(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記超音波の送信から前記反射波を受信するまでの時間に応じて前記振動素子を駆動することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の物体認識装置。
前記制御部は、送信した前記超音波の周波数と、受信した前記反射波の周波数と、を比較した結果に応じて前記振動素子を駆動することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の物体認識装置。
前記制御部は、送信した前記超音波の振幅と、受信した前記反射波の振幅と、を比較した結果に応じて前記振動素子を駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の物体認識装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の物体認識装置(視覚補助装置)は、1つの超音波センサーによって計測された距離に該当する振動素子(神経刺激素子)のみを駆動することにより、使用者にセンサー前方の障害物までの距離などの情報を伝達し、使用者が障害物を避けて通過することを前提としたものであり、近傍の物体を検知し、その物体の存在する方向などの情報を伝達することが困難であった。例えば、使用者が暗闇でコップを掴みたいと思った時、従来技術の物体認識装置では、検知した物体(コップ)の情報を基に、使用者が、自身の手をコップのある位置に誘導することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る物体認識装置は、センサーユニットと、前記センサーユニットを備えている装着部と、制御部と、を有し、前記センサーユニットには、前記センサーユニットの一面側に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波素子と、前記センサーユニットの他面側に振動を伝達する振動素子と、が対応する位置関係を有して設けられ、前記制御部は、前記超音波素子に前記超音波を送信させた後、前記反射波を受信した前記超音波素子から出力された信号に応じて、前記振動素子を駆動させることを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、物体認識装置は、センサーユニットに設けられている超音波素子に超音波を送信させ、その反射波を受信することで、超音波を反射させた物体を検知する超音波センサーとしての機能を有し、物体から反射された反射波を受信した超音波素子からの出力信号に応じて、対応する位置関係にある振動素子を駆動させる。センサーユニットの振動を伝達する面を使用者の身体に接触させて装着することで、物体認識装置は、物体の情報を使用者に伝達することができる。例えば、使用者がセンサーユニットの方向を変えるなどの動作をすることで、身体に伝わる振動の変化を頼りに、物体の存在する方向を認識することができる。したがって、物体の存在方向を伝達することが可能な物体認識装置を提供することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記センサーユニットには、複数の前記超音波素子が設けられていることが好ましい。
【0009】
本適用例によれば、物体認識装置は、物体からの反射波を受信した複数の超音波素子からの出力信号に応じて、各超音波素子と対応する位置関係にある振動素子を駆動させる。これにより、物体認識装置を装着した使用者は、各々の振動素子間の振動の違いから、物体の存在する方向などを認識することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に記載の物体認識装置において、複数の前記センサーユニットを有していることが好ましい。
【0011】
本適用例によれば、物体認識装置は、物体からの反射波を受信した複数のセンサーユニットに配置された超音波素子からの出力信号に応じて、各超音波素子と対応する位置関係にある振動素子を駆動させる。これにより、複数のセンサーユニットを装着した使用者は、各々のセンサーユニット間の振動の違いから、物体の存在する方向などを認識することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記装着部は、手袋の形状であり、前記振動素子は、前記手袋の内側に振動を伝達することが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、例えば、使用者が、各指部にセンサーユニットを配置した手袋を手に装着し、物体の存在する空間に手をかざすことで、物体認識装置は、各指部に配置されたセンサーユニットごとに、反射波を受信した超音波素子からの出力信号に応じて、各超音波素子と対応する位置関係にある振動素子を駆動させる。