(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側面隙間(δ)の増加は、前記可動スクロール(40)を旋回させる運転時に、前記側面隙間(δ)が外周側から内周側にわたって均等な状態に近づくように設定されている、
請求項1に記載のスクロール圧縮機(1)。
前記側面隙間(δ)の増加は、前記固定側ラップ部(32)及び/又は前記可動側ラップ部(42)の歯厚を外周側から内周側に向かって小さくすることによって得られている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のようなスクロールの歯底部に段差を形成した構成では、可動スクロールを旋回させる運転時のスクロールの熱膨張に対する考慮が十分とは言えない。
【0004】
例えば、R32のような吐出ガス冷媒温度が高くなり易い冷媒を使用すると、高圧縮比の運転条件において、スクロールのラップ部の歯厚が熱膨張によって増加し易くなり、しかも、圧縮行程中の温度上昇も大きくなるため、スクロールのラップ部の歯厚の熱膨張による増加がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で大きくなる傾向が顕著になる。このような熱膨張によるスクロールの変形に対して、固定スクロールの固定側ラップ部の側面と可動スクロールの可動側ラップ部の側面との間の側面隙間をラップ部の外周寄りの部分を基準に設定すると、ラップ部の内周寄りの部分で側面隙間が小さ過ぎて摩擦損失が増大するおそれがある。逆に、側面隙間をラップ部の内周寄りの部分を基準に設定すると、ラップ部の外周寄りの部分で側面隙間が大き過ぎて冷媒の漏れ損失が増大するおそれがある。これに対して、特許文献1のようなスクロールの歯底部に段差を形成した構成を採用しても、このようなスクロールの熱膨張に起因する摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することは難しい。
【0005】
本発明の課題は、スクロール圧縮機において、運転時のスクロールの熱膨張を考慮したスクロール構造を採用して、ラップ部の内周寄りの部分において側面隙間が小さくなり過ぎることを抑制し、かつ、ラップ部の外周寄りの部分において側面隙間が大きくなり過ぎることを抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点にかかるスクロール圧縮機は、固定スクロールと可動スクロールとを備えている。固定スクロールは、固定側板部の一面に渦巻き形状の固定側ラップ部が立設されている。可動スクロールは、固定スクロールに対向して旋回可能に配置されており、可動側板部の一面に固定側ラップ部に噛み合う渦巻き形状の可動側ラップ部が立設されている。そして、固定側ラップ部の側面と可動側ラップ部の側面との間には、外周側から内周側に向かって増加する側面隙間が形成されている。ここで、「側面隙間」とは、固定側ラップ部の側面と可動側ラップ部の側面とが最も接近した状態において両側面間に形成される隙間のことである。
【0007】
運転時のスクロールの熱膨張に対する考慮が不十分である場合には、ラップ部の歯厚の熱膨張による増加がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で大きくなることによって、固定側ラップ部の側面と可動側ラップ部の側面との間の側面隙間が、ラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向が現れる。
【0008】
そこで、ここでは、運転時の熱膨張によって側面隙間がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を見越して、上記のように、固定側ラップ部の側面と可動側ラップ部の側面との間に、外周側から内周側に向かって増加する側面隙間が形成されるようにしている。
【0009】
これにより、ここでは、運転時の熱膨張によって側面隙間がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を打ち消すことができるようになり、ラップ部の内周寄りの部分において側面隙間が小さくなり過ぎることを抑制し、かつ、ラップ部の外周寄りの部分において側面隙間が大きくなり過ぎることを抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することができる。
【0010】
第2の観点にかかるスクロール圧縮機は、第1の観点にかかるスクロール圧縮機において、側面隙間の増加が、可動スクロールを旋回させる運転時に、側面隙間が外周側から内周側にわたって均等な状態に近づくように設定されている。
【0011】
