(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Baが前記ペロブスカイト型化合物の主成分のAサイトを構成する元素であり、Ti、Zr、Mが前記ペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素であり、前記Aサイトを構成する元素と前記Bサイトを構成する元素の比が1.00〜1.03であること、を特徴とする、請求項1または請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の電子化に伴って、積層セラミックコンデンサが自動車に搭載されるようになってきた。そして、自動車搭載用のコンデンサでは、高温、高電圧などの過酷な条件でコンデンサ特性、特に高温での漏れ電流および絶縁抵抗劣化の抑制を保つことが求められている。
【0003】
そこで、この対策として、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサが提案されている。この積層セラミックコンデンサは、誘電体層の主成分が、BaTi
(1-x)Zr
xO
3+aRe+bM(但し、Reは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yの少なくとも1種類の希土類元素の酸化物であり、Mは、Mg、Al、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Vの少なくとも1種類の金属元素の酸化物)で表される。
【0004】
さらに、誘電体層は、1.000≦Ba/Ti≦1.450、5≦100x≦30、0.02≦a≦0.18、0.02≦b≦0.18であり、前記主成分100質量部に対して、Si元素を含んだ化合物を、0.2質量部≦Si元素を含んだ化合物≦5.0質量部含有し、粒子(グレイン)が、コア部とそれを取り囲むシェル部からなるコア−シェル構造を有している。
【0005】
そして、特許文献1の積層セラミックコンデンサは、上記の組成かつ微細構造を持つため、粒子(グレイン)の強誘電性(圧電性)が小さく、電界誘起歪が低減された状態のまま比誘電率の温度特性を改善できる。
【0006】
また、別の対策として、特許文献2に記載の積層セラミックコンデンサが提案されている。この積層セラミックコンデンサは、誘電体層がチタン酸バリウムを主成分として含有し、チタン酸バリウム100モルに対して、ジルコン酸バリウムとジルコン酸ストロンチウムとからなる成分を、BaZrO
3およびSrZrO
3換算で5〜15モル、Mgの酸化物をMgO換算で3〜5モル、Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくとも1つの元素)をR
2O
3換算で4〜6モル、Mn、Cr、CoおよびFeの少なくとも1つの元素の酸化物を、MnO、Cr
2O
3、Co
3O
4およびFe
2O
3換算で0.5〜1.5モル、Siを含む化合物をSi換算で2.5〜4モル含有している。さらに、前記成分を(1−x)BaZrO
3+xSrZrO
3と表した場合に、xが0.4〜0.9である。
【0007】
そして、特許文献2の積層セラミックコンデンサは、誘電体層を薄層化した場合であっても、高い電界強度下における比誘電率が高く、しかも良好な温度特性および信頼性を有することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の積層セラミックコンデンサの場合、比較的高い比誘電率を確保しながら、高い温度での漏れ電流および絶縁抵抗劣化を抑制することが不十分であった。
【0010】
それゆえに、本発明の目的は、比較的高い比誘電率を確保しながら、高い温度での漏れ電流および絶縁抵抗劣化を抑制することができる積層セラミックコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
誘電体層と、誘電体層間の複数の界面に配設されている複数の内部電極とを有する積層体と、
積層体の外表面に形成され、内部電極と電気的に接続されている外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサであって、
誘電体層が主成分としてBa、Ti、Zr、Mを含むペロブスカイト型化合物を含み、MはTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素であり、さらに誘電体層が添加成分としてMn、Siを含み、
Ti、Zr、Mの合計量に対するZrの含有量が40モル%<Zr≦90モル%であり、Mの含有量が1モル%≦M≦10モル%であり、
Ti、Zr、Mの合計量を100モル部としたとき、MnおよびSiの含有量が、1モル部≦Mn≦10モル部、1モル部≦Si≦5モル部であり、MnとMのモル比が0.5≦Mn/M≦3.0であること、
を特徴とする、積層セラミックコンデンサである。
【0012】
また、本発明は、
誘電体層と、誘電体層間の複数の界面に配設されている複数の内部電極とを有する積層体と、
積層体の外表面に形成され、内部電極と電気的に接続されている外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサであって、
積層体の組成が主成分としてBa、Ti、Zr、Mを含むペロブスカイト型化合物を含み、MはTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素であり、さらに積層体が添加成分としてMn、Siを含み、
積層体を溶解して溶液としたとき、溶液中のTi、Zr、Mの合計量に対するZrの含有量が40モル%<Zr≦90モル%であり、Mの含有量が1モル%≦M≦10モル%であり、
Ti、Zr、Mの合計量を100モル部としたとき、MnおよびSiの含有量が、1モル部≦Mn≦10モル部、1モル部≦Si≦5モル部であり、MnとMのモル比が0.5≦Mn/M≦3.0であること、
を特徴とする、積層セラミックコンデンサである。
【0013】
また、本発明の積層セラミックコンデンサでは、
Baがペロブスカイト型化合物の主成分のAサイトを構成する元素であり、Ti、Zr、Mがペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素であり、Aサイトを構成する元素とBサイトを構成する元素の比が1.00〜1.03であること、が好ましい。
