特許第6226089号(P6226089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226089長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226089
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/00 20060101AFI20171030BHJP
   C11B 5/00 20060101ALI20171030BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C11C3/00
   C11B5/00
   A23D9/02
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-563010(P2016-563010)
(86)(22)【出願日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2016062919
(87)【国際公開番号】WO2016175169
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-90532(P2015-90532)
(32)【優先日】2015年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真晴
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真紀子
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−516466(JP,A)
【文献】 特開2002−212586(JP,A)
【文献】 特開2000−096077(JP,A)
【文献】 特開2013−203768(JP,A)
【文献】 TSIMIDOU M., et al.,Evaluation of oregano antioxidant activity in mackerel oil,Food Research International,1995年,Vol.28, No.4,p.431-433,ISSN 0963-9969, 特にp.432の'Preparation of herbs'の項、図2
【文献】 ANTOUN N., et al.,Gourmet olive oils: stability and consumer acceptability studies,Food Research International,1997年,Vol.30, No.2,p.131-136,ISSN 0963-9969, 特に、p.132'Preparation of herbs(oregano and rosemary)'の項、図1
【文献】 渡辺幸雄ら,粉末香辛料から調製された水ならびにエタノール可溶区分の抗酸化性,栄養と食糧,1974年,Vol.27, No.4,p.181-183,ISSN 0021-5376, 特に、'2.実験結果および考察'の項、表1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11C
C11B
A23D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸組成中の二重結合が5つ以上の長鎖多価不飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上である長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法であって、ローズマリーによる接触処理工程及び薬品賦活処理された活性炭による吸着処理工程を含み、ローズマリーによる接触処理工程の後に、濾過工程、濾過工程後に減圧下で行う水蒸気脱臭工程を有し、水蒸気脱臭工程において、脱臭温度が170℃以上及び脱臭温度と脱臭時間が下記数式を満たす、水分含有量が3重量%以下である、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000=100以下
【請求項2】
使用するローズマリーが、シソ科マンネンロウの葉を、乾燥して得られるもの又は乾燥して乾燥後に粉砕して得られるものである、請求項1に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項3】
油脂の脱色工程で使用される濾過機を使用した濾過工程にて、ローズマリーを濾別する、請求項2に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項4】
ローズマリーによる接触処理工程が、脱色処理工程以前若しくは脱色処理工程と同時に撹拌接触処理されるものである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項5】
ローズマリーによる接触処理工程から水蒸気脱臭工程終了まで、油脂中の水分含有量3重量%以下を維持する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項6】
水蒸気脱臭工程において、脱臭温度が180℃以上及び脱臭温度と脱臭時間が下記数式を満たす、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000=100以下
【請求項7】
脱色処理工程において、0.5重量%以上のローズマリー及び1重量%以上の活性白土を添加して処理する、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項8】
脱色処理工程において、0.5重量%以上のローズマリー、1重量%以上の活性白土及び1重量%以上の薬品賦活処理された活性炭を添加して処理する、請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項9】
使用するローズマリーが、シソ科マンネンロウの葉を、乾燥して乾燥後に粉砕して得られるローズマリーパウダーである、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項10】
薬品賦活処理された活性炭が燐酸賦活処理されたものである、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
【請求項11】
水蒸気脱臭工程後の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を用いた、下記長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験で得られる過酸化物価が14meq/kg以下である、請求項〜請求項10のいずれか1項に記載の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法。
(長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験方法)
・均一に混合した油脂50gを100mlガラス瓶に入れ密封する。
・該ガラス瓶を、40℃にて14日間保存する。
