(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物及び光学フィルムを説明する。
【0013】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(A)重合体及び(B)変性セルロースを含有する。当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他の任意成分を含有してもよい。
【0014】
[(A)重合体]
(A)重合体は、環状オレフィン重合体である。環状オレフィン重合体は、一般に透明性等の光学特性、寸法安定性及び耐熱性に優れるものであり、光学用途の他、様々な分野で利用されている。(A)重合体は、環状オレフィンの中でも、主鎖中に環状オレフィンに由来する構造単位(以下「構造単位(a)」ともいう)を含むものである。すなわち、(A)重合体は、環状オレフィンに由来する構造単位(a)からなる重合体、及び環状オレフィンに由来する構造単位(a)と他の単量体に由来する構造単位とを含む共重合体の双方を含む。また、(A)重合体は、単量体の付加重合体、開環メタセシス重合体、これらの水素添加体を含む。上記構造単位(a)としては、例えば下記式(2)で表わされる構造単位が挙げられる。
【0016】
上記式(2)中、R
4〜R
7は、それぞれ独立して、下記(i)〜(vi)である。但し、R
4〜R
7は、下記(vii)又は(viii)であってもよい。p及びmは、それぞれ独立して、0〜3の整数である。
【0017】
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)トリアルキルシリル基
(iv)酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有する置換又は非置換の1〜30の炭化水素基
(v)置換又は非置換の1〜30の炭化水素基(但し、(iv)を除く)
(vi)極性基を含む基(但し、(iv)及び(v)を除く)
(vii)R
4とR
5とが相互に、又はR
6とR
7とが相互に結合して形成されたアルキリデン基を表す。(但し、相互結合に関与しないR
4及びR
5、又はR
6及びR
7は、それぞれ独立して上記(i)〜(vi)のいずれかの原子又は基である)
(viii)R
4〜R
7のうちの少なくとも2つが相互に結合し、これらが結合する炭素と共に単環若しくは多環の炭化水素環又は複素環を形成する。(但し、R
4〜R
7のうちの相互結合に関与しないR
4〜R
7は、それぞれ独立して、上記(i)〜(v)のいずれかの原子又は基である)
【0018】
上記(iii)トリアルキルシリル基としては、例えば炭素数1〜12のトリアルキルシリル基等が挙げられ、炭素数1〜6のトリアルキルシリル基が好ましい。このようなトリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が挙げられる。
【0019】
上記(iv)における酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はケイ素原子を含む連結基としては、例えばカルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホニル基(−SO
2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R)
2−(式中、Rはメチル、エチル等のアルキル基))等が挙げられる。なお、上記(iv)の炭素数1〜30の炭化水素基は、連結基を複数含んでいてもよい。
【0020】
上記(iv)及び(v)の非置換の炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の1価の鎖状炭化水素基;
シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等の1価の脂環式炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0021】
上記(iv)及び(v)の置換の炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば上記(iv)及び(v)の非置換の炭素数1〜30の炭化水素基として例示した基の水素原子の少なくとも1つが置換基により置換された炭化水素基が挙げられる。この置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、チオール基、有機スルホニル基等が挙げられる。
【0022】
(vi)極性基としては、例えばヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;シアノ基;アミノ基;アシル基;スルホ基;カルボキシル基などが挙げられる。
【0023】
上記(vii)における相互結合で形成されるアルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
【0024】
上記(viii)における相互結合で形成される単環若しくは多環の炭化水素環又は複素環としては、例えばシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロへプタン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0025】
(A)重合体は、変性セルロースとの相溶性の観点から、R
4〜R
7として(iv)及び(vi)のうちの少なくとも一方の基を含むことが好ましい。
【0026】
