(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献によれば、尿検体中に含まれる粒子の種類が多いため、特に赤血球と結晶の分布領域どうしが互いに重なり合ってしまうとの問題が指摘されていた。このような問題を考慮して、上記特許文献では、赤血球と結晶の分布の重なり度合によって赤血球の計数精度の信頼性を評価していた。
【0005】
尿中の赤血球数は、腎・尿路系疾患の診断において非常に重要な情報であるため、結晶を多く含む尿検体であっても、信頼性の評価だけでなく、赤血球の正確な計数結果が望まれている。また、尿および血液以外の体液検体(とくに関節液)は、赤血球と結晶を含むことがある。したがって、尿だけでなく体液検体についても、赤血球を結晶と区別して正確に計数することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、検体中に含まれる赤血球と結晶の計数精度を向上させることが可能な検体分析方法および検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、検体分析方法に関する。この態様に係る検体分析方法は、検体と
細胞膜を染色するための試薬とを混合して調製された測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料に対して直線偏光の光を照射し、測定試料中の粒子が照射されることにより生じ
た蛍光および偏光解消された散乱光を検出し、
検出した前記
蛍光および前記散乱光の相違に基づいて、測定試料中の赤血球と結晶とを
弁別する。
【0008】
赤血球と結晶は、それぞれ、偏光特性が異なる。結晶に光が照射されると、これにより生じる
散乱光の偏光方向は、結晶に含まれる成分の旋光性に応じて変化する。一方、赤血球に光が照射されると、これにより生じる
散乱光の偏光方向はほとんど変化しない。よって、本態様に係る検体分析方法によれば、粒子が照射されることにより生じ
た偏光解消された散乱光に基づいて、赤血球と結晶とを
弁別することができる。
さらに、赤血球は細胞膜が染色されているため、結晶よりも強い蛍光を発する。よって、偏光解消された散乱光に基づいて赤血球として弁別された粒子群に結晶が含まれている場合、この粒子群から赤血球と結晶を弁別できる。したがって、結晶を多く含む尿検体であっても、赤血球を精度良く計数することができるため、腎・尿路系疾患や出血性疾患の診断において重要な情報が取得され得る。分析対象が体液である場合に、体液に赤血球と結晶が混在している場合でも、結晶の影響を受けずに赤血球を
弁別でき、赤血球を精度良く計数することができる。
【0010】
この場合、前記照射光の偏光方向は、前記照射光の照射位置における前記測定試料の流れ方向に平行となるよう設定され、前記散乱光の検出は、前記流れ方向に垂直な偏光成分の光を検出するようにして行われ得る。このように、照射光の偏光方向を、照射光の照射位置における測定試料の流れ方向に平行とすると、測定試料中の粒子から生じる散乱光と蛍光とを、同一方向において受光し易くすることができる。これにより、散乱光と蛍光を検出するための光学系を簡素にすることができる。なお、この場合、流れ方向に垂直な偏光成分の光を検出することにより、各粒子に基づく偏光状態を反映する第1パラメータを効率的に取得することができる。
【0011】
本態様に係る検体分析方法において、前記
散乱光の検出は、測定試料中の粒子から発せられ、前記照射光の偏光方向とは異なる偏光方向の光を透過する偏光フィルタを介して行われることを含み得る。これにより、粒子が含有する成分の旋光性に応じて変化した偏光方向の
散乱光を検出することができる。
【0012】
また、本態様に係る検体分析方法は、測定試料中の粒子が照射されることにより生じ
た前方散乱光
をさらに
検出し、
検出した前記前方散乱光および前記偏光解消された散乱光に基づいて、生体試料に含まれる粒子を、赤血球を含む第1の集団と、結晶を含む第2の集団に分類する設定とされ得る。
【0013】
この場合、本態様に係る検体分析方法は、測定試料中の粒子が照射されることにより生じ
た前記蛍光
の検出結果に基づいて、前記第1の集団に含まれる粒子から、赤血球と
結晶を弁別する設定とされ得る
。
【0014】
本態様に係る検体分析方法において、前記検体は、血液以外の体液または尿である。
【0015】
本発明の第2の態様は、検体分析装置に関する。この態様に係る検体分析装置は、検体と
細胞膜を染色するための試薬とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された測定試料が流れるフローセルと、前記フローセルを流れる測定試料に直線偏光の光を照射する照射ユニットと、測定試料中の粒子が照射されることにより生じ
た蛍光および偏光解消された散乱光を検出する検出部と、前記検出部によ
り検出
された前記蛍光および前記散乱光に基づいて、測定試料中の赤血球と結晶とを
弁別する解析部と、を備える。
【0016】
本態様に係る検体分析装置によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【0018】
本態様に係る検体分析装置において、前記照射光の偏光方向は、前記照射光の照射位置における前記測定試料の流れ方向に平行となっており、前記検出部は、前記流れ方向に垂直な偏光成分の
散乱光を検出する構成とされ得る。
【0019】
本態様に係る検体分析装置において、前記検出部は、測定試料中の粒子から発せられ、前記照射光の偏光方向とは異なる偏光方向の光を透過する偏光フィルタを介して前記
散乱光を検出する構成とされ得る。
【0020】
また、本態様に係る検体分析装置は、測定試料中の粒子が照射されることにより生じ