・14日間保存後に過酸化物価を分析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法に関する。より詳しくは、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を含む食品に求められる、酸化安定性の向上を実現した長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長鎖多価不飽和脂肪酸を含有する油脂類に生理的作用があることが知られるようになり、健康志向からこれらの油脂類は健康食品や飼料への添加用途としても広く利用されている。特にエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などの5または6個の二重結合を含むn−3長鎖多価不飽和脂肪酸は、血中の中性脂肪およびコレステロールの低下、関節リウマチ症状の緩和、血栓生成の予防、抗アレルギー作用等、数多くの作用が多数報告されており、多くの消費者に機能性食品として認識されるものになってきている。本明細書において、長鎖多価不飽和脂肪酸を含有する油脂を、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂と表記する。2005年には、厚生労働省よりEPAとDHAを合計で1g/日という摂取目標量(成人)が定められ、EPAとDHAを高濃度に含む油脂の利用が望まれている。かかる長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、大豆油や菜種油等の食用油と比較して酸化安定性が非常に悪く、酸素・熱・光等により容易に酸化を受け、健康への悪影響も懸念される過酸化物質を生成させる場合があるし、酸化の進行の初期段階から、魚の様な異味・異臭が生じる場合があり、実用化が著しく制限されている。
【0003】
そのため、油脂の酸化安定性を向上させる技術が検討されている。例えば、多価不飽和脂肪酸を含有する油脂に焙煎ごま油、アスコルビン酸エステル、ハーブエキスを添加し、油脂を安定化させる方法(特許文献1)や、ヤマモモ抽出物およびローズマリー抽出物等を含有する親油性酸化防止剤(特許文献2)、トコフェロール・アスコルビン酸および茶抽出物を添加する方法(特許文献3)、アスコルビン酸またはその誘導体と他の有機酸またはその誘導体を添加する方法(特許文献4)等が知られているものの、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の酸化安定性を向上させる方法としては満足できるものではなく、さらに優れた酸化防止法が望まれている。
【0004】
またローズマリーそのものは、高い抗酸化性を有することが知られており、例えば、油脂とフェノール系抗酸化剤に富む植物材料を高温で接触させて混合し、該混合は植物材料基準で10〜20重量%の水を混合物に添加して水の存在下で行ない、その後混合物を40バール以上の圧力下で圧搾することを特徴とする方法(特許文献5)が開示されているが、この様な製法によって長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を製造した場合、非常に香りが強いため添加量を制限せざるを得ない。そこで、香辛料として使用されるローズマリーパウダーを用いず、抗酸化成分を濃縮し、臭いを軽減したローズマリー抽出物が、酸化防止剤として広く利用されている。しかしながら、ローズマリー特有の臭気が軽減されているローズマリー抽出物であっても、油脂に使用すると、ローズマリー特有の臭気が感じられ使用範囲が限定される問題がある。これに対し、特許文献6には、シリカゲルで処理した魚油をローズマリー抽出物やセージ抽出物の存在下で真空水蒸気脱臭をし、パルミチン酸アスコルビン酸エステルや混合トコフェロールを添加することで、ローズマリー抽出物やセージ抽出物特有の香気の問題を除外した、酸化安定性の高い油脂の製造方法が開示されている。また、特許文献7には、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂にローズマリー抽出物を含有させた後、140℃未満で水蒸気を接触させる脱臭処理を行うことで、ローズマリー抽出物やセージ抽出物特有の香気の問題を除外し、酸化安定性の高い油脂の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−189394号公報
【特許文献2】特開2007−185138号公報
【特許文献3】特開平9-111237号公報
【特許文献4】特開平9−235584号公報
【特許文献5】特許第3927609号公報
【特許文献6】特許第4129344号公報
【特許文献7】特開2015−40297号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、特許文献1や特許文献2には、長鎖多価不飽和脂肪酸の風味向上に有効な、ローズマリー抽出物を用いた製造方法が開示されている。長鎖多価不飽和脂肪酸の酸化安定性を高める汎用性の高い技術と思われたが、食用で使用する際に重要な過酸化物価(POV)の上昇を十分に抑制することができないことがわかった。
【0007】
また、長鎖多価不飽和脂肪酸を高含有させたり、酸化安定性を向上させたりするための方法として、ローズマリー抽出物を使用して、シリカゲルで食用海産動植物油を処理したり(特許文献6)、140℃未満で水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を行うことでは(特許文献7)、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の酸化安定性を向上させる方法としては満足できるものではなく、さらに優れた酸化防止法が望まれている。また、かかる製法では、ローズマリー抽出物が使用されているが、香辛料として用いられているローズマリー(パウダー)と較べて、抽出工程が付加され、抽出溶媒を除去したり、抽出溶媒を留去したりする工程や操作が必要となるためか割高であり、安価で平易な製造方法を確立することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、通常香辛料などで使用されるローズマリーそのものを油脂と接触処理することで、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の酸化安定性が顕著に高まることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は
(1) ローズマリーによる接触処理工程を含む、水分含有量が3重量%以下である、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(2) 使用するローズマリーが、シソ科マンネンロウの葉を、乾燥して得られるものまたは乾燥して乾燥後に粉砕して得られるものである、(1)の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(3) ローズマリーによる接触処理工程の後に、濾過工程を有する、(1)または(2)の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(4) ローズマリーによる接触処理工程が、脱色処理工程以前もしくは脱色処理工程と同時に撹拌接触処理されるものであって、脱色処理工程後に濾過工程、濾過工程後に減圧下で行う水蒸気脱臭工程を含む、(1)〜(3)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(5) ローズマリーによる接触処理工程から水蒸気脱臭工程終了まで、油脂中の水分含有量3重量%以下を維持する、(1)〜(4)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(6) 水蒸気脱臭工程において、脱臭温度が170℃以上および脱臭温度と脱臭時間が下記数式を満たす、(4)または(5)の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000=100以下
