特許第6225474号(P6225474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225474
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20171030BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G02B27/02 Z
   H04N5/64 511A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-101932(P2013-101932)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-222302(P2014-222302A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】山田 文香
(72)【発明者】
【氏名】米窪 政敏
(72)【発明者】
【氏名】横山 修
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0132914(US,A1)
【文献】 特表2003−536102(JP,A)
【文献】 特開2006−003872(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/156167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 − 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を出射する画像形成装置と、
画像光入射部、外光入射部および光出射部を備えた導光部材と、
前記光出射部に設けられた第1回折光学素子と、
前記外光入射部に設けられた偏光部材と、を有し、
前記偏光部材は、前記第1回折光学素子の偏光特性において回折効率が高い第1偏光を遮断し、回折効率が低い第2偏光を透過させ、
前記第1回折光学素子及び前記偏光部材は、前記画像光入射部と重ならないように設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項に記載の表示装置において、
前記光出射部は、前記導光部材の第1面に位置し、
前記偏光部材は、前記第1面と対向した第2面に設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項に記載の表示装置において、
前記偏光部材は、前記第1面に垂直な方向からみて、前記第1回折光学素子と重なる部分を有することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の表示装置において、
前記偏光部材は、前記第1面に垂直な方向からみて、前記第1回折光学素子よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載の表示装置において、
前記画像光は、前記画像光入射部から入射し、前記導光部材を導光して前記第1回折光学素子で回折された後、第1方向に出射し、
前記偏光部材は、前記第1方向からみて、前記第1回折光学素子よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れかに記載の表示装置において、
前記画像形成装置と前記画像光入射部との間に設けられた第2回折光学素子を有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
画像光を出射する画像形成装置と、
第1画像光入射部、第1外光入射部および第1光出射部を備えた第1導光部材と、
前記画像形成装置と前記第1導光部材との間に設けられ、第2画像光入射部、第2外光入射部および第2光出射部を備えた第2導光部材と、
前記第1光出射部に設けられた第1回折光学素子と、
前記第1外光入射部に設けられた偏光部材と、を有し、
前記偏光部材を介して入射した外光は、前記第1回折光学素子を介して前記第2導光部材の前記第2光出射部から出射され、
前記偏光部材は、前記第1回折光学素子の偏光特性において回折効率が高い第1偏光を遮断し、回折効率が低い第2偏光を透過させることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置において、
前記第1回折光学素子及び前記偏光部材は、前記第1画像光入射部と重ならないように設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の表示装置において、
前記画像形成装置と前記第1画像光入射部との間に設けられた第2回折光学素子を有することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか一項に記載の表示装置において、
前記導光部材を保持するフレームを備え、
前記フレームは、頭部に装着されることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像光が導光部材内を導光して出射される表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像光が導光部材内を導光して出射される表示装置としては、例えば、頭部装着型の表示装置を挙げることができる。頭部装着型の表示装置は、画像形成装置と、画像形成装置から出射された画像光が入射する画像光入射部、および画像光入射部から入射した画像光を出射する画像光出射部を備えた透光性の導光部材とを備えている。このため、画像光出射部から出射された画像光により、画像形成装置で形成された画像を見ることができるとともに、導光部材の向こう側の様子を見ることもできる。
