(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分光される光の波長を変化させながら、画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンを撮像し、複数の分光画像を取得する分光画像取得ステップと、
前記複数の分光画像のうちの1つにおける複数の画素の各々における光量と、前記複数の画素の各々の座標値とを対応づけた測定データをプロファイル作成用データとして出力するデータ出力ステップと、
前記プロファイル作成用データを用いて前記画像出力装置のプロファイルを作成するプロファイル作成ステップと、
を含み、
前記カラーパターンは、前記複数色のカラーパッチのうちの1つと前記複数色のカラーパッチのうちの他の1つとの間に基準色が表示され、
前記プロファイル作成用データは、前記基準色の測定データをリファレンスとしたことを特徴とするプロファイル作成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にも記載されるように、精度の高いプロファイルを作成する場合、大がかりな測色処理を行う必要がある。例えば、特許文献2,3に記載されるように、測色装置の読取部を走査させて1色ずつ測色することが例示されるが、多数のカラーパッチの全てを高精度に測色するのには多大な時間を要するという課題がある。
【0007】
本発明は、多数のカラーパッチを含むカラーパターンの測色に要する時間の短縮を図ることができる分光測定装置、カラーマネージメントシステム、及びプロファイル作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の分光測定装置は、入射光を分光する分光フィルターと、前記分光フィルターにより分光された光を撮像し、分光画像を取得する撮像部と、画像出力装置のプロファイルを作成するためのプロファイル作成用データを出力するデータ出力部と、を備え、前記データ出力部は、前記撮像部が、前記画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンに対する複数の分光画像を取得した場合に、前記複数の分光画像のうちの1つにおける複数の画素の各々における光量と、前記複数の画素の各々の座標値とを対応づけた測定データを前記プロファイル作成用データとして出力することを特徴とする。
本発明の別の一態様の分光測定装置は、入射光を分光する分光フィルターと、前記分光フィルターにより分光された光を撮像し、分光画像を取得する撮像部と、画像出力装置のプロファイルを作成するためのプロファイル作成用データを出力するデータ出力部と、を備え、前記データ出力部は、前記撮像部が、前記画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンに対する複数の分光画像を取得した場合に、前記複数の分光画像のうちの1つにおける複数の画素の各々における光量と、前記複数の画素の各々の座標値とを対応づけた測定データを前記プロファイル作成用データとして出力し、前記カラーパターンは、前記複数色のカラーパッチのうちの1つと前記複数色のカラーパッチのうちの他の1つとの間に基準色が表示され、前記プロファイル作成用データは、前記基準色の測定データをリファレンスとしたことを特徴とする。
上記の本発明に係る分光測定装置は、入射光を分光する分光フィルターと、前記分光フィルターにより分光された光を撮像し、分光画像を取得する撮像部と、画像出力装置のプロファイルを作成するためのプロファイル作成用データを出力するデータ出力部と、を備え、前記データ出力部は、前記撮像部が、前記画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンに対する複数の分光画像を取得した場合に、前記複数の分光画像における複数の画素の各々における光量と、前記複数の画素の各々の座標値とを対応づけた測定データを前記プロファイル作成用データとして出力することを特徴とする。
上記の本発明に係る分光測定装置は、入射光を分光して所定波長の光を選択し、かつ前記選択する光の波長を変更可能な分光フィルターと、前記分光フィルターにより分光された光を撮像し、分光画像を取得する撮像部と、画像出力装置のプロファイルを作成するためのプロファイル作成用データを出力するデータ出力部と、を備え、前記データ出力部は、前記撮像部により、前記画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンに対する複数の分光画像が取得された場合に、各分光画像の各画素における光量と、当該画素の座標値とを対応づけた測定データを前記プロファイル作成用データとして出力することを特徴とする。
【0009】
本発明では、撮像部の撮像領域に配置された、複数色のカラーパッチを含むカラーパターンからの光を、分光フィルターに入射させ、分光フィルターを介して分光された光を撮像部で撮像し分光画像を取得する。そして、当該分光画像と受光した画素位置とを対応付けた測定データをプロファイル作成用データとして出力する。
これにより、同時に多数のカラーパッチを測定することができ、測定に要する時間の短縮を図ることができる。また、測定の際に撮像部をカラーパターンに対して走査させる必要がないので、撮像部を移動させる移動装置を設ける必要がなく、装置の簡略化及び小型化を図ることができる。
【0010】
本発明の分光測定装置において、前記分光フィルターは、入射光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜と、前記第一反射膜に対向して設けられ、入射光の一部を反射し一部を透過する第二反射膜とを備え、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間の入射した光を干渉させ特定の波長の光を取り出す波長可変干渉フィルターであることが好ましい。
本発明では、分光フィルターは、第一反射膜及び第二反射膜に入射した入射光を干渉させて、特定の波長の光を透過させる、波長可変エタロン(波長可変型のファブリーペローエタロン)である波長可変干渉フィルターにより構成されている。このような波長可変干渉フィルターは、例えばAOTF(Acousto-Optic Tunable Filter)やLCTF(Liquid Crystal Tunable Filter)等の分光素子と比べ小型化が可能であり、分光測定装置に容易に組み込むことができる。
【0011】
本発明の分光測定装置において、前記波長可変干渉フィルターは、前記第一反射膜が設けられた第一基板と、前記第一基板に対向し、前記第二反射膜が設けられた第二基板と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間のギャップ寸法を変更するギャップ変更部と、を備えている前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップ寸法を変化させるギャップ変更部を備えることが好ましい。
上述したような波長可変干渉フィルターとして、例えば、平板状の犠牲層の一面に第一反射膜を形成し、他面に第二反射膜を形成した後、犠牲層をエッチング等により除去することで形成される波長可変型エタロンを用いてもよいが、この場合、第一反射膜や第二反射膜に撓みが生じる場合もある。これに対して、本発明では、第一基板上に第一反射膜を設け、第二基板上に第二反射膜を設ける構成であり、各反射膜の撓みや傾斜を抑制することができる。
【0012】
本発明の分光測定装置において、前記分光フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板に設けられ、入射光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜に対向し、入射光の一部を反射し一部を透過する第二反射膜と、電圧印加により前記第二基板を前記第一基板側に撓ませて、前記第一反射膜及び前記第二反射膜間のギャップ寸法を変化させるギャップ変更部と、を備えることが好ましい。
本発明では、分光フィルターとして、第一基板に設けられた第一反射膜、及び第二基板に設けられた第二反射膜間のギャップ寸法に応じた波長の光を取り出すことができる波長可変型のファブリーペローエタロンを用いる。
これにより、ギャップ変更部を駆動して、ギャップ寸法を変更することにより複数の波長の光を短時間で取り出すことができ、カラーパターンの測色に要する時間の短縮を図ることができる。また、ファブリーペローエタロンは、例えばAOTFやLCTF等を用いる場合に比べて、小型化が可能であり、分光測定装置の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明の分光測定装置において、前記入射光を取り込むための入射光取込部と、前記入射光取込部を囲んで配置され、前記カラーパターンが表示された表示面に押し当てられることで外光を遮光する押し当て部と、を備えることが好ましい。
本発明では、分光測定装置の入射光取込部を囲んで遮光性の押し当て部が配置されており、カラーパターンが表示されている表示面に押し当て部が押し当られ、密着されることにより、外光の混入を抑制することができ、測色精度を向上させることができる。
なお、押し当て部は、弾性部材で形成されていることが好ましい。これにより、押し当て部を表示対象に対して確実に密着させることができる。
また、押し当て部は、表面が反射防止性及び遮光性を有することが好ましい。これにより、入射光が表面で反射することを抑制でき、反射光による測色への影響を抑制でき、かつ、測定対象光以外の外光の侵入を抑制できる。
【0014】
さらに、本発明の分光測定装置において、前記押し当て部の内側に配置され、前記表示面に光を出射する光源を備えることが好ましい。
本発明では、測色対象が、例えば、紙等の媒体に描画されたカラーパターンのように、自ら発光しない場合においても、押し当て部の内側に配置された光源からカラーパターンに対して白色光を出射することにより測定を行うことができる。
【0015】
本発明の分光測定装置において、前記分光フィルターに前記入射光を導くテレセントリック光学系を備えることが好ましい。
