(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226035
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20171030BHJP
【FI】
A23L19/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-139663(P2016-139663)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-131212(P2017-131212A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0009875
(32)【優先日】2016年1月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516213024
【氏名又は名称】ナムヘグン ブラックガーリック カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ユン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ボ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,キョン テ
【審査官】
飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−107093(JP,A)
【文献】
特開2012−139218(JP,A)
【文献】
特開2015−104365(JP,A)
【文献】
中国特許第103719764(CN,B)
【文献】
韓国特許第2010−1414807(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温でα化および乾燥を用いた黒ニンニク粉末の製造方法において、黒ニンニクを乾燥器に入れて含水量を37%〜43%にする1次乾燥ステップと、前記1次乾燥された黒ニンニクを粉砕して冷却器に移した後、47℃〜53℃以下に冷却させるステップと、前記冷却された黒ニンニクを77〜83℃の温度で1〜3時間かけて糊化させ、57〜63℃の温度で乾燥させる1次α化ステップと、前記1次α化された黒ニンニクを粉砕して77〜83℃の温度で1〜3時間かけて糊化させ、57〜63℃の温度で乾燥させる2次α化ステップと、前記2次α化された黒ニンニクを粉砕して含水量を1〜5%にする2次乾燥ステップと、前記2次乾燥ステップで得られた粉砕済みの黒ニンニク粉末を品質検査後出庫するステップと、を含むことを特徴とする低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法。
【請求項2】
前記黒ニンニクは、ヒノキ箱にヨモギとともに入れて27〜33日間発酵熟成させて得たものであることを特徴とする請求項1に記載の低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法。
【請求項3】
前記1次乾燥された黒ニンニクは、5〜7mmの大きさに粉砕されることを特徴とする請求項1に記載の低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法。
【請求項4】
前記前記1次α化された黒ニンニクは、2〜4mmの大きさに粉砕されることを特徴とする請求項1に記載の低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法。
【請求項5】
前記前記2次α化された黒ニンニクは、0.5〜1.5mmの大きさに粉砕されることを特徴とする請求項1に記載の低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法に係り、更に詳しくは、ヒノキ箱にヨモギとともに入れて発酵熟成させた黒ニンニクに対して
低温でα化および乾燥を行うことにより、黒ニンニクの総糖量は増加し、ニンニクが持っている接着性及び吸湿性を取り除いてニンニクの強い香りを純化させて食用便宜性を極大化させる
低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクは、昔から食材としてはもとより、薬材としても広く服用されてきており、ニンニクが持っている各種の成分及び効能は、食品、医学などの種々の分野において証明されてきており、抗菌作用をはじめとして抗癌作用、免疫増進作用、抗酸化作用があることが判明された。特に、ニンニクの摂取により心血管系疾患に関わる種々の危険要素、すなわち、高血圧、高コレステロール血症、血小板の凝集度の増加、血液の凝固性の増加などを改善する効果があることが知られており、最近では、心血管系疾患の発生頻度が飛躍的に増加することに伴い、これらの疾患を予防する機能性食品として関心を引き寄せている。
【0003】
ニンニクの有効成分であるアリシンは、ニンニク特有の揮発性の香り成分によりニンニク組織が破壊されるときアリナーゼにより生成され、特有の匂いを有する精油成分である二硫化アリルを生成し、その他に、二硫化物、ジチイン、アホエンなどの揮発性成分と、S−アリルシステイン(SAC)、S−アリルメルカプトシステイン(SAMC)などの水溶性硫黄化合物と、に分解される。ほとんどの生理活性を示す主な成分は、ニンニクが含有している有機硫黄化合物であり、ニンニクの硫黄化合物の含有量は1.1〜3.5%であり、玉ねぎやブロコリーの約4倍に至り、ニンニクの効果への取り組みの約90%が硫黄化合物を中心として行われている。