た散乱光を検出する他の検出部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記解析部は、前記他の検出部によ
り検出
された前記散乱光および前記検出部により検出された前記偏光解消された散乱光に基づいて、生体試料に含まれる粒子を、赤血球を含む第1の集団と、結晶を含む第2の集団に分類する構成とされ得る。
【0021】
この場合、前記解析部は、
前記検出部によって検出された前記蛍
光に基づいて、前記第1の集団に含まれる粒子
から、赤血球と
結晶を弁別する構成とされ得る。
【0022】
本態様に係る検体分析装置において、前記検体は、血液以外の体液または尿である。
【0023】
本発明の第3の態様は、検体分析方法に関する。この態様に係る検体分析方法は、
検体と試薬とを混合して調製された測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料に対して直線偏光の光を照射し、測定試料中の粒子が照射されることにより生じた散乱光を検出し、検出した散乱光の一部から、各粒子に基づく偏光状態を反映する第1パラメータを取得し、検出した散乱光の他の部分から、各粒子の大きさを反映する第2パラメータを取得し、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータに基づいて、測定試料中の赤血球と結晶とを弁別する。
【0024】
本態様に係る検体分析方法において、
前記散乱光として前方散乱光および偏光解消された側方散乱光を検出し、検出した前記側方散乱光から前記第1パラメータを取得し、検出した前記前方散乱光から前記第2パラメータを取得するようになされ得る。
【0025】
本発明の第4の態様は、検体分析装置に関する。この態様に係る検体分析装置は、検体と試薬とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された測定試料が流れるフローセルと、前記フローセルを流れる測定試料に直線偏光の光を照射する照射ユニットと、測定試料中の粒子が照射されることにより生じた散乱光の一部を受光して偏光解消状態を反映する信号を出力し、前記散乱光の他の部分を受光して前記粒子の大きさを反映する信号を出力する検出部と、前記検出部から出力された前記偏光解消状態を反映する信号および前記粒子の大きさを反映する信号に基づいて、測定試料中の赤血球と結晶とを弁別する解析部と、を備える。
【0026】
本態様に係る検体分析装置において、前記検出部は、側方散乱光に基づいて前記偏光解消状態を反映する信号を出力し、前方散乱光に基づいて前記粒子の大きさを反映する信号を出力するよう構成され得る。
【0027】
本発明の第5の態様は、検体分析方法に関する。この態様に係る検体分析方法は、検体と試薬とを混合して調製された測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料に対して直線偏光の光を照射し、測定試料中の粒子が照射されることにより生じた前方散乱光および偏光解消された側方散乱光を検出し、検出した前記前方散乱光および前記側方散乱光に基づいて、測定試料中の赤血球と結晶とを弁別する。
【0028】
本発明の第6の態様は、検体分析装置に関する。この態様に係る検体分析装置は、検体と試薬とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された測定試料が流れるフローセルと、前記フローセルを流れる測定試料に直線偏光の光を照射する照射ユニットと、測定試料中の粒子が照射されることにより生じた前方散乱光および偏光解消された側方散乱光を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記前方散乱光および前記側方散乱光に基づいて、測定試料中の赤血球と結晶とを弁別する解析部と、を備える。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明によれば、検体中に含まれる赤血球と結晶の計数精度を向上させることが可能な検体分析方法および検体分析装置を提供することができる。
【0030】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施の形態は、血球、細菌、円柱、上皮細胞などの粒子を含む尿検体を分析する尿検体分析装置に本発明を適用したものである。測定対象となる尿検体は、排泄された尿の他に、原尿、尿管中の尿、膀胱内の尿、尿道中の尿など、生体内から採取した尿を含むものである。
【0033】
以下、本実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、尿検体分析装置1の外観の構成を示す図である。
【0035】
尿検体分析装置1は、尿検体に含まれる粒子をフローサイトメータにより光学的に測定する測定装置2と、測定装置2から出力された後述の測定データを処理する情報処理装置3とを備えている。測定装置2の前方には搬送部2aが設けられており、搬送部2aによって、尿検体が収容された容器Tを複数保持するラックRが搬送される。情報処理装置3は、本体30と、分析結果等が表示される表示部31と、オペレータの指示を受け付ける入力部32を備えている。
【0036】
図2は、測定装置2の構成を示す図である。
【0037】
測定装置2は、検体分配部21と、試料調製部22と、光学検出部23と、信号処理回路24と、CPU25と、メモリ26と、通信インターフェース27とを有する。信号処理回路24は、アナログ信号処理回路241と、A/Dコンバータ242と、デジタル信号処理回路243と、メモリ244とを有する。
【0038】