【0003】
頭部装着型の表示装置に関しては、画像光の進行方向を変える光学素子として、画像形成装置から出射された画像光を回折して画像光入射部に入射させる入射側の回折光学素子と、画像光出射部から出射された画像光を観察者の眼に向けて回折させる出射側の第2回折光学素子とを用いた構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、回折光学素子によって画像光を観察者の眼に向けて回折させる構成では、導光部材に入射した余計な外光の一部も回折光学素子によって観察者の眼に向けて回折してしまい、外光ノイズが発生してしまうという問題点がある。かかる外光ノイズが発生すると、外光ノイズが画像に重なるように見えてしまい、好ましくない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、画像に重なるように見えてしまう外光ノイズの発生を抑制することのできる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、画像光を出射する画像形成装置と、画像光入射部、外光入射部および光出射部を備えた導光部材と、前記光出射部に設けられた第1回折光学素子と、前記外光入射部に設けられた偏光部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、画像形成装置から出射された画像光は、導光部材の画像光入射部に入射した後、導光部材内を進行し、画像光出射部から出射される。そして、画像光出射部から出射された画像光は、第1回折光学素子によって回折し、観察者の眼に届く。また、導光部材の外光入部には偏光部材が設けられているため、余計な外光が導光部材に入射しようとしても、余計な外光が観察者の眼に届くのを抑制することができる。それ故、画像に外光ノイズが重なるように見えることを抑制することができる。
【0009】
本発明の一態様において、前記偏光部材は、前記第1回折光学素子の偏光特性において回折効率が高い第1偏光を遮断し、回折効率が低い第2偏光を透過させることが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が導光部材に入射しようとしても、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。それ故、画像に外光ノイズが重なるように見えることを抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様において、前記光出射部は、前記導光部材の第1面に位置し、前記偏光部材は、前記第1面と対向した第2面に設けられている構成を採用することができる。
【0011】
本発明の一態様において、前記偏光部材は、前記第1面に垂直な方向からみて、前記第1回折光学素子と重なる部分を有することが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様において、前記偏光部材は、前記第1面に垂直な方向からみて、前記第1回折光学素子よりも大きいことが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記画像光は、前記画像光入射部から入射し、前記導光部材を導光して前記第1回折光学素子で回折された後、第1方向に出射し、前記偏光部材は、前記第1方向からみて、前記第1回折光学素子よりも大きいことが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、画像光を出射する画像形成装置と、画像光入射部、外光入射部および光出射部を備えた導光部材と、前記光出射部に設けられた第1回折光学素子と、前記外光入射部に設けられ、透過率が入射角度依存性を有する多層膜ミラーと、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の別の一態様では、画像形成装置から出射された画像光は、導光部材の画像光入射部に入射した後、導光部材内を進行し、画像光出射部から出射される。そして、画像光出射部から出射された画像光は、第1回折光学素子によって回折し、観察者の眼に届く。また、導光部材の外光入部には多層膜ミラーが設けられているため、余計な外光が導光部材に入射しようとしても、余計な外光が観察者の眼に届くのを抑制することができる。それ故、画像に外光ノイズが重なるように見えることを抑制することができる。
【0016】
本発明の別の一態様において、前記多層膜ミラーは、第1入射角度範囲と、前記第1入射角度範囲より透過率が高い第2入射角度範囲と、を有し、前記第1回折光学素子による前記画像光の一次回折角度が、前記第2入射角度範囲に含まれていることが好ましい。
【0017】
本発明の別の一態様において、前記光出射部は、前記導光部材の第1面に位置し、前記多層膜ミラーは、前記第1面と対向した第2面に設けられている構成を採用することができる。
【0018】
本発明の別の一態様において、前記多層膜ミラーは、前記第1面に垂直な方向からみて、前記第1回折光学素子と重なる部分を有することが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。
