(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産ラインにおいて作業者がロボットなどの機械と協調して作業をする場合には、作業者が過負荷とならない範囲で生産性を維持することが望まれている。しかし、特許文献1では、ロボットを制御するために、作業者の作業動作のデータと比較される対象は、熟練工の作業動作から得られた標準データである。そのため、生産ラインにおける作業者は、熟練工の作業動作にあわせるように動作が仕向けられることになり、作業者によっては身体的に負荷がかかる場合がある。その結果、作業者は疲れやすくなり、生産性が低下するなどの課題がある。
【0006】
そのため、作業者の負荷に応じて生産ラインの駆動部を制御することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示のある局面にかかる、生産ラインに備えられる駆動部を制御する制御装置は、作業者の作業時の姿勢の経時変化を示す身体情報を取得する取得部と、作業者が安定姿勢で作業する場合の身体情報を記憶するための記憶部と、取得される身体情報が示す経時変化の大きさと記憶部の身体情報が示す経時変化の大きさとの差を検出する検出部と、検出される差から駆動部の制御量を変更するか否かを決定する決定部と、を備える。
【0008】
好ましくは、身体情報は、作業者の作業時の動作量の経時的な変化を示す情報を含む。
好ましくは、決定部は、差から作業者の負荷の程度を判定する判定部を備え、判定部の判定結果から制御量を変更するか否かを決定する。
【0009】
好ましくは、検出部は、取得部により身体情報が取得されると、当該取得された身体情報の特徴量と、記憶部に記憶された身体情報の特徴量との差を検出する。
【0010】
好ましくは、身体情報は、さらに、少なくとも体温を含む作業者の生体情報を含む。
好ましくは、作業者が安定姿勢で作業する場合の身体情報を記憶部に蓄積する蓄積部を、さらに備える。
【0011】
この開示の他の局面にかかるシステムは、生産ラインに備えられる駆動部と、生産ラインに備えられる作業者の作業時の姿勢を検出するセンサと、駆動部を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、センサから、姿勢の経時変化を示す身体情報を取得する取得部と、作業者が安定姿勢で作業する場合の身体情報を記憶するための記憶部と、取得される身体情報が示す経時変化の大きさと記憶部の身体情報が示す経時変化の大きさとの差を検出する検出部と、検出される差から駆動部の制御量を変更するか否かを決定する決定部と、を備える。
【0012】
この開示のさらに他の局面にかかる方法は、生産ラインに備えられる駆動部を制御する方法であって、方法は、作業者の作業時の姿勢の経時変化を示す身体情報を取得するステップと、取得される身体情報が示す経時変化の大きさと、作業者が安定姿勢で作業する場合の当該作業者の身体情報が示す姿勢の経時変化の大きさとの差を検出するステップと、検出される差から駆動部の制御量を変更するか否かを決定するステップと、を備える。
【0013】
この開示のさらに他の局面にかかるプログラムは、生産ラインに備えられる駆動部を制御する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータは、作業者が安定姿勢で作業する場合の作業者の姿勢の経時変化を示す身体情報を記憶するための記憶部を備え、方法は、作業者の作業時の姿勢の経時変化を示す身体情報を取得するステップと、取得される身体情報が示す経時変化の大きさと記憶部の身体情報が示す経時変化の大きさとの差を検出するステップと、検出される差から駆動部の制御量を変更するか否かを決定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
この開示によれば、作業者が安定姿勢で作業する場合の身体情報が記憶部に記憶される。生産ラインでの作業時に取得される作業者の身体情報が示す経時変化の大きさと、記憶部の安定姿勢で作業する場合の身体情報が示す経時変化の大きさとの差から、生産ラインに備えられる駆動部の制御量を変更するか否かを決定する。この差は作業者の作業負荷により変動し得る。したがって、作業者の負荷に応じて生産ラインの駆動部を制御することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[システムの構成]
