された樹脂シートの先端が孔部の内周面に沿って摺動しつつ、樹脂シートの巻き終わりの手前において、孔部の内周面とスリットとの鋭角的な交差部分(交差部とその近傍)に達した際に、樹脂シートの先端が交差部分の小径な内周面に沿って孔部の径方向内側に向けて誘導案内される。これにより、樹脂シートの先端が樹脂シートの基端側の内面に突き当たることなく、樹脂シートの基端側の内面に沿ってスムーズに摺動してオーバーラップする。樹脂チューブのオーバーラップは金型のスリット側において行われる。オーバーラップ部を有することで、樹脂チューブの口開きが抑制される。
【0016】
請求項3に係る外装チューブ製造用金型は、金属製のブロックに、略円柱状の空間を有
する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通する
、樹脂シートを挿入するスリットとが設けられ、前記孔部の内周面の半径が、前記スリットから前記樹脂シートの丸め方向に漸次小さく規定され、前記樹脂シートが該スリットから該孔部内に挿入されて、該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸められることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、スリットから孔部内に挿入された樹脂シートの先端が、例えば孔部の大径な内周面から中径の内周面を経て小径の内周面に沿って、漸次、孔部の径方向内側に向けて誘導案内される。これにより、樹脂シートの先端が、スリット側に位置する樹脂シートの基端側の内面に沿ってスムーズ且つ確実に摺動して、より正確にオーバーラップする。樹脂チューブのオーバーラップは金型のスリット側において行われる。オーバーラップ部を有することで、樹脂チューブの口開きが抑制される。
【0018】
請求項4に係る外装チューブ製造用金型は、金属製のブロックに、略円柱状の空間を有する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通する
、樹脂シートを挿入するスリットとが設けられ、前記ブロックが、前記孔部の軸方向と平行方向を分割面として複数の金型部に分割され、前記孔部の一方の前記スリット側に配置された金型部が、前記樹脂シートの挿入方向ないし該方向とは逆方向に該孔部を開くように移動可能であり、該孔部の他方に配置された金型部が、該孔部を通過して外部に移動可能であり、前記樹脂シートが該スリットから該孔部内に挿入されて、該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸められることを特徴とする。
【0019】
上記構成により、金型の孔部内で樹脂チューブが丸め加工された後、スリット側の金型部が開放され、次いで他方の金型部が樹脂チューブを孔部から金型開放側の外部に押し出して、例えば、払い出す又は冷却装置に移動させる。樹脂チューブはオーバーラップ部側から外部に露出する。シート丸め用のブロックの一部がチューブ押し出し部の機能を兼ねたことで、装置構造がコンパクト化される。
【0020】
請求項5に係る外装チューブ製造方法は、略円柱状の空間を有する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通するスリットとを有
し、前記スリットが、前記内周面に前記接線方向に続く第一の内面と、前記第一の内面に対向し、樹脂シートが挿通可能に前記第一の内面と離間して設けられた第二の内面と、を有する金型を用い、該スリットから該孔部内に
前記樹脂シートを挿入しつつ、該樹脂シートを該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸め、その状態で該樹脂シートを加熱して樹脂チューブとすることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、例えば外装チューブの展開形状の大きさの一枚の樹脂シートがスリットを経て孔部の内周面に沿って押し込まれ、樹脂シートの挿入先端が孔部の内周面に沿って案内されつつ、樹脂シートが孔部の内周面に沿って湾曲状に屈曲され、一周ないしそれ以上に丸められて(巻かれて)チューブ状に形成される。その状態で樹脂シートが加熱されて樹脂チューブとなる。一周以上に丸められる場合、樹脂シートの挿入先端側の部分が樹脂シートの内面に沿ってオーバーラップする。
【0022】
樹脂シートが連続してではなく一枚ずつ孔部内に挿入されることで、外装チューブの少量生産が容易化する。また、金属製のブロックの内部に樹脂シート挿入用のスリットと樹脂シート丸め用の孔部とが設けられたことで、外装チューブ製造用金型の構造がコンパクト化・簡素化・低コスト化される。また、平坦な樹脂シート材を取り扱うことになるので、搬送時にかさばらずに、省スペース化されると共に搬送作業性が高まる。
【0023】
請求項6に係る外装チューブ製造方法は、請求項5記載の外装チューブ製造方法において、前記加熱の温度を前記樹脂チューブの塑性変形領域の温度まで高めることを特徴とする。
【0024】
上記構成により、金型内で樹脂シートが丸められた状態で塑性変形領域の温度で加熱されることで、加熱後の樹脂チューブを金型から取り出す際に、樹脂チューブのスプリングバック(拡径方向の弾性変形)が起こらず、樹脂チューブの外径不良やオーバーラップ部の口開きといった不具合が防止される。また、樹脂チューブを冷却して塑性変形させる(スプリングバックを防ぐ)必要がないので、冷却装置が不要となる。
【0025】
請求項7に係る外装チューブ製造方法は、略円柱状の空間を有する孔部と、外部から該孔部の内周面に接線方向に連通するスリットとを有し、前記孔部の軸方向と平行方向を分割面とし
て複数の金型部に分割可能とした金型を用い、該スリットから該孔部内に樹脂シートを挿入しつつ、該樹脂シートを該孔部の内周面に沿ってチューブ状に丸め、その状態で該樹脂シートを加熱して、前記加熱の後、前記スリット側で前記孔部を開放するように一部の金型部を移動し、開放側とは反対側から
チューブ状に丸められた前記樹脂シートを他の金型部で押して、外部に払い出す又は冷却装置に移動させて冷却することを特徴とする。
【0026】