【0019】
本発明の別の一態様において、前記多層膜ミラーは、前記第1面に垂直な方向からみて、前記第1回折光学素子よりも大きいことが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。
【0020】
本発明の別の一態様において、前記画像光は、前記画像光入射部から入射し、前記導光部材を導光して前記第1回折光学素子で回折された後、第1方向に出射し、前記多層膜ミラーは、前記第1方向からみて、前記第1回折光学素子よりも大きいことが好ましい。かかる構成によれば、余計な外光が観察者の眼に届くのを効率よく抑制することができる。
【0021】
本発明の一態様または別の一態様において、前記画像形成装置と前記光入射部との間に設けられた第2回折光学素子を有することが好ましい。
【0022】
本発明の一態様または別の一態様において、前記導光部材を保持するフレームを備え、前記フレームは、頭部に装着される構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係る表示装置の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す表示装置の光学系等の説明図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る表示装置において、シースルーで背景を視認する様子を示す説明図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る表示装置の光学系等の説明図である。
図5】本発明の実施の形態3に係る表示装置の光学系等の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、以下に説明する表示装置はシースルーで外界を見ることができるので、その場合の外光を余計な外光と区別するために、シースルーで外界を見る際の外光は「外界光」とし、余計な外光を単に「外光」として説明する。
【0025】
[実施の形態1]
(表示装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す表示装置の光学系等の説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、正面図、平面図および第2回折光学素子の回折効率を示すグラフである。
【0026】
図1に示す表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)であり、表示装置100を装着した観察者に対して画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。表示装置100は、観察者の眼の前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121の角付近に配置された駆動部(第1駆動部131および第2駆動部132)とを備えている。光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有しており、第1パネル部分111と第2パネル部分112とは、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面に向かって左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の部分であり、単独でも表示装置として機能する。また、図面に向かって右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0027】
図2に示すように、第1表示装置100Aは、画像光出射装置15および導光部材20等を備えている。画像光出射装置15は、図1における第1駆動部131に相当し、導光部材20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し、左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0028】
画像光出射装置15は、画像形成装置11と投射光学系12とを有している。画像形成装置11は、図示を省略するが、2次元的な照明光を出射する照明装置と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス、照明装置および液晶表示デバイスの動作を制御する駆動制御部とを有している。照明装置は、赤、緑、青の3色を含む光を発生し、液晶表示デバイスは、照明装置からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光L0を形成する。投射光学系12は、液晶表示デバイス上の各点から出射された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。なお、画像形成装置11としては、光源からの光をMEMS等のミラーで反射させて画像を形成させる反射型の空間光変調器を用いてもよい。
【0029】
導光部材20は、XY面に平行な面(第1面20aおよび第2面20b)をもってX方向に延在する平板状の透光性部材からなる。導光部材20は、一体形成品であるが、機能的に、画像光入射部21と導光部22と画像光出射部23とに分けて考えることができる。
【0030】