図1は、実施の形態にかかるシステム1の全体構成を概略的に示す図である。工場などの生産ラインには、作業者の作業に用いられる1または複数のユニット200、PLC(Programmable Logic Controller)などの制御コンピュータ100、および管理者が操作する管理コンピュータ300を備える。これらの各部は、有線または無線で相互に通信する。
【0018】
ユニット200は、作業者10と協調作業する産業用ロボット60(以下、単にロボット60という)、および人体の動作量を非接触形式で検出するセンサ50を備える。
図1では、作業者10は、例えばロボット60と協調してワークWを搬送する作業を実施する。
【0019】
センサ50は、ハードウェア回路としての距離画像センサと、距離画像センサの出力かから人体の姿勢を推定するソフトウェアプログラムを実行するマイクロコンピュータとを備える。距離画像センサは対象(人体)に赤外線を照射して得られた赤外線パターンを解析することにより距離画像を取得する。マイクロコンピュータは、距離画像と予め登録されているパターン画像とを照合し、照合の結果に基づき、距離画像において人体の姿勢、すなわち各部(頭、肩、腕、腰、足など)の位置(座標値)を検出する。そして、時系列に取得される距離画像から、人体の姿勢(各部の位置)の時系列的な変化(経時的な変化)が検出される。このように、センサ50は、赤外線の照射範囲に位置する作業者の作業時の姿勢の経時的な変化を示す身体情報を、制御コンピュータ100に送信する。
【0020】
なお、身体の動作量を測定する方法は、センサ50のような距離画像から測定する方法に限定されない、例えば、作業者の身体に装着された光学マーカの位置情報により動きを検出する方法、または身体に装着された磁気センサの動きを検出する方法であってもよい。また、
図1では、センサ50はユニット200毎に備えたが、1台のセンサ50を複数のユニット200で共用してもよい。
【0021】
(制御コンピュータ100の構成)
図2は、
図1の制御コンピュータ100のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図2を参照して、制御コンピュータ100は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)110と、記憶部としてのメモリ112およびハードディスク114と、時間を計時し計時データをCPU110に出力するタイマ113と、入力インタフェイス118と、ディスプレイ122を制御する表示コントローラ120と、通信インタフェイス124と、データリーダ/ライタ126とを含む。これらの各部は、バス128を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0022】
CPU110は、ハードディスク114に格納されたプログラム(コード)を実行することで、各種の演算を実施する。メモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置であり、ハードディスク114から読み出されたプログラム・データに加えて、センサ50から受信する身体情報、およびワークデータなどが格納される。
【0023】
入力インタフェイス118は、CPU110とキーボード121、マウス(図示せず)、タッチパネル(図示せず)などの入力装置との間のデータ伝送を仲介する。すなわち、入力インタフェイス118は、ユーザが入力装置を操作することで与えられる操作命令を受付ける。
【0024】
通信インタフェイス124は、ユニット200(センサ50,ロボット60)と管理コンピュータ300と間のデータ伝送を仲介する。データリーダ/ライタ126は、CPU110と記録媒体であるメモリカード123との間のデータ伝送を仲介する。
【0025】
(ロボット60の構成)
図3は、
図1のロボット60の構成を概略的に示す図である。ロボット60は、ワークWを把持して搬送するために自在に回動するアーム63と、ワークWを搬送するようにアーム63を回動させるための駆動部62、および駆動部62を制御するコントローラ61を備える。なお、作業内容はワークWの搬送に限定されず、ワークWが部品であった場合にはワークWの本体への取付け作業などであってもよい。
【0026】