上記構成により、例えば、樹脂チューブが、一部(他)の金型部で押されて金型から外部に製品(外装チューブ)として払い出される。樹脂チューブの冷却が必要な場合は、樹脂チューブが一部(他)の金型部で押されて金型から隣接の冷却装置に移動し、冷却装置で所要温度に冷却される。金型内で樹脂シートはスリット側でオーバーラップされ、樹脂チューブはオーバーラップ部側から冷却装置に移動され、放熱性の悪いオーバーラップ部側から効率良く冷却される。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、金属製のブロックの内部に、樹脂シート挿入用のスリットと樹脂シート丸め用の孔部とを設けた、コンパクトで簡素で低コストな外装チューブ製造用金型によって、外装チューブを省スペースで容易に形成することができる。また、樹脂シートを連続してではなく一枚ずつ金型内に挿入することで、外装チューブを必要な時に必要な数だけ生産することができ、少量生産にも容易に対応することができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、孔部のシート丸め方向下流側の小径な内周面に沿って、樹脂シートの挿入先端を内向きに誘導させ、樹脂シートの基端側の内面に突き当てることなくスムーズにオーバーラップさせて、樹脂チューブのオーバーラップ部を簡単に形成することができる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、孔部の漸次小径となる内周面に沿って、樹脂シートの挿入先端を漸次内向きに誘導させ、樹脂シートの基端側の内面にスムーズ且つ確実にオーバーラップさせて、樹脂チューブのオーバーラップ部を簡単且つ確実に形成することができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、シート丸め用のブロックの一部をチューブ押し出し部として兼用して、製造工程を一層コンパクト化・省スペース化することができる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、樹脂シート挿入用のスリットと、樹脂シート丸め用の孔部とを有する簡素でコンパクトな金型を用いて、外装チューブを省スペースで容易に形成することができる。また、樹脂シートを連続してではなく一枚ずつ金型の孔部内に挿入することで、外装チューブを必要な時に必要な数だけ生産することができ、少量生産にも容易に対応することができる。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、樹脂チューブを金型から取り出す際における、樹脂チューブのスプリングバックすなわち外径不良やオーバーラップ部の口開きといった不具合を防止することができる。また、樹脂チューブを冷却して塑性変形させる(スプリングバックを防ぐ)必要がないので、冷却装置を不要として、製造工程を一層省スペース化することができる。
【0033】
請求項7記載の発明によれば、樹脂チューブを必要に応じて外部に払い出し又は冷却装置に移動させて冷却することができる。樹脂チューブの冷却はオーバーラップ部側から効率良く行うことができる。また、他の金型部をチューブ押し出し部として兼用して、製造工程を一層コンパクト化・省スペース化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1〜
図2は、本発明の外装チューブ製造用金型とそれを用いた外装チューブ製造方法の第一の実施形態を示すものである。
【0036】
図1の如く、この外装チューブ製造用金型1は、金属製の横長矩形状のブロック2に、略円柱状の空間を有する貫通した横長の孔部3と、孔部3の内周面4に沿って接線方向に連通する縦方向の真直なスリット5とを設けて構成されるものである。
【0037】
ブロック2の左側に上下一対の固定用の小孔7が貫通して設けられ、ブロック2の右側において縦方向のスリット5が設けられている。小孔7には不図示のボルトが水平に挿通されて、ブロック2が不図示の外装チューブ製造装置の例えばフレームに固定される。小孔7をノックピン挿入孔として活用すれば、軸方向へのブロック2の複数連結が可能となり、短尺な外装チューブや長尺な外装チューブにも対応することができる(このことは後述の各実施形態においても同様である)。ブロック2の孔部3は例えばドリル加工やホーニング加工等で形成される。孔部3は内周面4の内側に略円柱状の空間(符号3で代用)を有している。
【0038】
図2の如く、スリット5は、上下方向に長い右側(外側)の平坦な内面5aと、上下方向に短い左側(内側)の平坦な内面5bとを有し、スリット5の右側の内面5aは、孔部3の右側且つ下半側の円弧状の内周面4aに接線方向に段差なく滑らかに続き、スリット5の左側の内面5bは、孔部3の右側且つ上半側の円弧状の内周面4dに鋭角的に交差して続いている。
【0039】
スリット5の左側の内面5bと孔部3の右側且つ上半側の円弧状の内周面4dとの交差部分8は、くちばし状に下向きに突出している。交差部分8とは交差部(突出先端)とその近傍を含むものである。スリット5は切断加工等で形成される。孔部3の右側且つ上半側の円弧状の内周面4dの仮想延長面は、スリット5の右側(外側)の内面5aの延長面である孔部3の上側且つ右側の平坦な内面4eの下部に向けて斜め下向きに位置している(内面4eをスリット5の右側の内面5aの一部とみることもできる)。
【0040】
ブロック2は上下左右の壁部2a〜2d(
図1)を有し、上壁2aにスリット5の入口である上部開口5c(
図2)がブロック2の全長に渡って形成されている。ブロック2の前後方向に孔部3が貫通して設けられ、ブロック2の前後の端面2eに孔部3が開口されている。スリット5の隙間寸法は、後述の樹脂シート9の厚みよりも少し広く規定されている。
【0041】
なお、実施形態の説明において、前後左右の方向性は説明の便宜上のものであり、前後方向はブロックの長手方向、左右方向はブロックの短手(幅)方向をそれぞれ示している。上下方向は鉛直方向に一致している。
【0042】
スリット5の上部開口5cから樹脂シート9が下向きに挿入され(押し込まれ)、樹脂シート9が孔部3の内周面4に沿って時計(右)回りに湾曲して筒状に丸め加工される。すなわち、
図1,
図2の状態からさらに下向きに樹脂シート9を押し込むことで、樹脂シート9の挿入先端9aが、孔部3の左半側における下側の円弧状の内周面4bと上側の円弧状の内周面4cとに沿って摺接する。
