【文献】
M. Placidi, et al.,Deposited Thin SiO2 for Gate Oxide on n-Type and p-Type GaN,Journal of The Electrochemical Society,2010年 9月16日,Vol. 157, Issue 11,H1008-H1013
【文献】
上野 勝典,高島 信也,松山 秀昭,江戸 雅晴,中川 清和,13p−P17−17 GaN基板上にプラズマCVDで形成したSiO2−MOSキャパシタの特性,第62回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,2015年 2月26日,P.12−386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、第1実施形態の縦型MOSFET100における単位構造断面を示す図である。本例の半導体装置は、窒化ガリウムを用いたプレーナーゲート型の縦型MOSFET100である。なお、以下において、窒化ガリウムをGaNと略記する。本例の縦型MOSFET100は、GaNのn
+型基板10と、GaN半導体層としてのエピタキシャル層20と、ゲート絶縁膜32および層間絶縁膜34と、ゲート電極42と、ソース電極52と、ドレイン電極62とを備える。
【0018】
本例において、nまたはpは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nまたはpの右肩に記載した+または−について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、−はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。また、本例において、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E+16は、1×10
16を意味する。
【0019】
本例のn
+型基板10は、GaNの自立基板である。GaNの自立基板とは、サファイア基板等の上に支持されたGaN層を有する基板ではなく、GaNのみを用いて形成した基板を意味してよい。ただし、GaNの自立基板は、GaNとは異なる元素の不純物を有してもよい。
【0020】
本例のn
+型基板10は、GaNに対するn型不純物であるシリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)の一種類以上を含む。なお、GaNに対するp型不純物は、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)および亜鉛(Zn)である。本例においては、p型不純物としてマグネシウム(Mg)を用いる。
【0021】
エピタキシャル層20は、n
+型基板10上にエピタキシャル形成されたGaN層である。本例においては、n
+型基板10からエピタキシャル層20に向かう方向を「上」または「上方」と称し、当該方向とは反対の方向を「下」または「下方」と称する。また、本例では、領域または構成物において、「上」または「上方」に位置する部分を「頂部」と称する場合がある。また、領域または構成物において、「下」または「下方」に位置する部分を「底部」と称する場合がある。例えば、n
−型ドリフト領域22の頂部は、n
−型ドリフト領域22におけるn
−型ドリフト領域22とゲート絶縁膜32との界面近傍である。また、n
−型ドリフト領域22の底部は、n
−型ドリフト領域22におけるn
+型基板10とn
−型ドリフト領域22との界面近傍である。
【0022】
なお、本例においては、説明の便宜上、n
+型基板10とエピタキシャル層20とを別個の構成物として記載する。しかしながら、他の例においては、n
+型基板10とエピタキシャル層20とを合わせた構成を、GaN基板と称してもよい。当該他の例において、GaN基板の頂部は、本例のおもて面21近傍に対応する。また、GaN基板の底部は、本例のうら面11近傍に対応する。
【0023】
本例のエピタキシャル層20は、おもて面21側にn
−型ドリフト領域22と、n
+型ソース領域24と、p
+型コンタクト領域26と、p型ウェル領域28とを有する。n
−型ドリフト領域22は、n
−型の領域である。p型ウェル領域28は、少なくとも一部がエピタキシャル層20のおもて面21に露出してよい。本例において、おもて面21に露出したp型ウェル領域28上には、ゲート絶縁膜32が設けられる。おもて面21に露出したp型ウェル領域28の近傍は、チャネル形成領域29として機能してよい。