本発明では、テレセントリック光学系を備えることにより、入射光を分光フィルターに直交する方向に導光することができ、かつ、装置の小型化を図ることができる。特に、分光フィルターとして波長可変干渉フィルターを用いる場合、各反射膜に対して直交するように入射光を導光する必要がある。従って、テレセントリック光学系を備えることにより、高速かつ高精度の面分光を行うことができ、かつ小型化が可能な分光測定装置を提供することができる。
【0016】
本発明の分光測定装置において、前記撮像部は、各カラーパッチをそれぞれ複数の画素で撮像することが好ましい。
本発明では、1つのカラーパッチを撮像素子の複数画素で受光(撮像)する。これにより、画像表示装置における画素やドット間の色再現性のばらつきや、撮像素子の受光感度のばらつきを平均化することができ、S/N比を向上させることができる。
【0017】
本発明の分光測定装置において、動作状況及び測定結果の少なくともいずれかを含む通知を報知する報知部を備えることが好ましい。
本発明では、報知部により分光測定装置の動作状況や測定結果等を使用者に対して通知する。これにより、使用者が分光測定装置の動作状況や測色結果を容易に把握することができる。なお、報知部としては、例えば、通知を画像として出力させる表示部や、音声として出力させる音声出力部等が挙げられる。
【0018】
本発明のカラーマネージメントシステムは、入射光を分光して所定波長の光を選択し、かつ前記選択する光の波長を変更可能な分光フィルターと、前記分光フィルターにより分光された光を撮像し、分光画像を取得する撮像部と、前記撮像部により、画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンに対する複数の分光画像が取得された場合に、各分光画像の各画素における光量、及び当該画素の座標値を対応づけた測定データをプロファイル作成用データとして出力するデータ出力部と、を有する分光測定装置と、前記分光測定装置から出力されたプロファイル作成用データを用いて当該画像出力装置のプロファイルを作成するプロファイル作成部を有するプロファイル作成装置と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明では、分光測定装置は、上述したような測定データをプロファイル作成用データとしてプロファイル作成装置に出力し、プロファイル作成装置は、プロファイル作成用データを用いて画像出力装置のプロファイルを作成する。
これにより、同時に多数のカラーパッチを測定することができ、測定及びプロファイル作成に要する時間の短縮を図ることができる。また、分光測定装置は、測定の際に撮像部をカラーパターンに対して走査させる必要がないので、撮像部を移動させる移動装置を設ける必要がなく、分光測定装置の簡略化及び小型化を図ることができ、カラーマネージメントシステムの簡略化及び小型化を図ることができる。
また、上記のような測定データは、画像出力装置から出力された画像の正確なスペクトルデータであるため、プロファイル作成装置は、このような測定データを用いることで、元画像に対して色再現性が高いプロファイルを作成することができる。また、上述のように、分光測定装置における測色処理を迅速に実施することができるため、プロファイル作成に係る時間も短縮することができる。
【0020】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記プロファイル作成装置は、前記画像出力装置に前記カラーパターンを出力させるパターン出力手段を備え、前記パターン出力手段は、所定サイズの前記カラーパッチがマトリクス状に配置された前記カラーパターンを出力させることが好ましい。
本発明では、カラーパッチがマトリクス状に配置されているため、カラーパターンにおけるカラーパッチの位置を容易に特定することができる。
【0021】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記複数のカラーパッチ間に基準色が表示された前記カラーパターンを出力させ、前記分光測定装置は、前記分光画像の前記基準色の画素位置、及び前記カラーパッチの画素位置を特定し、特定した前記基準色の画素位置の測定データをリファレンスとした前記プロファイル作成用データを出力することが好ましい。
本発明では、カラーパッチ間に基準色、(例えば、白色)が表示されたカラーパターンを撮像して、基準色に基づく測定データと、カラーパッチに基づく測定データを取得して、基準色に基づく測定データをリファレンスとしたプロファイル作成データを出力する。例えば、基準色の測定値を基準に、その相対値としてカラーパッチの測色結果を出すことができ、このような相対値を出力することで、画像表示装置に対する最適なプロファイルを精度よく生成することができる。また、本発明では、カラーパターンの分光画像を取得するため、カラーパッチと隣り合う基準色を用いることで、面内特性(例えば、撮像素子の画素間特性差や、ファブリーペローエタロンにおける反射膜間のギャップ寸法の差、反射膜の膜厚差等)の影響を受けにくい。したがって、面分光により得られた分光画像を撮像する本発明において測定精度の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記カラーパッチ間に黒色のラインを配置した前記カラーパターンを出力させることが好ましい。
本発明では、カラーパッチ間に黒ラインが表示されたカラーパターンを撮像することにより、隣接するカラーパッチからの光を分離することができ、あるカラーパッチからの光が、隣接するカラーパッチからの光の干渉を受けることがなく、測色精度の低下を抑制でき、測色精度を向上させることができる。
【0023】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記カラーパターンの出力前に、当該カラーパターンの表示領域全体に基準色を配置した基準色画像を表示させ、前記分光測定装置は、前記基準色画像の測定データをリファレンスとした前記プロファイル作成用データを出力することが好ましい。
本発明では、基準色に基づく測定データをリファレンスとしたプロファイル作成用データを出力する。これにより、上記発明と同様、基準色と各カラーパッチの色差を容易に算出でき、測色精度を向上させることができる。
【0024】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記分光測定装置は、前記基準色画像を検知する基準色画像検知手段を備え、前記基準色画像が検知されたことをトリガーとして、測定を開始することが好ましい。
本発明では、分光測定装置が、基準色を検知することで、測色処理を開始する。これにより、カラーパターンの表示タイミングに合わせて、分光測定装置に測定開始の指示を行う必要がない。すなわち、画像出力装置と分光測定装置とを直接又はPC等の制御装置等を介して接続してタイミングを同期する必要がなく、使用者により測色開始の操作を行う必要もないので、分光測定装置をカラーパターンの表示位置に配置して、画像表示装置にカラーパターンを表示させる指示を行うという簡単な操作でプロファイルを作成できる。
【0025】
また、本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記カラーパターンの出力前に、前記分光測定装置における測定開始を指示する識別画像を表示させ、前記分光測定装置は、前記識別画像を検知する識別画像検知手段を備え、前記識別画像が検知されたことをトリガーとして、測定を開始することが好ましい。
本発明では、画像出力装置に対して、識別表示を表示させた後、カラーパターンを表示させることにより、画像出力装置のカラーパターンの表示タイミングに合わせて、分光測定装置に測定開始の指示を行う必要がない。すなわち、画像出力装置と分光測定装置とを直接又はPC等の制御装置等を介して接続してタイミングを同期する必要がなく、使用者により測色開始の操作を行う必要もないので、使用者は、分光測定装置をカラーパターンの表示位置に配置して、画像表示装置にカラーパターンを表示させる指示を行うという簡単な操作でプロファイルを作成できる。
【0026】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記分光測定装置の配置位置を指示する指示画像を出力させることが好ましい。
本発明では、分光測定装置の配置位置を指示する指示画像を画像表示装置に表示させることにより、分光測定装置の撮像領域と、カラーパターンの表示領域とが重なる位置に、分光測定装置を配置させることが容易となり、高精度の測色を容易に行うことができる。
【0027】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記カラーパッチの配置位置が異なる複数のカラーパターンを順次出力させることが好ましい。
画像表示装置は、表示位置毎に色再現性のばらつきがある場合がある。また、受光部は、受光位置毎に受光感度のばらつきがある場合がある。従って、同一の色を異なる表示位置に表示させ、異なる画素位置の受光素子で受光することにより、画像表示装置の表示位置毎の色再現性のばらつきや、受光部の受光位置毎の受光感度のばらつきを平均化したプロファイル作成用データを取得することができ、S/N比を向上させることができる。
【0028】
本発明のカラーマネージメントシステムにおいて、前記パターン出力手段は、前記カラーパッチの色がそれぞれ異なる複数のカラーパターンを順次出力させることが好ましい。
本発明では、カラーパッチの色が互いに異なる複数のカラーパターンを画像表示装置に順次表示させ、これら複数のカラーパターンを測色して得られたプロファイル作成用データを用いて、プロファイルを作成する。これにより、1つのカラーパターンを測色する場合よりも多くの色のカラーパッチを測色することができ、測色精度の向上を図ることができる。
【0029】
