(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6225657
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】光学素子および画像表示装置並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20171030BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
G02B5/08 D
G02B27/01
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-236596(P2013-236596)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96883(P2015-96883A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188547
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴野 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】立木 洋幸
【審査官】
井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−058404(JP,A)
【文献】
特表2003−536102(JP,A)
【文献】
特開2007−219106(JP,A)
【文献】
特開2013−130693(JP,A)
【文献】
特開昭63−228188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/18、6/00
G02B 27/00−27/64
F21S 2/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、
前記導光板の第1面に接するように配置された第1透光材と、
前記導光板の前記第1面と反対側に位置する第2面に接するように配置された第2透光材と、を有し、
前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層と、を備え、
前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、
前記第1透光材、前記第2透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しく、
前記第1透光材の前記第1面に接する面とは反対側に位置する面は、前記第2透光材の前記第2面に接する面とは反対側に位置する面と、平行となるように配置され、
前記導光板の前記第1面は、前記第1透光材の前記第1面に接する面とは反対側に位置する面に対して傾斜するように配置され、
前記導光板の前記第2面は、前記第2透光材の前記第2面に接する面とは反対側に位置する面に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
導光板と、
前記導光板の第1面側に配置され、透光性の材料からなる第1基板と、
前記導光板の前記第1面と反対側に位置する第2面側に配置され、透光性の材料からなる第2基板と、
前記導光板と前記第1基板との間に配置された第1透光材と、
前記導光板と前記第2基板との間に配置された第2透光材と、を有し、
前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層と、を備え、
前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、
前記第1透光材、前記第2透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しく、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1透光材及び前記第2透光材とは異なる屈折率であり、
前記第1基板の前記導光板側に位置する面は、前記第2基板の前記導光板側に位置する面と、平行となるように配置され、
前記第1透光材の前記第1面に接する面とは反対側に位置する面は、前記第2透光材の前記第2面に接する面とは反対側に位置する面と、平行となるように配置され、
前記第1基板の前記導光板側に位置する面とは反対側に位置する面は、前記第2基板の前記導光板側に位置する面とは反対側に位置する面と、平行となるように配置され、
前記導光板の前記第1面は、前記第1基板の前記導光板側に位置する面に対して傾斜するように配置され、
前記導光板の前記第2面は、前記第2基板の前記導光板側に位置する面に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学素子において、
前記導光板は、透光性の材料からなる第3部分と、前記第2部分と前記第3部分との間に配置された第2半透過反射層と、を備え、
前記第2半透過反射層は、前記第1半透過反射層と平行になるように配置され、
前記第2半透過反射層は、前記第3部分側から入射した光の少なくとも一部を前記第1面側に向けて反射し、かつ、前記第3部分側から入射した光の他の一部を透過し、
前記第1半透過反射層は、前記第2部分側から入射した前記第2半透過反射層を透過した光の少なくとも一部を前記第1面側に向けて反射することを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項3に記載の光学素子において、
前記第1半透過反射層の前記第2部分側の反射率は、前記第2半透過反射層の前記第3部分側の反射率よりも高いことを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光学素子において、