駆動部62は、たとえばサーボモータである。ロボット60のアーム63は、駆動部62(サーボモータの回転軸)に接続される。図示されないエンコーダが、駆動部62に取付けられる。エンコーダは、駆動部62の動作状態を示す物理量を検出し、検出された物理量を示すフィードバック信号を生成するとともに、そのフィードバック信号をサーボドライバに相当するコントローラ61に出力する。フィードバック信号は、たとえば駆動部62のモータの回転軸の回転位置(角度)についての位置情報、その回転軸の回転速度の情報などを含む。すなわち、本実施の形態においては、駆動部62(サーボモータ)の動作状態を示す物理量としてモータの回転軸の回転位置および回転速度が検出される。なお、回転位置および回転速度に加えてもしくは代わりに、加速度、変化量(移動量)、変化方向(移動方向)などを検出するようにしてもよい。
【0027】
コントローラ61は、制御コンピュータ100から指令信号を受けるとともに、エンコーダから出力されたフィードバック信号を受ける。コントローラ61は、制御コンピュータ100からの指令信号およびエンコーダからのフィードバック信号に基づいて、駆動部62を駆動する。
【0028】
コントローラ61は、制御コンピュータ100からの指令信号に基づいて、駆動部62の動作に関する指令値を設定する。さらにコントローラ61は、駆動部62の動作が指令値に追従するように駆動部62を駆動する。具体的には、コントローラ61は、その指令値に従って、駆動部62(サーボモータ)の駆動電流を制御する。
【0029】
このように、ロボット60は、アーム63に把持したワークWを作業者10と協調して搬送する場合に、アーム63の制御量(アームを回動させるための回転角度、回転方向、回転速度など)は、コントローラ61および駆動部62を介して、制御コンピュータ100からの指令信号により遠隔から可変に制御される。
【0030】
(身体情報の例示)
図4と
図5は、実施の形態にかかる身体情報を例示する図である。実施の形態では、センサ50は、上記に述べたように、作業者10の身体の動作量(姿勢)の経時的な変化を含む身体情報を検出する。
図4は、たとえば体調が良好な場合など作業者10の身体が安定した状態であるときのワークWの搬送作業時(以下、安定作業時という)に検出される身体情報の一例を示すグラフで示す。また、
図5は、同一の作業者10について身体が不安定状態であるとき(例えば、疲れているまたは体調不良であるときなど)のワークWの搬送作業時に検出される身体情報の一例を示すグラフで示す。これらグラフは、発明者らの実験による取得されたデータである。
【0031】
図4と
図5のグラフでは、縦軸に作業者10の腰の高さがとられて、横軸に時間がとられている。体調が良好で作業を実施するケースでは、作業者10は安定した姿勢でワークWの搬送作業を実施することができる。したがって、
図4の安定作業時には、作業者10の腰の高さ(位置)は時間が経過しても大きく変化することなく一定の範囲に収束する。これに対して、体調不良で作業を実施するケースでは、同じワークWの搬送作業であっても過負荷となり作業者10は安定姿勢を維持することができない。この場合は、
図5に示されるように、時間の経過にともない腰の高さ(位置)は大きく変化して一定の範囲に収束することはない。したがって、作業時に取得される身体情報が示す姿勢の経時変化の大きさから、作業者10に過度の負荷がかかっている状態であるか否か(負荷の程度(大きさ))を推定することが可能となる。
【0032】
なお、実施の形態では、作業者10の姿勢の変化を腰の高さ(位置)の変化として説明するが、姿勢の変化は腰の位置に限定されない。例えば、姿勢の変化は、身体の異なる部分の相対的な位置関係(たとえば、頭と腕の距離により示される位置関係)の変化であってもよい。
【0033】
(制御コンピュータ100の機能構成)
図6は、実施の形態にかかる制御コンピュータ100の機能の構成を模式的に示す図である。
図6に示される機能は、作業者の身体情報から駆動部62の制御量を決定する機能を含む。
図6を参照して、制御コンピュータ100は、学習部101、センサ50から身体情報を取得する取得部103、差検出部104、および制御量決定部105を備える。また、制御コンピュータ100は、記憶部(ハードディスク114など)に対応する情報保持メモリ102を備える。
【0034】