ここでは、運転時に側面隙間が外周側から内周側にわたってほぼ同じになるまで側面隙間がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を打ち消すことができるため、ラップ部の内周寄りの部分において側面隙間が小さくなり過ぎることをさらに抑制し、かつ、ラップ部の外周寄りの部分において側面隙間が大きくなり過ぎることをさらに抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を大幅に低減することができる。
【0012】
第3の観点にかかるスクロール圧縮機は、第1又は第2の観点にかかるスクロール圧縮機において、側面隙間の増加が、外周側から内周側に向かうほど増加比率が大きくなるように設定されている。
【0013】
圧縮行程中の温度上昇は、ラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分において急激なもの、すなわち、外周側から内周側に向かうほど上昇比率が大きなものになる傾向が現れる。このため、運転時の熱膨張による側面隙間の縮小は、ラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分において急激なもの、すなわち、外周側から内周側に向かうほど縮小幅が大きなものになる傾向が現れる。
【0014】
そこで、ここでは、運転時の熱膨張による側面隙間の縮小が外周側から内周側に向かうほど縮小幅が大きくなる傾向を考慮して、上記のように、それを打ち消すための側面隙間の増加が、外周側から内周側に向かうほど増加比率が大きくなるように設定されるようにしている。
【0015】
これにより、ここでは、圧縮行程中の温度上昇の傾向に応じて適切に側面隙間を設定することができるようになり、ラップ部の内周寄りの部分において側面隙間が小さくなり過ぎることをさらに抑制し、かつ、ラップ部の外周寄りの部分において側面隙間が大きくなり過ぎることをさらに抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を大幅に低減することができる。
【0016】
第4の観点にかかるスクロール圧縮機は、第1〜第3の観点のいずれかにかかるスクロール圧縮機において、側面隙間の増加が、固定側ラップ部及び/又は可動側ラップ部の歯厚を外周側から内周側に向かって小さくすることによって得られている。
【0017】
ここでは、ラップ部の歯厚を外周側から内周側に向かって小さくすることによって、所望の側面隙間の増加を容易に得ることができる。
【0018】
第5の観点にかかるスクロール圧縮機は、R32を含む冷媒を圧縮するために使用される。
【0019】
上記のような吐出ガス冷媒温度が高くなり易い冷媒を使用すると、スクロールのラップ部の歯厚が熱膨張によって増加し易くなり、しかも、圧縮行程中の温度上昇も大きくなるため、スクロールのラップ部の歯厚の熱膨張による増加がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で大きくなる傾向が顕著になる。
【0020】
これに対して、ここでは、スクロール圧縮機として、第1〜第4の観点のいずれかにかかるスクロール圧縮機を採用しているため、運転時の熱膨張によって側面隙間がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を打ち消すことができるようになり、ラップ部の内周寄りの部分において側面隙間が小さくなり過ぎること、及び、ラップ部の外周寄りの部分において側面隙間が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0021】
第6の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第5の観点のいずれかにかかるスクロール圧縮機を備えている。
【0022】
ここでは、スクロール圧縮機における摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することができるため、空調能力の向上にも寄与している。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、固定側ラップ部の側面と可動側ラップ部の側面との間に外周側から内周側に向かって増加する側面隙間を形成することによって、運転時の熱膨張によって側面隙間がラップ部の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を打ち消すことができるようになり、ラップ部の内周寄りの部分において側面隙間が小さくなり過ぎること、及び、ラップ部の外周寄りの部分において側面隙間が大きくなり過ぎることを抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかるスクロール圧縮機の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかるスクロール圧縮機の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0026】