前記第1半透過反射層における、前記第2面側の端部から前記第1面に下ろした垂線は、前記第2半透過反射層の前記第1面側の端部と、前記第1面で交差することを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1部分の前記第1半透過反射層と反対側の位置に第1遮光層を有することを特徴とする光学素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第2透光材の前記導光板と反対側の位置に第2遮光層を有することを特徴とする光学素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記導光板に光を導入する透光性の導入ブロックと、
前記導入ブロックに向かうように光を反射させるミラーと、を有することを特徴とする光学素子。
【請求項9】
第1面と前記第1面と反対側に位置する第2面を有した導光板を、対向面が平行な矩形凹部を有する型の当該矩形凹部に載置する工程と、
前記矩形凹部と前記導光板との間隙に、硬化性の透光材を充填する工程と、
前記第1面と前記第2面が前記対向面と傾斜した状態で前記硬化性の透光材を硬化させる工程と、を有し、
前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層と、を備え、
前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、
前記硬化性の透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しいことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項10】
第1面と前記第1面と反対側に位置する第2面を有した導光板に、硬化性の透光材を塗布する工程と、
前記硬化性の透光材が塗布された前記導光板を、透光性の材料からなる第1基板と透光性の材料からなる第2基板とで挟持する工程と、
前記第1基板の前記導光板側に位置する面とは反対側に位置する面と前記第2基板の前記導光板側に位置する面とは反対側に位置する面とが平行であり、前記第1基板の前記導光板側に位置する面と前記第2基板の前記導光板側に位置する面とが平行で、前記第1基板の前記導光板側に位置する面及び前記第2基板の前記導光板側に位置する面と、前記第1面及び前記第2面とが傾斜した状態で前記硬化性の透光材を硬化させる工程と、を有し、
前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層と、を備え、
前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、
前記硬化性の透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しいことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の光学素子の製造方法において、
前記導光板は、
前記第1部分となる第1平板部材の一方の面に前記第1半透過反射層を蒸着し、
前記第1平板部材の前記一方の面側に、前記第2部分となる第2平板部材を前記第1半透過反射層の傾向角に応じて、前記第1平板部材と前記第2平板部材とをずらして積層し、
前記積層した前記第1平板部材と前記第2平板部材とを切断することにより形成する、
ことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学素子を備えることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板等の光学素子および画像表示装置並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
虚像ディプレイは、光源と光源から発せられた光を透過させる透過型表示素子(LCD、OLED等)を有している。この光源からの情報を含む光として発する表示光と、この情報を含む光を観視者方向に反射または回折するように配された導光板を備え、導光板によって形成される虚像を観視者前方に視認できるようにした虚像ディスプレイ装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−536102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1によれば、半透過反射層を備えた導光板として、例えば積層構造の導光板が用いられるが、積層構造の導光板を製造する場合には、導光板の表裏面の平坦精度および鏡面を出すことが困難である。また、積層構造の場合には、半透過反射層が露出するため、膜劣化のおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情を考慮して、積層構造の導光板を用いる場合でも、表裏面の高い平坦精度を有し、膜劣化や、異物あるいは気泡の混入するおそれのない光学素子および光学素子の製造方法、ならびに光学デバイスを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学素子の第1の態様は、導光板と、前記導光板の第1面に接するように配置された第1透光材と、前記導光板の前記第1面と反対側に位置する第2面に接するように配置された第2透光材とを有し、前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層とを備え、前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、前記第1透光材