画像光入射部21は、導光部材20のX方向の一方側端部で画像光出射装置15と対向する面であり、画像光出射部23は、導光部材20のX方向の他方側端部で観察者の眼Gと対向する面であり、導光部22は、画像光入射部21と画像光出射部23との間に位置する部分である。本形態において、画像光出射装置15から画像光L0の出射方向は、画像光入射部21に対して斜めに向いており、観察者の視線は、画像光出射部23に対して斜めに向いている。
【0031】
画像光入射部21と画像光出射部23は、導光部材20のY方向の異なる面に構成される場合もあるが、本形態において、画像光入射部21および画像光出射部23は、導光部材20においてY方向の一方側の面(第1面20a)に構成されている。
【0032】
導光部22は、導光部材20のZ方向の一方側の第1面20aおよび他方側の第2面20bを反射面として、画像光入射部21から入射した画像光L0を画像光出射部23に導く。ここでは、第1面20aおよび第2面20bは、屈折率差を利用する全反射面であり、ミラー層等の反射コートが施されていない。なお、導光部材20のZ方向の厚みは、例えば5mm程度である。
【0033】
(第2回折光学素子17および第1回折光学素子18)
導光部材20には、画像光出射部23に重なるように第1回折光学素子18が配置され、画像光入射部21に重なるように第2回折光学素子17が配置されている。第2回折光学素子17は、画像光出射装置15から出射された画像光L0をX方向に回折して画像光入射部21に斜めに入射させ、第1回折光学素子18は、画像光出射装置15から出射された画像光L0をX方向に回折して観察者の眼Gに到達させる。
【0034】
本形態において、第1回折光学素子18は、表面レリーフ型の回折光学素子であり、第1回折光学素子18に入射した光に対して、図2(c)に示す回折効率を有している。図2(c)には、第1回折光学素子18の溝方向と電場ベクトルの振動方向とが垂直であるS偏光の回折効率を点線LSで示し、第1回折光学素子18の溝方向と電場ベクトルの振動方向とが平行であるP偏光の回折効率を実線LPで示してある。
【0035】
図2(c)に示すように、本形態では、S偏光(第1偏光)は、P偏光(第2偏光)に比して回折効率が高い。それ故、本形態では、画像光出射装置15から出射された画像光L0は、図2(c)に示す特性に合わせてS偏光を多く含んだ状態で出射され、S偏光を多く含んだ光として観察者の眼Gに到達する。
【0036】
(画像表示動作)
本形態の表示装置100において、画像光出射装置15から画像光L0が出射されると、画像光L0は、第1回折光学素子18によってX方向に回折した1次回折光(例えば、+1次回折光)が画像光入射部21から導光部材20に入射する。そして、導光部材20において、画像光L0は、まず、導光部材20の第2面20bに入射し、全反射される。次に、画像光L0は、導光部材20の第1面20aに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光部材20の内部を画像光出射部23が位置する側に導かれる。
【0037】
そして、画像光L0は、画像光出射部23から出射された後、第1回折光学素子18によってX方向に回折され、1次回折光(例えば、+1次回折光)が観察者の眼Gに届く。従って、観察者は、画像光出射装置15で形成された画像を見ることができる。
【0038】
(シースルーでの背景の視認)
図3は、本発明の実施の形態1に係る表示装置100において、シースルーで背景を視認する様子を示す説明図である。なお、図3では、入射角度を表すにあたって、入射部に対する法線から時計周りに傾いた方向の極性を+で表し、入射部に対する法線から反時計周りに傾いた方向の極性を−で表してある。
【0039】
本形態の表示装置100では、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bには反射コートが施されていない。このため、導光部材20において、画像光入射部21および光出射部23以外の全面が、外光が入射可能な外光入射部29になっている。従って、導光部材20の向こう側において、観察者の眼Gと画像光出射部23とを通る仮想線上(画像光出射部23を通って第1回折光学素子18による画像光L0の回折方向に沿う方向に延在する仮想線上)を進行する外界光L1は、外光入射部29のうち、第2面20bから導光部材20に入射した後、画像光出射部23から出射される。そして、外界光L1のうち、第1回折光学素子18から0次光として出射された光が観察者の眼Gに届く。従って、観察者は、画像光出射装置15で形成された画像を見ることができるとともに、導光部材20の向こう側の景色等をシースルーで見ることができる。本形態では、第1回折光学素子18の回折効率がS偏光に対してP偏光が低いので、外界光L1のうち、第1回折光学素子18から0次光として透過したP偏光が主に観察者の眼Gに届く。
【0040】
なお、本形態では、導光部材20の第1面20a、画像光出射部23および第1回折光学素子18に対する法線に対して、例えば、−25°の角度を成す位置に観察者の眼Gが位置するように設定されている。このため、導光部材20の向こう側から、導光部材20の第2面20bに対して−25°の入射角度で入射した外界光L1が観察者の眼Gに届くようになっている。
【0041】
(余計な外光対策)
