(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する一対の主面と、前記一対の主面を連結するように延び且つ互いに対向する一対の側面と、前記一対の主面を連結するように延び且つ互いに対向する一対の端面と、を有する素体と、
前記素体の前記一対の端面側に配置された複数の外部電極と、
前記素体の前記一対の側面及び前記一対の端面を囲むように、前記素体上と前記複数の外部電極上とにわたって配置された絶縁性樹脂コーティング層と、を備え、
前記一対の主面は、前記絶縁性樹脂コーティング層から露出しており、
前記絶縁性樹脂コーティング層の表面粗さが算術平均粗さRaで、0.02μm以上であり、
前記絶縁性樹脂コーティング層の算術平均粗さRaと前記絶縁性樹脂コーティング層の厚みtとの比Ra/tが、0.7以下であることを特徴とする電子部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品をハンドリングする際に、絶縁性樹脂コーティング層には、他の部材との接触により静電気が発生することが懸念される。絶縁性樹脂コーティング層に静電気が発生すると、発生した静電気により、電子部品が他の部材に付着する懼れがある。
【0005】
電子部品は、一般に、テーピング装置によりキャリアテープのポケットに個々の電子部品を収納したテーピング包装で供給される。テーピング包装された電子部品は、キャリアテープのポケットからマウンター(吸着ヘッド)でピックアップされ、電子機器(たとえば、実装基板など)にマウントされる。このとき、絶縁性樹脂コーティング層に静電気が発生していると、静電気に起因して、次のような事象の発生が考えられる。キャリアテープからカバーテープを剥がす際に、電子部品が、カバーテープに付着して、ポケットから飛び出してしまう。電子部品を吸着ヘッドでピッキングする際に、電子部品が、吸着ヘッドの意図しない位置に付着してしまう。いずれの事象も、電子部品を適切にピックアップできないことの要因となる懼れがある。
【0006】
本発明は、絶縁性樹脂コーティング層での、静電気の発生を抑制しつつ、絶縁性を確保することが可能な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子部品は、互いに対向する一対の主面と、一対の主面を連結するように延び且つ互いに対向する一対の側面と、一対の主面を連結するように延び且つ互いに対向する一対の端面と、を有する素体と、素体の一対の端面側に配置された複数の外部電極と、素体の一対の側面及び一対の端面を囲むように、素体上と複数の外部電極上とにわたって配置された絶縁性樹脂コーティング層と、を備え、絶縁性樹脂コーティング層の表面粗さが算術平均粗さRaで、0.02μm以上であり、絶縁性樹脂コーティング層の算術平均粗さRaと絶縁性樹脂コーティング層の厚みtとの比Ra/tが、0.7以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電子部品では、絶縁性樹脂コーティング層の表面粗さが算術平均粗さRaで、0.02μm以上である。このため、絶縁性樹脂コーティング層と他の部材との接触面積が小さく、電子部品(絶縁性樹脂コーティング層)が他の部材と接触した場合でも、静電気の発生を抑制することができる。
【0009】
ところで、絶縁性樹脂コーティング層の表面粗さが大きくなると、絶縁性樹脂コーティング層にピンホールが生じやすく、絶縁性樹脂コーティング層による外部電極の被覆割合が低下する。絶縁性樹脂コーティング層にピンホールが生じていると、外部電極が、ピンホールを通して、隣接する他の導電性部材(たとえば、電子部品の外部電極など)に接触し、ショートが発生しやすくなり、絶縁性樹脂コーティング層での絶縁性が低下する懼れがある。
【0010】
本発明では、絶縁性樹脂コーティング層の算術平均粗さRaと絶縁性樹脂コーティング層の厚みtとの比Ra/tが、0.7以下であるため、絶縁性樹脂コーティング層による外部電極の被覆割合が低下するのが抑制され、絶縁性樹脂コーティング層での絶縁性を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁性樹脂コーティング層での、静電気の発生を抑制しつつ、絶縁性を確保することが可能な電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1〜
図3を参照して、本実施形態に係る電子部品1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
図2及び
図3は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を説明するための図である。
図3では、後述する内部電極7,8などの図示を省略している。
【0015】