検体分配部21は、搬送部2aによって搬送された容器Tから所定量の尿検体を吸引し、試料調製部22に供給する。試料調製部22は、混合容器とポンプ(図示せず)を備えている。また、試料調製部22には、容器221、222が、チューブを介して接続されている。容器221には、細胞膜およびタンパク質を染色する染料を含有する試薬が収容されており、容器222には、希釈液が収容されている。混合容器では、検体分配部21から供給された検体に対して、容器221、222から供給される試薬と希釈液が混合され、測定試料の調製が行われる。混合容器で調製された測定試料は、ポンプにより、シース液と共に光学検出部23のフローセル205(
図3参照)に供給される。
【0039】
図3は、光学検出部23の構成を示す模式図である。
【0040】
光学検出部23は、レーザ光源201と、コリメータレンズ202と、シリンドリカルレンズ203と、コンデンサレンズ204と、フローセル205と、集光レンズ206と、ビームストッパ207と、ピンホール208と、フォトダイオード209と、集光レンズ210と、ダイクロイックミラー211と、ハーフミラー212と、フォトマルチプライヤ213と、偏光フィルタ214と、フォトマルチプライヤ215と、分光フィルタ216と、フォトマルチプライヤ217を備えている。
【0041】
レーザ光源201は、波長488nm程度のレーザ光をX軸正方向に出射する。レーザ光源201から出射されるレーザ光は、直線偏光となっている。レーザ光源201は、直線偏光の偏光方向が、フローセル205上のレーザ光の照射位置における測定試料の流れ方向(Z軸方向)に平行となるよう、測定装置2内に設置されている。すなわち、レーザ光源201から出射されるレーザ光の偏光方向は、Z軸方向に垂直な面を入射面としたとき、当該入射面に対して垂直となっている。
【0042】
レーザ光源201から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ202により平行光に変換される。コリメータレンズ202を透過したレーザ光は、シリンドリカルレンズ203によりY軸方向にのみ収束される。シリンドリカルレンズ203を透過したレーザ光は、コンデンサレンズ204により、Y軸方向とZ軸方向に集光される。これにより、レーザ光源201から出射されるレーザ光が、フローセル205内をZ軸方向に流れる測定試料に対して、Y軸方向に細長いビーム形状で照射される。レーザ光が測定試料中の粒子に照射されると、フローセル205の前方(X軸正方向)に前方散乱光が生じ、フローセル205の側方(Y軸正方向)に側方散乱光と側方蛍光が生じる。
【0043】
前方散乱光は、フローセル205のX軸正方向側に配置された集光レンズ206により、ピンホール208の位置に集光される。レーザ光源201から出射された光のうち、測定試料中の粒子に照射されずにフローセル205を透過したレーザ光は、集光レンズ206によって集光された後、フォトダイオード209に入射しないようビームストッパ207によって遮断される。ピンホール208を通過した前方散乱光は、フォトダイオード209により検出される。フォトダイオード209は、検出した前方散乱光に基づいて前方散乱光信号(FSC)を出力する。
【0044】
側方散乱光は、フローセル205のY軸正方向側に配置された集光レンズ210によって収束される。集光レンズ210を透過した側方散乱光は、ダイクロイックミラー211により反射される。ダイクロイックミラー211によって反射された側方散乱光は、無偏光タイプのハーフミラー212によって2分割される。ハーフミラー212を透過した側方散乱光は、フォトマルチプライヤ213により検出される。フォトマルチプライヤ213は、検出した側方散乱光に基づいて側方散乱光信号(SSC)を出力する。ハーフミラー212により反射された側方散乱光は、偏光フィルタ214に入射する。
【0045】
測定試料中の粒子に対して所定の偏光方向のレーザ光が照射されると、側方散乱光の偏光方向は、粒子が含有する成分が持つ旋光性に応じて、粒子に照射される前のレーザ光の偏光方向から変化する。本実施の形態では、測定試料に照射されるレーザ光の偏光方向は、フローセル205を流れる測定試料の流れ方向(Z軸方向)に平行となっている(以下、この偏光状態を「初期の偏光状態」という)。したがって、測定試料にレーザ光が照射されると、照射された粒子が含有する成分に応じて、成分が分布する部分のレーザ光の偏光方向が回転し、測定試料に照射される前の初期の偏光状態とは異なる偏光方向となる。このように測定試料に照射されるレーザ光の偏光方向が、部分的に変化して初期の偏光状態から崩れると、Y軸正方向に生じる側方散乱光には、種々の偏光状態の光成分が含まれるようになる。
【0046】
このとき、粒子から生じる側方散乱光のうち、測定試料に照射される前の偏光方向に垂直な偏光方向の光成分の割合(初期の偏光状態が崩される度合い)は、粒子が有する成分に応じて決まる。本実施の形態では、後述するように、赤血球と結晶が、それぞれ偏光特性の異なる固有の成分を有することに着目し、側方散乱光の偏光状態(初期の偏光状態が崩される度合い)に基づいて、赤血球と結晶が分類される。
【0047】
偏光フィルタ214は、Z軸方向に平行な偏光を遮断し、X軸方向に平行な偏光を通過させるよう構成されている。偏光フィルタ214を通過した側方散乱光を、以下、「偏光解消側方散乱光」と称する。偏光解消側方散乱光は、フォトマルチプライヤ215により検出される。フォトマルチプライヤ215は、検出した偏光解消側方散乱光に基づいて偏光解消側方散乱光信号(PSSC)を出力する。
【0048】
上記のように、側方散乱光の偏光方向は、測定試料中の粒子が持つ旋光性に応じて、初期の偏光状態から変化する。したがって、フォトマルチプライヤ215に到達する偏光解消側方散乱光の光量も、レーザ光が照射される粒子の種類毎に異なることとなり、また、偏光解消側方散乱光信号(PSSC)の大きさも、レーザ光が照射される粒子の種類毎に異なることとなる。