【0043】
さらに、樹脂シート9の挿入先端9aが孔部3の上側且つ右側の円弧状の内周面4dに沿って摺接し、スリット5の出口側である下部開口5d(
図2)側において、樹脂シート9の挿入先端9aが樹脂シート9の基端9b側(
図2で上端側)の内面9c(
図2)に沿って摺接しつつ、樹脂シート9の先端9a側の部分が樹脂シート9の基端9b側の部分の内側にオーバーラップして(重なって)、樹脂シート9が円筒状に丸め(巻き)加工される。
【0044】
樹脂シート9は丸められた状態で加熱されて、筒状の樹脂チューブ(図示せず)となる。樹脂シート9の加熱は金型1を加熱することで容易に行うことができる。樹脂シート9の加熱温度は、樹脂シート9を筒形状に塑性変形させる温度であることが好ましい。丸め加工された樹脂チューブは、本例の一体型の金型1において孔部3の前後の開口(符号3で代用)から取り出される。樹脂チューブを金型1から取り出す前あるいは取り出し後に自然冷却ないし強制冷却で冷却することが好ましい。
【0045】
樹脂チューブは金型1から取り出されたままの長さで、あるいは所要の長さに切断されて、外装チューブとして製品化される。
図1の金型1の長さは短目の外装チューブに対応したものであり、長目の外装チューブは、
図1におけるよりも長い金型を用いて形成される。
【0046】
孔部3の断面形状は、断面真円形とすることも可能であるが、むしろ、
図2に点線の矢印E1〜E3で示す如く、孔部3の内周面4の半径をスリット5の下部開口(出口)5dから時計(右)回りに順次小さくなるような断面円状に設定することが好ましい。この場合、一例として、孔部3の内周面4の半径を例えばトロコイド曲線やインボリュート曲線等に沿った湾曲形状に順次小さくすることが可能である。断面円状とは、断面真円形や断面略円形を含むものである。
【0047】
例えば、スリット5の下部開口5dに続く孔部3の下側且つ右側の円弧状の内周面4aから下側且つ左側の円弧状の内周面4bまでの範囲E1で、孔部3の半円状の内周面4a,4bの半径R1を大きく(大径に)規定し、孔部3の上側且つ左側の円弧状の内周面4cの範囲E2で、内周面4cの半径R2を中程度(中径)に規定し、孔部3の上部側からスリット5の下部開口5dの左端(符号8で代用)までの範囲E3で、孔部3の右側且つ上側の内周面4dの半径R3を小さく(小径に)規定することも有効である。
【0048】
図2の例で、孔部3の右側且つ上側の内周面4dの範囲E3は、孔部3の頂点3aよりも少し右側にずれた位置からスリット5の下部開口5dの左端8までとしているが、孔部3の頂点3aからスリット5の下部開口5dの左端8までとしてもよい。
【0049】
このように、孔部3の内周面4の半径Rをスリット5の下部開口5d側から右(時計)回りに漸次小さく規定することで、樹脂シート9をスリット5に挿入して孔部3の内周面4に沿って右回りに丸め加工する際に、丸められた樹脂シート9の先端9aが、スリット5の下部開口5d側における樹脂シート9の基端9b側の平坦状の部分の内面9cに突き当たることなく、ほぼ接線方向にスムーズに摺接して、樹脂シート9の丸め操作及び不図示のオーバーラップ部の形成がスムーズ且つ確実に行われる。樹脂シート9の基端9b側の平坦状の部分は丸め動作で円弧状に丸められる。
【0050】
あるいは、孔部3の下側且つ右側から時計(右)回りに孔部3の頂点3aないしその近傍までの範囲E1〜E2で、孔部3の内周面4a〜4cの半径R1,R2を同一に規定し、孔部3の頂点3aないしその近傍からスリット5の下部開口5dの左端8までの範囲E3で、孔部3の内周面4dの半径R3を上記同一の半径R1,R2よりも小さく規定することも可能である。孔部3の内周面4がスリット5に鋭角的に交差した部分8における内周面4dの半径R3が、交差した部分8以外の内周面4a〜4cの半径R1,R2よりも小さく規定される。
【0051】
この場合においても、樹脂シート9をスリット5に挿入して孔部3の内周面4に沿って右回りに丸め加工する際に、樹脂シート9の先端9aが、スリット5の下部開口5dから右回りに孔部3の頂部3aまで移動し、次いで孔部3の頂部3aから孔部4の上側且つ右側の小径な内周面4dに沿って斜め下向きに(ほぼ下向き)に案内されて、スリット5の下部開口5d側における樹脂シート9の基端9b側の平坦状の部分の内面9cに突き当たることなく、ほぼ接線方向にスムーズに摺接して、樹脂シート9の丸め操作及びオーバーラップ部の形成がスムーズに行われる。
【0052】
なお、この場合においては、樹脂シート9の硬度や厚みや丸め径等にもよるが、樹脂シート9の先端9aが、スリット5の下部開口5dから右回りに孔部3の頂部3aまで移動した後、孔部3の頂部3aから孔部3の上側且つ右側の小径な内周面4dに移行する際に、小径な内周面4dに引っ掛かり気味に摺接することがないように、孔部3の内周面4dの半径R3を急激に小さく変化させないようにすることが好ましい。
【0053】
図1の実施形態において、樹脂シート9には予め多数の凹凸10が形成されている。凹凸10は、樹脂シート9を丸めて樹脂チューブとした際に、樹脂チューブの径方向の屈曲性を高めるためのものである。凹凸10の形状は例えば菱形や六角形等であることが好ましい。例えば菱形や六角形の凹凸10の一方の対角線が樹脂シート9の丸め方向(スリット5への挿入方向)に一致し、他方の対角線が孔部3の軸方向に一致するように凹凸10が配置される。
【0054】
屈曲の不要な箇所(外装チューブを直線的に配置する箇所)に外装チューブを使用する場合は、樹脂シート9への凹凸10の形成は不要となる。凹凸10の形成方法については、本出願人が先に特願2013−219936で提案しているので、説明を省略する。後述の他の実施形態においても、凹凸10を有する樹脂シート9を適用する。
【0055】
樹脂シート9は、例えば一本の樹脂チューブのほぼ周方向長さ(
図2で先端9aから基端9bまでの長さ)に予め切断されている。樹脂チューブの両端縁のオーバーラップがない場合は、この長さは樹脂チューブの周方向長さに等しい。樹脂チューブの軸方向長さは、金型1の前後方向の全長と同等(樹脂チューブを切断しない場合)ないしそれ以下(樹脂チューブを切断する場合)である。
【0056】
樹脂チューブにオーバーラップ部を形成しない場合は、
図1,
