特許第6225259号(P6225259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6225259データ点のストリーム内で平滑化されたデータ点を判定する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225259
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】データ点のストリーム内で平滑化されたデータ点を判定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20171023BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20171023BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20171023BHJP
   A61B 5/021 20060101ALI20171023BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61B5/14 320
   A61B5/00 GZDM
   A61B5/02 310Z
   A61B5/02 600
   A61B5/04 Z
【請求項の数】24
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-533882(P2016-533882)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2016-529989(P2016-529989A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2014066706
(87)【国際公開番号】WO2015022219
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2016年6月17日
(31)【優先権主張番号】13180412.2
(32)【優先日】2013年8月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512107765
【氏名又は名称】アイセンス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】クスター,フランク
(72)【発明者】
【氏名】クリバネク,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,アヒム
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−537891(JP,A)
【文献】 特開2013−099553(JP,A)
【文献】 特開平06−249855(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0302898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00− 5/22
A61B 9/00−10/06
G06F 17/17−17/18
G06F 19/00−19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて、i、z及びkを整数とし、1≦i≦z、k<zとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する方法であって、前記データ点のストリーム{t,s}は、少なくとも1つの身体機能を判定するためのセンサによって連続的に記録される測定系列を含み、前記データ点のストリーム{t,s}は、前のデータ点(ti−1,si−1)の取得から期間Δtの後に前記センサによってデータ点(t,s)が取得されるように、連続的に取得され、前記データ点のストリーム{t,s}内の各データ点(t,s)は、それぞれ、
−時刻tにおいて記録される、時刻tにおける信号sの有効な値、又は
−時刻tにおいて記録され、無効であるとみなされる、時刻tにおける信号sの無効な値、又は
−期待される時刻tにおいて欠落した、時刻tにおける信号sの欠落した値
を含み、ここで、時刻tにおける信号sを記録することは、物理的、化学的、生物学的、環境的又は技術的なデータを取得することを含み、
前記方法は、
a)前記コンピュータが、1≦i≦z、k≦zとして、前記データ点のストリーム{t,s}を含むデータ点の集合を提供するか、又は、前記データ点のストリーム{t,s}から若しくは平滑化されたデータ点の集合{t,s}から選択された特定の集合を提供するステップと、
b)前記コンピュータが、各平滑化されたデータ点(t,s)について、ステップa)の間に提供された前記データ点の集合から、以下の式によって得られるデータ点の部分集合{t,s}を含む平滑化集合を生成し、
(k+offset−smoothing window+1)<l<(k+offset) (1)
offsetは、t>tとして、データ点(t,s)のための前記平滑化集合を生成する前に取得された、有効な値を含むデータ点(t,s)の数を定義するオフセット数からなる数値であり、前記offsetの数値は、範囲[1,4]から選択され、smoothing windowは、前記平滑化集合の長さを定義する数値であり、前記smoothing windowの数値は、範囲[7,40]から選択される、ステップと、
c)前記コンピュータが、各平滑化されたデータ点(t,s)について、前記平滑化集合内の2つの隣接するデータ点{(tl−1,sl−1),(t,s)}の各対において、以下の条件が満たされることを要求する第1の条件が満たされるか否かを検証し、
(t−tl−1)≦gap length (2)
gap lengthは、前記平滑化集合内の前記2つの隣接するデータ点の間で許容される最大の時間差を定義する数値であり、前記gap lengthの数値は、範囲[5Δt,30Δt]から選択され、
l<lとして、あるlについて前記第1の条件が満たされない場合、データ点(t,s)を前記平滑化集合から取り除くステップと、
d)前記コンピュータが、各平滑化されたデータ点(t,s)について、数値nが少なくともminimal windowの数値に等しいことを要求する第2の条件が満たされるか否かを検証し、前記数値nは、前記ステップc)の後に前記平滑化集合{t,s}に残るデータ点の数に等しい数値であり、前記minimal windowは、前記ステップc)の後に前記平滑化集合{t,s}に残ることが要求されるデータ点の数に等しい数値であり、前記minimal windowの数値は、範囲[5,20]から選択され、
前記第2の条件が満たされない場合、前記平滑化されたデータ点(t,s)のための値を判定せず、前記平滑化されたデータ点(t,s)を返さず、又はエラーフラグを返し、
前記第2の条件が満たされる場合、後続するステップに進むステップと、
e)前記コンピュータが、各平滑化されたデータ点(t,s)について、1≦l≦nとして、前記平滑化集合に対応する傾斜集合{t,s’}を算出するステップと、
f)前記コンピュータが、各平滑化されたデータ点(t,s)について、前記傾斜集合{t,s’}に対し少なくとも1つの指数平滑化ステップを適用して、少なくとも1回修正された傾斜集合{t,s}を判定するステップと、
g)前記コンピュータが、各平滑化されたデータ点(t,s)について、前記ステップf)において判定された前記少なくとも1回修正された傾斜集合{t,s}を積分して、前記平滑化されたデータ点(t,s)の値を判定し、返すステップと
を含み、
前記コンピュータが、前記ステップb)の前に、前記ステップa)によって提供される前記データ点の集合内のデータ点について、又は、前記ステップb)の後、前記ステップb)によって提供される前記平滑化集合内のデータ点について、ある基準を検証ステップにおいて前記データ点に適用し、前記データ点を保持するか削除するかを判定する、方法。
【請求項2】
前記基準は、前記コンピュータが、前記データ点(t,s)が有効な値、無効な値、又は欠落した値を含むかを判定する前記検証ステップを含み、有効な値を含む前記データ点(t,s)は保持され、無効な値又は欠落した値を含む前記データ点(t,s)は削除される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、有効な値を含む少なくとも1つのデータ点がオフセット内に存在するか否かについての更なる条件を検証し、前記オフセットは、t>tとして、前記検証ステップの間に前記平滑化集合から幾つかのデータ点の数を削除した後に、前記ステップb)が現在実行されている前記平滑化されたデータ点(t,s)より前に取得されたデータ点(t,s)のoffset数を含み、
前記コンピュータは、前記更なる条件が満たされない場合、前記平滑化されたデータ点(t,s)のための値を判定せず、前記平滑化されたデータ点(t,s)を返さず、又はエラーフラグを返す、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記offsetの数値として、2が選択される、請求項1乃至3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】
前記smoothing windowの数値は、範囲[15,25]から選択される、請求項1乃至4の何れか1項記載の方法。
【請求項6】
前記gap lengthの数値は、範囲[5Δt,15Δt]から選択される、請求項1乃至5の何れか1項記載の方法。
【請求項7】
前記minimal windowの数値は、範囲[5,10]から選択される、請求項1乃至6の何れか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ステップa)において提供される前記特定の集合は、p番目毎のアイテムを取ることによって選択され、pは、範囲[2,6]から選択される、請求項1乃至7の何れか1項記載の方法。
【請求項9】
p個の部分集合が選択され、q番目の部分集合は、各アイテムが有効な値を含む限り、複数のアイテム(t,s)を含み、ここで、i=q,p+q,2p+q,…及びq≦pであり、前記p個の部分集合は、平滑化の後にマージされる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記データ点(t,s)は、先行するデータ点(ti−1,si−1)が無効な値又は欠落した値を含んだ後に取得される、請求項1乃至9の何れか1項記載の方法。
【請求項11】
前記データ点(t,s)は、特定の期間Δt=(t−ti−1)が終わる前の時刻tにおいて取得される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記特定の集合は、rを0より大きい整数とし、t,t+Δt,t+2rΔt,…のデータ点におけるアイテム、又は、隣接するアイテムを保持することによって選択される、請求項1乃至11の何れか1項記載の方法。
【請求項13】
前記隣接するアイテムは、無効な値又は欠落した値を含むデータ点(t,s)から±Δt又は±2Δtの距離離れたものである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ステップe)は、
e1)前記コンピュータが、各データ点(t,s)の傾斜を算出するために使用されるデータ点の数として数値SlopeRangeを定義するサブステップであって、前記SlopeRangeの数値は、範囲[3,6]から選択される、サブステップと、
e2)前記コンピュータが、各データ点(t,s)に差集合{t,s}を割り当てるサブステップであって、
SlopeRangeが奇数である場合、選択されるデータ点が前記平滑化集合内に存在する限り、各データ点(t,s)の前の(SlopeRange−1)/2個のデータ点と、各データ点(t,s)の後の(SlopeRange−1)/2個のデータ点とを選択し、データ点(t,s)が前記平滑化集合の端に存在しない場合、存在するデータ点を使用し、
SlopeRangeが偶数である場合、選択されるデータ点が前記平滑化集合内に存在する限り、各データ点(t,s)の前のSlopeRange/2個のデータ点と、各データ点(t,s)の後の(SlopeRange/2−1)個のデータ点とを選択し、データ点(t,s)が前記平滑化集合の端に存在しない場合、存在するデータ点を使用し、
各データ点(t,s)に差集合{t,s}を割り当てるサブステップと、
e3)前記コンピュータが、以下の式に基づいて、前記平滑化集合に対応する傾斜集合{t,s’}を算出し、
【数1】
総和Σは、前記差集合{t,s}内のデータ点に亘って算出され、dは、データ点が前記平滑化集合の端に存在しない場合、SlopeRange以下であり、当該算出処理は、前記平滑化集合1≦l≦nの各点について行われる、サブステップと
を含む請求項1乃至13の何れか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ステップf)は、
f1)前記コンピュータが、前記ステップe)で取得された前記傾斜集合{t,s’}に昇順1,2,…,n−1,nで以下のような第1の順方向指数平滑化を適用し、
=s’及び
=Wf1・s’+(1−Wf1)・sl−1’(1<l≦nの場合)(4) Wf1は、前記第1の順方向指数平滑化に適用される第1の重みであり、範囲[0.3,0.6]から選択される、サブステップと、
f2)前記コンピュータが、前記サブステップf1)において修正された前記傾斜集合{t,s}に降順n,n−1,…2,1で以下のような逆方向指数平滑化を適用し、
**=s及び
**=W・s+(1−W)・sl+1(1≦l<nの場合)(5)
は、前記逆方向指数平滑化に適用される第2の重みであり、範囲[0.2,0.5]から選択される、サブステップと、
f3)前記コンピュータが、前記サブステップf2)において修正された前記傾斜集合{t,s}に昇順1,2,…,n−1,nで以下のような第2の順方向指数平滑化を適用し、