【0004】
また、アリシンは強力な殺菌抗菌作用をして食重毒菌を殺し、胃潰瘍を引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌まで死滅させる効果があり、コレステロール数値を低め、消化を促し、免疫力を高め、アリシンがビタミンB1と結合すればアリチアミンに変わって疲労回復、精力増強などに役立つ。
【0005】
しかしながら、ニンニクの生理活性物質として知られているこのような揮発性硫黄化合物は、強い刺激性を有する辛い匂い及び味を形成して摂取し難く、これは、ニンニクを食材として用いる上で制限要因として働いている。
【0006】
このような欠点を防ぐために、最近には、ニンニクの独特で且つ刺激的な味及び香りを取り除いた熟成ニンニク(黒ニンニク)を用いた様々な健康補助食品の開発が行われている。
【0007】
伝統的に、ニンニクを摂取し易くする方法として、焼いたり煮込んだりする調理法を活用して刺激的な匂いを取り除く方法が利用されてきており、丸ごとニンニクを高温の貯蔵状態で適切な湿度を維持しながら所定の時間をかけて熟成させる場合、ニンニクの自体成分及び酵素などが渇変反応を引き起こしてニンニクの内部まで濃い黒褐色を帯び、甘味が増えて辛味が減るのに対し、香り及び粘度が高くなって歯応えを変えたものを「黒ニンニク」と称する。黒ニンニクは、ニンニクの糖成分及びアミノ酸が非酵素的な渇変反応を引き起こしてメラノイジンを生成し、揮発性物質はほとんど消失され、総フェノール、フラボノイドが増え、水溶性成分であるS−アリルシステイン(SAC)、S−アリルメルカプトシステイン(SAMC)などが生成されて生ニンニクよりも抗酸化、抗癌、コレステロールの低下、癌細胞の成長の抑制、心臓疾患の予防効果が高いことが知られており、特に、黒ニンニクの代表的な水溶性硫黄化合物であるS−アリルシステイン(SAC)は、抗酸化、癌細胞の増殖の抑制、認知機能の向上、肝保護などの機能性を有することが報告されている。
【0008】
しかしながら、黒ニンニクは、ほとんどの場合、ニンニク固有の形状を維持した丸ごとニンニク又は剥きニンニクのタイプで食べられるように製品化されたものであり、このような黒ニンニクは、長期間の保存及び流通が困難であるだけではなく、ニンニク固有の形状をそのまま有しているが故に心理的な拒否感がするとともに食用便宜性が低く、嗜好性が強い。この理由から、保存及び摂取がより簡便になるように黒ニンニクをエキス化させた製品が上市されているが、これもまた、場所を問わずに手軽に摂取できるものではないため、大衆的な食品として用いられないという欠点があり、市場性が完全に生成されていないのが現状である。これを補うために、粉末状に加工しようとする試みなどが行われている。
【0009】
皮を剥いたニンニクを零下170℃以下の超低温液体窒素に浸漬して急速凍結し、凍結ニンニクを必要に応じて所定の大きさに破砕して真空乾燥させたニンニク粉末を粉砕器で微細に粉砕して製造した凍結乾燥ニンニク粉末であって、生ニンニクと同じ効能を有しながらも長期保存が可能であり、しかも、使用し易いニンニク粉末の製造方法が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0010】
また、凍結乾燥ニンニク粉末の指標物質であるアリンの含有量が高く維持される前処理条件の設定に関するものであり、スチーム処理又はクエン酸の添加により高濃度のアリンの含有量が維持される凍結乾燥ニンニク粉末及びその製造方法が提案されている(例えば、下記の特許文献2参照)。
【0011】
しかしながら、上述したような従来の製造方法が提示するニンニクの凍結乾燥は、澱粉及び炭水化物の割合が高いため水分粘着性の高い黒ニンニクを用いる。このため、組織の内部の水分が外に抜け出ない結果、源泉的に乾燥が行われず、その結果、ニンニクの揮発成分が残留して異臭が残ってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10−1992−0025493号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10−1495569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来の技術が抱えている問題を解消するために案出されたものであり、本発明の目的は、ヒノキ箱にヨモギとともに入れて発酵熟成させた黒ニンニクに対して
低温でα化および乾燥を行うことにより、黒ニンニクの総糖量は増加し、ニンニクが持っている接着性及び吸湿性を取り除いてニンニクの強い香りを純化させて食用便宜性を極大化させる
低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明の一実施形態による
低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法は、黒ニンニクを乾燥器に入れて含水量を37%〜43%にする1次乾燥ステップと、前記1次乾燥された黒ニンニクを粉砕して冷却器に移した後、47℃〜53℃以下に冷却させるステップと、前記冷却された黒ニンニクを77〜83℃の温度で1〜3時間かけて糊化させ、57〜63℃の温度で乾燥させる1次α化ステップと、前記1次α化された黒ニンニクを粉砕して77〜83℃の温度で1〜3時間かけて糊化させ、57〜63℃の温度で乾燥させる2次α化ステップと、前記2次α化された黒ニンニクを粉砕して含水量を1〜5%にする2次乾燥ステップと、前記2次乾燥ステップで得られた粉砕済みの黒ニンニク粉末を品質検査後出庫するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