上記構造単位(a)としては、例えば下記式(3−1)〜式(3−15)で表される構造単位が挙げられる。
【0028】
(A)重合体は、上記式(3−1)〜式(3−15)で表される構造単位(a)を1種類含んでいてもよいし、複数種含んでいてもよい。
【0029】
(A)重合体における構造単位(a)の含有割合としては、(A)重合体中の全構造単位に対して、50モル%以上100%以下が好ましく、75モル%以上100%以下がより好ましい。
【0030】
(A)重合体の固有粘度[η]は、通常0.2dL/g〜5.0dL/gであり、好ましくは0.3dL/g〜4.0dL/g、より好ましくは0.35dL/g〜1.5dL/gである。なお、固有粘度[η]は、30℃のクロロベンゼン溶液(濃度0.5g/100mL)中で測定した値である。
【0031】
(A)重合体の数平均分子量(Mn)は、通常8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは20,000〜100,000である。(A)重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜3,000,000、好ましくは20,000〜1,000,000、より好ましくは30,000〜500,000である。(A)重合体の数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、得られる成形品やフィルムの強度が低くなるおそれがある。一方、(A)重合体の数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、溶液粘度又は溶融粘度が高くなりすぎて本発明の樹脂組成物の生産性や加工性が悪化するおそれがある。
【0032】
なお、(A)重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算値である。
【0033】
(A)重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2.2〜5である。
【0034】
(A)重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常110℃〜250℃、好ましくは115℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃である。(A)重合体のTgが低すぎると、熱変形温度が低くなるため、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また当該樹脂組成物から得られるフィルム等の成形品の温度による光学特性の変化が大きくなるおそれがある。一方、(A)重合体のTgが高すぎると、加工温度を高くする必要があるため、加工時に樹脂組成物が熱劣化することがある。
【0035】
当該樹脂組成物における(A)重合体の含有量は、通常25質量%以上99.9質量%以下、好ましくは25質量%以上90質量%以下、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。(A)重合体の含有量が25質量%未満であると、環状オレフィン重合体の特性、例えば透明性、耐熱性を十分に得ることができないおそれがあると共に(B)変性セルロースの特性により吸水性が大きくなるおそれがある。(A)重合体の含有量が99.9質量%を超えると、(B)変性セルロースの有利な特性を十分に発現できないおそれがある。
【0036】
[(B)変性セルロース]
(B)変性セルロースは、下記式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(b)」ともいう)を有する。この(B)変性セルロースは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の構造を含有していてもよい。
【0038】
上記式(1)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基である。但し、上記置換基(以下「置換基(b1)」ともいう)は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はケイ素原子を含んでいてもよい炭素数2〜20のアシル基、及び炭素数2〜20の有機スルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。構造単位(b)における置換基(b1)による総置換度は、0.5〜3である。この総置換度としては、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましく、3が特に好ましい。
【0039】
ここで、総置換度とは、R
1〜R
3の水素原子が上記アシル基及び上記有機スルホニル基により置換されている割合をいう。例えば、総置換度が0.5とは、2つの構造単位(b)の合計6つのR
1〜R
3の水素原子のうち、1つだけが上記アシル基又は上記有機スルホニル基により置換されていることを意味する。また、総置換度が3とは、1つの構造単位(b)の合計3つのR
1〜R
3の全てが上記アシル基及び/又は上記有機スルホニル基であることを意味する。
【0040】
置換基(b1)としての炭素数2〜20のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、ペンタノイル基(バレリル基)等の直鎖状アシル基;イソプロピオニル基、イソブチロイル基、イソバレリル基、ビバロイル基等の分岐状アシル基;シクロペンタノイル基、シクロヘキサノイル基、シクロヘプタノイル基等の環状アルカノイル基;ベンゾイル基、フェニルアセチル基、フェニルプロパノイル基、ナフタノイル基等の芳香族アシル基などが挙げられる。上記炭素数2〜20のアシル基が酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はケイ素原子を含む場合、これらの原子は炭素−炭素結合間に連結基として存在してもよく、また官能基の一部として存在してもよい。