***=s**及び
***=Wf2・s**+(1−Wf2)・sl−1**(1<l≦nの場合)(6)
f2は、前記第2の順方向指数平滑化に適用される第3の重みであり、範囲[0.3,0.6]から選択される、サブステップと
を含む請求項1乃至14の何れか1項記載の方法。
【請求項16】
前記ステップg)は、
g1)前記コンピュータが、前記ステップe)の前に、1≦l≦nとして、前記平滑化集合内の値sの平均値orig meanを算出するサブステップと、
g2)前記コンピュータが、少なくとも1回修正された傾斜集合(t,s)を、以下の式によって、数値的に積分し、
integral=0及び
integral=integrall−1+{(1−w)・s’+w・sl−1}・{t−tl−1} (1<l≦nの場合) (7)
は、積分に適用される第4の重みであり、範囲[0.25,0.75]から選択され、これによって、積分された集合を生成するサブステップと、
g3)前記コンピュータが、1≦i≦nとして、前記積分された集合内で値integralの平均値new meanを算出するサブステップと、
g4)前記コンピュータが、以下の式を適用することによって、積分定数int constを算出するサブステップと、
int const=orig mean−new mean (8)
g5)前記コンピュータが、以下の平滑化された値を算出し、
=integral+int const (9)
k=n−offsetとして、前記平滑化されたデータ点(t,s)の値を返すサブステップと
を含む請求項1乃至15の何れか1項記載の方法。
【請求項17】
前記コンピュータは、前記平滑化された値sの傾斜のための値s’を含む3個一組のデータ点(t,s,s’)を少なくとも1つ返す、請求項1乃至16の何れか1項記載の方法。
【請求項18】
前記センサは、時刻tにおいて、ボリューム内の物質の濃度に関連する信号sを記録するように適応化され、前記センサは、体液内の前記物質の前記濃度を判定するように構成された光学センサである、請求項1乃至17の何れか1項記載の方法。
【請求項19】
1≦i≦m、k<mとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する装置(156)であって、
センサ(160)に指示を与え、時刻tにおいて一連の信号sを記録させ、データ点のストリーム{t,s}を供給させる指示デバイス(158)であって、前記センサは、時刻tにおいて信号sを記録するように適応化され、時刻tにおける信号sを記録することは、物理的、化学的、生物学的、環境的又は技術的なデータを取得することを含み、前記データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも幾つかのデータ点(t,s)は、時刻tにおける信号sのための有効な値を含む、指示デバイス(158)と、
前記データ点のストリーム{t,s}を受信し、続いて保存する受信及び保存デバイス(162)と、
1≦i≦mとして、前記データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する演算デバイス(164)と
を備え、
請求項1乃至18の何れか1項記載の方法の何れかのステップを実行するように構成されており、
装置(156)は、少なくとも1つの身体機能を判定するための分析装置であり、
少なくとも1つの身体機能を記録するための少なくとも1つのセンサ(160)を更に含む装置(156)。
【請求項20】
前記少なくとも1つのセンサ(160)は、ユーザの体組織又は体液内の少なくとも1つの分析物の分析物濃度を測定するセンサ、前記ユーザの少なくとも1つの心機能を判定するための心臓センサ、脈センサ、血圧センサ、ECG及びEEGからなるグループから選択される、請求項19記載の装置(156)。
【請求項21】
前記装置(156)は少なくとも2つの別々の部分に分割され、前記指示デバイス(158)は、前記センサ(160)に接続され、前記指示デバイス(158)は、無線送信デバイス(166)を含み、前記記録及び保存デバイス(162)並びに演算デバイス(164)は共に接続される、請求項19又は20記載の装置(156)。
【請求項22】
請求項1乃至18の何れか1項記載の方法において、ユーザの体組織又は体液内の少なくとも1つの分析物の分析物濃度を測定すること、前記ユーザの少なくとも1つの心機能を判定すること、前記ユーザの脈を判定すること、前記ユーザの血圧を判定すること、ECGを記録すること、又は、EEGを記録することのいずれかを行う方法。
【請求項23】
コンピュータが実行可能な命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、請求項1乃至18の何れか1項記載の方法を実現する、コンピュータプログラム。
【請求項24】
請求項23記載の前記コンピュータプログラムが格納されている、コンピュータ可読データ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、データ点のストリーム内で少なくとも1つの平滑化された(smoothed)データ点を判定する方法及び装置に関する。本発明の更なる側面では、本出願は、装置の使用方法に関する。本発明の更なる側面において、本出願は、コンピュータプログラムに関する。本発明の更なる側面において、本出願は、データ構造が格納されるデータ媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
先行するデータ点(ti−1,si−1)の後に特定のデータ点(t,s)が得られるように連続的に取得されるデータ点のストリーム内で記録されるデータ点の数を示す任意の数をzとして、1≦i≦zにおいて、データ点のストリーム{t,s}を取得することは、よく知られた問題であり、これは、時刻tにおいて、信号sが生成される科学的又は技術的な効果の記録に関連する科学及び技術の全ての分野で生じる。典型的な例は、物理、化学、生物学及び/又は環境実験データであり、これらは、科学実験の間に記録されることもあり、また、環境データの監視の間、又はユーザ、特に、患者のあらゆる種類の身体機能の監視の間に記録されることもある。他の多くの例が想到される。
【0003】
更に、データ取得の分野において、データ点のストリームは、時刻tにおける信号sについて、必ずしも有効な値のみから構成されるわけではないことも知られている。実際には、データ点のストリームは、時刻tにおける信号sについて、無効な値を含むことがあり、或いは、特定の時刻tにおいて記録されることが期待される信号sが欠落することもある。ここで、実際的な経験から知られるこの状況は、特に、リアルタイム又は略リアルタイム情報を提供するように測定がスケジューリングされている場合、例えば、ユーザ、例えば、集中治療室で持続的に監視されている患者の1つ以上の身体機能を判定する場合等の状況において不十分である。特に、更なるデバイスをトリガし及び/又は判断を行うためにリアルタイム又は略リアルタイム情報が必要とされる状況では、無効な値又は欠落した値は、データ点の記録の結果に深刻に影響することがあり、幾つかの状況では、意図しない方向に向かってしまうことさえある。
【0004】
一例として、「William L. Clarke, and Eric Renard, "Clinical Requirements for Closed-Loop Control Systems」, Journal of Diabetes Science and Technology 6, No. 2, (2012) 444-452」は、1型糖尿病患者に使用される閉ループ治療システム(closed-loop therapy system)を示している。ここでは、血糖変動の測定が記述されており、パーセンテージとして表される目標範囲内、これを超える又はこれを下回る血糖値の記録が高度な統計分析の合理的な選択肢として提案されている。したがって、システム及び患者に対し、内圧警報及び流量警報を含む変更されたインシュリンの送達に関する警告を行うための検出方法が必要である。ブドウ糖監視センサの精度も他の要件であり、これは、毛細血管のブドウ糖測定を導き、最終的にセンサの再較正又は交換を要求する条件の定義を含む。重要な臨床的要求は、患者が、閉ループ治療システムからインシュリンの送達の手動管理に移行し、或いは、逆に、必要となった中断の後に閉ループ治療システムに戻る必要がある場合に、状況を完全に定義することである。
【0005】
特に、基底にある有意なデータの欠落又は歪みを最小にしながら、ランダム誤差の影響を抑制するために、「データ平滑化(data smoothing)」と呼ばれる手法を使用することによってデータ点のストリームから情報が抽出される。ここでは、特に、パターンに従うことが予測され、事前に知ることはできないが、2次元の表現でドラフトすることができ、主に2つの次元のうちの一方で誤差が発生すると想定される観察可能な時系列測定に関連するデータ値のシーケンスについて、誤差低減問題を検討する。
【0006】
大多数の既知の誤差低減技術は、通常、一次又は高次多項式を含み、偏差に関して「最少二乗」の基準を用いる手順によって、記録されたデータ点を、少なくとも局所的に、概算又は「フィッティング」することができるという仮定を含む。この手順を用いることにより、特に、区分的多項式概算(piecewise polynomial approximation)によって歪みを最小化することができる。これによって、この手順のために使用されるデータ点の集合は、データ集合に沿ってスライドして使用される。この手順において、より多くのデータ点を使用すれば、ランダム誤差の除去が向上するが、この手順の適用によって、定誤差(systematic error)が導入されるという犠牲を払う必要がある。これに対処する一般的な技術は、データ下位領域を結合する一組の3次関数を定義する「スプラインフィット(spline fit)」と呼ばれる手法である。しかしながら、この手法に基づくこのような多項回帰によって、遅延及び歪みが生じるおそれがある。
【0007】
記録された雑音挙動を記述する物理モデルが適切であると判明した状況では、記録されたデータ点を平滑化する所謂「カルマンフィルタ」が開発されている。しかしながら、このようなモデルが失われている又は不適切な場合、このようなフィルタは、適用できない。例えば、実生活のセッティングでユーザの生理的データを監視する場合、インシュリン摂取に対するブドウ糖濃度挙動等のパラメータを合理的に記述することができる適切な物理モデルを提供することは不可能である。これにも関わらず、「B. Wayne Bequette, "Continuous Glucose Monitoring: Real-time Algorithms for Calibrating, Filtering, and Alarms," Journal of Diabetes Science and Technology 4, No. 2 (March 2010): 404-418」及び「Andrea Facchinetti, Giovanni Sparacino, and Claudio Cobelli, "An Online Self-tunable Method to Denoise CGM Sensor Data," IEEE Transactions on Bio-medical Engineering 57, No. 3 (March 2010): 634-641」は、経時的なブドウ糖傾斜又は経時的なブドウ糖の2次導関数等の恒常的パラメータを想定するモデルを提案している。この結果、対応するデータ集合に遅延と歪みが導入されることは、驚くべきことではない。例えば、Giovanni Sparacino他は、記録されたデータ点からモデル及びフィルタパラメータを経験的に発見するアルゴリズムを提案しており、このアルゴリズムは、生理的変化、並びに患者の違い、センサの違い又は患者内の経時的な変化に対して適応化を行う必要がある。このアルゴリズムは、過去の特定の期間におけるデータ点から、現時点で最も良いパラメータを算出するが、予測できない生理的条件又は異常なセンサ挙動によって、一組の平滑化されたデータを報告する際に予想外の危険な誤差が生じる危険性は高いままである。
【0008】
これに変わる手法として、例えば、「K Rebrin et al., "Subcutaneous Glucose Predicts Plasma Glucose Independent of Insulin: Implications for Continuous Monitoring", The American Journal of Physiology 277, No. 3 Pt 1 (September 1999): E561-571」によって、ブドウ糖監視データの平滑化のための所謂「ウィーナフィルタ(Wiener filter)」が提案されており、これは、近年、タイムラグ補正に関連して、「D. Barry Keenan et al., "Interstitial Fluid Glucose Time-lag Correction for Real-time Continuous Glucose Monitoring", Biomedical Signal Processing and Control 8, No. 1 (January 2013): 81-89」によって採用されている。ウィーナフィルタは、この目的のための潜在的適用可能性にかかわらず、複雑な数学的アルゴリズムに基づくという欠点があり、これが実用化の障壁となっている。
【0009】
「Eugen and Ionela Iancu, "Predictive Blood Glucose Control Using Exponential Smoothing Method", Annals of the University of Craiova, vol. 8 (36), No. 2, p. 1-6, 2011」は、連続的ブドウ糖監視システムによって取得された患者のデータのストリームから誤った値を除去するように適応化された予測アルゴリズムの構造を提示している。この目的のため、離散的時系列を平滑化するために、0<α<1の範囲から選択される平滑化定数αを採用した単一の指数平滑化が使用される。