【0024】
p
+型コンタクト領域26は、p型ウェル領域28よりも浅い位置に設けられる。本例において、p型ウェル領域28よりも浅いとは、p
+型コンタクト領域26の底部がp型ウェル領域28の底部よりも上方に位置することを意味する。p
+型コンタクト領域26は、エピタキシャル層20とソース電極52とのコンタクト抵抗を下げる機能を有してよい。p
+型コンタクト領域26とソース電極52との界面付近においては、GaNとソース電極52の金属との合金が形成されてよい。
【0025】
n
+型ソース領域24は、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28よりも浅い位置に設けられる。本例において、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28よりも浅いとは、n
+型ソース領域24の底部が、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28の底部よりも上方に位置することを意味する。また、本例において、n
+型ソース領域24の側部は、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28に接する。n
+型ソース領域24は、チャネル形成時に電子がチャネル形成領域29からソース電極52に至る経路を提供してよい。
【0026】
本例のゲート絶縁膜32は、二酸化シリコン膜である。本例のゲート絶縁膜32は、底部全体がエピタキシャル層20のおもて面21に直接接して設けられる。本例のゲート絶縁膜32は、ゲート電極42とp型ウェル領域28との間に設けられる。本例のゲート絶縁膜32は、TEOSガスと酸素とを反応させて形成した二酸化シリコン膜(SiO
2)である。本例の二酸化シリコン膜は、不純物原子を有する。具体的には、本例の二酸化シリコン膜は、2E+18[cm
−3]未満の濃度の炭素を含む。
【0027】
炭素は、酸素と結びつくことにより、二酸化シリコン膜中において負の固定電荷として機能する場合がある。ゲート絶縁膜32中の固定電荷はゲート閾値電圧(V
th)を設計値から変動させる。それゆえ、ゲート絶縁膜32中の固定電荷はできるだけ抑制することが望ましい。本例では、二酸化シリコン膜中の炭素の濃度を2E+18[cm
−3]未満、さらに望ましくは、1E+18[cm
−3]以下とする。これにより、ゲート閾値電圧(V
th)の設計値からのずれを抑制することができる。また、異なるチャネル形成領域29毎にゲート閾値電圧(V
th)がばらつくことを防ぐことができる。
【0028】
ゲート電極42は、ゲート絶縁膜32上に直接接して設けられる。本例のゲート電極42は、紙面奥または手前方向に延伸して、ゲート端子40に電気的に接続する。ゲート端子40には、チャネル形成領域29においてチャネルを生成するオン信号またはチャネルを消滅させるオフ信号のゲート信号が入力されてよい。
【0029】
層間絶縁膜34は、ゲート電極42およびエピタキシャル層20上に設けられる。層間絶縁膜34は、ゲート電極42とソース電極52とを電気的に絶縁してよい。本例の層間絶縁膜34は、ゲート電極42の頂部と、ゲート電極42およびゲート絶縁膜32の側部とを覆う。本例の層間絶縁膜34の底部は、エピタキシャル層20のおもて面21に直接接する。
【0030】
層間絶縁膜34は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および樹脂膜のいずれかであってよい。本例の層間絶縁膜34は、ゲート絶縁膜32と同じ手法で形成された二酸化シリコン膜である。
【0031】
ソース電極52は、おもて面21および層間絶縁膜34上に設けられる。本例のソース電極52の底部は、n
+型ソース領域24およびp
+型コンタクト領域26に直接接する。本例のソース電極52は、ソース端子50に電気的に接続する。ソース端子50は、接地電位を有してよい。ドレイン電極62は、n
+型基板10のうら面11下に直接接して設けられる。本例のドレイン電極62は、ドレイン端子60に電気的に接続する。ドレイン端子60には、縦型MOSFET100の通電電流に応じた電圧が印加されてよい。
【0032】
図2は、第1実施形態の縦型MOSFET100の製造フロー200を示す図である。本例の製造方法において、段階S10から段階S60はこの順に行われる。