【0041】
置換基(b1)としての有機スルホニル基とは、スルホニル基に1価の有機基が結合したものである。この1価の有機基としては、例えば置換又は非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。この置換又は非置換の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(1)のR
4〜R
7で表される置換又は非置換の炭素数1〜30の炭化水素基として例示したものと同様なものが挙げられる。
【0042】
構造単位(b)の置換基(b1)のうちの少なくとも1つは、下記式(4)で表される1価の基(以下、「置換基(b1−1)」ともいう)を含むことが好ましい。このような置換基(b1−1)を含む(B)変性セルロースは、(A)重合体のカルボニル基等と水素結合を形成可能なため、(A)重合体との相溶性により優れる。なお、下記式(4)で表される水素結合を形成し得る基は、(A)重合体の構造単位(a)が有していてもよい。すなわち、当該樹脂組成物において、(A)重合体及び(B)変性セルロースとしては、これらの間に水素結合を形成可能な組み合わせが好ましい。
【0044】
上記式(4)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、−O−R
8−O−、−S−R
8−S―、又は−O−R
8−S−である。R
8は、炭素数1〜4の2価の連結基である。
【0045】
置換基(b1−1)としては、ヒドロキシベンゾイル基、(ヒドロキシフェニル)アセチル基等のフェニール性水酸基を含む基、メルカプトベンゾイル基、(メルカプトフェニル)アセチル基等のチオフェノール性チオール基を含む基、アルコール性水酸基を含む基が好ましく、フェニール性水酸基を含む基がより好ましい。
【0046】
構造単位(b)の置換基(b1)のうちの少なくとも1つに、置換基(b1−1)を含む場合、この置換基(b1−1)を含む置換基(b1)による置換度は、0.1〜2.0が好ましく、0.2〜1.0がさらに好ましい。置換度が0.1未満であると、当該樹脂組成物の相溶性が低下し光学フィルムの透明性が損なわれる傾向がある。一方、置換度が2.0を超えると、吸水率の悪化や着色の傾向がある。
【0047】
(B)変性セルロースにおける構造単位(b)の含有割合としては、(B)変性セルロース中の全構造単位に対して、50モル%以上100%以下が好ましく、75モル%以上100%以下がより好ましい。
【0048】
当該樹脂組成物を200μm厚のフィルムにしたときの全光線透過率としては、90%以上が好ましい。全光線透過率が90%未満であると、光学フィルム等の透明性が要求される用途への適用が困難となるおそれがある。
【0049】
当該樹脂組成物における(B)変性セルロースの含有量は、(A)重合体100質量部に対して、通常0.01質量部以上300質量部以下、好ましくは10質量部以上300質量部以下、より好ましくは40質量部以上150質量部以下である。(B)変性セルロースの含有量が上記範囲にあると、位相差発現性、耐候性、耐熱性、耐吸水性(低吸水性)に優れる。(B)変性セルロースの含有量が0.01質量部未満であると、PVAとの親和性が失われ、当該樹脂組成物から形成した光学フィルムをPVA製の偏光フィルムに接着したときの接着性が低くなるおそれがある。一方、(B)変性セルロースの含有量が300質量部を超えると、位相差発現性、耐候性、耐熱性が低下し、また吸水性が高くなるおそれがある。
【0050】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、耐熱劣化性や耐候性の改良するものである。酸化防止剤としては、例えばフェノール系又はヒドロキノン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0051】
フェノール系又はヒドロキノン系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
【0052】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0053】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤は、耐光性を改良するものである。紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]等が挙げられる。
【0054】
[その他の任意成分]
当該樹脂組成物は、(A)重合体、(B)変性セルロース、酸化防止剤及び紫外線吸収剤以外のその他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば加工性を向上させる滑剤の他、公知の添加剤、例えば難燃剤、抗菌剤、着色剤、離型剤、発泡剤が挙げられる。これらのその他の任意成分は、1種を単独使用しても2種以上を併用してもよい。
【0055】
[樹脂組成物の調製方法]
当該樹脂組成物は、例えば
(i)(A)重合体、(B)変性セルロース、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他の任意成分を、二軸押出機、ロール混練機等を用いて混合する方法、