【0010】
更に、US2008/0167841 A1は、ヒストグラムを維持するために、スケーリングされた指数平滑化を用いてデータストリームを処理するシステム及び方法を開示している。
【0011】
「J. Haworth and Tao Cheng, "Non-parametric regression for space-time forecasting under missing data", Computers, Environment and Urban Systems, vol 36, No. 6, p. 530-550, 2012」では、時空プロセス(spatio-temporal process)に関する予測的情報を提供するためのリアルタイム時空データ集合が述べられている。これに関し、この文献では、時空系列のデータにおける時空的自己相関の存在がそれぞれの予想を向上させることが示されている。特に、ここでは、センサの故障の仮定の下で、ロンドン中心部の道路リンクの未来の単位所要時間値(unit journey time values)を予測するためにノンパラメトリック時空カーネル回帰法(non-parametric spatio-temporal kernel regression method)を採用し、この目的のために効果的であることが知られている他の種類のノンパラメトリック回帰法と比較されている。
【0012】
「D. E. Roark, "Reverse Smoothing: a model-free data smoothing algorithm", Biophysical Chemistry 108 (2004) 121-126」は、指数平滑化による雑音除去の利益を維持しながら、タイムラグ効果を大幅に軽減又は除去する能力を有する「逆平滑化(reverse smoothing)」と命名された手法を提案しており、これは、例えば、1957年原著論文の再版である「C. Holt, "Forecasting seasonals and trends by exponentially weighted moving averages", International Journal of Forecasting 20 (2004) 5-10」に記述されている周知の技術である。Roarkによれば、この手法は、データ点の集合が平滑な挙動を示すことが予期される状況において、適切であると考えられる。また、局所的に傾斜を特徴付けるためには、十分な数のデータ点が更に必要である。典型的例としてRoarkは、自らの手法において、80のデータ点を採用している。更に、傾斜が急速に変化する領域では、より高い密度のデータ点が必要とされる。Roarkは、オリジナルのデータ(元のデータ)ではなく、元のデータの推定された1次導関数に対する指数平滑化を採用している。優れた平滑化を達成するために、各傾斜の集合に対して、「パス(passes)」と呼ばれる3回の連続する指数平滑化が実行される。ここで、1回目のパスは、データ点の集合内の2番目の点から最後の点への所謂「順方向パス(forward pass)」であり、2回目のパスは、データ点の集合内の最後から2番目の点から最初の点への所謂「逆方向パス(reverse pass)」である。そして、3回目の順方向パスによって、平滑化プロセスが終了する。Roarkによると、データ点の集合の1次導関数に作用する平滑化手順によって、基底のデータに導入される歪みを少なくしながら、ランダムな変動がより効果的に除去される。しかしながら、後に更に詳細に説明するように、Roarkによって提案されるこの手法は、データ点のストリーム内に多数の欠落した値が含まれる場合、許容できない誤差が平滑化プロセスに導入されるという深刻な問題を有していることが見出された。更に、このアルゴリズムは、データのストリームに対してではなく、完全なデータ集合に対して使用されるように設計されている。最初のRoarkの手順は、逆方向パスのため、データの取得が完了した後でないと、出力を生成できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するための既知の方法及び装置の欠点及び短所を克服することである。特に、本発明は、タイムラグを導入せず、歪みを最小化しながら、同時に導関数を報告することができ、平滑化の程度を向上させる各方法を提案することを目的とする。更に、このような方法は、演算が簡単であることが望ましく、固定パラメータを採用でき、このようなパラメータを個々のユーザ、センサ又は日々の変化に応じて調整する必要がないことが望ましい。特に、この方法は、記録データが等間隔又は略等間隔であることを要求しないにもかかわらず、リアルタイム又は略リアルタイムの報告が可能であることが望ましい。
【0014】
本発明の更なる目的は、電力消費を最小化するとともに、例えば、何らかの入射(radiation)によってセンサが影響を受ける等、測定手段によって影響を受けることなくセンサを露出する装置を提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、この装置に特に適する状況で装置を使用する方法を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、コンピュータが本発明に基づく方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラムを提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、コンピュータ又はコンピュータネットワークにロードされた後、本発明に基づく方法を実行することができるデータ構造を格納するデータ媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題は、独立請求項の特徴を有する、データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するための方法、装置及び装置の使用方法、並びにコンピュータプログラム及びデータ媒体によって解決される。独立した形式で実現でき又は任意のあらゆる組み合わせによって実現できる好ましい実施形態は、従属請求項に列挙されている。
【0019】
以下で使用する「有する」、「備える」又は「含む」等の用語及びこの活用形は、非排他的な意図で使用される。すなわち、これらの用語は、何れも、これらの用語によって導入される特徴の他に、この文脈において記述される実体に更なる特徴が存在しない状況と、1つ以上の更なる特徴が存在する状況との両方に使用される。例えば、「Aは、Bを有する」、「Aは、Bを備える」及び「Aは、Bを含む」という表現は、何れも、Bの他に、他の如何なる要素もAに存在しない条件(すなわち、単独で排他的にBのみから構成される条件)と、Bの他に、要素C、要素C、D又はこれ以上の要素等、1つ以上の更なる要素が実体Aに存在する条件との両方を意味する。
【0020】
更に、以下で使用する「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より詳しくは」、「具体的には」、「より具体的には」及びこれらに類似する用語は、他の可能性を制限することなく、オプションの特徴とともに使用される。このように、これらの用語によって導入される特徴は、オプションの特徴であり、如何なる形式であれ、特許請求の範囲を制限することを意図しない。本発明は、当業者にとって明らかなように、代替となる特徴を用いて実現してもよい。同様に、「本発明の実施形態において」又は類似した表現によって導入される特徴は、オプションの特徴であることを意図し、本発明の他の実施形態を限定することはなく、本発明の範囲を限定することはなく、及びこのようにして導入された特徴を本発明の他のオプション又は非オプションの特徴に組み合わせる可能性を制限することはない。
【0021】
第1の側面として、本発明は、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する方法を提供し、ここで、1≦i≦zは、データ点のストリーム{t,s}内のi番目のデータ点(t,s)を指し、1≦k<zは、k番目の平滑化されたデータ点(t,s)を指し、k番目の平滑化されたデータ点(t,s)は、本発明に基づく方法によって、データ点のストリーム{t,s}内で判定され、ここで、i、z及びkは、整数である。更に、ここで使用するデータ点のストリームという用語は、z個のデータ点の集合を意味し、データ点は、前のデータ点(ti−1,si−1)が取得されてから、期間Δtの後に、特定のデータ点(t,s)が取得されるように、時系列順に取得される。ここで、数zは、特定のデータ点のストリーム内で記録されるデータ点の数を表す任意の数値である。例えば、数zは、1、2、3等の小さい数であってもよいが、実際には、データ点の数は、数十、数百、数千又はそれ以上の大きな数である。なお、本発明に関しては、各方法は、データ点のリアルタイム又は略リアルタイムの報告を意図し、データ点のストリームが記録されている途中でも実行できるため、数zの絶対値は、あまり重要でない。但し、本方法は、他の方式で行ってもよく、例えば、データの取得が完了した後にのみ平滑化プロセスを開始してもよい。
【0022】
特に、データ点のストリームを取得している間に平滑化プロセスを開始できる本発明の好ましい特徴は、従来の技術とは異なる点である。例えば、Roarkが開示する平滑化されたデータ点を判定する方法は、データ点の完全な集合が収集された後でなければ開始できない。従来の技術に対し、本発明に基づくアルゴリズムは、短い期間のデータ点の集合、すなわち、比較的小さい数zのデータ点を含むデータ点の集合でも平滑化でき、数zは、20以下であっても10以下であってもよい。したがって、本発明に基づく方法によれば、ストリーム内のz個全てのデータ点が既に記録されたか否かにかかわらず、入力されてくるデータ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定することができる。但し、変形例として、本方法は、データ点のストリーム内のz個全てのデータ点が既に収集されている状況にも適用できる。
【0023】
従来の技術に基づく方法と同様に、データ点のストリーム{t,s}の各データ点(t,s)は、時刻tにおける信号sについて有効な値を含むことができる。ここで、信号sの有効な値とは、時刻tにおいて記録された値であり、「時刻tにおいて信号sを記録する」という表現は、特に、何らかの技術的なセットアップによって、物理的、化学的、生物学的、環境的及び/又は技術的なデータを取得することを意味し、これによって、データの第2の集合が記録され、第2の集合内の値は、信号sに関係する時刻tを示す。特に、第2の集合のそれぞれの値は、関連する信号sが記録され及び/又は他の何らかの手法で関連付けられた実際の時刻t又はその付近を表す。例えば、信号sは、電圧又は電流及び/又は電子的に実現されたこれらの等価物に関連する振幅又は他の物理的な量であってもよく、一方、信号sに関連する時刻tについての値は、クロック、ウォッチ、タイマ及び/又は電子的に実現されたこれらの等価物によって生成されるデータの第2の集合内の値であってもよい。より特定で非限定的な例は、ボリューム内の物質の濃度、例えば、体液、好ましくは、間質液内のブドウ糖濃度に関連する信号を含んでいてもよい。他の例は、ユーザの少なくとも1つの心機能、例えば、脈及び/又は血圧、及び/又はユーザ、例えば、患者の心電図(electrocardiographic:ECG)信号に関連する電子信号を含んでいてもよい。更なる例は、ユーザの頭皮に沿った電気的活性を記録するように適応化された脳波検査(electroencephalography:EEG)の適用によって記録されている信号であってもよい。
【0024】
本方法に関して、時刻tにおける信号sの値は、記録された値sが、データ点のストリーム{t,s}を供給するように構成された技術的なセットアップの設計内で有意なイベントを構成する限り、「有効な値」であるとみなされる。ここで、技術的なセットアップによって供給される信号の値が可能な値の期待される範囲内であれば、すなわち、技術的なセットアップ内及び/又は技術的なセットアップからデータ点のストリームを受信する他の何らかの装置内で実装された手順によって「有効である」と示されれば、有意なイベントが発生したとみなしてもよい。技術的なセットアップは、通常、一連の信号sを記録し、同時に時刻tに関連する第2のデータ点を記録するように適応化されたセンサを含む。これに代えて、センサは、一連の信号sのみを記録するように構成してもよく、時刻tに関連する第2の一連のデータ点は、独立したデバイス、好ましくは、技術的なセットアップの外部に設けられ、一連の信号sを記録するように構成されたクロック、ウォッチ及び/又はタイマによって記録してもよい。更に、このようなセンサは、単純な評価ユニット又はより特化された評価ユニットを含んでいてもよく、これらは、有効な値と無効な値とを区別できる少なくとも基本的な評価手順を実行するように構成されてもよい。更に、ここで言う「無効な値」とは、時刻tにおいて記録されたが、信号sの有意な値についての上述した基準を満たしておらず、したがって、誤りであると考えられる信号sの値である。なお、本発明に基づく方法は、信号sの記録された値が「有効な値」であるか、「無効な値」であるかに関する判定をどの時点で実際に行うかを問わない。この方法は、このような弁別が技術的なセットアップのレベル上で既に実行されているか、及び/又は本発明に基づく方法の実行の間の特定の段階で及び/又は如何なる途中段階で実行されるかを問わず同様に適用でき、このような弁別は、例えば、この種の弁別を実行するように構成された独立したデバイスにおいて行ってもよい。更に、無効な値がどのような形式で供給されるか、例えば、無効な値が電圧及び/又は電流の値等の実際の数値のままであるか否か、又はこの特定の値が無効な値であることを示すサインが既にタグ付けされているか否かは、本発明に基づく方法の実際の性能に影響しない。
【0025】
