(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する2つの主面を備え、両主面間に平膜状の圧電フィルムが積層され、この圧電フィルムの歪み量に応じた圧電電圧を出力する導電性の出力導体パターンを形成したフレキシブルなセンサ部と、
回路基板の主面に、前記センサ部の前記出力導体パターンに電気的に接続する導電性の入力導体パターン、および前記入力導体パターンを介して入力された前記圧電フィルムの歪み量に応じた圧電電圧を処理する処理回路が形成されているリジッドな回路部と、
前記出力導体パターンと前記入力導体パターンとを電気的に接続した状態で、前記センサ部と前記回路部とを保持する保持部材と、
前記センサ部の他方の主面側における、前記センサ部の一方の主面に形成されている前記出力導体パターンに対向する位置に配置される板状の補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前記センサ部の一部をカバーする大きさであり、前記センサ部と前記回路部とが重なる領域よりも長く、少なくとも一方の端部が前記センサ部の一部をカバーするように前記回路部の端部よりも突出して設けられている圧電フィルムセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態である圧電フィルムセンサについて説明する。
【0020】
図1は、圧電フィルムセンサの概観を示す概略図である。この例にかかる圧電フィルムセンサ1は、センサ部11と、回路部12と、を備え、2つの保持部材13a、13bでセンサ部11と回路部12とを保持している。この圧電フィルムセンサ1は、所定の場所に貼り付けられ、その場所の微小な動きや変形などを検知するセンサである。例えば、センサ部11を皮膚に貼り付け、皮膚の動きや皮下の動きを検知する。
【0021】
図2(A)は、センサ部の概略の側面図であり、
図2(B)はセンサ部の第1主面(
図2(A)における上側の主面)の概略の平面図である。センサ部11は、圧電フィルム111a、111bと、シグナル電極112と、基準電位電極113と、を積層したものである。圧電フィルム111a、111bは、ポリ乳酸(PLA)、より具体的にはL型ポリ乳酸(PLLA)からなる。シグナル電極112は、厚さ10μm程度のシート状の銅箔を所定の形状に打ち抜いて形成したものである。圧電フィルム111aは、シグナル電極112の一方の主面(
図2(A)における下側の主面)側に積層され、圧電フィルム111bは、シグナル電極112の他方の主面(
図2(A)における上側の主面)側に積層されている。
【0022】
また、圧電フィルム111aにおけるシグナル電極112との反対側の主面、および圧電フィルム111bにおけるシグナル電極112との反対側の主面には、基準電位電極113が積層されている。この基準電位電極113は、例えば、導電性の不織布や銀ペースト付きウレタンフィルムなどの比較的柔らかい導電性材料であり、上下の基準電位電極113は互いに接続されている。上下の基準電位電極113は、
図2に示すように1枚のフィルムを折り返して形成することができる。ここで、この上下に折り返された基準電位電極113における折り返された部分を連結部118とする。すると、この連結部118を介して上下の基準電位電極113が連結されていることによって、上下の基準電位電極113を、後述する処理回路201に電気的に接続するためのシグナル線を減らすことができる。したがって、シグナル線による上下の基準電位電極113の接続箇所が減ることになる。このことにより、この接続箇所における接続不良の発生をなくし、圧電フィルムセンサ1の全体として接続不良の発生率を減らすことができる。またシグナル線が減ることにより、電極間の接続構造を簡易化できる。なお、この連結部118は、シグナル電極112の電極の幅(
図2における紙面垂直方向の寸法)と同程度か、より大きくしておくことが好ましい。これにより、圧電フィルムセンサの側面方向(
図2における紙面左方向)に対する電磁波ノイズの影響を軽減することができる。
【0023】
圧電フィルム111a、111b、シグナル電極112、および基準電位電極113は、
図2における左右方向(以下、長手方向と言う。)の長さに対して、
図2(B)における上下方向(以下、短手方向と言う。)の長さが短い長尺状のシートである。
【0024】
なお、センサ部11は、第1主面およびこの第1主面に対向する第2主面(
図2(A)における下側の主面)に、基準電位電極113の外側を覆う保護フィルム(不図示)を設けている。保護フィルムは、発泡性フィルム、ウレタンフィルム、薄いPETフィルム(12μm程度のPETフィルム)等である。