【0033】
段階S10は、n
+型基板10上にエピタキシャル層20を形成する段階である。n
+型基板10のn型不純物濃度は、1E+19[cm
−3]以上1E+20[cm
−3]以下であってよい。エピタキシャル層20のn型不純物濃度は、1E+16[cm
−3]程度であってよい。エピタキシャル層20は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により形成されてよい。例えば、エピタキシャル層20は、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH
3)および適切なキャリアガスを用いて、MOCVDにより形成される。縦型MOSFET100が1200Vの耐圧を有する場合、n
+型基板10の厚みは100[μm]〜300[μm]とし、エピタキシャル層20の厚みは10[μm]としてよい。
【0034】
段階S20は、n
+型ソース領域24、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28を形成する段階である。段階S20では、エピタキシャル層20にp型およびn型不純物をドーピングし、その後、エピタキシャル層20をアニールする。これにより、n
+型ソース領域24、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28を形成する。
【0035】
本例では、p型ウェル領域28を形成するべく、180[keV]で加速したMgイオンを2E+14[cm
−2]の濃度で注入する。また、p
+型コンタクト領域26を形成するべく、45[keV]で加速したMgイオンを2E+15[cm
−2]の濃度で注入する。さらに、n
+型ソース領域24を形成するべく、45[keV]で加速したSiイオンを5E+15[cm
−2]の濃度で注入する。なお、イオン注入に際しては、所定の開口パターンを有するフォトレジストマスクを用いてよい。
【0036】
イオン注入後に、おもて面21にキャップ層を設ける。キャップ層は、二酸化シリコンであってよい。その後、エピタキシャル層20をアニールする。これにより、n型不純物濃度が1E+20[cm
−3]のn
+型ソース領域24、p型不純物濃度が4E+19[cm
−3]のp
+型コンタクト領域26、および、p型不純物濃度が1E+17[cm
−3]のp型ウェル領域28を形成してよい。なお、アニール後においてキャップ層は除去してよい。
【0037】
段階S30は、ゲート絶縁膜32を形成する段階である。上述の様に、本例のゲート絶縁膜32は、二酸化シリコン膜である。二酸化シリコン膜は、成膜後において、ゲート絶縁膜32の形状にパターニングする。
【0038】
本例において、二酸化シリコン膜を形成する段階は、シリコンの原料としてTEOSガスを供給する段階を含む。本例のエピタキシャル層20は、GaN材料からなる。それゆえ、エピタキシャル層20を熱酸化することによりエピタキシャル層20上にゲート絶縁膜32(二酸化シリコン膜)を形成することはできない。
【0039】
本例において、二酸化シリコン膜を形成する段階は、酸素の原料として酸素ガスを供給し、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により二酸化シリコン膜を形成する段階をさらに含む。すなわち、本例においては、シリコンの原料としてTEOSガスを用い、かつ、酸素の原料として酸素(O
2)ガスを用いて、プラズマCVDにより二酸化シリコン膜を形成する。
【0040】
ただし、本例の二酸化シリコン成膜においては、エピタキシャル層20のガリウムが二酸化シリコン膜中に取り込まれる。二酸化シリコン膜中において、ガリウムは正電荷として機能する。本例では、後述のように成膜レートを工夫することにより、二酸化シリコン膜中のガリウムの濃度を減少させることができる。これにより、ゲート閾値電圧(V
th)の設計値からのずれを抑制することができる。なお、本例の二酸化シリコン膜の形成については、
図3から
図5において詳しく述べる。
【0041】
段階S40は、ゲート電極42を形成する段階である。ゲート電極42はポリシリコンであってよい。ゲート絶縁膜32上にポリシリコンを成膜した後に、ゲート電極42の形状にパターニングしてよい。
【0042】
