(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンデンサによる容量を持つDCバスから負荷に電力を供給し、前記DCバスと蓄電池との間に双方向性の変換装置が介在し、定電圧電源装置は、ダイオードを介して電力を前記DCバスに提供するよう構成された給電設備の運転方法であって、
前記DCバスの電圧が充電開始電圧VC以上になると、前記変換装置が前記蓄電池の充電を開始し、前記DCバスの電圧が放電開始電圧VD以下になると、前記変換装置が前記蓄電池から放電を開始し、前記定電圧電源装置の電圧を電圧VFとするとき、
通常モードでは、相対的な大小関係において、VD<VF<VCの関係とし、
前記通常モードから放電モードに移行するときは、前記電圧VFに対して前記充電開始電圧VC及び前記放電開始電圧VDを相対的にシフトさせることにより、前記放電モードでは、相対的な大小関係において、VF<VD<VCの関係とする、
給電設備の運転方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0013】
(1)これは、負荷に電力を供給する給電設備であって、コンデンサによる容量を持つDCバスと、蓄電池と、前記DCバスと前記蓄電池との間に介在する双方向性の変換装置と、ダイオードを介して、電力を前記DCバスに提供する定電圧電源装置と、前記DCバス
の電圧が充電開始電圧V
C以上になると、前記変換装置が前記蓄電池の充電を開始し、前記DCバス
の電圧が放電開始電圧V
D以下になると、前記変換装置が前記蓄電池から放電を開始し、前記定電圧電源装置の電圧をV
Fとするとき、相対的な大小関係において、V
D<V
F<V
Cの関係にある通常モード、及び、V
F<V
D<V
Cの関係にある放電モードを、前記変換装置及び前記定電圧電源装置の少なくとも一方を制御することにより選択的に実現する制御部と、を備えている。
【0014】
上記のように構成された給電設備では、通常モードと放電モードとで、電圧に関する相対的な大小関係が異なる。かかる相対的な大小関係とするには、例えば、通常モードでの放電開始電圧V
D及び充電開始電圧V
Cを、放電モードでは上方へシフトすればよい。あるいは、放電開始電圧V
D及び充電開始電圧V
Cはそのままで、放電モードでの定電圧を、通常モードでの定電圧より低い値にしてもよい。
【0015】
通常モードの場合、蓄電池は定電圧電源装置のバックアップ的な存在であり、定電圧電源装置の停電等が起きない限り、蓄電池の放電は行われない。一方、放電モードでは、定電圧V
Fは放電開始電圧V
Dを下回るため、定電圧V
Fが提供できる状態であっても、蓄電池の放電が行われ、DCバスの電圧を上げる。このとき、定電圧電源装置はダイオードを介してDCバスに接続されているため、定電圧V
FよりDCバスの電圧が高いときは、定電圧電源装置からDCバスへの給電はできない状態となる。いわば、DCバスへの定電圧V
Fの供給を押しとどめて、蓄電池の放電が行われることになる。すなわち、このときの定電圧電源装置は、蓄電池によるDCバスへの給電に対するバックアップ的な存在になる。
【0016】
従って、ハードウェア構成を変えることなく、必要に応じて放電モードを選択することにより、蓄電池を、より積極的に活用して負荷に給電を行うことができる。また、放電モードで蓄電池の残量が下限値に達しても、定電圧電源装置の定電圧V
Fが待機しているため、瞬時停電は生じない。
【0017】
(2)また、(1)において、前記制御部は、前記充電開始電圧V
C、前記放電開始電圧V
D、前記定電圧V
Fの相対的な大小関係において、さらに、V
D<V
C<V
Fの関係にある積極充電モードを選択して実現することが可能であってもよい。
この場合、負荷に必要な電力に対して定電圧電源装置の供給能力に十分な余裕があり、いわゆる余剰電力がある場合、その余剰電力によって積極的に蓄電池を充電することができる。これにより、蓄電池に十分な残量がある状態をできるだけ多く保ち、蓄電池の運用効率を向上させることができる。
【0018】
(3)また、(1)又は(2)の給電設備に関して、前記放電モードにおいて、前記変換装置は、前記DCバスへ供給する電流を一定値に制限するようにしてもよい。