(7) 脱色処理工程において、0.5重量%以上のローズマリーおよび1重量%以上の活性白土を添加して処理する、(4)〜(6)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(8) 活性炭による吸着処理工程を含む、(1)〜(7)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(9) 脱色処理工程において、0.5重量%以上のローズマリー、1重量%以上の活性白土および1重量%以上の活性炭を添加して処理する、(8)の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(10) 使用するローズマリーが、シソ科マンネンロウの葉を、乾燥して乾燥後に粉砕して得られるローズマリーパウダーである、(1)〜(9)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(11) 構成脂肪酸組成中の二重結合が5つ以上の長鎖多価不飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上である、(1)〜(10)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(12) 使用する活性炭が薬品賦活処理された活性炭である、(8)〜(11)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(13) 薬品賦活処理された活性炭が燐酸賦活処理されたものである、(12)の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(14) 水蒸気脱臭工程後の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を用いた、下記長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験で得られる過酸化物価が14meq/kg以下である、(4)〜(13)のいずれかの長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の製造方法、
(長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験方法)
・均一に混合した油脂50gを100mlガラス瓶に入れ密封する、
・該ガラス瓶を、40℃にて14日間保存する、
・14日間保存後に過酸化物価を分析する、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平易な方法で、酸化安定性が向上し、風味良好な長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂が得られる。なお本発明の製造方法で得られる長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、水蒸気脱臭工程を行い、適切な熱履歴で処理することで、製造直後の油脂の風味が良好なだけではなく、保存した後の風味や酸化安定性の指標である過酸化物価が良好な数値が得られるため、長期間にわたり、戻り臭、不快臭や健康に有害な働きをする過酸化物の発生を抑制し、健康優位性の高い長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を従来よりも安価に使用することができ、比較的少ない抗酸化物質を添加することで、さらに酸化安定性を向上することができる。
また本発明の製造方法で得られる長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、従来の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のように、空気との接触を避ける目的でカプセル化、乳化物や粉末化の必要がないため、液状で流通させることができるが、液状での利用範囲に限定することなく使用することができる。具体的には、本発明の製造方法で得られる長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を用いて、乳化物を得る、粉末状およびカプセル状に加工する等も可能であり、従来の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の利用範囲を包含する、より広い用途に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用することができるローズマリーは、シソ科の常緑低木であるマンネンロウ(Rosmarinus officinalis Linne)などを原材料とする。ローズマリーは元来香辛料として使用されるものであり、ローズマリーが有する強い芳香性をいかして肉料理の香辛料として使用されている。通常抗酸化剤として使用されているのは、ローズマリーから、抽出処理して得られるローズマリーの抽出物であって、ローズマリー抽出物は抽出溶媒や抽出液の処理方法により、水溶性または非水溶性のものが得られることが知られている。
本発明では、抽出処理する前のローズマリーを使用する。また使用するローズマリーの部位に制限はなく、全草、または、その葉、根、茎、花、果実、種子の何れを使用してもよく、何れかを混合して使用しても良い。好ましくは葉を使用する。葉を使用する場合乾燥された乾燥葉を使用することが好ましい。かかる乾燥葉であっても、乾燥葉を粉砕したものであっても使用することができる。乾燥葉を使用した場合、本発明の製造工程中に油脂と混合し、せん断されるために予め粉砕したものでなくても使用することもできる。油脂との接触効率が良好な点で、乾燥葉などを粉砕することによって得られた、ローズマリーパウダーを使用することが好ましい。
【0012】
本発明では前記したローズマリーによる接触処理工程を含む、接触処理することができればその方法に制限はなく、撹拌接触処理やカラム接触処理が例示できる。好ましくは撹拌接触処理であって、ローズマリーによる撹拌接触処理工程の後に濾過工程を有する。濾過工程は、ローズマリーを濾別することができれば、その方法に制限はないが、油脂の脱色工程で使用される濾過機を使用することができる、油脂の脱色工程で使用される濾過機としては、フィルタープレスや、リーフフィルターが例示でき、濾過時の圧力は1.0MPa以下、汎用的には、0.5MPa程度の圧力で濾過されている。試験室において小スケールで濾過する場合には、通常油脂の脱色後の濾過と同様に濾過することができ、濾紙を用いた吸引濾過する方法が例示できる。
【0013】
本発明の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の水分含有量は3重量%以下である。好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。水分含有量が3重量%を超えると、製造中に加水分解等が生じ、歩留り低下等が生じるため、好適では無い。さらに好ましくは、ローズマリーによる接触処理工程から水蒸気脱臭工程終了まで、前記油脂中の水分含有量を維持することが好ましい。