段階S50は、層間絶縁膜34を形成する段階である。本例の層間絶縁膜34は、ゲート絶縁膜32と同じプラズマCVDにより形成された二酸化シリコン膜である。ゲート電極42上に層間絶縁膜34を成膜した後、ゲート電極42の頂部とゲート電極42およびゲート絶縁膜32の側部とに残るように、層間絶縁膜34をパターニングしてよい。
【0043】
段階S60は、ソース電極52およびドレイン電極62を形成する段階である。本例のソース電極52およびドレイン電極62は、Ti(チタン)層およびAl(アルミニウム)層の積層体であってよい。ソース電極52においては、Ti層がおもて面21に直接接して設けられ、Al層が当該Ti層の上に設けられてよい。また、ドレイン電極62においては、Ti層がうら面11に直接接して設けられ、Al層が当該Ti層の下に設けられてよい。これにより、縦型MOSFET100が完成する。
【0044】
図3は、二酸化シリコン膜を形成する製造装置300の概要を示す図である。本例の製造装置300は、反応チャンバ311、温度調節部330、真空装置340、マイクロ波発生器350、導波路352およびプラズマ発生チャンバ354を有する。
【0045】
反応チャンバ311は、内部にAlからなるペデスタル312を有する。ワーク(work)310は、ペデスタル312上において静電吸着を利用して固定されてよい。ワーク310は、n
+型基板10およびエピタキシャル層20を含む。ペデスタル312内部にはヒータ320が設けられる。
【0046】
温度調節部330はヒータ320の温度を100[℃]から450[℃]の範囲で制御することができる。ペデスタル312は熱伝導性が非常に優れているので、ヒータ320の温度はワーク310の温度と見なすことができる。本例の温度調節部330は、ゲート絶縁膜32および層間絶縁膜34としての二酸化シリコン膜を形成する段階において、ワーク310を300[℃]以上400[℃]以下の温度で加熱する。真空装置340は、反応チャンバ311内の気体を排気口314から吸引する。真空装置340は、反応チャンバ311内の気圧を200[Pa]から300[Pa]に制御してよい。
【0047】
マイクロ波発生器350は、導波路352を介してプラズマ発生チャンバ354に接続している。マイクロ波発生器350は、導入口356からプラズマ発生チャンバ354に導入される酸素(O
2)をプラズマ化する。プラズマ化された酸素は反応チャンバ311内部へ進む。プラズマ化された酸素を、反応チャンバ311内においてラジカル酸素として示す。
【0048】
導入口316から反応チャンバ311へは、TEOSガスが導入される。反応チャンバ311内において、TEOSはラジカル酸素と反応する。これにより、エピタキシャル層20のおもて面21において二酸化シリコン膜が堆積する。
【0049】
図4は、製造装置300における酸素プラズマ処理期間と二酸化シリコン膜形成期間とを説明する図である。横軸は時間を示し、縦軸はガスの種類を示す。本例では、時刻T1から時刻T3まで連続的に反応チャンバ311に流量90[sccm]で酸素ガスを供給する。本例において、時刻T1から時刻T2までは酸素プラズマ処理期間である。また、時刻T2から時刻T3まで、流量0.25[sccm]から2[sccm]で反応チャンバ311にTEOSガスを供給する。本例において、時刻T2から時刻T3までは二酸化シリコン膜形成期間である。
【0050】
図5は、TEOSガスの流量[sccm](横軸)に対する二酸化シリコン膜の成膜レート[nm/min](縦軸)を示す図である。四角のプロットで示す上側のグラフは、ワーク310を300[℃]で加熱した場合の結果である。また、ひし形のプロットで示す下側のグラフは、ワーク310を400[℃]で加熱した場合の結果である。
【0051】
TEOSガスの流量と、エピタキシャル層20のおもて面21への単位時間当たりの吸着率とには、正の相関がある。それゆえ、TEOSガスの流量が高いほど、成膜レートは高くなる。また、ワーク310の温度と、エピタキシャル層20のおもて面21への単位時間当たりの吸着率とには、負の相関がある。それゆえ、ワーク310の温度が高いほど、成膜レートは低くなる。
図5から明らかなように、400[℃]の成膜レートが300[℃]の成膜レートよりも低い。
【0052】