図2において、金型1のスリット5から孔部3内に挿入した樹脂シート9の先端9aを孔部3の内周面4に沿って摺動させてスリット5の下部開口5d側で樹脂シート9の基端9bに当接させ、その状態で樹脂シート9を加熱して筒状に整形する。
【0057】
外装チューブの端縁のオーバーラップは、外装チューブの径方向の屈曲時に端縁の口開きを防止するためのものであり、それにより、外装チューブ内に挿通収容された電線等の不図示の線状体の飛び出しや露出が防止される。線状体としては、電線以外に、ゴム製等の流体用配管や光ファイバ等も使用可能である。外装チューブを屈曲しない部位に配置する場合は、オーバーラップ部を形成しないことも可能である。
【0058】
図1,
図2の実施形態によれば、一体化された金型1と、金型1を加熱する不図示の加熱装置と、樹脂シート9を金型1のスリット5内に押し入れる不図示のシート押し込み装置(押し込み装置を用いずに作業者が治具等を用いて樹脂シート9を押し込むことも可能である)といった少ない構造物で、コンパクトで低コストな外装チューブ製造装置を構成することができる。また、樹脂シート9を、例えば
図14の従来例(特許文献2)のシームレスコルゲートチューブ63や、特許文献1のプラスチックシートのように連続して供給する必要がないので、外装チューブを必要な数だけ少量生産することも容易である。
【0059】
図3〜
図5は、本発明の外装チューブ製造用金型とそれを用いた外装チューブ製造方法の第二の実施形態を示すものである。
【0060】
図1〜
図2の実施形態の外装チューブ製造用金型1が一体物であるのに比べて、
図3〜
図5の外装チューブ製造用金型11は、分割式となっている点で相違している。スリット15の形状は
図1〜
図2の実施形態のスリット5と同様であり、孔部13の形状は、
図2の矢印E1〜E3の範囲で半径Rが異なる点で同様である。
【0061】
この外装チューブ製造用金型11の金属製のブロック12は、上側の金型部16と、下側且つ右側の金型部17と、下側且つ左側の金型部18と、下側且つ左側の金型部18と上側の金型部16の左側部分との間に配置される中間の金型部19とで構成されている。上側の金型部16は、スリット15を挟んで左右の部分が前後端側で不図示の連結壁で互いに連結されている。後述の
図6の実施形態の如く上側の金型部16の左右の部分を分割することも可能である。
【0062】
図3の如く、上側の金型部16は、略円柱状の空間を有する孔部13の内周面14の一部を成す円弧状の内周面16aと、円弧状の内周面16aの右側において縦方向に形成された垂直で真直なスリット15と、円弧状の内周面16aの左側に設けられた横長の固定用ボルト20に対する挿通孔(図示せず)とを有している。スリット15の右(外)側の内面15aは、下側且つ右側の金型部17の円弧状の内周面17aから接線方向に立ち上げられた平坦な内面17bに段差なく続いている。スリット15は、下側且つ右側の金型部17の円弧状の内周面17aに接線方向に連通している。
【0063】
下側且つ右側の金型部17の円弧状の内周面17aは、下側且つ左側の金型部18の円弧状の内周面18aに段差なく滑らかに続いている。下側且つ左側の金型部18は、左下側において横長の固定用ボルト20に対する挿通孔(図示せず)を有している。下側且つ左側の金型部18の円弧状の内周面18aは、中間の金型部19の円弧状の内周面19aに段差なく続き、中間の金型部19の円弧状の内周面19aは、上側の金型部16の円弧状の内周面16aに段差なく続いている。各金型部16〜19の円弧状の内周面16a〜19aで孔部13の内周面14が構成され、孔部13は内周面14の内側に略円柱状の空間(符号13で代用)を有している。
【0064】
上側の金型部16の右側部分の水平な下端面(分割面)16bは同じく左側部分の水平な下端面(分割面)16cと同じ高さに位置している。上側の金型部16の円弧状の内周面16aの右端すなわちスリット15の下部開口15dは上側の金型部16の左右の下端面16b,16cと同じ高さに位置している。上側の金型部16の右側の下端面16bに下側且つ右側の金型部17の水平な上端面(分割面)17d(
図4)が接合(当接)し、左側の下端面16cに中間の金型部19の水平な上端面(分割面)19b(
図4)が接合(当接)している。
【0065】
スリット15の右(外)側の内面15a(
図4)と左(内)側の内面15bとは、上下方向に同じ長さで平行に形成されている。スリット15の左(内)側の内面15bは上側の金型部16の円弧状の内周面16aに鋭角的に続き、左(内)側の内面15bと円弧状の内周面16aとの交差部分21は下向きに突出している。交差部分21とは交差部(突出先端)とその近傍を含むものである。
【0066】
右側且つ下側の金型部17の垂直な左端面17c(
図4)は、左側且つ下側の金型部18の垂直な右端面18cに接合(当接)し、その接合位置は、
図3の例において、各金型部16〜19の各円弧状の内周面16a〜19aで構成される孔部13(
図3)の上下方向の中心線m1よりも少し右側に寄っている(接合位置を孔部13の上下方向の中心線m1と一致させることも可能である)。左側且つ下側の金型部18の水平な上端面(分割面)18bは中間の金型部19の水平な下端面19c(
図5)に接合(当接)している。
【0067】
図3において、点線の矢印E1の範囲で、右側且つ下側の金型部17の円弧状の内周面17aの半径R1と、左側且つ下側の金型部18の円弧状の内周面18aの半径R1と、中間の金型部19の円弧状の内周面19aの下半部の半径R1とが、同一に且つ大きく(一例として7.5mmに)規定され、点線の矢印E2の範囲で、中間の金型部19の円弧状の内周面19aの上半部の半径R2と、上側の金型部16の円弧状の内周面16aの左半部の半径R2とが、同一に且つ中程度(一例として7.0mm)に規定され、点線の矢印E3の範囲で、上側の金型部16の円弧状の内周面16aの右半部の半径R3が小さく(一例として6.5mmに)規定されている。
【0068】
図3において、矢印E1の範囲で、下半側の円弧状の内周面17a〜19aの半径をスリット15側から時計(右)回りに漸次小さく規定し(例えば、下側且つ右側の円弧状の内周面17aの右端の半径を7.5mmとし、中間の金型部19の円弧状の内周面19aの下半側の半径を7.1mmとし)、矢印E2の範囲で、上半側且つ左半側の円弧状の内周面19a,16aの半径を時計(右)回りに漸次さらに小さく規定している(例えば、中間の金型19の円弧状の内周面19aの上半側の半径を7.0mmとし、上側の円弧状の内周面16aの中央側の半径を6.6mmとしている)。