電子部品1は、例えば積層セラミックコンデンサなどの電子部品であり、素体2と、複数の外部電極3,4と、を備えている。素体2は、複数のセラミックグリーンシートを積層して一体化することによって略直方体形状に構成されている。素体2は、
図1にも示されているように、一対の端面2a,2bと、一対の主面2c,2dと、一対の側面2e,2fと、を有している。一対の端面2a,2bは、素体2の長手方向に対向している。一対の主面2c,2dは、一対の端面2a,2bを連結するように伸び且つ互いに対向している。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向している。
【0016】
電子部品1は、たとえば、縦方向の長さが0.4mm〜1.6mm程度に設定され、横方向の長さが0.2mm〜0.8mm程度に設定され、厚みが0.4mm〜0.8mm程度に設定されている。
【0017】
素体2は、
図2に示されるように、複数の長方形状の誘電体層6と、それぞれ複数の内部電極7及び内部電極8とが積層された積層体として構成されている。内部電極7と内部電極8とは、素体2内において誘電体層6の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)に沿ってそれぞれ一層ずつ配置されている。内部電極7と内部電極8とは、少なくとも一層の誘電体層6を挟むように対向配置されている。
【0018】
各誘電体層6は、たとえば誘電体セラミック(BaTiO
3系、Ba(Ti,Zr)O
3系、又は(Ba,Ca)TiO
3系などの誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各誘電体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0019】
内部電極7,8は、例えばNiやCuなどの導電材を含んでいる。内部電極7,8の厚みは、たとえば0.5μm〜3μm程度である。内部電極7,8は、積層方向から見て互いに重なりあう領域を有するような形状であれば、特に形状は限定されない。内部電極7,8は、たとえば矩形状を呈している。内部電極7,8は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。内部電極7は外部電極3と電気的且つ物理的に接続されており、内部電極8は外部電極4と電気的且つ物理的に接続されている。
【0020】
外部電極3は、素体2の端面2a側に配置されている。外部電極3は、一方の端面2aと、端面2aと直交する二つの主面2c,2d及び二つの側面2e、2fの各縁部の一部と、を覆うように形成されている。すなわち、外部電極3は、端面2a上に位置する電極部分3aと、各主面2c,2dの一部上に位置する電極部分3c,3dと、各側面2e,2fの一部上に位置する電極部分3e,3fと、を有している。外部電極3は、五面電極構造である。
【0021】
外部電極4は、素体2の端面2b側に配置されている。外部電極4は、他方の端面2bと、端面2bと直交する二つの主面2c,2d及び二つの側面2e、2fの各縁部の一部と、を覆うように形成されている。すなわち、外部電極4は、端面2b上に位置する電極部分4bと、各主面2c,2dの一部上に位置する電極部分4c,4dと、各側面2e,2fの一部上に位置する電極部分4e,4fと、を有している。外部電極4は、五面電極構造である。
【0022】
外部電極3,4は、以下の手法により形成される。素体2の外表面にCuやNi、あるいはAg、Pdなどを主成分とする導電性ペーストを後述の方法によって付着させる。その後、導電性ペーストを所定温度(例えば、700℃程度)にて焼付け、更に電気めっきを施す。外部電極3,4は、電気めっきにより形成されためっき層を有している。
【0023】
本実施形態では、外部電極3,4は、はんだとの電極濡れ性を改善するために、少なくともSn又はSn合金からなるめっき層を有している。Sn又はSn合金からなるめっき層は、外部電極3,4の表面層を構成する。
【0024】
外部電極3,4は、はんだと焼付け電極層の反応を防止するために、Ni又はNi合金からなるめっき層を有していてもよい。この場合、Sn又はSn合金からなるめっき層は、Ni又はNi合金からなるめっき層が形成された後に、形成される。Ni又はNi合金からなるめっき層の厚みは0.5〜6μm程度であり、Sn又はSn合金からなるめっき層の厚みは1〜7μm程度である。焼付け電極層がNiペーストの焼き付けにより形成されている場合、Ni又はNi合金からなるめっき層を省略してもよい。
【0025】
外部電極3,4は、Cuからなるめっき層を有していてもよい。この場合、Ni又はNi合金からなるめっき層は、Cuからなるめっき層が形成された後に、形成される。
【0026】
本実施形態では、外部電極3,4は、
図3に示されるように、焼付け電極層31,41、Niめっき層33,43、及びSnめっき層35,45を有している。