Si基板を用いたMOSFETにおいては、プラズマCVDにおいてTEOSガスを用いて層間絶縁膜としての二酸化シリコン膜を作成する場合がある。当該二酸化シリコン膜は、熱酸化膜と比べて低温で形成することができる。また、当該二酸化シリコン膜は、形成成膜面およびこれよりも以下に位置する構造物に対して低ダメージで形成することができる。しかしながら、上述の様にプラズマCVDにおいてTEOSガスを用いて形成する二酸化シリコン膜は、炭素等の固定電荷を取り込む問題がある。それゆえ、プラズマCVDにおいてTEOSガスを用いて形成する二酸化シリコン膜は、層間絶縁膜に用いられるものの、ゲート絶縁膜には用いられなかった。
【0053】
本願の発明者の実験結果によれば、二酸化シリコンの成膜レートが高いほど、TEOSガス中の炭素は二酸化シリコン膜中に取り込まれやすいことが判明した。それゆえ、本例では、成膜レートを考慮してTEOSガスの流量とワーク310の温度とを制御する。これにより、二酸化シリコン中の炭素濃度を制御した。
【0054】
また、本願の発明者の実験結果によれば、二酸化シリコンの成膜レートが高いほど、ガリウムは二酸化シリコン膜中に取り込まれやすいことが判明した。なお、二酸化シリコン膜へのガリウムの混入は、GaN層上に二酸化シリコン膜を形成する場合に固有の課題である。つまり、二酸化シリコン膜へのガリウムの混入は、Si基板のMOSFETおよびSiC基板のMOSFET等では生じない。
【0055】
そこで、本例においては、二酸化シリコン膜を形成する段階において、エピタキシャル層20上に二酸化シリコン膜を5[nm/min]以下の成膜レートで形成する。具体的には、成膜レートを、5[nm/min]、2.5[nm/min]または1[nm/min]としてよい。本願の発明者は、後述するように、ワーク310の温度が300[℃]である場合、TEOSガスの流量は、0.5[sccm]以下とすると、固定電荷が許容可能な量にまで低減することを見出した。具体的には、膜中の電荷量等を評価する指標であるフラットバンド電圧Vfbを、1[V]以下とすることができた。
【0056】
本実験結果によれは、5[nm/min]の成膜レートを実現するべく、ワーク310の温度が400[℃]である場合、TEOSガスの流量は、0.25[sccm]以上1[sccm]以下としてよい。また、ワーク310の温度が300[℃]である場合、TEOSガスの流量は、0.25[sccm]以上0.5[sccm]以下としてよい。本実験結果を考慮すると、ワーク310の温度が300[℃]以上400[℃]以下において、TEOSガスの流量の最大値は0.5[sccm]以上1[sccm]以下としてよいと言え、TEOSガスの流量の最小値は、0.25[sccm]としてよいと言える。
【0057】
図6Aは、フラットバンド電圧を測定した素子400の概要を示す図である。本実験においては、GaNのn
+型基板10上にn
−型GaNのエピタキシャル層20を設けた。なお、エピタキシャル層20に、n
+型ソース領域24、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28は設けていない。さらに、当該エピタキシャル層20上に上述の手法で二酸化シリコン膜36を成膜した。なお、二酸化シリコン膜36の成膜時におけるワーク310の温度は、300[℃]とした。加えて、二酸化シリコン膜36上にAlの金属層44を設けた。
【0058】
金属層44とn
+型基板10との間に可変電圧を印加して、MOSキャパシタとしての素子400の容量‐電圧(C‐V)特性を評価した。素子400は、TEOSガスの流量を2[sccm]、1[sccm]および0.5[sccm]とした3種類の素子400を準備した。最初に、3種類の素子400のC‐V特性を評価した。次に、当該3種類の素子400を、400[℃]でアニールした。なお、アニール時の雰囲気ガスは、10[vol%]の水素(H
2)および90[vol%]の窒素(N
2)を用いた。また、雰囲気圧力は1気圧とした。そして、アニール後の3種類の素子400のC‐V特性を評価した。
【0059】
上述のように、二酸化シリコン膜36中の炭素は負電荷として機能すると考えられている。これに対して、二酸化シリコン膜36中において、炭素と水素とが結合した場合に、炭素は正電荷として機能すると考えられている。また、上術のように二酸化シリコン膜36中のガリウムは負電荷として機能すると考えられている。
【0060】
図6Bは、TEOSガスの流量[sccm](横軸)に対するフラットバンド電圧V
fb[V](縦軸)を示す図である。上述の様に、本実験においては、TEOSガスの流量を2[sccm]、1[sccm]および0.5[sccm]として、それぞれアニール前およびアニール後のV