(ii)(A)重合体、(B)変性セルロース、必要に応じて酸化防止剤、その他の任意成分を、適当な溶媒に溶解した溶液に混合する方法
により製造することができる。
【0056】
<光学フィルム>
本発明に係る光学フィルムは、当該樹脂組成物から形成されるものである。この光学フィルムとしては、例えば位相差フィルム、偏光フィルム、光拡散フィルムが挙げられる。
【0057】
[光学フィルムの厚み]
光学フィルムの厚みとしては、用途等に応じて適宜選択されるが、通常500μm以下、好ましくは10μm〜300μm、より好ましくは50μm〜188μmである。光学フィルムの厚みが小さすぎると、フィルム強度を十分に確保できないおそれがある。一方。光学フィルムの厚みが500μmを超えると、シートの透明性を確保できなくなるおそれがある。
【0058】
[光学フィルムの全光線透過率]
光学フィルムの全光線透過率としては、90%以上が好ましい。ここで、全光線透過率は、厚み200μmの光学フィルムの厚みにおける透明度試験法(JIS−K7105:1981)の値である。当該光学フィルムの厚みの全光線透過率が90%以上であることで、当該高分子シートの透明性を確保することができる。そのため、当該光学フィルムは、位相差フィルム、偏光フィルム等として好適に使用することができる。なお、光学フィルムの厚みの全光線透過率が90%未満であると、透明性の低下が顕著となるために好ましくない。
【0059】
[光学フィルムの製造方法]
当該光学フィルムは、当該樹脂組成物を、公知の成形方法、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等を用いてフィルム状に成形することによって製造できる。これらの中でも、押出成形法が好ましく、後述する溶融押出成形法がより好ましい。また、(A)重合体、(B)変性セルロース、必要に応じて任意成分を適当な溶媒に溶解又は分散した後、溶剤キャスト法によってフィルムを形成して製造することもできる。このとき用いられる溶媒は、溶剤キャスト法に通常用いられ、(A)重合体、(B)変性セルロース等を十分に溶解できるものであれば特に制限されないが、例えば極性溶媒、非極性溶媒を用いることができる。ここで、極性溶媒とは、20℃での誘電率が4以上80未満のもの、非極性溶媒とは1以上4未満のものである。
【0060】
(溶融押出成形法)
溶融押出成形法では、当該樹脂組成物を押出機に供給して溶融し、この溶融樹脂組成物をダイから押し出して冷却ロールに圧着してフィルム化することで光学フィルムが得られる。
【0061】
当該樹脂組成物を溶融する方法としては、押出機による方法が好ましく、この溶融した樹脂組成物をギアポンプにより定量供給し、これを金属フィルター等でろ過して不純物を除去した後、ダイにてフィルム形状に賦型しつつ押し出す方法が好ましい。
【0062】
押出機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、遊星式押出機、ニーダー押出機等が挙げられ、単軸押出機が好ましい。
【0063】
ダイとしては、ダイ内部の樹脂流動を均一にすることが必要であり、フィルムの厚みの均一性を保つには、ダイ出口近傍でのダイ内部の圧力分布が幅方向で一定であることが必要である。このような条件を満たすダイとしては、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイ等が挙げられ、これらの中でも、コートハンガーダイが好ましい。
【0064】
冷却ロールは、内部に加熱手段及び冷却手段を有するものが好ましく、表面の材質が、酸化アルミニウム、タングステンカーバイド及び酸化クロムから選ばれるセラミックスであるものが用いられる。これらのうち、表面硬度と強度の観点から、酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0065】
当該光学フィルムの製造方法においては、溶融押出により得られた光学フィルムを、さらに延伸してもよい。その場合の延伸加工方法としては、具体的には、公知の一軸延伸法又は二軸延伸法、例えばテンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法、横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等が挙げられる。延伸して得た光学フィルムの厚さは、通常200μm以下、好ましくは10μm〜150μmである。
【0066】
[光学フィルムの用途]
当該光学フィルムは、好適には位相差フィルムとして使用される。このような位相差フィルムは、偏光子と接着することで偏光板として使用することができる。具体的には、PVA系フィルム等からなる偏光子の少なくとも片面に、PVA樹脂を主体とした水溶液からなる水系接着剤、極性基含有粘接着剤、光硬化性接着剤等を使用して当該光学フィルムを貼り合わせ、必要に応じてこれを加熱又は露光し、圧着して、偏光子と光学フィルムとを接着(積層)させることにより偏光板とすることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
【0068】
<測定・評価方法>
(1)固有粘度[η]
固有粘度[η]は、濃度0.5g/100mLのクロロベンゼン溶液中で、30℃の条件で測定した。
【0069】
(2)分子量
分子量は、東ソー社の「HLC−8220ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」(GPC、カラム(東ソー社の「TSKgelG7000HxL」、「TSKgelGMHxL」、「TSKgelGMHxL」及び「TSKgelG2000xL」))を用い、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)として測定した。また、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0070】