これにより、使用者は、各指に伝わる振動の違いから、物体の存在する方向などを認識することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記制御部は、前記超音波の送信から前記反射波を受信するまでの時間に応じて前記振動素子を駆動することが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、超音波が超音波素子から送信され、物体で反射された反射波が超音波素子で受信された時間により、超音波素子から物体までの距離を算出することができる。制御部が、算出された物体までの距離に応じて、例えば、振幅や振動パターン(間欠時間)などを変えて振動素子を駆動させることで、使用者は物体に近づいているのか遠ざかっているのかを認識することができる。また、複数の超音波素子とこれらの超音波素子に対応する振動素子とを備えている物体認識装置であれば、使用者は各振動素子の駆動の違いにより、物体の存在する方向を認識することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記制御部は、送信した前記超音波の周波数と、受信した前記反射波の周波数と、を比較した結果に応じて前記振動素子を駆動することが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、移動している物体で反射される反射波は、ドップラー効果により超音波の周波数が変化する。超音波素子から送信された超音波の周波数と、物体で反射され超音波素子で受信された反射波の周波数の差または比に応じて、制御部が、例えば、振幅や振動パターン(間欠時間)などを変えて振動素子を駆動させることで、使用者は物体が移動しているのか静止しているのかを認識することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記制御部は、送信した前記超音波の振幅と、受信した前記反射波の振幅と、を比較した結果に応じて前記振動素子を駆動することが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、物体で反射される反射波は、物体の材質(硬度)により超音波の振幅が変化する。超音波素子から送信された超音波の振幅と、物体で反射され超音波素子で受信された反射波の振幅の差または比に応じて、制御部が、例えば、振幅や振動パターン(間欠時間)などを変えて振動素子を駆動させることで、使用者は物体の材質を認識することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記センサーユニットの一面側にキャビティが設けられ、他面側に前記キャビティに対応して前記超音波素子または前記振動素子が設けられていることが好ましい。
【0021】
本適用例によれば、センサーユニットには、基板の一面側にキャビティが設けられ、他面側にキャビティに対応して超音波素子または振動素子が設けられ、超音波素子は一面側に超音波を送受信し、振動素子は他面側に振動を伝える。超音波素子と振動素子とを同一面に設けることで、同一の製造工程で形成することができるため、センサーユニットの製造を容易に行うことができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記超音波素子の送信周波数は、20kHz以上1MHz以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
本適用例によれば、超音波の送信周波数が20kHz以上であれば、人間の耳には音として聞こえない領域であり、使用者に不快感を与えない。超音波の送信周波数が1MHz以下であれば、超音波の伝搬による減衰が低く抑えられ、反射波の音圧を大きく保てるため、物体の認識精度を向上させることができる。
【0024】
[適用例10]上記適用例に記載の物体認識装置において、前記振動素子の駆動周波数は、10Hz以上1kHz以下の範囲であることが好ましい。
【0025】
本適用例によれば、振動素子の駆動周波数が10Hz以上1kHz以下であれば、人間が刺激として感知しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0028】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る物体認識装置1の構成を示す概略図である。
図2は、
図1におけるA部の拡大図である。
まず、物体認識装置1の概略構成について、