【0049】
なお、フローセル205上から生じる前方散乱光と側方散乱光は、それぞれ、偏光フィルタを介さずに、そのまま、フォトダイオード209とフォトマルチプライヤ213によって受光される。したがって、フォトダイオード209は、フローセル205から生じた偏光方向が不揃いの前方散乱光をそのまま検出し、同様に、フォトマルチプライヤ213は、フローセル205から生じた偏光方向が不揃いの側方散乱光をそのまま検出する。なお、前方散乱光は、側方散乱光と同様、測定試料中の粒子の旋光性によって、偏光方向が初期の偏光状態から変化する。
【0050】
側方蛍光は、側方散乱光と同様、集光レンズ210によって収束される。集光レンズ210を透過した側方蛍光は、ダイクロイックミラー211を透過し、分光フィルタ216に通されて、フォトマルチプライヤ217により検出される。フォトマルチプライヤ217は、検出した側方蛍光に基づいて側方蛍光信号(SFL)を出力する。
【0051】
図2に戻り、光学検出部23は、前方散乱光信号(FSC)と、側方散乱光信号(SSC)と、偏光解消側方散乱光信号(PSSC)と、側方蛍光信号(SFL)をアナログ信号処理回路241に出力する。アナログ信号処理回路241は、CPU25の指示に従って、光学検出部23から出力された各光に基づく電気信号を、アンプにより増幅し、A/Dコンバータ242に出力する。
【0052】
A/Dコンバータ242は、アナログ信号処理回路241から出力された電気信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理回路243に出力する。デジタル信号処理回路243は、CPU25の指示に従って、A/Dコンバータ242から出力されたデジタル信号に対して、所定の信号処理を施す。これにより、フローセル205内を粒子が通過する度に生じる前方散乱光と、側方散乱光と、偏光解消側方散乱光と、側方蛍光に対応する信号波形が取得される。すなわち、測定試料に含まれる粒子(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌等)ごとに、各光に対応する信号波形が取得される。取得された信号波形は、メモリ244に記憶される。
【0053】
CPU25は、メモリ244に記憶された信号波形から、前方散乱光と、側方散乱光と、偏光解消側方散乱光と、側方蛍光に対応する、複数の特徴パラメータ(ピーク値、幅、面積)を算出する。ピーク値(P)は、
図4(a)に示すように、信号波形の最大値である。幅(W)は、
図4(b)に示すように、所定の閾値よりも大きい信号波形の部分の幅である。面積(A)は、
図4(c)に示すように、所定の閾値と信号波形が交わる点から下に延ばした線分と、信号波形とに囲まれる部分の面積である。なお、
図4(b)、(c)で用いられる閾値は、適切な特徴パラメータが得られるよう、特徴パラメータごとに適宜設定される。こうして算出された特徴パラメータは、メモリ26に記憶される。
【0054】
CPU25は、算出した粒子ごとの特徴パラメータ(以下、「測定データ」という)を、通信インターフェース27を介して情報処理装置3に送信する。また、CPU25は、通信インターフェース27を介して情報処理装置3から制御信号を受信し、かかる制御信号に従って測定装置2の各部を駆動する。
【0055】
図5は、情報処理装置3の構成を示す図である。
【0056】
情報処理装置3は、パーソナルコンピュータからなり、本体30と、表示部31と、入力部32から構成されている。本体30は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、ハードディスク304と、読出装置305と、画像出力インターフェース306と、入出力インターフェース307と、通信インターフェース308を有する。
【0057】
CPU301は、ROM302に記憶されているコンピュータプログラムと、RAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM303は、ROM302とハードディスク304に記憶されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM303は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域としても利用される。
【0058】
ハードディスク304には、オペレーティングシステムと、CPU301に実行させるためのコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。また、ハードディスク304には、
図6に示す処理を実行させるためのプログラム304aが予め記憶されており、測定装置2から受信した測定データが順次記憶される。読出装置305は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体305aに記録されたコンピュータプログラムとデータを読み出すことができる。なお、上記プログラム304aが記録媒体305aに記録されている場合には、読出装置305により記録媒体305aから読み出されたプログラム304aが、ハードディスク304に記憶される。
【0059】
画像出力インターフェース306は、画像データに応じた映像信号を表示部31に出力し、表示部31は、映像信号に基づいて画像を表示する。オペレータが入力部32を介して指示を入力すると、入出力インターフェース307は、入力された信号を受け付ける。通信インターフェース308は、測定装置2に接続されており、CPU301は、通信インターフェース308を介して、測定装置2との間で指示信号およびデータの送受信を行う。