【0025】
圧電フィルム111a、111bは、伸縮に対する発生分極の方向が同一である。したがって、センサ部11が長手方向に伸張したときには、圧電フィルム111a、111bにおける発生電荷がキャンセルされるので、センサ部11が長手方向に伸張したことを検出できない。一方、センサ部11が屈曲したときには、圧電フィルム111a、111bにおける発生電荷がキャンセルされないので、センサ部11が屈曲したことを検出できる。
【0026】
また、センサ部11には、第1主面側に露出する導電性の接続パターン112a、113aがさらに形成されていてもよい。接続パターン112aは、シグナル電極112に形成されている。接続パターン113aは、基準電位電極113に形成されている。接続パターン112a、113aは、センサ部11の長手方向の一方の端部(
図2における右側の端部)に、センサ部11の短手方向に並べて形成している。さらに、接続パターン112a、113aの内側には、貫通孔が形成されている。接続パターン112a、113aが、この発明で言う導電性の出力導体パターンに相当する。
【0027】
なお、接続パターン112aと接続パターン113aとは、形成されている層が異なるので、
図2(A)における上下方向において圧電フィルム111aとシグナル電極112の厚みだけ段差が生じるが、この段差は10〜20μm程度である。また、接続パターン113aの厚さを、接続パターン112aの厚さよりも大きくすることによって、上記段差をなくしてもよい。
【0028】
上記構成のセンサ部11は、フレキシブルであり、センサ部11の変形にともなって、圧電フィルム111a、111bが歪む。
【0029】
ここで、圧電フィルム111a、111bを形成するPLLAの特性について簡単に説明しておく。
【0030】
PLLAはキラル高分子からなる。PLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸された方向に分子が配向されており、当該分子の配向によって圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、圧電フィルム111a、111bに歪みが生じることで、電荷を発生する。ここで、圧電フィルム111a、111bに生じる歪みとは、圧電フィルム111a、111bが所定方向に伸長することである。この際、発生する電荷量は、圧電フィルム111a、111bの歪み量によって決まる。一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。例えば、PLLAの圧電歪み定数d
14は、延伸条件、熱処理条件、添加物の配合等の条件を整えることにより10〜20pC/Nという高い値が得られる。
【0031】
なお、圧電フィルム111a、111bの延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。
【0032】
なお、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えばある方向をX軸としてその方向に8倍、その軸に直交するY軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそX軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合とほぼ同等の効果が得られる。単純に一軸延伸したフィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことができる。
【0033】
また、PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じるので、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。したがって、出力電荷量が周囲環境に影響されない。また、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じないことは大きな特徴であり、温度変化に伴って電荷が発生し、センサ出力として誤検知してしまうという危険性がほとんどない。
【0034】
図3は、回路部の構成を示す概略の平面図である。回路部12は、互いに対向する第3主面、および第4主面を備えるリジッドな回路基板200上に、処理回路201、および導電性の接続パターン200a、200bを形成したものである。接続パターン200a、200bは、回路基板200の第3主面に形成されている。一方、処理回路201は、第3主面または第4主面の一方に形成されていてもよいし、両主面にわたって形成されていてもよい。
