(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1成分は、窒素、酸素、フッ素、塩素のうちいずれかを側鎖に含む芳香族化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の機能層形成用インク。
前記第3成分は、π共役を含む高分子材料またはπ共役を含む低分子材料である有機化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の機能層形成用インク。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0029】
(第1実施形態)
<発光装置>
まず、本実施形態の発光装置について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は発光装置の構成を示す概略平面図、
図2は有機EL素子の構成を示す模式断面図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の発光装置100は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光(発光色)が得られるサブ画素110R,110G,110Bが配置された素子基板101を有している。各サブ画素110R,110G,110Bは略矩形状であり、素子基板101の表示領域Eにおいてマトリックス状に配置されている。以降、サブ画素110R,110G,110Bを総称してサブ画素110と呼ぶこともある。同じ発光色のサブ画素110が図面上において垂直方向(列方向あるいはサブ画素110の長手方向)に配列し、異なる発光色のサブ画素110が図面上において水平方向(行方向あるいはサブ画素110の短手方向)にR,G,Bの順で配列している。すなわち、異なる発光色のサブ画素110R,110G,110Bが所謂ストライプ方式で配置されている。なお、サブ画素110R,110G,110Bの平面形状と配置は、これに限定されるものではない。また、略矩形状とは、正方形、長方形に加えて、角部が丸くなった四角形、対向する2辺部が円弧状となった四角形を含むものである。
【0031】
サブ画素110Rには、赤(R)の発光が得られる発光素子としての有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が設けられている。同じく、サブ画素110Gには、緑(G)の発光が得られる発光素子としての有機EL素子が設けられ、サブ画素110Bには、青(B)の発光が得られる発光素子としての有機EL素子が設けられている。
【0032】
このような発光装置100は、異なる発光色が得られる3つのサブ画素110R,110G,110Bを1つの表示画素単位として、それぞれのサブ画素110R,110G,110Bは電気的に制御される。これによりフルカラー表示が可能となっている。
【0033】
各サブ画素110R,110G,110Bには、
図2に示す発光素子としての有機EL素子130が設けられている。
有機EL素子130は、素子基板101上に設けられた画素電極102と、対向電極103と、画素電極102と対向電極103との間に設けられた、有機薄膜からなる発光層133を含む機能層136とを有している。
【0034】
画素電極102は、陽極として機能するものであり、サブ画素110R,110G,110Bごとに設けられ、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜を用いて形成されている。
【0035】
機能層136は、画素電極102側から、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135が順に積層されたものである。特に、発光層133は発光色に応じて構成材料が選ばれるが、ここでは発光色に関わらず総称して発光層133と呼ぶ。なお、機能層136の構成は、これに限定されるものではなく、これらの層以外に、キャリア(正孔や電子)の移動を制御する中間層などを備えていてもよい。
【0036】
対向電極103は、陰極として機能するものであり、サブ画素110R,110G,110Bに共通した共通電極として設けられ、例えば、Al(アルミニウム)やAg(銀)とMg(マグネシウム)の合金などを用いて形成されている。
【0037】
陽極としての画素電極102側から発光層133にキャリアとしての正孔が注入され、陰極としての対向電極103側から発光層133にキャリアとしての電子が注入される。発光層133において注入された正孔と電子とにより、励起子(エキシトン;正孔と電子とがクーロン力にて互いに束縛された状態)が形成され、励起子(エキシトン)が消滅する際(正孔と電子とが再結合する際)にエネルギーの一部が蛍光や燐光となって放出される。
【0038】
発光装置100において、例えば光反射性を有するように対向電極103を構成すれば、画素電極102が光透過性を有していることから、発光層133からの発光を素子基板101側から取り出すことができる。このような発光方式はボトムエミッション方式と呼ばれている。また、素子基板101と画素電極102との間に反射層を設け、光透過性を有するように対向電極103を構成すれば、発光層133からの発光を対向電極103側から取り出すトップエミッション方式とすることもできる。本実施形態では、発光装置100がボトムエミッション方式であるとして、以降の説明を行う。
【0039】
本実施形態において発光装置100は、サブ画素110R,110G,110Bごとの有機EL素子130における画素電極102の外縁と重なると共に、画素電極102上に開口部104aを構成する本発明における絶縁層としての隔壁104を有している。
本実施形態において有機EL素子130の機能層136は、機能層136を構成する正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133のうち、少なくとも1層が液相プロセスで形成されたものである。液相プロセスとは、それぞれの層を構成する第3成分と溶媒とを含んだ溶液(以降、機能層形成用インクと呼ぶ)を隔壁104で囲まれた膜形成領域としての開口部104aに塗布して乾燥させることにより、それぞれの層を形成する方法である。それぞれの層を所望の膜厚で形成するためには、所定量の機能層形成用インクを精度よく開口部104aに塗布する必要があり、本実施形態では、液相プロセスとしてインクジェット法(液滴吐出法とも呼ばれる)を採用している。
【0040】
<吐出装置>
次に、インクジェット法(液滴吐出法)を具現化した吐出装置について、
図3〜
図5を参照して説明する。
図3は吐出装置の構成を示す概略図、
図4は吐出ヘッドの構成を示す概略斜視図、
図5(a)はインク容器としてのインクカートリッジを示す斜視図、
図5(b)はインクカートリッジの構造を示す断面図である。
【0041】
図3に示すように、本実施形態の吐出装置1は、ワークとしての基板Wが載置される載置台としてのステージ7と、載置された基板Wに機能層形成用インクを液滴として吐出する吐出ヘッド20とを備えている。また、機能層形成用インクが貯留されたインクタンク14から配管13を通じて吐出ヘッド20に機能層形成用インクを供給するインク供給手段を備えている。
【0042】
吐出装置1は、吐出ヘッド20が取り付けられたヘッドホルダー10を副走査方向(X方向)に駆動するためのX方向ガイド軸3と、X方向ガイド軸3を回転させるX軸駆動モーター2とを備えている。また、ステージ7を主走査方向(Y方向)に駆動するためのY方向ガイド軸4と、Y方向ガイド軸4を回転させるY軸駆動モーター5とを備えている。そしてX方向ガイド軸3とY方向ガイド軸4とが上部に配設された基台9を備え、その基台9の下部には、制御部15を備えている。X方向ガイド軸3及びX軸駆動モーター2、Y方向ガイド軸4及びY軸駆動モーター5は、吐出ヘッド20に対してステージ7を対向させて主走査方向(Y方向)及び副走査方向(X方向)に相対的に移動させる移動手段である。
【0043】
さらに、吐出装置1は、吐出ヘッド20をクリーニング(回復処理)するためのクリーニング機構8を備えている。またクリーニング機構8にもY軸駆動モーター6が備えられている。
【0044】
ヘッドホルダー10には、ノズル面28a(
図4参照)がステージ7と対向するように吐出ヘッド20が取り付けられている。吐出ヘッド20は、制御部15から供給される吐出電圧に応じて吐出される機能層形成用インクの液滴の量(以降、吐出量という)を可変できるようになっている。
【0045】
X軸駆動モーター2は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモーターなどであり、制御部15からX方向の駆動パルス信号が供給されると、X方向ガイド軸3を回転させ、X方向ガイド軸3に係合した吐出ヘッド20をX方向に移動させる。
【0046】
同様にY軸駆動モーター5,6は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモーターなどであり、制御部15からY方向の駆動パルス信号が供給されると、Y方向ガイド軸4を回転させ、ステージ7及びクリーニング機構8をY方向に移動させる。
【0047】
クリーニング機構8は、吐出ヘッド20を臨む位置に移動し、吐出ヘッド20のノズル面28a(
図4参照)に密着して不要な機能層形成用インクを吸引するキャッピング、機能層形成用インクなどが付着したノズル面28aを拭き取るワイピング、吐出ヘッド20の全ノズル21から機能層形成用インクの吐出を行う予備吐出あるいは不要となった機能層形成用インクを受けて排出させる回復処理を行う。
【0048】
吐出装置1は、クリーンブース16によって装置全体が覆われている。また、クリーンブース16内には、クリーンブース16の天井部分に設けられたヘッパユニット17から清浄化した空気が送り込まれている。これにより、機能層形成用インクを基板Wの表面に吐出する際に、異物などが基板Wの表面に付着しないようにクリーン度が確保されている。
【0049】
図4に示すように、吐出ヘッド20は、所謂2連のものであり、2連の接続針24を有する機能層形成用インクの導入部23と、導入部23に積層されたヘッド基板25と、ヘッド基板25上に配置され内部に機能層形成用インクのヘッド内流路が形成されたヘッド本体26とを備えている。接続針24は、前述したインクタンク14に配管13を経由して接続され、接続針24を経由して機能層形成用インクがヘッド内流路に供給される。ヘッド基板25には、フレキシブルフラットケーブルを介してヘッド駆動部に接続される2連のコネクター29が設けられている。
【0050】
ヘッド本体26は、ピエゾ素子などのアクチュエーターを備えたキャビティを有する加圧部27と、ノズル面28aに2つのノズル列22,22が相互に平行に形成されたノズルプレート28とを有している。
【0051】
2つのノズル列22,22は、それぞれ複数(180個)のノズル21が略等間隔に並べられており、互いにずれた状態でノズルプレート28に配設されている。本実施形態におけるノズルピッチは、およそ140μmである。よって、ノズル列22に直交する方向から見ると360個のノズル21がおよそ70μmのノズルピッチで配列した状態となっている。
【0052】
吐出ヘッド20は、ヘッド駆動部から電気信号としての駆動波形がアクチュエーターに印加されると加圧部27のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用でキャビティに充填された機能層形成用インクが加圧され、キャビティに連通するノズル21から機能層形成用インクを液滴として吐出することができる。
【0053】
<インク容器>
次に、本実施形態のインク容器について、
図3及び
図5を参照して説明する。
図5(a)はインクカートリッジを示す斜視図、
図5(b)はインクカートリッジの内部構造を示す概略断面図である。
【0054】
図3に示すインクタンク14は、本発明におけるインク容器の一例を示すものであり、インクタンク14内に機能層形成用インクが充填されている。インクタンク14は、吐出ヘッド20よりも高所に配置され、インクタンク14内の機能層形成用インクは自重によって吐出ヘッド20に供給されている。
図3では図示を省略したが、インクタンク14と吐出ヘッド20とを結ぶ配管13に機能層形成用インクの供給を制御するバルブなどを備えている。配管13は、吐出ヘッド20の接続針24に対応して2本用意されている。
【0055】
インク容器は、
図3に示したインクタンク14のように内容量の大きなものであってもよいが、長期間に亘ってインクタンク14中に機能層形成用インクを貯留していることが必ずしも好適とは言えない。長期間に亘って貯留することで、例えば機能層形成用インク中の溶媒が減少して第3成分が析出したり、粘度が変化したりして吐出ヘッド20のノズル21から液滴を安定して吐出できなくなることが考えられる。そこで、実際の使用量にもよるが比較的に新しい機能層形成用インクを供給することを目的として、例えば
図5に示すようなインク容器としてのインクカートリッジ140を採用してもよい。
【0056】
図5(a)に示すように、インクカートリッジ140は、機能層形成用インクが収容される箱型のカートリッジ本体141と、カートリッジ本体141に封着された蓋部143とを有している。カートリッジ本体141の底部にはインク取り出し口142が設けられている。蓋部143には蓋部143により密閉されたカートリッジ本体141の内部に連通する連通口144が設けられている。
【0057】
図5(b)に示すように、カートリッジ本体141の内部には、多孔質部材145が収納され、機能層形成用インクは多孔質部材145に吸収されて、カートリッジ本体141内に充填される。多孔質部材145は、例えば発泡ウレタンなどを用いることができる。
このようなインクカートリッジ140は、機能層形成用インクが充填された後、インク取り出し口142及び連通口144はフィルムなどの封着部材により封着され密閉される。インクカートリッジ140を使用するときに、封着部材が剥がされ、インク取り出し口142に配管13が接続される。連通口144は大気に開放してもよいが、連通口144から不活性ガスが導入される形態としてもよい。
【0058】
本実施形態の吐出装置1では、ヘッドホルダー10に1つの吐出ヘッド20が取り付けられた構成となっているが、これに限定されず、機能層形成用インクの種類に対応して、複数の吐出ヘッド20をヘッドホルダー10に取り付ける構成としてもよい。したがって、インクタンク14あるいはインクカートリッジ140も機能層形成用インクの種類に対応して複数用意される。また、インクタンク14よりも小型なインクカートリッジ140をヘッドホルダー10に取り付けるように構成して、配管13の長さを短くし、吐出ヘッド20とインクカートリッジ140とを同時に移動可能としてもよい。
【0059】
<有機EL素子の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法について、
図6を参照して説明する。
図6(a)〜(d)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
【0060】
本実施形態の有機EL素子の製造方法は、隔壁形成工程(ステップS1)と、表面処理工程(ステップS2)と、機能層形成工程(ステップS3)と、対向電極形成(ステップS4)とを有している。機能層形成工程(ステップS3)が本実施形態の機能層の形成方法を示すものである。
【0061】
ステップS1の隔壁形成工程では、
図6(a)に示すように、画素電極102が形成された素子基板101に、例えば機能層形成用インクに対して撥液性を示す撥液材料を含む感光性樹脂材料を1μm〜2μmの厚みで塗布して乾燥することにより感光性樹脂層を形成する。塗布方法としては、転写法、スリットコート法などが挙げられる。撥液材料としてはフッ素化合物やシロキサン系化合物が挙げられる。感光性樹脂材料としては、ネガ型の多官能アクリル樹脂を挙げることができる。できあがった感光性樹脂層をサブ画素110の形状に対応した露光用マスクを用いて露光・現像して、画素電極102の外縁と重なると共に、画素電極102上に開口部104aを構成する隔壁104を形成する。そして、ステップS2へ進む。
【0062】
ステップS2の表面処理工程では、隔壁104が形成された素子基板101に表面処理を施す。表面処理工程は、次工程で機能層をインクジェット法(液滴吐出法)で形成するに際して、隔壁104で囲まれた開口部104aにおいて、機能層形成材料を含む機能層形成用インクがむらなく濡れ拡がるように、画素電極102の表面の隔壁残渣などの不要物を取り除く目的で行われる。表面処理方法として、本実施形態ではエキシマUV(紫外線)処理を実施した。なお、表面処理はエキシマUV処理に限定されず、画素電極102の表面を清浄化できればよく、例えば溶媒による洗浄・乾燥工程を行ってもよい。また、画素電極102の表面が清浄な状態であれば、表面処理工程を実施しなくてもよい。そして、ステップS3へ進む。
【0063】
ステップS3の機能層形成工程では、まず、
図6(b)に示すように、正孔注入材料を含む機能層形成用インクとしての正孔注入層形成用インク50を開口部104aに塗布する。正孔注入層形成用インク50の塗布方法は、前述した吐出装置1を用いる。正孔注入層形成用インク50は吐出ヘッド20のノズル21から液滴Dとして吐出される。吐出ヘッド20から吐出される液滴Dの吐出量は、pl単位で制御可能であって、所定量を液滴Dの吐出量で除した数の液滴Dが開口部104aに吐出される。吐出された正孔注入層形成用インク50は隔壁104との界面張力により開口部104aにおいて盛り上がるが、溢れてしまうことはない。言い換えれば、開口部104aから溢れ出ない程度の所定量となるように、正孔注入層形成用インク50における正孔注入材料(第3成分)の濃度が予め調整されている。そして、乾燥工程に進む。
【0064】
乾燥工程では、例えば正孔注入層形成用インク50が塗布された素子基板101を減圧下に放置し、正孔注入層形成用インク50から溶媒を蒸発させて乾燥する(減圧乾燥)。その後、大気圧下で加熱処理を施すことにより固化して正孔注入層131を形成する。正孔注入層131は、後述する正孔注入材料の選択や機能層136における他の層との関係で必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ20nm〜40nmの膜厚で形成される。
【0065】
