(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体が噴射されるノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段に印加されることで当該圧力発生手段を駆動させて前記ノズルから液体が噴射されない程度に前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる微振動波形を含む微振動駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、を備え、
前記微振動駆動信号は、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含み、
前記第2の信号部の継続時間が前記第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有し、
液体噴射装置の電源が投入された後、前記第1のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行され、前記第1のモードで微振動動作が実行された後、前記第2のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行されることを特徴とする液体噴射装置。
微振動を行うノズルに対応する圧力発生手段に対し、前記第1のモードの微振動駆動信号または前記第2のモードの微振動駆動信号を選択して印加可能であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記の比較的沈降しやすい成分を含むインクを採用するプリンターでは、微振動動作をできるだけ多く実行することで沈降を抑制することが望まれる。ところが、上記微振動動作を継続させるとインクの増粘が進むという問題があった。すなわち、ノズルにおけるメニスカスは大気に晒されているため、ノズル近傍のインクは増粘しやすい。そして、微振動動作によって増粘したインクが圧力室内に拡散されていくことで、次第に圧力室内のインク全体に増粘が進んでしまう。
【0006】
なお、このような問題は、上記のプリンターに限らず、沈降が生じることがある成分を含む液体を噴射する構成の他の液体噴射装置においても同様に発生する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、沈降が生じることがある成分を含む液体を噴射する構成において、液体の増粘を抑制しつつ効果的に微振動動作を実行することで液体の噴射不良を抑制することが可能な液体噴射装置、及び、その制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体が噴射されるノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段に印加されることで当該圧力発生手段を駆動させて前記ノズルから液体が噴射されない程度に前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる微振動波形を含む微振動駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、を備え、
前記微振動駆動信号は、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含み、
前記第2の信号部の継続時間が前記第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、微振動駆動信号が、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含むので、第1の信号部により微振動動作が行われる毎に第2の信号部により微振動動作が一定時間停止される。これにより、微振動動作を途中で停止させることなく継続的に行う構成と比較して液体の増粘を抑えつつ液体を攪拌させることができる。これにより、比重が比較的重く沈降しやすい成分を含む液体を用いる構成において、含有成分の沈降に起因する噴射不良の発生を低減することが可能となる。また、ノズルからの液体の噴射や吸引クリーニング等のメンテナンスを行うことなく放置できる間隔(所謂、間欠能力)を延ばすことができる。したがって、吸引クリーニングの実行頻度を低くすることができ、液体の消耗を抑えることが可能となる。さらに、圧力発生手段を継続的に駆動させないため、圧力発生手段の劣化が抑制され、また、省電力化にも寄与する。
【0010】
そして、第2の信号部の継続時間が第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有するので、例えば、液体噴射装置の電源がオンされたときの起動時には第1のモードで攪拌効果を高めた微振動動作を行うことで、電源オフ時に沈降した含有成分をより効果的に拡散させることができ、第1のモードでの微振動動作後には第2のモードに切り替えて停止時間をより長く確保した微振動動作を行うことで、液体の増粘をより抑えつつ液体を拡散して含有成分の沈降を抑制することができる。したがって、より長期間に亘って電源がオフされるような状況においても液体の増粘および含有成分の沈降を抑制して噴射不良を低減することが可能となる。
【0011】
また、上記構成において、微振動を行うノズルに対応する圧力発生手段に対し、前記第1のモードの微振動駆動信号または前記第2のモードの微振動駆動信号を選択して印加可能であることが望ましい。
【0012】
また、上記構成において、液体噴射装置の電源が投入された後、前記第1のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行される構成を採用することが望ましい。
【0013】
さらに、上記構成において、前記第1のモードで微振動動作が実行された後、第2のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行される構成を採用することが望ましい。
【0014】
また、上記構成において、前記第2のモードでの微振動動作と、前記ノズルから着弾対象に対して液体を噴射させる噴射動作との間に、前記ノズルから液体を噴射させるフラッシング処理が実行される構成を採用することが望ましい。
【0015】
この構成によれば、第2のモードでの微振動動作と、ノズルから着弾対象に対して液体を噴射させる噴射動作との間に、ノズルから液体を噴射させるフラッシング処理されることにより、液体噴射ヘッド内の増粘した液体が排出されるので、液体の粘度を初期状態(液体カートリッジ等の貯留部材に貯留されている状態)まで回復させることができる。これにより、その後の液体噴射動作における噴射不良をより確実に抑制することが可能となる。
【0016】
また、上記実施形態において、着弾対象の液体着弾面の凹凸または障害物を検出する障害物検出手段を備え、
前記障害物検出手段により障害物検出動作が実行されてから前記着弾対象に対して前記ノズルから液体を噴射させる噴射動作が可能になるまで前記第2のモードでの微振動動作が実行される構成を採用することができる。
【0017】
この構成によれば、障害物検出手段により障害物検出動作が実行されてから着弾対象に対してノズルから液体を噴射させる噴射動作が可能になるまで第2のモードでの微振動動作が実行されるので、着弾対象の表面を平坦にしたり、着弾対象表面の障害物等を取り除いたりする作業中においても増粘を抑制しつつ液体を攪拌することができる。