【0069】
さらに、矢印E3の範囲で、上側且つ右側の円弧状の内周面16a1の半径を時計(右)回りに漸次さらに小さく規定する(例えば円弧状の内周面16a1の左端の半径を6.5mmとし、円弧状の内周面16a1の右端(交差部21)の半径をそれ以下にする)ことも可能である。
【0070】
これらのように、孔部13の内周面14の半径Rを樹脂シート9の丸め方向に沿って徐々に小さく規定したことで、
図4の如く樹脂シート9を丸め加工する際に、樹脂シート9の挿入先端9aを樹脂シート9の基端9b側の内面9cに引っ掛かりなくスムーズに摺接させて、スムーズ且つ確実にオーバーラップ部9dを形成することができる。
【0071】
図3において、例えば、下側の左右の各金型部17,18の円弧状の内周面17a,18aの半径と、中間の金型部19の円弧状の内周面19aの半径と、上側の金型部16の円弧状の内周面16aの左半部の半径とを同一に規定し、上側の金型部16の円弧状の内周面16aの右半側16a1の半径R3のみを小さく規定して、円弧状の内周面16aの右半側16a1(スリット15との交差部分21)をスリット15の下向き延長方向に沿って斜め下向きに配置することも可能である。この場合、円弧状の内周面16aの右半側16a1の半径R3を、スリット15に向かうにつれて右(時計)回りに漸次小さくすることも可能である。
【0072】
この場合においても、樹脂シート9をスリット15に挿入して孔部13の内周面14に沿って右回りに丸め加工する際に、樹脂シート9の先端9aが、スリット15の下部開口15dから右回りに孔部13の頂部13aまで移動し、次いで孔部13の頂部13aから孔部13の上側且つ右側の小径な内周面16a1に沿って斜め下向きに(ほぼ下向き)に案内されて、スリット15の下部開口15d側における樹脂シート9の基端9b側の平坦状の部分の内面9cに突き当たることなく、ほぼ接線方向にスムーズに摺接して、樹脂シート9の丸め操作及びオーバーラップ部9dの形成がスムーズに行われる。
【0073】
図3の金型11の外周側に鎖線22で示す如く、金型11全体が加熱されるように、不図示の電気ヒータ等で成る加熱装置を配設する。加熱装置は、例えば各金型部16〜18の内部に装着されることが好ましいが、金型11の上側や左側に配置することも可能である。
【0074】
金型11のスリット15から孔部13内に挿入された(押し込まれた)樹脂シート9は、孔部13の内周面14に沿って筒状に丸められ、
図3において樹脂チューブ9A(
図4)の状態で、加熱装置で塑性変形領域まで加熱されることが好ましい。樹脂チューブ9Aの加熱(温度、時間)が不十分であると、樹脂チューブ9Aが弾性変形領域で加熱されて、
図4〜
図5の取り出し時に樹脂チューブ9Aがスプリングバックして、オーバーラップ部9dの口開きや、拡径方向の変形を生じたりし兼ねないからである。
【0075】
樹脂シート9の材質によっては(例えば硬質な樹脂シートの場合は)、樹脂シート9をスリット5に挿入する前に、金型11を予め加熱しておいてもよい。柔軟な材質の樹脂シート9の場合は、丸める前に金型11を加熱しておくと、スリット15への挿入と同時に軟化して、丸め加工がスムーズに行われなくなることがあるので、丸め後に加熱することが好ましい。
【0076】
図4の如く、樹脂チューブ9Aの取り出しに際して、スリット15の下方に対向する下側且つ右側の金型部17が不図示の昇降手段で下降して、樹脂チューブ9Aの右方において上側の金型部16と下側且つ右側の金型部17との間に大きな(広い)開口23が形成される。昇降手段としては一例として垂直なシリンダが挙げられる。開口23側に樹脂チューブ9Aのオーバーラップ部9d側が位置する。樹脂チューブ9Aの基端9bは概ね樹脂チューブ9Aの水平な中心線m2(
図3)上に位置する。
【0077】
次いで、
図5の如く、樹脂チューブ9Aの左方に位置する中間の金型部(金型の一部)19が水平移動手段で右方に水平に移動し、孔部3及びスリット15を通過して、中間の金型部19の円弧状の内周面19aが樹脂チューブ9aを、金型11の右側に隣接した冷却装置24内に押し入れて受け渡す。樹脂チューブ9Aはオーバーラップ部9d側から冷却装置24内に挿入される。
【0078】
中間の金型部19は、上側の金型部16と下側且つ右側の金型部17との間の開口23を通って外部に(上下の各金型部16,17の右端面よりも右側)に突出する。水平移動手段としては一例として水平なシリンダが挙げられる。中間の金型部19と冷却装置24との間で樹脂チューブ9Aを保持した状態で、樹脂チューブ9Aの冷却が行われる。
【0079】
冷却装置24は、例えば、中間の金型部19の円弧状の内周面19aの右側に対向して円弧状のチューブ受け面25aを有する金属製の水平で横長の(樹脂チューブ9Aの軸方向に延びた)冷却ブロック25を備えている。
【0080】
冷却ブロック25には、例えばチューブ受け面25a側に開口した冷却エア吹き出し口を設けたり、あるいは冷却ブロック25の内部に冷却水を循環させたりすることが好ましい。冷却ブロック25内で樹脂チューブ9Aを自然冷却させることも可能である。冷却ブロック25の前後且つ上下においてチューブ案内板25bが左方向に突出して設けられている。少なくとも金型11と
図3の加熱装置(符号22で代用)と
図5の冷却装置24とで外装チューブ製造装置が構成される。
【0081】
樹脂チューブ9Aの径方向に重なって放熱性の悪いオーバーラップ部9dを冷却ブロック25に直接接触させる(押し付ける)ことで、オーバーラップ部9dを効率的に冷却することができる。樹脂チューブ9Aはオーバーラップ部9dを起点として例えば周方向に効率良く冷却されていく。
【0082】
図5の樹脂チューブ9Aのオーバーラップ部9dの重なり代はあくまで一例であり、例えば樹脂チューブ9Aの半周近くまでオーバーラップ部9dの重なり代を設けることも可能である。例えば、オーバーラップ部9dは不図示の組付治具等で外向きに開くことができ、その状態で、不図示の複数本の電線に外装チューブ(樹脂チューブ9A)を被せ着けて、ワイヤハーネスを形成する。
【0083】
図5の樹脂チューブ9Aには