次に、正孔輸送材料を含む機能層形成用インクとしての正孔輸送層形成用インク60を用いて正孔輸送層132を形成する。正孔輸送層132の形成方法も、正孔注入層131と同様に、前述した吐出装置1を用いて行う。すなわち、所定量の正孔輸送層形成用インク60を吐出ヘッド20のノズル21から液滴Dとして開口部104aに吐出する。そして、開口部104aに塗布された正孔輸送層形成用インク60を減圧乾燥する。その後、窒素などの不活性ガス環境下で、加熱処理を施すことにより正孔輸送層132を形成する。正孔輸送層132は、後述する正孔輸送材料の選択や機能層136における他の層との関係で必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ20nmの膜厚で形成される。
【0066】
次に、発光層形成材料を含む機能層形成用インクとしての発光層形成用インク70を用いて発光層133を形成する。発光層133の形成方法も、正孔注入層131と同様に、前述した吐出装置1を用いて行う。すなわち、所定量の発光層形成用インク70を吐出ヘッド20のノズル21から液滴Dとして開口部104aに吐出する。そして、開口部104aに塗布された発光層形成用インク70を減圧乾燥する。その後、窒素などの不活性ガス環境下で、加熱処理を施すことにより発光層133を形成する。発光層133は、後述する発光層形成材料の選択や機能層136における他の層との関係で必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ30nm〜80nmの膜厚で形成される。
【0067】
次に、発光層133を覆って電子輸送層134が形成される。電子輸送層134を構成する電子輸送材料としては、特に限定されないが、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、BALq、1,3,5−トリ(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(OXD−1)、BCP(Bathocuproine)、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、4,4’−ビス(1,1−ビスージフェニルエテニル)ビフェニル(DPVBi)、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)、4,4’−ビス(1,1−ビス(4−メチルフェニル)エテニル)ビフェニル(DTVBi)、2,5−ビス(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール(BBD)などを挙げることができる。
【0068】
また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フェナンソロリン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ヒドロキシキノリン誘導体などを挙げることができる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
電子輸送層134は、上記電子輸送材料の選択や機能層136における他の層との関係で必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ20nm〜40nmの膜厚で形成される。これにより、陰極としての対向電極103から注入された電子を好適に発光層133に輸送することができる。
【0070】
次に、電子輸送層134を覆って電子注入層135を形成する。電子注入層135を構成する電子注入材料としては、特に限定されないが、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を挙げることができる。
【0071】
アルカリ金属化合物としては、例えば、LiF、Li
2CO
3、LiCl、NaF、Na
2CO
3、NaCl、CsF、Cs
2CO
3、CsClなどのアルカリ金属塩が挙げられる。また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、CaF
2、CaCO
3、SrF
2、SrCO
3、BaF
2、BaCO
3などのアルカリ土類金属塩が挙げられる。これらのアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物うちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
電子注入層135の膜厚は、特に限定されないが、0.01nm以上、10nm以下程度であるのが好ましく、0.1nm以上、5nm以下程度であるのがより好ましい。これによって、陰極としての対向電極103から電子輸送層134に電子を効率よく注入できる。
【0073】
次に、電子注入層135を覆って陰極としての対向電極103を形成する。対向電極103の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましく、且つ真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Auまたはこれらを含む合金等が用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0074】
特に、本実施形態のように、発光装置100をボトムエミッション方式とする場合、対向電極103には光透過性が求められない。したがって、例えば、Al、Ag、AlAg、AlNdなどの金属または合金が好ましく用いられる。このような金属または合金を対向電極103の構成材料として用いることにより、対向電極103の電子注入効率及び安定性の向上を図ることができる。
対向電極103の膜厚は、特に限定されないが、50nm以上、1000nm以下程度であるのが好ましく、100nm以上、500nm以下程度であるのがより好ましい。
【0075】
発光装置100をトップエミッション方式とする場合、対向電極103の構成材料としては、MgAg、MgAl、MgAu、AlAgなどの金属または合金を用いるのが好ましい。このような金属または合金を用いることにより、対向電極103の光透過性を維持しつつ、対向電極103の電子注入効率及び安定性の向上を図ることができる。
トップエミッション方式における対向電極103の膜厚は、特に限定されないが、1nm以上、50nm以下程度であるのが好ましく、5nm以上、20nm以下程度であるのがより好ましい。
【0076】
このようにして形成された有機EL素子130は、例えば、外部から水分や酸素などが浸入すると、機能層136における発光機能が阻害され、部分的に発光輝度が低下したり、発光しなくなったりする暗点(ダークスポット)が発生する。また、発光寿命が短くなるおそれがある。そこで、有機EL素子130を水分や酸素などの浸入から保護するために、封止層(図示省略)によって覆うことが好ましい。封止層としては、例えば、水分や酸素などの透過性が低い、酸窒化シリコン(SiON)などの無機絶縁材料を用いることができる。さらには、透明なガラスや不透明なセラミックなどの封止基板を、有機EL素子130が形成された素子基板101に接着剤を介して貼り付けることにより、有機EL素子130を封着してもよい。
【0077】
上記有機EL素子130の製造方法では、機能層136のうち、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133を液相プロセス(インクジェット法)で形成したが、これらの層のうち1つを液相プロセス(インクジェット法)で形成すればよく、他の層は真空蒸着などの気相プロセスを用いて形成してもよい。
【0078】
正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133について、液相プロセスまたは気相プロセスで用いることが可能な構成材料(第3成分)について説明する。
【0079】
[正孔注入材料]
上記正孔注入層131の形成に好適な正孔注入材料としては、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、1,1−ビス[4−(ジ−p−トリル)アミノフェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(1−ナフチル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾル基)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス−(N,N―ビス−(4−メトキシーフェニル)アミノフェニル)ベンゼン(TDAPB)、トリス−(4−カルバゾール−9−イル−フェニル)−アミン(スピローTAD)、DPPD(DTP)、トリス−p−トリルアミン(HTM1)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(HTM2)、1,3,5−トリス(4−ピリジル)−2,4,6−トリアジン(TPT1)、トリフェニルアミン−テトラマー(TPTE)などを挙げることができる。
【0080】
[正孔輸送材料]
上記正孔輸送層132の形成に好適な正孔輸送材料としては、例えば、上述した正孔注入材料を用いることができる。また、上述した正孔注入材料以外では、例えば、TFB;poly(9,9−dioctyl−fluorene−co−N−(4−butylphenyl)−diphenylamine)に代表されるトリフェニルアミン系ポリマーなどのアミン系化合物、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニルビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)を含むポリシラン系などの高分子有機材料を挙げることができる。
【0081】
発光層133は、発光材料であるドーパント(ゲスト材料)と、ホスト材料とを含むものである。ホスト材料は、正孔と電子とを再結合させて励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させる機能を有している。正孔と電子とを再結合させて得られるエネルギーによって導かれる発光は、発光材料によって蛍光と燐光とのうちいずれかとなる。以降、好ましいホスト材料及びドーパント(ゲスト材料)の例を挙げる。
【0082】
[ホスト材料]
赤色、緑色、青色のそれぞれの発光が得られる発光層133に共通するホスト材料としては、CBP(4,4'−bis(9−dicarbazolyl)−2,2'−biphenyl)、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolate)−4−(phenylphenolate)aluminium)、mCP(N,N−dicarbazolyl−3,5−benzene:CBP誘導体)、CDBP(4,4'−bis(9−carbazolyl)−2,2'−dimethyl−biphenyl)、DCB(N,N’−Dicarbazolyl−1,4−dimethene−benzene)、P06(2,7−bis(diphenylphosphine oxide)−9,9−dimethylfluorene)、SimCP(3,5−bis(9−carbazolyl)tetraphenylsilane)、UGH3(W−bis(triphenylsilyl)benzene)、TDAPB(1,3,5−tris[4−(diphenylamino)phenyl]benzenなどが挙げられる。
【0083】
[赤色発光材料(ドーパント)]
赤色発光が得られるドーパント(ゲスト材料)としては、Bt2Ir(acac)(Bis(2−phenylbenxothiozolato−N,C2’)iridium(III)(acetylacetonate))、Btp2Ir(acac)(Bis(2−2'−benzothienyl)−pyridinato−N,C3)Iridium(acetylacetonate)などのイリジウム錯体、PtOEP(2,3,7,8,12,13,17,18−Octaethyl−21H,23H−porphine,platinum(II)などの白金錯体が挙げられ、前述したホスト材料に添加することで赤色の燐光を得ることができる。
液相プロセスに用いられる高分子の赤色発光材料(ドーパント)としては、化学式(1)や(2)などのフルオレン誘導体を挙げることができる。
【0086】
[緑色発光材料(ドーパント)]
緑色発光が得られるドーパント(ゲスト材料)としては、Ir(ppy)3(Fac−tris(2−phenypyridine)iridium)、Ppy2Ir(acac)(Bis(2−phenyl−pyridinato−N,C2)iridium(acetylacetone)などのイリジウム錯体が挙げられ、前述したホスト材料に添加することで緑色の燐光を得ることができる。
液相プロセスに用いられる高分子の緑色発光材料(ドーパント)としては、化学式(3)や(4)などのフェニレンビニレン誘導体を挙げることができる。
【0089】
[青色発光材料(ドーパント)]
青色発光が得られるドーパント(ゲスト材料)としては、FIrpic(Iridium−bis(4,6difluorophenyl−pyridinato−N,C.2.)−picolinate)、Ir(pmb)3(Iridium−tris(1−phenyl−3−methylbenzimidazolin−2−ylidene−C,C(2)')、FIrN4(((Iridium (III)bis(4,6−difluorophenylpyridinato)(5−(pyridin−2−yl)−tetrazolate)、Firtaz((Iridium(III)bis(4,6−difluorophenylpyridinato)(5−(pyridine−2−yl)−1,2,4−triazo−late)などのイリジウム錯体が挙げられる。これらのゲスト材料としてのドーパントを上記ホスト材料に添加することで青色の燐光を得ることができる。
また、特に、青色の発光層133を真空蒸着などの気相プロセスで形成する場合のゲスト材料としては、化学式(5)、(6)、(7)、(8)などのスチリル誘導体を用いることが好ましい。ホスト材料としては、化学式(9)、(10)、(11)などのアントラセン誘導体を用いることが好ましい。
【0097】
また、蛍光が得られる発光材料(ドーパント)としては、Alq3(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ルブレン、ペリレン、9.10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリンが挙げられる。
また、青色の蛍光を得ることができる発光材料(ドーパント)としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス−(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、などのスチリルベンゼン誘導体が挙げられる。
【0098】
<機能層形成用インク>
次に、本実施形態の機能層形成用インクの構成について説明する。本実施形態の有機EL素子130の機能層136のうち、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133のそれぞれを液相プロセス(インクジェット法)で形成する際に好適な機能層形成用インクの基本的な構成は、次の通りである。
機能層形成用インクは、沸点が250℃以上350℃以下の少なくとも1種の芳香族溶媒からなる第1成分と、沸点が200℃以上の少なくとも1種の脂肪族溶媒からなる第2成分と、機能層形成用の第3成分と、を含んでいる。第3成分の溶解性は、第1成分の方が第2成分よりも高く、第2成分の配合割合が30vol%以上70vol%以下であって、第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、第1成分の沸点と第2成分の沸点との差が30℃以上であることが好ましい。
【0099】
第1成分としての沸点が250℃以上350℃以下の芳香族溶媒としては、1,3−Dipropoxybenzenne(沸点251℃)、4−Methoxybenzaldehyde−Dimethyl−Acetal(沸点253℃)、4,4'−Difluorodiphenylmethane(沸点258℃)、Diphenylether(沸点259℃)、1,2−Dimethoxy−4−(1−propenyl)benzene(沸点264℃)、MDPE(2−Phenoxytoluene;沸点265℃)、Diphenylmethane(沸点265℃)、2−Phenylpyridine(沸点268℃)、DMDPE(Dimethyl benzyl ether;沸点270℃)、3−Phenoxytoluene(沸点272℃)、3−Phenylpyridine(沸点272℃)、2−Phenylanisole(沸点274℃)、2−Phenoxytetrahydropuran(沸点275℃)、NPBP(1−Propyl−4−phenyl benzene;沸点280℃)、25DMDPE(2−Phenoxy 1,4−dimethyl benzene;沸点280℃)、Ethyl−2−Naphtyl−Ether(沸点282℃)、225TMDPE(2,2,5−Tri−methy diphenyl ether;沸点290℃)、Dibenzyl−Ether(沸点295℃)、235TMDPE(2,3,5−Tri−methy diphenyl ether;沸点295℃)、N−Methyldiphenylamine(沸点297℃)、4−Isopropylbiphenyl(沸点298℃)、α,α−Dichlorodiphenylmethane(沸点305℃)、4−(3−phenylpropyl)pyridine(沸点322℃)、Benzyl−Benzoate(沸点324℃)、1,1−Bis(3,4−Dimethylphenyl)ethane(沸点333℃)が挙げられる。
特に、第3成分となる、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光層133におけるホスト材料、ドーパント(ゲスト材料)に対する良好な溶解性と、沸点のバリエーションを考慮すると、沸点が270℃以上の3−Phenoxytoluene(沸点272℃)、Dibenzyl−Ether(沸点295℃)、1,1−Bis(3,4−Dimethylphenyl)ethane(沸点333℃)の中から選択することが好ましい。
【0100】