【0014】
本発明では、Ti、Zr、Mの合計量に対するZrの含有量が40モル%<Zr≦90モル%であるため、Zrによって酸素欠損が減少し、更に、ペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素Mがドナーとなり、酸素欠損が効率良くトラップされて固定される。従って、比較的高い比誘電率を確保しながら、高い温度での漏れ電流および絶縁抵抗劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的高い比誘電率(≧50)を確保しながら、高い温度での漏れ電流および絶縁抵抗劣化を抑制することができる。
【0016】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.積層セラミックコンデンサ
本発明に係る積層セラミックコンデンサの一実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る積層セラミックコンデンサ10を示す外観斜視図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。積層セラミックコンデンサ10は、略直方体のセラミック積層体1と、セラミック積層体1の左右の端部に形成された外部電極6a,6bと、を備えている。
【0020】
セラミック積層体1は、厚みT方向において、複数の誘電体層2と、誘電体層2の間の界面に配設されて誘電体層2を介して互いに対向している複数対の内部電極4a,4bと、を積み重ねた積層体である。
【0021】
誘電体層2は、主成分として、Ba、Ti、Zr、Mを含むペロブスカイト型化合物を含んでいる。MはTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素である。さらに、誘電体層2は、添加成分として、MnおよびSiを含んでいる。
【0022】
また、Ti、Zr、Mの合計量に対するZrの含有量は、40モル%<Zr≦90モル%である。さらに、Mの含有量は、1モル%≦M≦10モル%である。
【0023】
さらに、Ti、Zr、Mの合計量を100モル部としたとき、MnおよびSiの含有量が、1モル部≦Mn≦10モル部、1モル部≦Si≦5モル部であり、MnとMのモル比が0.5≦Mn/M≦3.0である。なお、M(Ta、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素)はドナー元素であり、Mnはアクセルター元素である。
【0024】
また、Baがペロブスカイト型化合物の主成分のAサイトを構成する元素であり、Ti、Zr、Mがペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素である場合は、Aサイトを構成する元素とBサイトを構成する元素の比が1.00〜1.03である。
【0025】
内部電極4aは、その端部がセラミック積層体1の左端面に引き出され、外部電極6aに電気的に接続されている。内部電極4bは、その端部がセラミック積層体1の右端面に引き出され、外部電極6bに電気的に接続されている。そして、内部電極4a,4bの対向している部分にて、コンデンサ機能が発揮される。内部電極4a,4bは、Ag、Cu、Ni、Pd、または、これら金属の合金などからなる。
【0026】
以上の構成からなる積層セラミックコンデンサ10は、Ti、Zr、Mの合計量に対するZrの含有量が40モル%<Zr≦90モル%であるため、Zrによって酸素欠損が減少し、更に、Bサイトを構成するMの元素がドナーとなり、酸素欠損が効率良くトラップされて固定される。従って、比較的高い比誘電率(≧50)を確保しながら、高い温度での漏れ電流および絶縁抵抗劣化を抑制することができる積層セラミックコンデンサ10を得ることができる。
【0027】
2.積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、積層セラミックコンデンサ10の製造方法の一例を説明する。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
【0028】
工程S1で、セラミック材料に有機バインダなどが添加されて、セラミックグリーンシート成形用スラリーが作製される。すなわち、ペロブスカイト型化合物の主成分の出発原料として、BaCO
3、TiO
2、ZrO
2、V
2O
5、Ta
2O
5、Nb
2O
5、WO
6の各粉末が用意される。
【0029】
次に、各粉末が表1に示すように秤量される。表1は、Ba
m(Ti,Zr,Ta,Nb,V,W)O
3と表した場合の組成を示す。すなわち、TiとZrとM(MはTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素)の合計量100モル部としたとき、Baの含有量が100mモル部となるようにした場合の組成を示す。各粉末は、水を媒体としてボールミルにより混合され、1200℃で仮焼された後、粉砕されてペロブスカイト型化合物の主成分のセラミック粉末が得られる。なお、この主成分にCa,Sr、Hfが含まれていても、発明の効果に違いはない。
【0030】
次に、MnCO
3およびSiO
2の各粉末が、添加成分の出発原料として、主成分中のTiとZrとM(MはTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素)の合計量100モル部に対する各添加成分の量が表1に示す組成となるように(モル部表記)、ペロブスカイト型化合物の主成分のセラミック粉末に加えられた後、ボールミルにより混合され、誘電体原料粉末が得られる。
【0031】
なお、この組成は、出発原料がBaTiO
3やBaZrO
3などであっても、表1に示す組成になるように所定の比率で混合されていれば、発明の効果に問題はない。また、出発原料がボールミル以外のどのような方法で混合されても、表1に示す組成になれば発明の効果に問題はない。
【0032】
次に、誘電体原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノールなどの有機溶媒が加えられ、ボールミルにより湿式混合されてセラミックグリーンシート成形用スラリーが作製される。