更に、従来の技術と異なる点として、本方法は、時刻tにおける信号sの欠落した値に適切に対応できる。ここで言う「欠落した値」とは、技術的なセットアップによって、入力データ点のストリーム{t,s}の一部として期待される信号sが提供されない時刻tを含む。この特定の特徴は、技術的なセットアップが、通常、指定された期間内に少なくとも1回、信号sを供給することが期待されるリアルタイム又は略リアルタイム情報から知ることができる。上述したように、リアルタイム又は略リアルタイム測定の間に技術的なセットアップによって取得される信号は、多くの場合、特定の記録された値に基づく更なる判定の根拠として使用される。例えば、患者の更なる治療は、最も新しく記録された血糖値を表す信号sの実測値に基づいて行われる。通常、このような測定系列は、2つの連続的に取得される信号間の間隔が実際の信号の既知の又は期待される変化時間に関係を有するように構成される。例えば、集中治療ユニット及び/又は閉ループ治療システムでは、単に、測定系列によって取得される最も近い信号sの実測値のみを使用するだけでは不十分であることがあり、特に、この特定の信号が記録された時刻tから長い時間が経過している場合、不十分であることがある。後述するように、本発明に基づく方法によれば、時刻tにおいて信号sの値が欠落しているような状況においても、少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定することができる。
【0026】
本発明に基づく方法は、ステップa)〜ステップg)を含む。これらのステップは、好ましくは、ステップa)から順に実行される。但し、他のステップが同様に繰り返されているか否かに応じて、又はこのことから独立して、1つ以上のステップを繰り返し実行してもよい。
【0027】
ステップa)では、一組のデータ点を提供する。このデータ点の集合は、好ましくは、上述した手法、すなわち、隣接するデータ点が、これらの順序に応じて連続的に記録されて取得されたデータ点のストリーム{t,s}を含んでいてもよい。但し、本方法は、取得されたデータ点のストリーム{t,s}からデータ点の特定の集合が選択される状況にも適用でき、この場合、ステップa)は、このデータ点の特定の集合を提供する。更に、特定のケースでは、ステップa)によって、特に、更なる平滑化のために、既に平滑化されているデータ点{t,s}のセットから選択された特定のデータ集合を提供することが有利である場合もあり、この特定の集合は、更に詳細に後述する手順によって選択してもよい。
【0028】
データ点(t,s)のための平滑化処理は、後続するステップb)の間に開始される。したがって、各平滑化されたデータ点(t,s)について、平滑化集合(smoothing set)が生成される。この手順は、例えば、完全なデータ取得の後、完全なデータ集合が平滑化の目的で使用されるRoark他に記述されている従来の技術と特に異なるものである。従来の方法は、平滑化の開始の前に、全てのデータ点の集合が収集されることを要求するが、これに対し、本発明では、ステップa)に基づき、データ点のストリーム{t,s}から平滑化集合を直接的に選択してもよい。したがって、本発明に基づく方法は、連続的に取得されたデータを処理できるのみではなく、取得されたデータ点の集合を連続的に監視する手段も提供する。
【0029】
この目的のために、平滑化集合は、データ点の部分集合{t,s}を含み、特に、データ点の真部分集合{t,s}を含み、データ点の部分集合は、前のステップa)の間に提供されるデータ点の集合から、以下の式1を満たすデータ点(t,s)を選択することによって取得される。
(k+offset−smoothing window+1)<l<(k+offset) (1)
【0030】
式1において、offset(オフセット)>0は、オフセット数を構成する数値を含む。ここで言う「オフセット数」とは、t>tとして、本発明に基づく平滑化プロセスが現在実行されている特定のデータ点(t,s)より前に取得されたデータ点(t,s)の数から構成されるオフセットを指す。すなわち、offsetデータ点の数は、ステップb)に示す処理において現在平滑化中である特定のデータ点(t,s)のための平滑化プロセスを開始する前に記録されたデータ点の数である。なお、offsetデータ点は、上に定義した有効な値を有するデータ点のみを含む。好ましい実施形態においては、検証ステップの間に、平滑化集合から複数のデータ点の数を削除した後に、少なくとも1つのデータ点、より好ましくは、全てのoffsetデータ点が有効な値を有しているか否かに関する更なる条件を検証してもよい。更なる条件が満たされない場合、平滑化されたデータ点(t,s)のための値を判定せず、平滑化されたデータ点(t,s)を返さず、又はエラーフラグを返してもよい。また、式1で用いられるsmoothing windowは、平滑化集合の長さを定義する数値である。offsetの数値及びsmoothing windowのための好ましい値は、後述する。
【0031】
次のステップc)の前に、本発明に基づく方法の更なるステップc)〜g)に関して、このデータ点を保持するか削除するかを決定するために、ある基準をデータ点に適用する。ここで、基準は、上述した定義に基づいて、データ点が有効な値を有するか、無効な値を有するか、欠落した値を有するかを判定する検証ステップを含んでいてもよい。具体的には、有効な値を有するデータ点のみを更なる処理のために保持してもよく、一方、無効な値又は欠落した値を有するデータ点は削除し、したがって、この方法の更なる処理では使用しないようにしてもよい。検証ステップは、前のステップa)によって提供されるデータ点の集合の各データ点について、ステップb)の前に行ってもよい。これに代えて又はこれに加えて、検証ステップは、ステップb)によって生成される平滑化集合内で提供される既に選択された各データ点に対し、ステップb)の後に行ってもよい。重要な点は、検証ステップの詳細を問わず、及び/又は検証ステップがいつ適用されるかを問わず、検証ステップは、後述するギャップ長を定義するために、特に、ステップc)の前に実行される点である。
【0032】
本方法のステップc)では、各平滑化されたデータ点(t,s)について、第1の条件が満たされるか否かを検証する。ここで、「第1の条件」は、平滑化集合内の2つの隣接するデータ点{(tl−1,sl−1),(t,s)}の各対において、式2に基づく条件が満たされることを要求する。
(t−tl−1)≦gap length (2)
【0033】
ここで、数値「gap length(ギャップ長)」は、平滑化集合内の2つの隣接するデータ点の間で許容される最大の時間差を定義する数値である。上述したように、検証ステップにおいて、ある基準を採用することによって、すなわち、幾つかのデータ点の数がデータ点の集合から削除され、これがステップc)への入力として使用されることによってギャップが生じる。この手順は、無効な値のみが取得され、及び/又は、値が欠落することがあり得るリアルタイム又は略リアルタイム測定においてギャップが生じることがある実際の状況を反映している。更に、ステップc)では、l<lとして、あるlについて式2に基づく第1の条件が満たされない場合、データ点(t,s)を平滑化集合から取り除く。このような状況は、特に、一連の測定の間に、データ点のストリーム内に大きなギャップが生じたときに発生することがある。この場合、gap lengthに関して以前に取得されたデータ点は、トレーリングデータ(trailing data)として削除される。
【0034】
本方法のステップd)では、第2の条件が満たされるか否かを検証する。ここで、「第2の条件」は、数値nが少なくともminimal windowの数値に等しいことを要求する。ここで、数値nは、ステップc)の後に平滑化集合に残るデータ点(t,s)の数に等しい数値であり、数値「minimal window」は、ステップc)の後に平滑化集合に残ることが要求されるデータ点の数に等しい数値である。第2の条件は、平滑化集合{t,s}に残るデータ点の数nが、予め定義されたminimal windowの値以上であるかを調べることを目的とする。したがって、第2の条件は、平滑化集合が、後続するステップe)〜g)のために必要とされる十分な数のデータ点を含んでいることを確認するためのものである。したがって、第2の条件が満たされない場合、平滑化されたデータ点(t,s)の値を判定しない。このような場合、本方法は、平滑化されたデータ点を提供しなくてもよく、或いは、ステップa)によって提供され、後続する検証ステップにおいて削除されなかったデータ点から平滑化されたデータ点が判定できなかったことを示すエラーフラグを返してもよい。
【0035】
一方、第2の条件が満たされた場合、本発明に基づく方法は、後続するステップe)に進む。ステップe)では、各平滑化されたデータ点(t,s)について、1<l<nとして、平滑化集合のデータ点(t,s)毎に1つのデータ点(t,s’)を含む傾斜集合(slope set){t,s’}を算出する。ここで言う「傾斜(slope)」とは、データ点の集合{t,s}に沿って引かれた仮想線の特定のデータ点(t,s)における増加及び/又は減少の値を意味する。したがって、傾斜集合{t,s’}は、データ点の集合{t,s}の導関数又は勾配として定義される。
【0036】
好ましい実施形態において、ステップe)は、以下のサブステップe1)〜e3)を含んでいてもよく、これらのサブステップは、ここに示す順序で行うことが好ましい。
【0037】
サブステップe1)では、平滑化集合内の各データ点(t,s)における傾斜s’を算出するために使用できるデータ点の数として数値「SlopeRange」を定義してもよい。サブステップe2)で行われる更なる処理は、数値SlopeRangeが奇数であるか偶数であるかに依存していてもよい。数値SlopeRangeが奇数である場合、各データ点(t,s)の前の(SlopeRange−1)/2個のデータ点と、各データ点(t,s)の後の(SlopeRange−1)/2個のデータ点とが、各データ点の差集合{t,s}として選択されてもよい。これに関し、選択されるデータ点が存在するか否か、すなわち、特定のデータ点(t,s)が平滑化集合の冒頭又は末尾から十分に遠いかを検討してもよく、これは、以下のサブステップでは、このようなデータ点のみが使用されるためである。なお、データ点(t,s)が欠落している場合、(t,s)が平滑化集合の冒頭又は末尾に近すぎ、lが(SlopeRange−1)/2+1より小さい、又はn−(SlopeRange−1)/2より大きい場合、この特定のデータ点は無視され、差集合{t,s}は、実際に存在する選択されたデータ点のみから構成される。一方、数値SlopeRangeが偶数である場合、各データ点(t,s)の前の(SlopeRange/2)個前データ点と、各データ点(t,s)の後の(SlopeRange/2−1)個のデータ点とが、各データ点のための傾斜集合として選択されてもよい。この場合も選択されたデータ点の存在に関して、上述と同じ要件を適用できる。
【0038】
後続するサブステップe3)では、式3によって、平滑化集合内の各データ点(t,s)の傾斜s’を算出してもよい。
【数1】
【0039】
ここで、式3において、総和Σは、差集合{t,s}のデータ点に亘って算出され、dは、データ点が平滑化集合の端に存在しない場合、SlopeRange以下であり、ここでの算出処理は、平滑化集合1≦l≦nの各点について行われ、これによって、結果として得られる点(t,s’)から傾斜集合{t,s’}が生成される。
【0040】
ステップe)の間に各平滑化されたデータ点(t,s)について傾斜集合が取得された後、ステップe)によって提供される傾斜集合{t,s’}に対し、少なくとも1つの指数平滑化を適用してもよい。
【0041】
特に好ましい実施形態においては、ステップf)は、以下のサブステップf1)〜f3)を含んでいてもよく、これにより、少なくとも1回修正された傾斜集合{t,s}を判定してもよく、これらのサブステップは、ここに記述する順序で行うことが好ましい。この特定の実施形態は、上述のRoarkによって提案される手順に近いが、ステップf1)〜f3)を実行するために、リアルタイム又は略リアルタイム情報を処理するための特定の要件に応じて適応化された特定の重みを使用してもよい。
【0042】
サブステップf1)では、ステップe)で取得された傾斜集合{t,s’}に昇順1,2,…,n−1,nで第1の順方向指数平滑化を適用してもよい。ここでは、以下の式4に示す関係を適用してもよい。
=s’及び
=Wf1・s’+(1−Wf1)・sl−1’(1<l≦nの場合)(4)
ここで、Wf1は、第1の順方向指数平滑化に適用される第1の重みである。
【0043】
ステップf2)では、サブステップf1)において修正された傾斜集合{t,s}に降順n,n−1,…2,1で逆方向指数平滑化を適用してもよい。ここでは、以下の式5に示す関係を適用してもよい。
**=s及び
**=W・s+(1−W)・sl+1(1≦l<nの場合)(5)
ここで、Wは、逆方向指数平滑化に適用される第2の重みである。
【0044】
サブステップf3)では、前のサブステップf2)で更に修正された傾斜集合{t,s**}に昇順1,2,…,n−1,nで第2の順方向指数前の平滑化を適用してもよい。この平滑化は、式6に基づいて実行してもよい。
***=s**及び
***=Wf2・s**+(1−Wf2)・sl−1**(1<l≦nの場合)(6)
ここで、Wf2は、第2の順方向指数平滑化に適用される第3の重みである。
【0045】
本発明に基づく方法のステップg)では、各平滑化されたデータ点(t,s)について、前のステップf)で判定された、ここでは{t,s***}と表す、最後に修正された傾斜集合を積分する。この手順では、各平滑化されたデータ点(t,s)について、指定された値を最終的に判定し、続いて、これを返す。
【0046】
好ましい実施形態においては、ステップg)は、以下のサブステップg1)〜g5)を含んでいてもよく、これらは、ここに示す順序で実行することが好ましい。
【0047】
サブステップg1)では、ステップe)の前に、1≦l≦nとして、平滑化集合内の値の平均値orig meanを算出する。この目的のために、特に、平滑化集合内の平滑化されたデータ点の値の合計を平滑化集合内の平滑化されたデータ点の数によって除算することによって、平滑化集合内の平滑化されたデータ点の中心値を取得してもよい。