fbを測定した。ひし形のプロットで示す上側のグラフが、アニール前のV
fbである。また、四角のプロットで示す下側のグラフが、アニール後のV
fbである。
【0061】
V
fbが正である場合、二酸化シリコン膜36において負電荷が正電荷よりも多いことを意味する。つまり、V
fbが正のとき、二酸化シリコン膜36中の主要な固定電荷は負電荷である。また、V
fbが負である場合、二酸化シリコン膜36において正電荷が負電荷よりも多いことを意味する。つまり、V
fbが負のとき、二酸化シリコン膜36中の主要な固定電荷は正電荷である。
【0062】
V
fbの絶対値が小さいほど、二酸化シリコン膜36中には固定電荷が少ない。本例においては、TEOSガスの流量が0.5[sccm]の場合に、他の流量の例と比較してV
fbが最も小さくなった。具体的には、アニール前における0.5[sccm]の条件でV
fbが1[V]となった。また、アニール後における0.5[sccm]の条件でV
fbが−1.2[V]となった。
【0063】
縦型MOSFET100の製造においては水素雰囲気下でのアニールは行われない。それゆえ、縦型MOSFET100におけるゲート絶縁膜32としての二酸化シリコン膜のV
fbの絶対値は1[V]であると見なしてよい。加えて、実験結果から明らかなように、TEOSガスの流量が2[sccm]から0.5[sccm]と減少するにつれてV
fbの絶対値も減少するので、TEOSガスの流量が0.5[sccm]以下においてV
fbの絶対値は1[V]以下であると言うことができる。それゆえ、TEOSガスの流量が0.25[sccm]で形成された二酸化シリコン膜36も、V
fbの絶対値は1[V]以下であると言える。
【0064】
図7は、二酸化シリコン膜36における炭素濃度[cm
−3]を示す図である。横軸は、二酸化シリコン膜36の上面からの深さ[nm]を示す。縦軸は、炭素濃度[cm
−3]を示す。炭素濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により評価した。二酸化シリコン膜36成膜時のワーク310の温度は、300[℃]とした。
図6Aと同様に、TEOSガスの流量を2[sccm]、0.5[sccm]および0.25[sccm]とした3種類の素子400を準備した。2[sccm]および0.5[sccm]のデータを細線で示し、0.25[sccm]のデータを太線で示した。
【0065】
図7の横軸において、二酸化シリコン膜36とエピタキシャル層20との界面の位置は、TEOSガスの流量に応じて異なる。2[sccm]における当該界面の位置は、深さ144[nm]の位置である。0.5[sccm]における当該界面の位置は、深さ111[nm]の位置である。また、0.25[sccm]における当該界面の位置は、深さ94[nm]の位置である。
【0066】
本実験において、炭素の検出限界は5E+17[cm
−3]であった。なお、本実験では検出限界以下の不純物濃度も検出されているが、検出限界以下の不純物濃度は信頼性のある正確な濃度ではない。また、横軸の0[nm]以上30[nm]以下の領域では、表面汚染の影響で正常なデータが得られなかった。それゆえ、当該領域の数値は、考慮に入れないものとする。
【0067】
本実験結果から明らかなように、TEOSガスの流量が多いほど、二酸化シリコン膜36中に炭素が取り込まれやすいと言える。本実験において、0.25[sccm]の場合に、二酸化シリコン膜36における炭素は、2E+18[cm
−3]未満となった。なお、実験では、ノイズおよび異常値も取得した上でデータがプロットされている。それゆえ、ノイズおよび異常値の影響を排除した数値で炭素濃度を評価してもよい。例えば、二酸化シリコン膜36において界面から所定の長さ上の位置までにおける炭素濃度の算術平均または対数平均が、二酸化シリコン膜36の炭素濃度であるとしてよい。例えば、界面から50[nm]上の位置までの算術平均で評価するならば、0.25[sccm]の場合の炭素濃度は、1E+18[cm
−3]以下であると言える。TEOSガスの流量が0.5[sccm]の場合においても、ノイズおよび異常値が取得されていることを考慮すれば、二酸化シリコン膜36における炭素濃度は1E+18[cm
−3]以下であると評価することができる。
【0068】
図8は、二酸化シリコン膜36におけるガリウム濃度[cm
−3]を示す図である。横軸は、二酸化シリコン膜36の上面からの深さ[nm]を示す。縦軸は、ガリウム濃度[cm