第2成分としての沸点が200℃以上の脂肪族溶媒としては、Diethyleneglycol−buthylmethyl−ether(沸点212℃)、Triprophyleneglycol−dimethyl−ether(沸点215℃)、Triethyleneglycol−dimethyl−ether(沸点216℃)、Diethyleneglycol−monobuthyl−ether(沸点230℃)、Diethyleneglycol−dibuthyl−ether(沸点256℃)、Diethyleneglycol−buthylmethyl−ether(沸点261℃)、Tetraethyleneglycol−dimethyl−ether(沸点275℃)などの脂肪族エーテルが挙げられる。
特に、上記第1成分よりも表面張力が小さく、32mN/m以下の表面張力を実現できることからDiethyleneglycol−buthylmethyl−ether(沸点212℃)、Diethyleneglycol−dibuthyl−ether(沸点256℃)の中から選択することが好ましい。
【0101】
このような芳香族溶媒の第1成分と脂肪族溶媒の第2成分との混合溶媒を用いれば、混合溶媒の沸点が200℃以上となるため、吐出ヘッド20に充填した後においても、通常の作業環境下では、ノズル21において機能層形成用インクが乾燥して第3成分が析出することによるノズル21の目詰まりはほとんど発生しない。つまり、吐出ヘッド20において安定した吐出特性を確保することができる。すなわち、インクジェット法(液滴吐出法)に好適な機能層形成用インクを実現できる。
【0102】
また、有機EL素子130において所望の発光特性を実現するには、成膜上の欠陥(必要な領域に成膜されていない)がなく、ねらいの膜厚に対してムラやばらつきが少ない機能層が求められる。前述したように吐出ヘッド20のノズル21から隔壁104の開口部104aに液滴Dとして吐出された所定量の機能層形成用インクから減圧乾燥などの方法を用いて溶媒成分が除去され、第3成分からなる機能層が形成される。したがって、吐出された機能層形成用インクが開口部104aにおいてムラ無く濡れ拡がることが重要である。本実施形態の機能層形成用インクは、第3成分の溶解性に優れる芳香族溶媒である第1成分と、第1成分よりも表面張力が小さい脂肪族溶媒である第2成分とを含んでいるので、開口部104a内において濡れ拡がり易い。
【0103】
また、減圧乾燥や加熱乾燥などの強制的な乾燥工程に至るまでの間に、自然乾燥で溶媒成分の乾燥が進むと、基板W上における中央部分と外周部分との間で溶媒成分の乾燥ムラが生じ易い。そうすると、基板W上の複数の開口部104aにおいて、強制的な乾燥工程を経て形成された機能層に膜厚ムラが生じたり、膜厚ばらつきが大きくなったりするおそれがある。本実施形態の機能層形成用インクは第1成分と第2成分とを含む混合溶媒の沸点が200℃以上であるため、自然乾燥が進み難く、強制的な乾燥後の機能層の膜厚ムラや膜厚ばらつきを低減できる。
【0104】
以下、具体的な機能層形成用インクの比較例及び実施例を挙げて、その評価結果について説明する。
なお、機能層形成用インクの評価は、60000個の開口部104aを構成する隔壁104を形成した評価用基板を用いて該開口部104aに機能層形成用インクを吐出して有機EL素子130を60000個形成し、濡れ拡がり欠陥、機能層の膜厚のムラ、暗点(ダークスポット)や輝点などの発光不良、この3つの評価特性により評価した。
濡れ拡がり欠陥は、該開口部104aに吐出したときの機能層形成用インクの濡れ拡がりに起因する塗布ムラの欠陥の他に、機能層形成用インクの乾燥過程における溶媒成分の乾燥ムラに起因する第3成分の凝集や析出などの欠陥も含んでいる。
上記3つの評価特性のうち、濡れ拡がり欠陥と発光不良はそれぞれの発生率が1%未満である場合を「◎」、1%以上5%未満である場合を「○」、5%以上10%未満である場合を「△」、10%以上である場合を「×」とした。
機能層の膜厚のムラは、該開口部104aの中央部における膜厚が平均膜厚±1%以内を「◎」、平均膜厚±2.5%以内を「○」、平均膜厚±5%以内を「△」、平均膜厚±5%を越えた場合を「×」とした。
【0105】
<正孔注入層形成用インク>
図7は正孔注入層形成用インクの比較例1−1〜比較例1−25の構成と評価結果を示す表。
図8は正孔注入層形成用インクの比較例1−26〜比較例1−50の構成と評価結果を示す表。
図9は正孔注入層形成用インクの比較例1−51〜比較例1−75の構成と評価結果を示す表。
図10は正孔注入層形成用インクの比較例1−76〜比較例1−100の構成と評価結果を示す表。
図11は正孔注入層形成用インクの実施例1−1〜実施例1−25の構成と評価結果を示す表。
図12は正孔注入層形成用インクの比較例1−101〜比較例1−116と実施例1−26〜実施例1−34の構成と評価結果を示す表。
図13は正孔注入層形成用インクの比較例1−117〜比較例1−137と実施例1−35〜実施例1−38の構成と評価結果を示す表。
図14は正孔注入層形成用インクの実施例1−39〜実施例1−63の構成と評価結果を示す表。
図15は正孔注入層形成用インクの比較例1−138〜比較例1−153と実施例1−64〜実施例1−72の構成と評価結果を示す表。
図16は正孔注入層形成用インクの比較例1−154〜比較例1−174と実施例1−73〜実施例1−76の構成と評価結果を示す表。
図17は正孔注入層形成用インクの実施例1−77〜実施例1−101の構成と評価結果を示す表。
図18は正孔注入層形成用インクの比較例1−175〜比較例1−190と実施例1−102〜実施例1−110の構成と評価結果を示す表。
図19は正孔注入層形成用インクの比較例1−191〜比較例1−211と実施例1−111〜実施例1−114の構成と評価結果を示す表。
図20は正孔注入層形成用インクの比較例1−212〜比較例1−236の構成と評価結果を示す表。
図21は正孔注入層形成用インクの比較例1−237〜比較例1−261の構成と評価結果を示す表。
図22は正孔注入層形成用インクの比較例1−262〜比較例1−286の構成と評価結果を示す表である。なお、
図7〜
図22の表において、例示した第1成分である25種の芳香族溶媒は、表の上から下にゆくにつれて沸点が高くなるように記載されている。
【0106】
比較例1−1〜比較例1−286、実施例1−1〜実施例1−114の各正孔注入層形成用インクを用いて正孔注入層131を形成した。その後、蒸着法により、正孔輸送層132、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135を形成した。各層の材料構成は、次の通りである。正孔輸送層132はα−NPD、発光層133はホスト材料がCBP、ドーパントがIr(ppy)3、電子輸送層134はBAlq、電子注入層135はLiFである。
【0107】
(比較例1−1)〜(比較例1−25)
図7に示すように、比較例1−1〜比較例1−25の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれに、正孔注入材料(第3成分)として4,4',4"−Tris(N−3−methylphenyl−N−phenylamino)−triphnylamine[m−MTDATA]を0.3wt%含有させたものである。m−MTDATAは、π共役を含む低分子の有機化合物である。第2成分である脂肪族溶媒は含有していない。つまり、第1成分及び第2成分の混合溶媒に占める各成分の体積割合は、第1成分が100vol%、第2成分が0vol%である。第1成分は第3成分としての上記正孔注入材料を0.1wt%以上溶解可能な良溶媒である。
【0108】
比較例1−1〜比較例1−25の正孔注入層形成用インクは、開口部104aのITOからなる画素電極102に対して濡れ拡がり性が悪く、第1成分の乾燥過程で第3成分である正孔注入材料が凝集して画素電極102が部分的に露出した状態が見られた。濡れ拡がり欠陥はいずれも「×」である。また、正孔注入層131の膜厚ムラの程度も「△」で芳しくなく、発光不良が多発したのでその評価も「×」である。
【0109】
(比較例1−26)〜(比較例1−50)
図8に示すように、比較例1−26〜比較例1−50の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpは最小で39℃〜最大で121℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0110】
第2成分として沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherを20vol%含んだ状態では、比較例1−1〜比較例1−25と同様に、第3成分である正孔注入材料が凝集して画素電極102が部分的に露出した状態が見られた。濡れ拡がり欠陥はいずれも「×」である。また、正孔注入層131の膜厚ムラの程度も「△」、発光不良の評価も「×」である。
【0111】
(比較例1−51)〜(比較例1−75)
図9に示すように、比較例1−51〜比較例1−75の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−5℃〜77℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0112】
第2成分として沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherを20vol%含んだ状態では、比較例1−1〜比較例1−25と同様に、第3成分である正孔注入材料が凝集して画素電極102が部分的に露出した状態が見られた。濡れ拡がり欠陥はいずれも「×」である。また、正孔注入層131の膜厚ムラの程度も「△」、発光不良の評価も「×」である。
【0113】
(比較例1−76)〜(比較例1−100)
図10に示すように、比較例1−76〜比較例1−100の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜58℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0114】
第2成分として沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherを20vol%含んだ状態では、比較例1−1〜比較例1−25と同様に、第3成分である正孔注入材料が凝集して画素電極102が部分的に露出した状態が見られた。濡れ拡がり欠陥はいずれも「×」である。また、正孔注入層131の膜厚ムラの程度も「△」、発光不良の評価も「×」である。
【0115】
(実施例1−1)〜(実施例1−25)
図11に示すように、実施例1−1〜実施例1−25の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。つまり、実施例1−1〜実施例1−25は、比較例1−26〜比較例1−50に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0116】
実施例1−1〜実施例1−25の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含んだことにより、開口部104aに対する濡れ拡がり性が比較例1−26〜比較例1−50よりも改善されている。また、第1成分よりも沸点が低い第2成分を30vol%含んだことにより、比較例1−26〜比較例1−50に比べて溶媒の減圧乾燥で正孔注入層形成用インクが開口部104aに濡れ拡がった状態を維持しながら乾燥が進み、正孔注入層131の膜厚ムラも小さくなっている。したがって、濡れ拡がり欠陥や膜厚ムラに起因する暗点や輝点などの発光不良の発生が抑えられている。第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが39℃〜86℃の実施例1−1〜実施例1−21では、3つの評価項目がいずれも「○」である。沸点の差Δbpが98℃〜121℃の実施例1−22〜実施例1−25では、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「△」である。これは、第1成分の沸点が300℃を越えることで、第1成分の芳香族溶媒を均一に蒸発させることが難しくなっているものと考えられるが、乾燥条件の見直し(例えば、減圧乾燥における減圧レベルなど)により改善可能と思われる。
【0117】
(比較例1−101)〜(比較例1−116)
図12に示すように、比較例1−101〜比較例1−116の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒うち沸点が低い方から16種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−5℃〜26℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0118】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例1−101〜比較例1−116の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られた。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の程度は、沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されてはいるが、その評価は「×」〜「△」である。
【0119】
(実施例1−26)〜(実施例1−34)
図12に示すように、実施例1−26〜実施例1−34の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒うち沸点が高い方から9種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。つまり、実施例1−26〜実施例1−34は、比較例1−67〜比較例1−75に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0120】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが34℃〜77℃の実施例1−26〜実施例1−34の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含有することにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が、比較例1−67〜比較例1−75及び比較例1−101〜比較例1−116よりも改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価はいずれも「○」である。膜厚ムラの評価は、実施例1−26〜実施例1−29が「◎」、実施例1−30が「○」であり、第1成分の沸点が300℃を越える実施例1−31〜実施例1−34がやはり「△」である。発光不良の評価は、実施例1−26〜実施例1−30が「○」であり、第1成分の沸点が300℃を越える実施例1−31〜実施例1−34がやはり「△」である。膜厚ムラ及び発光不良の評価が「△」であることは前述したように減圧乾燥条件を見直すことにより改善可能である。
【0121】
(比較例1−117)〜(比較例1−137)
図13に示すように、比較例1−117〜比較例1−137の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒うち沸点が低い方から21種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜23℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0122】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが−24℃〜23℃の比較例1−117〜比較例1−137の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られた。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の程度は、沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されてはいるが、その評価は「×」〜「△」である。
【0123】
(実施例1−35)〜(実施例1−38)
図13に示すように、実施例1−35〜実施例1−38の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒うち沸点が高い方から4種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。つまり、実施例1−35〜実施例1−38は、比較例1−97〜比較例1−100に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0124】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが30℃〜58℃の実施例1−35〜実施例1−38の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含有することにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が比較例1−97〜比較例1−100及び比較例1−117〜比較例1−137よりも改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価はいずれも「○」である。膜厚ムラ及び発光不良の評価は、前述したように第1成分の沸点が300℃を超えることで混合溶媒の乾燥を均一に行うことが難しくなり「△」であるが、減圧乾燥条件の見直しにより改善可能である。
【0125】
(実施例1−39)〜(実施例1−63)
図14に示すように、実施例1−39〜実施例1−63の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを体積割合で50vol%ずつ配向して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。つまり、比較例1−26〜比較例1−50に対して第2成分の体積割合を30vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例1−1〜実施例1−25よりも第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0126】