サブステップg2)では、最後に修正された傾斜集合{t,s***}を式7によって数値的に積分してもよい。
integral=0及び
integral=integrall−1+{(1−w)・s***+w・sl−1***}・{t−tl−1} (1<l<nの場合) (7)
ここで、wは、積分に適用される第4の重みである。
【0048】
このサブステップg2)によって、積分された集合が得られ、これに対し、サブステップg3)において、1<i<nとして、値integralの平均値「new mean」を算出してもよい。この目的のために、特に、積分集合内の積分値の合計を積分集合内の積分値の数で除算することによって積分集合内の積分値の中心値を取得してもよい。
【0049】
次のサブステップg4)では、以下の式8を適用することによって、積分定数「int const」を算出してもよい。
int const=orig mean−new mean (8)
【0050】
サブステップg5)では、最終的に、以下の式9を適用することによって、sの平滑化された値を算出してもよい。
=integral+int const (9)
この手順によって、k=n−offsetにより、少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)の値を判定し、返すことができる。
【0051】
このようにして、本発明に基づく方法によって、データ点のストリーム{t,s}内の平滑化されたデータ点(t,s)が判定される。なお、更なるステップにおいて次の平滑化されたデータ点(tk1,sk1)に対してステップb)〜g)を連続的に実行することによって、次の平滑化されたデータ点(tk1,sk1)について方法を継続してもよい。このように、本発明に基づく方法は、データ点が要求される限り、実行することができる。これに代えて、データ点のストリームから選択された任意のデータ点を使用して、少なくとも1つの更に平滑化された値を算出してもよい。
【0052】
特に好ましい実施形態においては、少なくとも1つの3個一組のデータ点(t,s,s’)が返される。ここで、3個一組のデータ点(t,s,s’)は、平滑化された値sの導関数である値s’を更に含む。上述したように、本方法によって、時系列測定からの導関数を表すこのような3個一組のデータ点を容易に返すことができ、このような情報は、更なる評価目的のために要求されることが多い。
【0053】
特に好ましい実施形態においては、offset、smoothing window、gap length、minimal window、SlopeRange、第1の順方向指数平滑化のための第1の重みWf1、逆方向指数平滑化のための第2の重みW、第2の順方向指数平滑化のための第3の重みWf2、及び/又は積分のための第4の重みwの数値の一部又は全部は、表1に示す好ましい範囲、適用可能であれば、より好ましい範囲、及び/又は最も好ましい値から選択してもよい。但し、本発明に基づく方法の適用に関連して、特定の目的のために表1に示す数値以外の数値を選択してもよい。一方、実験結果として後述するように、既に優れた平滑化を提供する各数値について表1に示す値及び/又は範囲から値を選択することによって、この方法の性能が特に短いタイムスケールで向上する。
【0054】
【表1】
【0055】
更に好ましい実施形態においては、ステップa)で提供される特定の集合は、p番目毎のアイテムを取ることによって選択され、pは、好ましくは、範囲[2,6]から選択される数値であり、3が最も好ましい値である。この手順によって、特定の集合内でp番目毎のデータ点のみを維持し、この他のデータ点を削除してもよい。
【0056】
この手順は、好ましくは、以下のように採用される。まず、ステップa)に基づくデータ点のオリジナルのストリーム(元のストリーム)をデータ点の集合として使用し、本方法のステップb)〜g)までの1回目の実行を開始する。これに代えて、データ点のオリジナルのストリームから、データ点の既に削減されている集合を生成し、これをステップa)における特定の集合として使用し、ここから、本方法のステップb)〜g)までの1回目の実行を開始してもよい。次に、平滑化されたデータ点のストリーム又は平滑化されたデータ点のストリームから選択された数のデータ点をステップa)によるデータ点の集合のための更なる入力として使用し、続いて、2回目の実行における更なるステップb)〜g)を適用する。ここで、例えば、表1に示すパラメータは、第2の実行でも第1の実行と同様に選択してもよく、2つの実行間で異なるパラメータを選択してもよい。更に、表1に含まれる数値とは異なる数値を適用してもよい。
【0057】
これに代えて又はこれに加えて、ステップa)で提供される特定の集合は、p個の部分集合の1つを提供することによって提供してもよく、q番目の部分集合は、各アイテムが有効な値を含む限り、i=q,p+q,2p+q,…及びq≦pとして、複数のアイテム(t,s)を含む。特定の実施形態においては、平滑化の後に、好ましくは、p個の部分集合内の対応するアイテムに演算手段を適用した後に、p個の部分集合をマージ(merge)してもよい。例えば、更なる処理なしで、p個の部分集合をマージしてもよく、これにより、入力データ集合と同数のデータ点が得られる。他の例として、時間及び/又は信号に、演算手段、例えば、算術平均、メジアン及び/又は他の手順を更に適用することによって、p個の平滑化されたデータ集合をマージしてもよく、これにより、オリジナルのデータ集合と比べて、数が削減されたデータ点が得られる。更なる例として、n個の平滑化されたデータ集合のマージに関して、時刻及び/又は信号に対して、スライド方式で演算手段を適用してもよく、これによって、オリジナルのデータ集合と同数のデータ点を得ることができる。「スライド方式」による処理とは、各データ点に亘って窓を順次的に移動させ、それぞれ、これらのデータ点及び隣接するデータ点に対して演算手段を適用することと定義される。更なる例では、演算手段を適用する前に、特定の基準に基づいて、データ点を削除してもよく、これは、他の具体例に適用してもよい。この手順は、特に、3個一組のデータ(t,s,s’)を報告するために有用であり、これによって、対応する傾斜s’にもマージの処理及び演算手段が適用される。
【0058】
本発明では、データ点(t,s)は、好ましくは、前のデータ点(ti−1,si−1)の取得の後、特定の期間Δt=(t−ti−1)後に取得される。この定義は、リアルタイム又は略リアルタイム測定系列において、データ点が期間Δ毎に周期的に記録される状況を反映している。しかしながら、特に、前のデータ点(ti−1,si−1)が無効な値又は欠落した値を有するおそれがある場合、期間Δtを一定の値にしない方が好ましいことがあり、これは、例えば、1つ以上の前のデータ点の連続的な対について、期間Δtが終わる前の時刻tにおいて特定のデータ点(t,s)が取得されるような場合を指す。この手順では、特に、期間Δtによる標準的なサンプリングレートによって実行し、データ点を受信した直後に検証ステップを実行し、この検証ステップによって、実際の点が読み出されたか及び受信したデータ点が有効であるか否かに関する情報を返してもよい。欠落したデータ点又は無効なデータ点が発生した場合、早期に、好ましくは、できるだけ早く、特に、サンプリング期間によって定まる読み出し時点より早く、第2の読み出しを行う。
【0059】
これに関し、特定の集合は、rを0より大きい整数とし、t,t+rΔt,t+2rΔt,…のデータ点におけるアイテム、又は無効な値又は欠落した値を含むデータ点(t,s)から±Δt若しくは±2Δtの距離にある隣接するアイテムを保持することによって選択してもよい。この手順は、特に、データ点のストリーム内に大きなギャップが生じやすいケースに適用できる。
【0060】
特に好ましい実施形態においては、データ点のストリーム{t,s}は、測定系列を含んでいてもよく、これをセンサによって連続的に記録してもよい。ここで、センサは、時刻tにおいて信号sを記録するように構成されてもよく、信号sは、特に、ボリューム内の物質の濃度に関連していてもよい。したがって、センサは、光学センサ、特に、蛍光センサを選択し、体液内、特に、間質液内のブドウ糖濃度を判定するように構成することが好ましい。但し、本発明に基づく方法が同様に適用される他の実施形態も想到される。
【0061】
本発明の更なる側面として提供される装置は、1≦i≦z、k<zとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する装置である。本発明に基づく装置は、センサに指示を与え、時刻tにおいて一連の信号sを記録させ、データ点のストリーム{t,s}を供給させる指示デバイスを備え、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも幾つかのデータ点(t,s)は、時刻tにおける信号sのための有効な値を含む。ここで、センサは、装置を構成する一部であってもよいが、より好ましい実施形態においては、センサは、装置の筐体外に配設される独立した任意の実体として実現してもよい。これに関し、上述した何れのセンサも装置内で用いることができる。
【0062】
装置は、更に、データ点のストリーム{t,s}を受信し、続いて保存する受信及び保存デバイスを備える。このようなデバイスとしては、データ点の形式で情報を保存するための周知の如何なるメモリを採用してもよい。
【0063】
装置は、更に、1<i<zとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する演算デバイスを備える。したがって、この目的を実行するために、如何なるコンピュータ、マイクロコンピュータ及び/又はハードウェア実装されたデバイスを採用してもよい。
【0064】
特に好ましい実施形態において、装置は、2つの機械部品に分けられ、指示デバイスは、センサに機械的に接続され、例えば、人体に装着され、又はセンサが適用される人体の近傍に配設され、指示デバイスは、無線送信機能を有してもよい。記録及び保存デバイス並びに演算デバイスが、共に機械的に接続されてもよく、これらは、例えば、ユーザによって携帯されてもよく、看護職員の管理下に置かれてもよい。
【0065】
ここで、少なくとも装置の一部を構成する指示デバイス、記録及び保存デバイス並びに演算デバイスは、上述したようなデータ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するための方法に基づく如何なるステップを実行するように構成されてもよい。これに関し、方法に関して記述した全ての如何なる特定の実施形態も、適切な変形を加えて装置に適用されてもよい。
【0066】
好ましい実施形態において、装置は、ユーザの少なくとも1つの身体機能を判定するための分析装置であってもよく、装置は、ユーザ、例えば、患者の少なくとも1つの身体機能を記録するための少なくとも1つのセンサを更に含んでいてもよい。ここで、少なくとも1つのセンサは、ユーザの体組織又は体液内の少なくとも1つの分析物の分析物濃度を測定するセンサ、ユーザの少なくとも1つの心機能を判定するための心臓センサ、脈センサ、血圧センサ、ECG及びEEGからなるグループから選択されてもよい。また、特に物理的パラメータ、化学的パラメータ及び/又は環境パラメータを記録するように適応化された他のセンサを用いてもよい。
【0067】
本発明の更なる側面は、装置の使用方法に関し、その目的は、ユーザの体組織又は体液内の少なくとも1つの分析物の分析物濃度を測定すること、ユーザの少なくとも1つの心機能を判定すること、ユーザの脈を判定すること、ユーザの血圧を判定すること、ECGを記録すること及びEEGを記録することからなるグループから選択される。また、装置は、他の目的のために、特に、選択されたセンサがアクセスできる物理的値、化学的値、生物学的値及び/又は環境値を測定するために使用されてもよい。前述の用途にかかわらず、本方法及び装置は、特に、例えば、臨床試験、並びに市販の医療デバイスによるリアルタイム又は略リアルタイムのデータ収集によって取得されるデータ点のストリームの詳細分析のために使用できる。
【0068】
本発明は、更に、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、ここに開示する1つ以上の実施形態で本発明に基づく方法を実現するコンピュータが実行可能な命令を含むコンピュータプログラムを開示する。詳しくは、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ媒体に格納されていてもよい。このように、上述したステップa)〜d)の1つ以上は、コンピュータ又はコンピュータネットワークを用いて、好ましくはコンピュータプログラムを用いて実行されてもよい。
【0069】
本発明は、更に、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上でプログラムが実行されると、ここに含まれる実施形態の1つ以上で本発明に基づく方法を実現するプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム製品を開示し、提案する。詳しくは、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ媒体に格納されていてもよい。
【0070】
更に、本発明は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク、例えば、コンピュータ又はコンピュータネットワークのワーキングメモリ又はメインメモリにロードされて、ここに開示する実施形態の1つ以上によって方法を実現するデータ構造が格納されているデータ媒体を開示し、提案する。ここでいうコンピュータとは、データを格納し、演算ステップ及び/又は指示ステップを実行することができるあらゆるデバイスを含む。例えば、この定義は、ワークステーション及びノート型コンピュータのみではなく、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array:FPGA)も含む。