【0035】
接続パターン200a、200bの内側には、貫通孔が形成されている。接続パターン200aは、センサ部11に形成されている上述の接続パターン113aと略同じ形状であり、接続パターン200bは、センサ部11に形成されている上述の接続パターン112aと略同じ形状である。また、2つの接続パターン200a、200bの相対的な位置関係と、センサ部11に形成されている2つの接続パターン112a、113aの相対的な位置関係と、は略同じである。接続パターン200a、200bが、この発明で言う入力導体パターンに相当する。
【0036】
処理回路201は、接続パターン200a、200bと接続され、接続パターン200a、200bにおける入力信号(後述するように、圧電フィルム111a、111bにおいて発生した電荷にかかる信号)を処理し、圧電フィルム111a、111bの歪み量を検出するための回路である。
【0037】
保持部材13a、13bは、ハトメやリベット等の接合部材である。保持部材13a、13bは、センサ部11の接続パターン112aと回路部12の接続パターン200bとを電気的に接続し、且つセンサ部11の接続パターン113aと回路部12の接続パターン200aとを電気的に接続した状態で、センサ部11と回路部12(回路基板200)とを保持する。
【0038】
具体的には、圧電フィルムセンサ1は、
図4に示すように、センサ部11の第1主面と、回路部12の回路基板200の第3主面とを合わせている。このとき、センサ部11の基準電位電極113に形成されている接続パターン113aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aとを当接させ、センサ部11のシグナル電極112に形成されている接続パターン112aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bとを当接させている。すなわち、圧電フィルムセンサ1は、センサ部11の基準電位電極113に形成されている接続パターン113aの内側の貫通孔と、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aの内側の貫通孔とが重なり、且つセンサ部11のシグナル電極112に形成されている接続パターン112aの内側の貫通孔と、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bの内側の貫通孔とが重なるように、センサ部11の第1主面と、回路部12の回路基板200の第3主面とを重ね合わせている。保持部材13a、13bは、センサ部11の接続パターン112aと回路部12の接続パターン200bとを圧接し、且つセンサ部11の接続パターン113aと回路部12の接続パターン200aとを圧接した状態で、センサ部11と回路基板200とを保持する。
【0039】
保持部材13a、13bは、センサ部11の第2主面側、または回路基板200の第4主面側の一方から貫通孔に通し、他方の側に突出した先端をかしめている。
【0040】
なお、
図4に示す例では、保持部材13a、13bは、導電性のものであってもよいし、非導電性のものであってもよい。保持部材13a、13bとして導電性のものを用いる場合には、回路部12の接続パターン200a,200bと、センサ部11の接続パターン112a,113aとが接触によって導通するだけでなく、保持部材13a、13bによっても導通を得ることができるので、回路部12とセンサ部11との間での接触抵抗を軽減することができる。一方、保持部材13a、13bとして非導電性のものを用いる場合には、外部から金属体が近接するような場合にも、不要な短絡が生じにくくなる。なお、保持部材13a、13bとして導電性のものを用いる場合にも、保持部材13a、13bの表面を酸化膜などで絶縁保護することで、同様に不要な短絡が生じにくくなる。
【0041】
図5は、回路部の回路基板に形成されている処理回路を示す図である。処理回路201は、
図5に示す増幅回路である。Ampは、増幅器である。R1、R2は、電源電圧V
DDを分圧する分圧抵抗であり、R3は、Ampのフィードバック抵抗である。Ampの入力は、センサ部11の圧電フィルム111a、111bにおいて発生した圧電電圧である。センサ部11の曲げに応じて、Ampの出力が変化する。
【0042】
また、圧電フィルムセンサ1は、センサ部11における接続パターン112a、113aの露出面の反対面(センサ部11の第2主面)に板状の補強部材16を
図6に示すように設けるのが好ましい。
図6(A)は、補強部材を設けた圧電フィルムセンサの側面図であり、