【0027】
電子部品1は、絶縁性樹脂コーティング層21を備えている。絶縁性樹脂コーティング層21は、
図1及び
図3にも示されるように、素体2の一対の側面2e,2f及び一対の端面2a,2bを囲むように、素体2上と外部電極3,4上とにわたって配置されている。絶縁性樹脂コーティング層21は、素体2の側面2e,2f上に位置する電極部分3e,3f,4e,4f、及び、端面2a,2b上に位置する電極部分3a,4bを覆うように形成されている。絶縁性樹脂コーティング層21は、絶縁性樹脂コーティング剤を付与して固化させることにより形成できる。絶縁性樹脂コーティング剤の付与には、スクリーン印刷法などを用いることができる。絶縁性樹脂コーティング層21は、後述する表面粗さを有している。
【0028】
絶縁性樹脂コーティング剤を固化させてなる絶縁性樹脂コーティング層21は、固化後の厚みが、1.0μm以上20μm以下の範囲に設定されていることが好ましい。
【0029】
製品としての電子部品1をはんだ実装する際に、絶縁性樹脂コーティング層21の下地とされるSn又はSn合金からなるめっき層は、溶融する。絶縁性樹脂コーティング層21が薄すぎる場合、Sn又はSn合金からなるめっき層が溶融すると、絶縁性樹脂コーティング層21の平面方向での機械的強度が不足し、割れや剥離が発生するため、好ましくない。絶縁性樹脂コーティング層21の厚みが1.0μm未満の場合、絶縁性樹脂コーティング層21が形成されない領域が発生する場合があり、好ましくない。
【0030】
絶縁性樹脂コーティング層21が厚すぎると、絶縁性樹脂コーティング層21の固化時の体積収縮による応力が過大になり、同じく実装時に絶縁性樹脂コーティング層21の剥離が発生する懼れがある。絶縁性樹脂コーティング層21の厚みが20μmより厚い場合、以下の問題点が生じるため、好ましくない。固化乾燥の時間がかかる。絶縁性樹脂コーティング層21の固化時の体積収縮による応力によって、固化時に絶縁性樹脂コーティング層21に欠陥が発生する懼れがある。電子部品1の外形寸法が過大となる。
【0031】
絶縁性樹脂コーティング剤としては、熱硬化型の絶縁性樹脂コーティング剤を用いることができる。たとえば、プリント基板のソルダーレジストとして用いられる金属酸化物顔料を用いた熱硬化性エポキシ樹脂塗料が使用可能である。金属酸化物顔料を用いた、シリコーン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料、フェノール樹脂系塗料、ユリア樹脂系塗料、メラミン樹脂系塗料、アミノ樹脂系塗料、不飽和ポリエステル樹脂系塗料、ジアリルフタレート樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料、ポリイミド樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、スピラン樹脂系塗料、熱硬化性アクリル樹脂系塗料、熱硬化性メタクリル樹脂系塗料、又は熱硬化性共重合樹脂系塗料などの耐熱性樹脂塗料も使用可能である。アクリル化エポキシ樹脂系又はアクリル化された合成ゴム系などのフォトレジストとして用いられるレジスト材料も、熱硬化性を有しており、絶縁性樹脂コーティング剤として使用可能である。
【0032】
これらの絶縁性樹脂塗料には、有機顔料又は無機顔料を適度に添加することにより、絶縁性樹脂コーティング層21に着色性又は不透明性を付与することが好ましい。着色性の有機顔料としては、多環顔料系のフタロシアニン系顔料又はアントラキノン系顔料、もしくは、アゾ化合物のジアゾ顔料などが挙げられる。無機顔料としては、金属酸化物又はカーボンブラックなどが挙げられる。上述した金属酸化物の顔料に屈折率の大きい顔料を用いることで、絶縁性樹脂コーティング層21に適度な光散乱性を付与し、実質的な不透明性を付与してもよい。
【0033】
絶縁性樹脂コーティング剤として、熱硬化型の絶縁性樹脂コーティング剤の代わりに、紫外線硬化型の絶縁性樹脂コーティング剤を用いてもよい。たとえば、プリント基板のソルダーレジストとして用いられる金属酸化物顔料を用いたアクリル化エポキシ樹脂系塗料が使用可能である。金属酸化物顔料を用いた、アクリル化シリコーン樹脂系塗料、アクリル化フッ素樹脂系塗料、アクリル化フェノール樹脂系塗料、アクリル化ポリウレタン樹脂系塗料、アクリル化油系塗料、アクリル化アルキド樹脂系塗料、アクリル化ポリエステル系塗料、アクリル化ポリエーテル系塗料、アクリル化スピラン樹脂系塗料、又はアクリル化共重合樹脂系塗料などが使用可能である。上記塗料は、メタクリル化されたものであってもよい。金属酸化物顔料を用いた、不飽和ポリエステル樹脂系塗料又はポリエン−ポリチオール系塗料なども使用可能である。
【0034】
