(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、給電機能を有するPoE(Power over Ethernet)ハブを例に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、ハブに限定ではなく、ルータやゲートウェイ等のIPパケットを中継する種々のIP中継装置に適用可能である。
【0010】
図1は、本発明によるPoEハブ装置(以下、本装置と略す)の内部ブロック構成図である。まず、本装置1の動作概略について説明する。
【0011】
本装置1は、IP網2または上位のIP機器と配下のIP機器3との間でIPパケットを中継するPoEハブである。上位のIP機器とは、UP−LINK側ポート11と接続される、ルータ,ゲートウェイ,ONU(Optical Network Unit)等、またはカスケード接続された上位の本装置である(図示せず)。また、配下のIP機器3とは、DOWN−LINK側ポート13と接続される、各種のIP機器3であって、例えば、IP電話機,無線アクセスポイント、Personal Computer,Webカメラ等、またはカスケード接続された下位の本装置である。また、本装置1は配下のIP機器3へ電力をPoE給電する。
【0012】
例えば、IP機器3−1がカスケード接続された他の本装置で、IP機器3−2〜IP機器3−NがIP電話機や無線アクセスポイントであった場合、電源コンセントの位置に束縛されないIP電話システムを柔軟に構築することが出来る。
【0013】
次に、本装置1の内部ブロック構成について詳細に説明する。本装置1は、IP機器診断部10、UP−LINK側ポート11、IPパケット中継制御部12、DOWN−LINK側PoEポート13(以下、ポートと略すこともある)、給電制御部14、PoE給電部15、参照データ記憶部16、診断スイッチ17、表示部18、から構成される。
【0014】
IP機器診断部10は、DOWN−LINK側PoEポート13に接続されたIP機器3からのIPパケットのデータ量またはIP機器3への給電量を分析し、そのIP機器3の正常性を診断する手段である。IP機器診断部10の詳細な説明は後述する。
【0015】
UP−LINK側ポート11は、ルータまたはゲートウェイ、ONU等の上位のIP網2側の機器と接続する手段である。
【0016】
IPパケット中継制御部12は、UP−LINK側ポート11とDOWN−LINK側PoEポート13−1〜13−Nとの間でIPパケットを中継すると共に、中継したIPパケットのパケット数またはデータ量を計測し、計測した値をIP機器診断部10に出力する手段である。
【0017】
DOWN−LINK側PoEポート13は、IP機器3を接続すると共に、IP機器3へPoE給電部15からの電力を出力する手段である。他の本装置1をカスケード接続する場合は、このDOWN−LINK側PoEポート13に次段となる本装置1のUP−LINK側ポート11を繋げばよい。
【0018】
給電制御部14は、商用電源である交流100Vのコンセントから受電した電力、またはUP−LINK側ポート11を介してPoE受電した電力を、所定の動作電圧に変換して本装置1内の各部へ供給する手段である。なお、コンセントからの受電とPoE受電のいずれの受電で本装置1を動作させるかは、電源切替えスイッチ(図示せず)等で切替えればよい。
【0019】
PoE給電部15は、給電制御部14から供給される電力をPoE電力に変換して、各DOWN−LINK側PoEポート13へ出力すると共に、給電量を測定し、測定した値をIP機器診断部10へ通知する手段である。また、IP機器診断部10からの指示に応じて給電のON/OFFを制御する手段である。
【0020】
参照データ記憶部16は、IP機器診断部10から出力される診断に必要な参照データを記憶すると共に、IP機器診断部10からの要求に応じて記憶している所定の参照データを出力する手段である。参照データの詳細については後述する。
【0021】
診断スイッチ17は、IP機器診断部10へ診断を要求する手動のスイッチである。操作者がこのスイッチを押下することにより、IP機器3の正常性をいつでもチェックすることが出来る。
