特許第6225313号(P6225313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225313
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】圧着接続端子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-211688(P2016-211688)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-162792(P2017-162792A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-42638(P2016-42638)
(32)【優先日】2016年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517292929
【氏名又は名称】株式会社デルタプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安保 次雄
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−067321(JP,U)
【文献】 特開2009−129627(JP,A)
【文献】 実開昭56−076269(JP,U)
【文献】 実開昭57−027668(JP,U)
【文献】 特開2009−123597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状に立ち上げられた一対の圧着片を有する導体圧着部を備え、1枚の導電金属板から形成され、電線の導体部を前記一対の圧着片によりかしめて固定する圧着接続端子であって、
前記導体圧着部は、前記一対の圧着片による少なくとも下層板と上層板とを重ね合わせた複層構造とされ、前記上層板は打抜長孔を有し、該打抜長孔の上部に凹部が形成され、前記打抜長孔及び前記凹部の縁部であるエッジが2段に形成されていることを特徴とする圧着接続端子。
【請求項2】
前記凹部は前記打抜長孔に跨って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧着接続端子。
【請求項3】
前記凹部の形状は円形とし、複数個の前記凹部が隣接して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧着接続端子。
【請求項4】
前記電線の導体部は多数本の芯線を撚り合わせたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の圧着接続端子。
【請求項5】
前記打抜長孔は前記導体部の芯線を撚った螺旋方向と交叉するように斜め方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の圧着接続端子。
【請求項6】
前記導体圧着部の後方には、U字状に立ち上げられた一対の圧着片により電線の絶縁被覆部をかしめて固定する被覆圧着部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の圧着接続端子。
【請求項7】
前記導体圧着部の前方には、他の接続端子と接続する接続部が設けられていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の圧着接続端子。
【請求項8】
1枚の導電金属板の周囲を打ち抜くことにより、導体圧着部に外方に張り出す一対の辺部を形成し、導体圧着部の底部の上層板となる一方の辺部に打抜長孔を打ち抜く打抜工程と、
前記一方の辺部の裏側から前記打抜長孔に沿って凹部を形成するように打刻する打刻工程と、
前記打抜長孔を形成した前記一方の辺部が前記上層板となるように他方の辺部上に折り返し、前記打抜長孔の上部に形成された前記凹部が前記上層板の表面側に位置するように折り曲げる折曲工程と、
を備えたことを特徴とする圧着接続端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を接続すると共に、例えばコネクタハウジングに内装し、相手側コネクタの接続端子と嵌合する圧着接続端子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電気回路の小型化、集積化に伴い、回路の接続に使用される接続端子もより小型のものが要求され、例えば相手側接続端子への棒状の挿入部は、接続する電線よりも細径で、外径が、0.5mm・0.5mm程度のものも使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した接続端子の小型化に伴うが、接続端子を形成する導電金属板の厚みも薄くなり、電線も細径とされ、電線の導体部を固定する接続端子の導体圧着部におけるかしめ力には限界がある。従って、使用中に接続端子に固定していた導体部が抜け出すというトラブルも発生し易く、また電気的な信頼性の低下も懸念されている。
【0005】
この対策として、特許文献1に例示するように、導体圧着部を2枚重ねの構造とし、更には導体圧着部の内側に溝部や孔部を設けて、導体部の固定を確保することが考えられている。
【0006】