実施例1−39〜実施例1−63の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含んだことにより、開口部104aに対する濡れ拡がり性が比較例1−26〜比較例1−50よりも改善されている。また、第1成分よりも沸点が低い第2成分を50vol%含んだことにより、比較例1−26〜比較例1−50に比べて減圧乾燥において正孔注入層形成用インクが開口部104aに濡れ拡がった状態を維持しながら乾燥が進み、正孔注入層131の膜厚ムラも小さくなっている。また、実施例1−22〜実施例1−25に比べて、第1成分の沸点が300℃を越えても膜厚ムラが生じ難かった。したがって、濡れ拡がり欠陥や膜厚ムラに起因する暗点や輝点などの発光不良の発生が抑えられている。ゆえに、3つの評価特性はいずれも「○」である。
【0127】
(比較例1−138)〜(比較例1−153)
図15に示すように、比較例1−138〜比較例1−153の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒のうち沸点が低い方から16種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを50vol%ずつ配合して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。
【0128】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例1−138〜比較例1−153の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られた。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の程度は、沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されてはいるが、その評価は「×」〜「△」である。
【0129】
(実施例1−64)〜(実施例1−72)
図15に示すように、実施例1−64〜実施例1−72の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒のうち沸点が高い方から9種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを50vol%ずつ配合して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。つまり、比較例1−67〜比較例1−75に対して第2成分を体積割合で30vol%増やしたものである。
【0130】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが34℃〜77℃の実施例1−64〜実施例1−72の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含有することにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が比較例1−67〜比較例1−75及び比較例1−138〜比較例1−153よりも改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価はいずれも「○」である。膜厚ムラの評価は、実施例1−64〜実施例1−67が「◎」、実施例1−68及び実施例1−69が「○」、実施例1−70〜実施例1−72が「△」である。発光不良の評価は、いずれも「○」である。
【0131】
(比較例1−154)〜(比較例1−174)
図16に示すように、比較例1−154〜比較例1−174の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒のうち沸点が低い方から21種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを50vol%ずつ配向して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜23℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0132】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが−24℃〜23℃の比較例1−154〜比較例1−174の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られた。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の程度は、沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されてはいるが、その評価は「×」〜「△」である。
【0133】
(実施例1−73)〜(実施例1−76)
図16に示すように、実施例1−73〜実施例1−76の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒のうち沸点が高い方から4種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを50vol%ずつ配向して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。つまり、比較例1−97〜比較例1−100に対して第2成分の体積割合を30vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例1−35〜実施例1−38に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0134】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃〜58℃の実施例1−73〜実施例1−76の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含有することにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が比較例1−97〜比較例1−100及び比較例1−154〜比較例1−174よりも改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価はいずれも「○」である。膜厚ムラ及び発光不良の評価は、前述したように第1成分の沸点が300℃を超えることで混合溶媒の乾燥を均一に行うことが難しくなり「△」である。3つの評価項目における評価は実施例1−35〜実施例1−38と同等である。
【0135】
(実施例1−77)〜(実施例1−101)
図17に示すように、実施例1−77〜実施例1−101の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、実施例1−39〜実施例1−63に対して第2成分の体積割合をさらに20vol%増やしたものである。
【0136】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが39℃〜121℃の、実施例1−77〜実施例1−101の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%としても、開口部104aにおける濡れ拡がり性は、実施例1−39〜実施例1−63と同様であって、濡れ拡がり欠陥の評価はいずれも「○」である。膜厚ムラ及び発光不良の評価は、実施例1−77〜実施例1−97では「○」である。第1成分の沸点が300℃を超える実施例1−98〜実施例101では、減圧乾燥において第2成分が蒸発した後の乾燥を均一に行うことが難しくなり膜厚ムラ及び発光不良の評価が「△」であるが減圧乾燥条件を見直すことにより改善可能である。
【0137】
(比較例1−175)〜(比較例1−190)
図18に示すように、比較例1−175〜比較例1−190の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒のうち沸点が低い方から16種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配合して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点より必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−5℃〜26℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0138】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例1−176〜比較例1−190の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られた。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の程度は、沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されてはいるが、その評価は「×」〜「△」である。
【0139】
(実施例1−102)〜(実施例1−110)
図18に示すように、実施例1−102〜実施例1−110の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒のうち沸点が高い方から9種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配合して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、比較例1−67〜比較例1−75よりも第2成分の体積割合を50vol%増やしたものである。実施例1−64〜実施例1−72よりも第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0140】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが34℃〜77℃の実施例1−102〜実施例1−110の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含有することにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が比較例1−67〜比較例1−75及び比較例1−176〜比較例1−190よりも改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価はいずれも「○」である。膜厚ムラの評価は、実施例1−102〜実施例1−105が「◎」、実施例1−106が「○」であり、第1成分の沸点が300℃を越える実施例1−107〜実施例1−110がやはり「△」である。発光不良の評価は、実施例1−102〜実施例1−106が「○」であり、第1成分の沸点が300℃を越える実施例1−107〜実施例1−110がやはり「△」である。膜厚ムラ及び発光不良が「△」の評価であることは前述したように減圧乾燥条件の見直しにより改善可能である。
【0141】
(比較例1−191)〜(比較例1−211)
図19に示すように、比較例1−191〜比較例1−211の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒うち沸点が低い方から21種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜23℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0142】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが−24℃〜23℃の比較例1−191〜比較例1−211の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られた。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の程度は、沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されてはいるが、その評価は「×」〜「△」である。
【0143】
(実施例1−111)〜(実施例1−114)
図19に示すように、実施例1−111〜実施例1−114の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒うち沸点が高い方から4種の第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、比較例1−97〜比較例1−100に対して第2成分の体積割合を50vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例1−73〜実施例1−76よりも第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0144】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが30℃〜58℃の実施例1−111〜実施例1−114の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含むことにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が比較例1−191〜比較例1−211よりも改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価は、実施例1−73〜実施例1−76と同等でいずれも「○」である。膜厚ムラ及び発光不良の評価は、第1成分の沸点が300℃を超えることで混合溶媒の乾燥を均一に行うことが難しくなり「△」であるが減圧乾燥条件を見直すことで改善可能である。
【0145】
(比較例1−212)〜(比較例1−236)
図20に示すように、比較例1−212〜比較例1−236の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔注入材料としてm−MTDATAを0.3wt%含んだものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpは39℃〜121℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0146】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが39℃〜121℃の比較例1−212〜比較例1−236の正孔注入層形成用インクでは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を80vol%含有することで、濡れ拡がり欠陥の評価は「○」である。しかしながら、減圧乾燥において第1成分より沸点が低い第2成分の方が先に蒸発し、残った第1成分の量が実施例1−77〜実施例1−101よりも少なくなることから、第3成分の凝集や析出が生じて膜厚ムラとなった。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価は「×」となった。
【0147】
(比較例1−237)〜(比較例1−261)
図21に示すように、比較例1−237〜比較例1−261の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−5℃〜77℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0148】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例1−237〜比較例1−252の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を80vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られ、その評価は沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されるものの「×」〜「△」である。第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが34℃以上の比較例1−253〜比較例1−261の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を80vol%含有することで、濡れ拡がり欠陥が生じ難くなりその評価は「○」である。しかしながら、比較例1−237〜比較例1−261では、減圧乾燥で第2成分が蒸発した後に残る第1成分の量が減少することに伴う第3成分の凝集や析出が生じて、膜厚ムラ及び発光不良の評価は「×」である。
【0149】
(比較例1−262)〜(比較例1−286)
図22に示すように、比較例1−262〜比較例1−286の正孔注入層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分として7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、正孔注入材料(第3成分)としてm−MTDATAを0.3wt%含有させたものである。第1成分及び第2成分の混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜58℃となっている。第2成分は第1成分よりも第3成分の溶解性が低い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0150】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが−24℃〜23℃の比較例1−262〜比較例1−282の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を80vol%含有しても、濡れ拡がり欠陥が見られ、その評価は沸点の差Δbpが大きくなるほど改善されるものの「×」〜「△」である。第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが30℃以上の比較例1−283〜比較例1−286の正孔注入層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を80vol%含有することで、濡れ拡がり欠陥が生じ難くなりその評価は「○」である。しかしながら、比較例1−262〜比較例1−286では、減圧乾燥で第2成分が蒸発した後に残る第1成分の量が減少することに伴う第3成分の凝集や析出が生じて、膜厚ムラ及び発光不良の評価は「×」である。