図6(B)は補強部材を設けた圧電フィルムセンサのセンサ部の第2主面側の平面図である。この補強部材16は、矩形状であり、長手方向(
図6における左右方向)の一方の端部がセンサ部11の端部に一致し、他方の端部が回路基板の端部よりも突出する大きさである。また、補強部材16は、接続パターン112a、113aの対向する領域全体をカバーする大きさである。補強部材16は、その厚さが100〜200μmのPETフィルムであり、接着剤を用いてセンサ部11の第2主面に貼り付けてもよい。この補強部材16にも、接続パターン112a、113aの内側に形成している貫通孔に対応する位置に、貫通孔が形成されている。
【0043】
センサ部11に補強部材16を設けた圧電フィルムセンサ1は、センサ部11が回路基板のエッジ(端部)付近で急激に折り曲がるのを防止できる(センサ部11の異常な変形を防止できる。)。これにより、圧電フィルム111a、111bの歪みが異常になり、センサ部11の出力が異常になるのを防止できる。また、保持部材13a、13の取り付け部分周辺に応力が集中するのを防止でき、センサ部11と回路部12との接合強度を高めることができる。
なお、この例では、
図6(A)に側面視するように、補強部材16を、センサ部13の長さ方向において、回路部13と重なる領域よりも長く設けている。また、
図6(B)に平面視するように、補強部材16を、センサ部13の幅方向において、センサ部13の両端間よりも短い矩形状に設けている。このように補強部材16の形状は設定することができるが、その他にも、補強部材16は適宜の形状とすることができる。例えば、補強部材16は、センサ部13の一方端において、センサ部を幅方向の全長にわたって重なるような大きさの矩形状とすることができる。また、補強部材16は、平面視してコの字状とし、コの字の両端部分のみ回路基板に重ねるようなこともできる。また、補強部材16は、円形状や多角形状とすることもできる。
【0044】
さらに、この圧電フィルムセンサ1は、上述したように、皮膚の動きや皮下の動きを検知するために、センサ部11を皮膚に貼り付けるものであるので、
図7に示すように、両面テープ17をセンサ部11の一方の主面に貼り付けておいてもよい。
図7(A)は、両面テープを設けた圧電フィルムセンサの側面図であり、
図7(B)は両面テープを設けた圧電フィルムセンサのセンサ部の第2主面側の平面図である。
図7では、両面テープ17は、センサ部11の第2主面に設けているが、センサ部11の第1主面に設けてもよい。また、
図7は、センサ部11に補強部材16を設けた圧電フィルムセンサ1である。
【0045】
図7に示すように、両面テープ17は、センサ部11の第2主面における、回路基板200や補強部材16と重ならない位置に設けるのが好ましい。これにより、両面テープ17によってセンサ部11を皮膚に貼り付けたときに、回路基板200や補強部材16が皮膚や皮下の動きを妨げるのを防止できる。この両面テープ17が、この発明で言う粘着層に相当する。
【0046】
このように、この例にかかる圧電フィルムセンサ1は、センサ部11と回路部12との電気的接続にリード線等のケーブルを使用していないので、静電気や商用電源ノイズ(50Hzまたは60Hz)、ケーブルの揺れに伴う摩擦電気等の影響を十分に抑えることができ、結果的に、低周波数(10Hz程度)の信号の検出精度を十分に確保することができる。また、回路部12は、安価であるリジッドな回路基板200で構成でき、且つ簡単な工程でセンサ部11と回路部12との接合が行えるので、圧電フィルムセンサ1のコストダウンが図れる。
【0047】
また、センサ部11は、
図2に示した構成にしているので、センサ部11を両面テープ17で皮膚などに貼り付け、その皮下の動き(脈拍など)をモニタする場合、人間の関節曲げによる皮膚の伸縮を、皮下の動きとして検出するのを抑制することができる。また、
図2に示したセンサ部11は、上述したように、伸縮による発生電荷をキャンセルする構成であるので、突発的に引張方向の応力が加わったとしても、接続される処理回路201の出力が飽和したり、接続される処理回路201が圧電フィルム111a、111bで発生した過電圧の入力により破損したりするのを抑えられる。また、センサ部11は、内側に位置するシグナル電極112を比較的硬い銅箔とし、外側に位置する基準電位電極113を比較的柔らかい銀ペースト付きウレタンフィルムとしたので、全体として伸びにくいが曲がりやすい構造である。
【0048】
また、回路部12の処理回路201は、
図8に示す回路としてもよい。
図5に示した処理回路は、基準電位電極113に対してシグナル電極112が常に正にバイアスされない回路であり、