本発明のプロファイル作成方法は、入射光を分光して所定波長の光を選択し、かつ前記選択する光の波長を変更可能な分光フィルター、及び前記分光フィルターにより分光された光を撮像し、分光画像を取得する撮像部を有する分光測定装置と、画像出力装置のプロファイルを作成するプロファイル作成装置と、を備えたカラーマネージメントシステムにおけるプロファイル作成方法であって、前記分光フィルターにより選択させる光の波長を変化させながら、前記画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンを、前記撮像部により撮像し、複数の波長の分光画像を取得する分光画像取得ステップと、分光画像の各画素における光量と、当該画素の座標値とを対応づけた測定データをプロファイル作成用データとして出力するデータ出力ステップと、前記プロファイル作成用データを用いて前記画像出力装置のプロファイルを作成するプロファイル作成ステップと、を実施することを特徴とする。
【0030】
本発明では、分光フィルターにより分光させる波長を変化させながら、画像出力装置から出力された複数色のカラーパッチを含むカラーパターンを、撮像部により撮像し、複数の波長の分光画像を取得する分光画像取得ステップと、分光画像の各画素における光量と、当該画素の座標値とを対応づけた測定データをプロファイル作成用データとして出力するデータ出力ステップと、前記プロファイル作成用データを用いて画像出力装置のプロファイルを作成するプロファイル作成ステップと、を実施する。
これにより、測定の際に撮像部をカラーパターンに対して走査させなくとも同時に多数のカラーパッチを測定することができ、測定に要する時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[カラーマネージメントシステムの構成]
図1は、本発明の第一実施形態に係るカラーマネージメントシステム1の概略構成を示すブロック図である。
カラーマネージメントシステム1は、分光測定装置2と本発明のプロファイル生成装置であるPC7とを備える。このカラーマネージメントシステム1は、分光測定装置2が、本発明の画像出力装置である画像表示装置8に表示されたカラーパターンからの測定対象光から複数波長に対応する分光画像を撮像し、これらの分光画像から各色に対する測定データを取得する。そして、PC7が当該測定データを用いて画像表示装置8のプロファイルを作成する。
【0033】
(PC及び画像表示装置の構成)
PC7は、画像データ出力部71と、プロファイル出力部72と、記憶部73とを備え、分光測定装置2及び画像表示装置8と通信可能に構成されている。
画像データ出力部71は、表示部82に測定対象画像Xを表示させるための画像データを画像表示装置8に出力し、測定対象画像Xを画像表示装置8に表示させる。なお、測定対象画像Xの画像データは、予め記憶部73に記憶しておいてもよいし、記憶部73に記憶されているプログラムや各種データ等を用いて生成してもよい。
プロファイル出力部72は、分光測定装置2によって測定された測定対象画像Xの測定データを用いて画像表示装置8のプロファイルを作成する。また、プロファイル出力部72は、作成したプロファイルを画像表示装置8に出力する。
これら画像データ出力部71及びプロファイル出力部72は、PC7が備えるCPU、ROM及びRAM等により構成された演算回路により、記憶部73に記憶されたプログラムを読み込んで実施することで実現される。
記憶部73は、画像データ出力部71及びプロファイル出力部72による処理を実行するためのプログラムや各種データを記憶している。
なお、PC7は、キーボードやマウス等の図示しない入力部を備えており、使用者による入力部の操作に応じて動作する。
【0034】
プロファイル作成対象である画像表示装置8は、表示制御部81と、表示部82とを備える。この画像表示装置8は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイであり、表示制御部81の制御に基づいて、測定対象画像Xを表示部82に表示する。
また、表示制御部81は、カラーマネージメントシステム1によって作成されたプロファイルを用いて表示部82の色調整を行う。
【0035】
(測定対象画像)
以下、表示部82に表示され、分光測定装置2によって測定される測定対象画像Xについて説明する。
図2は、測定対象画像Xを示す図である。
測定対象画像Xとして、
図2に示すように、分光測定装置2に測定開始を指示するための識別画像9が表示された後、画像表示装置8のプロファイルを作成するために測定データを取得するためのカラーパターン10A,10B,10C,10Dが、順次表示され、次いで、測定終了を指示するための識別画像9が表示される。
カラーパターン10A,10B,10C,10D及び識別画像9は、それぞれ、分光測定装置2による測定データの取得に要する所定測定時間だけ表示される。
【0036】
図2(a)に示す識別画像9は、RGB値(R,G,B)=(255,255,255)の基準色である白を表示する画像である。分光測定装置2は、識別画像9を測定することにより基準色データを取得し、これをリファレンスとして測定データを補正する。識別画像9は、カラーパターン10A,10B,10C,10Dと同様に所定測定時間だけ表示される。なお、本実施形態では、識別画像9は、基準色を表示する本発明の基準色画像を兼ねている。
【0037】
ここで、分光測定装置2は、後述するように、所定波長のみを透過させることができ、当該波長を変更可能な波長可変干渉フィルターを備えている。この波長可変干渉フィルターは、識別画像9が表示された時点、すなわち、測定開始前の待機状態(非駆動状態)においても、待機状態に対応する待機時波長(初期ギャップに対応する波長)の光を透過させることができる。従って、待機時波長を含む光を発する識別画像9が分光測定装置2の測定領域、すなわち撮像素子32の撮像領域(以下、分光測定装置2の撮像領域とも称する)に表示されると、分光測定装置2は識別画像9が表示されたことを検知し、検知したことをトリガーとして測定を開始する。分光測定装置2による、識別画像9の検知については後に詳述する。
【0038】
カラーパターン10Aは、
図2(b)に示すように、分光測定装置2の撮像領域にマトリクス状に配置され表示される複数のカラーパッチ101と、カラーパッチ101の間に表示された黒ライン102とを有する。
複数のカラーパッチ101は、それぞれ異なる色を表示する。本実施形態のようにプロファイル作成対象が各種ディスプレイである表示部82を備える画像表示装置8である場合、複数のカラーパッチ101は、RGB値(R,G,B)=(0,0,0)〜(255,255,255)である画像表示装置8の表示特性を把握するのに必要な全ての色、即ち、夫々階調が異なる所定色の各色に対応するカラーパッチである。
また、黒ライン102は、RGB値(R,G,B)=(0,0,0)である黒を表示するラインである。
【0039】
カラーパターン10Bは、
図2(b)に示す仮想線L1(カラーパターン10Aの中心Ocを上下方向に通る直線)に対してカラーパターン10Aと線対称となるように、カラーパターン10Aの各カラーパッチ101の表示位置を変更したものである。
また、カラーパターン10Cは、
図2(b)に示す仮想線L2(カラーパターン10Aの中心Ocを左右方向に通る直線)に対してカラーパターン10Aと線対称となるように、カラーパターン10Aの各カラーパッチ101の表示位置を変更したものであり、カラーパターン10Dは、カラーパターン10Aの中心Ocに対してカラーパターン10Aと点対称となるように、カラーパターン10Aの各カラーパッチ101の表示位置を変更したものである。
これらカラーパターン10A,10B,10C,10Dの一辺の寸法は、例えば、1mm〜10mm程度であり、1つのカラーパッチ101は、表示部82の複数画像によって表示されている。
【0040】
また、
図2(f)に示す、識別画像9は、分光測定装置2に測定終了を指示する画像であり、RGB値(R,G,B)=(255,255,255)の基準色である白を表示する画像である。分光測定装置2は、識別画像9が表示されたことを検知して、測定を終了する。
【0041】
なお、
図2では、一例として、16種類のカラーパッチ101を含むカラーパターン10A,10B,10C,10Dを示すが、16種類以上、例えば、100種類のカラーパッチ101を含むカラーパターンを表示させてもよい。
また、本実施形態では、画像データ出力部71は、識別画像9以外にも、表示部82における分光測定装置2の配置位置を指示するための測定位置マーク(
図7に示す測定位置マーク11参照)を表示させる。
【0042】
[分光測定装置の構成]
図3は、分光測定装置2の概略構成を示す断面図である。
分光測定装置2は、
図1及び
図3に示すように、測定対象画像Xからの測定対象光を撮像する光センサー部3と、分光測定装置2を制御するための各種回路が設けられた回路基板6と、光源21と、表示部22と、電池23とを備え、光センサー部3と、回路基板6と、光源21と、電池23と、が外装ケース24に収容され、表示部22が外装ケース24に設けられた設置部に設置されている。そして、この分光測定装置2は、測定対象画像Xの像を撮像して、分光画像を取得する。
【0043】
外装ケース24には、測定対象光を光センサー部3に取り込むための光入射口241が形成されており、光入射口241の周囲に押し当て部25が設けられている。この押し当て部25は、弾性部材で形成され、画像表示装置8の表示部82に押し当てられた際に、変形して表示部82に隙間なく密着することで、測定対象光以外の外光が光入射口241に侵入することを抑制する遮光性の部材である。また、押し当て部25は、表面が黒色であり、表面での光の反射を抑制可能に構成されている。
【0044】
光源21は、LED等の、例えば、白色及び紫の色光を出射する光源であり、外装ケース24の光入射口241の周囲で、かつ、押し当て部25によって囲まれた領域に設けられている。この光源21は、測定対象画像Xが、例えば、紙等の自ら発光しない媒体に描画されている場合、測定対象画像Xに向けて光を出射し、分光測定装置2は、その反射光を測定する。
【0045】