【0151】
上記比較例及び実施例の正孔注入層形成用インクについて評価結果をまとめると次の通りである。
正孔注入層形成用インクは、隔壁104の開口部104aにおいて、ITOからなる画素電極102上に塗布されるため、脂肪族溶媒である第2成分を含まない比較例1−1〜比較例1−25は濡れ拡がり性が悪く、所望の膜厚の正孔注入層131が得られない。また、第2成分の体積割合が20vol%の比較例1−26〜比較例1−100においてもやはり画素電極102上の濡れ拡がり性が悪く同様な評価結果となっている。また、第2成分の体積割合が80vol%の比較例1−212〜比較例1−286では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃以上の場合には濡れ拡がり性がよいが、沸点の差Δbpが30℃未満や第1成分に比べて第2成分の沸点が高くなると、明らかに濡れ拡がり性が低下する。比較例1−212〜比較例1−286では、いずれもねらいの膜厚を有する正孔注入層131を形成できなかった。
【0152】
これに対して、実施例1−1〜実施例1−114では、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpが30℃以上となるように25種の芳香族溶媒の中から第1成分が選択され、3種の脂肪族溶媒の中から第2成分が選択されている。また、第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第2成分の体積割合が30vol%以上、70vol%以下となっている。このような正孔注入層形成用インクの混合溶媒の構成とすることにより、第3成分として低分子の正孔注入材料を用いても、画素電極102上における濡れ拡がり性を確保しつつ、減圧乾燥において第3成分としての低分子材料であるm−MTDATAの凝集や析出を低減して膜厚ムラが少ない正孔注入層131を形成可能である。
【0153】
実施例1−1〜実施例1−114の中でも、芳香族溶媒である、225TMDPE(2,2,5−Tri−methy diphenyl ether;沸点290℃)、Dibenzyl−Ether(沸点295℃)、235TMDPE(2,3,5−Tri−methy diphenyl ether;沸点295℃)、N−Methyldiphenylamine(沸点297℃)の中から第1成分を選択し、沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherを第2成分として選択して、第2成分の体積割合を30vol%〜50vol%とした実施例1−26〜実施例1−29、実施例1−64〜実施例1−67がより均一な正孔注入層131を形成可能である点で好ましい。
【0154】
比較例1−101〜比較例1−211は、実施例1−1〜実施例1−114と同様に、混合溶媒における第2成分の体積割合を30vol%〜70vol%の範囲としているが、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃未満の場合や第1成分に比べて第2成分の沸点が高くなると、実施例1−1〜実施例1−114に比べて明らかに濡れ拡がり性が低下して膜厚ムラが発生した。
【0155】
<正孔輸送層形成用インク>
図23は正孔輸送層形成用インクの比較例2−1〜比較例2−25の構成と評価結果を示す表。
図24は正孔輸送層形成用インクの比較例2−26〜比較例2−50の構成と評価結果を示す表。
図25は正孔輸送層形成用インクの比較例2−51〜比較例2−75の構成と評価結果を示す表。
図26は正孔輸送層形成用インクの比較例2−76〜比較例2−100の構成と評価結果を示す表。
図27は正孔輸送層形成用インクの実施例2−1〜実施例2−25の構成と評価結果を示す表。
図28は正孔輸送層形成用インクの比較例2−101〜比較例2−116と実施例2−26〜実施例2−34の構成と評価結果を示す表。
図29は正孔輸送層形成用インクの比較例2−117〜比較例2−137と実施例2−35〜実施例2−38の構成と評価結果を示す表。
図30は正孔輸送層形成用インクの実施例2−39〜実施例2−63の構成と評価結果を示す表。
図31は正孔輸送層形成用インクの比較例2−138〜比較例2−153と実施例2−64〜実施例2−72の構成と評価結果を示す表。
図32は正孔輸送層形成用インクの比較例2−154〜比較例2−174と実施例2−73〜実施例2−76の構成と評価結果を示す表。
図33は正孔輸送層形成用インクの実施例2−77〜実施例2−101の構成と評価結果を示す表。
図34は正孔輸送層形成用インクの比較例2−175〜比較例2−190と実施例2−102〜実施例2−110の構成と評価結果を示す表。
図35は正孔輸送層形成用インクの比較例2−191〜比較例2−211と実施例2−111〜実施例2−114の構成と評価結果を示す表。
図36は正孔輸送層形成用インクの比較例2−212〜比較例2−236の構成と評価結果を示す表。
図37は正孔輸送層形成用インクの比較例2−237〜比較例2−261の構成と評価結果を示す表。
図38は正孔輸送層形成用インクの比較例2−262〜比較例2−286の構成と評価結果を示す表である。なお、
図23〜
図37の表において、第1成分である25種の芳香族溶媒は、表の上から下にゆくにつれて沸点が高くなるように記載されている。
【0156】
比較例2−1〜比較例2−286、実施例2−1〜実施例2−114の正孔輸送層形成用インクは、前述した正孔注入層形成用インクと同様に、25種の芳香族溶媒の中から第1成分を選択し、3種の脂肪族溶媒の中から第2成分を選択して、それぞれの成分の体積割合を変えて正孔輸送層132をインクジェット法により形成している。具体的には、まず、液相プロセス(インクジェット法)により正孔注入層131を形成した。その後、比較例2−1〜比較例2−286、実施例2−1〜実施例2−114の各正孔輸送層形成用インクを用いて正孔輸送層132を形成した。そして、蒸着法により、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135を形成した。各層の材料構成は、次の通りである。正孔注入層131はPEDOT/PSS;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)、正孔輸送層132はTFB、発光層133はホスト材料がCBP、ドーパントがIr(ppy)3、電子輸送層134はBAlq、電子注入層135はLiFである。
【0157】
比較例2−1〜比較例2−286、実施例2−1〜実施例2−114の正孔輸送層形成用インクの評価方法は、前述した正孔注入層形成用インクの場合と同一で、濡れ拡がり欠陥、膜厚のムラ、発光不良の3つの評価項目に基づいて評価している。ただし、正孔輸送層形成用インクが塗布される正孔注入層131の膜厚ムラに起因する欠陥を除いて評価を行っている。発光不良についても同様である。
【0158】
(比較例2−1)〜(比較例2−25)
図23に示すように、比較例2−1〜比較例2−25の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれに、正孔輸送材料(第3成分)としてpoly(9,9−dioctyl−fluorene−co−N−(4−butylphenyl)−diphenylamine)[TFB]を0.5wt%含有させたものである。TFBは、π共役を含む高分子の有機化合物である。第2成分である脂肪族溶媒は含有していない。第1成分は、第3成分としての上記正孔輸送材料を0.1wt%以上溶解可能な良溶媒である。
【0159】
比較例2−1〜比較例2−25の正孔輸送層形成用インクは、表面張力が小さい第2成分を含んでいないため、正孔注入層131が形成された開口部104aに対する濡れ拡がり性が芳しくない。一方で、第3成分として高分子の正孔輸送材料であるTFBを含んでいるため、低分子の正孔輸送材料を用いる場合に比べて、減圧乾燥における第3成分の凝集や析出は起き難い。したがって、濡れ拡がり欠陥、機能層の膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性はいずれも「△」である。
【0160】
(比較例2−26)〜(比較例2−50)
図24に示すように、比較例2−26〜比較例2−50の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpは39℃〜121℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0161】
(比較例2−51)〜(比較例2−75)
図25に示すように、比較例2−51〜比較例2−75の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−5℃〜77℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0162】
(比較例2−76)〜(比較例2−100)
図26に示すように、比較例2−76〜比較例2−100の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜58℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0163】
比較例2−26から比較例2−100の正孔輸送層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を20vol%含んでいるが、第2成分を含まない比較例1−1〜比較例1−25と同様に、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくない。濡れ拡がり欠陥、機能層の膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性はいずれも「△」である。
【0164】
(実施例2−1)〜(実施例2−25)
図27に示すように、実施例2−1〜実施例2−25の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。つまり、実施例2−1〜実施例2−25は、比較例2−26〜比較例2−50に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0165】
第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが39℃〜121℃の実施例2−1〜実施例2−25の正孔輸送層形成用インクは、第2成分を30vol%含むことにより、比較例2−26〜比較例2−50よりも開口部104aにおける濡れ拡がり性が改善されている。濡れ拡がり欠陥の評価は「○」〜「◎」、膜厚ムラの評価はいずれも「○」、発光不良の評価は「○」〜「◎」である。特に、第3成分が高分子のTFBを用いたことにより、低分子の正孔輸送材料を用いる場合に比べて、濡れ拡がり欠陥や膜厚ムラに関する評価特性は改善される。
【0166】
(比較例2−101)〜(比較例2−116)と(実施例2−26)〜(実施例2−34)
図28に示すように、比較例2−101〜比較例2−116、実施例2−26〜実施例2−34の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。つまり、比較例2−101〜比較例2−116は、比較例2−51〜比較例2−66に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。実施例2−26〜実施例2−34は、比較例2−67〜比較例2−75に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0167】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例2−101〜比較例2−116の正孔輸送層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含んでいるものの、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくなく、比較例2−51〜比較例2−66と同様に、3つの評価項目はいずれも「△」である。
これに対して、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが34℃〜77℃の実施例2−26〜実施例2−34の正孔輸送層形成用インクは、第2成分を30vol%含むことにより、比較例2−67〜比較例2−75及び比較例2−101〜比較例2−116よりも開口部104aにおける濡れ拡がり性が改善されている。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラの評価はいずれも「◎」、発光不良の評価は「○」〜「◎」である。
【0168】
(比較例2−117)〜(比較例2−137)と(実施例2−35)〜(実施例2−38)
図29に示すように、比較例2−117〜比較例2−137、実施例2−35〜実施例2−38の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。つまり、比較例2−117〜比較例2−137は、比較例2−76〜比較例2−96に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。実施例2−35〜実施例2−38は、比較例2−97〜比較例2−100に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0169】
第1成分と第2成分との沸点の差Δbpが−24℃〜23℃の比較例2−117〜比較例2−137の正孔輸送層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含んでいるものの、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくない。特に、第1成分の沸点が第2成分よりも低い比較例2−117〜比較例2−125では、表面張力が小さい第2成分を含む効果がほとんど発揮されておらず、3つの評価項目がいずれも「×」である。開口部104aにおける濡れ拡がり性は、沸点の差Δbpが大きくなるに連れて改善の傾向が見られるものの、比較例2−126〜比較例2−137では3つの評価項目がいずれも「△」である。
これに対して、第1成分の沸点が第2成分の沸点より高く、沸点の差Δbpが30℃〜58℃の実施例2−35〜実施例2−38の正孔輸送層形成用インクは、第2成分を30vol%含むことにより、比較例2−97〜比較例2−100よりも正孔注入層131に対する濡れ拡がり性が改善されている。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価は「○」〜「◎」である。
【0170】
(実施例2−39)〜(実施例2−63)
図30に示すように、実施例2−39〜実施例2−63の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを体積割合で50vol%ずつ配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。つまり、実施例2−39〜実施例2−63は、比較例2−26〜比較例2−50に対して第2成分の体積割合を30vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例2−1〜実施例2−25に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0171】
第1成分の沸点が第2成分の沸点より高く、沸点の差Δbpが39℃〜121℃の実施例2−39〜実施例2−63の正孔輸送層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含んだことにより、比較例2−26〜比較例2−50よりも開口部104aにおける濡れ拡がり性が改善されている。また、第1成分よりも沸点が低い第2成分を50vol%含んだことにより、比較例2−26〜比較例2−50に比べて、正孔輸送層形成用インクが開口部104aに濡れ拡がった状態を維持しながら乾燥が進み、正孔輸送層132の膜厚ムラも小さくなっている。したがって、濡れ拡がり欠陥や膜厚ムラに起因する暗点や輝点などの発光不良の発生が抑えられている。ゆえに、濡れ拡がり欠陥の評価は「○」〜「◎」、膜厚ムラの評価は「○」、発光不良は「○」〜「◎」となっている。
【0172】
(比較例2−138)〜(比較例2−153)と(実施例2−64)〜(実施例2−72)
図31に示すように、比較例2−138〜比較例2−153と実施例2−64〜実施例2−72の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを体積割合で50%ずつ配合して、第3成分としての正孔輸送材料として高分子のTFBを0.3wt%含んだものである。比較例2−138と比較例2−139では、第1成分の沸点よりも第2成分の沸点の方が高くなり、その沸点の差Δbpは−5℃、−3℃となっている。これに対して、比較例2−140〜比較例2−153及び実施例2−64〜実施例2−72では、第1成分の沸点は第2成分の沸点より高く、その沸点の差Δbpは2℃〜77℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0173】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃未満の比較例2−138〜比較例2−153では、やはり第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善効果が十分発揮されていない。比較例2−138〜比較例2−153の濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性は、いずれも「△」である。
【0174】
これに対して、実施例2−64〜実施例2−72では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが34℃以上あり、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善傾向が顕著に現れている。濡れ拡がり欠陥と膜厚ムラの評価はいずれも「◎」である。発光不良の評価は沸点の差Δbpの値が大きくなるに連れて「○」〜「◎」となっている。
【0175】
(比較例2−154)〜(比較例2−174)と(実施例2−73)〜(実施例1−76)