【0060】
図6は、測定装置2と情報処理装置3の処理を示すフローチャートである。
【0061】
情報処理装置3のCPU301は、入力部32を介してオペレータによる測定指示を受け付けると(S101:YES)、測定開始信号を測定装置2に送信する(S102)。一方、測定装置2のCPU25は、情報処理装置3から測定開始信号を受信すると(S201:YES)、測定試料の調製を行い(S202)、調製した測定試料をフローセル205内に流す(S203)。続いて、上述したように、レーザ光源201から出射されたレーザ光が、フローセル205内を流れる測定試料に照射され、測定試料に含まれる粒子ごとに、前方散乱光と、側方散乱光と、偏光解消側方散乱光と、側方蛍光が、それぞれ、フォトダイオード209と、フォトマルチプライヤ213、215、217により検出される(S204)。
【0062】
続いて、CPU25は、検出した各光に対応する信号波形を取得し(S205)、取得した信号波形に基づいて、上述した複数の特徴パラメータを算出する(S206)。しかる後、CPU25は、算出した粒子ごとの複数の特徴パラメータ(測定データ)を、情報処理装置3に送信する(S207)。
【0063】
一方、情報処理装置3のCPU301は、測定データを受信すると(S103:YES)、第1スキャッタグラムにおいて領域A11を設定する(S104)。具体的には、
図7(a)に示すように、測定データに含まれる各粒子が、前方散乱光信号の幅(FSCW)と前方散乱光信号のピーク値(FSCP)を2軸とする第1スキャッタグラム上にプロットされる。そして、第1スキャッタグラムにおいて固定の領域A11が設定される。
【0064】
図7(a)において、領域A11は、測定試料に含まれる赤血球と結晶に対応する領域であり、領域A11以外の領域は、測定試料に含まれる円柱、菌、ごみ等に対応する領域である。CPU301は、第1スキャッタグラム上の領域A11に含まれる粒子を抽出する(S105)。
【0065】
なお、ここでは、説明の便宜上、第1スキャッタグラムに粒子がプロットされ、第1スキャッタグラムに設定された領域A11に含まれる粒子が抽出されている。しかしながら、第1スキャッタグラムと領域A11は、必ずしも図形やグラフとして作成される必要はなく、領域A11に含まれる粒子の抽出は、特定の数値範囲に属する粒子のみをフィルタリングによって抽出するデータ処理によって行われるようにしても良い。同様に、後述する第2〜第5スキャッタグラムと領域A21、A22、A31、A32、A41、A51も、必ずしも図形やグラフとして作成される必要はなく、領域A21に含まれる粒子の抽出と、領域A31、A41、A51に含まれる粒子数の計数は、データ処理によって行われるようにしても良い。
【0066】
次に、CPU301は、第2スキャッタグラムにおいて領域A21、A22を設定する(S106)。具体的には、
図7(b)に示すように、S105で抽出した領域A11の各粒子が、偏光解消側方散乱光信号のピーク値(PSSCP)と前方散乱光信号のピーク値(FSCP)を2軸とする第2スキャッタグラム上にプロットされる。そして、第2スキャッタグラムにおいて固定の領域A21、A22が設定される。
【0067】
図7(b)において、横軸のPSSCPは、粒子から生じる側方散乱光のうち、測定試料に照射される前の偏光方向に垂直な偏光方向の光成分の割合(初期の偏光状態が崩される度合い)を示すものである。このため、赤血球に比べて、通常、初期の偏光状態を崩す成分を多く含むとされる結晶が、PSSCPの値が大きい領域に分布することになる。よって、
図7(b)に示すように第2スキャッタグラムにおいて領域A21、A22が設定されると、領域A21、A22は、それぞれ、赤血球と結晶に対応する領域となる。
【0068】
なお、赤血球と結晶は、何れも核を有さず、同様の大きさを有している。このため、偏光解消側方散乱光を用いることなく、赤血球と結晶の弁別を精度良く行うことは困難である。しかしながら、本実施の形態では、赤血球は初期の偏光状態をほとんど崩さず、結晶は異方性を有するため初期の偏光状態を大きく崩すことに着目し、偏光解消側方散乱光を用いて赤血球と結晶との弁別(領域A21、A22を設定)がなされている。これにより、偏光解消側方散乱光を用いない場合に比べて、赤血球と結晶を精度良く区別することが可能となる。
【0069】
こうして、領域A21、A22が設定されると、CPU301は、第2スキャッタグラム上の領域A21に含まれる粒子を抽出する(S107)。
【0070】
次に、CPU301は、第3スキャッタグラムにおいて領域A31、A32を設定する(S108)。具体的には、
図7(c)に示すように、S107で抽出した各粒子が、側方蛍光信号のピーク値(FLP)と前方散乱光信号のピーク値(FSCP)を2軸とする第3スキャッタグラム上にプロットされる。そして、第3スキャッタグラムにおいて固定の領域A31、A32が設定される。
【0071】
図7(c)において、横軸のFLPは、粒子内で最も強く染まっている部分の染色度合いを示すものである。赤血球は、細胞膜が染料によって染色されているため、その他の成分(ごみや残存する結晶など)に比べてFLPの値が高い位置に分布し、その他の成分が、FLPの値が小さい領域に分布することになる。縦軸のFSCPは、粒子の大きさを示すものである。赤血球はある程度決まった大きさを有しているため、FSCPの値が所定の範囲である領域に分布することになる。よって、
図7(c)に示すように第3スキャッタグラムにおいて領域A31、A32が設定されると、領域A31、A32は、それぞれ、赤血球とその他の成分に対応する領域となる。なお、領域A32には、ごみの他、S106、S107で取り除くことができなかった結晶も含まれる。