この場合、負荷へ供給する電力が蓄電池のみからでは不足する場合にはDCバスの電圧が下がって定電圧電源装置から自動的に定電圧で電力が供給される。すなわち、蓄電池から供給する電力を一定値に制限することにより、負荷の電力に応じて自動的に、定電圧電源装置からの電力を併用することができる。
【0019】
(4)また、(2)の給電設備において、前記制御部は、前記放電モードで前記蓄電池の残量が所定値まで低下すると、前記積極充電モードを実行するようにしてもよい。
この場合、蓄電池の過放電を防止することができる。
【0020】
(5)また、(1)〜(4)のいずれかの給電設備において、前記変換装置が前記蓄電池の放電を停止させる前記DCバスの電圧閾値を放電停止電圧V
Sとするとき、前記充電開始電圧V
Cとの関係は、V
C>V
Sであることが好ましい。
この場合、放電停止の時期と、充電開始の時期とが、互いにずれるので、変換装置の挙動(放電/充電)を安定させることができる。
【0021】
(6)また、(1)〜(5)のいずれかの給電設備において、前記DCバスに、前記定電圧電源装置とは別に、自然エネルギーを利用した発電装置が接続されていてもよい。
この場合、かかる発電装置は発電量が安定しないため、DCバスの電圧が変動しやすいが、いずれのモードにおいても、かかる発電装置の発電電力が、余剰時には蓄電池が充電し、不足時には蓄電池が放電することで、適時に蓄電池を活用して負荷に安定して給電を行うことができる。
【0022】
(7)また、(1)〜(6)のいずれかの給電設備において、例えば、1日の時間帯、もしくは曜日に応じて前記制御部が、前記放電モードを選択して実行することが好ましい。
この場合、電力需要の多い時間帯、曜日に積極的に蓄電池から給電すれば、いわゆるピークシフトを容易に実現することができる。
【0023】
(8)一方、方法の観点からは、コンデンサによる容量を持つDCバスから負荷に電力を供給し、前記DCバスと蓄電池との間に双方向性の変換装置が介在し、定電圧電源装置は、ダイオードを介して電力を前記DCバスに提供するよう構成された給電設備の運転方法であって、前記DCバスの電圧が充電開始電圧V
C以上になると、前記変換装置が前記蓄電池の充電を開始し、前記DCバスの電圧が放電開始電圧V
D以下になると、前記変換装置が前記蓄電池から放電を開始し、前記定電圧電源装置の電圧をV
Fとするとき、通常モードでは、相対的な大小関係において、V
D<V
F<V
Cの関係とし、放電モードでは、相対的な大小関係において、V
F<V
D<V
Cの関係とするものである。
【0024】
上記のような給電設備の運転方法では、通常モードと放電モードとで、電圧に関する相対的な大小関係が異なる。かかる相対的な大小関係とするには、例えば、通常モードでの放電開始電圧V
D及び充電開始電圧V
Cを、放電モードでは上方へシフトすればよい。あるいは、放電開始電圧V
D及び充電開始電圧V
Cはそのままで、放電モードでの定電圧を、通常モードでの定電圧より低い値にしてもよい。
【0025】
通常モードの場合、蓄電池は定電圧電源装置のバックアップ的な存在であり、定電圧電源装置の停電等が起きない限り、蓄電池の放電は行われない。一方、放電モードでは、定電圧V
Fは放電開始電圧V
Dを下回るため、定電圧V
Fが提供できる状態であっても、蓄電池の放電が行われ、DCバスの電圧を上げる。このとき、定電圧電源装置はダイオードを介してDCバスに接続されているため、定電圧V
FよりDCバスの電圧が高いときは、定電圧電源装置からDCバスへの給電はできない状態となる。いわば、DCバスへの定電圧V
Fの供給を押しとどめて、蓄電池の放電が行われることになる。すなわち、このときの定電圧電源装置は、蓄電池によるDCバスへの給電に対するバックアップ的な存在になる。
【0026】
従って、ハードウェア構成を変えることなく、必要に応じて放電モードを選択することにより、蓄電池を、より積極的に活用して負荷に給電を行うことができる。また、放電モードで蓄電池の残量が下限値に達しても、定電圧電源装置の定電圧V
Fが待機しているため、瞬時停電は生じない。