(1)基本構成及び動作
図1は、本発明の一実施形態にかかるスクロール圧縮機1の概略断面図である。
【0027】
スクロール圧縮機1は、縦長円筒形状の密閉ドーム型のケーシング10を有している。ケーシング10は、ケーシング本体11と上壁部12と底壁部13とによって構成される圧力容器であり、その内部は空洞になっている。ケーシング本体11は、上下方向に延びる軸線を有する円筒状の胴部である。上壁部12は、ケーシング本体11の上端部に気密状に溶接されて一体接合されており、上方に突出した凸面を有する椀状の部分である。底壁部13は、ケーシング本体11の下端部に気密状に溶接されて一体接合されており、下方に突出した凸面を有する椀状の部分である。
【0028】
ケーシング10の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構14と、圧縮機構14の下方に配置されるモータ15と、が収容されている。圧縮機構14とモータ15とは、ケーシング10内を上下方向に延びるように配置される駆動軸16によって連結されている。
【0029】
圧縮機構14は、ハウジング20と、ハウジング20の上方に密着して配置される固定スクロール30と、固定スクロール30に噛み合う可動スクロール40と、を有している。ハウジング20は、その外周面において周方向の全体に亘ってケーシング本体11に圧入固定されている。すなわち、ケーシング本体11とハウジング20とは、全周に亘って気密状に密着されている。そして、ケーシング10内は、圧縮機構14によって圧縮された後の高圧の冷媒で満たされる高圧空間になっており、これにより、スクロール圧縮機1は、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機になっている。ハウジング20には、上面中央に凹設されたハウジング凹部21と、下面中央から下方に延設された軸受部22と、が形成されている。そして、ハウジング20には、軸受部22の下端面とハウジング凹部21の底面とを貫通する軸受孔23が形成されており、軸受孔23に駆動軸16が軸受24を介して回転自在に嵌入されている。
【0030】
ケーシング10の上壁部12には、ケーシング10の外部から内部に低圧の冷媒を流入させて圧縮機構14に導く吸入管17が気密状に嵌入されている。また、ケーシング本体11には、ケーシング10内の高圧の冷媒をケーシング10外に吐出させる吐出管18が気密状に嵌入されている。吸入管17は、ケーシング10の上壁部12を上下方向に貫通するとともに、内端部が圧縮機構14の固定スクロール30に嵌入されている。吐出管18は、ケーシング10のケーシング本体11を横方向に貫通するとともに、内端部がケーシング10内の高圧空間に連通している。
【0031】
ハウジング20の上端面には、固定スクロール30の下端面が密着されている。そして、固定スクロール30は、ボルト等によってハウジング20に固定されている。
【0032】
固定スクロール30は、主として、固定側板部31及び固定側ラップ部32を有している。固定側ラップ部32は、固定側板部31の一面(ここでは、下面)に立設された渦巻き状(インボリュート状)の部分である。可動スクロール40は、主として、可動側板部41及び可動側ラップ部42を有している。可動側ラップ部42は、可動側板部41の一面(ここでは、上面)に立設された固定側ラップ部32に噛み合う渦巻き状(インボリュート状)の部分である。また、可動スクロール40は、オルダムリング49を介してハウジング20に支持されるとともに、駆動軸16の上端が嵌入され、駆動軸16の回転により自転することなくハウジング20内を公転できるようになっている。可動スクロール40の可動側板部41の他面(ここでは、下面)は、可動側板部41とハウジング凹部21との間の空間を満たす高圧の冷媒によって、固定スクロール30に押し付けられている。そして、固定スクロール30の固定側ラップ部32と可動スクロール40の可動側ラップ42とが互いに噛み合うことによって、固定スクロール30と可動スクロール40との間に圧縮室39が形成されている。圧縮室39は、可動スクロール40の旋回に伴い、両ラップ部32、42間の容積が中心に向かって収縮することで冷媒を圧縮するように構成されている。尚、ここでは、固定側ラップ部32及び可動側ラップ部42は、駆動軸16の回転に対して位相が180度ずれて形成される非対称スクロール形状である。しかし、スクロール形状は、非対称スクロール形状に限定されるものではなく、対称スクロール形状であってもよい。
【0033】
