【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電流センサの一種に、磁界の大きさを電気的抵抗の変化や起電力などの電気的信号に変換して出力する磁気センサ素子を用いたものがある。
【0003】
電線を流れる電流の大きさを非接触で検出する場合、電線の中心と電流センサとの相対的な位置がずれると、測定誤差が生じるという問題がある。
【0004】
そこで、電流センサにおける位置ずれ誤差を低減する方法として、集磁コアあるいは複数の磁気センサ素子を用いることが提案されている。
【0005】
なお、位置ずれ誤差とは、電流センサと被測定電流が流れる電線との相対的な位置がずれたときに生じる測定誤差のことである。
【0006】
そして、集磁コアとは、高い透磁率を有する軟磁性金属で形成され、磁束を集める効果の高いものをいう。
【0007】
図17は、集磁コアを用いた従来の電流センサの一例を示す構成説明図である(特開2002−303642号公報)。
図17において、集磁コア1を用いる場合、ホール素子2は集磁コア1に沿った磁束を測定するため、集磁コア1内で電線3の位置がずれた場合でも、測定する磁束量がほとんど変化せず、結果として測定誤差はほとんど生じない。
【0008】
ところが、集磁コアを用いた場合には、振動による集磁コアのずれ、集磁コアの錆び、温度変化による集磁コアの特性劣化、集磁コアに起因するセンサの直線性やヒステリシス特性の悪化などにより測定精度が悪化するという問題や、集磁コアを磁気的に不飽和な状態で使用するために集磁コアのサイズを大きくする必要があることから結果としてセンサ自体のサイズが大きくなってしまうなどの問題がある。
【0009】
図18は、電線の周囲に複数のホール素子が配置された従来の電流センサの一例を示す構成説明図である(特開2007−107972号公報)。
図18において、複数のホール素子4は電線5を中心とした基板6の円周上に配置されていて、円周上で隣り合うホール素子同士は電気的に直列接続されている。
【0010】
これにより、電線5と電流センサとの相対的な位置のずれにより各ホール素子4の出力は変化するが、これらの変化はホール素子4の出力の和に生じる変化を打ち消すものであり、電線5の位置がずれた場合でも全ホール素子4からの出力の和がほとんど変化することはなく、測定誤差はほとんど生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に基づく電流センサの一実施例を示す構成説明図である。
図1において、基板7上には、
図2に示すような線対称形の磁気特性曲線CHを有する4つの磁気センサ素子8a〜8dが、所定の位置関係で取り付けられている。また、基板7には、被測定電流が流れる断面形状が円形の電線9を挿入するための切溝7aが設けられている。なお、
図1では、磁気センサ素子8a〜8dが実装されるセンサ基板11は省略している。
【0021】
基板7は、電線9に対し、基板7の平面が電線9を流れる被測定電流に対して垂直な面となるように設置されている。4つの磁気センサ素子8a〜8dは、電線9を中心にした破線で示す所定の半径を有する円Aの円周上であって磁気センサ素子8a〜8dの最大感度を示す感磁方向がその円Aの接線方向を向くとともに、円Aに内接する正方形Bの各頂点に位置するように配置されている。
【0022】
これら4つの磁気センサ素子8a〜8dには、それぞれ
図3に示すようなバイアス磁界印加手段により、矢印Ca〜Cdの方向にバイアス磁界が印加される。円Aの円周に沿って隣り合う磁気センサ素子8a〜8d同士のバイアス磁界の向きは、その円Aの円周に沿って互いに逆向きである。なお、円Aは各磁気センサ素子8の感磁方向を示し、実線で示す円Dは電線9を流れる被測定電流による磁界の発生方向を示している。
【0023】
図3は、
図1の部分拡大図である。
図3において、永久磁石10は、その磁極方向が、磁気センサ素子8の感磁方向に対して平行になるように配置されている。永久磁石10と磁気センサ素子8間の距離を非磁性体よりなるセンサ基板11で適切に調節することで、磁気センサ素子8に最適な大きさのバイアス磁界を印加できる。なお、磁気センサ素子8の両端にはそれぞれ配線パッド12、13が取り付けられている。また、楕円Eは、永久磁石10による磁束を示している。
【0024】
図4はバイアス磁界の説明図であり、(A)はバイアス磁界なしの場合を示し、(B)はバイアス磁界ありの場合を示している。バイアス磁界なしの場合の動作点が(A)に示すように磁気特性曲線CHの極大値にあるものとすると、(B)に示すようにバイアス磁界を印加することによって動作点を磁気特性曲線CH上の任意の点に移動させることができる。