取得部103は、通信インタフェイス124を制御して、センサ50から身体情報を取得(受信)し、取得された身体情報107を各部に出力する。
【0035】
学習部101は、制御コンピュータ100の動作モードが「学習モード」であるとき、取得部103から身体情報107を入力し、入力した身体情報107を情報保持メモリ102に格納する。学習部101は、「学習モード」において、取得部103から身体情報107を入力する毎に、入力した身体情報107を情報保持メモリ102に蓄積する。これにより、「学習モード」において、1または複数の身体情報107が情報保持メモリ102に蓄積(格納)される。学習部101は、身体情報107を情報保持メモリ102に蓄積する「蓄積部」の一実施例である。
【0036】
差検出部104は、制御コンピュータ100の動作モードが「運用モード」であるとき、取得部103から身体情報107を入力すると、入力した身体情報107が示す姿勢の経時変化の大きさと、情報保持メモリ102から読出した学習時の身体情報107が示す当該経時変化の大きさとの差を算出(検出)する。
【0037】
制御量決定部105は、負荷判定部108を有する。「運用モード」において、負荷判定部108は、差検出部104により検出される差と閾値THを比較することにより作業者10の負荷の程度として過負荷の状態にあるか否かを判定する。作業者10の体調が良くない場合には通常の作業であっても過負荷の状態となり得て、また、体調がよくても長時間継続作業による疲労時に過負荷の状態となり得る。負荷判定部108は、上記の差と閾値THを比較することにより過負荷の状態であるか否かを判定する。実施の形態では、負荷判定部108の判定は、駆動部62の制御量を変更するか否かの判定に対応する。過負荷の状態であるときは、制御量決定部105は、当該差から変更後の制御量を決定する。制御量決定部105は、制御量を示す指令信号106を生成し、通信インタフェイス124を介してロボット60のコントローラ61に送信する。
【0038】
なお、上記の差は、身体情報107が示す姿勢の変化の大きさの特徴量から検出するとしてもよい。具体的には、CPU110は、姿勢の変化の大きさの代表値を特徴量として検出する。代表値は、例えば、予め定められた時間に検出された腰の高さの平均値、中央値、積分値、分散値、最頻値などである。特徴量を用いる場合には、「運用モード」において、差検出部104は、情報保持メモリ102の複数の身体情報107が示す特徴量と、取得部103を介して予め定められた期間において入力する複数の身体情報107の特徴量(代表値)との差を算出するとしてもよい。また、情報保持メモリ102には、当該情複数の身体情報107と対応の特徴量とが格納されるか、または、特徴量のみが格納される。特徴量のみが格納される場合には、情報保持メモリ102に必要な容量を少なくすることができる。
【0039】
また、「学習モード」は、定期的に、または作業者10が変わったときに、またはワークWの種類が変更したときに実施されてもよい。これにより、情報保持メモリ102には、定期的に、または作業者10毎に、またはワークWの種類毎に身体情報107(または特徴量)を格納することができる。
【0040】
(処理フローチャート)
上記の「学習モード」および「運用モード」の処理を説明する。なお、
図1のユニット200に対して以下に説明する同様の処理が実施される。
【0041】
図7は、実施の形態にかかる「学習モード」の処理フローチャートである。
図8は、実施の形態にかかる「運用モード」の処理フローチャートである。これらフローチャートの処理はプログラムとして制御コンピュータ100の記憶部(メモリ112、ハードディスク114、メモリカード123など)に格納されている。CPU110は、記憶部からプログラムを読出し、実行する。なお、ここでは、生産ラインにおいては、作業者10はロボット60とワークWの搬送作業と終了すると、次のワークWの搬送作業を同様に繰返す。生産ラインには、各回の搬送作業を終了したことを検出する図示しないセンサを備える。例えば、ワークWが生産ラインの所定位置にまで移動したことを検出する近接スイッチなどである。制御コンピュータ100は、当該センサからの検出信号を、各搬送作業の繰り返しタイミングを指示するタイミング信号として処理する。
【0042】