図32に示すように、比較例2−154〜比較例2−174と実施例2−73〜実施例2−76の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを体積割合で50%ずつ配合して、第3成分としての正孔輸送材料として高分子のTFBを0.5wt%含んだものである。比較例2−154から比較例2−165では、第1成分の沸点よりも第2成分の沸点の方が高くなり、その沸点の差Δbpは−24℃と−1℃となっている。これに対して、比較例2−166〜比較例2−174及び実施例2−73〜実施例1−76では、第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpは0℃〜58℃といなっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0176】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが23℃以下の比較例2−154〜比較例2−174では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含んでいても、第2成分の表面張力の効果が得られずに開口部104aにおける濡れ拡がり性があまり良くない。特に、第1成分の沸点よりも第2成分の沸点の方が高い比較例2−154〜比較例2−162では、濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価はいずれも「×」である。比較例2−163〜比較例2−174の濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価はいずれも「△」である。
【0177】
これに対して、実施例2−73〜実施例2−76では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃以上あり、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善傾向が現れている。濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価は沸点の差Δbpの値が大きくなるに連れて「○」〜「◎」である。沸点が275℃の第2成分を選択したときには、それよりも沸点が30℃以上高い305℃以上の第1成分を選ぶことが好ましい。
【0178】
(実施例2−77)〜(実施例2−101)
図33に示すように、実施例2−77〜実施例2−101の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、実施例2−77〜実施例2−101は、比較例2−26〜比較例2−50に対して第2成分の体積割合を50vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例2−1〜実施例2−25に対して第2成分の体積割合を40vol%増やしたものである。
【0179】
第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpが39℃〜121℃の実施例2−77〜実施例2−101の正孔輸送層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含むことにより、開口部104aにおける安定した濡れ拡がり性を示し、濡れ拡がり欠陥の評価は「○」〜「◎」である。膜厚ムラの評価はいずれも「○」であり、発光不良の評価は「○」〜「◎」である。
【0180】
(比較例2−175)〜(比較例2−190)と(実施例2−102)〜(実施例2−110)
図34に示すように、比較例2−175〜比較例2−190、実施例2−102〜実施例2−110の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配合して、第3成分としての正孔輸送材料として高分子のTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、比較例2−175〜比較例2−190は、比較例2−138〜比較例2−153に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。また、実施例2−102〜実施例2−110は実施例2−64〜実施例2−72に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0181】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃未満の比較例2−175〜比較例2−190では、やはり第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善効果が十分発揮されていない。比較例2−175〜比較例2−190の濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性は、いずれも「△」である。
【0182】
これに対して、実施例2−102〜実施例2−110では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが34℃以上あり、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善傾向が顕著に現れている。濡れ拡がり欠陥と膜厚ムラの評価はいずれも「◎」である。発光不良の評価は沸点の差Δbpの値が大きくなるに連れて「○」〜「◎」となっている。
【0183】
(比較例2−191)〜(比較例2−211)と(実施例2−111)〜(実施例2−114)
図35に示すように、比較例2−191〜比較例2−211、実施例2−111〜実施例2−114の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配合して、第3成分としての正孔輸送材料である高分子のTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、比較例2−191〜比較例2−211は、比較例2−154〜比較例2−174に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。実施例2−111〜実施例2−114は、実施例2−73〜実施例2−76に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0184】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが23℃以下の比較例2−191〜比較例2−211は、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含んでいても、第2成分の表面張力の効果が得られずに開口部104aにおける濡れ拡がり性があまり良くない。特に、第1成分の沸点よりも第2成分の沸点の方が高く、その沸点の差Δbpが−24℃〜−5℃の比較例2−191〜比較例2−199では、濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価特性はいずれも「×」である。沸点の差Δbpが−3℃〜23℃の比較例2−200〜比較例2−211の濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価はいずれも「△」である。
これに対して、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが30℃〜58℃の実施例2−111〜実施例2−114では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善傾向が顕著に現れている。濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はそれぞれ「○」〜「◎」となっている。
【0185】
(比較例2−212)〜(比較例2−236)
図36に示すように、比較例2−212〜比較例2−236の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての正孔輸送材料としてTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。つまり、比較例2−212〜比較例2−236は、比較例2−26〜比較例2−50に対して第2成分の体積割合を60vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例2−77〜実施例2−101に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0186】
第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが39℃〜121℃の比較例2−212〜比較例2−236は、第2成分を80vol%含むことによって、開口部104aにおける優れた濡れ拡がり性を示し、その評価は「○」〜「◎」である。しかしながら、減圧乾燥において第2成分の蒸発が終了して残った第1成分の量が実施例2−77〜実施例2−101に比べて低下することから、第3成分としての高分子材料であるTFBの凝集が目立つようになり膜厚ムラが生じる。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「×」となった。
【0187】
(比較例2−237)〜(比較例2−261)
図37に示すように、比較例2−237〜比較例2−261の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配合して、第3成分としての正孔輸送材料として高分子のTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。つまり、比較例2−237〜比較例2−261は、比較例2−51〜比較例2−75に対して第2成分の体積割合を60vol%増やしたものである。言い換えれば、比較例2−175〜比較例2−190及び実施例2−102〜実施例2−110に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0188】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例2−237〜比較例2−252は、第2成分を80vol%含むものの、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくなく、その評価はいずれも「△」である。
第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが34℃〜77℃の比較例2−253〜比較例2−261は、第2成分を80vol%含むことによって、開口部104aにおける優れた濡れ拡がり性を示し、その評価はいずれも「◎」である。しかしながら、比較例2−237〜比較例2−261は、減圧乾燥において第2成分の蒸発が終了して残った第1成分の量が実施例2−102〜実施例2−110に比べて低下することから、第3成分としての高分子材料であるTFBの凝集が目立つようになり膜厚ムラが生じる。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「×」となった。
【0189】
(比較例2−262)〜(比較例2−286)
図38に示すように、比較例2−262〜比較例2−286の正孔輸送層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配合して、第3成分としての正孔輸送材料である高分子のTFBを0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。つまり、比較例2−262〜比較例2−286は、比較例2−76〜比較例2−100に対して第2成分の体積割合を60vol%増やしたものである。言い換えれば、比較例2−191〜比較例2−211及び実施例2−111〜実施例2−114に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0190】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との沸点の差Δbpが−24℃〜23℃の比較例2−262〜比較例2−282は、第2成分を80vol%含むものの、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくなく、その評価は沸点の差Δbpの値が大きくなるほど改善されるものの「×」〜「△」である。
第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが30℃〜58℃の比較例2−283〜比較例2−286は、第2成分を80vol%含むことによって、開口部104aにおける優れた濡れ拡がり性を示し、その評価は「○」〜「◎」である。しかしながら、比較例2−262〜比較例2−286は、減圧乾燥において第2成分の蒸発が終了して残った第1成分の量が実施例2−111〜実施例2−114に比べて低下することから、第3成分としての高分子材料であるTFBの凝集が目立つようになり膜厚ムラが生じる。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「×」となった。
【0191】
上記比較例及び実施例の正孔輸送層形成用インクについて評価結果をまとめると次の通りである。
正孔輸送層形成用インクは、第3成分として高分子の正孔輸送材料であるTFBを含み、隔壁104の開口部104aにおいて、正孔注入層131上に塗布される。脂肪族溶媒である第2成分を含まない比較例2−1〜比較例2−25は開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくない。また、第2成分の体積割合が20vol%の比較例2−26〜比較例1−100においてもやはり開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくなく、いずれも膜厚ムラ及び発光不良の評価が「△」となっている。また、第1成分に比べて表面張力が小さい第2成分の体積割合が80vol%の比較例2−212〜比較例2−286では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃以上の場合には濡れ拡がり性がよいが、沸点の差Δbpが30℃未満や第1成分に比べて第2成分の沸点が高くなると、明らかに濡れ拡がり性が低下する。比較例2−212〜比較例2−286では、いずれもねらいの膜厚を有する正孔輸送層132を形成できなかった。
【0192】
これに対して、実施例2−1〜実施例2−114では、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpが30℃以上となるように25種の芳香族溶媒の中から第1成分が選択され、3種の脂肪族溶媒の中から第2成分が選択されている。また、第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第2成分の体積割合が30vol%以上、70vol%以下となっている。このような正孔輸送層形成用インクの混合溶媒の構成とすることにより、第3成分として高分子の正孔輸送材料を用いた場合、開口部104aにおける濡れ拡がり性に優れ、減圧乾燥後に膜厚ムラや発光不良が少ない正孔輸送層132を形成可能である。
【0193】
比較例2−101〜比較例2−211は、実施例2−1〜実施例2−114と同様に、混合溶媒における第2成分の体積割合を30vol%〜70vol%の範囲としているが、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃未満の場合や第1成分に比べて第2成分の沸点が高くなると、実施例2−1〜実施例2−114に比べて濡れ拡がり性が低下する。
【0194】
<発光層形成用インク>
図39は発光層形成用インクの比較例3−1〜比較例3−25の構成と評価結果を示す表。
図40は発光層形成用インクの比較例3−26〜比較例3−50の構成と評価結果を示す表。
図41は発光層形成用インクの比較例3−51〜比較例3−75の構成と評価結果を示す表。
図42は発光層形成用インクの比較例3−76〜比較例3−100の構成と評価結果を示す表。
図43は発光層形成用インクの実施例3−1〜実施例3−25の構成と評価結果を示す表。
図44は発光層形成用インクの比較例3−101〜比較例3−116と実施例3−26〜実施例3−34の構成と評価結果を示す表。
図45は発光層形成用インクの比較例3−117〜比較例3−137と実施例3−35〜実施例3−38の構成と評価結果を示す表。
図46は発光層形成用インクの実施例3−39〜実施例3−63の構成と評価結果を示す表。
図47は発光層形成用インクの比較例3−138〜比較例3−153と実施例3−64〜実施例3−72の構成と評価結果を示す表。
図48は発光層形成用インクの比較例3−154〜比較例3−174と実施例3−73〜実施例3−76の構成と評価結果を示す表。
図49は発光層形成用インクの実施例3−77〜実施例3−101の構成と評価結果を示す表。
図50は発光層形成用インクの比較例3−175〜比較例3−190と実施例3−102〜実施例3−110の構成と評価結果を示す表。
図51は発光層形成用インクの比較例3−191〜比較例3−211と実施例3−111〜実施例3−114の構成と評価結果を示す表。
図52は発光層形成用インクの比較例3−212〜比較例3−236の構成と評価結果を示す表。
図53は発光層形成用インクの比較例3−237〜比較例3−261の構成と評価結果を示す表。
図54は発光層形成用インクの比較例3−262〜比較例3−286の構成と評価結果を示す表である。なお、
図39〜
図54の表において、第1成分である25種の芳香族溶媒は、表の上から下にゆくにつれて沸点が高くなるように記載されている。
【0195】
比較例3−1〜比較例3−286、実施例3−1〜実施例3−114の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒の中から第1成分を選択し、3種の脂肪族溶媒の中から第2成分を選択して、それぞれの成分の体積割合を変えて発光層133をインクジェット法により形成している。具体的には、まず、液相プロセス(インクジェット法)により正孔注入層131と正孔輸送層132とを形成した。その後、比較例3−1〜比較例3−286、実施例3−1〜実施例3−114の各発光層形成用インクを用いて発光層133を形成した。そして、蒸着法により、電子輸送層134、電子注入層135を形成した。各層の材料構成は、次の通りである。正孔注入層131はm−MTDATA+TFB、正孔輸送層132はTFB、発光層133はホスト材料がTDAPB、ドーパントがIr(ppy)3、電子輸送層134はBAlq、電子注入層135はLiFである。