【0027】
[実施形態の詳細]
以下、実施形態の詳細について図面を参照して説明する。
【0028】
《ハードウェア構成の第1例》
図1は、給電設備100の一実施形態を示す接続図である。図において、DCバス1と、蓄電池2との間には、双方向性の変換装置(DC/DCコンバータ)3が設けられている。また、商用の交流電源4から変換装置(AC/DCコンバータ)5は定電圧V
Fを供給し、さらにダイオード6を介して、DCバス1に電力を供給することができる。変換装置5は、AC/DCの整流を行う。交流電源4、変換装置5及びダイオード6は、定電圧V
FをDCバスに提供する定電圧電源装置7を構成している。
【0029】
また、太陽光発電装置8の出力は、変換装置9を介してDCバス1に電圧を供給する。変換装置9は、太陽光発電装置8に対してMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行う。DCバス1の電圧は、インバータ10により交流の所定電圧に変換され、負荷11に電力が供給される。
DCバス1にはコンデンサ12が接続されており、これによって、DCバス1は、静電容量を有している。
【0030】
図2は、
図1における蓄電池2用の変換装置3の回路図である。変換装置3は、変換部31と、蓄電池2の両端子間の電圧V
Bを検知する電圧センサ32と、蓄電池2から変換部31へ出力する電流I
B又はその逆に、変換部31から蓄電池2へ入力する電流I
Bを検知する電流センサ33と、DCバス1の電圧V
DCを検知する電圧センサ34と、制御部30とを備えている。変換部31は、左側から順に、コンデンサ311、スイッチング素子312,313、リアクトル314及びコンデンサ315を備え、図示のように接続されている。
【0031】
制御部30は、スイッチング素子312,313のオン/オフを制御する。また、電圧センサ32,34及び電流センサ33の検知出力情報は、制御部30に与えられる。
蓄電池2の放電によりDCバス1に電力を送り込むときは、制御部30の制御に基づくスイッチング素子312,313のPWM制御により、昇圧チョッパとしての制御が行われる。DCバス1の電圧V
DCに基づいて蓄電池2を充電するときは、制御部30の制御に基づくスイッチング素子312,313のPWM制御により、降圧チョッパとしての制御が行われる。なお、制御部30は、変換装置3の一部としてではなく、外部にあってもよい。
【0032】
以下、給電設備100の動作について説明するが、これはまた、給電設備100の運転方法についての説明でもある。
【0033】
《通常モード/放電モード》
図3は、DCバス1の電圧と、蓄電池2の充放電との関係を示すグラフである。左側の通常モードでは、
蓄電池2の充電を開始するDCバス1の電圧閾値(この閾値以上では充電)を充電開始電圧V
C、
変換装置3が蓄電池2に放電を開始させるDCバス1の電圧閾値(この閾値以下では放電)を放電開始電圧V
D、
定電圧電源装置からDCバス1に提供される定電圧をV
F、
とするとき、相対的な大小関係において、V
D<V
F<V
Cの関係にある。
【0034】
変換装置3が蓄電池2の放電を停止させるDCバス1の電圧閾値(放電停止電圧)及び、蓄電池2への充電を停止するDCバス1の電圧閾値(充電停止電圧)は、V
D〜V
Cの範囲内で種々の設定の仕方があるが、ここでは共通の値とし、充放電停止電圧V
Sとする。すなわち、これは、充電停止電圧V
Sでもあり、また、放電停止電圧V
Sでもある。さらに、ここでは、V
S≒V
Fとする。
また、ここで、V
S<V
Cの関係であることにより、放電停止の時期と、充電開始の時期とが、互いにずれるので、変換装置3の挙動(放電/充電)を安定させることができる。
【0035】
通常モードにおいて、太陽光発電装置8の発電量が増大し、負荷電力に比べて余剰電力が増大すると、DCバス1の電圧が定電圧電源装置7から提供される定電圧V
Fより上昇する。DCバス1の電圧が充電開始電圧V
Cに達すると、変換装置3は、DCバス1の電圧に基づいて蓄電池2を充電する。充電によりDCバス1の電圧が下がり、充放電停止電圧V
S(定電圧V