【0022】
表示部18は、本装置1の動作状況,IP機器診断部10による診断結果,各種アラーム情報等を表示する手段である。なお、具体的な表示デバイスとしては、LCDやLED等である。
【0023】
図2は、参照データ記憶部16に記憶されているデータの1例である。列201にはDOWN−LINK側PoEポート、列202には診断対象のポートであるか否かを設定する診断設定(ONが診断対象)、列203には診断を開始するタイミングまたはイベント、列204にはIP機器3から入力してくるデータのスループットの平均値(例えば、IP電話機であれば100kbit/S程度)、列205にはPoE給電部15が給電した、当該ポートに接続されたIP機器3へのPoE給電量の平均値(例えば、200mAh)、列206にはIP機器診断部10が当該ポートに接続されたIP機器3の異常の可能性を判定する判定条件(例えば、平均値±50%)、列207には当該ポートに接続されたIP機器3に対応する通報先(例えば、保守担当者のメールアドレス)が登録されている。
【0024】
IP機器診断部10は、列202にONが設定されている行の各ポートについて、列203を参照してPoEポート毎の測定タイミングの到来(例えば、定期的な測定タイミング、または非定期な通信開始に係る特定信号や後述するパワーオンリセット後の再診断もしくは診断スイッチ17の押下)を検知した場合に、そのタイミングを起点とした、IPパケット中継制御部12が測定したIP機器3から入力してくる単位時間当たりのデータ量(スループット)の値、およびPoE給電部15が測定したPoE給電量の値と、列204及び列205に記憶されている参照データを対比し、それらの関係が列206に記憶されている正常性に係る判定条件を満足するか否かを判定し、満足しないと判定したならば、列207に記憶されている通報先へアラーム情報を通報する(例えば、電子メール)、または表示部18にアラーム情報を表示する。
【0025】
ここで、列204および列205に記憶しておくデータは、例えば、IP機器診断部10が、IPパケット中継制御部12が測定したIP機器3から入力してくるデータのスループットの値、およびPoE給電部15が測定したPoE給電量の値は正常であると判定した値(正常値)を、その都度加算平均していけばよい。この加算平均は、例えば、過去の最古の正常値を除外し最新の正常値を追加した、正常値N(例えば、10)個の平均でもよいし、サンプル数を限定しない累積平均でもよい。
【0026】
なお、新規に本装置1の使用を開始する場合、または配下のIP機器3を変更する場合、参照データ記憶部16に記憶されているデータをクリアし、初期の1以上の診断で正常値の平均を記憶していけばよい。この際、その初期の期間の診断で異常と判定されない判定条件であれば効率的である。
【0027】
また、IPパケット中継制御部12が測定するIP機器3から入力してくるデータのスループットの値は、バースト的に連続して入力してくるデータの瞬間的な最大スループットを測定してもよいし、一定時間(例えば、1分)の平均データ量を測定してもよい。同様に、PoE給電部15が測定したPoE給電量の値は瞬間的な最大値を測定してもよいし、一定時間の平均値を測定してもよい。
【0028】
また、列206に記憶しておく判定条件は、当該ポートに接続するIP機器3の特性に応じて、予め設定しておく。例えば、IP機器3が電話機(IPホン)であった場合、その音声帯域(例えば、64kbps)に対応するデータの平均スループット(例えば、100kbit/S)に対応する判定条件(例えば、±50%)を登録しておけばよい。
【0029】
なお、この判定条件の登録は、UP−LINK側ポート11またはDOWN−LINK側PoEポート13,IPパケット中継制御部12を介して入力してくる保守者からの特殊データ(例えば、保守専用コード付きのパケットデータ)を、IP機器診断部10が解析して参照データ記憶部16に登録すればよい。
【0030】
図3は本装置1の動作フローチャートである。以下、
図1,
図2を併用して、本装置1の動作フローを説明する。本フローは本装置1の電源が投入された状態からスタートする(S300)。なお、参照データ記憶部16には、診断に必要なデータが予め記憶されているものとする。