表示部22は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の各種表示装置であり、回路基板6を挟み撮像素子32と反対側に外装ケース24に設けられた設置部に設置されている。表示部22は、分光測定装置2の動作状況や、測定結果等を使用者に通知するための通知画像等を表示する。すなわち、表示部22は、本発明の報知部に相当する。
電池23は、分光測定装置2に電力を供給する電源であり、図示しない充電回路により充電可能に構成された二次電池である。なお、分光測定装置2は、スマートフォンや携帯電話等の携帯端末装置及びPC7等の外部装置に接続可能に構成し、当該外部装置から電力の供給を受けてもよい。
【0046】
[光センサー部の構成]
光センサー部3は、波長可変干渉フィルター5が筐体40内部に収納されて構成される光学フィルターデバイス4と、波長可変干渉フィルター5に測定対象光を導くテレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する撮像素子32と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部33とを備える。
これら光学フィルターデバイス4と、テレセントリック光学系31と、撮像素子32とが、両端が開口する光学部品用筐体34の所定の位置に配置されている。光学部品用筐体34の回路基板6側の端部に撮像素子32が配置され、反対側の端部にテレセントリック光学系31を構成する光学部品が配置されており、当該反対側の端部は、外装ケース24に形成された光入射口241に接続している。
【0047】
(波長可変干渉フィルターの構成)
図4は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、筐体40に収容されており、筐体40の内部は密閉空間となり、真空環境(又は大気圧よりも減圧された環境)に維持されている。この波長可変干渉フィルター5は、
図4に示すように、本発明の第一基板である固定基板51、及び本発明の第二基板である可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、固定基板51の第一接合部513及び可動基板の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53(第一接合膜531及び第二接合膜532)により接合されることで、一体的に構成されている。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51又は可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。
【0048】
フィルター平面視において、固定基板51の一辺側は、可動基板52よりも外側に突出する。この突出部分のうち、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た際に露出する面は、第一電装面514を構成する。
また、フィルター平面視において、可動基板52の辺のうち、第一電装面514に対向する一辺側は、固定基板51よりも外側に突出する。この突出部分のうち、波長可変干渉フィルター5を固定基板51側から見た際に露出する面は、第二電装面524を構成する。
【0049】
固定基板51には、電極配置溝511及び反射膜設置部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561及び可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
【0050】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、波長可変干渉フィルター5の中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、前記平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成されている。ここで、電極配置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなり、固定反射膜54が設置されている。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、第一電装面514及び第二電装面524に向かって延出する電極引出溝511Bが設けられている。
【0051】
電極配置溝511の電極設置面511Aには、固定電極561が設けられている。この固定電極561は、電極設置面511Aのうち、後述する可動部521の可動電極562に対向する領域に設けられている。
そして、固定基板51には、固定電極561の外周縁から、環状の電極引出溝511Bを通り、第一電装面514まで延出する固定引出電極563が設けられている。この固定引出電極563の延出先端部は、第一電装面514において固定電極パッド563Pを構成する。
なお、本実施形態では、電極設置面511Aに1つの固定電極561が設けられる構成を示すが、例えば、平面中心点Oを中心とした同心円となる2つの電極が設けられる構成(二重電極構成)などとしてもよい。
【0052】
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面のうち、電極配置溝511、反射膜設置部512、及び電極引出溝511Bが形成されない面は、第一接合部513を構成する。この第一接合部513には、第一接合膜531が設けられ、この第一接合膜531が、可動基板52に設けられた第二接合膜532に接合されることで、上述したように、固定基板51及び可動基板52が接合される。
【0053】
可動基板52は、フィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521の外側に設けられ、可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置面512Aの外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動電極562及び本発明の第二反射膜である可動反射膜55が設けられている。
【0054】
可動電極562は、電極間ギャップG2を介して固定電極561に対向し、固定電極561と同一形状となる環状に形成されている。また、可動基板52には、可動電極562の外周縁から第二電装面524に向かって延出する可動引出電極564を備えている。この可動引出電極564の延出先端部は、第二電装面524において可動電極パッド564Pを構成する。
可動反射膜55は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向して設けられる。
【0055】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。
【0056】
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられている。この基板外周部525の固定基板51に対向する面は、第一接合部513に対向する第二接合部523を備えている。そして、この第二接合部523には、第二接合膜532が設けられ、上述したように、第二接合膜532が第一接合膜531に接合されることで、固定基板51及び可動基板52が接合されている。
【0057】
(テレセントリック光学系、撮像素子、電圧制御部の構成)
テレセントリック光学系31は、入射光を波長可変干渉フィルター5に導く光学系であり、複数のレンズ等の光学部品により構成されている。このテレセントリック光学系31は、入射光の主光線が、光軸に平行で、かつ波長可変干渉フィルター5の固定基板51に対して直交するように射出する。
【0058】
撮像素子32は、テレセントリック光学系31の焦点面に位置するように、回路基板6に設けられている。測定対象画像Xから発せられた測定対象光がテレセントリック光学系31により導光され、撮像素子32において結像される。この撮像素子32は、アレイ状に配列される複数の検出素子(図示略)を備えている。これらの検出素子は、例えばCCD(Charge-Coupled Device)素子や、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などの、光電交換素子により構成されており、受光した光の光量に応じた電気信号を生成して、後述する光量取得部63に出力する。この撮像素子32は、
図2に示す1つのカラーパッチ101を複数の検出素子(画素)で撮像する。
電圧制御部33は、後述するフィルター制御部62の制御に応じて、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長(測定波長)に対応する駆動電圧を波長可変干渉フィルター5に印加する。
【0059】
[回路基板の構成]
回路基板6は、分光測定装置2を制御するための各種回路を備えている。具体的には、
図1に示すように、記憶部61、フィルター制御部62、光量取得部63、トリガー検知部64、位置特定部65、相対値取得部66,光源制御部67,表示制御部68,及び通信部69が設けられている。この回路基板6に設けられた各種回路は、演算回路や、メモリーや、各種電気回路等を適宜組み合わせることによって構成される。
【0060】
記憶部61は、分光測定装置2を制御するための各種プログラムや、各種データが記憶されている。当該データは、例えば、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧に対する透過光の波長を示す相関データV−λデータや、上述の測定対象画像Xの変更パターン(所定測定時間や、カラーパターンの情報等)や、測定波長に関する情報(測定開始波長、波長の変更間隔、及び測定終了波長等)である。また、記憶部61は、光量取得部63で取得された受光量が、各検出素子の画素位置(座標値)及び検出時の測定波長と関連付けられた分光画像として記憶される。
【0061】
フィルター制御部62は、記憶部61に記憶されているV−λデータに基づいて、測定波長に対応する駆動電圧の電圧値(入力値)を取得し、取得した電圧値を電圧制御部33に出力して、波長可変干渉フィルター5のギャップの間隔を変動させる。