なお、「学習モード」を実施する制御コンピュータ100と「運用モード」を実施する制御コンピュータ100とは同じであってもよく、または異なっていてもよい。異なっている場合には、「運用モード」の制御コンピュータ100は、情報保持メモリ102に格納されるべき情報を、他の制御コンピュータ100から通信インタフェイス124を介して受信する、またはメモリカード123から読取ることで取得することができる。
【0043】
〈「学習モード」の処理〉
図7を参照して「学習モード」において、まず、取得部103は、安定作業時の作業者10の身体情報107をセンサ50から取得し(ステップS3)、情報保持メモリ102に格納する(ステップS5)。
【0044】
CPU110は、上記のタイミング信号を入力するか否かを判定する(ステップS7)。タイミング信号を入力しないと判定する間は(ステップS7でNO)、ステップS3に戻り、以降の処理を実行する。
【0045】
一方、CPU110は、上記のタイミング信号を入力したと判定すると(ステップS7でYES)、CPU110は、情報保持メモリ102に格納されている1または複数の身体情報107から上記の特徴量を取得(算出)して、取得した特徴量を情報保持メモリ102に格納する(ステップS9)。特徴量として、たとえば平均値が算出される。このとき、前回の取得(算出)時に格納されていた特徴量は、上書きにより更新されるとしてもよい。
【0046】
CPU110は、ステップS9で取得された特徴量が安定したか否かを判定する(ステップS11)。たとえば、特徴量が閾値に収束したとき、安定したと判定する。
【0047】
CPU110は、安定した特徴量が得られていないと判定すると(ステップS11でNO)、再度、「学習モード」の処理を最初から繰返すが、安定した特徴量が得られたと判定すると(ステップS11でYES)、「学習モード」の処理を終了する。
【0048】
上記の学習モードにおいては、繰返される作業毎に、特徴量を取得して情報保持メモリ102に格納することができる。
【0049】
〈「運用モード」の処理〉
図8を参照して「運用モード」では、まず、取得部103は、作業者10の身体情報107をセンサ50から取得する(ステップS15)。CPU110は、上記のタイミング信号を入力するか否かを判定する(ステップS17)。タイミング信号を入力しないと判定する間は(ステップS17でNO)、ステップS15に戻り、以降の処理を実行する。
【0050】
一方、CPU110は、上記のタイミング信号を入力したと判定すると(ステップS17でYES)、差検出部104は、情報保持メモリ102に格納されている1または複数の身体情報107が示す姿勢の変化の大きさと、ステップS15で取得された身体情報107が示す姿勢の変化の大きさとの差を検出(算出)する(ステップS19)。この処理は、情報保持メモリ102に格納されている特徴量(たとえば、平均値)と、ステップS15で取得された身体情報107の特徴量(たとえば、姿勢の変化の大きさの平均値)との差を検出(算出)するとしてもよい。
【0051】
負荷判定部108は、ステップS19で検出された差と閾値THとを比較して、差が閾値THよりも大きいか否かを判定する(ステップS21)。閾値THは、作業者10に過度の負荷がかかっているか否かを判定するための値であって、作業者10毎に実験などにより取得される。負荷判定部108は、差が閾値TH以下であるとき当該差は過負荷ではない通常の負荷に対応すると判定し、差が閾値THよりも大きいとき当該差は過負荷に対応すると判定する。
【0052】
負荷判定部108は、差が閾値TH以下であると判定したとき(ステップS21でNO)、制御量決定部105は、判定の結果に従い、駆動部62の制御量をそのまま維持(変更しない)する指令信号106を生成して、通信インタフェイス124を介して出力する(ステップS27)。負荷判定部108は、差が閾値THよりも大きいと判定したとき(ステップS21でYES)、制御量決定部105は、判定の結果に従い制御量を変更する処理を実施し(ステップS25)、制御量を示す指令信号106を生成して、通信インタフェイス124を介して出力する(ステップS27)。具体的には、制御量決定部105は、差を小さくする方向に駆動部62を制御するための制御量を、予め定められた演算などに従い算出する。なお、制御量の取得は、算出する方法に限定されない。たとえば、差と制御量の組が複数登録されたテーブルを記憶しておき、ステップS19で検出された差に基づきテーブルを検索し、テーブルから対応する制御量を読出す方法であってもよい。