−3]を示す。ガリウム濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により評価した。二酸化シリコン膜36成膜時のワーク310の温度は、300[℃]とした。
図6Aと同様に、TEOSガスの流量を2[sccm]、0.5[sccm]および0.25[sccm]とした3種類の素子400を準備した。2[sccm]および0.5[sccm]のデータを細線で示し、0.25[sccm]のデータを太線で示した。
【0069】
本実験において、ガリウムの検出限界は8E+15[cm
−3]であった。なお、
図8においては、二酸化シリコン膜36とエピタキシャル層20との界面を、2[sccm]、0.5[sccm]および0.25[sccm]において一致させている。横軸右方向において、グラフを外挿すると、ガリウム濃度はピークから減衰して一定値に漸近する。本実験においては、ガリウム濃度の当該一定値を横軸左方向に外挿した場合のグラフとの交点が、二酸化シリコン膜36とエピタキシャル層20との界面である。界面は、横軸の128[nm]の位置に相当する。なお、横軸の0[nm]以上60[nm]以下の領域では、表面汚染の影響で正常なデータが得られなかった。それゆえ、当該領域の数値は、考慮に入れないものとする。
【0070】
本実験結果から明らかなように、TEOSガスの流量が多いほど、二酸化シリコン膜36中にガリウムが取り込まれやすいと言える。本実験において、0.25[sccm]の場合に、GaNのエピタキシャル層20のおもて面21から10[nm]以上上方の位置において、二酸化シリコン膜36におけるガリウム濃度が1E+17[cm
−3]以下となった。なお、二酸化シリコン膜36とGaNエピタキシャル層20との界面近傍ではガリウムの濃度が高すぎるので、本実験例では界面から10[nm]離れた深さ118[nm]の位置を選択した。
【0071】
すなわち、0.25[sccm]の場合に、深さ118[nm]の位置から深さ60[nm]の位置までの範囲におけるガリウム濃度が1E+17[cm
−3]以下となった。本実験結果によれば、0.25[sccm]の場合に、当該範囲におけるガリウム濃度は、3E+16[cm
−3]以下であるとも言える。さらに、ノイズおよび異常値を考慮すれば、0.25[sccm]の場合に、当該範囲におけるガリウム濃度は、2E+16[cm
−3]以下でもあるとも言える。
【0072】
図9は、第2実施形態の縦型MOSFET500における単位構造断面を示す図である。本例の半導体装置は、GaNを用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET500である。本例においては、エピタキシャル層20中にトレンチ部70が設けられる。二酸化シリコン膜であるゲート絶縁膜32は、トレンチ部70の底部および側部に直接接して設けられる。ゲート電極42は、ゲート絶縁膜32に接して、トレンチ部70の内部に設けられる。トレンチ部70の側部におけるゲート絶縁膜32は、ゲート電極42の側部とn
+型ソース領域24およびp型ウェル領域28との間に位置する。チャネル形成領域29は、トレンチ部70の側部におけるp型ウェル領域28に位置する。層間絶縁膜34は、トレンチ部70上に設けられる。本例の層間絶縁膜34は、ゲート絶縁膜32およびゲート電極42の上部と、n
+型ソース領域24の上部とに直接接する。係る点が、第1実施形態と異なる。他の点は、第1実施形態と同じであってよい。ゲート絶縁膜32および層間絶縁膜34としての二酸化シリコン膜は、第1実施形態の二酸化シリコン膜であってよい。
【0073】
図10は、第2実施形態の縦型MOSFET500の製造フロー600を示す図である。本例は、段階S10と段階S30との間にトレンチ部70を形成する段階S12を有する。また、本例において、n
+型ソース領域24、p
+型コンタクト領域26およびp型ウェル領域28を形成する段階S42(製造フロー200における段階S20に相当する)は、ゲート電極42を形成する段階S40と層間絶縁膜34を形成する段階S50との間に位置する。係る点が、第1実施形態と異なる。他の点は、第1実施形態と同じであってよい。本例においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0075】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。