固定スクロール30の固定側板部31には、圧縮室39に連通する吐出ポート33と、吐出ポート33に連続する拡大凹部34とが形成されている。吐出ポート33は、圧縮室39で圧縮された後の冷媒を吐出するポートであり、固定側板部31における中央において上下方向に延びるように形成されている。拡大凹部34は、固定側板部31の上面に凹設された水平方向に広がる凹部により構成されている。固定スクロール30の上面には、拡大凹部34を塞ぐようにチャンバーカバー35がボルト等により固定されている。そして、拡大凹部34にチャンバーカバー35が覆い被せられることによって、吐出ポート33の上側に位置しており吐出ポート33を通じて圧縮室39から冷媒が流入するチャンバー室が形成されている。また、固定スクロール30には、固定スクロール30の上面と圧縮室39とを連通させるとともに、吸入管17を嵌入させるための吸入口36が形成されている。また、固定スクロール30及びハウジング20には、チャンバー室の冷媒を高圧空間に流出させる連絡流路(図示せず)が形成されている。
【0034】
モータ15は、ケーシング10内の壁面に固定された環状のステータ51と、ステータ51の内周側に回転自在に構成されたロータ52と、を有している。ステータ51には巻線が装着されている。ロータ52は、上下方向に延びるようにケーシング本体11の軸心に配置された駆動軸16を介して圧縮機構14の可動スクロール40に駆動連結されている。
【0035】
モータ15の下方の下部空間には、その底部に潤滑油が貯留される一方、ポンプ60が配設されている。ポンプ60は、ケーシング本体11に固定される一方で駆動軸16の下端に取り付けられ、貯留された潤滑油を汲み上げるように構成されている。駆動軸16内には給油路61が形成されており、ポンプ60により汲み上げられた潤滑油は、給油路61を通じて各摺動部分へ供給されるようになっている。
【0036】
上記のような基本構成を有するスクロール圧縮機1では、モータ15を通電して駆動すると、ステータ51に対してロータ52が回転し、これにより、駆動軸16が回転する。駆動軸16が回転すると、可動スクロール40が固定スクロール30に対して旋回する運転が行われる。これにより、低圧の冷媒は、吸入管17を通じて、圧縮室39の外周寄りの部分から圧縮室39に吸入される。圧縮室39に吸入された冷媒は、圧縮室39の容積変化に伴って圧縮室39の内周寄りの部分に送られながら圧縮される。そして、圧縮室39で圧縮された高圧の冷媒は、チャンバー室及び連絡流路を通じて、圧縮室39の中央部の吐出ポート33からケーシング10内の高圧空間に送られ、その後、吐出管18を通じて、ケーシング10外に吐出される。
【0037】
このような可動スクロール40を旋回させる運転時においては、スクロール30、40の熱膨張が発生する。例えば、R32のような吐出ガス冷媒温度が高くなり易い冷媒を使用すると、高圧縮比の運転条件において、スクロール30、40のラップ部32、42の歯厚tr、ts(
図2及び
図3参照)が熱膨張によって増加し易くなる。しかも、圧縮行程中の温度上昇も大きくなるため、
図2及び
図3に示すように、スクロール30、40のラップ部32、42の歯厚tr、tsの熱膨張による増加が、ラップ部32、42の外周寄りの部分(すなわち、ラップ部32、42の巻き終わりの部分)よりも内周寄りの部分(すなわち、ラップ部32、42の巻き始めの部分)で大きくなる傾向が顕著になる。このため、可動スクロール40においては、運転時の可動側ラップ部42の熱膨張によって、その内周側側面45が内周側に張り出し、その外周側側面44が外周側に張り出すことになる(
図2の実線及び破線で示された可動側ラップ部42の側面44、45を参照)。また、固定スクロール30においては、運転時の固定側ラップ部32の熱膨張によって、その内周側側面35が内周側に張り出し、その外周側側面34が外周側に張り出すことになる(
図3の実線及び破線で示された固定側ラップ部32の側面34、35を参照)。
【0038】
このような運転時の熱膨張によるスクロール30、40の変形に対して、固定スクロール30の固定側ラップ部32の側面34、45と可動スクロール40の可動側ラップ部42の側面44、45との間の側面隙間δをラップ部32、42の外周寄りの部分を基準に設定することが考えられる。ここで、側面隙間δとは、固定側ラップ部32の内周側側面35と可動側ラップ部42の外周側側面44とが最も接近した状態において両側面35、44間に形成される隙間や、固定側ラップ部32の外周側側面34と可動側ラップ部42の内周側側面45とが最も接近した状態において両側面34、45間に形成される隙間のことである。しかし、このような側面隙間δの設定を行うと、
図4に示すように、ラップ部30、40の外周寄りの部分(
図4において、可動スクロール40の旋回軸線Oから最も遠い部分)では、側面隙間δが適切になるが、内周側に向かうにつれて側面隙間δが小さくなり、ラップ部30、40の内周寄りの部分(
図4において、可動スクロール40の旋回軸線Oに最も近い部分)で側面隙間δが小さ過ぎて摩擦損失が増大するおそれがある。
【0039】