【0033】
次に、工程S2で、セラミックグリーンシート成形用スラリーは、ドクターブレード法によって、焼成後の誘電体層2の厚みが10μmになるようにシート状に成形され、矩形のセラミックグリーンシートとされる。
【0034】
次に、工程S3で、セラミックグリーンシート上に、Niを含有する内部電極ペーストがスクリーン印刷法で塗布され、内部電極4a,4bとなるべき電極ペースト膜が形成される。
【0035】
次に、工程S4で、電極ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートは、電極ペースト膜の端部の引き出し方向が互い違いになるように複数枚積層され、圧着される。この積層セラミックグリーンシートは、個々のセラミック積層体1となるべき寸法に切断され、複数の未焼成のセラミック積層体1とされる。
【0036】
次に、工程S5で、未焼成のセラミック積層体1は、290℃の温度の空気中で脱バインダ処理される。その後、未焼成のセラミック積層体1は、H
2−N
2−H
2Oガスからなる還元性雰囲気中にて、1150〜1250℃の温度で2時間焼成され、焼結したセラミック積層体1とされる。セラミックグリーンシートと電極ペースト膜とは同時焼成され、セラミックグリーンシートはセラミック層2となり、電極ペースト膜は内部電極4a,4bとなる。
【0037】
次に、工程S6で、焼結したセラミック積層体1の両端部に、外部電極ペースト(CuペーストやAgPd合金ペースト)が塗布される。その後、焼結したセラミック積層体1は、900℃の温度で外部電極ペーストが焼き付けられ、内部電極4a,4bにそれぞれ電気的に接続された外部電極6a,6bが形成される。こうして、積層セラミックコンデンサ10が得られる。
(実験例)
【0038】
1.試料の作製
表1に示す組成で、前記実施の形態の製造方法によって、試料の積層セラミックコンデンサ10が作製された。
【0039】
(a)試料番号1〜9
表1に示すように、試料番号1〜9の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素(Ti、Zr、M)の合計量に対するZrの含有量が異なるように調整した。
【0040】
(b)試料番号10〜14
試料番号10〜14の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(ドナー元素であるTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素)の種類が異なるように調整した。
【0041】
(c)試料番号15〜19
試料番号15〜19の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(ドナー元素であるTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素、より具体的にはTa)の含有量と、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Mnの含有量とが異なるように調整した。
【0042】
(d)試料番号20〜23
試料番号20〜23の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のAサイトを構成する元素Baの含有量が異なるように調整した。
【0043】
(e)試料番号24〜29
試料番号24〜29の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Siの含有量が異なるように調整した。
【0044】
(f)試料番号30〜34
試料番号30〜34の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Mnの含有量を異ならせることによって、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が異なるように調整した。
【0045】
(g)試料番号35〜39
試料番号35〜39の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(より具体的には、元素Ta)の含有量を異ならせることによって、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が異なるように調整した。
【0046】
作製された積層セラミックコンデンサ10の外形寸法は、幅Wが1.0mm、長さLが2.0mm、厚さTが1.0mmであった。誘電体層2の厚みは10μmであり、内部電極4a,4bの厚みは1.0μmであった。また、コンデンサ機能に寄与する有効誘電体層2の総数は85であり、一層当たりの対向電極面積は1.6mm
2であった。
【0047】
作製された積層セラミックコンデンサ10のセラミック積層体1を溶解して、ICP発光分光分析が行われ、内部電極4a,4bのNiを除いて、表1に示した組成と殆ど同一であることが確認された。
【0048】
2.特性評価および評価方法
作製された試料の積層セラミックコンデンサに対して、以下の特性評価が行なわれた。
【0049】
(a)比誘電率
作製された試料の積層セラミックコンデンサの静電容量が、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製:HP4194A)にて、周囲温度25±2℃で、1kHz、1Vrmsの条件で測定され、その静電容量値から比誘電率が換算された。試料番号ごとに30個の積層セラミックコンデンサが測定され、その比誘電率の平均値が算出された。
【0050】
(b)高温負荷寿命試験
作製された試料の積層セラミックコンデンサに、周囲温度200℃で、200Vの直流電圧が印加され、電流値が測定され、絶縁抵抗の経時変化が測定された。さらに、絶縁抵抗は、試料形状から比抵抗値に換算された。試料番号ごとに100個の積層セラミックコンデンサが測定され、その比抵抗値の平均値が算出された。そして、比抵抗値が100MΩ・m以下になった試料は故障と判定され、故障時間のワイブル解析から50%の平均故障時間(MTTF)が求められた。MTTFが120時間より小さい場合は規格外とした。
【0051】
3.特性評価結果
表1は試料番号1〜39の積層セラミックコンデンサの特性評価の結果を示す。