また、フィルター制御部62は、記憶部61に記憶されている各種データに基づいて、測定波長の変更タイミングの検出、測定波長の変更、測定波長の変更に応じた駆動電圧の変更、及び測定終了の判断等を行い、当該判断に基づいて電圧制御部33を制御する。
【0062】
光量取得部63は、透過光の受光量を、撮像素子32の検出素子毎に取得することで分光画像を取得する。画素位置と受光量とが対応づけられた分光画像は、検出時の測定波長に関連付けられ、記憶部61に記憶される。なお、受光部32及び光量取得部63が、本発明の撮像部に相当する。
トリガー検知部64は、本発明の識別画像検知手段及び基準色画像検知手段に相当し、表示部82に識別画像9が表示された場合に、撮像素子32によって検出された各画素位置での受光量や、光量取得部63によって取得された分光画像から、識別画像9が表示されていることを検知する。
【0063】
位置特定部65は、本発明の位置特定手段に相当し、光量取得部63によって取得された各測定波長の分光画像からなる測定データから、基準色が表示された画素位置や、カラーパッチ101が表示された画素位置を特定する。画素位置の特定は、画素位置毎の測定データの受光量のパターンから各画素位置の色を特定することで行う。
相対値取得部66は、識別画像9を測定することで取得された基準色データ(表示部82に表示された白色の測定データ)をリファレンスとして、各カラーパターンの測定データとの相対値を算出する。
【0064】
光源制御部67は、使用者の指示に応じて光源21の点灯、消灯を制御する。
表示制御部68は、表示部22の表示内容を制御する。表示内容としては、例えば、分光測定装置2の動作状況や、測定結果等を使用者に報知するための通知画像である。
図5には、通知画像の一例を示す。
図5に示す通知画像13は、使用者に分光測定装置2が測定中であることを通知するための画像である。
通信部69は、分光測定装置2による測定対象画像Xの測定結果である測定データ及び相対値取得部66により算出された相対値を、プロファイル作成用データとしてPC7に出力する。通信部69は、LAN等を介した有線通信や、Wi−Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)や赤外線通信等の各種無線通信により、PC7と通信可能に構成される。なお、記憶部61及び通信部69は、本発明のデータ出力部に相当する。
【0065】
[カラーマネージメントシステムの動作]
図6は、カラーマネージメントシステム1の動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、PC7が、使用者によるプロファイル作成指示を受けると(S1)、画像データ出力部71は、
図7に示すように、測定位置マーク11を画像表示装置8の表示部82に表示させる(S2)。なお、
図7では、測定対象画像Xが表示される表示領域Ardを破線で示している。測定位置マーク11は、測定対象画像Xの表示領域、すなわち分光測定装置2の撮像領域を囲んで配置された三角形状のマークである。
表示部82に測定位置マーク11が表示された後、使用者は、分光測定装置2を画像表示装置8の表示部82に配置する。
図8に示すように、分光測定装置2の表示部22が設けられている側の外装ケース24の表面には、表示領域Ardと分光測定装置2の撮像領域とが一致するように分光測定装置2を表示部82に配置するための位置合わせ用マーク12が設けられている。使用者は、位置合わせ用マーク12を測定位置マーク11に合わせるように分光測定装置2を配置することで、表示領域Ardと撮像領域とを一致させた状態で分光測定装置2を配置することができる。
【0066】
分光測定装置2を表示部82に配置した使用者は、PC7に測定開始の指示を行う。測定開始の指示を受けたPC7は、画像データ出力部71が、表示部82に表示させるカラーパターンを画像表示装置8に出力することによりカラーパターンの表示指示を行う(S3)。
カラーパターンの表示指示を受けた画像表示装置8は、表示部82にカラーパターンを出力する。
なお、PC7は、プロファイル作成指示を受けて所定時間経過したら、カラーパターンを表示させて分光測定装置2に測定を開始させてもよい。
【0067】
一方、分光測定装置2は、表示部82の表示を検出すると分光測定処理を実施する。
分光測定装置2による分光測定処理では、まず、光源制御部67は、光源21を点灯するか否かを判定する(S11)。このS11では、使用者による光源21の点灯指示があるか否を判断する。又は、図示しない照度センサーによる検出結果により光源21を点灯させる必要があるか否かを判断してもよい。
S11において、光源21を点灯させると判断した場合、光源制御部67は、光源21に電力を供給して光源21を点灯させ(S12)、その後、分光測定装置2は、測色処理を行う(S13)。一方、光源制御部67は、光源21を点灯させないと判断した場合、光源21を点灯させずに測色処理を行う(S13)。
【0068】
(測色処理)
図9は、
図6に示すS13の測色処理の詳細を示すフローチャートである。
S3において、PC7によって画像表示装置8にカラーパターンの表示指示が行われると、画像表示装置8の表示部82に、
図2(a)〜(f)に示す各測定対象画像Xが順次表示される。
すなわち、最初に、
図2(a)に示すように、Ardには識別画像9が表示される。なお、識別画像9が表示された時点では、測定開始前であり、波長可変干渉フィルター5は待機状態にあり、反射膜間ギャップG1の寸法は、初期ギャップ寸法となっている。識別画像9が表示されると、上記初期ギャップ寸法に対応する波長の光が波長可変干渉フィルター5を透過して、撮像素子32の全面で検出される。トリガー検知部64は、撮像素子32の各画素における受光パターンから、表示されている画像が識別画像9であることを検知する(S131)。このトリガー検知部64による検知処理をトリガーとして、分光測定装置2は、分光測定を開始する。
【0069】
トリガー検知部64により識別画像9が検知されると、フィルター制御部62は、測定波長に対応する駆動電圧を印加するように電圧制御部33を制御する。電圧制御部33は、静電アクチュエーター56に当該駆動電圧を印加する(S132)。
上記駆動電圧が静電アクチュエーター56に印加されると、反射膜間ギャップG1が当該駆動電圧に応じた寸法に変更される。そして、測定波長の光が波長可変干渉フィルター5を透過し、撮像素子32によって検出され、フィルター制御部62によって測定波長の分光画像が取得される(S133)。
取得された分光画像は、受光量と画素位置とが対応付けられて記憶部61に、識別画像9に基づく基準色データとして記憶される(S134)。
【0070】
次に、フィルター制御部62は、表示されていた測定対象画像X(基準色の識別画像9及び各カラーパターン10A,10B,10C,10D)について、予め設定された全測定波長で測定し、分光画像を取得したか、すなわち全測定波長で測定が終了したか否かを判断する(S135)。全測定波長での測定が終了していない場合、フィルター制御部62は、測定波長を変更する(S136)。以下、全測定波長での測定が終了するまでS132〜S136のステップを繰り返す。
【0071】
次に、フィルター制御部62は、新たに表示された測定対象画像Xが、識別画像9であるか否かを判断する。識別画像9ではない場合、すなわち、カラーパターンが表示されている場合、測定を終了させずに、測定波長を変更して(S136)、全測定波長でのカラーパターンの測定を行う(S132〜S136)。
一方、フィルター制御部62は、識別画像9が表示されたことを検知すると(S137)、測定を終了する。
次に、相対値取得部66は、取得された基準色データの各画素位置の測定データをリファレンスとして、分光画像の各画素位置での測定データとの相対値を算出し(S138)、算出した相対値を各画素の測定データに関連付けて記憶する。
【0072】
この後、
図6に戻り、分光測定装置2は、記憶部61に記憶されている測定データ及び相対値をプロファイル作成用データとして通信部69からPC7に出力する(S14)。
PC7は、分光測定装置2からプロファイル作成用データを受信すると(S4)、プロファイル出力部72により、画像表示装置8のプロファイルを作成し(S5)、作成したプロファイルを画像表示装置8に出力する(S6)。プロファイルは、例えば、各カラーパターン10A,10B,10C,10Dの各測定データの同一のカラーパッチ101を測定している画素位置の受光量の平均値を算出して得られた、平均化された測定データを用いて作成される。
なお、プロファイルを受信した画像表示装置8の表示制御部81は、当該プロファイルデータを用いて表示部82の色調整を行う。
【0073】
[第一実施形態の作用効果]
本実施形態のカラーマネージメントシステム1及び分光測定装置2では、撮像部を構成する撮像素子32の撮像領域に配置された、複数色のカラーパッチ101を含むカラーパターン10A,10B,10C,10Dからの光を、波長可変干渉フィルター5に入射させ、波長可変干渉フィルター5を介して分光された光を撮像部で撮像し分光画像を取得する。そして、当該分光画像と受光した画素位置とを対応付けた測定データをプロファイル作成用データとしてPC7に出力する。
これにより、同時に多数のカラーパッチ101を測定することができ、測定に要する時間の短縮を図ることができる。また、測定の際に撮像素子32を含む光センサー部3をカラーパターン10A,10B,10C,10Dに対して走査させる必要がないので、光センサー部3を移動させる移動装置を設ける必要がなく、システム及び装置の簡略化及び小型化を図ることができる。
また、上記のような測定データは、画像表示装置8から出力された測定対象画像Xの正確なスペクトルデータであるため、プロファイル出力部72は、このような測定データを用いることで、元画像に対して色再現性が高いプロファイルを作成することができる。また、上述のように、分光測定装置2における測色処理を迅速に実施することができるため、プロファイル作成に係る時間も短縮することができる。
【0074】