本形態の表示装置100では、例えば、導光部材20の向こう側において、導光部材20の外光入射部29のうち、第2面20bに対して、例えば、+31°の入射角度で入射した余計な外光(図3に示す外光L2)については、以下に説明する外光ノイズ低減素子19を用いて、観察者の眼Gに届くことを阻止する。具体的には、導光部材20の外光入射部29のうち、余計な外光L2が入射する位置に外光ノイズ低減素子19が設けられている。
【0042】
外光ノイズ低減素子19は、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bのうち、第1回折光学素子18が配置されている側とは反対側の側(導光部材20の画像光出射部23と対向する面側とは反対側)の第2面20bに沿うように配置されている。ここで、画像光出射部23に対する法線方向(画像光出射部23に対して垂直な方向)からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18と重なっている。また、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。
【0043】
本形態において、外光ノイズ低減素子19は偏光部材19aであり、第1回折光学素子18での回折効率が低い方の第2偏光を透過し、第1回折光学素子18での回折効率が高い方の第1偏光を遮断する。本形態において、外光ノイズ低減素子19(偏光部材19a)は、第1回折光学素子18での回折効率が低いP偏光(第2偏光)を透過し、第1回折光学素子18での回折効率が高いS偏光(第1偏光)を遮断する。
【0044】
従って、本形態の表示装置100において、観察者は、画像光出射装置15で形成された画像、および導光部材20の向こう側の景色等をシースルーで見ることができるのに対して、導光部材20の向こう側のうち、導光部材20の第2面20bに対して、例えば、+31°の入射角度で入射した余計な外光L2については、第1回折光学素子18で回折されて1次回折光として観察者の眼Gに到達してしまう現象を抑制することができる。
【0045】
なお、本形態では、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。また、観察者の眼Gと画像光出射部23とを通る仮想線(第1回折光学素子18による画像光L0の+1回折方向=第1方向)に沿う方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は、第1回折光学素子18より大きく、第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。従って、観察者の眼Gと画像光出射部23とを通る仮想線(第1回折光学素子18による画像光L0の+1回折方向=第1方向に沿って延在する仮想線)は、外光ノイズ低減素子19を通る。このような場合でも、外光ノイズ低減素子19(偏光部材19a)は、P偏光を透過させるので、観察者は、画像光出射装置15で形成された画像および外界光L1を見ることができる。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の表示装置100では、画像形成装置11から出射された画像光L0は、第2回折光学素子17によって回折した後、導光部材20の画像光入射部21に入射し、導光部材20内を進行した後、画像光出射部23から出射される。そして、画像光出射部23から出射された画像光L0は、第1回折光学素子18によって回折し、観察者の眼Gに届く。
【0047】
また、本形態では、導光部材20において余計な外光L2が入射する位置には外光ノイズ低減素子19が設けられているため、余計な外光L2が導光部材20に入射しようとしても、余計な外光L2が観察者の眼Gに届くのを抑制することができる。それ故、画像に外光ノイズが重なるように見えることを抑制することができる。
【0048】
また、外光ノイズ低減素子19は、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bのうち、第1回折光学素子18が配置されている側とは反対側の側(導光部材20の画像光出射部23と対向する面側とは反対側)の第2面20bに重なるように配置されている。また、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18と重なっており、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。また、画像光出射部23を通って第1回折光学素子18による画像光L0の回折方向に沿う方向に延在する仮想線が、外光ノイズ低減素子19が配置されている領域を通っている。このため、余計な外光L2のうち、導光部材20において観察者の眼に届きやすい位置に入射しようとする成分を効率よく低減することができる。
【0049】
また、外光ノイズ低減素子19は、偏光部材19aであり、偏光部材19aは、第1回折光学素子18の偏光特性において回折効率が高いS偏光(第1偏光)を遮断し、回折効率が低いP偏光(第2偏光)を透過する。このため、余計な外光L2のうち、第1回折光学素子18で回折されて1次回折光として観察者の眼に届きやすい成分を効率よく低減することができる。
【0050】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係る表示装置の光学系等の説明図であり、図4(a)、(b)は、平面図、および外光ノイズ低減素子として用いた多層膜ミラーの透過率の入射角度依存性を示すグラフである。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0051】