図1と
図2とを用いて説明する。
【0029】
図1に示すように、物体認識装置1は、手袋形状の装着部13に複数のセンサーユニット11と制御部50とを備えて構成されている。
図1(a)は、使用者が物体認識装置1の装着部13に右手17を挿入した右手の平側を示した概略図であり、
図1(b)は、右手の甲側を示した概略図である。
図1(a)に示すように、本実施形態では、第一指には2個の、第二指から第五指までには各3個のセンサーユニット11が、装着部13の内側に設けられている。また、
図1(b)に示すように、制御部50が手の甲側の手首に設けられている。各センサーユニット11と制御部50とは、手袋形状の装着部13内の配線(図示せず)により電気的に接続されている。なお、センサーユニット11の数量および設置場所、ならびに制御部50の設置場所は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0030】
図2は、
図1におけるA部の拡大図である。
図2に示すように、センサーユニット11が、装着部13の内側に配置されている。センサーユニット11には、一面側(手袋形状の装着部13の外側)に超音波を送信し、超音波の反射波を受信する超音波素子21と、他面側(装着部13の内側(指側))に振動を伝達する振動素子23と、が対応する位置関係を有して設けられている。本実施形態では、センサーユニット11に、超音波素子21と振動素子23とが1対1で対応する素子組25が、2行1列の二組で設けられている。なお、振動素子23は、音波(空気振動)を利用して指に刺激を与えるようにしてもよい。素子組25は、超音波素子21と振動素子23とが1対1で対応するものとして説明したが、1つの超音波素子と複数の振動素子23とを1対n(n=2、3、4、・・・)で対応させてもよい。センサーユニット11に配置される素子組25の数量は、これに限定されるものではなく、一組でもよいし、複数組が行列で設けられていてもよい。また、本実施形態では、超音波は、1つの超音波素子21で、送受信するものと説明したが、超音波素子21は、送信用超音波素子と受信用超音波素子とで構成してもよい。
【0031】
次に、センサーユニット11の構成について説明する。
図3は、
図2のB−B線における断面図である。
図3では、説明の便宜上、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示しており、その図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」としている。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
図3に示すように、センサーユニット11は、手袋状の装着部13と使用者の右手(第二指)17との間に設けられている。センサーユニット11は、基板31と、基板31の−Z軸方向に形成されている支持膜32と、支持膜32の−Z軸方向に形成されている圧電体36とにより構成されている。そして、基板31と支持膜32と圧電体36とは、保護膜38により覆われている。保護膜38には、例えば、シリコーン樹脂膜を用いることができる。
【0032】
基板31は、例えば、微細加工の容易なシリコン(Si)を主成分とする材料が用いられている。基板31には、超音波素子21と振動素子23とを形成する圧電体36と重なる位置にキャビティ41が形成されている。このキャビティ41は、+Z軸方向からの平面視において円形状に形成されていることが好ましい。これにより、キャビティ41の内側の支持膜32であるメンブレン43において、メンブレン43の中心点からキャビティ41の淵までの距離が同一となるため、メンブレン43を均等に撓ませることができる。
【0033】
支持膜32は、基板31上で、キャビティ41を閉塞する状態に成膜されている。この支持膜32は、例えばSiO
2層とZrO
2層との2層構造により構成されている。基板31がSi基板である場合、SiO
2層は、Si基板を熱酸化処理することにより基板表面に形成される。また、ZrO
2層は、SiO
2層上に例えばスパッタリングなどの手法によりZr層を形成した後、熱酸化することで形成される。ここで、ZrO
2層は、圧電体36の圧電層34として例えば、PZTを用いる場合、PZTを構成するPbがSiO
2層に拡散することを防止するための層である。また、ZrO
2層は、圧電層34の歪みに対するメンブレン43の撓み効率およびメンブレン43の撓みに対する圧電層34の歪み効率を向上させるなどの効果もある。
【0034】