Fとほぼ同じ)になると、充電停止となる。太陽光発電装置8の発電量と負荷電力との関係が同様であれば、その後再び、DCバス1の電圧は上昇する。
【0036】
通常モードでは、定電圧電源装置7から定電圧V
Fが供給されている限り、蓄電池2が放電することはないが、もし定電圧電源装置7が停電すると、DCバス1の電圧が下がる場合がある。電圧が、放電開始電圧V
Dまで下がると、変換装置3は、蓄電池2を放電させてDCバス1に電圧を提供する。この結果、DCバス1の電圧が上がり、充放電停止電圧V
S(定電圧V
Fとほぼ同じ)になると、放電停止となる。その後も同じ状況であれば、同様に、蓄電池2からの放電が繰り返される。
【0037】
図4は、例えば太陽光発電装置8の出力が0である場合の、DCバス1の電圧及び充放電電力の時間変化の一例を示すグラフである。中央の破線はDCバス1の電圧(380V)である。点線は、定電圧電源装置7の出力する電力(2000W)、実線は、蓄電池2の出力する電力(0W)である。すなわち、太陽光発電のような変動要素がなく、負荷電力が一定であるとすると、定電圧電源装置7から必要な電力が安定供給され、蓄電池2は電力供給には寄与しない。
【0038】
図3に戻り、右側の放電モードでは、制御部30は、充電開始電圧V
C、充放電停止電圧V
S、放電開始電圧V
Dをそれぞれ、通常モードよりも上方へシフトさせる(閾値を変更する。)。すなわち、通常モードと異なり、相対的な大小関係において前述の各値は、V
F<V
D<V
Cの関係にある。また、V
D<V
S<V
Cである。
【0039】
太陽光発電装置8の発電量が増大し、負荷電力に比べて余剰電力が増大すると、DCバス1の電圧が充放電停止電圧V
Sより上昇する。DCバス1の電圧が充電開始電圧V
Cに達すると、変換装置3は、DCバス1の電圧に基づいて蓄電池2を充電する。充電によりDCバス1の電圧が下がり、充放電停止電圧V
Sになると、充電停止となる。太陽光発電装置8の発電量と負荷電力との関係が同様であれば、その後再び、DCバス1の電圧は上昇する。
【0040】
また、定電圧電源装置7が停電しなくても、DCバス1の電圧が、放電開始電圧V
D(>V
F)まで下がると、変換装置3は、蓄電池2を放電させてDCバス1に電圧を提供する。この結果、DCバス1の電圧が上がり、充放電停止電圧V
Sになると、放電停止となる。その後も同じ状況であれば、同様に、蓄電池2からの放電が繰り返される。
【0041】
図5は、例えば太陽光発電装置8の出力が0若しくは少ない場合の、DCバス1の電圧及び充放電電力の時間変化の一例を示すグラフである。中央の折れ線状の破線はDCバス1の電圧である。点線は、定電圧電源装置7の出力する電力(0W)、実線は、蓄電池2の出力する電力(約2800Wと0Wの間欠出力で平均約2000W)である。すなわち、必要な電力は蓄電池2から供給され、定電圧電源装置7は、電力供給には寄与しない。DCバス1の電圧は変動するが、一定電圧(380V)以上である。
【0042】
以上のように、通常モードの場合、蓄電池2は定電圧電源装置7のバックアップ的な存在であり、定電圧電源装置7の停電等が起きない限り、蓄電池2の放電は行われない。一方、放電モードでは、定電圧V
Fは放電開始電圧V
Dを下回るため、定電圧V
Fが提供できる状態であっても、蓄電池2の放電が行われ、DCバス1の電圧を上げる。このとき、定電圧電源装置7はダイオード6を介してDCバス1に接続されているため、定電圧V
FよりDCバス1の電圧が高いときは、定電圧電源装置7からDCバス1への給電はできない状態となる。いわば、DCバス1への定電圧V
Fの供給を押しとどめて、蓄電池2の放電が行われることになる。すなわち、このときの定電圧電源装置7は、蓄電池2によるDCバス1への給電に対するバックアップ的な存在になる。
【0043】
蓄電池2の放電が進むと、DCバス1の電圧が下がるが、電圧が定電圧V
F以下になれば、待機している定電圧電源装置7から定電圧V
Fが供給される。従って、瞬時停電が起きることも無い。
【0044】
このようにして、給電設備100のハードウェア構成を何ら変えることなく、必要に応じて放電モードを選択することにより、蓄電池2を、より積極的に活用して負荷11に給電を行うことができる。また、放電モードで蓄電池2の残量が下限値に達したとしても、定電圧電源装置7の定電圧V