【0018】
また、上記構成において、前記第1の信号部のみからなる微振動駆動信号が発生される第3のモードを設定可能であり、
前記着弾対象に対する噴射動作の実行が指示されてから噴射動作が可能になるまで前記第3のモードで微振動動作が実行される構成を採用することができる。
【0019】
この構成によれば、着弾対象に対する噴射動作の実行が指示されてから噴射動作が可能になるまで第3のモードで微振動動作が継続的に実行されることで、噴射動作により適した状態まで液体を攪拌することができる。
【0020】
また、上記実施形態において、前記着弾対象に対する噴射動作の終了後、前記第2のモードでの微振動動作が実行される構成を採用することが望ましい。
【0021】
この構成によれば、着弾対象に対する噴射動作の終了後、第2のモードでの微振動動作が実行されるので、次に噴射動作の実行が指示されるまで、或いは、液体噴射装置の電源がオフされるまでの間において、液体の増粘を抑制しつつ液体が攪拌されるので、液体の増粘および含有成分の沈降が進むことを抑制することができる。
【0022】
また、本発明は、液体が噴射されるノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段に印加されることで当該圧力発生手段を駆動させて前記ノズルから液体が噴射されない程度に前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる微振動波形を含む微振動駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記微振動駆動信号は、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含み、 前記第2の信号部の継続時間が前記第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有することを特徴とすることを特徴とする。
また、上記目的を達成するために提案される本発明の液体噴射装置は、以下の構成を備えたものであってもよい。
すなわち、液体が噴射されるノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段に印加されることで当該圧力発生手段を駆動させて前記ノズルから液体が噴射されない程度に前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる微振動波形を含む微振動駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、を備え、
前記微振動駆動信号は、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含み、
前記第2の信号部の継続時間が前記第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有し、
液体噴射装置の電源が投入された後、前記第1のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行され、前記第1のモードで微振動動作が実行された後、前記第2のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行されることを特徴とする。
本発明によれば、微振動駆動信号が、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含むので、第1の信号部により微振動動作が行われる毎に第2の信号部により微振動動作が一定時間停止される。これにより、微振動動作を途中で停止させることなく継続的に行う構成と比較して液体の増粘を抑えつつ液体を攪拌させることができる。これにより、比重が比較的重く沈降しやすい成分を含む液体を用いる構成において、含有成分の沈降に起因する噴射不良の発生を低減することが可能となる。また、ノズルからの液体の噴射や吸引クリーニング等のメンテナンスを行うことなく放置できる間隔(所謂、間欠能力)を延ばすことができる。したがって、吸引クリーニングの実行頻度を低くすることができ、液体の消耗を抑えることが可能となる。さらに、圧力発生手段を継続的に駆動させないため、圧力発生手段の劣化が抑制され、また、省電力化にも寄与する。
そして、第2の信号部の継続時間が第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有するので、例えば、液体噴射装置の電源がオンされたときの起動時には第1のモードで攪拌効果を高めた微振動動作を行うことで、電源オフ時に沈降した含有成分をより効果的に拡散させることができ、第1のモードでの微振動動作後には第2のモードに切り替えて停止時間をより長く確保した微振動動作を行うことで、液体の増粘をより抑えつつ液体を拡散して含有成分の沈降を抑制することができる。したがって、より長期間に亘って電源がオフされるような状況においても液体の増粘および含有成分の沈降を抑制して噴射不良を低減することが可能となる。
また、上記構成において、微振動を行うノズルに対応する圧力発生手段に対し、前記第1のモードの微振動駆動信号または前記第2のモードの微振動駆動信号を選択して印加可能であることが望ましい。
さらに、上記構成において、前記第2のモードでの微振動動作と、前記ノズルから着弾対象に対して液体を噴射させる噴射動作との間に、前記ノズルから液体を噴射させるフラッシング処理が実行される構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、第2のモードでの微振動動作と、ノズルから着弾対象に対して液体を噴射させる噴射動作との間に、ノズルから液体を噴射させるフラッシング処理されることにより、液体噴射ヘッド内の増粘した液体が排出されるので、液体の粘度を初期状態(液体カートリッジ等の貯留部材に貯留されている状態)まで回復させることができる。これにより、その後の液体噴射動作における噴射不良をより確実に抑制することが可能となる。
また、上記構成において、着弾対象の液体着弾面の凹凸または障害物を検出する障害物検出手段を備え、
前記障害物検出手段により障害物検出動作が実行されてから前記着弾対象に対して前記ノズルから液体を噴射させる噴射動作が可能になるまで前記第2のモードでの微振動動作が実行される構成を採用することができる。
この構成によれば、障害物検出手段により障害物検出動作が実行されてから着弾対象に対してノズルから液体を噴射させる噴射動作が可能になるまで第2のモードでの微振動動作が実行されるので、着弾対象の表面を平坦にしたり、着弾対象表面の障害物等を取り除いたりする作業中においても増粘を抑制しつつ液体を攪拌することができる。
また、上記構成において、前記第1の信号部のみからなる微振動駆動信号が発生される第3のモードを設定可能であり、
前記着弾対象に対する噴射動作の実行が指示されてから噴射動作が可能になるまで前記第3のモードで微振動動作が実行される構成を採用することができる。
この構成によれば、着弾対象に対する噴射動作の実行が指示されてから噴射動作が可能になるまで第3のモードで微振動動作が継続的に実行されることで、噴射動作により適した状態まで液体を攪拌することができる。