【0014】
本発明で使用することができる長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、二重結合が5つ以上、炭素数が20以上の長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。二重結合が5つ以上の脂肪酸の種類は特に限定はないが、ドコサヘキサエン酸(DHA;C22:6)、エイコサペンタエン酸(EPA;C20:5)、ドコサペンタエン酸(DPA;C22:5)が例示できる。構成脂肪酸組成中の長鎖多価不飽和脂肪酸の含有量は20質量%以上である事が好ましく、魚油、植物油脂等の各種動植物油、微生物、藻類から得られる油脂が例示できる。長鎖多価不飽和脂肪酸の含有量が20質量%より少ない場合は、コスト及び生産効率の点で好適ではない。尚、本発明の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂とその他の油脂を二種以上混合した長鎖多価不飽和脂肪酸含有調合油脂においても、本発明の効果は有効である。
【0015】
本発明において、ローズマリーを加える量は、好ましくは油脂に対して0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上である。ローズマリーを加える量が0.5重量%未満では、十分な安定性を付与する事ができない。添加量は多いほど効果があるが、得られる効果との対比で非効率であるため10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下である。10重量%を超えて加えても十分な効果が得られない場合がある。
【0016】
本発明の好ましい態様として、ローズマリーによる接触処理工程は、脱色処理工程以前若しくは脱色処理工程と同時に撹拌接触処理されるものであって、脱色処理工程後に濾過工程、濾過工程後に減圧下で行う水蒸気脱臭工程を含む。効率的に製造できる点で、ローズマリーによる接触処理工程を脱色処理工程と同時に実施することがより好ましい。
【0017】
本発明において、脱色処理工程における活性白土の添加量は、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上である。活性白土の添加量が1重量%未満では、油脂を保存した際に魚臭さやローズマリー特有の金属臭が発現する所謂戻り臭が発生するため好適ではない。添加量は多いほど効果があるが、得られる効果との対比で非効率であるため5重量%以下が好ましい。5重量%を超えて添加しても得られる品質が顕著に向上しないし、濾過工程にて活性白土を取り除いた際に、活性白土に残存した油脂分が廃棄され歩留まりが低下してしまう場合があるため好ましくない。活性白土の添加量は原料油脂の色調により適宜調節し決定されるものである。
【0018】
本発明における水蒸気脱臭工程において、水蒸気脱臭工程の熱履歴条件が次式を満たしていることがより好ましい。熱履歴は、脱臭温度と脱臭時間より次式から求められる。脱臭温度は170℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。脱臭温度が170℃未満では、油脂に魚臭さや油臭さが残存してしまう場合があるため好適ではない。また真空度は、0.8kPa以下が好ましく、より好ましくは0.6kPa以下、さらに好ましくは0.4kPa以下である。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
本発明においては、熱履歴=100以下の条件とする事が好ましく、より好ましくは50以下である。熱履歴条件が100を超えると、脱臭工程において長鎖多価不飽和脂肪酸含量が低下してしまう場合があるため好適ではない。また、水蒸気脱臭工程において添加する水蒸気の量は、油脂に対し、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましい。添加する水蒸気の量が1重量%未満では、油脂に魚臭さや油臭さが残存してしまい好適ではない。
【0019】
本発明の好ましい態様として、活性炭による吸着処理工程を含む、活性炭の添加量は油脂に対し、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。得られる効果との対比で非効率であるため4重量%以下が好ましい。4重量%を超えて添加しても戻り臭の抑制効果が向上しない場合があるため非効率であり、費用対効果の点から好ましくない。使用できる活性炭は、通常の活性炭でも良いが、薬品賦活処理された活性炭である事が好ましく、燐酸賦活処理された活性炭である事がより好ましい。薬品賦活処理された活性炭としては、おがくず、木質チップ、竹、ヤシ殻、石炭等を原料に、燐酸、塩化亜鉛、硫酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の薬品による賦活処理がなされた活性炭を用いることができる。その中でも、燐酸賦活処理した活性炭を用いると、少ない吸着剤量で、より効率的に戻り臭を抑制できる。効率的に製造できる点で、活性炭による吸着処理工程を脱色処理工程と同時に実施することがより好ましい。
【0020】
本発明の好ましい態様として、水蒸気脱臭工程後の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を用いた、下記長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験で得られる過酸化物価が14meq/kg以下であることが好ましい。より好ましくは13meq/kg以下、さらに好ましくは12meq/kg以下、最も好ましくは10meq/kg以下である。
(長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験方法)
・均一に混合した油脂50gを100mlガラス瓶に入れ密封する。
・該ガラス瓶を、40℃にて14日間保存する。
・14日間保存後に過酸化物価を分析する。
【0021】
本発明の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、トコフェロール、ヤマモモ抽出物、ブドウ種子や茶由来のポリフェノール類、およびアスコルビン酸やその誘導体、没食子酸やその誘導体などの水溶性の抗酸化物質が例示でき、かかる酸化防止剤を組み合わせて使用しても良い。好ましい酸化防止剤はアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、チャ抽出物、没食子酸、没食子酸誘導体及びレシチンから選ばれた少なくとも1種である。
【0022】
また、本発明の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂には、必要に応じて、香料、色素、シリコーン等食用油脂に使用可能な添加物を使用することができる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。例中、%および部はいずれも重量基準を意味する。
【0024】
実施例では、ローズマリーとして、シソ科の常緑低木であるマンネンロウ(Rosmarinus officinalis Linne)の乾燥葉を粉砕して得られるローズマリーパウダーを使用した。
【0025】
(長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の官能評価方法)