図8に示した処理回路は、基準電位電極113に対してシグナル電極112が常に正にバイアスされる回路である。
【0049】
ここで、センサ部11は、マイグレーションを発生する危険性が高い銀ペーストの電極を基準電位電極113(陰極側)として構成されている。したがって、
図8に示した処理回路201では、基準電位電極113に対してシグナル電極112が常に正にバイアスされるので、このことによってマイグレーションの発生を抑えることができる。また、基準電位電極113とシグナル電極112とが異なる電極材料で構成されること、すなわち、陰極側の電極と陽極側の電極とが異なる電極材料で構成されることによっても、マイグレーションの発生を抑える効果がえられる。
【0050】
また、圧電フィルムセンサ1は、ノイズ対策として、
図9に示すように、回路部12全体をシールドケース18に収納する構成としてもよい。シールドケース18が樹脂素材である場合には、
図9に示すように、回路基板200の第3主面側、および第4主面側のそれぞれに回路基板200を挟むように金属板18a、18bを配置すればよい。また、シールドケース18が導電性の素材であれば、金属板18a、18bを配置せずに、このシールドケース18をグランドに接続してもよい。圧電フィルムセンサ1は、シールドケース18を設けることにより、センサ部11を貼り付けた人体からのノイズの影響を抑えることができる。
【0051】
なお、この場合には、
図9に示すように、保持部材13a、13bもシールドケース18に収納する。
【0052】
圧電フィルムセンサ1における、センサ部11と回路部12との保持は、
図4に示した例に限らない。例えば、
図10(A)に示すように、センサ部11の第2主面と、回路基板200の第4主面とを重ね合わせてもよい。このとき、センサ部11に形成されている接続パターン112aと、回路基板200に形成されている接続パターン200bとが背中合わせになり、且つセンサ部11に形成されている接続パターン113aと、回路基板200に形成されている接続パターン200aとが背中合わせになっている。すなわち、圧電フィルムセンサ1は、センサ部11の基準電位電極113に形成されている接続パターン113aの内側の貫通孔と、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aの内側の貫通孔とが重なり、且つセンサ部11のシグナル電極112に形成されている接続パターン112aの内側の貫通孔と、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bの内側の貫通孔とが重なるように、センサ部11の第2主面と、回路部12の回路基板200の第4主面とを重ね合わせている。
【0053】
保持部材13a、13bは、センサ部11の第1主面側、または回路基板200の第3主面側の一方から貫通孔に通し、他方の側に突出した先端をかしめている。この例では、保持部材13a、13bは、導電性のものである。圧電フィルムセンサ1は、センサ部11に形成されている接続パターン112aと、回路基板200に形成されている接続パターン200bとが保持部材13aによって電気的に接続され、センサ部11に形成されている接続パターン113aと、回路基板200に形成されている接続パターン200aとが保持部材13bによって電気的に接続される。
【0054】
また、
図10(B)に示すように、回路部12の回路基板200の第4主面に板バネ15を取り付け、センサ部11を回路基板200と、板バネ15とによって挟持して保持する構成としてもよい。この場合、センサ部11に形成されている接続パターン112aと、回路基板200に形成されている接続パターン200bとが当接し、且つセンサ部11に形成されている接続パターン113aと、回路基板200に形成されている接続パターン200aとが当接するように、センサ部11と回路基板200とを重ね合わせ、センサ部11と回路部12とを電気的に接続する。この例では、接続パターン112a、113a、200a、200bの内側に貫通孔が設けられていなくてもよい。このように構成すると、回路基板200からのセンサ部11の取り外しが可能となり、センサ部11や回路基板200を付け替えたり、使い回したりすることができる。
【0055】
また、
図10(B)に示す例では、センサ部11の抜け落ちを防止する抜け落ち防止機構を設けるのが好ましい。この抜け落ち防止機構は、例えば、センサ部11の回路基板200との当接面(第1主面)に形成した第1の凹凸と、回路基板200のセンサ部11との当接面(第3主面)に形成した第1の凹凸に係合する第2の凹凸とによって構成できる。
【0056】