また、上記構成において、前記着弾対象に対する噴射動作の終了後、前記第2のモードでの微振動動作が実行される構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、着弾対象に対する噴射動作の終了後、第2のモードでの微振動動作が実行されるので、次に噴射動作の実行が指示されるまで、或いは、液体噴射装置の電源がオフされるまでの間において、液体の増粘を抑制しつつ液体が攪拌されるので、液体の増粘および含有成分の沈降が進むことを抑制することができる。
また、本発明は、液体が噴射されるノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段に印加されることで当該圧力発生手段を駆動させて前記ノズルから液体が噴射されない程度に前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる微振動波形を含む微振動駆動信号を発生する駆動信号発生手段と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記微振動駆動信号は、複数の微振動波形が発生される第1の信号部、および、電位が一定に維持される第2の信号部を含み、
前記第2の信号部の継続時間が前記第1の信号部の継続時間よりも長い第1の時間に設定された第1のモードと、前記第2の信号部の継続時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間に設定された第2のモードと、を有し、
液体噴射装置の電源が投入された後、前記第1のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行され、前記第1のモードで微振動動作が実行された後、前記第2のモードで前記微振動駆動信号による微振動動作が実行されることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、Tシャツなどの被捺染材(着弾対象の一種)にインクを噴射して画像や文字等の印捺画像を印刷可能なインクジェット式捺染装置(以下、捺染プリンター)を例に挙げて説明する。なお、「被捺染材」とは、捺染の対象となる「布地」を意味し、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維或いはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれる。
【0025】
図1は、捺染プリンター1の基本構成を説明する斜視図である。また、
図2は、捺染プリンター1の平面図であり、
図3は、捺染プリンター1の側断面図である。本実施形態における捺染プリンター1は、セットトレイ3が着脱可能に装着されるトレイ取付部8(
図3参照)と、当該トレイ取付部8上のセットトレイ3にセットされた被捺染材Tの表面の凸部(障害物)を検出可能な障害物検出器4と、各部の動作を制御するプリンターコントローラー45と、ユーザーからの指示操作を受け付ける操作ボタンや所定の情報を表示する液晶表示部等が設けられた操作パネル部6と、を備えている。
なお、本実施形態で述べる被捺染材Tの表面とは、ノズルから噴射された液体が着弾する面を指す。
【0026】
捺染プリンター1は、被捺染材Tにインクを噴射して画像やテキストなどの印捺画像Gを形成する捺染ヘッド5(液体噴射ヘッドの一種)と、当該捺染ヘッド5を搭載したキャリッジ17を往復移動させるキャリッジ走査部10(
図5参照)と、セットトレイ3を移動させる移動部9と、を備えている。セットトレイ3は、例えば、矩形平板状の部材からなり、その上面に被捺染材Tをセットするセット面3aが形成されている。このセット面3aは、被捺染材Tの第2の面Tbを支持する部位であり、被捺染材Tを平らな状態にセットできるように全面が平坦に形成されている。
【0027】
移動部9は、捺染プリンター1の装置本体2の前方から後方(奥側)にかけて移動方向Aに沿って延びる支持ベース11と、該支持ベース11の中央部において移動方向Aに沿って往復移動可能に設けられているスライダーと所定の高さの支柱とを有する支持台12と、該支持台12を駆動するタイミングベルト13を有する駆動機構と、を備える。また、支持台12の上面には、セットトレイ3が着脱可能にトレイ取付部8に取り付けられている。そして、この移動部9は、上記のセットトレイ3を、被捺染材Tを着脱する位置であるセット位置Sと、捺染ヘッド5による捺染実行領域15を挟んだ位置の捺染開始位置Kとの間で移動させるように構成されている。そして、上記の障害物検出器4による被捺染材Tの表面の障害物の検出は、セットトレイ3をセット位置Sから捺染開始位置Kに移動させる際に実行されるように構成されている。
【0028】
上記の障害物検出器4は、セットトレイ3が通過可能な装置本体2の前面開口部Op(
図1参照)の左右(ヘッド移動方向)の両側に設けられた一対の発光素子4aおよび受光素子4bから構成されている。発光素子4aは、例えば発光ダイオードからなり、装置本体2の前面開口部を挟んで反対側に位置する受光素子4bに向けて、セットトレイ3にセットされた被捺染材Tの通過域に対して直交するように光を照射する。受光素子4bは、例えばフォトダイオードから構成され、受光状態または非受光状態に応じた検出信号をプリンターコントローラー45に対して出力する。セットトレイ3をセット位置Sから捺染開始位置Kに移動させる際に、被捺染材Tの表面に皺やその他の凹凸や異物等の障害物が存在する場合、当該障害物が発光素子4aから出射される光を遮ると受光素子4bでは受光されないので、これに応じて検出信号が変化する。したがって、プリンターコントローラー45は、障害物検出器4の受光素子4bからの検出信号の変化に基づいて、セットトレイ3上の被捺染材Tの表面における障害物の検出ができる。
【0029】
そして、プリンターコントローラー45は、障害物検出器4からの検出信号に基づき、被捺染材Tの表面に障害物が検出されたと判断したとき、捺染ヘッド5による捺染動作は実行せずに、セットトレイ3をセット位置Sに戻す制御を行い、被捺染材Tの表面に障害物が検出された旨を操作パネル部6の液晶表示部に表示することよりユーザーに対して報知する。ユーザーはこれに応じて、セットトレイ3にセットされている被捺染材Tの皺を伸ばしたり異物を除去したりする等して再セットする。再セットが完了した後、セットトレイ3をセット位置Sから捺染開始位置Kに移動させる際に障害物検出器4により再度障害物検出が行われる。そして、障害物検出器4により障害物が検出されなかった場合、セットトレイ3が捺染開始位置Kまで移動し、当該位置から捺染ヘッド5による被捺染材Tに対する捺染動作が開始される。
【0030】
捺染ヘッド5は、装置本体2の内部においてキャリッジ17に保持されている。このキャリッジ17は、キャリッジ走査部10(
図5参照)によってセットトレイ3の移動方向Aと交差する方向である走査方向B(主走査方向)に移動可能に構成されている。キャリッジ17の走査方向Bにおける一端部(