【0053】
CPU110は、生産ラインからの信号に基づき、繰返し作業を終了するか否かを判定する(ステップS29)。CPU110は、繰返し作業を終了しないと判定したとき(ステップS29でNO)、ステップS15の処理に戻り、以降の処理を実行する。
【0054】
上記の運用モードにおいては、繰返される作業毎に、制御量を変更するか否かを判定し、変更する場合には、駆動部62の制御量を上記の差に基づき変更することができる。
【0055】
(身体情報の変形例)
上記に実施の形態では、制御コンピュータ100は、制御量を変更するか否かを判定し、および制御量を決定するために、姿勢の経時的な変化を示す身体情報を用いたが、これに限定されず、他の種類の身体情報を組合わせてもよい。たとえば、ウェアラブルセンサで作業者10の目の動きを検出して、検出された目の動き量(移動方向、移動距離)の経時的な変化、または、センサで測定される作業者10の生体情報(たとえば、体温等)の経時的な変化などを取得部103により取得して、上記の姿勢の経時的な変化と組合わせて処理してもよい。なお、生体情報は、生体が発する情報であれば、体温に限定されず、発汗量、心拍数、血圧などであってもよい。
【0056】
(負荷判定部108の変形例)
上記に実施の形態では、負荷判定部108は1種類の閾値THを用いて判定したが、判定に用いる閾値は複数種類であってもよい。たとえば、閾値として閾値TH1と閾値TH2(ただし、TH1>TH2)の2種類とした場合に、負荷判定部108は(差>閾値TH1)であると判定したときは、制御量決定部105は差が速く小さくなるような制御量を決定する。同様に(閾値TH1>差>閾値TH2)であると判定したときは、差が小さくなる速度を遅くするような制御量を決定する。なお、(差<閾値TH2)であると判定されたときは、制御量は維持される(制御量は変更されない)。
【0057】
(「学習モード」の変形例)
上記の実施の形態の「学習モード」では、安定作業時の身体情報107を取得するために、「学習モード」を、作業者10の体調が良好であるときに実施するとしたが、実施の時期はこれに限定されない。たとえば、比較的に長期(たとえば3日間以上)にわたって「学習モード」を繰返し実施する。この場合は、作業時の身体情報107が示す腰の高さ(位置)が一定の範囲に収束するパターンを複数検出することができる。このうち、最も頻出したパターンを、安定作業時の身体情報107と決定してもよい。
【0058】
(管理コンピュータ300の処理)
各実施の形態では、制御量の変更(ステップS25)が頻繁に実施された場合(予め定められた時間内にN回実施されたとき)は、制御コンピュータ100は、通知を管理コンピュータ300に送信するとしてもよい。この場合には、管理者は通知に基づき、生産ラインまたは作業者10の状況を確認することができる。
【0059】
また、制御コンピュータ100は、通知とともに作業者10の身体情報107または体温などを管理コンピュータ300に送信するとしてもよい。したがって、制御量の変更が頻繁であった場合には、管理者は作業者10の身体情報107または体温から、その原因を推定すること可能となる。
【0060】
(制御量の他の変更方法)
上記の実施の形態では、上記の差に基づき制御量を変更したが、当該差と生産性とに基づき制御量を変更してもよい。ここでは、生産性は、単位時間当たりのワークWの搬送数量を用いるが、これに限定されない。この生産性のための閾値は、作業者10毎に実験などにより決定される。具体的には、当該差は閾値TH以下であるが、生産性を示す上記の搬送数量が閾値以下であるときは、作業者10は通常の負荷の状態において作業に余裕がある(たとえば、ロボット60の搬送にかかる動作速度が遅すぎるなど)ことが推定される。この場合には、差が閾値TH以下であるとしても、駆動部62の動作が速くなるように制御量を変更するとしてもよい。
【0061】
[実施の形態2]