Fが待機しているため、瞬時停電は起きない。
【0045】
また、上記太陽光発電装置8のほか、風力発電装置等も含めた自然エネルギーを利用した発電装置がDCバス1に接続されている場合、かかる発電装置の発電量が安定しないため、DCバス1の電圧が変動しやすい。しかしながら、どのモードにおいても、かかる発電装置の発電電力が、余剰時には蓄電池が充電し、不足時には蓄電池が放電することで、適時に蓄電池2を活用して負荷に安定して給電を行うことができる。
【0046】
《積極充電モード》
次に、上記の通常モード及び放電モードとは別に、さらに設定可能な積極充電モードについて説明する。
図6は、積極充電モードにおける、DCバス1の電圧と、蓄電池2の充放電との関係を示すグラフである。
図において、積極充電モードでは、充電開始電圧V
C、放電開始電圧V
D、定電圧V
Fの相対的な大小関係が、V
D<V
C<V
Fの関係にある。充放電
停止電圧V
Sは、V
D<V
S<V
Cの関係にある。
【0047】
制御部30が積極充電モードを選択するのは、定電圧電源装置7による供給電力に比して負荷11の需要電力が少ない場合である。この場合、定電圧電源装置7の供給力から見て、いわゆる余剰電力がある。この状態で積極充電モードが選択されると、DCバス1の電圧は、充電開始電圧V
C以上であるため、制御部30は、蓄電池2の充電を行うように変換装置3を動作させる。もちろん、定電圧電源装置7の停電時には、蓄電池2によるバックアップが行われる。
【0048】
図7は、DCバス1の電圧、定電圧電源装置7からの入力電力、及び、蓄電池2への充電電力の時間変化の一例を示すグラフである。定電圧電源装置7の余剰電力は、蓄電池2の充電に使用されている。DCバスの電圧(380V)は安定している。
【0049】
このように、負荷11に必要な電力に対して定電圧電源装置7の供給能力に十分な余裕があり、余剰電力がある場合には、積極充電モードを選択することにより、余剰電力によって積極的に蓄電池2を充電することができる。これにより、蓄電池2に十分な残量がある状態をできるだけ多く保ち、蓄電池2の運用効率を向上させることができる。
【0050】
《制限放電モード》
例えば、
図3の放電モードにおいて、蓄電池2が放電している場合を考える。この場合において、蓄電池2のみからでは負荷11に必要な電力を全てまかなえないか若しくは負担が大きい場合は、定電圧電源装置7の援助が必要となる。そこで、このような状況が実現できるよう、蓄電池2の放電電流を制限するようにしてもよい。放電電流の制限は、制御部30が変換装置3の定電流制御における電流値を一定値に定め、その一定値に制限することにより、容易に実現できる。
【0051】
図8は、放電制御から制限放電制御にモード変更する状態での、DCバス1の電圧及び充放電電力の変化を示すグラフである。時間tが、0〜t1までは、変換装置3が蓄電池2を放電させている。時刻t1以後は、蓄電池2の放電電流が一定電流に制限される。これにより、DCバス1の電圧が下がり、約380Vになると、それまで0Wだった定電圧電源装置7から必要な電力が供給される。
【0052】
このように、負荷11へ供給する電力が蓄電池2のみからでは不足する場合にはDCバス1の電圧が下がって定電圧電源装置7から自動的に定電圧(V
F)で電力が供給される。すなわち、蓄電池2から供給する電力を一定値に制限することにより、負荷11の電力に応じて自動的に、定電圧電源装置7からの電力を併用することができる。一定値の値を適宜選択することにより、蓄電池2と、定電圧電源装置7との間で、電力供給の負担割合を定めることができる。また、この場合、制限後のDCバス1の電圧が安定している。負担割合を決める演算も比較的容易である。
【0053】
《放電モードから積極充電モード》
図9は、放電モードから積極充電モードへのモード変更を示す図である。
図9の左の放電モードにおいて、蓄電池2の残量が所定値まで低下した場合、制御部30は、変換装置3の制御を、右側に示す積極放電モードに変更する。なお、蓄電池2の残量は、電圧センサ32(