、前記第2透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しく、前記第1透光材の前記第1面に接する面とは反対側に位置する面は、前記第2透光材の前記第2面に接する面とは反対側に位置する面と、平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0007】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様によれば、導光板の第1部分及び第2部分の屈折率と等しい屈折率の第1透光材を導光板の第1面に接するように配置し、導光板の第1部分及び第2部分の屈折率と等しい屈折率の第2透光材を導光板の第1面と反対側に位置する第2面に接するように配置し、第1透光材の第1面に接する面とは反対側に位置する面は、第2透光材の第2面に接する面とは反対側に位置する面と、平行となるように配置されている。したがって、第1半透過反射層を備えた導光板の光出射面とその対向面とが平行でない場合でも、第1透光材と第2透光材を備えた第1の態様の光学素子は、光出射面とその対向面の平行が保たれている。なお、第1透光材、第2透光材、第1部分及び第2部分の屈折率に差があった場合でも、±10%程度の屈性率差であれば屈折が生じないので、「等しい」に含む。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学素子の第2の態様は、導光板と、前記導光板の第1面側に配置され、透光性の材料からなる第1基板と、前記導光板の前記第1面と反対側に位置する第2面側に配置され、透光性の材料からなる第2基板と、前記導光板と前記第1基板との間に配置された第1透光材と、前記導光板と前記第2基板との間に配置された第2透光材とを有し、前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層とを備え、前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、前記第1透光材、前記第2透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しく、前記第1基板及び前記第2基板は、前記第1透光材及び前記第2透光材とは異なる屈折率であり、前記第1基板の前記導光板側に位置する面は、前記第2基板の前記導光板側に位置する面と、平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
上述した本発明に係る光学素子の第2の態様によれば、導光板の第1部分及び第2部分の屈折率と等しい屈折率の第1透光材を、透光性の材料からなり、導光板の第1面側に配置された第1基板と、導光板との間に配置し、導光板の第1部分及び第2部分の屈折率と等しい屈折率の第2透光材を、透光性の材料からなり、導光板の第1面と反対側に位置する第2面側に配置された第2基板と、導光板との間に配置し、第1基板の導光板側に位置する面は、第2基板の導光板側に位置する面と、平行となるように配置されている。したがって、第1半透過反射層を備えた導光板の光出射面とその対向面とが平行でない場合でも、第1基板および第2基板と第1透光材および第2透光材を備えた第2の態様の光学素子は、光出射面とその対向面の平行が保たれている。なお、第1透光材、第2透光材、第1部分及び第2部分の屈折率に差があった場合でも、±10%程度の屈性率差であれば屈折が生じないので、「等しい」に含む。
【0010】
上述した本発明に係る光学素子の第2の態様において、前記導光板の前記第1面は、前記第1基板の前記導光板側に位置する面に対して傾斜するように配置され、前記導光板の前記第2面は、前記第2基板の前記導光板側に位置する面に対して傾斜するように配置されていてもよい。この場合は、導光板の第1面と第2面が第1基板と第2基板の導光板側に位置する面に対して傾斜していても、第1基板の導光板側に位置する面と、第2基板の導光板側に位置する面とが平行となるように配置されているので、光学素子の光出射面とその対向面の平行が保たれている。
【0011】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様または第2の態様において、前記導光板は、透光性の材料からなる第3部分と、前記第2部分と前記第3部分との間に配置された第2半透過反射層とを備え、前記第2半透過反射層は、前記第1半透過反射層と平行になるように配置され、前記第2半透過反射層は、前記第3部分側から入射した光の少なくとも一部を前記第1面側に向けて反射し、かつ、前記第3部分側から入射した光の他の一部を透過し、前記第1半透過反射層は、前記第2部分側から入射した前記第2半透過反射層を透過した光の少なくとも一部を前記第1面側に向けて反射することが好ましい。この場合には、第3部分側から入射した光が、第2半透過反射層により第1面側に向けて反射されつつ第2部分側へと進み、さらに、第1半透過反射層より第1面側に向けて反射される。したがって、入射した光を導光しながら第1面側に出射するので、観察者に対して大きな虚像を表示させることができる。
【0012】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様または第2の態様において、前記第1半透過反射層の前記第2部分側の反射率は、前記第2半透過反射層の前記第3部分側の反射率よりも高いことが好ましい。この場合には、光路長が長くなった場合でも、輝度むらの発生を回避することができる。
【0013】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様または第2の態様において、前記第1半透過反射層における、前記第2面側の端部から前記第1面に下ろした垂線は、前記第2半透過反射層の前記第1面側の端部と、前記第1面で交差することが好ましい。この場合には、光出射面において、反射光の届かない領域がなくなり、黒スジの発生を防止することができる。