【0071】
本発明は、更に、プログラムがコンピュータ又はコンピュータネットワークにおいて実行されると、ここに開示する実施形態の1つ以上によって方法を実現するプログラムコード手段がマシン可読媒体に保存されたコンピュータプログラム製品を提案し、開示する。ここで言うコンピュータプログラム製品とは、取引可能な製品としてのプログラムを意味する。製品は、包括的に、任意の形式で存在でき、例えば、紙形式であってもよく、又はコンピュータ可読媒体上にあってもよい。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワークを介して配信されてもよい。
【0072】
最後に、本発明は、ここに開示する実施形態の1つ以上によって方法を実行するためにコンピュータシステム又はコンピュータネットワークによって可読な指示を含む変調されたデータ信号を提案し、開示する。
【0073】
好ましくは、本発明のコンピュータによって実現される側面では、ここに開示する実施形態の1つ以上に基づく方法のステップの1つ以上又はステップの全てを、コンピュータ又はコンピュータネットワークを用いて実行してもよい。このように、包括的には、データの提供及び/又は操作を含む方法ステップの何れをコンピュータ又はコンピュータネットワークを用いて実行してもよい。包括的には、これらの方法ステップは、通常、手作業を必要とする方法ステップ、例えば、サンプルの提供及び/又は実際の測定を実行する特定の側面を除いて、如何なる方法ステップを含んでいてもよい。
【0074】
本発明は、従来の技術にない幾つかの利点を有する。第1に、本発明は、平滑化集合と呼ばれるスライドするデータ点の部分集合を適用する。平滑化集合は、主に過去を参照して、本方法に基づく平滑化手順の実行から生じる単一の出力値をのみを報告するものであってもよい。単一の出力値は、特に、平滑化集合の終端付近で報告されてもよく、続いて、新しい平滑化集合を用いて、次の出力値のために処理が繰り返されてもよい。この構成を適用することによって、高度な平滑化を実現しながら、リアルタイム又は略リアルタイムで、あらゆる測定値を報告できる。この利点は、本発明の主要な到達点の1つであり、従来の技術と大きく異なる点でもある。
【0075】
第2に、SlopeRangeによって定義される範囲の端点が正しく考慮されるように、傾斜の推定を実行できる。後述するように、本発明に基づく方法は、データ集合の端部付近の歪みを回避し、データによる有意な値を提供する。Roarkは、その方法において、全てのデータ集合に対する平滑化を行うのみであり、端部付近の値に特別な注意を払っていない。しかしながら、リアルタイム又は略リアルタイム出力を提供するためには、平滑化集合の端部付近の値も可能な限り正確であることが望ましい。
【0076】
第3に、本発明に基づく方法は、データ点のストリーム内のリアルタイム又は略リアルタイム測定において生じる可能性があるギャップ、特に大きなギャップに正しく対処する。後述するように、Roarkのアルゴリズムによって生じる許容できない誤差は、本発明に基づく方法によって回避できる。特に、平滑化部分集合の適用と共にギャップのサイズを制限する前述のサブステップによって、これらの問題が回避される。
【0077】
第4に、本発明の主要な利点は、データの前処理の適用を含む。本発明に基づく方法は、1〜5個のサンプリング間隔のタイムスケールにおいて、平滑化による雑音の除去が優れていながら、他方で、出力をより緩やかな変化に調整することが見出された。このように変化が平滑化される場合、好ましくは、データの間隔を増加させてもよい。前処理を逆平滑化(reverse smoothing)と組み合わせることによって、より良い結果が提供されることが見出された。標準的な指数平滑化を中間データの削減と組み合わせて実行することによって、満足な平滑化の結果が得られるが、これによって、30個のデータ点を遡って読み出すスライド平均に相当する大きなタイムラグが導入されることがある。
【0078】
第5に、本発明の更なる利点は、データ点のストリーム内のデータ点が、必ずしも等間隔である必要がないという事実に基づく。検証ステップを使用することによって、大きなギャップなしでデータ点を利用できることが保証され、これによって、略リアルタイムの報告が提供される。したがって、期間Δtによって、標準的サンプリングレートを、装置が技術的に提供することができるサンプリングレートより遅く調整することができる。この実施形態によって、特に、装置の電力消費を最小化できると共に、何らかの入射(radiation)によってセンサが影響を受ける等、測定手段によって影響を受けることなくセンサを露出でき、これらによって、装置の寿命を向上させることができる。
【0079】
本発明の発見を要約し、以下に好ましい実施形態を示す。
【0080】
実施形態1:i、z及びkを整数とし、1≦i≦z、k<zとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する方法であって、データ点のストリーム{t,s}は、好ましくは、前のデータ点(ti−1,si−1)の取得から期間Δtの後にデータ点(t,s)が取得されるように連続的に取得され、データ点のストリーム{t,s}内の各データ点(t,s)は、それぞれ、
−時刻tにおいて記録される時刻tにおける信号sの有効な値、
−時刻tにおいて記録され、無効であるとみなされる時刻tにおける信号sの無効な値、又は
−期待される時刻tにおいて欠落した時刻tにおける信号sの欠落した値を含み、
時刻tにおける信号sは、技術的なセットアップによって取得される、物理的、化学的、生物学的、環境的及び/又は技術的なデータを含み、この方法は、
a)1≦i≦z、k≦zとして、データ点のストリーム{t,s}を含むデータ点の集合、又はデータ点のストリーム{t,s}から又は平滑化されたデータ点の集合{t,s}から選択された特定の集合を提供するステップと、
b)各平滑化されたデータ点(t,s)について、ステップa)の間に提供されたデータ点の集合から、以下の式によって得られるデータ点の部分集合{t,s}を含む平滑化集合を生成し、
(k+offset−smoothing window+1)<l<(k+offset) (1)
offset>0は、t>tとして、有効な値を含むデータ点(t,s)のための平滑化集合を生成する前に取得されたデータ点(t,s)の数を定義するオフセット数からなる数値であり、smoothing windowは、平滑化集合の長さを定義する数値である、ステップと、
c)各平滑化されたデータ点(t,s)について、平滑化集合内の2つの隣接するデータ点{(tl−1,sl−1),(t,s)}の各対において、以下の条件が満たされることを要求する第1の条件が満たされるか否かを検証し、
(t−tl−1) ≦gap length (2)
gap lengthは、平滑化集合内の2つの隣接するデータ点の間で許容される最大の時間差を定義する数値であり、
l<lとして、あるlについて第1の条件が満たされない場合、データ点(t,s)を平滑化集合から取り除くステップと、
d)各平滑化されたデータ点(t,s)について、数値nが少なくともminimal windowの数値に等しいことを要求する第2の条件が満たされるか否かを検証し、数値nは、ステップc)の後に平滑化集合{t,s}に残るデータ点の数に等しい数値であり、minimal windowは、ステップc)の後に平滑化集合{t,s}に残ることが要求されるデータ点の数に等しい数値であり、
第2の条件が満たされない場合、平滑化されたデータ点(t,s)のための値を判定せず、平滑化されたデータ点(t,s)を返さず、又はエラーフラグを返し、
第2の条件が満たされる場合、後続するステップに進むステップと、
e)各平滑化されたデータ点(t,s)について、1≦l≦nとして、平滑化集合に対応する傾斜集合{t,s’}を算出するステップと、
f)各平滑化されたデータ点(t,s)について、傾斜集合{t,s’}に対し少なくとも1つの指数平滑化ステップを適用して、少なくとも1つの修正された傾斜集合{t,s}を判定するステップと、
g)各平滑化されたデータ点(t,s)について、ステップf)において判定された少なくとも1回は修正された傾斜集合{t,s}を積分して、平滑化されたデータ点(t,s)の値を判定し、返すステップとを含み、
ステップb)の前に、ステップa)によって提供されるデータ点の集合内のデータ点について、及び/又はステップb)の後、ステップb)によって提供される平滑化集合内のデータ点について、検証ステップにおいて、ある基準をデータ点に適用し、データ点を保持するか削除するかを判定する方法。
【0081】
実施形態2:基準は、データ点(t,s)が有効な値、無効な値、又は欠落した値を含むかを判定する検証ステップを含み、有効な値を含むデータ点(t,s)は保持され、無効な値又は欠落した値を含むデータ点(t,s)は削除される、上記実施形態に基づく方法。
【0082】
実施形態3:有効な値を含む少なくとも1つのデータ点がオフセット内に存在するか否か、又は、好ましくは、オフセット内の全てのデータ点が有効な値を含むか否かについての更なる条件を検証し、オフセットは、t>tとして、検証ステップの間に平滑化集合から幾つかのデータ点の数を削除した後に、ステップb)が現在実行されている平滑化されたデータ点(t,s)より前に取得されたデータ点(t,s)のoffset数を含み、更なる条件が満たされない場合、平滑化されたデータ点(t,s)のための値を判定せず、平滑化されたデータ点(t,s)を返さず、又はエラーフラグを返す、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0083】
実施形態4:数値offsetは、範囲[1,4]から選択され、2が好ましい値である、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0084】
実施形態5:数値smoothing windowは、範囲[7,40]、好ましくは範囲[15,25]から選択され、20が最も好ましい値である、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0085】
実施形態6:数値gap lengthは、範囲[5Δt,30Δt]、好ましくは範囲[5Δt,15Δt]から選択され、6Δtが最も好ましい値である、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0086】
実施形態7:数値minimal windowは、範囲[5,20]、好ましくは範囲[5,10]から選択され、5が最も好ましい値である、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0087】
実施形態8:ステップa)において提供される特定の集合は、p番目毎のアイテムを取ることによって選択され、pは、好ましくは、範囲[2,6]から選択される数値であり、3が最も好ましい値である、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0088】
実施形態9:p個の部分集合が選択され、q番目の部分集合は、各アイテムが有効な値を含む限り、複数のアイテムを含み、ここで、i=q,p+q,2p+q,…及びq≦pである、上記実施形態に基づく方法。
【0089】
実施形態10:p個の部分集合は、平滑化の後にマージされる、上記実施形態に基づく方法。
【0090】
実施形態11:p個の部分集合は、p個の部分集合内の対応するアイテムに演算手段を適用した後にマージされる、上記実施形態に基づく方法。
【0091】
実施形態12:データ点(t,s)は、特定の期間Δt=(t−ti−1)が終わる前の時刻tにおいて取得される、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0092】
実施形態13:データ点(t,s)は、先行するデータ点(ti−1,si−1)が無効な値又は欠落した値を含んだ後に、特定の期間Δt=(t−ti−1)が終わる前の時刻tにおいて取得される、上記実施形態に基づく方法。
【0093】
実施形態14:特定の集合は、rを0より大きい整数とし、t,t+rΔt,t+2rΔt,…のデータ点におけるアイテムを保持することによって選択される、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0094】
実施形態15:隣接するアイテムは、無効な値又は欠落した値を含むデータ点(t,s)から±Δt若しくは±2Δtの距離だけ離れたものである、上記実施形態に基づく方法。
【0095】
実施形態16:ステップe)は、
e1)各データ点(t,s)の傾斜を算出するために使用されるデータ点の数として数値SlopeRangeを定義するサブステップと、
e2)SlopeRangeが奇数である場合、選択されるデータ点が平滑化集合内に存在する限り、各データ点(t,s)の前の(SlopeRange−1)/2個のデータ点と、各データ点(t,s)の後の(SlopeRange−1)/2個のデータ点とを選択し、データ点(t,s)が平滑化集合の端に存在しない場合、存在するデータ点を使用し、
SlopeRangeが偶数である場合、選択されるデータ点が平滑化集合内に存在する限り、各データ点(t,s)の前のSlopeRange/2個のデータ点と、各データ点(t,s)の後の(SlopeRange/2−1)個のデータ点とを選択し、データ点(t,s)が平滑化集合の端に存在しない場合、存在するデータ点を使用することによって、
各データ点(t,s)に差集合{t,s}を割り当てるサブステップと、
e3)以下の式に基づいて、平滑化集合に対応する傾斜集合{t,s’}を算出し、
【数2】
総和Σは、差集合{t,s}内のデータ点に亘って算出され、dは、データ点が平滑化集合の端に存在しない場合、SlopeRange以下であり、ここでの算出処理は、平滑化集合1≦l≦nの各点について行われるサブステップと
を含む上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0096】