圧電体36は、支持膜32上に、下部電極層33と、上部電極層35と、下部電極層33と上部電極層35とに挟まれた圧電層34と、により構成されている。+Z軸方向からの平面視において、この圧電体36の中心と、メンブレン43の中心とは、重なる位置に配置されている。下部電極層33および上部電極層35としては、導電性を有する導電膜であれば、その素材は限定されない。本実施形態では、例えば、下部電極層33としてTi/Ir/Pt/Tiの積層構造膜が用いられ、上部電極層35として、Ir膜が用いられている。また、圧電層34は、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状に成膜することで形成されている。なお、圧電層34は、下部電極層33および上部電極層35に挟まれて配置され、これらの電極から電圧が印加された際に伸縮するものであれば、特に限定されず、例えば、水晶(SiO
2)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、チタン酸鉛(PbTiO
3)、メタニオブ酸鉛(PbNb
2O
6)、酸化亜鉛(ZnO)の他、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride)などの高分子圧電膜を用いてもよい。
また、下部電極層33および上部電極層35には、電圧印加用の配線パターン(図示せず)が接続されている。これらの配線パターンは、例えば基板31上に、下部電極層33や上部電極層35の形成時に同時にパターニング形成することもできる。これらの配線パターンは、例えば基板31の外周部に形成される端子部(図示せず)に接続され、この端子部を介して制御部50(
図1(b))に接続されている。
【0035】
本実施形態では、センサーユニットの一面側(手袋形状の装着部13の外側)にキャビティ41が設けられ、他面側(装着部13の内側(指側))に超音波素子21と振動素子23とが設けられている。これにより、キャビティ41や圧電体36を形成するための、スパッタ法、フォトリソグラフィー法やエッチング法などの一括処理を効率よく実施できる。
【0036】
次に、超音波素子21からの超音波送信方法について説明する。
圧電体36の圧電層34が−Z軸方向に分極処理されている場合、下部電極層33に−(マイナス)の電位を、上部電極層35に+(プラス)の電位を印加すると、逆圧電効果により、圧電層34はXY平面の径方向に伸長する。圧電体36の一面側はメンブレン43に固定されているため、メンブレン43は−Z方向に撓む。逆に、下部電極層33に+(プラス)の電位を、上部電極層35に−(マイナス)の電位を印加すると、圧電層34はXY平面の径方向に収縮する。圧電体36の一面側はメンブレン43に固定されているため、メンブレン43は+Z方向に撓む。
したがって、超音波素子21の下部電極層33と上部電極層35とに、交流電圧を印加することで、撓み運動は連続となり、その周波数や電圧に応じた超音波が超音波素子21から送信される。
【0037】
振動素子23の駆動方法について説明する。
振動素子23は、上述の超音波素子21と同じ動作原理により、振動素子23の下部電極層33に−(マイナス)の電位を、上部電極層35に+(プラス)の電位を断続して印加することで、使用者の右手(第二指)17に振動が伝達される。なお、交流電圧を印加することでも振動を伝達することができる。
【0038】
超音波素子21での超音波の受信方法について説明する。
超音波素子21のメンブレン43が−Z方向に撓むと、圧電体36の一面側はメンブレン43に固定されているため、圧電層34はXY平面の径方向に伸長する。この時、圧電体36の圧電効果により、下部電極層33に−(マイナス)の電位が、上部電極層35に+(プラス)の電位が生じる。逆に、メンブレン43が+Z方向に撓むと、圧電層34はXY平面の径方向に収縮し、下部電極層33に+(プラス)の電位が、上部電極層35に−(マイナス)の電位が生じる。
したがって、超音波素子21に超音波の音圧が加わると、その超音波の周波数や振幅に応じた電圧が超音波素子21から出力される。
【0039】
次に、物体認識装置の電気的構成について説明する。
図4は、物体認識装置の電気制御ブロック図である。