しかし、この場合の導体圧着部の2枚重ね構造は、底部に他の板状部材を重ねたものであり、端子製造工程が煩雑となり、部品点数も増えることになる。また、底部に溝部や孔部を設ける場合においても、単に溝状や孔部を形成するだけでは係止力が十分に得られない。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、導体圧着部において電線の導体部を確実にかしめ止めし、電気的接続の信頼性を確保し得る小型の圧着接続端子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る圧着接続端子は、U字状に立ち上げられた一対の圧着片を有する導体圧着部を備え、1枚の導電金属板から形成され、電線の導体部を前記一対の圧着片によりかしめて固定する圧着接続端子であって、前記導体圧着部は、前記一対の圧着片による少なくとも下層板と上層板とを重ね合わせた複層構造とされ、前記上層板は打抜長孔を有し、該打抜長孔の上部に凹部が形成され、前記打抜長孔及び前記凹部の縁部であるエッジが2段に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る圧着接続端子の製造方法は、1枚の導電金属板の周囲を打ち抜くことにより、導体圧着部に外方に張り出す一対の辺部を形成し、導体圧着部の底部の上層板となる一方の辺部に打抜長孔を打ち抜く打抜工程と、前記一方の辺部の裏側から前記打抜長孔に沿って凹部を形成するように打刻する打刻工程と、前記打抜長孔を形成した前記一方の辺部が前記上層板となるように他方の辺部上に折り返し、前記打抜長孔の上部に形成された前記凹部が前記上層板の表面側に位置するように折り曲げる折曲工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る圧着接続端子及びその製造方法によれば、導体圧着部の圧着片を導電金属板を折り重ねた二層構造とし、更に導体圧着部の上層板には長溝状の打抜長孔を設けると共に、この打抜長孔のエッジに凹部による段差を設けているので、電線の導体部に対するかしめ力を強くすると共に、打抜長孔及び凹部のエッジが導体部に2段に噛み込み、導電性を高めて係止するので電気的な信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の圧着接続端子の斜視図である。
図2】圧着接続端子を製造するために打ち抜いた導電金属板の平面図である。
図3】打抜長孔を裏面から見た拡大平面図である。
図4図3のA−A線に沿った打抜長孔の断面図である。
図5】導体圧着部の断面図である。
図6】電線を固定した状態の圧着接続端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る圧着接続端子の斜視図である。例えば、薄肉の黄銅から成り、両表面に銅、スズメッキ等を施した1枚の導電金属板1を打ち抜き、打刻し、更に折曲して形成されている。圧着接続端子の前方には例えば雄型接続部2、中央には導体圧着部3、後方には被覆圧着部4が設けられている。
【0013】
雄型接続部2においては、導電金属板1を折り返して二層の挿込端構造とされているが、雌型接続部や他の形式の雄型接続部であっても支障はない。
【0014】
導体圧着部3においては、辺部3a、3bが一部において折り返されて下層板3cと上層板3dとして積層構造とされ、重ねられた一対の圧着片3e、3fが両側から斜め上方に向けてU字状に立ち上げられている。
【0015】
そして、辺部3a、3bの端縁同士が、上層板3dの立ち上り部において突き合わされて合わせ目3gとされている。また、上層板3dの底部3hには、圧着接続端子の長手方向に対し、斜め方向に例えば3個の長溝状の打抜長孔3i〜3kが形成されている。打抜長孔3iには更に加工が施されているが、その詳細については後述する。
【0016】
また被覆圧着部4では、一対の圧着片4a、4bが底部4cの両側から、斜め上方に向けてU字状に立ち上げられている。
【0017】
実際の圧着接続端子には、圧着接続端子をコネクタハウジング内での姿勢を安定するためのスタビライザや、圧着接続端子の前後方向への抜け出しを防止するための係止部等が付設されることもあるが、これらの公知の機構の図示は省略している。
【0018】
図2図1に示す圧着接続端子に成型する前の厚さ0.15mmの導電金属板1を打ち抜いた状態の平面図であり、一点鎖線は後述するフォーミングプレスにおいて折り曲げられる内折線である。雄型接続部2においては、二重構造の挿入端とするために、下板となる底部2aの両側に上板となる折返片2b、2cが形成されている。
【0019】
また、導体圧着部3においては、両側に下層板3c、上層板3dとなる辺部3a、3bが長さを違えてそれぞれ外方に張り出されており、一方の長い辺部3aには、例えば3個の長溝状の打抜長孔3i〜3kが斜め方向に向けて打ち抜かれている。この辺部3aに設けた打抜長孔3i〜3kは、折曲工程において、他方の辺部3b上に折り返して重ねられた状態において、上層板3d側の底部3h上に位置するようにされている。そして、例えば打抜長孔3iは長く形成され、両側の打抜長孔3j、3kは斜め方向に配置する都合上、打抜長孔3iよりも短くされている。
【0020】
図3は打抜長孔3i〜3kを裏側から見た拡大平面図、図4図3のA−A線に沿った断面図である。図2に示す打抜長孔を打ち抜いた状態の導電金属板1に対して、打抜長孔3iに沿って辺部3aの裏面側から、例えば3個の並列された円形のポンチPを用いて打刻する。即ち、辺部3aの表面側に金属平板を当てがい、裏面側から円形の3個のポンチPによる打刻を行うと、打抜長孔3iに跨って3個の円形の凹部3lが隣接して形成され、凹部3lの縁部であるエッジ3mが形成される。なお、凹部3lは3個とは限らず、また円形に限定されるものでもなく例えば角形であってもよい。
【0021】