【0031】
IP機器診断部10は、参照データ記憶部16を参照し(
図2の列203)、診断を開始すべき定期的なタイミングの到来、または非定期なイベントの発生の有無を監視し、診断を開始すべき契機でなければ(S310,NO)、通常の中継動作として、UP−LINK側ポート11とDOWN−LINK側PoEポート13の各ポート間でIPパケットを中継し(S311)、S310に戻る。
【0032】
診断を開始すべき定期的なタイミングが到来、または非定期なイベントの発生を検知すると(S310,YES)、IP機器診断部10は診断を開始し、診断期間を計測するタイマーをスタートし(S320)、PoE給電部15は、IP機器3へのPoE給電量の計測を開始し(S321)、S330へ進む。なお、このタイマーは本装置1内に存在している時計デバイス(図示せず)でもよいし、ソフト的に計測するプログラムカウンタでもよい。
【0033】
S330において、UP−LINK側ポート11からIPパケットを受信した場合(S330,YES)、IPパケットに付与されたヘッダ情報に応じたDOWN−LINK側PoEポート13のいずれかへ中継し(S331)、S340へ進む。S330でNOであれば、S331をスキップしてS340へ進む。なお、この段階では、単なるIPパケットの中継であって、スループットの測定はしない。これは、IP機器3がIPパケットを送信してきているか否かにより、IP機器3の正常性を判断するためである。
【0034】
S340において、診断対象(
図2の列202がON)のDOWN−LINK側PoEポートからIPパケットを受信した場合(S340,YES)、IPパケットに付与されたヘッダ情報に応じて、UP−LINK側ポート11または、DOWN−LINK側PoEポート13のいずれかへ中継すると共に、中継したIPパケットの単位時間当たりのデータ量をトラヒックデータ(スループット)として、診断対象のポート毎に計測する(S341)。
【0035】
S340でNOであれば、IP機器診断部10は、診断対象のDOWN−LINK側PoEポート13に、IP機器3の正常性を確認するためのキープアライブ信号を送信するか否かを判定し(S342)、YESであればキープアライブ信号を送信し(S343)、NOであればS343をスキップしてS350へ進む。ここで、S343におけるキープアライブ信号の送信は、定期的なタイミングの到来であってもよいし、所定のイベント検知(例えば、一定時間以上無信号検知)でもよい。
【0036】
さらに、本フローでは表現していないが、自動的なキープアライブ信号の送信を、IP機器3の異常の可能性を検知した場合に限定することも可能である。この場合、後述するS360における異常の可能性の判定でYESの場合に、キープアライブ信号を送信するようにフローを変更すればよい。これにより、普段はIP機器3が送信する単位時間当たりデータ量だけでIP機器3の正常性を診断し、その診断でIP機器3に異常の可能性ありと診断した場合に、キープアライブ信号を送信し、応答が無ければ、異常の可能性ではなく、異常であることを判定できるので、無用なキープアライブ信号の送信が無く、診断が効率的であると共に、正常性の診断が確実である。
【0037】
S344において、キープアライブ信号を送信したDOWN−LINK側PoEポート13から正常性を示す応答信号があれば(S344,YES)、S350へ進む。S344でNOであれば、IP機器診断部10は、そのDOWN−LINK側PoEポート13に接続されたIP機器3に異常の可能性があると判定し、後述のS361へ進む。
【0038】
ところで、キープアライブ信号は、IP機器3が応答信号を返すことを要求する、IP機器3と連携した所定の信号であり、その信号の形式は任意である。また、キープアライブ信号は、IP網を診断する一般的なプログラムであるPING(Packet INternet Groper)に用いられるPing信号を利用してもよい。
【0039】
S350において、タイマーが満了した場合(S350,YES)、計測したデータ量から算出した単位時間当たりのデータ量(スループット)と、PoE給電部15が計測したPoE給電量を、診断対象のポート毎に参照データ(