図1の実施形態と同様な凹凸10が形成されており、完成した外装チューブは径方向の良好な屈曲性を有する。明細書においては、完成した製品を外装チューブと呼び、製品に至るまでのものを樹脂チューブと呼んでいる。
【0084】
樹脂チューブ9Aの冷却を完了した後、冷却装置24が
図5で右方に移動し、中間の金型部19が左方に移動復帰することで、樹脂チューブ9Aが冷却装置24と中間の金型19とによる支持を解除されて、下方に払い出される。中間の金型19は水平移動手段で
図4の原位置に復帰し、次いで下側且つ右側の金型部17が昇降手段で上昇して
図3の原位置に復帰する。
【0085】
図6〜
図10は、本発明の外装チューブ製造用金型とそれを用いた外装チューブ製造方法の第三の実施形態を示すものである。
【0086】
図3〜
図5の実施形態では四分割の金型21を用いたが、本実施形態では五分割の金型31を用いている。また、
図3〜
図5の実施形態では冷却装置24を用いたが、本実施形態では冷却装置を廃止している。
【0087】
図6の如く、この外装チューブ製造用金型31は、上側の金型部38を二分割して、上側且つ右側の金型部36と、上側且つ左側の金型部37とで構成している。上側且つ右側の金型部36は右半側の円弧状の内周面36aを有し、上側且つ左側の金型部37は、右半側の円弧状の内周面36aに段差なく続く左半側の円弧状の内周面37aを有している。
【0088】
上側且つ右側の金型部36は、右半側の円弧状の内周面36aと、右半側の円弧状の内周面36aを有する下向きの突壁36bとを除いて、上側且つ左側の金型部37の上側に重ねて配置されている。突壁36bにおいて円弧状の内周面36aとスリット35の左(内)面とが鋭角的に交差し、その交差部分39が下向きに突出している。交差部分39とは交差部(突出先端)とその近傍を含むものである。上側且つ右側の金型部36の垂直な右端面36c(
図8)はスリット35の左(内)面を構成している。
【0089】
固定側である上側且つ左側の金型部37に対して、上側且つ右側の金型部36は、垂直なシリンダ等といった不図示の昇降手段で上昇可能となっている。上側且つ右側の金型部36の垂直な左端面36b(
図9)が上側且つ左側の金型部37の段差部37b(
図9)の垂直な左端面(分割面)37b1に沿って上昇及び復帰(下降)時に案内される。
【0090】
図9の如く、上側且つ右側の金型部36が上昇することで、樹脂チューブ9Aの取り出し時に、上側且つ右側の金型部36の右半側の円弧状の内周面36aの下端が樹脂チューブ9Aに干渉することが防止されている。
【0091】
図6の如く、上側且つ右側の金型部36と、上側且つ左側の金型部37と、下側且つ右側の金型部40と、下側且つ左側の金型部41と、中間且つ左側の金型部42とで、金属製のブロック32が構成されている。金属製のブロック32と、略円柱状の空間を有する孔部33と、スリット35とで金型31が構成されている。孔部33は内周面34の内側に略円柱状の空間(符号33で代用)を有している。下側且つ左側の金型部41を除く各金型部36,37,40,42の円弧状の各内周面36a,37a,40a,42aで孔部33の内周面34が構成されている。上側且つ右側の金型部36と下側の左右の各金型部40,41とに、加熱装置46としての電気ヒータがそれぞれ装着されている。各加熱装置46は円柱状のもので、各金型部36,40,41の前後方向の水平な不図示の孔内に挿入固定されて、金型31の孔部33の周囲近傍に配置されている。
【0092】
前記
図5の実施形態においては、樹脂チューブ9Aの取り出し時に上側の金型部16の右半側の円弧面16a1に樹脂チューブ9Aの上部が干渉する懸念があるが、上側の金型部38を左右に分割し、
図9の如く、上側且つ右側の金型部36を上昇させて開口43を広く形成することで、干渉の心配が解消されている。
【0093】
図6の如く、上側且つ左側の金型部37の左端下部と、下側且つ左側の金型部41の左端上部とに、中間の金型部42の垂直な左端面42bに対する位置決めストッパとしての突起44が設けられている。
図10の如く、中間の金型部42は、固定側の上側且つ左側の金型部37の下面(分割面)37cと下側且つ左側の金型部41の上面(分割面)41cとに沿って、水平なシリンダ等といった不図示の水平移動手段で右方向に水平に移動可能である。各金型部36,40,42の分割面については説明を省略する。
【0094】
図6の如く、中間の金型部42の円弧状の内周面42aは、上側且つ左側の金型部37の円弧状の内周面37aと、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aとに段差なく続いている。下側且つ左側の金型部41は円弧状の内周面を有していない。中間の金型部42の円弧状の内周面42aと、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aと、上側の金型部36,37の円弧状の内周面36a,37aとは、概ね等しい円弧長さ(略1/3円弧)で繋がって、断面略円形の孔部33の内周面34を構成している。
【0095】
上側且つ右側の金型部36の垂直な右端面36c(
図8)と、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aに続く上向きの垂直な内面40c(
図8)との間に、樹脂シート挿入用の垂直で真直なスリット35が構成されている。樹脂シート9(
図6)はシート供給装置45でスリット35に挿入される(押し込まれる)。
【0096】
シート供給装置45は、下側且つ右側の金型部40の垂直な立上げ壁40bの上方に僅かな隙間を存して位置する右側の案内壁45aと、上側且つ右側の金型部36の上面に隙間を存して位置する左側の案内壁45bと、左右の案内壁45a,45bの間に形成された縦方向の垂直なスリット状の隙間45cと、左右の各案内壁45a,45bを連結して左方に水平に延長された上壁45dと、スリット状の隙間45cに沿って樹脂シート9を押し下げて金型31のスリット35及び孔部33内に供給する(押し込む)不図示の押し込み装置とを有している。
【0097】
この押し込み装置としては、例えば、スリット状の隙間45cに沿って下降して、樹脂シート9の上端(基端)9bを下向きに押圧する金属製のブレードと、ブレードを下降及び上昇(復帰)させる垂直なシリンダ等といった駆動手段とを備えることが一例として挙げられる。このブレードは金型31のスリット35内にまで進入して樹脂シート9を孔部33内に押し入れる。