逆に、運転時の熱膨張によるスクロール30、40の変形に対して、側面隙間δをラップ部32、42の内周寄りの部分を基準に設定することも考えられる。しかし、このような側面隙間δの設定を行うと、
図5に示すように、ラップ部32、42の外周寄りの部分(
図5において、可動スクロール40の旋回軸線Oに最も近い部分)では、側面隙間δが適切になるが、外周側に向かうにつれて側面隙間δが大きくなり、ラップ部30、40の外周寄りの部分(
図5において、可動スクロール40の旋回軸線Oから最も遠い部分)で側面隙間δが大き過ぎて冷媒の漏れ損失が増大するおそれがある。
【0040】
このように、可動スクロール40を旋回させる運転時においては、
図2及び
図3に示すようなスクロール30、40の熱膨張によるラップ部30、40間の側面隙間δの変化によって、摩擦損失や冷媒の漏れ損失が増大するおそれがある。尚、
図2〜
図5においては、説明の便宜上、熱膨張による変形量を実際よりもかなり大きめに図示している。
【0041】
これに対して、スクロール圧縮機1では、後述のように、運転時のスクロール30、40の熱膨張を考慮したスクロール構造を採用している。
【0042】
(2)スクロールの詳細構造及びその特徴
次に、運転時の熱膨張を考慮したスクロール30、40の詳細構造について、
図2〜
図10を用いて説明する。ここで、
図6は、本発明にかかるスクロール構造を示す図である。
図7は、本発明にかかる可動スクロール40を示す図である。
図8は、本発明にかかる固定スクロール30を示す図である。
図9は、本発明にかかるスクロール構造における側面隙間δの値を示す図である。
図10は、本発明にかかるスクロール構造を採用した場合において、運転時の熱膨張によって側面隙間δが変化した状態を示す図である。
【0043】
上記のように、運転時のスクロール30、40の熱膨張に対する考慮が不十分である場合には、ラップ部32、42の歯厚の熱膨張による増加がラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で大きくなる(
図2及び
図3の破線で示されたラップ部32、42の側面34、35、44、45を参照)。これにより、固定側ラップ部32の側面34、35と可動側ラップ部42の側面44、45との間の側面隙間δが、ラップ部32、42の外周寄りの部分(すなわち、ラップ部32、42の巻き終わりの部分)よりも内周寄りの部分(すなわち、ラップ部32、42の巻き始めの部分)で小さくなる傾向が現れる(
図4及び
図5を参照)。
【0044】
そこで、ここでは、
図6に示すように、運転時の熱膨張によって側面隙間δがラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を見越して、固定側ラップ部32の側面34、35と可動側ラップ部42の側面44、45との間に、外周側から内周側に向かって増加する側面隙間δが形成されるようにしている。ここで、
図6に示された側面隙間δをラップ部32、42の外周寄りの部分から内周寄りの部分に向かって順にδ1、δ2、δ3、δ4とすると、これらの大きさの関係はδ1<δ2<δ3<δ4になっている。また、
図6は、可動スクロール40を旋回させる運転を行っていない状態、すなわち、運転時のスクロール30、40の熱膨張が発生していない状態における形状を示している。
【0045】
これにより、ここでは、
図10に示すように、運転時の熱膨張によって側面隙間δがラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を打ち消すことができるようになり、ラップ部32、42の内周寄りの部分において側面隙間δが小さくなり過ぎることを抑制し、かつ、ラップ部32、42の外周寄りの部分において側面隙間δが大きくなり過ぎることを抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することができるようになっている。
【0046】
特に、ここでは、
図9及び
図10に示すように、側面隙間δの増加が、可動スクロール40を旋回させる運転時(運転時)に、側面隙間δが外周側から内周側にわたって均等な状態に近づくように設定されている。ここで、「均等な状態」とは、可動スクロール40を旋回させる運転を行っていない時(非運転時)における側面隙間δ(
図9における実線で示された側面隙間δや
図6における側面隙間δ1〜δ4を参照)が、運転時における側面隙間δ(
図9における二点鎖線で示された側面隙間δ5及び
図10における側面隙間δ5を参照)のように、外周側から内周側にわたって一定に近づくことを意味している。
【0047】