図2)によって検知する電圧V
B又は電流センサ33(
図2)によって検知する電流I
Bの積算により把握することができる。
積極充電モードでは、制御部30は、充電開始電圧V
C、充放電停止電圧V
S、放電開始電圧V
Dをそれぞれ、放電モードよりも下方へシフトさせる(閾値を変更する。)。すなわち、相対的な大小関係において各値はV
D<V
S<V
C<V
Fの関係とする。これにより、蓄電池2を充電することができる。
【0054】
《ハードウェア構成の第2例》
図10は、給電設備100のハードウェア構成の第2例を示す接続図である。
図1との違いは、定電圧電源装置7が直流電源となり、負荷11も直流負荷である点であり、その他の構成は同様である。この場合も第1例と全く同様に、変換装置3の制御部に対して、上記の各モードを適用することができる。
【0055】
《ハードウェア構成の第3例》
図11は、給電設備100のハードウェア構成の第3例を示す接続図である。
図1との違いは、定電圧電源装置7が直流電源となり、負荷11も直流負荷である点である。また、この構成には太陽光発電装置が無く、最も簡素な直流給電設備の構成である。この場合も第1例と全く同様に、変換装置3の制御部に対して、上記の各モードを適用することができる。
【0056】
《定電圧電源装置側の制御による通常モード/放電モード、その他》
なお、上記の各モードでは、変換装置3の制御部30が、DCバス1の電圧に対する変換装置3の動作の閾値を変えるものであった。
しかしながら、変換装置3の動作の閾値を変えずに、定電圧電源装置7の定電圧V
Fを変える(V
FH又はV
FL)ことによっても、同様な相対的変化を実現することができる。
【0057】
図12は、
図1における変換装置(AC/DCコンバータ)5の回路図である。変換装置5は、同期整流回路51と、交流電圧V
ACを検知する電圧センサ52と、入力電流I
ACを検知する電流センサ53と、DCバス1の電圧V
DCを検知する電圧センサ54と、制御部50とを備えている。
【0058】
制御部50は、同期整流回路51内のスイッチング素子(図示せず。)のオン/オフを制御し、出力電圧も制御する。また、電圧センサ52,54及び電流センサ53の検知出力情報は、制御部50に与えられる。
なお、制御部50は、変換装置5の一部としてではなく、外部にあってもよい。
【0059】
図13は、DCバス1の電圧と、蓄電池2の充放電との関係を示すグラフである。まず、左側の通常モードでは、
蓄電池2の充電を開始するDCバス1の電圧閾値を充電開始電圧V
C、
変換装置3が蓄電池2に放電を開始させるDCバス1の電圧閾値を放電開始電圧V
D、
定電圧電源装置からDCバス1に提供される定電圧をV
FH、
とするとき、相対的な大小関係において、V
D<V
FH<V
Cの関係にある。なお、充放電停止電圧V
Sは、V
D〜V
Cの範囲内で種々の設定の仕方があるが、ここでは、V
S≒V
FHとする。
【0060】
通常モードにおいて、太陽光発電装置8の発電量が増大し、負荷電力に比べて余剰電力が増大すると、DCバス1の電圧が定電圧電源装置7から提供される定電圧V
FHより上昇する。DCバス1の電圧が充電開始電圧V
Cに達すると、変換装置3は、DCバス1の電圧に基づいて蓄電池2を充電する。充電によりDCバス1の電圧が下がり、充放電停止電圧V
S(定電圧V
FHとほぼ同じ)になると、充電停止となる。太陽光発電装置8の発電量と負荷電力との関係が同様であれば、その後再び、DCバス1の電圧は上昇する。
【0061】
定電圧電源装置7から定電圧V
FHが供給されている限り、蓄電池2が放電することはないが、定電圧電源装置7が停電すると、DCバス1の電圧が下がる場合がある。電圧が、放電開始電圧V
Dまで下がると、変換装置3は、蓄電池2を放電させてDCバス1に電圧を提供する。この結果、DCバス1の電圧が上がり、充放電停止電圧V
S(定電圧V
FHとほぼ同じ)になると、放電停止となる。その後も同じ状況であれば、同様に、蓄電池2からの放電が繰り返される。
【0062】
一方、右側の放電モードでは、変換装置5の制御部50が、定電圧V