図4(b)に示す表示装置100においても、実施の形態1と同様、導光部材20には、画像光入射部21に重なるように第2回折光学素子17が配置されているとともに、画像光出射部23に重なるように第1回折光学素子18が配置されている。本形態でも、実施の形態1と同様、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bには反射コートが施されていない。このため、導光部材20において、画像光入射部21および光出射部23以外の全面が、外光が入射可能な外光入射部29になっている。
【0052】
また、本形態の表示装置100でも、実施の形態1と同様、導光部材20の向こう側において、導光部材20の第2面20bに対して、例えば、+31°の入射角度で入射した余計な外光(図3に示す外光L2)については、以下に説明する外光ノイズ低減素子19を用いて、観察者の眼Gに届くことを阻止する。具体的には、導光部材20外光入射部29のうち、余計な外光L2が入射する位置に外光ノイズ低減素子19が設けられている。本形態においても、実施の形態1と同様、外光ノイズ低減素子19は、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bのうち、第1回折光学素子18が配置されている側とは反対側の側(導光部材20の画像光出射部23と対向する面側とは反対側)の第2面20bに沿うように配置されている。ここで、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18と重なっている。また、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。また、観察者の眼Gと画像光出射部23とを通る仮想線(第1回折光学素子18による画像光L0の+1回折方向=第1方向)に沿う方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は、第1回折光学素子18より大きく、第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。従って、観察者の眼Gと画像光出射部23とを通る仮想線(第1回折光学素子18による画像光L0の+1回折方向=第1方向に沿って延在する仮想線)は、外光ノイズ低減素子19を通る。
【0053】
本形態において、外光ノイズ低減素子19は、屈折率が異なる誘電体膜を複数、積層した多層膜ミラー19bである。本形態において、多層膜ミラー19bは、図4(b)に示すように、透過率が約30%の第1入射角度範囲θ1と、第1入射角度範囲θ1より透過率が高い第2入射角度範囲θ2とを有している。本形態において、第2入射角度範囲θ2は、例えば、−40°から+20°の角度範囲であり、第1入射角度範囲θ1は、−40°未満の角度範囲、および+20°を超える角度範囲である。従って、第1回折光学素子18による画像光L0の1次回折角度(−25°)は、第2入射角度範囲θ2に含まれている。
【0054】
それ故、図3に示すように、導光部材20の向こう側から、導光部材20の第2面20bに対して−25°の入射角度で入射した外界光L1を含めて、−40°から+20°の角度範囲で入射した外界光L1は、観察者の眼Gに届く。これに対して、導光部材20の向こう側のうち、導光部材20の第2面20bに対して、例えば、+31°の入射角度で入射した余計な外光L2については、多層膜ミラー19bで反射される。従って、余計な外光L2が導光部材20に入射しないので、余計な外光L2が観察者の眼Gに到達することを抑制することができる。
【0055】
また、本形態では、外光ノイズ低減素子19は、多層膜ミラー19bであり、図4(b)に示すように、−40°から+20°の入射角度範囲(第2入射角度範囲θ2)では透過率が高い。それ故、導光部材20の向こう側から、導光部材20の第2面20bに対して入射してきた背景の外界光L1を広い角度範囲で見ることができる。それ故、シースルーできる角度範囲が広いという利点がある。
【0056】
[実施の形態3]
図5は、本発明の実施の形態3に係る表示装置の光学系等の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0057】
図5に示す表示装置100においても、実施の形態1と同様、導光部材20には、画像光入射部21に重なるように第2回折光学素子17が配置されているとともに、画像光出射部23に重なるように第1回折光学素子18が配置されている。また、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bには反射コートが施されていない。このため、導光部材20において、画像光入射部21および光出射部23以外の全面が、外光が入射可能な外光入射部29になっている。また、本形態の表示装置100でも、実施の形態1と同様、導光部材20の外光入射部29のうち、余計な外光L2が入射する位置に、多層膜ミラー19bからなる外光ノイズ低減素子19が設けられている。本形態においても、実施の形態1と同様、外光ノイズ低減素子19は、導光部材20の第1面20aおよび第2面20bのうち、第1回折光学素子18が配置されている側とは反対側の側(導光部材20の画像光出射部23と対向する面側とは反対側)の第2面20bに重なるように配置されている。また、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18と重なっている。また、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19は第1回折光学素子18より広い範囲にわたって配置されている。