【0025】
図5は、本発明に基づく電流センサの回路例図である。
図5において、
図1の円Aの円周に沿って隣り合う磁気センサ素子同士が電気的に接続され、ブリッジ回路が形成されている。
【0026】
すなわち、磁気センサ素子8aの一端は入力端子T1に接続されるとともに磁気センサ素子8bの一端に接続され、磁気センサ素子8aの他端は出力端子T3に接続されるとともに磁気センサ素子8dの他端に接続され、磁気センサ素子8bの他端は出力端子T4に接続されるとともに磁気センサ素子8cの他端に接続され、磁気センサ素子8cの一端は入力端子T2に接続されるとともに磁気センサ素子8dの一端に接続されている。入力端子T2は共通電位点に接続されている。
【0027】
図5の回路構成により、出力端子T3には磁気センサ素子8aと8dの接続点の中点電位V1が出力され、出力端子T4には磁気センサ素子8bと8cの接続点の中点電位V2が出力されることになる。
【0028】
図6は本発明に基づく電流センサの他の実施例を示す構成説明図であり、
図1の実施例に位置ずれ誤差測定に用いた座標軸を追記したものである。
【0029】
図7は位置ずれ誤差測定に用いた本発明に基づく電流センサの回路例図であり、
図5と共通する部分には同一の符号を付けている。
図7において、ブリッジ回路の出力端子T3は複数の演算増幅器から構成される計装アンプAMPの非反転入力端子に接続され、出力端子T4は計装アンプAMPの反転入力端子に接続されている。
【0030】
計装アンプAMPの出力端子は装置全体の出力端子T5に接続され、入力端子T2は磁気センサ素子8cと8dの接続点および共通電位点に接続されるとともに装置全体の出力端子T6に接続されている。
【0031】
図6および
図7の構成において、電線9に電流が流れると、4つの磁気センサ素子8a〜8dにはその電流の大きさとバイアス磁界方向に応じた磁気特性の変化が生じ、ブリッジ回路を構成する各磁気センサ素子8a〜8dにおける電圧降下の大きさが変化する。これらの電圧降下の大きさの変化に応じてブリッジ回路の各中点電位V1とV2は正負逆向きに変化し、各磁気センサ素子8a〜8dの特性がすべて等しいものとすると、ブリッジ回路の出力電圧は、1つの磁気センサ素子で測定した場合と比較して4倍になる。
【0032】
本発明に基づく電流センサと電線9との相対位置がずれた場合について検討する。電流センサと電線9との相対位置がずれたとき、各磁気センサ素子8a〜8dのうち、電線9との距離が遠くなる磁気センサ素子における磁気特性の変化は小さくなる。一方、その距離が近くなる磁気センサ素子における磁気特性の変化は大きくなる。本発明の電流センサにおいては、所定の方向にバイアス磁界が印加されていることで、電線9が基板と同一の面内のいずれの方向にずれた場合でも、ブリッジ回路の中点電位V1とV2は正負同じ方向に変化し、ブリッジ回路の出力電圧はほとんど変化しない。
【0033】
図8は、
図7の回路構成による電流センサと電線9との相対的な位置ずれ誤差の測定結果例図である。
図8において、横軸は電線9と電流センサとの相対的な位置ずれ距離を示し、縦軸は測定誤差の大きさを示している。本測定にあたっては、磁気センサ素子8a〜8dとしてナノグラニュラ膜と軟磁性薄膜からなる磁気抵抗素子を用い、隣り合う磁気センサ素子間の直線距離を23mmとし、計装アンプAMPの出力電圧を測定した。
【0034】
図8の測定結果によれば、本発明に基づく電流センサの測定誤差は、相対位置が5mmずれた場合でも1.5%以下であるが、1個の磁気センサ素子のみで測定した場合には、相対的な位置が5mmずれると測定誤差は19.8%になっている。
【0035】
このことより、相対的な位置が5mmずれた場合における測定誤差が1/13に低減されることが明らかである。すなわち、本発明に基づく電流センサは、位置ずれ誤差を低減する効果を有するものである。
【0036】
本発明に基づく電流センサに地磁気のような一様な磁界が印加された場合、4つの磁気センサ素子8a〜8dにはその磁界の大きさとバイアス磁界方向に応じた磁気特性の変化が生じ、ブリッジ回路内では各磁気センサ素子8a〜8dにおける電圧降下の大きさが変化する。それらの電圧降下の大きさの変化により、
図5中のV1とV2の各中点電位が正負同じ向きで同じ大きさで変化し、ブリッジ回路の出力電圧の変化はほとんど生じない。
【0037】