図2における右端部)は、ホームポジションとなっており、このホームポジションの下方には、捺染ヘッド5のノズル面(ノズルプレート28のインク噴射側の面)を封止可能なキャッピング機構7が配設されている。このキャッピング機構7は、上面側が開口したトレイ状の弾性材からなるキャップ部材7aと、ノズル面が封止された状態におけるキャップ部材7aの内部空間を負圧化する図示しないポンプとから構成される。また、キャッピング機構7は、図示しない移動機構によって移動可能に構成され、キャップ部材7aが捺染ヘッド5のノズル面を封止する封止状態と、当キャップ部材7aがノズル面から離隔した待避状態とに切り替えることができるようになっている。具体的には、捺染ヘッド5が被捺染材Tに対して捺染動作を行わない待機状態のとき、或いは、捺染プリンター1の電源がオフにされたときは、キャリッジ17はホームポジションに位置付けられて、キャッピング機構7によって捺染ヘッド5のノズル面がキャッピングされる。これにより、捺染ヘッド5のノズル34からインク溶媒が蒸発することが抑制されるようになっている。また、捺染ヘッド5が捺染動作中において増粘したインク等を強制的に排出する動作であるフラッシング処理時においては、キャップ部材7aは、待避状態でノズル面をキャッピングすることなく捺染ヘッド5から噴射されたインクを受けるインク受け部として機能する。さらに、捺染ヘッド5内の増粘したインクや気泡等を除去してノズルの詰まり等を回復する処理であるメンテナンス動作(吸引クリーニング処理)においては、上記キャッピング状態においてポンプを作動させてキャップ部材7aの内部空間を負圧化させることで、ノズルから強制的にインクや気泡をキャップ部材7a内に排出させる。キャップ部材7aに排出された廃インクは、図示しない廃インクタンクに排出される。
【0031】
捺染ヘッド5は、装置本体2の前面側に搭載されたインクカートリッジ16から供給チューブ等を解して供給されるインクを内部に導入し、導入したインクを被捺染材Tの第1の面Taに向けて噴射させて当該インクを着弾させることで捺染を実行する。本実施形態においては、キャリッジ17の走査方向Bに往復移動しながら被捺染材Tに対してインクを噴射する、いわゆるシリアル型の捺染ヘッド5が採用されている。
【0032】
図4は、捺染ヘッド5の内部構成について説明する要部断面図である。
本実施形態における捺染ヘッド5は、ケース20と、このケース20内に収納される振動子ユニット21と、ケース20の底面(先端面)に接合される流路ユニット22等を備えて構成されている。上記のケース20は、例えば、エポキシ系樹脂により作製され、その内部には振動子ユニット21を収納するための収納空部23が形成されている。振動子ユニット21は、圧力発生手段の一種として機能する圧電素子24と、この圧電素子24が接合される固定板25と、圧電素子24に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル26とを備えている。圧電素子24は、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型であって、積層方向に直交する方向に伸縮可能な所謂縦振動モードの圧電振動子である。
【0033】
流路ユニット22は、流路形成基板27の一方の面にノズルプレート28を、流路形成基板27の他方の面に振動板29をそれぞれ接合して構成されている。この流路ユニット22には、リザーバー30(共通液室)と、インク供給口31と、圧力室32と、ノズル連通口33と、ノズル34とが設けられている。そして、インク供給口31から圧力室32及びノズル連通口33を経てノズル34に至る一連のインク流路が、ノズル34毎に対応して形成されている。
【0034】
上記ノズルプレート28は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル34が列状に穿設されたステンレス等の金属あるいはシリコン単結晶基板からなる薄いプレートである。このノズルプレート28には、ノズル34の列(ノズル列)が複数設けられており、1つのノズル列は、例えば180個のノズル34によって構成される。そして、本実施形態における捺染ヘッド5は、異なる複数色のインク(本発明における液体の一種)、具体的には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の合計4色のインクの他に、ホワイトインク(W)、シルバーインク(S)を加えた合計6色のインクが用いられる。これらの色に対応させて合計6列のノズル列がノズルプレート28に形成されている。
【0035】
ここで、上記のホワイトインクは、白色系の顔料成分を含有したインクであり、白色系液体の一種である。白色系顔料としては、例えば、二酸化チタンを好適に用いることができる。また、シルバーインクは、光沢系顔料成分を含むインクであり、光沢系液体の一種である。光沢系顔料としては、例えば、アルミニウム等の金属から成る粉末状或いはペースト状の金属顔料や、雲母の表面を金属酸化物でコーティングした雲母チタン等から成るパール顔料を用いることができる。なお、「白色系」とは、視覚的に白色と認識される色であって、無彩色の白色には限られず、例えば、オフホワイトやアイボリーホワイトと呼ばれる多少色味がかった白色も含まれることを意味する。また、「光沢系液体」とは、光を反射することにより、記録画等において視覚的に光沢感を認識させ得る顔料を含む液体を意味する。
【0036】
上記振動板29は、支持板36の表面に弾性体膜37を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板が支持板36とされ、この支持板36の表面に樹脂フィルムが弾性体膜37としてラミネートされた複合板材により振動板29が構成されている。この振動板29には、圧力室32の容積を変化させるダイヤフラム部38が設けられている。また、この振動板29には、リザーバー30の一部を封止するコンプライアンス部39が設けられている。
【0037】
上記のダイヤフラム部38は、エッチング加工等によって支持板36を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部38は、圧電素子24の先端面が接合される島部40と、この島部40を囲む薄肉弾性部とからなる。上記のコンプライアンス部39は、リザーバー30の開口面に対向する領域の支持板36を、ダイヤフラム部38と同様にエッチング加工等によって除去することにより作製され、リザーバー30に貯留された液体の圧力変動を吸収するダンパーとして機能する。
【0038】
そして、上記の島部40には圧電素子24の先端面が接合されているので、この圧電素子24を伸縮させることで圧力室32の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室32内のインクに圧力変動が生じる。そして、捺染ヘッド5は、この圧力変動を利用してノズル34からインク滴を噴射させる。
【0039】
図5は、捺染プリンター1の電気的な構成を説明するブロック図である。外部装置44は、例えばコンピューター、デジタルカメラ、或いは携帯電話機などの画像を取り扱う電子機器である。この外部装置44は、捺染プリンター1と通信可能に接続されており、捺染プリンター1において被捺染材Tに画像やテキスト等を印刷させるため、その画像等に応じた印刷データを捺染プリンター1に送信する。
【0040】
本実施形態における捺染プリンター1は、トレイ移動部9、キャリッジ走査部10、障害物検出器4、操作パネル部6、捺染ヘッド5、及び、プリンターコントローラー45を有する。
【0041】