実施の形態2では、上述の「学習モード」および「運用モード」の少なくとも一方を制御コンピュータ100のCPU110に実行させるためのプログラムプログラムが提供される。このようなプログラムは、制御コンピュータ100に付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカード123などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、制御コンピュータ100に内蔵するハードディスク114などの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、図示しないネットワークから通信インタフェイス124を介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0062】
なお、プログラムは、制御コンピュータ100のOS(オペレーティングシステム)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、実施の形態2のプログラムに含まれ得る。
【0063】
また、実施の形態2にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態2にかかるプログラムに含まれ得る。
【0064】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0065】
[実施の形態の構成]
図1では、生産ラインに備えられる駆動部62を制御する制御コンピュータ100は、作業者10の作業時の姿勢の経時変化を示す身体情報107を取得する取得部103と、作業者10が安定姿勢で作業する場合の身体情報107を記憶するための情報保持メモリ102と、取得される身体情報107が示す経時変化の大きさと情報保持メモリ102に記憶された身体情報107が示す経時変化の大きさとの差を検出する差検出部104と、検出される差から駆動部62の制御量を変更するか否かを決定する制御量決定部105と、を備える。
【0066】
上記の安定姿勢で作業する場合の身体情報107からの上記の差は作業者10の作業負荷により変動し得る。したがって、作業者の負荷に応じて生産ラインの駆動部を制御することが可能となる。
【0067】
好ましくは、身体情報107は、作業者10の作業時の動作量の経時的な変化を示す情報(
図4、
図5)を含む。したがって、動作量の経時的な変化を身体情報107として用いることができる。
【0068】
好ましくは、制御量決定部105は、差から作業者10の負荷の程度を判定する負荷判定部108を備え、判定結果から制御量を変更するか否かを決定する。したがって、負荷の程度を上記の差から判定し得る。
【0069】
好ましくは、差検出部104は、取得部103により取得された身体情報107の特徴量(平均など)と、情報保持メモリ102に記憶された身体情報107の特徴量との差を検出する。したがって、上記の差を特徴量からも得ることができる。
【0070】
好ましくは、身体情報107は、さらに、少なくとも体温を含む作業者10の生体情報(体温など)を含む。したがって、作業者10の生体情報も用いて制御量を変更するか否かを決定することができる。
【0071】
好ましくは、作業者10が安定姿勢で作業する場合の身体情報107を情報保持メモリ102に蓄積する学習部101を、さらに備える。したがって、同一の制御装置制御量に、制御量を変更するか否かを決定する機能と、情報保持メモリ102に身体情報107を蓄積する機能とを備えることができる。
【0072】
[実施の形態の効果]
上記の実施の形態によれば、差と閾値THとを比較することで、作業者10が過負荷であるか(負荷の程度(大きさ))に基づいて制御量を変更するか否かを決定する。制御量を変更する場合には、差に基づき変更する。これにより、作業者10の負荷の程度に合わせた制御量に従い、駆動部62を介してロボット60の動作量(より特定的にはアーム63の回動量)が変更される。したがって、生産ラインにおいて、作業者10とロボット60の協調作業による生産性が向上する。また、作業者10が過負荷となる事態が回避され得る。
【0073】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】生産ラインに備えられる駆動部を制御する制御装置は、作業者の作業時の姿勢の経時変化を示す身体情報(107)を取得する取得部(103)と、作業者が安定姿勢で作業する場合の身体情報を記憶するための記憶部と、取得される身体情報が示す経時変化の大きさと記憶部の身体情報が示す経時変化の大きさとの差を検出する検出部と、検出される差から駆動部の制御量を変更するか否かを決定する決定部と、を備える。