【0014】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様または第2の態様において、前記第1部分の前記第1半透過反射層と反対側の位置に第1遮光層を有することが好ましい。この場合には、遮光層により外光を阻止して、光出射面で表示される画像が見難くなることがない。
【0015】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様または第2の態様において、前記第2透光材の前記導光板と反対側の位置に第2遮光層を有することが好ましい。この場合には、遮光層により外光を阻止して、光出射面で表示される画像が見難くなることがない。
【0016】
上述した本発明に係る光学素子の第1の態様または第2の態様において、前記導光板に光を導入する透光性の導入ブロックと、前記導入ブロックに向かうように光を反射させるミラーとを有することが好ましい。この場合には、ミラーと導入ブロックにより光が導光板に導入され、入射した光は導光されながら反射されるので、観察者に対して大きな虚像を表示させることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学素子の製造方法の第1の態様は、導光板を対向面が平行な矩形凹部を有する型の当該矩形凹部に載置する工程と、前記矩形凹部と前記導光板との間隙に、硬化性の透光材を充填する工程と、前記硬化性の透光材を硬化させる工程と、を有し、前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層と、を備え、前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、前記硬化性の透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しいことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係る光学素子の製造方法の第2の態様は、導光板に硬化性の透光材を塗布する工程と、前記硬化性の透光材が塗布された前記導光板を、透光性の材料からなる第1基板と透光性の材料からなる第2基板とで挟持する工程と、前記第1基板の前記導光板側に位置する面と前記第2基板の前記導光板側に位置する面とが平行な状態で前記硬化性の透光材を硬化させる工程とを有し、前記導光板は、透光性の材料からなる第1部分と、透光性の材料からなる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置された第1半透過反射層とを備え、前記第1半透過反射層は、前記第1面及び前記第2面に対して傾斜するように配置され、前記硬化性の透光材、前記第1部分及び前記第2部分は、屈折率が等しいことを特徴とする。
【0019】
上述した本発明に係る光学素子の製造方法の第1の態様または第2の態様において、前記導光板は、前記第1部分となる第1平板部材の一方の面に前記第1半透過反射層を蒸着し、前記第1平板部材の前記一方の面側に、前記第2部分となる第2平板部材を前記第1半透過反射層の傾向角に応じて、前記第1平板部材と前記第2平板部材とをずらして積層し、前記積層した前記第1平板部材と前記第2平板部材とを切断することにより形成する
ことを特徴とする。
【0020】
次に、本発明に係る画像表示装置は、上述した本発明に係る光学素子を備える。そのような画像表示装置は、液晶ディスプレイ等の画像形成部やコリメート光学系を備えてもよく、ヘッドマウントディスプレイ等のように観察者の頭部に装着する形態に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る光学デバイスを示す側面図である。
【
図3】第2実施形態に係る光学デバイスを示す側面図である。
【
図4】第3実施形態に係る導光板の製造方法を説明するための側面図である。
【
図5】接着剤層と一体の導光板を示す側面図である。
【
図6】第4実施形態に係る導光板の半透過反射層の位置を説明するための模式図であり、(A)は黒スジが発生する場合の半透過反射層の位置関係を説明するための模式図、(B)は導光板の厚さを厚くした場合の半透過反射層の位置関係を説明するための模式図、(C)は導光板において積層する光透過性の樹脂材料の厚さを薄くした場合の半透過反射層の位置関係を説明するための模式図である。
【
図7】応用例のヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。また、以下に説明する実施形態では、本発明の光学素子を、観察者の頭部に装着する形態の画像表示装置の一例であるヘッドマウントディスプレイに適用した場合を例に説明するが、かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内に任意に変更可能である。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る光学デバイス1の全体像を示す側面図である。
図1に示すように、光学デバイス1は、導光板2と、上面平板6と、下面平板7と、導入ブロック8と、投射光取り入れミラー9と、ミラー支持板10とを備えている。
【0024】
導光板2は、
図2に示すように、光透過性の樹脂材料等により形成された板状の部材に、半透過反射層3を蒸着等により形成し、半透過反射層3が形成された板状部材を斜向角に応じてずらして接着剤4により重ね貼りを行い、切断することにより作成される。
【0025】