プリンターコントローラー45は、制御手段の一種であり、各部の制御を行う制御ユニットである。プリンターコントローラー45は、インターフェース(I/F)部46と、CPU47と、記憶部48と、駆動信号生成部49と、を有する。インターフェース部46は、外部装置44から捺染プリンター1へ印刷データや印刷命令を送ったり、外部装置44が捺染プリンター1の状態情報を受け取ったりする等プリンターの状態データの送受信を行う。CPU47は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。記憶部48は、CPU47のプログラムや各種制御に用いられるデータを記憶する素子であり、ROM、RAM、NVRAM(不揮発性記憶素子)を含む。CPU47は、記憶部48に記憶されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。
【0042】
駆動信号生成部49は、本発明における駆動信号発生手段として機能する部分であり、駆動信号の波形に関する波形データに基づいて、アナログの電圧信号を生成する。また、駆動信号生成部49は、上記の電圧信号を増幅して駆動信号を生成する。本実施形態における捺染プリンター1は、被捺染材Tに対して捺染ヘッド5のノズル34からインクを噴射させて印捺画像Gを印刷する捺染動作(本発明における噴射動作の一種)に用いられる駆動信号の他に、捺染動作以外の待機状態等で捺染ヘッド5の圧力室32内のインク或いはノズル34におけるメニスカスを攪拌する微振動動作に用いられる微振動駆動信号vCOM(
図6参照)を生成するように構成されている。
【0043】
図6は、上記微振動駆動信号vCOMの構成の一例を説明する波形図である。
本発明に係る捺染プリンター1では、3種類のモード設定が可能に構成されており、駆動信号生成部49は、各モードに応じた3種類の微振動駆動信号vCOMを生成する。より具体的には、駆動信号生成部49は、第1のモードに対応する第1の微振動駆動信号vCOM1と、第2のモードに対応する第2の微振動駆動信号vCOM2と、第3のモードに対応する第3の微振動駆動信号vCOM3と、を発生させる。
【0044】
各微振動駆動信号vCOM中には、ノズル34からインクを噴射させない程度に圧力室32内のインクに圧力変動を生じさせる微振動駆動パルスVP(本発明における微振動波形の一種)が発生される。
図7は、上記微振動駆動パルスVPの構成の一例を説明する波形図である。この微振動駆動パルスVPは、基準電位Ebから微振動電位Ehまでプラス側(第1の極性側)に電位を変化させる第1電位変化部p11と、微振動電位Ehを所定時間維持する電位維持部p12と、微振動電位Ehから電位をマイナス側(第2の極性側)に変化させて基準電位Ebまで復帰させる第2電位変化部p13とにより構成されている。
【0045】
この微振動駆動パルスVPの駆動電圧、すなわち、基準電位Ebから微振動電位Ehまでの電位差Vdは、圧力室32内のインクを攪拌するのに最適な値に設定されている。また、第1電位変化部p11の単位時間あたりの電位変化率は、ノズル34からインクが噴射されない程度の値に設定されている。同様に、第2電位変化部p13の電位変化率についても、ノズル34からインクが噴射されない程度の値に設定されている。
【0046】
この微振動駆動パルスVPが圧電素子24に供給されると、まず、第1電位変化部p11により圧電素子24が収縮してノズル34からインク滴が噴射されない程度に圧力室32が膨張する。そして、電位維持部p12により圧力室32の膨張状態が所定時間維持される。その後、第2電位変化部p13が供給されることにより、圧電素子24が伸長して元の状態(基準電位Ebに対応する状態)まで収縮して圧力室32が基準容積に復帰する。この一連の動きにより、圧力室32のインクにノズル34から噴射されない程度の圧力変動が生じ、この圧力変動によって圧力室32内のインクおよびメニスカスが微振動される。即ち、この微振動動作により、圧力室32内のインクやノズル34付近のインクが攪拌される。そして、この微振動動作によって圧力室32内やノズル34近傍で増粘したインクや沈降した顔料成分が拡散される。
【0047】
上記の第1の微振動駆動信号vCOM1は、微振動駆動パルスVPが一定の間隔で複数継続的に発生される第1の信号部CP1と、微振動駆動パルスVPが発生されず電位が基準電位Ebで一定に維持される第2の信号部CP2とが交互に発生される駆動信号である。すなわち、第1の微振動駆動信号vCOM1は、第1の信号部CP1により微振動動作が継続時間T1だけ行われた後、第2の信号部CP2により継続時間T2だけ微振動動作を停止させる駆動信号である。なお、
図6においては第1の信号部CP1で発生される微振動駆動パルスVPの数を便宜上3つとして模式的に表しているが、実際にはより多くの微振動駆動パルスVPが発生される。ここで、第1の信号部CP1の継続時間T1は、沈降した顔料成分の攪拌に十分かつ微振動動作によってインクの増粘が過度に進まない程度の時間に設定される。この継続時間T1は、インクの種類や温度等の環境に応じて定められる。すなわち、より沈降しやすい顔料成分を含むインクを扱う構成、或いは、温度が低く粘度がより高い状況下では、継続時間T1がより長い時間に設定され、前者のインクよりも沈降しにくい顔料成分を含むインクを扱う構成、或いは、温度が高く粘度がより低い状況下では、継続時間T1がより短い時間に設定される。一方、第2の信号部CP2の継続時間T2(或いは微振動停止時間。本発明における第1の時間に相当)は、継続時間T1に対して1〜100の比率に設定される。
【0048】
この第1の微振動駆動信号vCOM1を用いて微振動動作を行う第1のモードは、捺染プリンター1の電源がオンされたときの起動時であって、ホームポジションに位置付けられた捺染ヘッド5のノズル面がキャッピング機構7によってキャッピングされた状態において設定される。この第1のモードの実行時間は、例えば、起動時から最長20分までの範囲で、前回電源がオフされてから次回電源がオンされるまでの時間に応じた値(規定実行時間)に設定される。すなわち、電源がオフにされていた時間が長いほど、第1のモードの規定実行時間がより長く設定される。第1のモードでの微振動動作の実行中においては、プリンターコントローラー45に対し捺染動作やその他メンテナンス等の実行指示があったときでも上記の規定実行時間が終了するまで捺染動作等の他の動作には移行しない。
【0049】
また、第2の微振動駆動信号vCOM2は、上記の第1の微振動駆動信号vCOM1と同様に、第1の信号部CP1と第2の信号部CP2とが交互に発生される駆動信号である。この第2の微振動駆動信号vCOM2は、継続時間T3だけ第1の信号部CP1により微振動動作が行われた後、継続時間T4だけ第2の信号部CP2により微振動動作を停止させる駆動信号である。第2の微振動駆動信号vCOM2における第1の信号部CP1の継続時間T3は、微振動動作によってインクの増粘が過度に進まない程度の時間に設定され、例えば、上記第1の微振動駆動信号vCOM1における第1の信号部CP1の継続時間T1と同一の値に設定される。一方、第2の微振動駆動信号vCOM2における第2の信号部CP2の継続時間T4(本発明における第2の時間に相当)は、例えば、継続時間T3に対して50〜3600の比率の時間であって、第1の微振動駆動信号vCOM1における第2の信号部CP2の継続時間T2よりも長く設定される。この第2の微振動駆動信号vCOM2を用いて微振動動作を行う第2のモードは、電源起動時における第1のモード実行時以外であって、ホームポジションに位置付けられた捺染ヘッド5のノズル面がキャッピング機構7によってキャッピングされた状態において設定される。