図4に示すように、物体認識装置1は、制御部50と、複数のセンサーユニット11(#1〜#n)を備えている。センサーユニット11には、超音波素子21と振動素子23とが1対1で対応している複数の素子組25が備えられている。センサーユニット11と、センサーユニット11に備えられている素子組25との数量は、特に限定されないが、本実施形態では、各2個の素子組25の備えられたセンサーユニット11が、14個備えられている。制御部50は、CPU51と、メモリー55と、超音波送信部52と、各素子組25に対応した超音波受信部53と駆動信号生成部54と、で構成されている。CPU51は、物体認識装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー55は、CPU51のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。超音波送信部52は、各超音波素子21に電圧を印加し超音波を送信させるものである。超音波受信部53は、各超音波素子21に超音波を送信させた後に、その超音波の反射波を受信した各超音波素子21から出力された信号の信号処理を行うものである。駆動信号生成部54は、各超音波素子21から出力された信号に応じて、対応する振動素子23を駆動させるものである。なお、素子組は、1つの超音波素子21と複数の振動素子23とを1対n(n=2、3、4、・・・)で対応させてもよい。
【0040】
図5は、物体認識装置1の物体認識方法を示すフローチャートである。次に、使用者が、手袋形状の物体認識装置1を右手に装着して、物体を認識し捕捉する方法について
図1、
図4および
図5を用いて説明する。
【0041】
まず、ステップS1では、超音波素子21から超音波を送信する。制御部50は、超音波送信部52から超音波素子21に交流電圧を印加して、各超音波素子21から超音波を同時に送信させる。超音波素子21は、後述する超音波の反射波を受信する機能も有しているため、超音波(反射波)の送受信を時分割で行う。この時、超音波素子21から送信される超音波の送信周波数は、20kHz以上1MHz以下の範囲であることが好ましい。超音波の送信周波数が20kHz以上であれば、人間の耳には音として聞こえない領域であり、使用者に不快感を与えない。また、超音波の送信周波数が1MHz以下であれば、超音波の伝搬による減衰が低く抑えられ、反射波の音圧を大きく保てるため、物体の認識精度を向上させることができる。
【0042】
ステップS2では、反射波を超音波素子21で受信する。ステップS1で送信された超音波が物体に当たることで生じた反射波の音圧が、超音波素子21に加わると、その反射波の周波数や振幅に応じた電圧が超音波素子21から出力信号として各超音波受信部53に出力される。制御部50は、各超音波受信部53にアナログデジタル変換などの信号処理を行わせる。
【0043】
ステップS3では、物体までの距離を算出する。制御部50は、CPU51に各超音波素子21から超音波を送信し、物体で反射された反射波を各超音波素子21で受信した時間から、超音波素子21から物体までの距離を算出させる。超音波は音であるから常温の空気中を約340m/sという速度で伝播する。したがって、音は1cmの距離を約28μsecだけの時間をかけて進む。すなわち超音波を発射してから物体に反射して戻ってくるまでに要した時間を測定すれば、超音波素子21から物体までの距離を算出することができる。
【0044】
ステップS4では、振動素子23を駆動させる。制御部50は、ステップS3で算出された物体までの距離(超音波の送受信に要した時間)に応じて、各超音波素子21と対応する振動素子23に駆動信号生成部54から電圧を印加することで、振動素子23を駆動させる。距離に応じた駆動としては、振動の周波数や振幅、振動パターン(間欠時間)を変化させるなどの方法がある。このとき、振動素子23を駆動させる駆動周波数は、10Hz以上1kHz以下の範囲であることが望ましい。振動素子23の駆動周波数が10Hz以上1kHz以下であれば、人間が刺激として感知しやすい。
【0045】
ステップS5では、使用者が物体との距離を縮める。使用者は、物体までの距離に応じた振動素子23の振動により物体の存在する方向を認識することができる。詳しくは、物体認識装置1を右手に装着し、右手の平の第五指の前方に物体が位置している場合、第五指と物体との距離と、第一指と物体との距離と、は異なるため、各々指に備えられている振動素子23から伝わる振動も異なる。使用者は、各指に伝わる振動の違いにより、物体の存在する方向を認識することができる。これにより、使用者は、物体との距離を縮めることができる。
【0046】
ステップS6では、ステップS5で使用者が物体との距離を縮めた結果、物体と接触が可能かを判断する。接触が不可能な場合(S6:No)には、ステップS1へ戻り、ステップS1からステップS6を繰り返す。接触が可能な場合(S6:Yse)には、物体の認識および捕捉を終了する。
【0047】