これにより、ここでは、運転時に側面隙間δが外周側から内周側にわたってほぼ同じになるまで側面隙間δがラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で小さくなる傾向を打ち消すことができるため、ラップ部32、42の内周寄りの部分において側面隙間δが小さくなり過ぎることをさらに抑制し、かつ、ラップ部32、42の外周寄りの部分において側面隙間δが大きくなり過ぎることをさらに抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を大幅に低減することができるようになっている。
【0048】
また、圧縮行程中の温度上昇は、ラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分において急激なもの、すなわち、外周側から内周側に向かうほど上昇比率が大きなものになる傾向が現れる。このため、運転時の熱膨張による側面隙間δの縮小は、ラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分において急激なもの、すなわち、外周側から内周側に向かうほど縮小幅が大きなものになる傾向が現れる。
【0049】
そこで、ここでは、運転時の熱膨張による側面隙間δの縮小が外周側から内周側に向かうほど縮小幅が大きくなる傾向を考慮して、それを打ち消すための側面隙間δの増加が、外周側から内周側に向かうほど増加比率が大きくなるように設定されるようにしている(
図9の実線で示された側面隙間δ及び
図6における側面隙間δ1〜δ4を参照)。例えば、側面隙間δをラップ部32、42の外周寄りの部分から内周寄りの部分に向かって指数関数的に増加させるようにするのである(
図9の実線で示された側面隙間δを参照)。
【0050】
これにより、ここでは、圧縮行程中の温度上昇の傾向に応じて適切に側面隙間δを設定することができるようになり、ラップ部32、42の内周寄りの部分において側面隙間δが小さくなり過ぎることをさらに抑制し、かつ、ラップ部3、42の外周寄りの部分において側面隙間δが大きくなり過ぎることをさらに抑制して、摩擦損失や冷媒の漏れ損失を大幅に低減することができるようになっている。
【0051】
また、ここでは、上記のような側面隙間δの増加が、
図6〜
図8に示すように、固定側ラップ部32及び可動側ラップ部42の歯厚ts、trを外周側から内周側に向かって小さくすることによって得るようにしている。例えば、
図6に示すように、固定側ラップ部32の歯厚tsをラップ部32の外周寄りの部分から内周寄りの部分に向かって順にts1、ts2、ts3、ts4の順に小さくし、可動側ラップ部42の歯厚trをラップ部42の外周寄りの部分から内周寄りの部分に向かって順にtr1、tr2、tr3、tr4の順に小さくするのである。
【0052】
これにより、ここでは、ラップ部32、42の歯厚ts、trを外周側から内周側に向かって小さくすることによって、所望の側面隙間δの増加を容易に得ることができるようになっている。
【0053】
そして、上記のスクロール圧縮機1は、例えば、
図11に示すような冷媒回路101を有する空気調和装置100に採用されている。ここで、冷媒回路101は、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機1、冷媒を放熱させる放熱器102、冷媒を減圧する膨張機構103、及び、冷媒を蒸発させる蒸発器104が順次接続されることによって構成されている。また、冷媒回路101には、R32を含む冷媒が封入されている。
【0054】
このため、ここでは、吐出ガス冷媒温度が高くなり易いR32を含む冷媒を使用していることに起因して、スクロール30、40のラップ部32、42の歯厚tr、tsが熱膨張によって増加し易くなり、しかも、スクロール30、40のラップ部32、42の歯厚tr、tsの熱膨張による増加がラップ部32、42の外周寄りの部分よりも内周寄りの部分で大きくなる傾向が顕著になっている。
【0055】
これに対して、ここでは、スクロール圧縮機1として、上記のように、運転時のスクロール30、40の熱膨張を考慮したスクロール構造を採用しているため、ラップ部32、42の内周寄りの部分において側面隙間δが小さくなり過ぎること、及び、ラップ部32、42の外周寄りの部分において側面隙間δが大きくなり過ぎることを抑制することができるようになっている。そして、これにより、スクロール圧縮機1における摩擦損失や冷媒の漏れ損失を低減することができるため、空気調和装置100の空調能力の向上にも寄与しているのである。
【0056】
(3)変形例
上記実施形態では、運転時のスクロール30、40の熱膨張を考慮して、側面隙間δの増加を、固定側ラップ部32及び可動側ラップ部42の歯厚ts、trの両方を外周側から内周側に向かって小さくすることによって得るようにしている。
【0057】
しかし、これに限定されるものではなく、固定側ラップ部32の歯厚tsのみを外周側から内周側に向かって小さくすることによって、側面隙間δの増加を得るようにしてもよいし、また、可動側ラップ部42の歯厚trのみを外周側から内周側に向かって小さくすることによって、側面隙間δの増加を得るようにしてもよい。