実施形態17:数値SlopeRangeは、好ましくは、範囲[3,6]から選択され、3が最も好ましい値である、上記実施形態に基づく方法。
【0097】
実施形態18:ステップf)は、
f1)ステップe)で取得された傾斜集合{t,s’}に昇順1,2,…,n−1,nで以下のような第1の順方向指数平滑化を適用し、
=s’及び
=Wf1・s’+(1−Wf1)・sl−1’(1<l≦nの場合)(4)
f1は、第1の順方向指数平滑化に適用される第1の重みである、サブステップと、
f2)サブステップf1)において修正された傾斜集合{t,s}に降順n,n−1,…2,1で
以下のような逆方向指数平滑化を適用し、
**=s及び
**=W・s+(1−W)・sl+1(1≦l<nの場合)(5)
は、逆方向指数平滑化に適用される第2の重みである、サブステップと、
f3)サブステップf2)において修正された傾斜集合{t,s}に昇順1,2,…,n−1,nで以下のような第2の順方向指数平滑化を適用し、
***=s**及び
***=Wf2・s**+(1−Wf2)・sl−1**(1<l≦nの場合)(6)
f2は、第2の順方向指数平滑化に適用される第3の重みである、サブステップと
を含む上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0098】
実施形態19:第1の順方向指数平滑化に適用される第1の重みWf1は、範囲[0.3,0.6]から選択され、0.5が最も好ましい値である、上記実施形態(実施形態18)に基づく方法。
【0099】
実施形態21:逆方向指数平滑化に適用される第2の重みWは、範囲[0.2,0.5]から選択され、0.33が最も好ましい値である、上記2つの実施形態(実施形態18、19)の何れかに基づく方法。
【0100】
実施形態22:第2の順方向指数平滑化に適用される第3の重みWf2は、範囲[0.3,0.6]から選択され、0.5が最も好ましい値である、上記3つ実施形態(実施形態18、19、21)の何れかに基づく方法。
【0101】
実施形態23:ステップg)は、
g1)ステップe)の前に、1≦l≦nとして、平滑化集合内の値sの平均値orig meanを算出するサブステップと、
g2)以下の式によって少なくとも1回修正された傾斜集合(t,s)を数値的に積分し、
integral=0及び
integral=integrall−1+{(1−w)・s’+w・sl−1}・{t−tl−1} (1≦l≦nの場合) (7)
は、積分に適用される第4の重みであり、これによって、積分された集合を生成するサブステップと、
g3)1≦i≦nとして、積分された集合内で値integralの平均値new meanを算出するサブステップと、
g4)以下の式を適用することによって、積分定数int constを算出するサブステップと、
int const=orig mean−new mean (8)
g5)以下の平滑化された値を算出し、
=integral+int const (9)
k=n−offsetとして、平滑化されたデータ点(t,s)の値を返すサブステップと
を含む上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0102】
実施形態24:積分に適用される第4の重みwは、好ましくは、範囲[0.25,0.75]から選択され、0.33が最も好ましい値である、上記実施形態(実施形態23)に基づく方法。
【0103】
実施形態25:平滑化された値sの傾斜のための値s’を含む3個一組のデータ点(t,s,s’)を少なくとも1つ返す、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0104】
実施形態26:データ点のストリーム{t,s}は、センサによって連続的に記録される測定系列を含み、センサは、時刻tにおいて信号sを記録するように適応化されている、上記何れかの実施形態に基づく方法。
【0105】
実施形態27:時刻tにおける信号sは、特にボリューム内の物質の濃度に関連を有する、上記実施形態に基づく方法。
【0106】
実施形態28:センサは、好ましくは光学センサである、上記2つ実施形態(実施形態26、27)の何れかに基づく方法。
【0107】
実施形態29:センサは、蛍光センサである、上記実施形態(実施形態28)に基づく方法。
【0108】
実施形態30:センサは、体液内のブドウ糖濃度を判定するように構成されている、上記4つの実施形態(実施形態26〜29)の何れかに基づく方法。
【0109】
実施形態31:センサは、間質液内のブドウ糖濃度を判定するように構成されている、上記実施形態(実施形態30)に基づく方法。
【0110】
実施形態32:1≦i、k≦mとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する装置であって、
センサに指示を与え、時刻tにおいて一連の信号sを記録させ、データ点のストリーム{t,s}を供給させる指示デバイスであって、時刻tにおける信号sは、技術的なセットアップによって取得される物理的、化学的、生物学的、環境的及び/又は技術的なデータを含み、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも幾つかのデータ点(t,s)は、時刻tにおける信号sのための有効な値を含む、指示デバイスと、
データ点のストリーム{t,s}を受信し、続いて保存する受信及び保存デバイスと、
1≦i≦mとして、データ点のストリーム{t,s}内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する演算デバイスとを備え、
上記何れかの実施形態に基づく方法の何れかのステップを実行するように構成された装置。
【0111】
実施形態33:装置は、ユーザの少なくとも1つの身体機能を判定するための分析装置であり、ユーザの少なくとも1つの身体機能を記録するための少なくとも1つのセンサを更に含む上記実施形態に基づく装置。
【0112】
実施形態34:少なくとも1つのセンサは、好ましくは、ユーザの体組織又は体液内の少なくとも1つの分析物の分析物濃度を測定するセンサ、ユーザの少なくとも1つの心機能を判定するための心臓センサ、脈センサ、血圧センサ、ECG及びEEGからなるグループから選択される、上記実施形態に基づく装置。
【0113】
実施形態35:装置は少なくとも2つの別々の部分に分割され、指示デバイスは、センサに接続され、指示デバイスは、無線送信デバイスを含み、記録及び保存デバイス並びに演算デバイスは、共に接続される、上記何れかの実施形態に基づく装置。
【0114】
実施形態36:上記何れかの実施形態に基づく装置の使用方法であって、ユーザの体組織又は体液内の少なくとも1つの分析物の分析物濃度を測定すること、ユーザの少なくとも1つの心機能を判定すること、ユーザの脈を判定すること、ユーザの血圧を判定すること、ECGを記録すること及びEEGを記録することからなるグループから選択される目的のための使用方法。
【0115】
実施形態37:コンピュータが実行可能な命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現する、コンピュータプログラム。
【0116】
実施形態38:データ構造が格納されているデータ媒体であって、前記データ構造は、コンピュータ又はコンピュータネットワークにロードされて、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現する、データ媒体。
【0117】
実施形態39:少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータ又はコンピュータネットワークであって、前記プロセッサは、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現するように適応化されている、コンピュータ又はコンピュータネットワーク。
【0118】
実施形態40:コンピュータ上で実行され、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現するように構成された、コンピュータにロード可能なデータ構造。
【0119】
実施形態41:コンピュータ上で実行されると、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現するように適応化されたコンピュータプログラム。
【0120】
実施形態42:上記何れかの実施形態に基づく方法を実現するプログラム手段を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現する、コンピュータプログラム。
【0121】
実施形態43:上記実施形態に基づくプログラム手段を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラム手段がコンピュータ可読媒体に格納されている、コンピュータプログラム。
【0122】
実施形態44:データ構造を格納するストレージ媒体であって、前記データ構造は、コンピュータ又はコンピュータネットワークのメインストレージ及び/又はワーキングストレージにロードされて上記何れかの実施形態に基づく方法を実現するように構成されている、ストレージ媒体。
【0123】
実施形態45:プログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード手段は、ストレージ媒体に格納でき、又は格納されており、コンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、上記何れかの実施形態に基づく方法を実現する、コンピュータプログラム製品。
【0124】
本発明の更なる任意の特徴及び実施形態は、好ましくは従属請求項に関連する、好ましい実施形態の説明によって更に詳細に開示される。ここで、任意の特徴のそれぞれは、独立した形式で実現してもよく、当業者にとって明らかな可能な任意の如何なる組み合わせによって実現してもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によっては制限されない。これらの実施形態は、図面において図式的に表されている。これらの図面において、同一の符号は、同一又は機能的に等価な要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するための方法の好ましい実施形態の概要を示す図である。
図2A】25データ点のギャップを有するデータ点のストリームについて、オリジナルの生のデータ点の第1の集合、従来の技術に基づく方法によって平滑化された第2及び第3のデータ点の集合、及び本方法によって平滑化されたデータ点の第4の集合を比較して示す図である。
図2B】42データ点のギャップを有するデータ点のストリームについて、オリジナルの生のデータ点の第1の集合、従来の技術に基づく方法によって平滑化された第2及び第3のデータ点の集合、及び本方法によって平滑化されたデータ点の第4の集合を比較して示す図である。
図3A】データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するための装置の実施形態を示す図である。
図3B】データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するための装置の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
図1は、i、z及びkを整数とし、1≦i≦z、k<zとして、データ点のストリーム{t,s}110内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定する方法の好ましい実施形態の概要を示す図である。ここで、時刻t112における信号sは、技術的なセットアップによって取得される物理的、化学的、生物学的、環境的及び/又は技術的なデータを含む。これに関し、データ点のストリーム110は、前のデータ点がより前の時刻114に記録され、最新のデータ点116が実際の報告時刻112の近くで報告されるように、時間112に亘って連続的に取得されるものであってもよい。最新のデータ点116から、平滑化窓(Smoothing Window)118に等しい数の点だけ戻ることによって、平滑化集合(smoothing set)120を作成してもよい。ここで、最新のデータ点116と実際の報告時刻112との差を示すオフセット(offset)119が生じる。後の検証ステップ122において、平滑化集合120から無効な値又は欠落した値を含むデータ点を取り除いてもよい。図1に示す方法は、検証ステップ122の間に平滑化集合120から幾つかのデータ点を取り除いた後にオフセット119内に未だデータが存在することを確認する更なる条件124を含んでいてもよい。更なる条件124が満たされない場合、記録されたデータ点のストリームから出力が入手できない。この場合、待機ステップ126に進み、次のデータ点が記録されるまで、方法の更なる実行を停止してもよい。次のデータ点が利用可能になると、直ちに、スライドステップ128において平滑化集合120を最新のデータ点116の位置まで右に移動させる。最新のデータ点116から、これに応じて調整された平滑化窓118から新しい平滑化集合120を作成することによよって、方法を再開することができる場合がある。
【0127】
一方、更なる条件124によってデータがオフセット119内に存在する場合、平滑化集合120内で第1の条件130が満たされていることを検証してもよく、第1の条件130では、例えば、大きなギャップがあるかを判定してもよい。第1の条件130が満たされた場合、平滑化集合120からトレーリングデータ(trailing data)を除去してもよい。次に、本発明に基づく方法を更に実行するために、平滑化集合が十分な長さを有しているか否かを検証する第2の条件132が満たされているかを調べる。第2の条件132が満たされない場合、上述したオフセット119内にデータが存在しない場合と同様の結果になる。したがって、次のデータ点が利用可能になるまで待機ステップ126を実行してもよく、次のデータ点が利用可能になると、上述したようなスライドステップ128を実行してもよい。