【0053】
(a)試料番号1〜9
表1に示すように、試料番号1、2の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素(Ti、Zr、M)の合計量に対するZrの含有量が40モル%と少な過ぎるので、高温負荷寿命試験のMTTFが84〜88時間と短くなった。
【0054】
試料番号3〜8の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素(Ti、Zr、M)の合計量に対するZrの含有量が42〜90モル%と適しているので、比誘電率が51〜484と比較的高い値で、かつ、高温負荷寿命試験のMTTFが123時間〜193時間と長かった。
【0055】
試料番号9の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素(Ti、Zr、M)の合計量に対するZrの含有量が92モル%と多過ぎるので、比誘電率が43と低い値となった。
【0056】
(b)試料番号10〜14
試料番号10〜14の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(ドナー元素であるTa、Nb、V、Wの少なくとも一種類の元素)の種類が異なっても、比誘電率や高温負荷寿命試験のMTTFは殆んど変わらないで、良好な結果が得られた。
【0057】
(c)試料番号15〜19
試料番号15の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(ドナー元素であるTa)の含有量が0.5モル%と低過ぎ、かつ、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Mn(アクセルター元素)の含有量が0.5モル部と低過ぎるので、高温負荷寿命試験のMTTFが45時間と短くなった。
【0058】
試料番号16〜18の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(ドナー元素であるTa)の含有量が1〜10モル%と適量で、かつ、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Mn(アクセルター元素)の含有量が1〜10モル部と適量であるので、比誘電率が52〜110と比較的高い値で、かつ、高温負荷寿命試験のMTTFが120時間〜191時間と長かった。
【0059】
試料番号19の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のBサイトを構成する元素M(ドナー元素であるTa)の含有量が12モル%と高過ぎ、かつ、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Mn(アクセルター元素)の含有量が12モル部と高過ぎるので、比誘電率が43と低い値となった。
【0060】
(d)試料番号20〜23
試料番号20〜23の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の主成分のAサイトを構成する元素Baの含有量が異なっても、比誘電率や高温負荷寿命試験のMTTFは殆んど変わらないで、良好な結果が得られた。
【0061】
(e)試料番号24〜29
試料番号24の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Siの含有量が0.5モル部と低過ぎるので、1250℃で焼成しても、緻密に焼結したセラミック積層体1が得られなかった。
【0062】
試料番号25〜28の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Siの含有量が1〜5モル部と適量であるので、比誘電率が113〜310と比較的高い値で、かつ、高温負荷寿命試験のMTTFが120時間〜138時間と長かった。
【0063】
試料番号29の積層セラミックコンデンサ10は、誘電体層2のペロブスカイト型化合物の添加成分である元素Siの含有量が6モル部と高過ぎるので、比誘電率が33と低い値となった。
【0064】
(f)試料番号30〜34
試料番号30の積層セラミックコンデンサ10は、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が0.25と低過ぎるので、高温負荷寿命試験において絶縁抵抗が低く、比抵抗で10
6Ω・m以下の値しか得られなかった。
【0065】
試料番号31〜33の積層セラミックコンデンサ10は、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が0.5〜3.0と適値であるので、比誘電率が223〜310と比較的高い値で、かつ、高温負荷寿命試験のMTTFが121時間〜143時間と長かった。
【0066】
試料番号34の積層セラミックコンデンサ10は、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が5.0と高過ぎるので、高温負荷寿命試験において絶縁抵抗が低く、比抵抗で10
6Ω・m以下の値しか得られなかった。
【0067】
(g)試料番号35〜39
試料番号35の積層セラミックコンデンサ10は、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が4.0と高過ぎるので、高温負荷寿命試験において絶縁抵抗が低く、比抵抗で10
6Ω・m以下の値しか得られなかった。
【0068】
試料番号36、37の積層セラミックコンデンサ10は、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が0.5〜2.0と適値であるので、比誘電率が310〜340と比較的高い値で、かつ、高温負荷寿命試験のMTTFが128時間〜130時間と長くなった。
【0069】
試料番号38、39の積層セラミックコンデンサ10は、アクセルター元素のMnとドナー元素のMのモル比が0.2〜0.33と低いので、高温負荷寿命試験において絶縁抵抗が低く、比抵抗で10
6Ω・m以下の値しか得られなかった。
【0070】
なお、この発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。