FHの値を低下させ、別の定電圧V
FLとする。この結果、通常モードと異なり、相対的な大小関係において前述の各値は、V
FL<V
D<V
Cの関係にある。また、V
D<V
S<V
Cである。
【0063】
放電モードにおいて、太陽光発電装置8の発電量が増大し、負荷電力に比べて余剰電力が増大すると、DCバス1の電圧が充放電停止電圧V
Sより上昇する。DCバス1の電圧が充電開始電圧V
Cに達すると、変換装置3は、DCバス1の電圧に基づいて蓄電池2を充電する。充電によりDCバス1の電圧が下がり、充放電停止電圧V
Sになると、充電停止となる。太陽光発電装置8の発電量と負荷電力との関係が同様であれば、その後再び、DCバス1の電圧は上昇する。
【0064】
また、定電圧電源装置7が停電しなくても、DCバス1の電圧が、放電開始電圧V
D(>V
FL)まで下がると、変換装置3は、蓄電池2を放電させてDCバス1に電圧を提供する。この結果、DCバス1の電圧が上がり、充放電停止電圧V
Sになると、放電停止となる。その後も同じ状況であれば、同様に、蓄電池2からの放電が繰り返される。
【0065】
このように、定電圧電源装置7側の制御部50を用いて定電圧V
FをV
FH又はV
FLに変化させても、
図3に示すような、動作閾値をシフトするのと同じことができ、同様な作用効果を得ることができる。
すなわち、通常モードでの放電開始電圧V
D及び充電開始電圧V
Cを、放電モードではシフトするか、あるいは、放電開始電圧V
D及び充電開始電圧V
Cはそのままで、放電モードでの定電圧を、通常モードでの定電圧より変化させるか、いずれでもよい。また、これらを併用することも可能である。その他の各種モードに関しても同様である。
【0066】
なお、蓄電池2の制限放電モードに関しても、変換装置5の出力電流を制限することにより、類似のことができる。この場合は、蓄電池2の出力を制限するというよりも、定電圧電源装置7から出力するが、その出力を制限することで、蓄電池2にもある程度出力を負担させるという意味合いになる。
図14は、放電制御から制限放電制御にモード変更する状態での、DCバス1の電圧及び充放電電力の変化を示すグラフである。時間tが、0〜t1までは、定電圧電源装置7から負荷11に電力が供給され、蓄電池2からは電力が出力されていない。時刻t1において定電圧電源装置7からの出力を制限すると、蓄電池2からも出力が負荷11に提供される。
【0067】
このようにして、定電圧電源装置7と、蓄電池2とを併用した電力供給が可能である。ただし、
図8に示す制御と比較すると、DCバス1の電圧が揺れ動く点と、負担割合の計算が煩雑になるという若干の難しさはある。
【0068】
《実用的なシステムの例》
図15は、給電設備100を含む給電システムの構成例を示す図である。
図1で説明したように、給電設備100は、例えば、DCバス1、蓄電池2、双方向性の変換装置3、交流電源4、変換装置5、太陽光発電装置8、変換装置9、インバータ10、負荷11を備えている。4つの変換装置3,5,9,10は、1つのマルチパワーコンディショナ101として構成することもできる。モードの切り替えを行う制御部は、例えば変換装置3又は5に内蔵することもできるし、マルチパワーコンディショナ101内に独立して設けることもできる。またさらに、DCバス1に他の発電装置を拡張ユニット102として接続する場合もある。例えば、太陽光発電装置21から変換装置23を介して、あるいは、風力発電装置22から変換装置24を介して、それぞれDCバス1に電力を送り込むことができる。
【0069】
《ピークシフト》
上記のような給電設備は、モード変更により、ピークシフトに対応することができる。例えば、1日の使用電力が
図16のように変化する需要家の場合、電力需要が多くなると予想される時間帯若しくは曜日に応じて節減の目標電力を設定する。そして、目標電力を超える時間帯は積極的に蓄電池の電力を活用し、蓄電池が失った電力は、例えば夜間電力を利用して充電するようにすれば、ピークシフトに容易に対応することができる。
【0070】
《その他》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。