(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6225300
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20171030BHJP
E03C 1/23 20060101ALI20171030BHJP
A47K 1/14 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
E03C1/22 B
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-157092(P2016-157092)
(22)【出願日】2016年8月10日
【審査請求日】2016年8月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻 健一
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−108864(JP,A)
【文献】
特開2013−044123(JP,A)
【文献】
特開2012−211449(JP,A)
【文献】
特開2014−227664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の底部に凹設された排水凹部と、
排水凹部より下方に向けて延設された排水筒部と、
排水筒部内に配置されて排水口を形成する排水栓と、
上下動することによって排水口を開閉する弁体から成り、
上記弁体は、弁体の下降時において、排水栓と、排水栓と排水筒部との隙間を全て覆い隠す蓋部と、蓋部下方に形成された、パッキンが嵌着された弁蓋下部を有するとともに、パッキンが排水栓の排水口の周縁と当接することで排水口を閉塞し、
当該蓋部は弁体の下降時において上記排水凹部内に配置されることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記排水栓上端の外径は排水筒部の内径と略同一であるとともに、
前記排水凹部の内径は排水筒部の内径よりも大径であることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記蓋部は、
排水栓の外縁と同径又は大径であって、
弁体の下降時において、排水凹部の底面よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1請求項2のいずれか1つに記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記蓋部は、
弁体の下降時において、槽体の底面と略同一高さとなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面ボウルやシンク、浴槽等の槽体の底面に形成された排水口の開閉を行う排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の排水栓装置としては、槽体の底面に形成された開口と、当該開口の内周が下方に向けて延設されることによって形成された排水筒部と、当該排水筒部に取り付けられて排水口を形成する排水栓と、排水口を開閉する弁体から成る排水栓装置が知られている。排水栓は外周に雄螺子部を有するとともに、上端外周から外側に向けて鍔部が形成されており、槽体裏面に配置されたナット部材等に形成された雌螺子部と螺合されることで、鍔部がパッキンを介して槽体底面の開口周縁を境持することによって取り付けられている。
上記排水栓装置は、鍔部と排水筒部との隙間に水垢や塵芥等の汚れが堆積し、非常に見栄えが悪いという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の排水栓装置においては、排水筒部内に配置された弁体が、排水栓が露出しないように覆うことで汚れを隠し、上記問題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−241665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の排水栓装置は、排水栓の鍔部と排水筒部との間に隙間を形成してしまうと、当該隙間に水垢や塵芥等が堆積してしまうことから、鍔部の外径と排水筒部の内径は略同一となる様に形成される。又、上述の通り、弁体は排水筒部内に配置されるものであるから、弁体の外径は排水筒部の内径よりも小径でなければならない。一方、特許文献1は弁体によって鍔部を覆い隠す構造であることから、弁体の外径は鍔部の外径よりも大径である必要がある。即ち、特許文献1に記載の排水栓装置は「鍔部の外径≒排水筒部の内径」、且つ「鍔部の外径≦弁体の外径≦排水筒部の内径」を満たす必要がある。従って、鍔部の外径と排水筒部の内径、及び弁体の外径はそれぞれ略同一でなければならず、製造には高い精度が必要であった。又、鍔部の外径と弁体の外径が略同一であることから、角度によっては鍔部が見えてしまうことがあり、弁体によって十分に鍔部を覆い隠すことができているとは言えなかった。
又、上記排水装置は、弁体の外径と排水筒部の内径が略同一であることから、弁体の上昇時に何らかの衝撃が加わる等して弁体が少しでも傾斜した場合、下降時に弁体が排水筒部内に配置されず、止水不良となる問題が生じた。