本実施形態の分光測定装置2では、波長可変型のファブリーペローエタロンである波長可変干渉フィルター5を用いて入射光を分光している。これにより、静電アクチュエーター56を駆動して、反射膜間ギャップG1の寸法を変更することにより複数の波長の光を短時間で取り出すことができ、カラーパターン10の測色に要する時間の短縮を図ることができる。また、ファブリーペローエタロンは、例えばAOTFやLCTF等を用いる場合に比べて、小型化が可能であり、分光測定装置の小型化を図ることができるうえ、分光測定装置に容易に取り付けることができる。
【0075】
ところで、波長可変干渉フィルターとして、例えば、平板状の犠牲層の一面に第一反射膜を形成し、他面に第二反射膜を形成した後、犠牲層をエッチング等により除去することで形成される波長可変型エタロンを用いた場合、第一反射膜や第二反射膜に撓みが生じる場合もある。
これに対して、本実施形態の分光測定装置2では、波長可変干渉フィルター5は、固定基板51上に固定反射膜54を設け、可動基板52上に可動反射膜55を設ける構成であり、これにより、各反射膜の撓みや傾斜を抑制することができる。
【0076】
本実施形態の分光測定装置2では、光入射口241を囲んで遮光性の押し当て部25が配置されており、カラーパターン10A,10B,10C,10Dが表示される表示部82の表示面に押し当て部が押し当られ、密着されることにより、外光の混入を抑制することができ、測色精度を向上させることができる。
また、押し当て部25は、弾性部材で形成されているので、押し当て部25を表示部82の表示面に対して確実に密着させることができる。外光の混入をより効果的に抑制することができる。
また、押し当て部25は、表面が反射防止性及び遮光性を有する黒色の部材で形成されている。これにより、入射光が押し当て部25の表面で反射することを抑制でき、反射光による測色への影響を抑制でき、かつ、測定対象光以外の外光の侵入を抑制できる。
【0077】
本実施形態の分光測定装置2では、押し当て部25の内側に配置され、測定対象画像Xが表示された表示部82の表示面に光を出射する光源21を備える。これにより、測定対象画像Xが、例えば、紙等の媒体に描画されたカラーパターンのように、自ら発光しない場合においても、押し当て部25の内側に配置された光源21からカラーパターンに対してリファレンス光を出射することにより測定を行うことができる。
本実施形態の分光測定装置2では、波長可変干渉フィルター5に入射光を導くテレセントリック光学系31を備えることにより、入射光を波長可変干渉フィルター5の各基板51,52に直交する方向に導光することができ、かつ、装置の小型化を図ることができる。
【0078】
本実施形態の分光測定装置2では、各カラーパッチ101をそれぞれ撮像素子32の複数の画素で撮像する。すなわち、画像表示装置8の表示部82の複数画素に跨って表示されている1つのカラーパッチ101を、撮像素子32の複数画素で受光する。これにより、表示部82における画素間の色再現性のばらつきや、撮像素子の受光感度のばらつきを平均化することができ、S/N比を向上させることができる。
【0079】
本実施形態の分光測定装置2では、表示部22に、分光測定装置2の動作状況及び測定結果の少なくともいずれかを含む通知画像13を表示する。このように、分光測定装置2の動作状況や測定結果等を使用者に対して通知するための通知画像13に表示させることにより、使用者が分光測定装置2の動作状況や測定結果を容易に把握することができる。
【0080】
本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、カラーパッチ101がマトリクス状に配置されているため、カラーパターンにおけるカラーパッチ101の位置を容易に特定することができる。
また、本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、カラーパッチ101間に黒ライン102が表示されたカラーパターン10A,10B,10C,10Dを撮像することにより、隣接するカラーパッチ101からの光を分離することができ、あるカラーパッチからの光が、隣接するカラーパッチからの光の干渉を受けることがなく、測色精度の低下を抑制でき、測色精度を向上させることができる。
【0081】
さらに、本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、相対値取得部66により、特定した基準色の画素位置の測定データをリファレンスとして、当該画素位置のカラーパッチの測定データとの相対値を算出する。これにより、プロファイル出力部72は、各カラーパッチに対する測定データと、相対値とに基づいて、元画像の色を再現性良く表示部82に表示させるための最適なプロファイルを生成することができる。
また、本実施形態では、基準色で表示される識別画像9の各画素における測定データと、カラーパターンの各画素における測定データとの相対値を算出する。したがって、波長可変干渉フィルター5や撮像素子32の面内特性(反射膜間ギャップG1や反射膜54,55の膜厚、膜質、撮像素子32の画素間の特性差等)による影響を受けにくく、画素による特性差を除外した最適なプロファイルを作成することができる。
【0082】
本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、最初に表示されるカラーパターン10Aの出力前に、分光測定装置2における測定開始を指示する識別画像9を表示させ、分光測定装置2は、識別画像9を検知するトリガー検知部64により識別画像9が検知されたことをトリガーとして、測定を開始する。これにより、画像表示装置8のカラーパターンの表示タイミングに合わせて、分光測定装置2に測定開始の指示を行う必要がない。すなわち、分光測定装置2と画像表示装置8とを直接又はPC等の制御装置等を介してタイミングを同期する必要がないので、使用者は、分光測定装置2をカラーパターンの表示位置に配置して、画像表示装置8にカラーパターンを表示させる指示を行うという簡単な操作でプロファイルを作成できる。
なお、上述のように、識別画像9の表示から所定期間経過後に、カラーパターンを表示させるようにPC7を構成した場合、上述のようにタイミングを同期する必要がなく、使用者により測色開始の操作を行う必要もないので、分光測定装置2を表示位置Ardに配置して、画像表示装置8にカラーパターンを表示させる指示を行うというより簡単な操作でプロファイルを作成できる。
【0083】
さらに、本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、識別画像9を再度表示させることにより、分光測定装置2に測定終了を指示している。これにより、上述のように、分光測定装置2と画像表示装置8とで測定終了のタイミングを同期させる必要がないので、使用者は、分光測定装置2をカラーパターンの表示位置に配置して、画像表示装置8にカラーパターンを表示させる指示を行うという簡単な操作でプロファイルを作成できる。また、分光測定装置2に、予め、測定対象のカラーパターンの数を設定しておかなくとも、分光測定装置2に測定を終了させることができ、必要に応じて任意の数のカラーパターンを測定させることができ、汎用性を向上させることができる。
【0084】
ここで、波長可変干渉フィルター5を用いる本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、識別画像9は、当該波長可変干渉フィルター5の初期ギャップ寸法に対応する波長の色を含む表示である。このように、識別画像9として待機時の波長可変干渉フィルター5を透過可能な波長の光を含む画像を表示することにより、分光測定装置2は、当該波長の光を撮像素子32で受光することで、測定開始を認識することができる。また、当該波長の光を受光したタイミングから所定時間の経過に合わせて静電アクチュエーター56を駆動させることでカラーパターンの測定開始タイミングを、カラーパターンの表示タイミングに同期させることができる。
【0085】
本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、画像データ出力部71は、分光測定装置2の配置位置を指示する測定位置マーク11を出力させる。これにより、分光測定装置2の撮像領域と、測定対象画像Xの表示領域Ardとが重なる位置に、分光測定装置2を配置させることが容易となり、高精度の測色を容易に行うことができる。
【0086】
ところで、画像表示装置8は、表示位置毎に色再現性のばらつきがある場合がある。また、撮像素子32は、受光位置毎に受光感度のばらつきがある場合がある。
これに対して、本実施形態のカラーマネージメントシステム1では、画像データ出力部71は、カラーパッチ101の配置位置が異なる複数のカラーパターン10A,10B,10C,10Dを順次出力させ、同一の色を異なる表示位置に表示させ、異なる画素位置で受光することにより、各カラーパターン10A,10B,10C,10Dの測定データを取得できる。したがって、各カラーパターン10A,10B,10C,10Dの測定データを用いて、プロファイルを作成することにより、画像表示装置8の表示位置毎の色再現性のばらつきや、撮像素子32の受光位置毎の受光感度のばらつきを平均化することができ、S/N比を向上させることができる。
【0087】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態のカラーマネージメントシステム1では、測定対象として、
図2に示すように、カラーパッチの配置位置が異なる複数のカラーパターンを測定している。これに対して、第二実施形態のカラーマネージメントシステムでは、複数のカラーパターンとして、複数のカラーパッチのうち少なくとも一部の色が異なるカラーパターンを測定する点で相違している。また、カラーパターンは、複数のカラーパッチの間に基準色のラインが表示されている点でも相違している。
なお、それ以外の点では、第一実施形態と同様の構成を有するので、以下、測定対象画像について説明する。
【0088】
図10は、表示部82の表示領域Ardにおける表示の変化を説明する図である。
第二実施形態においても、第一実施形態と同様、分光測定装置2に測色処理を開始させるにあたり、表示部82の表示領域Ardに識別画像9が表示される(