【0050】
そして、第3の微振動駆動信号vCOM3は、上記の第1の微振動駆動信号vCOM1および第2の微振動駆動信号vCOM2とは異なり、第1の信号部CP1のみを発生する駆動信号である。この第3の微振動駆動信号vCOM3を用いて微振動動作を行う第3のモードは、捺染動作やその他メンテナンス等の実行指示があって、これらの捺染動作等が実行可能となるまでの間、キャッピング機構7によるキャッピング状態から捺染ヘッド5のノズル面が開放された状態において設定される。この第3の微振動駆動信号vCOM3における第1の信号部CP1の継続時間T5は、捺染動作等の実行指示があってから当該捺染動作等が実行可能となるまでの時間に応じて変動する。
【0051】
図8は、捺染プリンター1の微振動動作の一例について説明するタイミングチャートである。時点t1で捺染プリンター1が電源オフ状態から電源オン状態に切り替えられると、起動動作が開始される。この際、第1のモードに設定され、捺染ヘッド5のノズル面がキャッピングされた状態で第1の微振動駆動信号vCOM1により捺染ヘッド5の各ノズルに対応する圧電素子24が駆動されて、微振動動作が実行される。上記のように、この第1のモードでの微振動動作では、規定時間が経過するまでは捺染動作やその他メンテナンス等の実行指示があっても上記の設定実行時間が終了するまで捺染動作等の他の動作には移行しない。この第1のモードでは、第2のモードよりも高い頻度で第1の信号部CP1による微振動動作が行われるので、インクの増粘が抑制されつつ電源オフ時に沈降したインクが拡散される。
【0052】
時点t2で第1のモードの規定実行時間が終了すると、続いて、捺染ヘッド5のノズル面がキャッピングされた状態で第2のモードでの微振動動作の実行が開始される。この第2のモードでは、第2の信号部CP2の継続時間T4が第1のモードにおける第2の信号部CP2の継続時間T2よりも長く設定されているので、インクの増粘がより確実に抑制されつつも、インク中の顔料成分の沈降が抑制される。この第2のモードでの微振動動作が実行されている際に、時点t3で、プリンターコントローラー45に対して捺染動作の実行指示があった場合、本実施形態においては、障害物検出器4による被捺染材Tの表面の凹凸・障害物の検出が実行される。最終的に障害物等が検出されずに捺染動作が可能と判定されるまでの間、捺染ヘッド5のノズル面がキャッピングされた状態で第2のモードでの微振動動作が継続される。これにより、ユーザーが被捺染材Tの表面の皺を伸ばして平坦にしたり、被捺染材Tの表面の異物等の障害物を取り除いたりする作業中においてもインクの増粘を抑制しつつ沈降成分を攪拌することができる。
【0053】
そして、時点t4において障害物が検出されずに捺染動作が可能と判定されると、捺染ヘッド5のノズル面がキャッピング機構7によるキャッピングから開放され、続いて時点t5においてフラッシング処理(FL)が行われる。これらの時点t4とt5との間において、第3のモードでの微振動動作が継続的に行われる。これによりインクが十分に拡散される。このため、捺染動作により適した状態までインクを攪拌することができる。上記のフラッシング処理では、被捺染材Tに対して画像等の印刷を行うことを目的とする噴射動作とは別に、フラッシング専用の駆動パルスによりノズル24からインクが空噴射されることで、増粘インクや気泡がキャップ部材7a等のインク受け部に排出される動作である。捺染動作に移行する前にこのフラッシング処理が実行されることにより、ノズル34付近や圧力室32内の増粘インクが排出されるので、ノズル34および圧力室32におけるインクの粘度が初期状態(インクカートリッジに貯留されている状態)に近い状態まで回復する。そして、フラッシング処理が終了した時点t6から、キャリッジ17がホームポジションから捺染実行領域15へ向けて移動して捺染動作の開始準備が完了する時点t7までの間に、第3のモードでの微振動動作が継続的に行われる。これにより捺染動作を行う際に噴射異常が生じない程度までインクが十分に拡散される。
【0054】
時点t7から捺染動作が開始されると、被捺染材Tに対して画像等の形成を行うための専用の駆動信号が駆動信号生成部49から発生されて捺染ヘッド5へと出力され、この駆動信号により圧電素子24が駆動されて捺染動作が行われる。この駆動信号中には、インクの噴射を行わせる噴射駆動パルスの他に微振動駆動パルスが含まれ、捺染動作中にインクが噴射されないノズル34に対応する圧電素子24に印加されることで微振動が行われる(所謂、印字内微振動)。時点t8で捺染動作が終了すると、キャリッジ17が捺染実行領域15からホームポジションへ向けて移動する間、第3のモードでの微振動動作が継続的に行われる。時点t9でキャリッジ17がホームポジションに位置付けられると、キャッピング機構7により捺染ヘッド5のノズル面がキャッピングされ、このキャッピング状態で第2のモードでの微振動動作の実行が開始される。この第2のモードでの微振動動作は、次に捺染動作やメンテナンス動作等の実行指示があるまで、或いは、捺染プリンター1の電源がオフされるまで実行される。
【0055】
以上のように、本発明に係る捺染プリンター1では、第1の信号部CP1と第2の信号部CP2とを交互に発生する微振動駆動信号を用いて微振動動作を行う構成を採用するので、所定時間の微振動動作が行われる毎に微振動動作が一定時間停止される。これにより、微振動動作を途中で停止させることなく継続的に行う構成と比較してインクの増粘を抑えつつインクを攪拌させることができる。これにより、比重が比較的重く沈降しやすい顔料を含むインクを用いる構成において、顔料の沈降に起因する噴射不良の発生を低減することが可能となる。また、ノズル34からのインクの噴射や吸引クリーニング等のメンテナンスを行うことなく放置できる間隔(所謂、間欠能力)を延ばすことができる。したがって、吸引クリーニングの実行頻度を低くすることができ、インクの消耗を抑えることが可能となる。さらに、継続的に圧電素子24を駆動させないため、圧電素子24の劣化が抑制され、また、省電力化にも寄与する。
【0056】
そして、第2の信号部CP2の継続時間T2が第1の信号部CP1の継続時間T1よりも長く設定された第1のモードと、第2の信号部CP2の継続時間T4が第1のモードにおける継続時間T2よりも長く設定された第2のモードと、を有し、これらの中から選択可能であるので、捺染プリンター1の電源がオンされたときの起動時には第1のモードで攪拌効果を高めた微振動動作を行うことで、電源オフ時に沈降した顔料をより効果的に拡散させることができ、第1のモードでの微振動動作後には第2のモードに切り替えて停止時間をより長く確保した微振動動作を行うことで、インクの増粘をより抑えつつインクを拡散して沈降を抑制することができる。したがって、より長期間に亘って電源がオフされるような状況においてもインクの増粘および顔料の沈降を抑制して噴射不良を低減することが可能となる。
【0057】
なお、上記実施形態では、微振動駆動パルスVPが基準電位に対してプラス側に電位を変位させる第1電位変化部p11と、電位を維持させる電位維持部p12と、電位をマイナス側に変位させて基準電位まで復帰させる第2電位変化部p13による構成を例示したが、これには限られない。例えば、
図9に示す、微振動駆動パルスVP′のように、基準電位Ebに対して電位をマイナス側に変位させる第3電位変化部p21と、電位を維持させる第2電位維持部p22と、電位を基準電位へ復帰させる第4電位変化部p23とで構成することもできる。