(3)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、セイコーインスツルメンツ社の「DSC6200」を用いて、昇温速度を毎分20℃とし、窒素気流下で測定した。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0071】
(4)透明性(全光線透過率の測定)
透明性は、透明性評価用試験片の全光線透過率をJIS−K7105(測定法A):1981に準じて、HAZEメーター(スガ試験機社の「HGM−2DP」)を用いて測定した。
【0072】
(5)吸水率
吸水率は、23℃の水中にフィルムを24時間浸漬し、浸漬前後の質量変化より求めた。
【0073】
[製造例1]
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン100質量部、分子量調節剤として1−へキセン4質量部、及び溶媒としてトルエン200質量部を、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(濃度0.6mol/L)0.12質量部、メタノール変性WCl
6のトルエン溶液(濃度0.025mol/L)0.37質量部を加え、80℃で1時間反応させることにより重合体を得た。
【0074】
得られた重合体の溶液をオートクレーブに入れ、さらに溶媒としてトルエン200質量部及び水素添加触媒としてRuHCl(CO)[P(C
6H
5)
3]
30.06質量部を添加した後、窒素置換を3回行った。次いで、水素ガスを反応容器へ投入し、圧力を8.0MPaに調整した。その後、165℃まで加熱した後、圧力を10MPaに保持したまま、165℃で3時間の反応を行い、水素添加体を得た。この水素添加体をメタノールで再沈殿させて回収した後、乾燥して(A)重合体を得た。
【0075】
この(A)重合体は、固有粘度[η]=0.78dL/g、重量平均分子量(Mw)=11.5×10
4、分子量分布(Mw/Mn)=3.3、ガラス転移温度(Tg)=167℃であった。また、
1H−NMR測定により(A)重合体の水素添加率を求めたところ、主鎖中のオレフィン性不飽和結合は99.9%以上水素添加されていた。
【0076】
[製造例2]
乾燥したセルロース20質量部をN,N−ジメチルアセトアミド440質量部に懸濁させ、160℃で1時間撹拌を行った。その後、窒素雰囲気下で懸濁液から約38質量部のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧して取り除いた後、100℃まで冷却し塩化リチウムを40質量部加え、さらに室温まで撹拌しながら冷却することで3時間かけてセルロースを溶解させた。
【0077】
このセルロース溶液にトリエチルアミンの50質量%N,N−ジメチルアセトアミド溶液を86質量部加え、さらに撹拌した後、反応溶液を5℃に保ちながらp−トルエンスルホン酸クロリドの50質量%ジメチルアセトアミド溶液60質量部を30分かけて徐々に加えた。その後、5℃で24時間撹拌した。
【0078】
反応溶液にさらに塩化オクタノイルを81質量部加え室温で8時間撹拌した。反応溶液を5,000質量部の氷水に徐々に注ぎ、さらに水・エタノールそれぞれ3,000質量部で反応溶液を洗った後、アセトン1,000質量部に懸濁させ、3,000質量部の水に注ぎ反応物を沈殿させた。沈殿物をろ過した後、エタノールで洗浄し50℃で48時間真空乾燥し、トシルオクタノイルセルロースを得た。得られたトシルオクタノイルセルロースの置換度は
1H−NMRよりそれぞれ求め、トシル基が1.3、オクタノイル基が1.7、総置換度は3.0であった。
【0079】
得られたトシルオクタノイルセルロース3.5質量部をN,N−ジメチルホルムアミド330質量部に懸濁させた後、3.5質量部の4−ヒドロキシフェニル酢酸ナトリウムを加え、窒素雰囲気下100℃で3時間加熱した。
【0080】
反応溶液から減圧下でN,N−ジメチルホルムアミドを除去し、残渣を水・メタノールで洗浄した後、50℃で48時間真空乾燥し、(B)変性セルロースを得た。得られた(B)変性セルロースの置換度は
1H−NMRよりそれぞれ求め、トシル基が0.8、オクタノイル基が1.7、(4−ヒドロキシフェニル)アセチル基が0.5、総置換度は3.0であった。
【0081】
[実施例1]
製造例1より得られた(A)重合体5質量部と製造例2より得られた(B)変性セルロース5質量部とを塩化メチレン200質量部に溶解させた後、ガラスシャーレに注ぎ自然乾燥させた後、室温で48時間、80℃で48時間それぞれ真空乾燥し、透明な200μmの厚さのフィルムを得た。得られたフィルムの全光線透過率を測定したところ92%、吸水率は1.1%であった。
【0082】
[実施例2]
実施例1の(B)変性セルロースをトリアセチルセルロースに変えてフィルムを作成したところ、全光線透過率は85%、吸水率は2.0%であった。
【0083】
[比較例1]
実施例1の(B)変性セルロースをセルロースに変えてフィルムを作成したところ、不均一なフィルムが得られた。全光線透過率52%、吸水率は30%であった。
【0084】
以上の結果から明らかなように、(A)重合体とともに(B)変性セルロースを用いることで、他のセルロース類を用いる場合に比べて、全光線透過率が低く(透明性が高く)、吸水率が低い(耐水性に優れる)光学フィルムが得られた。