また、本発明の電流センサにおいて、周囲の温度が変化した場合、磁気センサ素子の磁気特性が変化する。その場合、すべての磁気センサ素子の磁気特性の変化は同一方向に変化し、
図5中のV1とV2の各中点電位が正負同じ向きで変化し、ブリッジ回路の出力電圧の温度変化によるオフセットはほとんど生じない。
【0038】
なお、上記実施例では、磁気センサ素子として、ナノグラニュラ膜と軟磁性膜からなる磁気抵抗素子を用いる例を説明したが、これに限るものではなく、磁界の印加に対して電気的抵抗が変化する異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)などの磁気抵抗素子や、磁界の印加に対して電気的インピーダンスが変化する軟磁性材料により構成されるアモルファスワイヤあるいは薄膜からなる磁気インピーダンス素子などを用いることができる。
【0039】
また、上記実施例では、永久磁石として、サマリウムとコバルトを主成分とするサマリウム・コバルト磁石を用いる例を説明したが、ネオジムと鉄とホウ素を主成分とするネオジム磁石や、酸化鉄を主成分とするフェライト磁石、アルミニウムとニッケルとコバルトと鉄を主成分とするアルニコ磁石、鉄とクロムとコバルトを主成分とする磁石などを用いてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、磁気センサ素子8にバイアス磁界を印加するのにあたり、永久磁石10で印加する方法を説明したが、磁気センサ素子の感磁方向に対して所定の大きさのバイアス磁界が印加されればよく、永久磁石の位置や個数については実施例に限るものではない。
【0041】
図3の実施例では、必要なバイアス磁界強度が20Oe程度であったため、永久磁石10を非磁性のセンサ基板11に直付けしたが、数Oe程度の低バイアス磁界を印加する場合には、
図9に示すように軟磁性材で構成された取付部材14を介して非磁性のセンサ基板11に取り付ければよい。
図9の実施例では、永久磁石10の両磁極面の少なくとも一部を取付部材14で覆うことにより両磁極面を連結した状態でバイアス磁界を印加する。
【0042】
図10も本発明の他の実施例を示す構成説明図である。(A)〜(C)は非磁性スペーサを設けない構成であって、(A)は上面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。(D)〜(F)は非磁性スペーサを設けた構成を示すもので、(D)は上面図、(E)は側面図、(F)は底面図である。
【0043】
図10(B)において、非磁性材料よりなるセンサ基板11の一方の面(上面)には感磁素子8がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置されていて、その両端には配線パッド12、13が設けられている。他方の面(下面)にはコの字形に成形された軟磁性構造体14の連結部14aが固着されていて、軟磁性構造体14の開口部14bにはバルク磁石10の両磁極の磁界方向が感磁方向Aに対して同一で平行な状態になるようにバルク磁石10の両磁極面の一部が嵌め合わされている。
【0044】
図10(E)において、センサ基板11と軟磁性構造体14の連結部14aとの間には非磁性材料よりなるスペーサ15が設けられている。
【0045】
ここで、感磁素子8は、印加磁界に対する出力特性が線対称となる特性を持つものとする。バルク磁石10は感磁素子8に対してバイアス磁界を印加するように機能し、軟磁性構造体14はバルク磁石10の両磁極面の少なくとも一部を覆うことによりバルク磁石10の両磁極面を連結するように機能する。
【0046】
図11も本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
図11(B)において、非磁性材料よりなるセンサ基板11の一方の面(上面)には感磁素子8がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置され、その両端には配線パッド12、13が設けられている。他方の面(下面)には、バルク磁石10の両磁極の磁界方向が感磁方向Aに対して同一で平行な状態を維持するように
図11(B)の状態から軟磁性構造体14を90°回転させた状態で、コの字形に成形された軟磁性構造体14の連結部に隣接する一方の側面部が固着されていて、軟磁性構造体14の開口部にはバルク磁石10の両磁極面の一部が嵌め合わされている。
【0047】
図11(E)において、センサ基板11と軟磁性構造体14の連結部との間には非磁性材料よりなるスペーサ15が設けられている。