製造直後の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、風味の評価項目を油臭さ、魚臭さ、ローズマリー臭とし、10名のパネラ−による10段階での官能評価により行った。
すべての項目で4以上の評価となった油脂を良好と判断した。
油臭さ:数字が大きい方が油脂の劣化臭が弱く、数字が小さい方が油脂の劣化臭が強い。
魚臭さ:数字が大きい方が魚臭さが弱く、数字が小さい方が魚臭さが強い。
ローズマリー臭:数字が大きい方がローズマリー臭が弱く、数字が小さい方がローズマリー臭が強い。
【0026】
(長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の保存試験方法)
・均一に混合した油脂50gを100mlガラス瓶に入れ、密封する。
・該ガラス瓶を、40℃にて14日間保存する。
・保存後に、過酸化物価(POV)及び、風味評価を行う。
【0027】
(保存した長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂の官能評価方法)
保存試験により劣化させた長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂は、風味の評価項目を油臭さ、魚臭さ、ローズマリーの戻り臭(金属味)とし、10名のパネラ−による10段階での官能評価により行った。
すべての項目で4以上の評価となった油脂を良好と判断した。
油臭さ:数字が大きい方が油脂の劣化臭が弱く、数字が小さい方が油脂の劣化臭が強い。
魚臭さ:数字が大きい方が魚臭さが弱く、数字が小さい方が魚臭さが強い。
ローズマリーの戻り臭:数字が大きい方が金属味が弱く、数字が小さい方が金属味が強い。
【0028】
[実施例1]
脱酸鮪油(酸価=0.10、過酸化物価=5.5、ヨウ素価=184、EPA+DHA含量=28.0%)100部に対し、ローズマリーパウダー(商品名:ローズマリー(パウダー)、エスビー食品株式会社製)1部、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙(商品名:定性濾紙 No.2、アドバンテック東洋株式会社製)にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、160℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。製造直後のPOVは0.2であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0029】
[実施例2]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー1部、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、220℃、90分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、225.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0030】
[比較例1]
脱酸鮪油100部に対し、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分にて脱色処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
脱酸鮪油、脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0031】
[比較例2]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリー抽出物(商品名:RM-21Bベース、三菱化学フーズ株式会社製)0.2部、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0032】
[比較例3]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリー抽出物(商品名:RM-21Bベース、三菱化学フーズ株式会社製)0.6部、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0033】
[比較例4]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリー抽出物(商品名:RM-21Bベース、三菱化学フーズ株式会社製)0.6部、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、130℃、60分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。製造直後のPOVは0.7であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0034】
[比較例5]
脱酸鮪油100部に対し、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分にて脱色処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、精製油を得た。精製油100部に対し、ローズマリー抽出物 0.2部を加え、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
脱酸鮪油、脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0035】
[比較例6]
脱酸鮪油100部に対し、活性白土 3.0部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分にて脱色処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、精製油を得た。精製油100部に対し、ローズマリー抽出物 0.6部を加え、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
脱酸鮪油、脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0036】
【表1】
【0037】
・ローズマリーパウダーを使用した実施例では、製造直後および保存後においても良好な風味評価が得られた。
・ローズマリー抽出物を使用した、比較例2〜比較例4では、実施例よりも風味評価が劣る結果であった。
・比較例2と比較例3は、保存後の品質が著しく劣る結果であった。
・比較例4は、製造直後の風味が著しく劣る結果であった。
・比較例5と比較例6は、製造直後のローズマリー臭のため、風味が著しく劣る結果であった。
【0038】
[実施例3]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー1部、活性白土 3部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0039】
[実施例4]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー3部、活性白土 3部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.6部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0040】