これらの耐熱性樹脂塗料には、有機顔料又は無機顔料を適度に添加することにより、絶縁性樹脂コーティング層21に着色性、若しくは不透明性を付与することが好ましい。着色性の有機顔料としては、多環顔料系のフタロシアニン系顔料又はアントラキノン系顔料、もしくは、アゾ化合物のジアゾ顔料などが挙げられる。無機顔料としては、金属酸化物又はカーボンブラックなどが挙げられる。上述した金属酸化物の顔料に屈折率の大きい顔料を用いることにより、絶縁性樹脂コーティング層21に適度な光散乱性を付与し、実質的な不透明性を付与してもよい。
【0035】
絶縁性樹脂コーティング剤として、熱硬化型の絶縁性樹脂コーティング剤を紫外線硬化型の絶縁性樹脂コーティング剤に導入したものを用いてもよい。耐熱性塗料として用いられる、金属酸化物顔料が用いられた、ルイス酸塩及びエポキシ樹脂系塗料、酸発生剤及び酸硬化アミノアルキッド樹脂系塗料、又は、上記熱硬化型絶縁性樹脂コーティング剤の各種樹脂を、紫外線硬化型絶縁性樹脂コーティング剤各種に導入したものを用いることができる。アクリル化エポキシ樹脂系フォトレジスト又はアクリル化された合成ゴム系フォトレジストも使用可能である。
【0036】
電子部品1をキャリアテープに梱包する工程(梱包工程)では、電子部品1は、その向きが揃えられて梱包される。電子部品1は、たとえば、主面2cがキャリアテープの開口部側を向く形で梱包される。絶縁性樹脂コーティング層21が着色性又は不透明性を有していると、絶縁性樹脂コーティング層21が形成されていない主面2c,2dと、絶縁性樹脂コーティング層21が形成されている側面2e、2fと、の判別を容易に行うことができる。この判別には、たとえば分光色差計を用いることができる。分光色差計によりCIE (Commission Internationale d'Eclairage) 1976 L*a*b* (CIELAB) (L*a*b*表色系:JIS Z8729)の明度Lを測定する。
【0037】
続いて、
図4〜
図7を参照して、電子部品1の実装例を説明する。
図4は、本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す斜視図である。
図5は、本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す平面図である。
図6は、
図5におけるVI−VI線に沿った断面構成を説明するための図である。
図7は、
図5におけるVII−VII線に沿った断面構成を説明するための図である。
図6及び
図7では、後述するはんだフィレットSFのみにハッチングを付している。
【0038】
電子部品1は、キャリアテープから取り出され、基板に実装される。梱包した電子部品1をキャリアテープから取り出す際に、表面実装マウンターの吸着ヘッドを用いて取り出す。この際に、梱包工程にて、主面2cがキャリアテープの開口部側を向く形で梱包されているため、吸着ヘッド(ノズル)は主面2cに当接する。これにより、主面2cと対向する主面2dが実装基板の実装面側となる。
【0039】
実装する際には、はんだリフローによって電子部品1の外部電極3,4を基板SSの配線パターンWPに電気的に接続する。したがって、
図4〜
図7に示されるように、電子部品1は、はんだ実装される。はんだは、Sn−SbなどのISO FDIS 9453:2005 (JIS Z 3282:2006)に基づくものが用いられ、いずれも上述した絶縁性樹脂に濡れない。
【0040】
はんだは金属以外には濡れないため、絶縁性樹脂コーティング層21ははんだレジスト層として機能する。このため、主面2dが基板面側とされて電子部品1を実装基板に実装すれば、電子部品1の電極部分3a,3e,3f,4b,4e,4fにははんだが濡れ上がらない。したがって、はんだフィレットSFが形成されず、狭隣接高密度実装が可能となる。
【0041】
電子部品1を狭間隔に隣接して実装しても、
図4〜7のように側面2e,2f側及び端面2a,2b側にはんだフィレットSFが存在しない。このため、隣接する部品間のはんだブリッジによる短絡が発生しない。
【0042】
ここで、絶縁性樹脂コーティング層21の表面粗さと、絶縁性樹脂コーティング層21の厚みtと、について詳細に説明する。
【0043】
本発明者らは、絶縁性樹脂コーティング層21の表面粗さだけでなく、当該表面粗さと厚みtとの関係を明らかにするために、以下のような試験をおこなった。すなわち、所定の厚みtを有する絶縁性樹脂コーティング層21の表面粗さを異ならせた試料(試料1〜8、試料9〜16、及び試料17〜24)を作製し、各試料における、ピックアップ率を求めると共に、ショート発生の有無を確認した。その結果を
図8に示す。
図8は、各試料におけるピックアップ率及びショート発生の有無を示す図表である。
【0044】