【0072】
こうして、領域A31、A32が設定されると、CPU301は、第3スキャッタグラム上の領域A31に含まれる粒子数を計数する(S109)。これにより、測定試料に含まれる赤血球の数が取得される。
【0073】
次に、CPU301は、第4スキャッタグラムにおいて領域A41を設定する(S110)。具体的には、
図7(d)に示すように、S105で抽出した粒子のうち、S108で領域A31に含まれる粒子を除く各粒子が、側方蛍光信号のピーク値(FLP)と、前方散乱光信号のピーク値(FSCP)を2軸とする第4スキャッタグラム上にプロットされる。そして、第4スキャッタグラムにおいて固定の領域A41が設定される。
【0074】
ここで、第4スキャッタグラムにプロットされる粒子は、S105で抽出された赤血球と結晶のうち、S108で最終的に区別された赤血球が除かれた残りの粒子である。このため、第4スキャッタグラムにプロットされる粒子には、赤血球はほとんど含まれない。よって、第4スキャッタグラムにおいて、結晶に対応する領域A41が設定されると、この領域A41には、概ね結晶のみが含まれることとなる。よって、この領域A41により、測定試料に含まれる結晶を精度良く抽出することができる。
【0075】
こうして、領域A41が設定されると、CPU301は、第4スキャッタグラム上の領域A41に含まれる粒子数を計数する(S111)。これにより、結晶の数が取得される。
【0076】
続いて、CPU301は、S109で取得した赤血球の数と、S111で取得した結晶の数を、表示部31に表示する(S112)。こうして、測定装置2と情報処理装置3の処理が終了する。
【0077】
次に、実際の尿検体に対して、顕微鏡を使用した目視による計数結果と、本実施の形態による計数結果を比較する。
【0078】
図8(a)は、所定の尿検体についての、顕微鏡を使用した目視による計数結果と、本実施の形態による計数結果を示す図である。この場合の尿検体には、目視の結果、赤血球が2288.0個/μL含まれており、結晶が0.0個/μL含まれている。
図8(b)、(c)は、この場合の尿検体について、それぞれ、本実施の形態の第3、第4スキャッタグラムにおける分画を行った結果を示す図である。
【0079】
赤血球は、腎・尿路系疾患や出血性疾患により尿中に出現する。一般に、尿検体1μLに含まれる赤血球が20個以上あれば、この尿検体を採取した患者は、腎・尿路系疾患や出血性疾患に罹患している可能性が高いとされる。
【0080】
図8(a)の目視結果によれば、この尿検体1μLに含まれる赤血球は20個以上であった。一方、
図8(a)の本実施の形態の結果によれば、目視結果の場合と同様、この尿検体1μLに含まれる赤血球は20個以上であった。なお、
図8(b)、(c)を併せて参照すると、領域A31に含まれる粒子の数が多く、領域A41に含まれる粒子の数が少ないため、この尿検体に含まれる赤血球は多く、結晶は少ないことが分かる。よって、本実施の形態によれば、目視結果と同様、この尿検体を採取した患者について、赤血球が多いことに基づいて、オペレータは、この患者が腎・尿路系疾患や出血性疾患に罹患している可能性が高いと判断することができる。
【0081】
図9(a)は、
図8(a)〜(c)の場合とは異なる他の尿検体についての、顕微鏡を使用した目視による計数結果と、本実施の形態による計数結果を示す図である。この場合の尿検体には、目視の結果、赤血球が0.0個/μL含まれており、結晶が160.0個/μL含まれている。
図9(b)、(c)は、この場合の尿検体について、本実施の形態の第3、第4スキャッタグラムにおける分画を行った結果を示す図である。
【0082】
図9(a)の目視結果によれば、この尿検体1μLに含まれる赤血球は20個未満であった。一方、
図9(a)の本実施の形態の結果によれば、目視結果の場合と同様、この尿検体1μLに含まれる赤血球は20個未満であった。なお、
図9(b)を併せて参照すると、領域A31に含まれる粒子の数は少ないため、この尿検体に含まれる赤血球は少ないことが分かる。また、
図9(c)を併せて参照すると、領域A41には一定数の粒子が含まれているため、結晶の分類が適正に行われていることが分かる。よって、本実施の形態によれば、目視結果と同様、この尿検体を採取した患者について、赤血球が少ないことに基づいて、オペレータは、この患者が腎・尿路系疾患や出血性疾患に罹患している可能性が低いと判断することができる。
【0083】
なお、結晶は、健常人の尿検体中にも含まれるため、結晶の数のみに基づいて、疾患を特定することは困難である。しかしながら、本実施の形態では、上述したように尿検体から結晶を区別することができるため、赤血球を精度良く計数することができる。
【0084】
以上、本実施の形態によれば、偏光解消側方散乱光信号のピーク値(PSSCP)と前方散乱光信号のピーク値(FSCP)を2軸とする第2スキャッタグラムにおいて、領域A21、A22を設定するにより、測定試料に含まれる赤血球と結晶とを分類(区別)することができる。さらに、側方蛍光信号のピーク値(FLP)と前方散乱光信号のピーク値(FSCP)を2軸とする第3スキャッタグラムにおいて、領域A31、A32を設定することにより、領域A21に含まれる粒子を、赤血球と赤血球以外の粒子とを分類(区別)することができる。これにより、結晶が多数含まれる尿であっても、結晶やその他の粒子を区別することができるため、赤血球の計数精度を高めることができる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、赤血球を精度良く計数することにより、腎・尿路系疾患や出血性疾患の診断において重要な情報を取得することができる。より具体的には、第3スキャッタグラムの領域A31に含まれる粒子数を計数することにより、赤血球の数が精度良く取得され、取得された数が表示される。これにより、オペレータは、赤血球が多いことに基づいて、この患者が腎・尿路系疾患や出血性疾患に罹患している可能性が高いと判断することができる。