更に、上記排水装置は、弁体の外径と排水筒部の内径が略同一であることから、弁体の周囲に隙間がほとんど存在せず、弁体上昇時の排水流量が非常に悪いという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、容易に製造可能であり、意匠性や止水性、及び排水流量を向上させた排水栓装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、槽体の底部に凹設された排水凹部と、
排水凹部より下方に向けて延設された排水筒部と、
排水筒部内に配置されて排水口を形成する排水栓と、
上下動することによって排水口を開閉する弁体から成り、
上記弁体は、
弁体の下降時において、排水栓と、
排水栓と排水筒部との隙間を全て覆い隠す蓋部と、蓋部下方に形成された、パッキンが嵌着された弁蓋下部を有するとともに、
パッキンが排水栓の排水口の周縁と当接することで排水口を閉塞し、
当該蓋部は弁体の下降時において上記排水凹部内に配置されることを特徴とする排水栓装置である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記排水栓上端の外径は排水筒部の内径と略同一であるとともに、
前記排水凹部の内径は排水筒部の内径よりも大径であることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、前記蓋部は、
排水栓の外縁と同径又は大径であって、
弁体の下降時において、排水凹部の底面よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1請求項2のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、前記蓋部は、
弁体の下降時において、槽体の底面と略同一高さとなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明によれば、上記特許文献1と比較し、排水栓装置を容易に製造可能であり、意匠性や止水性、及び排水流量を向上させることが可能となる。
請求項2又は請求項3に記載の本発明によれば、弁体の下降時に排水凹部内に配置された蓋部によって排水筒部を覆うことが可能となるため、排水栓を確実に覆い隠すことが可能となる。
請求項4に記載の本発明によれば、槽体が洗面ボウルの場合などにおいては、弁体の下降時に、蓋部の上方にヤカンや洗面器等を載置することが容易となる。又、槽体が浴槽の場合等においては、弁体の下降時において、弁体に脚を引っ掛けたりすることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図2より弁体を除いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の
排水栓装置を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0014】
以下に、本発明の第一実施形態について
図1乃至
図5を用いて説明する。尚、第一実施形態に係る槽体Bは洗面ボウルである。
【0015】
図1に示すように、槽体Bは断面視箱状であって、底部には排水凹部1が凹設され、当該排水凹部1の中央には排水筒部2が形成されている。
排水凹部1は槽体B底部を凹状に窪ませることによって形成され、その内径は後述する弁体6の弁蓋61の外径よりも大径である。尚、
図3等に記載された上端高さHは、排水凹部1の上縁部分を示しており、排水凹部1外端に形成された円弧の上端を繋いだ高さである。
排水筒部2は排水凹部1の中央に形成された開口より下方に向けて延設された筒状部分であり、その下端には内向きに突出するフランジ部21が形成されており、当該フランジ部21は排水栓3とナット5によって挟持されている。
排水栓3は内部に排水流路を形成する中空且つ円筒状の排水配管であって、円筒状の筒部31と、筒部31上端外周から外側に向けて形成された鍔部32から構成されている。筒部31は上方側面において、槽体Bの側面に形成された図示しないオーバーフロー孔からの排水流路が合流する窓部33が開口しており、オーバーフローアダプター4が周囲に取り付けられている。又、筒部31は窓部33下方において、外周に雄螺子が形成されており、ナット5の雌螺子と螺合されている。尚、鍔部32の外径は排水筒部2の内径と略同一であって、パッキンやオーバーフローアダプター4を介し、ナット5と鍔部32とでフランジ部21を挟持することによって排水栓3を槽体Bに固定している。
ここで、当該排水栓3の取り付け状態において、排水栓3の上端は排水筒部2の上端、即ち排水凹部1底面と略同一の高さとなる。そして、排水栓3の内部に形成された排水流路は、その上端が排水口34として機能し、槽体B内部に吐水された湯水や毛髪等を、下端に取り付けられた配管100を通じて下水へと排出する。
【0016】
図4に示すように、弁体6は排水口34の開閉を行う弁蓋61と、弁蓋61の裏面に取り付けられた弁軸63、塵芥を補足する目皿64から構成されている。
弁蓋61は、排水栓3を覆う蓋部62と、蓋部62下方に形成された、周囲にパッキン7が嵌着された弁蓋下部611から構成された止水部材である。
図2に示すように、蓋部62はその外径が鍔部32の外径及び排水筒部2の内径よりも大径且つ排水凹部1の内径よりも小径であり、弁体6の下降時において排水栓3及び排水栓3と排水筒部2との隙間を全て覆い隠すことができる。尚、弁体6の下降時において、蓋部62(特に蓋部62の最も大径となる部分)は排水凹部1内に配置されるが、