【0058】
また、上記各実施形態では、圧力発生手段として、所謂縦振動型の圧電素子24を例示したが、これには限られず、例えば、所謂撓み振動型の圧電素子を採用することも可能である。この場合、例示した駆動信号に関し、電位の変化方向、つまり上下が反転した波形となる。
【0059】
また、上記実施形態では、第1の微振動駆動信号vCOM1における第1の信号部CP1の継続時間T1と、第2の微振動駆動信号vCOM2における第1の信号部CP1の継続時間T3が同一の値に設定されていたが、これには限られず、異なる値としてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、色材(顔料)の沈降による噴射不良を例示したが、それには限られない。例えば、樹脂粒子、ワックス剤、防腐剤などのようなインク中に固体として存在するものに対しても有効である。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、本実施形態におけるプリンター51(液体噴射装置の一種)の内部構成を説明する正面図である。このプリンター51において、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド53は、キャリッジ52に搭載されて筐体内部において主走査方向(
図10における左右方向)に往復移動可能にガイドロット62に取り付けられている。このプリンター51は、プラテン60上に搬送・載置される記録紙等の記録媒体(液体着弾対象)に対して記録ヘッド53を主走査方向に相対移動させながら当該記録ヘッド53のノズルからインクを噴射させて、記録媒体上に当該インクを着弾させることにより画像等を記録・印刷する。なお、記録ヘッド53の構成については、上記の第1の実施形態における捺染ヘッド5と概ね同様の構成である。また、記録ヘッド53の圧電素子を駆動する駆動信号の構成や、微振動実行時の各モードについても上記第1の実施形態と同様である。
【0062】
プラテン60に対して主走査方向の一端側(
図10右側)に外れた位置には、記録ヘッド53の待機位置であるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、一端側から順にキャッピング機構54(キャッピング部)、吸引用キャッピング機構56(吸引部)、および、ワイピング機構58(ワイピング部)が設けられている。また、ホームポジションとはプラテン60を挟んで主走査方向の他端部(
図10左側)には、フラッシング領域としてフラッシングボックス61が設けられている。キャッピング機構54は、例えば、エラストマー等の弾性部材からなるキャップ55を有しており、当該キャップ55を記録ヘッド53のノズル面に対して当接させて封止した状態(キャッピング状態)あるいは当該ノズル面から離隔した待避状態に変換可能に構成されている。キャップ55は、記録ヘッド53のノズル面と当接する側の面が開口したトレイ状に形成されており、ノズル面における全ノズルを被覆可能な大きさに設計されている。すなわち、ノズル面に複数のノズルからなるノズル列(ノズル群)が複数列設けられている場合には、キャッピング状態で全てのノズル列を被覆可能に構成されている。そして、プリンター51の電源オフ時などの待機時には、記録ヘッド53のノズル面がキャッピング状態とされ、これにより、ノズルからのインク溶媒の蒸発が抑制される。このキャッピング機構54におけるキャップ55は、ユーザーにより交換可能となっている。
【0063】
吸引キャッピング機構56は、吸引用キャップ57を有しており、キャッピング機構54と同様に、当該吸引用キャップ57を記録ヘッド53のノズル面に対して当接した状態(キャッピング状態)あるいは当該ノズル面から離隔した待避状態に変換可能に構成されている。吸引用キャップ57は、上記キャップ55と同様に、エラストマー等の弾性部材によりノズル面と当接する側の面が開口したトレイ状に形成されている。この吸引用キャップ57の大きさは、一列分のノズル列の領域を被覆可能な大きさに設計されている。また、図示は省略するが、吸引キャッピング機構56は、排液チューブと、この排液チューブの途中に設けられた吸引ポンプを備えている。排液チューブの一端は、吸引用キャップ57に接続されており、また、その他端は、図示しない排液タンクに連通されている。そして、吸引キャッピング機構56は、ノズル形成面における吸引対象のノズル列に対応する領域を吸引用キャップ57によってキャッピングした状態で吸引ポンプを作動させることで、吸引用キャップ57の封止空部内を負圧化させる。これにより、キャッピングされたノズル列のノズルから増粘インクや気泡などを排出させる所謂クリーニング処理を行うように構成されている。そして、ノズル面に対するキャッピング位置を変えることで、各ノズル列に対して順次クリーニング処理を行うことが可能である。この吸引キャッピング機構56における吸引用キャップ57は、キャッピング機構54のキャップ55と異なり交換不可となっているが、状況に応じてユーザーによりインクの拭き取りなどの清掃メンテナンスが行われる。なお、吸引キャッピング機構56を別途設けずに、キャッピング機構54が吸引機能を有する構成を採用することも可能である。
【0064】
ワイピング機構58は、ワイパー59を主走査方向に対して交差する方向(ノズル列方向)に沿って移動可能に有しており、当該ワイパー59を記録ヘッド53のノズル面に対して当接した状態あるいは当該ノズル面から離隔した待避状態に変換可能に構成されている。ワイパー59は、例えば、弾性を有するブレード本体の表面が布で被覆されたものからなる。ワイピング機構58は、当該ワイパー59をノズル面に当接させた状態で、ノズル列の一方から他方に向けて摺動させることでノズル面を払拭する。このワイパー59は、ユーザーにより交換可能となっている。
【0065】
フラッシングボックス61は、記録媒体に対する記録動作とは関係なく記録ヘッド53のノズルからインクを強制的に噴射させるフラッシング処理の際に噴射されたインクを受けるトレイ状のインク受け部64を有する。このインク受け部64の位置は固定されている。インク受け部64には、図示しない排液チューブの一端が接続されており上記の排液タンクに連通されている。また、排液チューブの途中には吸引ポンプが設けられており、この吸引ポンプを作動させることで、インク受け部64内のインクが、排液チューブを通じて排液タンクに排出される。
【0066】
次に、本実施形態においてユーザーにより部品の交換等のメンテナンス作業が行われる際のプリンター51の処理について説明する。
図11は、メンテナンス作業時のプリンター51の処理を説明するフローチャートである。メンテナンス作業としては、例えば、キャップ55、ワイパー59、フラッシングボックス61の交換作業、あるいは、吸引用キャップ57の清掃作業などがある。そして、例えば、プリンター51の本体部に設けられた液晶表示部等に作業手順などが表示され、ユーザーは、この表示された手順に従ってメンテナンス作業を行う。
【0067】
ここで、従来構成のプリンターでは、メンテナンス作業中においては、当該メンテナンス作業の支障にならない位置、例えば、プラテン上(記録媒体に対する記録領域)にキャリッジを待機させていた。しかしながら、この状態では記録ヘッドのノズルにおけるメニスカスが大気に晒されるため、インクの増粘が進みやすい。また、顔料が沈降しやすいインクを採用する場合、顔料成分の沈降が進む問題もあった。これに対し、本発明に係るプリンター51では、メンテナンスの作業内容に応じてキャリッジ52の待機位置を異ならせ、さらに、キャリッジ52の待機位置に応じて、より適切にインクの増粘や顔料の沈降を抑制する処理が行われる。