【0086】
なお、腎・尿路系疾患や出血性疾患の可能性が高いと一般に判断される場合、
図6のS112において、情報処理装置3の表示部31に、
図10に示す画面D1が表示されるようにしても良い。画面D1には、腎・尿路系疾患や出血性疾患の可能性が高いと判断された根拠(赤血球の数)と、罹患の可能性を示唆する旨が表示される。また、
図6のS112において、第2〜第4スキャッタグラムが併せて表示されても良い。
【0087】
また、本実施の形態によれば、レーザ光源201から出射されるレーザ光の偏光方向が、フローセル205内を流れる測定試料の流れ方向(Z軸方向)に平行となっている。これにより、フローセル205内を流れる粒子に対して、X軸正方向にレーザ光が照射されると、蛍光は略Y軸方向に生じるため、側方散乱光と蛍光とを略同一の方向(Y軸正方向)で受光することができる。これにより、光学検出部23の構成を簡素にすることができる。また、上記のように光学検出部23を構成した場合、フローセル205のY軸正方向側に配置されたフォトマルチプライヤ217により側方蛍光を効率良く検出することができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、偏光フィルタ214により、測定試料に照射されるレーザ光と同じ偏光方向の側方散乱光が遮断されるため、フォトマルチプライヤ215は、偏光解消側方散乱光を効率的に検出することが可能となる。
【0089】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0090】
たとえば、上記実施の形態では、直線偏光の光を出射させる光源として、レーザ光源201が用いられたが、これに限らず、ランプから出射された光のうち、偏光フィルタにより一方向の偏光成分の光のみが抽出されるように構成された光源ユニットが用いられるようにしても良い。
【0091】
また、上記実施の形態では、レーザ光源201は、直線偏光の偏光方向が、フローセル205上のレーザ光の照射位置における測定試料の流れ方向(Z軸方向)に平行となるよう、測定装置2内に配置された。しかしながら、レーザ光源201から出射されるレーザ光の偏光方向は、必ずしも測定試料の流れ方向に一致していなくても良く、測定試料の流れ方向に対してやや傾いていても良い。この場合、上記の実施の形態に比べて、粒子から生じる蛍光の進行方向はY軸方向から離れることになる。よって、フォトマルチプライヤ217により蛍光を効率良く検出するためには、上記実施の形態のように、レーザ光源201から出射されるレーザ光の偏光方向は、測定試料の流れ方向に一致しているのが望ましい。
【0092】
また、上記実施の形態では、第2スキャッタグラムの横軸は偏光解消側方散乱光信号のピーク値(PSSCP)とされたが、これに限らず、粒子から生じる側方散乱光のうち、初期の偏光方向と異なる偏光方向の光成分の割合(初期の偏光状態が崩される度合い)を反映する特徴パラメータであれば良い。たとえば、横軸は、偏光解消側方散乱光信号の面積(PSSCA)であっても良い。なお、横軸の特徴パラメータとして、PSSCP、PSSCAの何れを用いるかは、測定試料に照射されるレーザ光のビームスポットの大きさ、フローセル205内を流れる測定試料の速度、アナログ信号処理回路241の増幅度などによって適宜設定され得る。
【0093】
また、第2スキャッタグラムの横軸は、粒子から生じる前方散乱光のうち、初期の偏光方向と異なる偏光方向の光成分の割合を反映する特徴パラメータであっても良い。上述したように、フォトダイオード209には、フローセル205から生じた偏光方向が不揃いの前方散乱光が入射する。このため、フォトダイオード209のX軸負方向側にハーフミラーを配置し、このハーフミラーによって分割された前方散乱光を偏光フィルタに通せば、粒子から生じる前方散乱光のうち、初期の偏光方向と異なる偏光方向の光成分(偏光解消前方散乱光)を受光することができる。この場合も、受光した偏光解消前方散乱光の割合(初期の偏光状態が崩される度合い)を反映する特徴パラメータを第2スキャッタグラムの横軸とすることで、上記実施の形態と同様、赤血球と結晶とを分類することができる。
【0094】
また、第2スキャッタグラムに替えて、横軸を偏光解消側方散乱光信号のピーク値(PSSCP)、縦軸を粒子の度数とするヒストグラムが用いられても良い。この場合、S107において、第2スキャッタグラムの領域A21と同様、ヒストグラムにおいてPSSCPの値が小さい範囲の粒子が抽出される。
【0095】
また、上記実施の形態では、第3、第4スキャッタグラムの横軸は側方蛍光信号のピーク値(FLP)とされたが、これに限らず、粒子内で最も強く染まっている部分の染色度合いを反映する特徴パラメータであれば良い。たとえば、横軸は、側方蛍光信号の面積(FLA)であっても良い。この場合、横軸の特徴パラメータとして、FLP、FLAの何れを用いるかは、測定試料に照射されるレーザ光のビームスポットの大きさ、フローセル205内を流れる測定試料の速度、アナログ信号処理回路241の増幅度などによって適宜設定され得る。
【0096】
また、上記実施の形態では、第3、第4スキャッタグラムの縦軸は前方散乱光信号のピーク値(FSCP)とされたが、これに限らず、粒子の大きさを反映する特徴パラメータであれば良い。たとえば、縦軸は、前方散乱光信号の面積(FSCA)であっても良い。この場合、縦軸の特徴パラメータとして、FSCP、FSCAの何れを用いるかは、測定試料に照射されるレーザ光のビームスポットの大きさ、フローセル205内を流れる測定試料の速度、アナログ信号処理回路241の増幅度などによって適宜設定され得る。