上面平板6と下面平板7に導光板2を接着剤5により貼り付け、プレスにより上面平板6と下面平板7の平行を保つ。接着剤5の屈折率は、導光板2の屈折率と同じか、あるいは近い屈折率に設定されている。
【0026】
上面平板6は、光透過性の樹脂材料等により形成された板状の部材であり、
図1においてY方向を上方向とすると、少なくとも最上面が平坦に形成されている。上面平板6の屈折率は、接着剤5および導光板2と異なる屈折率に設定されている。上述したように、上面平板6と下面平板7はプレスにより平行に保たれている。また、導入ブロック8との接合面は平坦であることが望ましい。なお、接着剤5を用いる代わりに、導光板2を上面平板6と下面平板7で挟み、導光板2と上面平板6および下面平板7との間隙に、樹脂を充填するようにしてもよい。この場合、樹脂5の屈折率は、導光板2の屈折率と同じか、あるいは近い屈折率に設定すればよい。
【0027】
下面平板7は、光透過性の樹脂材料等により形成された板状の部材であり、
図1においてY方向を上方向とすると最下面が平坦に形成されている。下面平板7の屈折率は、上面平板6と同じ屈折率に設定されている。上述したように、上面平板6と下面平板7はプレスにより平行に保たれている。また、導入ブロック8との接合面は平坦であることが望ましい。
【0028】
導入ブロック8は、光透過性の樹脂材料等により形成された部材であり、少なくとも各対面は平行に形成されている。
図1のY方向における導入ブロック8の高さは、同じくY方向における上面平板6の最上面から下面平板7の最下面までの間隔と等しくなっている。上面平板6および下面平板7と導入ブロック8とは、直角に接続されている。
【0029】
投射光取り入れミラー9は、光透過性の樹脂材料等により形成されたミラー支持板10に貼り付けられ、
図1のY方向を上方向とすると、その端部が導入ブロック8の上面に取り付けられている。
【0030】
上面平板6および下面平板7ならびに導光板2の
図1におけるX方向の端部には、例えば黒色の塗料から成る遮光層11が設けられている。
【0031】
以上のような光学デバイス1において、画像表示源20から画像光が投射されると、画像光は、投射光取り入れミラー9によって反射され、導入ブロック8により、導光板2に導かれる。導光板2に導かれた光は、一部は半透過反射層3によって反射されて観視者の眼EYに届く。また、反射光の一部は、上面平板6および下面平板7で反射されて導光板2内を進む。さらに、半透過反射層3によって反射されなかった光も上面平板6および下面平板7で反射されて導光板2内を進む。ここで、少なくとも上面平板6の最上面および下面平板7の最下面は、平坦性を有し、平行に保たれている。したがって、上面平板6および下面平板7で反射される光は全反射条件を満たした状態で導光されることになり、光量の損失がない。
【0032】
上述したように、導光板2は、光透過性の樹脂材料等により形成された板状の部材に、半透過反射層3を蒸着等により形成し、半透過反射層3が形成された板状部材を斜向角に応じてずらして接着剤4により重ね貼りを行い、切断することにより作成される。したがって、導光板2の上面と下面に平坦性を持たせることが難しく、導光板2の上面と下面の平行を保つことも難しい。
【0033】
しかしながら、本実施形態の導光板2は、接着剤5により、少なくとも最上面が平坦な上面平板6と、少なくとも最下面が平坦な下面平板7により貼り付けられる。そして、少なくとも上面平板6の最上面と下面平板7の最下面は、プレスにより平行に保たれている。
【0034】
したがって、積層構造の導光板2を用いる場合でも、上面平板6と下面平板7と導光板2とを一体の導光板と考えた場合には、導光板の上面と下面の平坦性を確保し、上面と下面の平行を良好に保つことができる。なお、平坦性については、導光板2を作成する際に使用する平板部材と同程度の平坦性があればよい。
【0035】
さらに、上面平板6および下面平板7と導光板2との間には、接着剤5が充填されているため、積層構造の導光板2を作成する過程で半透過反射層3が露出したとしても、半透過反射層3は接着剤5により覆われるため、半透過反射層3の劣化を防ぐことができる。
【0036】
また、本実施形態においては、端部に遮光層11が設けられているので、外光を確実に阻止することができ、画像が見難くなることがない。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、積層構造の導光板の問題点を解消して、良好な虚像表示の可能な光学素子を提供することができる。
【0038】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について
図3を参照して説明する。導光板2は、
図3に示すように、上面平板6および下面平板7に対して斜めの状態に貼り付けてもよい。このように導光板2が斜めの状態であっても、上面平板6および下面平板7と導光板2との間には、接着剤5が充填されており、上面平板6および下面平板7によって最上面と最下面の平坦性、および、最上面と最下面の平行を保つことができる。本実施形態においても、導光板2自体の上面および下面の表面粗さは接着剤5によって吸収することができ、上面と下面の平行度についても、上面平板6および下面平板7により担保することができる。
【0039】
また、光学デバイス1がシースルー型でない場合には、
図3に示すように、観視者の眼EYと対向する表示面以外の面には、黒色の塗装等により、遮光層11を形成するようにしてもよい。また、これ以外にも、光の入射部および出射部以外の面に遮光層11を形成するようにしてもよい。
【0040】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について
図4および