図2の列204,列205)と比較する(S351)。なお、タイマーが満了していない場合(S350,NO)、S321へ戻り診断に係る計測を継続する。
【0040】
そして、S351において、各データを比較し、判定条件(
図2の列206)に従って、異常の可能性のあるDOWN−LINK側PoEポート13がある場合(S360,YES)、S361へ進み、当該ポートへのPoE給電を一時的にOFF/ONする指示をPoE給電部15に出力して、当該ポートに接続されたIP機器3に対して、PoE給電を一時的にOFFして再度ON(パワーオンリセット)し、S310に戻る。
【0041】
S361において、本装置1がPoE給電機能を有していない場合、IP機器3へ電力を供給する外部の電源機器(図示せず)へ、IP機器3への給電を一時的にOFFして再度ONする制御コマンドを送信するようにしてもよい。
【0042】
ところで、S361において、パワーオンリセットするのは、IP機器3が突発的な何らかの原因でフリーズしているだけの場合、パワーオンリセットするだけで正常復帰するケースが多いためである。即ち、パワーオンリセットしてからS310に戻った場合、一定時間(例えば、1分)経過後、再度診断し(S310のYES以降)、パワーオンリセットにより正常に復帰したか否かをチェックし、正常復帰していれば、異常ではないと判定する。ただし、パワーオンリセットして正常に復帰した場合であっても、IP機器3に何らかの異常がある可能性があるので、そのような処理が実行された旨のアラーム情報を通報先へ通報するようにしてもよい。
【0043】
パワーオンリセット後の再診断でもS360で異常の可能性有りと判定された場合、IP機器診断部10は、当該ポートに接続されたIP機器3の異常に係るアラーム情報を表示部18に表示する、または参照データ記憶部16を参照し、UP−LINK側ポート11またはDOWN−LINK側PoEポート13を介して、予め登録されている通報先(
図2の列207)へアラーム情報を通報する(S361)。
【0044】
S360において、異常の可能性があると判定されたDOWN−LINK側PoEポート13がない場合(S360,NO)、測定したデータを参照データ記憶部16に記憶されている参照データ(
図2の列204と列205)に反映(加算平均)して、参照データを最新化する(S362)。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明した。本装置1は、各IP機器3が送信するIPパケットの単位時間当たりのデータ量を日常的に測定し、そのデータ量の平均値を参照データとしているので、異常判定に係る参照データを人為的に登録する面倒が無い。
【0046】
また、本装置をカスケード接続した場合は、上位の本装置により、IP機器としての本装置の正常性をチェックすることが可能であり、カスケード接続された複数の本装置によるトレーンの故障個所を特定することが容易である。
【0047】
さらに、本装置1は、IP機器3からのIPパケットの送信が無い場合であっても、キープアライブ信号またはPing信号により、IP機器3の正常性をチェックできるので、IP機器3が正常であるにも関わらず長期間IPパケットの送信が無い場合、IP機器3の使用者の異変を検知することも可能である。例えば、本装置が独居老人宅に設置されていて、IP機器3が医療機器(心電図や血圧計等)であって、測定した医療データを医療機関に日常的に送信している場合、その医療機器が正常であるにも関わらず、長期間IPパケットの送信が無いならば、使用者に異変有りと判定して、駆けつけることを促すアラーム情報を所定の機関へ通報することも可能である。
【0048】
さらに、本実施形態において、本装置1はDOWN−LINK側PoEポート13に接続されたIP機器3の正常性を判定しているが、DOWN−LINK側PoEポート13をUP−LINK側ポート11側に置き換えれば、UP−LINK側ポート11側に接続されたIP機器を診断することも可能である。
【0049】
ところで、PoEハブを例に説明したが、本発明は、IPパケットを中継する装置の一般に適用可能であり、本装置1はルータやゲートウェイ等であってもよい。