試料1〜8は、絶縁性樹脂コーティング層21の厚みtが、1.0μmに設定されている。試料9〜16は、絶縁性樹脂コーティング層21の厚みtが、5.0μmに設定されている。試料17〜24は、絶縁性樹脂コーティング層21の厚みtが、20μmに設定されている。絶縁性樹脂コーティング層21の表面粗さは、算術平均粗さRaを用いた。算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2001にて定義されている。各試料は、上述した表面粗さ及び厚みtを異ならせた点を除いて同じ構成であり、そのチップサイズは0603サイズである(縦方向の長さが0.6mmに設定され、横方向の長さが0.3mmに設定され、厚みが0.3mm設定されている)。
【0045】
ピックアップ率は、次のようにして求めた。試料ごとに、10000個の検体を作製し、作製した検体を試料ごとに用意したキャリアテープに収納し、テーピング包装した。次に、マウンターを用いて、各キャリアテープから供給された各検体を基板に連続的にマウントした。マウンターの吸着ヘッドが、各キャリアテープからピックアップされ且つ所定の位置にマウントされた検体の数n1をカウントし、ピックアップ率(n1/10000)を算出した。ピックアップ率の良否は、ピックアップ率が9995/10000未満であれば、「×(不良)」と判定し、ピックアップ率が9995/10000以上であれば、「○(良)」と判定した。特に、ピックアップ率が10000/10000であれば、「◎(最良)」と判定した。一般に、ピックアップ率の良否を判定するための基準値は、一般に99.9%と言われている。
【0046】
ショート発生の有無は、次のようにして確認した。試料ごとに、200個の検体を作製し、所定の間隔(本試験では、0mm間隔)にて基板にはんだ実装した。基板に実装された検体において、外部電極同士が接触することにより生じるショートの発生の有無を確認した。ショートの発生が確認された場合、「×」と判断し、ショートの発生が確認できなかった場合、「○」と判断した。ショートの発生の要因としては、外部電極同士が接触すること以外に、基板のパッド電極同士がはんだの付着などにより導通することが考えられる。基板のパッド電極同士がはんだの付着などにより導通しているか否かは、検体が実装された基板を目視することにより確認できる。したがって、検体同士の導通状態を検査することにより、外部電極同士が接触することにより生じるショートの発生の有無を適切に確認することができる。
【0047】
図8に示されるように、絶縁性樹脂コーティング層21の厚みtの厚みに関わらず、絶縁性樹脂コーティング層21の算術平均粗さRaが0.02μm以上であると、ピックアップ率が良好である。すなわち、絶縁性樹脂コーティング層21の算術平均粗さRaが0.02μm以上であると、絶縁性樹脂コーティング層21と他の部材との接触面積が小さく、電子部品1(絶縁性樹脂コーティング層21)が他の部材と接触した場合でも、静電気の発生が抑制されている。
【0048】
同じく、
図8に示されるように、絶縁性樹脂コーティング層21の算術平均粗さRaと絶縁性樹脂コーティング層の厚みtとの比Ra/tが、0.7以下であると、ショートの発生が防止されている。すなわち、比Ra/tが、0.7以下であると、絶縁性樹脂コーティング層21による外部電極3,4の被覆割合が低下するのが抑制され、絶縁性樹脂コーティング層21での絶縁性が確保されている。
【0049】
以上のように、本実施形態では、絶縁性樹脂コーティング層21での、静電気の発生を抑制しつつ、絶縁性を確保することが可能な電子部品1が提供される。
【0050】
チップサイズが0603サイズ又は0402サイズ(縦方向の長さが0.4mmに設定され、横方向の長さが0.2mmに設定され、厚みが0.2mm設定されている)などの極小の電子部品、又は、0402サイズより更に小さい電子部品は、その質量が小さい。このため、極小の電子部品は、静電気の影響を受けやすく、他の部材に付着する可能性が極めて高い。したがって、電子部品1が極小の電子部品である場合、特に有用である。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
本実施形態では、電子部品として積層セラミックコンデンサを例に説明したが、本発明はこれに限られることなく、積層インダクタ、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、又は積層複合部品などの他の電子部品にも適用できる。
【0053】
本実施形態では、電子部品として5面電極構造である電子部品1を例に挙げたが、本発明はこれに限られない。チップ抵抗のように、素体2の側面2e,2f又は主面2c,2dのいずれかの面に外部電極が形成されない、いわゆるC字型の3面電極構造、又は、端面2a,2bと側面2e,2f又は主面2c,2dのいずれか一面のみとに外部電極が形成されたL字型の2面電極構造である電子部品においても、同様の効果が得られる。積層コンデンサアレイ、又は、チップ型3端子貫通積層コンデンサアレイ等の、多端子外部電極を有する電子部品においても、同様の効果が得られる。