【0196】
比較例3−1〜比較例3−286、実施例3−1〜実施例3−114の発光層形成用インクの評価方法は、前述した正孔注入層形成用インクの場合と同一で、濡れ拡がり欠陥、膜厚のムラ、発光不良の3つの評価項目に基づいて評価している。ただし、発光層形成用インクが塗布される正孔輸送層132の膜厚ムラに起因する欠陥を除いて評価を行っている。発光不良についても同様である。
【0197】
(比較例3−1)〜(比較例3−25)
図39に示すように、比較例3−1〜比較例3−25の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれに、発光層形成材料(第3成分)として、ホスト材料であるTDAPBにドーパントとしてのイリジウムの金属錯体であるIr(ppy)3を添加したものを0.5wt%含有させたものである。つまり、第3成分は、π共役を含む低分子の有機化合物であるTDAPBとイリジウムの金属錯体とを含むものである。第2成分である脂肪族溶媒は含有していない。第1成分は、第3成分としての上記発光層形成材料を0.1wt%以上溶解可能な良溶媒である。
【0198】
比較例3−1〜比較例3−25の発光層形成用インクは、表面張力が第1成分よりも小さい第2成分を含んでいないため、正孔輸送層132が形成された開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくない。一方で、第3成分として低分子の上記発光層形成材料を含んでいるが、液相プロセスで形成された正孔輸送層132上に、正孔注入層131や正孔輸送層132よりも膜厚が大きい(厚い)発光層133を形成するため、第3成分の凝集は発生し難い。したがって、濡れ拡がり欠陥、発光層133の膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性はいずれも「△」である。
【0199】
(比較例3−26)〜(比較例3−50)
図40に示すように、比較例3−26〜比較例3−50の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、第2成分として前述した7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分として上記発光層形成材料を0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合が80vol%であり、第2成分の体積割合が20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpは39℃〜121℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い良溶媒である。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0200】
比較例3−51)〜(比較例3−75)
図41に示すように、比較例3−51〜比較例3−75の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、第3成分として上記発光層形成材料を0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、その沸点の差Δbpは−5℃〜77℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い良溶媒である。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0201】
(比較例3−76)〜(比較例3−100)
図42に示すように、比較例3−76〜比較例3−100の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、第3成分として上記発光層形成材料を0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は80vol%、第2成分の体積割合は20vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも必ずしも高くなく、沸点の差Δbpは−24℃〜58℃となっている。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い良溶媒である。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。
【0202】
比較例3−26から比較例3−100の発光層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を20vol%含んでいるが、第2成分を含まない比較例3−1〜比較例3−25と同様に、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくない。濡れ拡がり欠陥、機能層の膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性はいずれも「△」である。
【0203】
(実施例3−1)〜(実施例3−25)
図43に示すように、実施例3−1〜実施例3−25の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpは39℃〜121℃を示している。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。つまり、実施例3−1〜実施例3−26は、比較例3−26〜比較例3−50に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。なお、第3成分は単一でなく、ホスト材料であるTDAPBとドーパント(ゲスト材料)であるIr(ppy)3とを含んでいるため、第1成分と第2成分との混合溶媒に対して0.1wt%以上溶解すればよい。
【0204】
実施例3−1〜実施例3−25の発光層形成用インクは、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含んだことにより、開口部104aにおける濡れ拡がり性が比較例3−26〜比較例3−50に比べて改善されている。また、第1成分よりも沸点が低い第2成分を30vol%含んだことにより、比較例3−26〜比較例3−50に比べて、減圧乾燥において発光層形成用インクが開口部104aに濡れ拡がった状態を維持しながら乾燥が進み、発光層133の膜厚ムラも小さくなっている。したがって、濡れ拡がり欠陥や膜厚ムラに起因する暗点や輝点などの発光不良の発生が抑えられている。特に、液相プロセスで形成された正孔輸送層132上に発光層形成用インクを塗布するので、濡れ拡がり性が優れている。ゆえに、濡れ拡がり欠陥は「◎」、発光層の膜厚ムラは「○」、発光不良は「◎」となった。
【0205】
(比較例3−101)〜(比較例3−116)と(実施例3−26)〜(実施例3−34)
図44に示すように、比較例3−101〜比較例3−116と実施例3−26〜実施例3−34の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。比較例3−101と比較例3−102では、第1成分の沸点よりも第2成分の沸点の方が高くなり、その差Δbpは−5℃、−3℃となっている。これに対して、比較例3−103〜比較例3−116及び実施例3−26〜実施例3−34では、第1成分の沸点は第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpは2℃〜77℃を示している。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い良溶媒である。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。前述したように複数種の材料を含む第3成分は第1成分と第2成分とを含む混合溶媒に0.1wt%以上溶解可能であればよい。
【0206】
第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃未満の比較例3−101〜比較例3−116では、やはり第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善効果が十分発揮されていない。比較例3−26〜比較例3−41の濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の3つの評価特性は、いずれも「△」である。
【0207】
実施例3−26〜実施例3−34では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃以上あり、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善傾向が現れている。濡れ拡がり欠陥と膜厚ムラと発光不良の評価特性は「○」〜「◎」となっている。
【0208】
(比較例3−117)〜(比較例3−137)と(実施例3−35)〜(実施例3−38)
図45に示すように、比較例3−117〜比較例3−137と実施例3−35〜実施例3−38の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。第1成分の体積割合は70vol%、第2成分の体積割合は30vol%である。比較例3−11742から比較例3−128では、第1成分の沸点よりも第2成分の沸点の方が高くなり、その沸点の差Δbpは−24℃と−1℃となっている。これに対して、比較例3−129〜比較例3−137及び実施例3−35〜実施例3−38では、第1成分の沸点に比べて第2成分の沸点は等しいかまたは低く、その沸点の差Δbpは0℃〜58℃を示している。第1成分は第2成分よりも第3成分の溶解性が高い良溶媒である。また、第2成分は第1成分よりも表面張力が小さい。前述したように複数種の材料を含む第3成分は第1成分と第2成分とを含む混合溶媒に0.1wt%以上溶解可能であればよい。
【0209】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが23℃以下の比較例3−117〜比較例3−137では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を30vol%含んでいても、第2成分の表面張力の効果が得られずに開口部104aにおける濡れ拡がり性があまり良くない。特に、第1成分よりも第2成分の沸点の方が高い比較例3−117〜比較例3−125では、濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価特性はいずれも「×」である。比較例3−126〜比較例3−137の濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価特性は「△」である。
【0210】
実施例3−35〜実施例3−38では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃以上あり、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を加えたことによる濡れ拡がり性の改善傾向が現れている。濡れ拡がり欠陥、膜厚ムラ、発光不良の各評価特性は「○」〜「◎」である。沸点が275℃の第2成分を選択したときには、それよりも沸点が30℃以上高い305℃以上の第1成分を選ぶことが好ましい。
【0211】
(実施例3−39)〜(実施例3−63)
図46の実施例3−39〜実施例3−63の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを体積割合で50vol%ずつ配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。つまり、実施例3−39〜実施例3−63は、比較例3−26〜比較例3−50に対して第2成分の体積割合を30vol%増やしたものである。言い換えれば、実施例3−1〜実施例3−25に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0212】
実施例3−39〜実施例3−63の発光層形成用インクは、実施例3−1〜実施例3−25と同様に開口部104aにおいて良好な濡れ拡がり性を示し、減圧乾燥においても膜厚ムラが生じ難く、濡れ拡がり欠陥の評価は「◎」、膜厚ムラの評価は「○」、発光不良の評価は「◎」であった。
【0213】
(比較例3−138)〜(比較例3−153)と(実施例3−64)〜(実施例3−72)
図47に示すように、比較例3−138〜比較例3−153と実施例3−64〜実施例3−72の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを体積割合で50vol%ずつ配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。つまり、比較例3−138〜比較例3−153と実施例3−64〜実施例3−72は、比較例3−101〜比較例3−116と実施例3−26〜実施例3−34に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0214】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが30℃未満の比較例3−138〜比較例3−153では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含んだことによる濡れ拡がり性を改善する効果が十分ではないが、沸点の差Δbpが30℃以上の実施例3−64〜実施例3−72では濡れ拡がり性の改善効果が発揮されている。
比較例3−138〜比較例3−153の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「△」である。これに対して、実施例3−64〜実施例3−72の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「○」〜「◎」である。
【0215】
(比較例3−154)〜(比較例3−174)と(実施例3−73)〜(実施例3−76)
図48に示すように、比較例3−154〜比較例3−174と実施例3−73〜実施例3−76の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを体積割合で50vol%ずつ配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。つまり、比較例3−154〜比較例3−174と実施例3−73〜実施例3−76は、比較例3−117〜比較例3−137と実施例3−35〜実施例3−38に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0216】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが30℃未満の比較例3−154〜比較例3−174では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を50vol%含んだことによる濡れ拡がり性を改善する効果がやはり十分ではない。沸点の差Δbpが30℃以上の実施例3−73〜実施例3−76では濡れ拡がり性の改善効果が発揮されている。
沸点の差Δbpが−24℃〜―5℃の比較例3−154〜比較例3−162の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「×」である。沸点の差Δbpが−3℃〜23℃の比較例3−163〜比較例3−174の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「△」である。これに対して、実施例3−73〜実施例3−76の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「○」〜「◎」である。
【0217】
(実施例3−77)〜(実施例3−101)
図49に示すように、実施例3−77〜実施例3−101の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、実施例3−77〜実施例3−101は、実施例3−39〜実施例3−63に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0218】
実施例3−77〜実施例3−101の発光層形成用インクは、実施例3−39〜実施例3−63と同様に開口部104aにおいて良好な濡れ拡がり性を示し、減圧乾燥においても膜厚ムラが生じ難く、濡れ拡がり欠陥の評価は「◎」、膜厚ムラの評価は「○」、発光不良の評価は「◎」であった。
【0219】
(比較例3−175)〜(比較例3−190)と(実施例3−102)〜(実施例3−110)
図50に示すように、比較例3−175〜比較例3−190と実施例3−102〜実施例3−110の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、比較例3−175〜比較例3−190と実施例3−102〜実施例3−110は、比較例3−138〜比較例3−153と実施例3−64〜実施例3−72に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0220】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが30℃未満の比較例3−175〜比較例3−190では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含んだことによる濡れ拡がり性を改善する効果が十分ではないが、沸点の差Δbpが30℃以上の実施例3−102〜実施例3−110では濡れ拡がり性の改善効果が発揮されている。
比較例3−175〜比較例3−190の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「△」である。これに対して、実施例3−102〜実施例3−110の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「○」〜「◎」である。特に、実施例2−103〜実施例3−106が3つの評価項目のいずれも「◎」となり好ましい。