【0048】
図12も本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
図12(B)において、非磁性材料よりなるセンサ基板11の一方の面(上面)には感磁素子8がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置されていて、その両端には配線パッド12、13が設けられている。他方の面(下面)には、バルク磁石10の両磁極が感磁方向Aに対して同一の磁界方向で平行な状態を維持するように
図12(B)の状態から軟磁性構造体14を180°回転させた状態でバルク磁石10の端面が固着され、磁性構造体14の連結部は底面として露出している。
【0049】
図12(E)において、センサ基板11と軟磁性構造体14の連結部との間には非磁性材料よりなるスペーサ15が設けられている。
【0050】
図13も本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
図13(B)において、非磁性材料よりなるセンサ基板11の一方の面(上面)には感磁素子8がその磁極方向が感磁方向Aに対して平行になるように配置され、その両端には配線パッド12、13が設けられている。他方の面(下面)には、バルク磁石10の両磁極の磁界方向が感磁方向Aに対して直交するように、コの字形に成形された開口部にバルク磁石10の両磁極面の一部を嵌め合わせた軟磁性構造体14が、
図13(B)の状態から反時計方向に90°回転させた状態で配置されている。
【0051】
これら
図10から
図13の構成によれば、バルク磁石10と軟磁性構造体14の配置方法が異なるため印加磁界強度はそれぞれ異なるものの、バルク磁石10単体を用いた際の磁界と比較して弱められたバイアス磁界が印加されることになる。
【0052】
図14は、非磁性スペーサ15の効果を確認するための磁気検出装置の構成説明図である。なお、感磁素子8としてナノグラニュラ膜と軟磁性薄膜からなるトンネル磁気抵抗素子を用い、非磁性スペーサ15として厚さ0.5mmの石英板を用いている。また感磁素子8が形成されるセンサ基板11の厚さも0.5mmである。
【0053】
図15も本発明の他の実施例を示す構成説明図であって、
図1の電流センサの基板7を切溝7aの長手方向に沿って短縮したものであり、
図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
図15において、基板7上には、4つの磁気センサ素子8a〜8dが、被測定電流が流れる電線9を中心とした円周上であってその感磁方向がその円の接線方向を向くとともに、切溝7aの長手方向を短辺とし、電線9を中心とする円に内接する長方形の各頂点に配置されている。バイアス磁界の印加や検出回路などについては、
図1と同じである。
【0054】
図15の構成によれば、磁気センサ素子8a〜8dの配置を変更することで基板長さLを
図1よりも短くでき、結果として、電流センサを小型化できる。これにより、分電盤内などの電流センサの設置スペースが小さい場所での電流測定が容易になる。
【0055】
図16も本発明の他の実施例を示す構成説明図であり、電線9の断面形状が矩形のバスバーの例を示している。
図16において、基板7は、被測定電流に対して垂直な面とその基板面とが平行になるように設置されている。基板7上には、4つの磁気センサ素子8a〜8dが、被測定電流が流れる電線9の周囲に楕円状で、その感磁方向がその楕円の接線方向を向くとともに、その楕円に内接する長方形の各頂点に位置するように配置されている。楕円の円周に沿って隣り合う磁気センサ素子同士のバイアス磁界の向きは、その楕円の円周に沿って互いに逆向きに配置されている。なお、バイアス磁界の印加方法および検出回路は、
図1の実施例と同じである。
【0056】
バスバーに流れる電流を測定する場合、発生する磁界は楕円状を描く。そのため、磁気センサ素子8a〜8dを
図1で示したように円形に配置した状態では、感磁方向が発生磁界の方向に接しないため、電流の検出感度が小さくなるという問題がある。そこで、
図16に示すように磁気センサ素子の配置を楕円状に変更することで、バスバーから生じる磁界を感度よく測定できる。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、低消費電力で高感度特性を有し、小型かつ簡素な構造で、位置ずれ誤差を低減できるとともに比較的安価な磁気センサ素子を用いた電流センサが実現できる。