また、センサ部11と回路基板200との保持に板バネ15を用いたことで、センサ部11と、回路基板200(すなわち、回路部12)との着脱が簡単に行える。また、この場合、上述した補強部材16をセンサ部11の第2主面に設けておくことで、回路基板200と、板バネ15とによって挟持するセンサ部11の端部を硬くでき、センサ部11と、回路基板200との着脱が一層簡単に行える。
【0057】
また、センサ部11Aは、
図11に示す構成であってもよい。センサ部11Aは、圧電フィルム121、122と、シグナル電極123と、絶縁フィルム124と、基準電位電極125と、を積層したものである。
【0058】
センサ部11Aは、シグナル電極123の一方の主面側(
図11ではセンサ部11Aの第2主面側)に、2層の圧電フィルム121、122が積層されている。2層の圧電フィルム121、122は、伸縮に対する発生電荷の向きを逆に構成している。この2層の圧電フィルム121、122は、例えばPLLA/PDLAの2層構成であり、共押出により2層一体で製造できる。また、センサ部11Aは、シグナル電極123の他方の主面側(
図11ではセンサ部11Aの第1主面側)に、絶縁フィルム124を積層している。絶縁フィルム124は、例えばPET基材入りの両面粘着テープである。
【0059】
さらに、センサ部11Aは、圧電フィルム121におけるシグナル電極123との反対側の主面、および絶縁フィルム124におけるシグナル電極123との反対側の主面には、基準電位電極125が配置されている。具体的には、圧電フィルム121におけるシグナル電極123との反対側の主面、および絶縁フィルム124におけるシグナル電極123との反対側の主面に基準電位電極125を積層配置している。この基準電位電極125も、
図11に示すように1枚のフィルムである。センサ部11Aには、第1主面側に露出する導電性の接続パターン123a、125aが形成されている。接続パターン123aは、シグナル電極123に形成されている。接続パターン125aは、基準電位電極125に形成されている。接続パターン123a、125aは、センサ部11Aの長手方向の一方の端部(
図11における右側の端部)において、センサ部11Aの短手方向に並べて形成している。接続パターン123a、125aは、上述したセンサ部11における接続パターン112a、113aと同様である。
【0060】
センサ部11Aと、回路部12とは、
図4や、
図10に示したいずれかの構成で保持される。この場合、圧電フィルムセンサ1は、センサ部11Aの基準電位電極125に形成されている接続パターン125aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aとが電気的に接続され、且つセンサ部11Aのシグナル電極123に形成されている接続パターン123aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bとが電気的に接続される。
【0061】
この
図11に示すセンサ部11では、2層の圧電フィルム121、122の間に、シグナル電極123等の他の層が介在していないので、センサ部11Aの伸縮による圧電フィルム121の歪み量と、圧電フィルム122の歪み量と、の差を小さくできる。したがって、人間の関節曲げによる皮膚の伸縮を、皮下の動きとして検出するのを一層抑えられる。特に、共押出により2層一体で製造した圧電フィルム121、122を用いれば、2層の圧電フィルム121、122の間に接着層も介在しないので、人間の関節曲げによる皮膚の伸縮を、誤って皮下の動きとして検出するのを一層確実に抑えられる。
【0062】
また、絶縁フィルム124として、PET基材入りの粘着テープを使うと、仮にマイグレーションによってヒロックやウィスカが発生したとしても、電極間に配置されるPET基材をヒロックやウィスカがPET基材を通過し難くなり、ショート不良の発生を抑制できる。
【0063】
さらに、センサ部11Aは、回路的にみると、絶縁フィルム124が平行平板キャパシタを構成し、この平行平板キャパシタが2層の圧電フィルム121、122に並列に接続されている。また、絶縁フィルム124は、圧電フィルム121、122よりも薄く、誘電率の高い材料を選択することができる。したがって、圧電フィルム121、122に並列に接続されるキャパシタの容量を比較的大きくすることができ、ノイズの低減が図れる。特に、回路部12の処理回路201を、
図12に示す電圧検知型の回路にするとノイズの低減に効果的である。
【0064】
さらに、センサ部11Bは、
図13に示す構成であってもよい。センサ部11Bは、圧電フィルム131〜134と、シグナル電極135と、基準電位電極136と、を積層したものである。