この打刻による鍛造によって、打抜長孔3iの従来の縁部であるエッジ3nは打抜長孔3i内に円弧状にはみ出して、導電金属板1の表面よりも低い位置に、内縁の両側において計6個の円弧状の新たなエッジ3n’が形成される。実際には、エッジ3n’は必ずしも原形が留るわけではないが、エッジ3nの角部はほぼそのままの鋭い形状が維持される。このようにして、打抜長孔3iのエッジ3n’と、打抜長孔3iの上部の凹部3lのエッジ3mとが図4に示すように2段に形成されることになる。
【0022】
なお、他の短い打抜長孔3i、3kのエッジに対しては、特に打刻処理を行わなくとも支障はないが、打抜長孔3iと同様に凹部を設けてもよい。
【0023】
打抜長孔3i等の寸法的な大きさを例示すると、打抜長孔iの長さは1.8mm、幅は0.2mm、円形の凹部3lの径は0.5mm、深さ0.04mm、エッジ3n’の打抜長孔3i内へのはみ出し部の最大部の幅は0.05mmとされている。
【0024】
更に被覆圧着部4では、底部4cの両側に圧着片4a、4bとなる辺部4d、4eが張り出されている。被覆圧着部4の更に後方には、打ち抜いた状態の圧着接続端子同士を連結する送り片5が設けられており、各圧着接続端子の被覆圧着部4が連結片6により送り片5に接続されている。なお、パイロット孔7は成型工程において、圧着接続端子を搬送するために使用される。
【0025】
このように打ち抜かれ、打刻処理された導電金属板1は、例えば必要に応じて面取りや表面処理が行われた後に、送り片5により搬送されながらフォーミングプレスによる各成型工程において順次に折曲され、図1に示す圧着接続端子に成型される。図5はこのときの導体圧着部3の断面図である。導体圧着部3の辺部3a、3bは折り返され下層板3cと上層板3dに成型され、打抜長孔3iの上部に形成された凹部3lは上層板3dの表面側に位置している。
【0026】
図6は電線10を電線圧着装置により、図1に示す圧着接続端子にかしめて固定した状態の斜視図である。電線10の絶縁被覆部10aが剥離され、多数本の芯線を撚り合わせた導体部10bは、導体圧着部3において一対の圧着片3e、3fにより、包み込まれるようにかしめ止められる。このとき、導体圧着部3は導電金属板1を2枚重ねた下層板3cと上層板3dとの積層構造とされているので、導体部10bに対し、強いかしめ力を発揮させて固定することができる。
【0027】
使用される電線10は、例えば径が20μmのアミラド繊維フィラメントから成る芯線に、厚さ1μmの銅メッキを施し、これらの芯線を130本撚り合わせることにより、導体部10bの径が0.3mmとされている。そして、絶縁被覆部10aを含めた電線10の外径は0.7〜0.8mmとされている。
【0028】
このように、導体部10bの芯線は極めて細いので、導体部10bの上層板3dに設けられた打抜長孔3iの近傍に形成された凹部3lのエッジ3mと、打抜長孔3iの押し出されたエッジ3n’の深さが小さくとも、導体部10bに対して2段に噛み込むことになり、打抜長孔3j、3kのエッジによる噛み込みと併せて、導体部10bの引き抜きに対する強い係止力が得られる。更に、凹部3lのエッジ3mは円弧状であるため、エッジに沿った沿面距離が大きくなるので、導体部10bの芯線と噛み込む個所も長くなり、より係止力が増すことになる。
【0029】
同時に、導体部10bの芯線表面に酸化物、硫化物等の絶縁被膜が生成されていても、凹部3lのエッジ3m、打抜長孔3iのエッジ3n’、打抜長孔3j、3kのエッジの噛み込みにより破壊されて、導体圧着部3と導体部10bとの導電性が良好となる。
【0030】
なお、導体部10bは各芯線が螺旋方向に撚られているので、打抜長孔3i〜3kは各芯線と交叉するような斜め方向に形成して、これらのエッジによる噛み込みがより効果的になっている。
【0031】
また、被覆圧着部4においては、電線10の絶縁被覆部10aの外側を一対の圧着片4a、4bによりかしめることにより、電線10を強固に固定し、電線10に作用する引抜力に対抗することができる。
【0032】
なお実施例において、導体圧着部3における辺部2a、2bとの合わせ目3gは、一方の圧着片3fの上層板3d側に設けられており、この位置は下層板3cに設けるよりも上層板3dに設けることが、圧着時に合わせ目3gの間隔が狭まる方向となるので好ましい。
【0033】
また、この合わせ目3gを上層板3dに設け、若干の間隙を設けると、この合わせ目3gのエッジ部分によっても導体部10bに噛み込むことになるので、係止力が更に助長されることにもなる。なお、合わせ目3gは必ずしも長手方向を向くとは限らず、辺部3a、3bの端縁を斜め方向に打ち抜くことにより、合わせ目3gが長手方向から傾くように形成してもよい。
【0034】
なお、電線10を圧着した後の圧着接続端子の各部の例示的寸法は、図6に示すように、導体圧着部3の幅aは1.0mm、高さbは0.75mm、被覆圧着部4の幅cは1.2mm、高さdは1.45mmである。
【0035】
上述の実施例においては、導体圧着部3を二層構造としたが、必要に応じて下層板3cと上層板3dとの間に折り返しにより中層板を設けたり、或いは別体の中層板を配置して、三層構造とし、更にかしめ力を高めてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 導電金属板
2 雄型接続部
3 導体圧着部
3a、3b 辺部
3c 下層板
3d 上層板
3e、3f 圧着片
3g 合わせ目
3h 底部
3i〜3k 打抜長孔
3l 凹部
3m、3n、3n’ エッジ
4 被覆圧着部
10 電線
10a 絶縁被覆部
10b 導体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6