【0058】
ここで、導光部材20は、第2回折光学素子17によって回折された画像光L0の+1次回折光を画像光出射部23に導く第1導光部材として配置されている。本形態では、かかる導光部材20に対して画像光出射装置15とは反対側には、第2回折光学素子17の0次光を画像光出射部23に導く導光部材20′(第2導光部材)が配置されている。導光部材20′は、導光部材20に対向するように配置されている。
【0059】
かかる導光部材20′も、導光部材20と同様、一体形成品であるが、機能的に、画像光入射部21′と導光部22′と画像光出射部23′とに分けて考えることができる。
【0060】
画像光入射部21′は、導光部材20のX方向の一方側端部と対向する面であり、画像光出射部23′は、導光部材20のX方向の他方側端部で対向する面であり、導光部22′は、画像光入射部21′と画像光出射部23′との間に位置する部分である。
【0061】
また、導光部材20′にも、導光部材20と同様、画像光入射部21′に重なるように第2回折光学素子17′が配置されているとともに、画像光出射部23′に重なるように第1回折光学素子18′が配置されている。このため、第1回折光学素子18′は、導光部材20に設けられた外光ノイズ低減素子19と重なっている。また、導光部材20′の第1面20a′および第2面20b′には反射コートが施されていない。このため、導光部材20′において、画像光入射部21′および光出射部23′以外の全面が、外光が入射可能な外光入射部29′になっている。
【0062】
また、導光部材20′には、偏光部材19aや多層膜ミラー19bからなる外光ノイズ低減素子19が設けられている。外光ノイズ低減素子19′は、導光部材20′の第1面20a′および第2面20b′のうち、第1回折光学素子18′が配置されている側とは反対側の側(導光部材20′の画像光出射部23′と対向する面側とは反対側)の第2面20b′に重なるように配置されている。ここで、画像光出射部23′に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19′は第1回折光学素子18′と重なっている。また、画像光出射部23に対する法線方向からみたとき、外光ノイズ低減素子19′は第1回折光学素子18′より広い範囲にわたって配置されている。
【0063】
このように構成した表示装置100においては、画像光出射装置15から画像光L0が出射されると、画像光L0は、第2回折光学素子17によってX方向に回折した+1次回折光が画像光入射部21から導光部材20に入射する。かかる+1次回折光は、実施の形態1で説明したように、導光部材20の内部を進行した後、画像光出射部23および第1回折光学素子18を経由して観察者の眼Gに向かう。
【0064】
本形態では、第2回折光学素子17の0次光も、画像光入射部21から導光部材20に入射する。但し、0次光は、導光部材20の第2面20bに対する入射角が小さい。従って、0次光は、導光部材20の第2面20bから、第2回折光学素子17′に向けて出射される。そして、導光部材20の第2面20bから出射された0次光は、第2回折光学素子17′によってX方向に回折し、画像光入射部21′から導光部材20′に入射する。
【0065】
次に、導光部材20′において、画像光L0は、まず、導光部材20′の第2面20b′に入射し、全反射される。次に、画像光L0は、導光部材20′の第1面20a′に入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光部材20′の内部を画像光出射部23′が位置する側に導かれる。
【0066】
そして、画像光L0は、画像光出射部23′から出射された後、第1回折光学素子18′によってX方向に回折された後、導光部材20に設けられた外光ノイズ低減素子19を透過し、導光部材20に入射し、しかる後に、画像光出射部23および第1回折光学素子18を介して観察者の眼Gに到達する。
【0067】
このように構成した表示装置100でも、実施の形態1、2と同様、観察者は、画像光出射装置15で形成された画像、および導光部材20の向こう側の景色等をシースルーで見ることができるのに対して、例えば、導光部材20の向こう側のうち、導光部材20の第2面20bに対して、例えば、+31°の入射角度で入射した余計な外光L2については、観察者の眼Gに到達することを抑制することができる。
【0068】
なお、本形態では、2つの外光ノイズ低減素子19、19′を用いたが、一方の外光ノイズ低減素子のみでも、余計な外光L2が観察者の眼Gに届くのを緩和することは可能である。
【符号の説明】
【0069】
11・・画像形成装置、12・・投射光学系、15・・画像光出射装置、17・・第2回折光学素子、18・・第1回折光学素子、19・・外光ノイズ低減素子、19a・・偏光部材、19b・・多層膜ミラー、20・・導光部材、20a・・導光部材の第1面、20b・・導光部材の第2面、21・・光入射部、22・・導光部、23・・光出射部、29・・外光入射部、100・・表示装置、121・・フレーム
図1
図2
図3
図4
図5