【0065】
センサ部11Bは、シグナル電極135の一方の主面側(
図13ではセンサ部11Bの第2主面側)に、2層の圧電フィルム131、132が積層されている。2層の圧電フィルム131、132は、伸縮に対する発生電荷の向きを逆に構成している。この2層の圧電フィルム131、132は、例えばPLLA/PDLAの2層構成であり、共押出により2層一体で製造できる。また、センサ部11Bは、シグナル電極135の他方の主面側(
図11ではセンサ部11Bの第1主面側)にも、2層の圧電フィルム133、134が積層されている。この2層の圧電フィルム133、134も、伸縮に対する発生電荷の向きを逆に構成している。この2層の圧電フィルム133、134も、上述の圧電フィルム131、132と同様に、例えばPLLA/PDLAの2層構成である。
【0066】
さらに、センサ部11Bは、圧電フィルム131におけるシグナル電極135との反対側の主面、および圧電フィルム134におけるシグナル電極135との反対側の主面には、基準電位電極136が配置されている。具体的には、圧電フィルム133におけるシグナル電極135との反対側の主面、および圧電フィルム131におけるシグナル電極135との反対側の主面に基準電位電極136を積層配置している。この基準電位電極136も、
図13に示すように1枚のフィルムである。センサ部11Bには、第1主面側に露出する導電性の接続パターン135a、136aが形成されている。接続パターン135aは、シグナル電極135に形成されている。接続パターン136aは、基準電位電極136に形成されている。接続パターン135a、136aは、センサ部11Aの長手方向の一方の端部(
図13における右側の端部)において、センサ部11Bの短手方向に並べて形成している。接続パターン135a、136aは、上述したセンサ部11における接続パターン112a、113aと同様である。
【0067】
センサ部11Bと、回路部12とは、
図4や、
図9に示したいずれかの構成で保持される。この場合、圧電フィルムセンサ1は、センサ部11Bの基準電位電極136に形成されている接続パターン136aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200aとが電気的に接続され、且つセンサ部11Bのシグナル電極135に形成されている接続パターン135aと、回路基板200の第3主面に形成されている接続パターン200bとが電気的に接続される。
【0068】
この
図13に示すセンサ部11Bでは、
図11に示したセンサ部11Aに比べて、曲げに対する出力が2倍になる。
【0069】
また、
図7では、センサ部11の第2主面に両面テープを貼り付けるとしたが、
図14に示すように、センサ部11の第1主面(皮膚に接する側の反対面)に、センサ部11の外側に突出する大きさの片面テープ(片面貼りテープ)17aを設け、このセンサ部11外側に突出している部分でセンサ部11を皮膚に貼り付ける構成としてもよい。このようにすれば、皮膚に貼り付ける片面テープ17aの面積を抑えることができ、人体(皮膚)に対する負担を低減できる。
【0070】
なお、
図7に示す両面テープ17や、
図14に示す片面テープ17aは、圧電フィルムセンサ1のセンサ部11に予め貼り付けておかなくてもよい。すなわち、センサ部11を被験者の皮膚に貼り付けるときに、センサ部11に貼り付けてもよい。このようにすれば、被験者のアレルギー等を考慮した成分である粘着層の両面テープ17や、片面テープ17aを選択し使用できる。
【0071】
さらに、圧電フィルムセンサ1で、可聴音波領域の周波数の皮下の動きを検出したい場合がある。一般に、高音域の音は、
図15(A)に示すように減衰しやすいため、処理回路201のゲインの周波数特性がフラットな場合には検知できないことがある。このため、処理回路20のゲインの周波数特性を、
図15(B)に示すように必要とする周波数領域で概ね40dB/dec以上の傾きをもって高くなるようにしてもよい。例えば、処理回路20は、
図16に示すように、フィードバック抵抗R3に対して、並列にコンデンサC1を接続すればよい。コンデンサC1の容量は、必要とする周波数領域に応じて定められる。このようにすれば、圧電フィルムセンサ1は、
図15(C)に示すように高周波音成分を持つ振動の検知についても精度よく行える。
【0072】
なお、本願発明にかかる圧電フィルムセンサ1は、上述したセンサ部11、11A,11Bを皮膚に貼り付け、皮下の動きを検知する生体センサとしての用途だけでなく、センサ部11、11A,11Bを生体以外の物体に貼り付け、この物体の微小な動きや変形などを検知する用途にも使用できる。