図10(a)参照)。本実施形態においても識別画像9として基準色である白が表示される。
なお、本実施形態では、基準色ライン104の測定データをリファレンスとして用いるため、識別画像9としては、基準色画像でなくてもよい。このような識別画像9としては、例えば、点滅画像等が挙げられる。
【0089】
測定開始を指示する識別画像9が所定時間だけ表示された後、
図10(b)に示すように、カラーパターン10Eが表示される。カラーパターン10Eは、カラーパッチ101の配置位置が上述のカラーパターン10Aと同様であるが、カラーパッチ101の間に基準色の基準色ライン104が表示されている。
本実施形態では、基準色の基準色ライン104として、RGB値(R,G,B)=(255,255,255)である白の基準色ライン104が表示される。
【0090】
カラーパターン10Eが、所定測定時間だけ表示された後、中心Ocに対してカラーパターン10Eと点対称となるように各カラーパッチ101の表示位置が変更されたカラーパターン10Fが所定測定時間だけ表示される(
図10(c)参照)。
【0091】
次に、
図10(d)に示すように、カラーパターン10Gが表示される。カラーパターン10Gは、分光測定装置2の撮像領域にマトリクス状に配置され表示される複数のカラーパッチ103と、カラーパッチ103の間に表示された基準色ライン104とを有する。
カラーパッチ103は、カラーパターン10E,10Fに含まれるカラーパッチ101とは異なる色である。
そして、カラーパターン10Gが所定測定時間だけ表示された後、
図10(e)に示すように、カラーパターン10Hが表示される。カラーパターン10Hは、中心Ocに対してカラーパターン10Gと点対称となるように、各カラーパッチ103の表示位置が変更されたものである。
最後に、再度、測定終了を指示する識別画像9が表示される。
【0092】
本実施形態のカラーマネージメントシステムでは、上記第一実施形態と略同様の処理によりカラーマネージメント処理が実施されるが、
図9におけるS138の処理が異なる。
すなわち、本実施形態では、S138において、まず位置特定部65により、カラーパッチ103と基準色ライン104の画素位置を特定する。そして、相対値取得部66は、カラーパッチ103の測定データと、当該カラーパッチの画素位置に対して最も近い基準色ライン104の画素位置の測定データ(基準色データ)とに基づいて、相対値を算出する。
【0093】
[第二実施形態の作用効果]
本実施形態のカラーマネージメントシステムでは、カラーパッチ101,カラーパッチ103間に基準色である基準色ライン104が表示されたカラーパターン10E,10F,10G,10Hを撮像して、カラーパッチ101,カラーパッチ103に基づく測定データと、基準色ライン104の基準色に基づく基準色データとを取得する。これにより、上記第一実施形態と同様に、プロファイル出力部72は、各カラーパッチに対する測定データと、相対値とに基づいて、元画像の色を再現性良く表示部82に表示させるための最適なプロファイルを生成することができる。
また、本実施形態においても、カラーパッチ103の画素位置に最も近い基準色ライン104の基準色データと、当該カラーパッチの測定データとの相対値を算出するので、波長可変干渉フィルター5や撮像素子32の面内特性による影響を受けにくく、画素による特性差を除外した最適なプロファイルを作成することができる。
【0094】
本実施形態のカラーマネージメントシステムでは、カラーパッチの色が互いに異なる複数のカラーパターンを画像表示装置に順次表示させ(例えば、カラーパターン10Fとカラーパターン10G)、これら複数のカラーパターンを測色して得られた測定データを用いて、プロファイルを作成する。これにより、同一のカラーパッチを有するカラーパターンを測色する場合よりも多くの色のカラーパッチを測色することができ、測色精度の向上を図ることができる。
【0095】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記各実施形態では、1つの画像表示装置8のプロファイルを出力して、当該画像表示装置8の色調整を行なわせるカラーマネージメントシステムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、複数の画像出力装置間での色合わせを行ってもよい。
図11は、本発明に係るカラーマネージメントシステムの一例であるカラーマネージメントシステム1Aの概略構成を示すブロック図である。
カラーマネージメントシステム1Aは、
図11に示すように、分光測定装置2と、PC7Aとを備え、画像出力装置である複数の画像表示装置8A,8B及び印刷装置14の間で色合わせを行う。
【0096】
このカラーマネージメントシステム1Aは、PC7Aが、測定データから画像表示装置8A,8B及び印刷装置14のプロファイルを作成するプロファイル作成部74と、作成した画像表示装置8A,8B及び印刷装置14の各プロファイルに基づいて色合わせを行わせる調整部75とを備える点で、上記各実施形態と相違しているが、その他の点では、上記各実施形態と同様の構成を有し、同様の方法でプロファイルを作成する。
【0097】
また、上記各実施形態では、画像出力装置として各種ディスプレイを表示部82として備える画像表示装置8を例示したが、本発明はこれに限定されない。本変形例のカラーマネージメントシステム1Aでは、紙等の媒体に印刷することで媒体上に画像を表示する印刷装置14もプロファイル作成対象の画像出力装置とする。
この印刷装置14は、カラーパターンとして、CMYKの各色の濃度を所定間隔で変更して得られる複数の色に対応するカラーパッチがマトリクス状に配置されたものを媒体に描画する。また、分光測定装置2は、図示しない操作部(例えば、ボタンや表示部22に設けられたタッチパネル等)の入力に応じて測定開始可能に構成され、媒体に印刷された複数のカラーパターンを順次測定することで測定データを取得する。
【0098】
PC7Aは、画像データ出力部71と、記憶部73と、プロファイル作成部74と、調整部75とを備える。
プロファイル作成部74は、分光測定装置2によって測定された測定対象画像Xの測定データを用いて画像表示装置8A,8B及び印刷装置14のプロファイルを作成する。
調整部75は、プロファイル作成部74によって作成された画像表示装置8A,8B及び印刷装置14の各プロファイルに基づいて、画像表示装置8A,8B及び印刷装置14の間で色合わせを行わせる。この調整部75は、画像表示装置8A,8B及び印刷装置14に、色調整を行わせるための調整データ(例えば、RGB値又はCMYK値の各値での調整量のデータや、当該調整量を算出する関数等)を出力する。
【0099】
本変形例のカラーマネージメントシステム1Aでは、分光測定装置2は、上記各実施形態と同様の処理により画像表示装置8A,8Bに表示された測定対象画像X(カラーパターン又は基準色画像)を測定して測定データを取得する。また、分光測定装置2は、印刷装置14が出力した印刷物としての測定対象画像Xを測定して測定データ取得する。そして、分光測定装置2は、基準色データと測定データとから相対値を算出して、測定データ及び相対値をプロファイル作成用データとしてPC7Aに出力する。
PC7Aは、分光測定装置2からプロファイル作成用データを受信すると、プロファイル作成部74により、画像表示装置8A,8B及び印刷装置14のプロファイルを作成し、作成したプロファイルに基づいて画像表示装置8A,8B及び印刷装置14のそれぞれに色調整を行わせるための調整データを作成し、作成した調整データを画像表示装置8A,8B及び印刷装置14のそれぞれに出力する。
画像表示装置8A,8B及び印刷装置14に、それぞれ調整データに基づく色調整を行わせることで、各画像表示装置間での色合わせを行わせる。
【0100】
このように、カラーマネージメントシステム1Aによれば、複数の画像表示装置間での色合わせを行うことができる。本変形例のカラーマネージメントシステム1Aでは、基準色である白色に対する測定データの相対値を算出しており、これを用いて各画像表示装置に色調整を行わせているので、各画像表示装置で表示される白色に対する他の色の相対的な値を、各画像表示装置間で合わせることができる。
【0101】
なお、本変形例のカラーマネージメントシステム1Aにおいて、基準色の白色に対する測定データの相対値を用いずに、各画像表示装置によって表示されたカラーパターンの測定データに基づいて、各画像表示装置間での色合わせを行ってもよい。この場合、各画像表示装置間で表示される色を合わせることができる。
【0102】
上記各実施形態及び変形例では、分光フィルターとして波長可変干渉フィルター5を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、液晶チューナブルフィルターや、AOTF等の面分光可能な分光フィルターを用いてもよい。
上記各実施形態及び変形例では、波長可変干渉フィルター5として、第一基板である固定基板51上に第一反射膜である固定反射膜54が設けられ、第二基板である可動基板52上に第二反射膜である可動反射膜55が設けられる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、第一基板や第二基板が設けられない構成としてもよい。この場合、例えば、平行ガラス基板の一面に第一反射膜を設け、前記一面と平行となる他面に第二反射膜を設けた後、エッチング等により平行ガラス基板をエッチングする。当該構成では、第一基板や第二基板が設けられない構成となり、分光素子をより薄型化することができる。この場合、第一反射膜及び第二反射膜の間に例えばスペーサ等を介在させることで、反射膜間のギャップ寸法を維持できる。また、第一反射膜上に第一電極を設け、第二反射膜上に第二電極を設け、これらの第一電極及び第二電極の間に駆動電圧を印加することで、反射膜間のギャップ寸法を変更することができる。
【0103】
上記各実施形態及び変形例では、光源21を備えるとしたが、測定対象画像Xとして、自ら光を発する各種ディスプレイに表示されるものに限定される場合は、必ずしも光源21を備えていなくてもよい。