図5を参照して説明する。第1実施形態および第2実施形態においては、接着剤5を用いて導光板2に上面平板6および下面平板7を貼り付ける例について説明した。しかし、本発明はこのような例に限定されるものではない。
【0041】
例えば、
図4に示すように、上下面および左右面が平行に保たれた金型30を用意し、金型30内に導光板2を入れて、接着剤5または樹脂剤を充填するようにしてもよい。そして、接着剤5または樹脂剤が硬化したところで、
図5に示すように金型30を取り外せば、接着剤5または樹脂剤と一体となった導光板2を得ることができる。この場合には、接着剤5または樹脂剤の上面と下面の平坦性と平行度が保たれることになる。なお、平坦性については、導光板2を作成する際に使用する平板部材と同程度の平坦性があればよい。
【0042】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態について
図6を参照して説明する。
図6(A)に示すように、積層構造の導光板2においては、光の出射方向Aに平行な方向において、一の半透過反射層3の端部と、当該一の半透過反射層3に隣接する他の半透過反射層3の端部との間隔dが存在する場合、当該間隔dの領域からは反射光が出射されず、表示される画像に黒スジが現れることがある。
【0043】
そこで、本実施形態においては、一の半透過反射層3の端部と、当該一の半透過反射層3に隣接する他の半透過反射層3の端部との間隔dがなくなるように、
図6(B)に示すように、積層する光透過性の樹脂材料の厚さが同じ場合には、光の出射方向Aにおける導光板2の厚さwを厚くするようにしてもよい。
【0044】
また、
図6(C)に示すように、積層する光透過性の樹脂材料の厚さgを薄くして、一の半透過反射層3の端部と、当該一の半透過反射層3に隣接する他の半透過反射層3の端部との間隔dがなくなるようにしてもよい。
【0045】
図6(B)および
図6(C)のように、一の半透過反射層3の端部と、当該一の半透過反射層3に隣接する他の半透過反射層3の端部との間隔dがなくなるように構成した導光板2を用いて、第1実施形態ないし第3実施形態のように光学デバイス1を構成することにより、黒スジのない良好な画像を表示することができる。
【0046】
なお、一の半透過反射層3の端部と、当該一の半透過反射層3に隣接する他の半透過反射層3の端部とが、光の出射方向Aに平行な方向において重なり過ぎると、明スジができる場合があるため、一の半透過反射層3の端部と、当該一の半透過反射層3に隣接する他の半透過反射層3の端部との間隔dがなくなるように、かつ、明スジができない程度に構成することが好ましい。
【0047】
<変形例>
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【0048】
(1)半透過反射層の斜向角あるいはピッチについては、上述した黒スジが現れない構成であれば、適宜変更可能である。
【0049】
(2)半透過反射層の反射率は、導光板における光導入部からの光路長の増大に応じて高くなるようにしてもよい。この場合、反射率は、光路長の増大に応じて連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。このようにすれば、光導入部から離れ、光路長が長くなった場合でも、輝度むらの発生を回避することができる。
【0050】
(3)光学素子の構成については、各実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、接着剤を用いて上面平板および下面平板に接着した導光板、あるいは、型抜き等により接着剤でコーティングした導光板であれば、どのような構成の光学デバイスであってもよい。
【0051】
<応用例>
本発明の光学素子は、例えば、導光板を備えた画像表示装置の1つであるヘッドマウントディスプレイ(HMD)に用いることができる。このようなヘッドマウントディスプレイについて
図7を参照して説明する。
【0052】
図7は、応用例に係るヘッドマウントディスプレイ100の全体像の一例を示す斜視図である。
図7に示すように、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、このヘッドマウントディスプレイ100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。
【0053】
具体的にヘッドマウントディスプレイ100は、導光板40と、導光板40を支持する左右一対のテンプル131,132と、テンプル131,132に付加された一対の画像形成装置111,112とを備える。ここで、図面上において、導光板40の左側と画像形成装置111とを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも画像表示装置として機能する。また、図面上において、導光板20で右側と画像形成装置112とを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも画像表示装置として機能する。
【0054】
このようなヘッドマウントディスプレイ100において、左眼用光学系の導光板として、
図1に示す光学素子を用い、右眼用光学系の導光板として、
図1に示す光学デバイスの左右を反転させたものを用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…光学デバイス、2…導光板、3…半透過反射層、4…接着剤、5…接着剤、6…上面平板、7…下面平板、8…導入ブロック、9…投射光取り入れミラー、10…ミラー支持板、11…遮光層、20…画像表示源、30…金型、100…ヘッドマウントディスプレイ、100A,100B…表示装置、111,112…画像形成装置、131,132…テンプル。