【0098】
図6の各金型部36,37,40,42で構成される孔部33の断面円状の内周面34の半径は、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aから時計(右)回りに上側且つ右側の金型部36の円弧状の内周面36aまで、順次小さく規定されている。
【0099】
例えば、
図3の実施形態と同様に、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aと、中間の金型部42の円弧状の内周面42aの下半部とが同一の大きな半径(大径)に規定され、中間の金型部42の円弧状の内周面42aの上半部と、上側且つ左側の金型部37の円弧状の内周面37aとが同一の中程度の半径(中径)に規定され、上側且つ右側の金型部36の円弧状の内周面36aが小さな半径(小径)に規定される。径の異なる各円弧状の内周面40a,42a,37a,36aは段差なく滑らかに断面円状に続いている。
【0100】
あるいは、金型部毎に、円弧状の内周面の半径が順次小さく規定される。すなわち、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aが大径に規定され、中間の金型部42の円弧状の内周面42aが中径に規定され、上側且つ左側の金型部37の円弧状の内周面37aが中径よりも小さな中小径に規定され、上側且つ右側の金型部36の円弧状の内周面36aが最小径に規定される。
【0101】
あるいは、下側且つ右側の金型部40の円弧状の内周面40aと、中間の金型部42の円弧状の内周面42aと、上側且つ左側の金型部37の円弧状の内周面37aとを同一の半径に規定し、上側且つ右側の金型部36の円弧状の内周面36aのみを他の円弧状の内周面40a,42a,37aの半径よりも小径に規定することも可能である。
【0102】
以下に、
図6〜
図10の工程順に第三の実施形態の外装チューブ製造方法を説明する。
【0103】
図6のシートセット工程において、各金型部36,37,40,41,42を合体させて金型31を構成した状態で、矢印Aの如く上方からシート供給装置45で金型31のスリット35内に樹脂シート9を下向きに挿入する。
【0104】
次いで、
図7のシート丸め工程において、樹脂シート9をシート供給装置45で金型31の孔部33内に押し込んで、樹脂シート9を矢印B(丸め方向)の如く孔部33の内周面34に沿って湾曲状に屈曲させる。そして、
図8の如く、樹脂シート9の先端部9a’を樹脂シート9の基端部9b’側の内面9cに沿ってオーバーラップさせながら(オーバーラップ部を符号9dで示す)、樹脂シート9を矢印B方向に筒状に丸め加工して、樹脂チューブ9Aを形成する。
【0105】
金型31のスリット35の下方に樹脂チューブ9Aのオーバーラップ部9dが配置される。本例において樹脂チューブ9Aの基端9bは樹脂チューブ9Aの水平な中心線(
図3の符号m2参照)よりも少し上方に位置する。
【0106】
次いで、
図8のシート丸め終了後の加熱工程において、金型31を加熱装置46で加熱することで、金型31の孔部33内の樹脂チューブ9Aを加熱する。加熱温度は、樹脂チューブ9Aを塑性変形領域まで加熱加工する温度である。
図8の金型31の上側における鎖線の四角内の「加熱」の文字は、金型部36,40,41内の各加熱装置(電気ヒータ)46で金型31及び金型内の樹脂チューブ9Aを加熱する工程を示している。
図8の例では加熱装置46を所要の各金型部36,40,42の内部に配置しているが、この加熱装置46に代えて、あるいは加熱装置46と併用して、例えば「加熱」の文字で示す矩形ブロック状の加熱装置を金型31の外側(上側)に配置することも可能である。金型31と加熱装置46とシート供給装置45とで外装チューブ製造装置48が構成される。
【0107】
金型31内で樹脂チューブ9Aを塑性変形領域まで加熱することで、次工程(
図9の金型開放工程)において、樹脂チューブ9Aを金型31から外部に解放した際に、樹脂チューブ9Aが弾性的に拡径変形したり、オーバーラップ部9dが口開きする不具合が解消され、金型31の孔部33の内径と同等に樹脂チューブ9Aの外径が正確に維持される。
【0108】
金型31の加熱温度は樹脂シート9の材質や板厚等によって相違する。一例として加熱温度は150°C程度である。この材質・板厚の樹脂シート9の場合、130°C程度では弾性変形領域であり、
図9の金型31の開放時に樹脂チューブ9Aがスプリングバックする心配がある。樹脂チューブ9Aの加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定される。一例として加熱時間は30秒程度である。これらの加熱温度や加熱時間はあくまでも一例(参考)である。
【0109】
次いで、
図9の金型開放工程で、上側且つ右側の金型部36を矢印Cの如く上昇させると共に、下側且つ右側の金型部40を矢印Dの如く下降させる。各金型部36,40の昇降は垂直なシリンダ等といった不図示の移動手段で行う。スリット35を成す上下の金型部36,40の上下移動によって、樹脂チューブ9Aの右半側(オーバーラップ部9d側)が外部に解放される。
【0110】
樹脂チューブ9Aの左半側は、中間の金型部42の円弧状の内周面42aと上側且つ左側の金型部37の円弧状の内周面37aとで保持されている。樹脂チューブ9Aの径方向に重なって放熱しにくいオーバーラップ部9dが金型31の外側に露出することで効率良く自然冷却される。
【0111】
最後に、
図10のチューブ払い出し工程において、中間の金型部(金型の一部)42を水平なシリンダ等といった不図示の移動手段で矢印Eの如く右方向に水平に移動させて、樹脂チューブ9Aを中間の金型部42の円弧状の内周面42aでさらに右方に(下側且つ右側の金型部40よりも右方に)押し出して、外部に払い出す。
【0112】
中間の金型部42からの樹脂チューブ9Aの離脱は、例えば、樹脂チューブ9Aの自重による落下ないしエアブローないし作業者の離脱作業等によって行うことができる。また、
図10において、樹脂チューブ9Aのオーバーラップ部9d側を外部に解放した状態で効率的に自然冷却させることも可能である。