【0221】
(比較例3−191)〜(比較例3−211)と(実施例3−111)〜(実施例2−114)
図51に示すように、比較例3−191〜比較例3−211と実施例3−111〜実施例2−114の発光層形成用インクは、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配向して、第3成分としての発光層形成材料としてTDAPB+Ir(ppy)3を0.5wt%含んだものである。第1成分の体積割合は30vol%、第2成分の体積割合は70vol%である。つまり、比較例3−191〜比較例3−211と実施例3−111〜実施例2−114は、比較例3−154〜比較例3−174と実施例3−73〜実施例2−76に対して第2成分の体積割合を20vol%増やしたものである。
【0222】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが30℃未満の比較例3−191〜比較例3−211では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を70vol%含んだことによる濡れ拡がり性を改善する効果がやはり十分ではない。沸点の差Δbpが30℃以上の実施例3−111〜実施例3−114では濡れ拡がり性の改善効果が発揮されている。
沸点の差Δbpが−24℃〜―5℃の比較例3−191〜比較例3−199の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「×」である。沸点の差Δbpが−3℃〜23℃の比較例3−200〜比較例3−211の濡れ拡がり欠陥及び膜厚ムラ並びに発光不良の評価はいずれも「△」である。これに対して、実施例3−111〜実施例3−114の濡れ拡がり欠陥の評価は「◎」、膜厚ムラの評価は「○」、発光不良の評価は「◎」である。
【0223】
(比較例3−212)〜(比較例3−236)
図52に示すように、比較例3−212〜比較例3−236の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が212℃のDiethyleneglycol−butylmethyl−etherとを配向して、第3成分として上記発光層形成材料を0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。つまり、実施例3−77〜実施例3−101に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0224】
第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが39℃〜121℃の比較例3−212〜比較例3−236は、第2成分を80vol%含むことによって、開口部104aにおける優れた濡れ拡がり性を示し、その評価は「◎」である。しかしながら、減圧乾燥において第2成分の蒸発が終了して残った第1成分の量が実施例3−77〜実施例3−101に比べて低下することから、第3成分としての低分子材料を含む発光層形成材料の凝集や析出が目立つようになり膜厚ムラが生じる。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「×」となった。
【0225】
(比較例3−237)〜(比較例3−261)
図53に示すように、比較例3−237〜比較例3−261の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が256℃のDiethyleneglycol−dibuthyl−etherとを配合して、第3成分として上記発光層形成材料を0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。つまり、比較例3−237〜比較例3−261は、比較例3−175〜比較例3−190及び実施例3−102〜実施例3−110に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0226】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との沸点の差Δbpが−5℃〜26℃の比較例3−237〜比較例3−252は、第2成分を80vol%含むものの、開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくなく、その評価はいずれも「△」である。
第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、その沸点の差Δbpが34℃〜77℃の比較例3−253〜比較例3−261は、第2成分を80vol%含むことによって、開口部104aにおける優れた濡れ拡がり性を示し、その評価は「○」〜「◎」である。しかしながら、比較例3−237〜比較例3−261は、減圧乾燥において第2成分の蒸発が終了して残った第1成分の量が実施例3−102〜実施例3−110に比べて低下することから、第3成分としての低分子材料を含む発光層形成用材料の凝集や析出が目立つようになり膜厚ムラが生じる。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「×」となった。
【0227】
(比較例3−262)〜(比較例3−286)
図54に示すように、比較例3−262〜比較例3−286の発光層形成用インクは、前述した25種の芳香族溶媒である第1成分のそれぞれと、前述した第2成分としての7種の脂肪族溶媒の中から沸点が275℃のTetraethyleneglycol−dimethyl−etherとを配合して、第3成分として上記発光層形成用材料を0.5wt%含んだものである。第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第1成分の体積割合は20vol%、第2成分の体積割合は80vol%である。つまり、比較例3−262〜比較例3−286は、比較例3−191〜比較例3−211及び実施例3−111〜実施例3−114に対して第2成分の体積割合を10vol%増やしたものである。
【0228】
第1成分の沸点と第2成分の沸点との差Δbpが30℃未満の比較例3−262〜比較例3−282では、第1成分よりも表面張力が小さい第2成分を80vol%含んだことによる濡れ拡がり性を改善する効果がやはり十分ではなく、濡れ拡がり欠陥の評価は「×」〜「△」である。これに対して、沸点の差Δbpが30℃以上の比較例3−283〜比較例3−286では濡れ拡がり性の改善効果が発揮され、濡れ拡がり欠陥の評価は「◎」である。
しかしながら、比較例3−262〜比較例3−286では、減圧乾燥において第2成分の蒸発が終了して残った第1成分の量が実施例3−111〜実施例3−114に比べて低下することから、第3成分としての低分子材料を含む発光層形成用材料の凝集や析出が目立つようになり膜厚ムラが生じる。したがって、膜厚ムラ及び発光不良の評価が「×」となった。
【0229】
上記比較例及び実施例の発光層形成用インクの評価についてまとめると次の通りである。
発光層形成用インクは、第3成分として低分子の発光層形成用材料を含み、隔壁104の開口部104aにおいて、正孔輸送層132上に塗布される。脂肪族溶媒である第2成分を含まない比較例3−1〜比較例3−25は開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくない。また、第2成分の体積割合が20vol%の比較例3−26〜比較例3−100においてもやはり開口部104aにおける濡れ拡がり性が芳しくなく、いずれも膜厚ムラ及び発光不良の評価が「△」となっている。また、第1成分に比べて表面張力が小さい第2成分の体積割合が80vol%の比較例3−212〜比較例3−286では、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃以上の場合には濡れ拡がり性がよいが、沸点の差Δbpが30℃未満や第1成分に比べて第2成分の沸点が高くなると、明らかに濡れ拡がり性が低下する。比較例3−212〜比較例3−286では、いずれも膜厚ムラが生じて発光不良の発生が少ない発光層133を形成できなかった。
【0230】
これに対して、実施例3−1〜実施例3−114では、第1成分の沸点が第2成分の沸点よりも高く、沸点の差Δbpが30℃以上となるように25種の芳香族溶媒の中から第1成分が選択され、3種の脂肪族溶媒の中から第2成分が選択されている。また、第1成分及び第2成分を含む混合溶媒における第2成分の体積割合が30vol%以上、70vol%以下となっている。このような発光層形成用インクの混合溶媒の構成とすることにより、第3成分として低分子の発光層形成材料を用いた場合、開口部104aにおける濡れ拡がり性に優れ、減圧乾燥後に膜厚ムラや発光不良が少ない発光層133を形成可能である。
【0231】
比較例3−101〜比較例3−211は、実施例3−1〜実施例3−114と同様に、混合溶媒における第2成分の体積割合を30vol%〜70vol%の範囲としているが、第1成分と第2成分の沸点の差Δbpが30℃未満の場合や第1成分に比べて第2成分の沸点が高くなると、実施例3−1〜実施例3−114に比べて濡れ拡がり性が低下する。
【0232】
上記第1実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)実施例1−1〜実施例1−114の正孔注入層形成用インクは、沸点が250℃以上350℃以下の25種の芳香族溶媒の中から選ばれた1種の第1成分と、沸点が200℃以上の7種の脂肪族溶媒の中から選ばれた1種の第2成分と、低分子の正孔注入材料である第3成分と、を含み、第3成分の溶解性は、第1成分の方が第2成分よりも高く、混合溶媒における第2成分の体積割合が30vol%以上70vol%以下であって、第1成分の沸点と第2成分の沸点との差が30℃以上である。したがって、第1成分の芳香族溶媒よりも表面張力が小さい脂肪族溶媒を第2成分として用いた効果が得られ、隔壁104で囲まれた開口部104aに本実施例の正孔注入層形成用インクを塗布すれば、画素電極102が配置された開口部104aに濡れ拡がると共に乾燥後に膜厚ムラが平均膜厚に対して±5%以内の正孔注入層131を形成することができる。
【0233】
(2)実施例2−1〜実施例2−114の正孔輸送層形成用インクは、沸点が250℃以上350℃以下の25種の芳香族溶媒の中から選ばれた1種の第1成分と、沸点が200℃以上の7種の脂肪族溶媒の中から選ばれた1種の第2成分と、高分子の正孔輸送材料である第3成分と、を含み、第3成分の溶解性は、第1成分の方が第2成分よりも高く、混合溶媒における第2成分の体積割合が30vol%以上70vol%以下であって、第1成分の沸点と第2成分の沸点との差が30℃以上である。したがって、第1成分の芳香族溶媒よりも表面張力が小さい脂肪族溶媒を第2成分として用いた効果が得られ、隔壁104で囲まれた開口部104aに本実施例の正孔輸送層形成用インクを塗布すれば、液相プロセスで形成された正孔注入層131が配置された開口部104aに濡れ拡がると共に乾燥後に膜厚ムラが平均膜厚に対して±2.5%以内の正孔輸送層132を形成することができる。
【0234】
(3)実施例3−1〜実施例3−114の発光層形成用インクは、沸点が250℃以上350℃以下の25種の芳香族溶媒の中から選ばれた1種の第1成分と、沸点が200℃以上の7種の脂肪族溶媒の中から選ばれた1種の第2成分と、低分子の発光層形成材料である第3成分と、を含み、第3成分の溶解性は、第1成分の方が第2成分よりも高く、第2成分の体積割合が30vol%以上70vol%以下であって、第1成分の沸点と第2成分の沸点との差が30℃以上である。したがって、第1成分の芳香族溶媒よりも表面張力が小さい脂肪族溶媒を第2成分として用いた効果が得られ、隔壁104で囲まれた開口部104aに本実施例の発光層形成用インクを塗布すれば、液相プロセスで形成された正孔輸送層132が配置された開口部104aに濡れ拡がると共に乾燥後に膜厚ムラが平均膜厚に対して±2.5%以内の発光層133を形成することができる。
【0235】
(4)実施例1−1〜実施例1−114、実施例2−1〜実施例2−114、実施例3−1〜実施例3−114の各機能層形成用インクは、第1成分と第2成分とを含む混合溶媒の沸点が200℃以上であるため、吐出ヘッド20のノズル21の目詰まりが生じ難く、安定した吐出特性が得られるので、インクジェット法(液滴吐出法)に好適である。
【0236】
(5)本実施形態の機能層形成用インクが充填されたインク容器としてのインクタンク14あるいはインクカートリッジ140を備えた吐出装置1を用いれば、ワークとしての基板W上において、所定の場所(隔壁104の開口部104a)に所定量の機能層形成用インクを安定して吐出して、塗布ムラ(濡れ拡がり)に起因する膜厚ムラを抑えて安定した膜形状の機能層を形成することができる。
【0237】
(6)本実施形態の有機EL素子130の製造方法によれば、有機EL素子130における機能層136のうち、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133の少なくとも1層が本実施形態の機能層形成用インクを用いてインクジェット法により形成されている。したがって、安定した膜形状の機能層136が得られるので、所望の発光特性(輝度、発光寿命)が得られる有機EL素子130を歩留まりよく製造することができる。そして、この有機EL素子130を備えた発光装置100を提供できる。
【0238】
なお、上記正孔注入層形成用インク、上記正孔輸送層形成用インク、上記発光層形成用インクの各実施例において、第1成分として沸点が250℃以上350℃以下の芳香族溶媒を選択した。一方で、各インクの減圧乾燥工程では、第1成分よりも沸点が低く脂肪族溶媒である第2成分が先に蒸発し始め、第2成分の蒸発が終了した後にも第1成分が残る。したがって、同じ減圧乾燥条件下では、第1成分の沸点が高いほど乾燥時間が長くなるので、減圧乾燥工程における生産性(乾燥時間や減圧乾燥条件など)を考慮すると、第1成分として沸点が300℃以下の芳香族溶媒を選択することが好ましい。
【0239】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について、
図55を参照して説明する。
図55(a)は電子機器の一例であるノート型のパーソナルコンピューターを示す概略図、
図55(b)は電子機器の一例である薄型テレビ(TV)を示す概略図である。
【0240】
図55(a)に示すように、電子機器としてのパーソナルコンピューター1000は、キーボード1002を備えた本体部1001と、表示部1004を備える表示ユニット1003とにより構成され、表示ユニット1003は、本体部1001に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピューター1000において、表示部1004に上記第1実施形態の発光装置100が搭載されている。
【0241】
図55(b)に示すように、電子機器としての薄型テレビ(TV)1100は、表示部1101に上記第1実施形態の発光装置100が搭載されている。
【0242】
発光装置100のサブ画素110R,110G,110Bに設けられた有機EL素子130は、機能層136における正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133のうち少なくとも1層が上記第1実施形態の機能層形成用インクを用いて液相プロセス(インクジェット法)により形成されている。したがって、膜厚ムラが少なく、暗点や輝点などの発光不良も少ないので歩留まりよく発光装置100が製造される。つまり、コストパフォーマンスに優れたパーソナルコンピューター1000や薄型TV1100を提供することができる。
【0243】
発光装置100が搭載される電子機器は、上記パーソナルコンピューター1000や薄型TV1100に限定されない。例えば、スマートフォンやPOSなどの携帯型情報端末、ナビゲーター、ビューワー、デジタルカメラ、モニター直視型のビデオレコーダーなどの表示部を有する電子機器が挙げられる。
【0244】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う機能層形成用インク及び有機EL素子の製造方法ならびに該有機EL素子を適用する発光装置や電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0245】
(変形例1)上記第1実施形態の機能層形成用インクの第1成分における芳香族溶媒は1種であることに限定されず、複数種の芳香族溶媒を含む構成としてもよい。これによれば、例えば1種である場合に比べて第3成分に対する溶解性を比較的容易に調整することができる。
【0246】
(変形例2)上記第1実施形態の機能層形成用インクの第2成分における脂肪族溶媒は1種であることに限定されず、複数種の脂肪族溶媒を含む構成としてもよい。これによれば、例えば1種である場合に比べて表面張力を比較的容易に調整することができる。
【0247】
(変形例3)上記第1実施形態の機能層形成用インクにおける第3成分は、1種の機能材料を含むことに限定されず、複数種の機能材料を含んでいてもよい。例えば、正孔輸送材料として低分子の正孔輸送材料と高分子の正孔輸送材料とを含む構成としてもよい。これにより正孔輸送性を改善できる。また、例えば、発光層形成材料においてもホスト材料とドーパントのそれぞれにおいて、複数種のホスト材料あるいはドーパントを含んでいてもよい。これにより発光輝度や寿命を改善できる。
【0248】
(変形例4)上記第1実施形態の機能層形成用インクにおける第3成分は、有機EL素子130の機能層136を構成する材料であることに限定されない。例えば、第3成分として有機半導体化合物を用いれば、薄膜トランジスターにおける機能層としての半導体層や電極などを形成することができる。この他にも例えば、色素増感度型太陽電池の光電変換層や、FED(Field Emission Display)やSED(Surface−conduction−electron Emitter Display)における電子放出部などの機能素子を形成することもできる。
【0249】
(変形例5)上記第1実施形態の発光装置100の構成は、異なる発光色が得られるサブ画素110R,110G,110Bを有することに限定されない。赤(R)、緑(G)、青(B)以外の例えば黄(Y)のサブ画素を備えていてもよい。また、フルカラー表示が可能な構成に限定されず、単色の発光が得られる有機EL素子130を備えた構成としてもよい。これによれば、表示デバイスとしてだけでなく、照明装置としての発光装置100を提供できる。