図2に示すように、本発明においては蓋部62の外縁が排水凹部1の上端高さHよりも下方に位置することが好ましい。このように配置することにより、槽体Bの底面上に載置された物体等が蓋部62に引っ掛かってしまうことが無く好適である。
弁蓋下部611は弁蓋61の内、上記蓋部62より下方に形成された部分であって、周囲にパッキン7が嵌着されており、上記蓋部62よりも小径となるよう形成されている。尚、弁蓋下部611は上記弁体6の下降時において、排水栓3の内側に配置されるとともに、パッキン7は排水口34の周縁に当接し、排水口34を閉塞する。
弁軸63は金属製の軸部材であり、目皿64の中心を貫通しているとともに、上端が弁蓋61の裏面に嵌合されている。又、弁軸63の下端は伝達部8端部と接続された昇降部91上に載置されている。
【0017】
伝達部8は樹脂製のチューブ体であるアウターチューブと、アウターチューブ内に配置された金属製の撚り線であるインナーワイヤより成る公知のレリースワイヤである。伝達部8は操作部9に加えられた操作に伴いインナーワイヤがアウターチューブ内を摺動することによって昇降部91を作動させ、昇降部91上に載置されている弁体6を昇降させる構造となっている。
【0018】
操作部9は槽体Bの縁部に取り付けられており、端部にはインナーワイヤが接続されている。従って、操作部9に押し引き操作を加えることによって上記インナーワイヤを進退させ、遠隔的に弁体6を昇降させることが可能となる。
【0019】
上記各部材から成る排水栓装置は以下のように動作する。
【0020】
図2に示すように、弁体6が下降している状態において、弁蓋61の蓋部62は排水凹部1内に配置される。この時、弁蓋下部611は排水栓3内に配置されるとともに、弁蓋下部611の周囲に嵌着されたパッキン7は排水口34の周縁と当接することで排水口34を閉塞しており、槽体Bは内部に水栓からの吐水等を貯留することができる。又、弁蓋61の上端は、排水凹部1の上端高さHと略同一の高さとなっているとともに、蓋部62は排水栓3及び排水栓3と排水筒部2との間を全て覆っている。又、蓋部62の外縁は排水凹部1の上端高さHよりも下方に配置されている。
上記弁体6の下降状態より、操作部9に操作を加えると、昇降部91が駆動することによって弁体6が押し上げられる。この時、
図2において破線で示すように、上記パッキン7が排水口34周縁から離間することによって排水口34が開放され、槽体B内部の吐水等を排出することが可能となる。
【0021】
上記本発明の排水栓装置においては、弁蓋61の蓋部62、特に蓋部62の最も大径となる部分は弁体6の下降時において排水凹部1内に配置されている。従って、蓋部62は排水栓3の鍔部32や排水筒部2よりも大径に形成することが可能であるため、容易に排水栓3の外縁を覆い隠すことが可能となる。又、蓋部62と排水凹部1との間には十分な隙間が形成されているため、弁体6を上昇させた際の排水流量を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明は上記第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の形状変更を加えても良いものである。例えば、第一実施形態において、排水凹部1は平面視略円形であるが、楕円や矩形等種々の形状を成しても良いものである。更に、弁蓋61(特に蓋部62)の形状についても、平面視楕円や矩形等種々の形状を成しても良いものである。本発明では、弁蓋61は弁体6の下降時に排水凹部1内に配置されることから、排水凹部1の内周面に当接しない範囲内において自由に意匠を変更することが可能となる。
又、上記第一実施形態において、排水凹部1の内径は弁体6の弁蓋61の外径よりも大径であったが、
図5に示す第二実施形態の様に、排水凹部1の内径と弁体6の外径が略同径であっても良い。この場合においては、弁体6と排水凹部1の間の隙間が極僅かとなるため、槽体Bと弁体6の間に一体感を生じさせることが可能となり、更に意匠性が向上する。
又、上記第一実施形態において、排水凹部1は段状に形成された円筒状であったが、
図6に示す第三実施形態の様に、排水凹部1を傾斜面より形成された円錐状に形成しても良いものである。尚、この場合においては、排水筒部2を垂設する、又は排水筒部2の内周面を排水凹部1の内周面よりも垂直に近付けることにより、意匠性や排水流量が向上する。
又、
図7に示す第四実施形態の様に、排水凹部1に化粧板200を載置しても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 排水凹部
2 排水筒部
21 フランジ部
3 排水栓
31 筒部
32 鍔部
33 窓部
34 排水口
4 オーバーフローアダプター
5 ナット
6 弁体
61 弁蓋
611 弁蓋下部
62 蓋部
63 弁軸
64 目皿
7 パッキン
8 伝達部
9 操作部
91 昇降部
100 配管
200 化粧板
B 槽体
H 上端高さ
【要約】
【課題】
容易に製造可能であり、意匠性や止水性、及び排水流量を向上させた排水栓装置の提供を課題とする。
【解決手段】
槽体Bの底部に凹設された排水凹部1と、排水凹部1より下方に向けて延設された排水筒部2と、排水筒部2内に配置されて排水口34を形成する排水栓3と、上下動することによって排水口34を開閉する弁体6から成り、上記弁体6は、排水栓3を覆う蓋部61を有するとともに、当該蓋部61は弁体6の下降時において上記排水凹部1内に配置される。従って、蓋部62は排水栓3の鍔部32や排水筒部2よりも大径に形成することが可能であるため、容易に排水栓3の外縁を覆い隠すことが可能となる。
【選択図】
図2