【実施例】
【0033】
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1,2に示す配合からなる16種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜4、比較例1〜12)を、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、1.8Lの密閉型ミキサーで160℃、5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄及び加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。なお表1,2において、油展オイルを含むSBRについて、括弧内に各ゴム成分の正味の配合量を記載した。また表3に記載した共通配合剤の添加量は、表1,2に記載したゴム成分100重量部(正味のゴム量100重量部)に対する重量部で表わした。
【0034】
得られた16種類のタイヤトレッド用ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間プレス加硫して試験片を作製し、下記に示す方法で高温状態(100℃)でのゴム硬度、300%モジュラス及びtanδ(100℃)を評価した。
【0035】
ゴム硬度(100℃)
得られた試験片のゴム硬度を、JIS K6253に準拠し、デュロメータのタイプAにより温度100℃で測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1,2の「ゴム硬度(100℃)」の欄に示した。この指数が大きいほど、ゴム硬度が高く機械的特性が優れ、タイヤが高温状態になっても操縦安定性が優れることを意味する。
【0036】
300%モジュラス(100℃)
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度100℃で500mm/分の引張り速度で試験を行い、300%モジュラス(300%変形応力)を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1,2の「300%Mod(100℃)」の欄に示した。この指数が大きいほど、高温状態での剛性が大きく機械的特性が優れること、また空気入りタイヤが長時間高速走行をしたときに操縦安定性及び耐摩耗性が優れることを意味する。
【0037】
動的粘弾性(100℃のtanδ)
得られた試験片を使用しドライグリップ性能の指標として、損失正接tanδ(100℃)を評価した。tanδは、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度100℃の条件下で測定した。得られた結果は比較例1の値を100とする指数として、表1,2の「tanδ(100℃)」の欄に示した。tanδ(100℃)の指数が大きいほど、ドライグリップ性能が優れることを意味する。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・S−SBR:溶液重合スチレンブタジエンゴム、スチレン量が36重量%、ビニル量が64重量%、Mwが147万、Tgが−13℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品、旭化成ケミカルズ社製タフデンE680
・E−SBR1:乳化重合スチレンブタジエンゴム、スチレン量が23.5重量%、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品、日本ゼオン社製Nipol 1723
・E−SBR2:乳化重合スチレンブタジエンゴム、スチレン量が40重量%、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品、日本ゼオン社製Nipol 1739
・エラストマー1:スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン量が48重量%、Mnが65800、旭化成ケミカルズ社製タフプレン126S
・エラストマー2:スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を部分水添したエラストマー、スチレン量が57重量%、Mnが103000、旭化成ケミカルズ社製S.O.E. S1611
・エラストマー3:スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を完全水添したエラストマー、スチレン量が61重量%、Mnが96700、旭化成ケミカルズ社製S.O.E. L605
・カーボンブラック1:東海カーボン社製シースト9、N
2SA=142m
2/g
・カーボンブラック2:三菱化学社製ダイアブラックUX10、N
2SA=182m
2/g
・カーボンブラック3:コロンビアンカーボン社製CD2019、N
2SA=340m
2/g
・テルペン樹脂:軟化点が125℃の芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト 4号S
【0041】
【表3】
【0042】
表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤:加硫促進剤CBS、大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
【0043】
表1,2から明らかなように実施例1〜4のタイヤトレッド用ゴム組成物は、高温状態(100℃)におけるゴム硬度、300%モジュラス及びtanδ(100℃)が高いことが確認され、ドライグリップ性能、操縦安定性及び耐摩耗性を優れたものにすることができる。
【0044】
比較例1のゴム組成物は、部分水添エラストマー2を配合せずに、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(水添していないエラストマー1)を配合したので、高温状態(100℃)におけるゴム硬度、300%モジュラス及びtanδ(100℃)を改良することができない。
【0045】
比較例2のゴム組成物は、部分水添エラストマー2を配合しないので100℃のtanδが悪化する。
【0046】
比較例3のゴム組成物は、部分水添エラストマー2の配合量が30重量を超えたので、ゴム硬度(100℃)が悪化する。
【0047】
比較例4のゴム組成物は、カーボンブラック3のN
2SAが200m
2/gを超えるので、ゴム硬度(100℃)及び100℃のtanδが悪化する。
【0048】
比較例5のゴム組成物は、部分水添エラストマー2を配合せずに、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を完全水添したエラストマー3を配合したので、ゴム硬度(100℃)及び300%モジュラス(100℃)が悪化する。
【0049】
比較例6のゴム組成物は、乳化重合スチレンブタジエンゴムE−SBR1のスチレン量が40重量%未満であるので、高温状態(100℃)におけるゴム硬度及び300%モジュラスが悪化し、tanδ(100℃)を改良することができない。
【0050】
比較例7のゴム組成物は、乳化重合スチレンブタジエンゴムE−SBR2の配合量が40重量%未満なので、高温状態(100℃)におけるゴム硬度が悪化する。
【0051】
比較例8のゴム組成物は、乳化重合スチレンブタジエンゴムE−SBR2の配合量が80重量%を超えるので、高温状態(100℃)におけるゴム硬度及び300%モジュラスが悪化し、tanδ(100℃)が悪化する。
【0052】
比較例9のゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂を配合しないので、高温状態(100℃)の300%モジュラスが悪化する。
【0053】
比較例10のゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂を10重量部を超えて配合したので、ゴム硬度(100℃)が悪化する。
【0054】
比較例11ゴム組成物は、カーボンブラック1の配合量が50重量部未満なので、高温状態(100℃)のゴム硬度、300%モジュラス及び100℃のtanδが悪化する。比較例12ゴム組成物は、カーボンブラック1の配合量が120重量部を超えるので、ゴム硬度(100℃)が高くなりすぎる。
【0055】
また、実施例2及び比較例1,2のゴム組成物によりタイヤトレッド部を構成したタイヤサイズ195/55R15の空気入りタイヤを製作した。得られた空気入りタイヤを、それぞれリム(サイズ15×6J)に組み、空気圧150kPaで、テスト車両に装着し、テストドライバーがラリーコース(一周約2km)を10周走行させたときの周回毎のラップタイムを計測した。グリップ性の持続性能として、10周連続走行のうち、8〜10ラップの平均タイムを、比較例2の空気入りタイヤにおける8〜10ラップの平均タイムを基準タイムにして評価した。
【0056】
実施例2の空気入りタイヤは、平均ラップタイムが、基準タイムより1.0秒以上速い結果が得られた。これにより特定の部分水添エラストマーを配合することにより、ドライグリップ性の持続性能が大幅に改良されることが確認された。
【0057】
比較例1の空気入りタイヤは、平均ラップタイムが、基準タイムより0.5秒遅くなるという結果が得られた。またこの空気入りタイヤでは、早くも8周目のラップタイムが悪化してしまった。これによりスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(水添していないたエラストマー)を配合することにより、ドライグリップ性の持続性能が大幅に低下することが確認された。