[実施例5]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー5部、活性白土 3部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、1.0部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0041】
[実施例6]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー1部、活性白土 3部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、170℃、360分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0042】
[実施例7]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー1部、活性白土 1.5部、活性炭(商品名:梅蜂SKA印活性炭、太平化学産業株式会社製) 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0043】
[実施例8]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー1部、活性白土 1.5部、塩化亜鉛賦活木質活性炭(商品名:梅蜂ZM印活性炭、太平化学産業株式会社製) 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0044】
[実施例9]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー1部、活性白土 1.5部、燐酸賦活粉末木質活性炭(商品名:梅蜂FN印活性炭、太平化学産業株式会社製) 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.2部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0045】
[実施例10]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー3部、活性白土 1.5部、燐酸賦活粉末木質活性炭 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.6部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0046】
[実施例11]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー3部、活性白土 1.5部、燐酸賦活粉末木質活性炭 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、180℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し脱臭油を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.6部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
次いで、チャ抽出物(商品名:サンフェノン90S、太陽化学株式会社製)を水に加え2.0%チャ抽出物含有水溶液を作製し、70℃に加温した脱臭油100部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.02部を加えて溶解し、2.0%チャ抽出物水溶液1.0部を加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、10Torrの減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って、チャ抽出物を200ppm含有する長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、18.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0047】
[実施例12]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー3部、活性白土 1.5部、燐酸賦活粉末木質活性炭 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、190℃、180分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.6部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、72.0であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0048】
[実施例13]
脱酸鮪油100部に対し、ローズマリーパウダー3部、活性白土 1.5部、燐酸賦活粉末木質活性炭 1.5部を加え、真空度1.6kPa(12torr)、120℃、15分 脱色工程にて撹拌接触処理を行った後、濾紙にて濾別した。次いで、脱色油100部に対し、水蒸気脱臭処理を真空度0.4kPa(3torr)以下、215℃、30分、水蒸気添加量3部にて実施し、長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を得た。
ローズマリーパウダーから油脂に溶解した物質は、0.6部であった。
脱酸鮪油、ローズマリー処理・脱色工程、脱臭工程を通して、油脂中の水分含有量は0.01〜0.10%であった。
熱履歴=(脱臭温度―170℃)×(脱臭温度―170℃)×脱臭時間(分)/1000
とした場合の熱履歴条件は、60.8であった。製造直後のPOVは0であった。
実施例1と同様に長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂のEPA+DHAの含量、製造直後の風味評価、及び保存試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0049】
【表2】
【0050】
・水蒸気脱臭工程における熱履歴を適切に管理して得られた、実施例3から実施例13では、脱色油に対するEPA+DHA残存率が90%以上に向上し、製造直後、保存後の品質とも、実施例1、2よりも良好な品質が得られた。
・実施例3から実施例11にかけて、水蒸気脱臭工程の温度が170℃以上、かつ、熱履歴条件を50以下とする事で、脱酸油に対するEPA+DHAの残存率が上昇し、かつ、保存した後の風味や酸化安定性の指標である過酸化物価がより良好な数値が得られた。
・実施例7から実施例11にかけて、薬品賦活処理された活性炭、更には燐酸賦活処理された活性炭を用いる事で、保存した後の風味や酸化安定性の指標である過酸化物価が更に良好な数値が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、簡便な方法で風味良好な長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂が得られ、本発明の長鎖多価不飽和脂肪酸含有油脂を用いることで、長期間にわたり、戻り臭、不快臭や健康に有害な働きをする過酸化物質の発生を抑制し、健康優位性の高い長鎖多価不飽和脂肪酸を食品、医薬品、化粧品、ペットフード、医薬部外品などに利用することができる。