【0113】
図10の樹脂チューブ9Aの払い出しを終わった後、中間の金型部42を不図示の水平移動手段で左方に移動させて
図9の位置に復帰させる。中間の金型部42は、上下の金型部37,40,41に沿ってスムーズに移動し、上下の金型部37,41のストッパ突起44に当接して初期位置に位置決めされる。さらに上下の各金型部36,40を各昇降手段で上下移動させて
図8の位置に復帰させることで、
図6の初期の金型31の状態を得る。
【0114】
上記
図6〜
図10の外装チューブ製造方法においては、
図8のチューブ加熱工程で樹脂チューブ9Aを塑性変形領域まで加熱加工するので、例えば
図9の金型開放後に樹脂チューブ9Aを冷却する冷却工程(冷却装置)を設ける必要がない。すなわち、加熱された樹脂チューブ9Aを冷却することで塑性変形させる(弾性変形を抑止する)必要がない。これにより、冷却工程を省略することができ、冷却装置のためのコストや設置スペースを削減することができる。
【0115】
但し、樹脂チューブ9Aを加熱した状態のままでは、例えば、
図10のチューブ払い出し工程で、作業者が素手で樹脂チューブ9Aを持つことができないので(手袋であれば可)、その場合には、以下に説明する如く、金型開放工程(
図11)とチューブ払い出し工程(
図13)との間にチューブ冷却工程(
図12)を設ける。
【0116】
図11〜
図13は、本発明の外装チューブ製造用金型及び外装チューブ製造方法の第四の実施形態を示すものである。
【0117】
図11の金型開放工程よりも前の工程は、
図6のシートセット工程、
図7のシート丸め工程、
図8のシート丸め終了後の加熱工程と同じであり、
図6〜
図8の各工程において金型31の右方に離間して(離間距離は
図13におけると同様である)冷却装置24が配置されることが相違する。
【0118】
図11〜
図13における金型31や加熱装置46やシート供給装置45や樹脂チューブ9Aの構成は、
図6〜
図10の実施形態におけると同様であり、冷却装置24の構成は
図5の実施形態におけると同様であるので、同じ構成部分には同じ符号を付記して詳細な説明を省略する。金型31と加熱装置46とシート供給装置45と冷却装置24とで外装チューブ製造装置49が構成される。
【0119】
図11の金型開放工程において、金型31における上側且つ右側の金型部36と下側且つ右側の金型部40とを不図示の移動手段で上下に開いて、樹脂チューブ9Aのオーバーラップ部9dを含む右半部を露出させると同時ないしほぼ同時に、金型31の右側に配置された冷却装置24を水平なシリンダ等といった不図示の水平移動手段で矢印Fの如く金型に向けて接近させる方向(左方)に移動させる。
【0120】
本例の冷却装置24は、
図5の実施形態におけると同様に、中間の金型部42の円弧状の内周面42aに対向した円弧状のチューブ受け面25aを有する金属製の冷却ブロック25と、例えば冷却ブロック25の前後端(長手方向の端部)に設けられた上下のチューブ案内板25bとを備えている。冷却ブロック25には、チューブ冷却用のエア吹き出し口ないしブロック水冷用の配管等が設けられることが好ましい。
【0121】
図12のチューブ冷却工程において、中間の金型部42で樹脂チューブ9Aを保持した状態で、中間の金型部(金型の一部)42を不図示の水平移動手段で矢印Gの如く隣接の冷却装置24に向けて右方に移動させて、冷却装置24に受け渡す。すなわち、樹脂チューブ9Aを中間の金型部42の円弧状の内周面42aと、冷却装置24の冷却ブロック25の円弧状の受け面25aとの間に保持させる。
【0122】
樹脂チューブ9Aのオーバーラップ部9dが冷却ブロック25の受け面25aで支持される。その状態で、高温の樹脂チューブ9Aを低温の冷却ブロック25自体又は冷却ブロック25に設けたエア吹き出し装置等で冷却する。樹脂チューブ9Aの冷却は必ずしも常温になるまで行う必要はない。
【0123】
次いで、
図13の払い出し工程において、中間の金型部42を水平移動手段で左方に移動復帰させると共に、冷却装置24を水平移動手段で矢印Hの如く右方に移動(復帰)させて、樹脂チューブ9Aを解放することで、樹脂チューブ9Aを例えば自重で下方の不図示の部品トレイ等に落下させる(払い出す)。樹脂チューブ9Aの払い出し後に、上下の金型部36,40を不図示の昇降手段で上下移動させて
図8におけると同様の初期位置に復帰させる。
【0124】
なお、上記各実施形態においては、金型1,11,31内に上方から下向きに樹脂シート9を挿入する例で説明したが、例えば、
図1〜
図2の実施形態において、金型1を90°右回りにあるいは左回りに回転させた位置で固定し、樹脂シート9を水平に金型1のスリット5に挿入することも可能である。
【0125】
また、
図3〜
図5の実施形態においては、例えば、金型11を90°右回りに回転させた位置で固定し、樹脂シート9を水平に金型11のスリット15に挿入し、樹脂チューブ9Aの形成後に、
図4のスリット15の延長方向に位置する下側且つ左側の金型部17を左方向に移動させて開き、
図5において中間の金型部19を下向きに移動させて、金型11の下側に配置された冷却装置24に樹脂チューブ9Aを押し入れることも可能である。
【0126】
また、上記各実施形態においては、金型1,11,31を加熱装置で加熱することで樹脂チューブ9Aを加熱したが、例えば、金型内で丸められた樹脂チューブ9Aの内側の断面略円形の空間9e(
図5)に、棒状の不図示の加熱装置(電気ヒータ)を樹脂チューブ9Aの内面に触れることなく差し込んで、樹脂チューブ9Aを直接加熱することも可能である。
【0127】
また、上記各実施形態においては、各実施形態ごとに一種類の径の樹脂チューブ9A(外装チューブ)に対応した金型1,11,31を示したが、例えば、径違いの外装チューブを製造する場合には、孔部3,13,33の径を違えた複数種の金型を容易することで、外装チューブの多種生産ないし少量多種生産に容易に対応することができる。
【0128】
その他、従来公知の知見に従い、本発明の外装チューブ製造用金型1,11,31及び外装チューブ製造方法を適宜改変することができる。かかる改変のよってもなお本発明の外装チューブ製造用金型及び外装チューブ製造方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。