【0128】
一方、第2の条件132を検証することによって平滑化集合が十分に長いことが確認できる場合、平滑化集合120内のパラメータorig meanを判定する第1の演算ステップ134を実行してもよい。次に、第2の演算ステップ136において、平滑化集合120内のデータ点について初期の傾斜集合を算出してもよく、これに対して、第1の順方向平滑化ステップ138を適用し、次に、逆方向平滑化ステップ140を適用し、続いて第2の順方向平滑化ステップ142を適用してもよい。平滑化ステップ138、140、142の間、上述のように傾斜集合を3回修正してもよく、最終的に修正された傾斜集合は、積分ステップ144のための入力として使用でき、ここで、平滑化されたデータ点の値は、判定及び戻しステップ146において判定され、戻される。
【0129】
最新のデータ点116を入力としてこのような単一の実行を終了した後、この方法を終了させてもよい。これに代えて、方法は、次のデータ点が利用できるようになると、直ちに、後続するパスを続けてもよく、この場合、スライドステップ128によって平滑化集合が右に移動され、最新のデータ点116がカバーされる。
【0130】
以下では、時系列データに関する特定の要求に応じて選択できる幾つか特定の実施形態を記述する。
【0131】
「1パスリアルタイム平滑化(one-pass real-time smoothing)と呼ぶことができる第1の実施形態は、表1に示す範囲及び/又は値から選択されるパラメータと共に、図1及びそれに対応するそれぞれの説明に従ったステップを実行する。
【0132】
「データ削減を伴う2パスリアルタイム平滑化(two-pass real-time smoothing with data reduction)」と呼ぶことができる第2の実施形態は、リアルタイム又は略リアルタイムの報告が必要でありながら、より優れた平滑化が要求される場合に選択できる。この場合、図1に図式的に示す方法を、以下の手法で2回適用してもよい。まず、第1のパスにおいて、表1からのパラメータを用いて、オリジナルのデータ集合に対して図1に示す方法を適用してもよい。次に、判定及び戻りステップ146から得られるデータ集合内のp番目毎のデータ点のみを保持し、残りのデータ点を削除してもよく、ここでpの典型的な値は、3を選択してもよい。これによって、削減されたデータ集合が取得される。次に、2回目のパスにおいて、特に、第1のパスで用いたものと同じパラメータを用いて、削減されたデータ集合に対して図1に示す方法を適用してもよい。これに代えて、第2のパスでは、第1のパスとは異なるパラメータを用いてもよく、これらは、表1から選択してもしなくてもよい。
【0133】
第2の実施形態の変形例として、オリジナルのデータ集合からp個のデータ集合を作成してもよく、これらのデータ集合のうち、第1のデータ集合は、データ点1,1+p,1+2p,…等から開始してもよく、第2のデータ集合は、2,2+p,2+2p,…等から開始してもよい。次に、p個のデータ集合のそれぞれに図1に示す方法を適用し、これによって、p個の平滑化されたデータ集合を取得してもよい。次に、更なる処理なしで、又は、好ましくは、p個の部分集合内の対応するアイテムに演算手段を適用した後に、p個の平滑化されたデータ集合をマージしてもよい。ここで、演算手段は、算術平均、メジアン又は他のこのような計算から選択してもよく、これをデータ点に直接的に適用することによって、入力データ集合に対してデータ点の数を削減してもよく、又はスライド式を適用することによって、入力データ集合と同じ数のデータ点を得てもよい。更に、演算手段の前に、データ点を如何なる基準に従って削減してもよい。
【0134】
「前処理された削減されたデータ集合に対するリアルタイム平滑化(real-time smoothing on a preprocessed reduced data set)」と呼ぶことができる第3の実施形態では、図1に示す方法を削減されたデータ集合に適用してもよい。削減されたデータ集合は、p番目毎のデータ点のみを保持することによって、又はrを0より大きい整数として、時刻t,t+r・Δt,t+2r・Δt,…において記録されたデータ点におけるアイテムを保持することによって、オリジナルのデータ集合から用意されてもよい。このようにして選択されたアイテムが無効な値又は欠落した値であることが判明した場合、隣接するアイテム、特に、各データ点から、±Δt又は±2・Δtの距離にある隣接するアイテムを選択してもよい。ここで、有効なデータ点を検出するための何回かの試行では、同じデータ点が二回使われない限り、順方向及び/又は逆方向を適切に選択してもよい。そして、表1から選択されたパラメータを用いて、削減されたデータ集合に対し、図1に示す方法を適用してもよい。
【0135】
第2の実施形態に適用される同様の変形例に適切な変更を加えて、第3の実施形態に適用してもよい。これによって、第3の実施形態において、図1に示す方法の入力として使用されるp個のデータ集合を作成することができ、結果として生じる平滑化されたデータ集合を上述した手法の1つによってマージしてもよい。
【0136】
第1の実施形態は、短いタイムスケールの場合に優れた平滑化を提供でき、一方、第2及び/又は第3の実施形態による方法は、より長いタイムスケールで雑音を平滑化する場合に特に有効であることが見出された。第2の実施形態は、第3の実施形態に基づく方法と比較して、より優れた平滑化を提供することが多いが、第2の実施形態は、演算要求が高く、未来により多くのデータ点を必要とする。したがって、第2の実施形態に基づく方法は、第3の実施形態に基づく方法によって平滑化できるデータ点ほど早い段階では、平滑化されたデータ点を返すことができない場合がある。なお、第2の実施形態及び/又は第3の実施形態の上述した変形例は、より長い演算時間及びより大きい演算負荷を要求するため、時間の経過に伴う更なる平滑化及び/又はデータ点の密な間隔が要求される場合にのみ適切である。
【0137】
第2及び第3の実施形態の変形例は、傾斜を含む3値(t,s,s’)の形式の出力が望まれるような場合に特に有利であることがある。この場合、部分集合をマージするための演算手段は、特に、傾斜s’の値が平滑になるように適応化される。
【0138】
実際的な例として、10人の患者のコホートに20個のセンサを取り付け、センサ1個につき最大6個のデータ点のストリームを得る臨床研究の間に取得されたデータ点に、本発明に基づく方法を適用した。この結果、本発明に基づく方法の適用によって、従来使用されているスライド平均によって取得されるデータと比較して、歪みが少なく、雑音が略等しいデータが記録されることが証明された。更に、本方法によって、信号の傾斜を算出することができ、したがって、ブドウ糖変動によって生じる偏差の数値的補正を適用できる形式でデータを提供することができる。コホート全体に亘って、第2の実施形態及び第3の実施形態に基づく方法を比較したところ、略同一の結果が示された。このような種類の結果を比較するために適応化される重要なパラメータは、「平均絶対相対偏差(mean absolute relative deviation:MARD)」であり、これは、データの集合、例えば、センサの1つのデータストリームについて絶対値を取り、平均値を算出することによって、基準値からの偏差をパーセント値で記述したものである。例えば、本発明に基づく方法を適用することによって、典型的な実験において、MARD値は、コホート全体に亘って、14.6%の平均値から13.6%に減少することが見出された。特に多くの雑音を含むデータ点のストリームについては、より大幅な改善が得られる傾向が見出された。例えば、特に、雑音が多いデータ集合において、本発明に基づく方法の適用によって35%から25%へのMARD値の減少が観察できた。この統計値に加えて、この手法は、ブドウ糖値における如何なる変動からも影響を受けず、特に変動領域内で観測されるバイアスが小さかった。
【0139】
本発明に基づく方法は、特に、データ点のストリームで生じる可能性がある大きなギャップに対処する場合に適する。図2A及び図2Bは、データストリーム内に大きなギャップが存在する2つの例を表している。図2Aでは、25個のデータ点のギャップが発生しており、図2Bでは、42個のデータ点の値が欠落している。図2A及び図2Bでは、技術的なセットアップ内に配置されたセンサから取得された第1の生データ148と、それぞれ30個のデータ点に亘る対称移動平均(symmetric moving average)又はRoarkによる所謂「逆方向平滑化」方法を含む従来の技術によって平滑化されたデータ点150、152と、本発明に基づく方法によって返された平滑化されたデータ点154とを共に示している。従来の技術によって平滑化されたデータの集合150、152と、本発明によって平滑化されたデータの集合154との比較によって、本発明が提案する手法は、「逆方向平滑化」方法152及び未来に15個のデータ点を必要とする同等の対称移動平均150に比べて、データ点のストリーム内の大きなギャップに対処できる能力が遥かに高いことが示されている。この特徴は、データ点のリアルタイム又は略リアルタイム取得及び平滑化の場合に特に重要である。
【0140】
図3A及び図3Bは、データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点を判定するように適応化された装置156の2つの実施形態を示している。
【0141】
図3Aに示す実施形態では、装置156は、指示デバイス158を備え、指示デバイス158は、1≦i≦zとして、時刻tにおいて一連の信号sを記録し、同じく装置156内に含まれる記録及び保存デバイス162にデータ点のストリーム{t,s}を供給するようにセンサ160に指示する。装置156は、更に、演算デバイス164を備え、演算デバイス164は、第1の接続デバイス166によって、記録及び保存デバイス162から、データ点のストリームを受信し、k<zとして、データ点のストリーム内の少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を判定するように構成され、少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)は、何らかの更なる目的のために出力167として出力されてもよい。ここで、指示デバイス158は、センサ160に有線及び/又は無線で指示を送る送信デバイス168を備えていてもよく、一方、記録及び保存デバイス162は、センサ160から有線及び/又は無線でデータ点のストリーム{t,s}を受信するように構成された受信デバイス170を備えていてもよい。この特定の例では、図3Aに示すように、センサ160は、装置156の一部を構成しない。但し、特に、センサ160が装置156に一体化された部分を構成する他の実施形態も可能である。
【0142】
図3Bは、装置156が第1の部分172及び第2の部分174に機械的及び/又は物理的に分けられた特に好ましい実施形態を表している。ここで、指示デバイス158は、センサ160と共に装置156の第1の部分172内に設けられ、装置156の第1の部分172は、センサ160が使用される人体に装着され、又は人体の近傍に配置される。この目的のために、指示デバイス158は、センサ160に指示を送るように構成された有線接続された送信デバイス166を備えていてもよく、センサ160は、指示デバイス158にデータを転送するように構成された有線接続された転送デバイス176を備えていてもよい。この好ましい構成は、特に、先行するデータ点(ti−1,si−1)が無効な値又は欠落した値を含む場合に、特定の期間Δt=(t−ti−1)が終わる前にデータ点(t,s)を取得できるという好ましい機能を実現する。但し、指示デバイス158とセンサ160との間で他のタイプの接続を行うことも可能である。
【0143】
更に、記録及び保存デバイス162並びに演算デバイス164は、装置156の第2の部分174内に設けられてもよく、例えば、ASICの一部として共に接続されてもよく、一例として、ユーザが携帯してもよく、或いは、看護職員の管理下に置かれてもよい。ここで、演算デバイス164が、第1の接続デバイス166によって記録及び保存デバイス162からデータ点のストリーム{t,s}を受信したとき、更に、第2の接続デバイス178によって記録及び保存デバイス162に中間値を送信するように構成することが特に好ましい。また、この実施形態において、演算デバイス164は、出力167を介して、任意の目的で、少なくとも1つの平滑化されたデータ点(t,s)を提供するように構成されてもよい。この好ましい実施形態においては、記録及び保存デバイス162は、センサ160からデータ点のストリームを受信するように構成された無線受信デバイス170を備えていてもよい。なお、記録及び保存デバイス162と演算デバイス164との間で他のタイプの接続も可能である。更に、受信及び保存デバイス162は、可能な様々な手法で互いに通信できる少なくとも2つの実体として実現されてもよい。
【符号の説明】
【0144】
110 データ点のストリーム
112 記録時間
114 前のデータ点
116 最新のデータ点
118 平滑化窓
119 オフセット
120 平滑化集合
122 検証ステップ
124 更なる条件
126 待機ステップ
128 スライドステップ
130 第1の条件
132 第2の条件
134 第1の演算ステップ
136 第2の演算ステップ
138 第1の順方向平滑化ステップ
140 逆方向平滑化ステップ
142 第2の順方向平滑化ステップ
144 積分ステップ
146 判定及び戻りステップ
148 第1の生データの集合
150 30点に亘る対称移動平均(従来技術)
152 Roarkに基づく平滑化されたデータの集合(従来技術)
154 本発明に基づく平滑化されたデータの集合
156 装置
158 指示デバイス
160 センサ
162 受信及び保存デバイス
164 演算デバイス
166 第1の接続デバイス
167 出力
168 送信デバイス
170 受信デバイス
172 装置の第1の部分
174 装置の第2の部分
176 転送デバイス
178 第2の接続デバイス
図1
図2A
図2B
図3A
図3B