上記各実施形態及び変形例では、テレセントリック光学系31を備えるとしたが、本発明はこれに限定されず。分光フィルターに測定対象画像からの光を導くことができる導光光学系を設ける構成であればよく、例えば、LCF等を設ける構成としてもよい。
【0104】
上記各実施形態及び変形例では、順次表示される4つのカラーパッチを測定すると説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以下、又は5つ以上のカラーパッチを測定するようにしてもよい。
上記各実施形態及び変形例では、押し当て部25が弾性部材で形成された形態を示すが、本発明はこれに限定されない。すなわち、押し当て部25は、弾性変形しない硬い部材で形成してもよい。これにより、画像表示装置8の表示部82や測定対象画像Xが印刷された印刷物に押し当てられた際に、押し当て部25が変形せず、分光測定装置2を表示部82や印刷物等に対して固定することが容易となる。従って、押し当て部25の表示部82や印刷物等に当接する当接面を、分光測定装置2が表示部82や印刷物等に対して所望の相対角度となるように(例えば、テレセントリック光学系31の光軸に対して直交するように)構成することにより、上記相対角度を所望の角度又は相対角度として許容される範囲内に維持することが容易となり、測色精度を一層向上させることができる。
【0105】
上記各実施形態及び変形例では、カラーパッチ101の表示位置を対称移動させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ランダムに表示位置を変更するようにしてもよい。
上記第二実施形態では、カラーパターン10E,10Fと、カラーパターン10G,10Hに含まれる各カラーパッチの色が異なる場合について説明したが、本発明では、各カラーパターン10E,10F,10G,10Hにおいて、互いにカラーパッチの色が異なるようにしもよく、この場合、より多くの色のカラーパッチを測定することができ、測色精度を一層向上させることができる。
【0106】
上記各実施形態及び変形例では、識別画像9として、基準色の基準色画像を表示させていたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、識別画像9は、分光測定装置2に測定開始を指示可能な画像であればよく、具体的には、分光測定装置2の待機時における波長可変干渉フィルター5を透過可能な波長(設定波長)を含む光を発する画像であればよい。また、識別画像9として、表示領域Ardの全面に基準色を表示させる画像を所定時間だけ表示させるとしたが、設定波長を含む光を発する画像を断続的に表示(点滅)させたり、所定のパターンで表示させるようにしてもよい。
なお、上記第一実施形態では、識別画像9として基準色画像を表示させない場合、基準色データを取得するために、別途、基準色画像を表示して測定するようにしてもよい。この場合、識別画像9を検知するトリガー検知部64とは別に、基準色画像を検知する基準色画像検知手段としての、基準色検知部を回路基板6に設け、基準色画像が表示されたことを検知し、基準色データを取得する。
【0107】
上記各実施形態及び変形例では、測定データに相対値を関連付けたプロファイル作成用データを出力したが、本発明はこれに限定されず、カラーパッチに基づく測定データのみをプロファイル作成用データとして出力してもよい。この場合、基準色の基準色データを取得するための位置特定部65、及び基準色データに対する測定データの相対値を取得するための相対値取得部66を設けなくてもよい。
【0108】
上記各実施形態及び変形例では、表示部82に分光測定装置2の配置位置を示すための測定位置マーク11として、三角形状のマークを複数表示させるとしたが、本発明はこれに限定されない。測定位置マーク11の数や形状は特に制限されず、分光測定装置2の配置位置を示すことができれば任意の数、形状でもよい。また、分光測定装置2の配置位置が特定可能であれば、必ずしも測定位置マーク11を表示させなくてもよい。
また、測定位置マーク11に対して分光測定装置2の位置を調整するための位置合わせ用マーク12を分光測定装置2の外装ケース24の表面に設けるとしたが、必ずしも位置合わせ用マーク12を設けなくてもよい。
【0109】
上記各実施形態では、動作状況及び測定結果の少なくともいずれかを含む通知を報知する報知部として表示部22を備えていたが、本発明はこれに限定されない。分光測定装置2は、通知部として音声出力部を備え、測定開始や測定終了等を使用者に通知する通知音を出力可能に構成してもよい。これにより、使用者は、分光測定装置2の動作状況を容易に把握することができる。
【0110】
上記各実施形態及び変形例では、分光測定装置2は、識別画像9が表示されたことを検知して測定開始及び終了を検知し、分光測定装置2及び画像表示装置8の動作タイミングをPC7によって同期させない場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、PCが、分光測定装置2及び画像表示装置8の動作を制御して、動作タイミングの同期等の制御を行うように構成してもよい。
図12は、本発明に係るカラーマネージメントシステムの一例であるカラーマネージメントシステム1Bの概略構成を示すブロック図である。
カラーマネージメントシステム1Bは、
図12に示すように、上記各実施形態及び変形例とは、PC7Bが、分光測定装置2及び画像表示装置8の動作を制御する測定制御部76を備えている点で相違しており、その他の点では上記各実施形態と基本的に同様の構成を有する。
【0111】
PC7Bは、画像データ出力部71、プロファイル出力部72、記憶部73、及び測定制御部76を備える。
測定制御部76は、記憶部73に記憶されている各種プログラムやデータ等を用いて、分光測定装置2及び画像表示装置8を制御する。
例えば、画像表示装置8にカラーパッチを表示させるタイミングと、分光測定装置2の測定開始タイミングとを同期させるように分光測定装置2及び画像表示装置8を制御する。
また、例えば、画像表示装置8が高精細の画像を表示可能である場合、波長可変干渉フィルター5の測定波長間の間隔を短く設定し、当該設定した波長間隔で駆動するように、分光測定装置2に指示する。分光測定装置2のフィルター制御部62は、設定された波長間隔で測定波長変更させながらカラーパッチを測色して測定データを取得する。この場合、予め、画像表示装置8と、波長間隔とを対応づけたテーブル等のデータを記憶部73に記憶しておき、当該データを参照して、波長間隔を設定してもよい。
【0112】
なお、上記各実施形態及び変形例では、カラーパターンの表示及び変更タイミングと、分光測定装置の測定タイミングを同期させる構成としたが、本発明はこれに限定されない。分光測定装置の測定タイミングを同期させずに、使用者の指示に応じて、予め表示されているカラーパターンや基準色画像を個別に測定してもよい。
【0113】
上記各実施形態及び変形例では、分光測定装置は、光センサー部3と、当該光センサー部3を制御する回路基板6、表示部22、及び電池23とが、外装ケース24によって一体的に構成されていたが、本発明はこれに限定されず、これらが別体で構成されてもよい。
図13は、本発明の分光測定装置の一変形例を示す図である。
分光測定装置2Aは、
図13に示すように、光センサー部3と、光センサー部3がマイクロUSB等で通信可能に接続された携帯端末15とを備える。上記各実施形態において、分光測定装置2を制御するために各種回路61〜69が設けられた回路基板6が、分光測定装置2の外装ケース24の内部に配置されていたが、本変形例の分光測定装置2Aでは、光センサー部3と、分光測定装置2Aを制御する制御部が設けられた携帯端末15とが、別体で構成され、これらが通信可能に接続されている。なお、本変形例では、光センサー部3は、筐体に収容されており、その筐体に設けられた光入射口には、上述の押し当て部25が設けられている。さらに、光センサー部3は、押し当て部25の内側を照明する光源21を備えている。
【0114】
携帯端末15は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末である。この携帯端末15は、表示部151と、操作部152とを備える。表示部151は、タッチパネルで構成されており、携帯端末15は、表示部151のタッチパネルや操作部152からの入力に応じて光センサー部3を制御する。また、図示しない無線装置を備えており、PC7と無線での通信、例えば、LANやインターネットを介した通信を行うことができる。
【0115】
ここで、分光測定装置2Aでは、光センサー部3の制御は、携帯端末15に設けられた演算装置及び記憶装置等を利用して行われる。すなわち、光センサー部3の駆動制御は、予め携帯端末15の記憶装置に記憶された各種プログラム及びデータ等を使用して行われる。また、光センサー部3への電力の供給も、携帯端末15に設けられた電源から行われる。
【0116】
このように、光センサー部3を独立して構成し、光センサー部3の制御を、携帯端末15を利用して行うことにより、携帯端末15と接続可能な光センサー部3を製造し、光センサー部3を制御するプログラム等を携帯端末15に提供するだけで分光測定装置2Aを構成することができる。したがって、分光測定装置2Aを提供するために光センサー部3に、各種制御回路や、電池や、表示部といった部品を組み込む必要がなく、より製造コストを低減させることができる。また、使用しないときは、光センサー部3を取り外すことができるので、実質的に分光測定装置を大幅に小型化させることができる。
【0117】
なお、携帯端末15を本発明のプロファイル作成装置として機能させてもよい。
また、上記変形例では、各種回路61〜69を携帯端末15によって実現するとしたが、これに限定されない。例えば、表示部及び電源は携帯端末15の表示部151や電源を利用し、光センサー部3の駆動に必要な回路は、光センサー部3と一体に設けてもよい。
【0118】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせることで構成してもよく、また他の構造などに適宜変更してもよい。