なお、本実施形態では、超音波素子21から物体までの距離に応じて、各振動素子23を駆動させるものとして説明したが、これに加えて、送信した超音波の周波数と、受信した反射波の周波数とを比較した結果に応じて、振動素子23を駆動させるようにしてもよい。移動している物体で反射された反射波(超音波)は、ドップラー効果により超音波の周波数が変化する。制御部50は、各超音波素子21から送信した超音波の周波数と、物体で反射され各超音波素子21で受信した反射波の周波数との差または比に応じて、各超音波素子21と対応する振動素子23に駆動信号生成部54から電圧を印加することで、振動素子23を駆動させる。周波数の差または比に応じた振動素子23の駆動としては、振動の周波数や振幅、振動パターン(間欠時間)を変化させるなどの方法がある。これにより、使用者は物体が移動しているのか静止しているのか、物体の移動方向などを認識することができる。
【0048】
また、送信した超音波の振幅と、受信した反射波の振幅とを比較した結果に応じて、振動素子23を駆動させるようにしてもよい。物体で反射された反射波(超音波)は、物体の材質(硬度)により超音波の振幅が変化する。制御部50は、各超音波素子21から送信した超音波の振幅と、物体で反射され各超音波素子21で受信した反射波の振幅との差または比に応じて、各超音波素子21と対応する振動素子23に駆動信号生成部54から電圧を印加することで、振動素子23を駆動させる。振幅の差または比に応じた振動素子23の駆動としては、振動の周波数や振幅、振動パターン(間欠時間)を変化させるなどの方法がある。これにより、使用者は物体が移動しているのか静止しているのか、物体の移動方向などを認識することができる。送受信した超音波の振幅の変化量に応じて各振動素子23を駆動させるようにしてもよい。物体で反射される反射波は、物体の材質(硬度)により超音波の振幅が変化する。制御部50は、各超音波素子21の送受信した超音波の振幅変化に応じて、各超音波素子21と対応する振動素子23に駆動信号生成部54から電圧を印加することで、振動素子23を駆動させる。距離に応じた駆動としては、振動の周波数や振幅、振動パターン(間欠時間)を変化させるなどの方法がある。これにより、使用者は物体の材質を認識することができる。
【0049】
以上述べたように、本実施形態に係る物体認識装置1によれば、以下の効果を得ることができる。物体認識装置1は、手袋状の装着部13に、複数の素子組25を有する複数のセンサーユニット11を備えている。物体認識装置1は、各超音波素子21から超音波を送信し、物体で反射された反射波(超音波)の受信に要した時間に応じて、これと対応する振動素子23を駆動させ、振動を使用者の5本の指に伝達する。使用者は、各指に伝わる振動の違いにより、物体の存在する方向を認識することができる。したがって、物体の存在方向を伝達することが可能な物体認識装置1を提供することができる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0051】
(変形例)
図6は、変形例に係る物体認識装置の
図2におけるB−B線での断面図である。
上記実施形態では、
図3のように、センサーユニット11の一面側にキャビティ41が設けられ、他面側に超音波素子21と振動素子23とが設けられているものとして説明したが、この構成に限定するものではない。
以下、変形例に係る物体認識装置2について説明する。なお、実施形態と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0052】
図6に示すように、センサーユニット11aは、超音波素子21が形成されている第1基板31aおよび振動素子23が形成されている第2基板31bなどにより構成されている。第1基板31aには、キャビティ41aの開口を覆う補強板71aが形成されている。第2基板31bには、キャビティ41bの開口を覆う補強板71bが形成されている。そして、補強板71aと補強板71bとは、接着剤層72を介して接合されている。さらに、支持膜32と圧電体36とは、保護膜38で覆われている。補強板71a,71bは、例えば、Si基板で形成することができる。接着剤層72の材料は、特に限定されないが、エポキシやシリコーンなどの樹脂を用いることができる。これにより、センサーユニット11aの一面側に超音波を送信し、超音波の反射波を受信する超音波素子21と、センサーユニット11aの他面側に振動を伝達する振動素子23とを備えたセンサーユニット11aを構成することができる。
【0053】
以上述べたように、本変形例に係る物体認識装置2によれば、実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
物体認識装置2(
図1)に備えられているセンサーユニット11a(
図2、
図6)は、超音波素子21と振動素子23とが、独立した基板(第1基板31a、第2基板31b)で形成され、補強板71a,71bで補強され、さらに補強板71aと補強板71bとが接合されている。これにより、センサーユニットの強度が増すため、信頼性が向上した物体認識装置2を提供することができる。