【0097】
また、上記実施の形態では、S105で抽出された赤血球と結晶から、S108で最終的に区別された赤血球を除くことにより、第4スキャッタグラムを作成して結晶の数を取得した。しかしながら、これに限らず、S105で抽出された赤血球と結晶から、初期の偏光状態を大きく崩す粒子、すなわち、第2スキャッタグラムの領域A22に含まれる粒子を結晶としても良い。さらに、第2スキャッタグラムの領域A22に含まれる粒子を、第3スキャッタグラムにプロットし、第3スキャッタグラムの領域A32に含まれる粒子を結晶としても良い。
【0098】
また、上記実施の形態では、粒子の大きさを反映する特徴パラメータは、光学検出部23において検出された前方散乱光信号に基づいて生成されたが、これに限らず、測定装置2内に別途設けられた電気抵抗式の検出器によって検出された信号に基づいて生成されるようにしても良い。
【0099】
また、上記実施の形態では、レーザ光源201から出射されるレーザ光の偏光方向が、フローセル205内を流れる測定試料の流れ方向に平行となるよう、測定装置2内にレーザ光源201が設置された。しかしながら、これに限らず、レーザ光源201の出射側に1/2波長板を配置し、光軸を中心とする1/2波長板の回転位置を調整することにより、レーザ光源201から出射されるレーザ光の偏光方向が、フローセル205内を流れる測定試料の流れ方向に平行となるようにしても良い。
【0100】
また、上記実施の形態では、領域A11、A21、A22、A31、A32、A41は、あらかじめ決められた固定領域であったが、これに限らず、固定領域に基づいて適宜微調整された領域であっても良い。また、領域A11、A21、A22、A31、A32、A41の位置、形状は、必ずしも、
図7(a)〜(d)に示すものに限られず、赤血球と結晶を精度よく抽出可能な位置および形状に適宜調整され得る。
【0101】
また、光学系の構成は、必ずしも、
図3に示す構成に限られるものではなく、結晶の成分に基づく旋光性の度合いに基づいて結晶と赤血球とを区別するための特徴パラメータを取得可能な構成であれば良い。たとえば、偏光フィルタ214の透過偏光方向は、必ずしもX軸方向に平行でなくとも良く、成分の旋光性を類別可能な範囲で、X軸方向から傾いていても良い。
【0102】
また、上記実施の形態では、測定試料に含まれる結晶の抽出は、第4スキャッタグラムに設定された領域A41に基づいて行われたが、これに限らず、以下に示すように第5スキャッタグラムに設定された領域A51に基づいて行われても良い。
【0103】
図11(a)は、この場合の情報処理装置3の処理を示すフローチャートである。
図11(a)では、
図6に示す処理と比較して、S110、S111に替えてS301、S302が追加されている。以下、S301、S302の処理について説明する。
【0104】
S109の処理が終わると、情報処理装置3のCPU301は、第5スキャッタグラムにおいて領域A51を設定する(S301)。具体的には、S106において第2スキャッタグラムに設定された領域A22に含まれる各粒子が、第5スキャッタグラム上にプロットされる。第5スキャッタグラムの2軸は、上記第4スキャッタグラムの2軸と同じである。そして、
図11(b)に示すように、第5スキャッタグラムにおいて固定の領域A51が設定される。領域A51は、上記領域A41と同じ範囲を示す領域である。なお、
図11(b)において、プロットされた粒子の図示は、便宜上、省略されている。CPU301は、第5スキャッタグラム上の領域A51に含まれる粒子数を計数する(S302)。これにより、結晶の数が取得される。
【0105】
このように、第5スキャッタグラム上の粒子は、第2スキャッタグラム上の粒子から、赤血球に対応する領域A21内の粒子が除かれたものである。結晶は、第5スキャッタグラム上の粒子から、結晶に対応する領域A51によって抽出されたものである。したがって、この場合も、測定試料に含まれる結晶を精度良く抽出できる。
【0106】
また、上記実施の形態では、分析対象が尿検体であったが、これに限らず、分析対象は、血液および尿を除く、生体内を満たし、または、循環する体液であっても良い。体液として、たとえば、脳脊髄液(CSF:脳室とくも膜下腔に満たされている液)、胸水(胸膜液、PE:胸膜腔に溜まった液)、腹水(腹膜腔に溜まった液)、心嚢液(心膜腔に溜まった液)、関節液(滑液:関節、滑液嚢、腱鞘に存在する液)、などが挙げられる。また、体液として、腹膜透析(CAPD)の透析液や腹腔内洗浄液なども挙げられる。
【0107】
これら体液が分析対象である場合も、尿検体が分析対象である場合と同様、分析を行う検体分析装置では、
図6と
図11(a)に示す処理が行われることにより、赤血球と結晶とを分類でき、赤血球および結晶をそれぞれ精度良く計数できる。
【0108】
たとえば、結晶誘発性の痛風に罹患している患者の場合、関節液に結晶が含まれることがある。関節液に含まれる結晶の数は、結晶誘発性の痛風の診断において重要である。しかし、体液に内出血が混じっていたり、体液を採取するときに血液が混じっていたりすると、赤血球が結晶の計数結果に影響を与える可能性がある。本実施形態によれば、そのような赤血球と結晶が混在した体液であっても、赤血球の影響を受けずに結晶を計数できる。よって、体液を採取するときに血液が混じっても、再度体液を採取するといった患者への負担を回避できる。
【0109】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。