ここで、前記黒ニンニクは、ヒノキ箱にヨモギとともに入れて27〜33日間発酵熟成させて得たものであることが好ましい。
【0016】
また、前記1次乾燥された黒ニンニクは、5〜7mmの大きさに粉砕されることが好ましい。
【0017】
更に、前記前記1次α化された黒ニンニクは、2〜4mmの大きさに粉砕されることが好ましい。
【0018】
更にまた、前記前記2次α化された黒ニンニクは、0.5〜1.5mmの大きさに粉砕されることが好ましい。
【0019】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明の一実施形態による健康機能性食品用黒ニンニク粉末錠剤及びカプセルは、上記の方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明による
低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法によれば、基本的な方法において用いられる凍結乾燥方法を利用することなく、
低温でα化および乾燥方法を用いてより手軽に黒ニンニク粉末を製造することができ、黒ニンニク特有の甘味及び有益な効能を向上させて機能性食品として産業上非常に有用に用いられるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による、本発明の
低温でα化および乾燥を用いた健康機能性食品用黒ニンニク粉末の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。しかしながら、下記の実施例は本発明の理解への一助になるために例示したものに過ぎず、種々の他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。
【0023】
<実施例1:黒ニンニク粉末の製造>
本発明の黒ニンニク粉末は、次の方法を用いて製造した。
【0024】
まず、免疫及び殺菌効果に優れているヨモギをヒノキ箱に一緒に入れて27〜33余日間発酵熟成させて得た1等級の黒ニンニクを乾燥器に入れて含水量が37%〜43%になるように乾燥させた。
【0025】
ここで、前記ヨモギはヒノキ箱に入れることにより、ヨモギの香りをニンニクに染み込ませてニンニクの匂いを中和させ、ニンニクの表面にあるバクテリア、雑菌を殺して殺菌、抗菌作用及び脱臭作用をしてニンニク固有の匂いを取り除く。
【0026】
前記1次乾燥された黒ニンニクを5〜7mmの大きさに粉砕して冷却器に移し、47℃〜53℃以下に冷却させた後、1次α化低温乾燥過程を行う。
【0027】
前記冷却された黒ニンニクは、77〜83℃の温度で1〜3時間かけて糊化させ、57〜63℃の温度で乾燥させることが好ましい。
【0028】
前記1次α化低温乾燥過程を経た黒ニンニクを2〜4mmの大きさに粉砕して77〜83℃の温度で1〜3時間かけて糊化させ、57〜63℃の温度で乾燥させる2次α化低温乾燥過程を行う。
【0029】
前記2次α化低温乾燥を経た黒ニンニクを0.5〜1.5mmの大きさに粉砕して含水量が1〜5%になるように2次乾燥させることが好ましい。
【0030】
前記2次乾燥ステップにおいて得られた粉砕済みの黒ニンニク粉末を品質検査した後に出庫する。
【0031】
<実施例2:黒ニンニク粉末を用いた錠剤及びカプセルの製造>
前記実施例1の方法と同様にして、黒ニンニク粉末を用いて錠剤及びカプセルを製造する。
【0032】
<比較例:黒ニンニク粉末の製造>
黒ニンニクを零下170℃以下の液体窒素に1分間浸漬して得たフレーク状の凍結されたニンニクに僅かな衝撃を加えて破砕した後、凍結乾燥器に投入して真空乾燥させて乾燥ニンニクを得る。このようにして得た乾燥ニンニクを粉砕して凍結乾燥黒ニンニク粉末を得る。
【0033】
<実験例:官能検査>
本発明の
低温でα化および乾燥を用いた黒ニンニク粉末である実施例及び凍結乾燥を用いた黒ニンニク粉末である比較例の粉末の粒子、香り、味及び総合的な嗜好度を官能検査結果により比較した。前記官能検査は、食べ物に対する官能検査に馴染むように訓練された10名の官能検査員及び喫煙をしたり風邪にかかったりしなくて嗅覚に問題のないと認められる一般成人男女各5名をはじめとする合計で20名の検査団が各項目に対して5段階評点法(5点:非常に良好、4点:良好である:適当、2点:普通、1点:悪い)で評点し、前記評点結果を平均して官能検査結果を得る方法を用いて行い、その結果を下記表1に示す。検査結果に対する統計的な有意性の検定は、分散分析法を用いて行った。
【0035】
上記表1に示すように、実験例が全ての官能において最も優れていることが確認された。より具体的に、比較例である凍結乾燥を用いた黒ニンニク粉末の場合、ニンニクの辛い香り及び味があまり感じられず、粒子も比較的に柔らかいと評価された。これに対し、本発明の
低温でα化および乾燥を用いた黒ニンニク粉末の場合、黒ニンニク特有の香ばしい味及び香りが感じられながらも、黒ニンニク特有の甘味が感じられ、黒ニンニクが有する負担のある辛い味や苦い味があまり感じられないことから、味及び香りによる官能に非常に優れていることが確認された。