【0068】
まず、キャリッジ52がフラッシングボックス61の上方に待機可能か否かが判定される(ステップS1)。キャリッジ52の待機位置については、例えばメンテナンスの内容をユーザーに対して選択・指示してもらうことで判定する。キャリッジ52がフラッシングボックス61上で待機可能である(Yes)と判定された場合、キャリッジ52がフラッシングボックス61上(
図10中のAの位置)に移動され、所定の作業が終了するまでの間、一定時間の第3のモードの微振動動作およびフラッシング処理(FL)が、順次繰り返される。これにより、メンテナンス作業中においても第3のモードの微振動動作によってインクが攪拌されるので、顔料の沈降が抑制される。また、微振動動作を継続させるとインクの増粘が進むが、一定間隔で実行されるフラッシング処理によってインクが空噴射されることで、増粘インクがフラッシングボックス61に排出されるので、インクの粘度が初期の値に近い状態まで回復される。所定の作業が終了したならば、当該作業とは別の作業が引き続き行われるか否かが判定される(ステップS11)。なお、ステップS11以降については後述する。
【0069】
ステップS1でフラッシングボックス61の上での待機が不可(No)と判定された場合、次に、キャリッジ52がキャッピング機構54によるキャッピング状態で待機可能か否かが判定される(ステップS3)。キャッピング状態で待機可能である(Yes)と判定された場合、キャリッジ52がキャッピング機構54上(
図10中のBの位置)に移動されて、記録ヘッド53のノズル面がキャップ55によってキャッピングされる。そして、所定のメンテナンス作業が終了するまでの間、このキャッピング状態で第2のモードで微振動動作が実行される。この第2のモードでは、微振動動作の間欠の間隔が第1のモードの場合よりも長く採られているので、インクの増粘が抑制されつつインク中の顔料成分の沈降が低減される。このようにキャッピング状態で第2のモードで微振動を実行することで、インクの増粘と顔料の沈降が可及的に抑えられるので、フラッシング処理やクリーニング処理を別途行う必要が無く、インクの消費が抑えられる。所定の作業が終了したならば、当該作業とは別の作業が引き続き行われるか否かが判定される(ステップS11)。
【0070】
ステップS3においてキャッピング状態での待機が不可(No)と判定された場合、すなわち、ホームポジションおよびフラッシングボックス61の両方での待機が困難な状況では、キャリッジ52はプラテン60の上方(
図10中のCの位置)で待機する。この場合、プラテン60上ではフラッシング処理を行うことはできない。また、この状態で微振動を継続すると、増粘したインクが圧力室内に拡散されていくことで、記録ヘッド内のインク全体に増粘が進んでしまうおそれがある。このため、この場合には、所定の作業が完了するまで、フラッシング処理や微振動動作を行わずに待機する(ステップS5)。すなわち、圧電素子(ACT)の駆動は行われない。ここで、メンテナンス作業に要した時間に応じてインクの増粘度合いや顔料の沈降度合いが異なってくる。このため、作業時間Tが図示しないタイマーにより計時される。この作業時間Tについては閾値が予め設定されている。そして、計時された作業時間Tが閾値以上となったか否かが、作業完了時点で判定される(ステップS6)。
【0071】
作業時間Tが閾値以上となった(Yes)と判定された場合には、フラッシング処理では回復しない程度までインクの増粘が進んでいる状態となっている。このため、キャリッジ52はホームポジションまで移動されて、吸引用キャッピング機構56によってキャッピング状態とされる(ステップS7)。そして、この状態でクリーニング処理が実行される(ステップS8)。すなわち、キャッピング状態においてポンプを作動させて吸引キャップ57の内部空間を負圧化させることで、増粘したインクがノズルから排出される。これにより、記録ヘッド53内部のインクの粘度が初期状態(インクカートリッジに貯留されている状態)に近い状態まで回復する。このクリーニング処理は、各ノズル列に対して順次行われる。クリーニング処理が終了したならば、別の作業が引き続き行われるか否かが判定される(ステップS11)。
【0072】
作業時間Tが閾値未満である(No)と判定された場合には、インクの増粘が軽度である。このため、キャリッジ52はフラッシングボックス61の上まで移動されて、一定時間の第3のモードの微振動動作およびフラッシング処理(FL)が、所定回数実行される。これにより、メンテナンス作業中に沈降した顔料が拡散されるとともに増粘したインクがノズルから排出される。その後、別の作業が引き続き行われるか否かが判定される(ステップS11)。引き続き別の作業が行われる(Yes)と判定された場合、ステップS1に戻り、作業内容に応じて以降の処理が実行される。一方、引き続き別の作業が行われずにメンテナンス作業が完了した(No)と判定された場合、現時点でキャッピング機構54以外の場所にキャリッジ52が待機している場合には、キャッピング機構54上にキャリッジ52が移動され、記録ヘッド53のノズル面がキャッピングされる(ステップS12)。また、キャッピング機構54によって記録ヘッド43のノズル面がキャッピングされた状態でキャリッジ52が待機している場合には、引き続きキャッピング状態が継続される。以上のようにしてメンテナンス作業中のプリンター51の処理が完了する。
【0073】
このように、本実施形態では、メンテナンス作業においてキャリッジ52に搭載された記録ヘッド53がフラッシングボックス61上で待機可能な場合には、第3のモードの微振動動作およびフラッシング処理がメンテナンス作業中に実行され、記録ヘッド53がキャッピング機構54上で待機可能な場合にはキャッピング状態で第2のモードの微振動動作が実行される。また、フラッシングボックス61上或いはキャッピング機構54上で記録ヘッド53が待機出来ない場合には、圧電素子を駆動することなく待機すると共に待機時間(作業時間)を計時し、計時された時間が閾値以上となった場合には、クリーニング処理を実行する一方、計時された時間が閾値以上となった場合には、第3のモードの微振動動作およびフラッシング処理を実行する。すなわち、キャリッジ52の待機位置に応じて、インクの増粘や顔料の沈降を抑制する処理あるいは回復処理が行われる。このため、フラッシング処理やクリーニング処理の実行が最小限に抑えられ、インクの消耗を低減することが可能となる。
【0074】
そして、本発明は、沈降が生じることがある成分を含む液体を扱う他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、紙などのインク吸収層を有したインク吸収性の記録媒体や、プラスチックのようなインク吸収層のないインク非吸収性の記録媒体に画像を印刷する液体噴射装置、液晶ディスプレー等のカラーフィルターを製造するディスプレー製造装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置、ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。