(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光走査装置は、前記光拡散素子からの前記コヒーレント光が照射され当該コヒーレント光の光路を変える照射面部と、前記照射面部の配置を調整する走査駆動部と、を有し、
前記光拡散素子による前記コヒーレント光の拡散角度は、前記照射面部を基準とした前記要素照明領域の角度よりも小さい請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
前記複数のコヒーレント光源のそれぞれに対応するように設けられる複数のコリメート光学系であって、対応の前記コヒーレント光源からの前記コヒーレント光を平行化する複数のコリメート光学系を更に備え、
前記光学ガイドユニットは、前記複数のコヒーレント光源から発せられて前記複数のコリメート光学系を通過した後の相互に異なる波長を有する前記コヒーレント光を、前記光拡散素子に導く請求項16又は17に記載の照明装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにホログラム素子などの光学素子をレーザー光源と組み合わせて使うことで、所望の領域に対してレーザー光に代表されるコヒーレント光を照射することができる。上述のコヒーレント光を使った照明装置は様々な分野の装置に応用可能であり、例えば、車両用ヘッドライト等に好適に適用できる。
【0006】
その一方で、照明領域を多数の要素照明領域に細分化して、照明領域をより緻密に照明したり、より高密度に配置される要素照明領域によって照明領域の一部又は全体を照明したいという要望がある。しかしながら、ホログラム素子とレーザー光源とを組み合わせたシステムでは、一般的に、要素照明領域の数が増大するに従って、ホログラム素子の数が増えて構成が大きくなってしまう。そのため、ホログラムをはじめとした光拡散素子の数に頼らない構成の照明装置により、緻密に配置される要素照明領域に対してコヒーレント光を安全に照射可能なシステムが好ましい。
【0007】
なお、コヒーレント光を放出可能なレーザー光源は、ランプ光源やLED(Light
Emitting Diode)と比べて微小な発光面積で強力なエネルギーを持つレーザー光を放射可能であり、配光を細かく制御できるとともに光を遠方まで届けることができるという利点がある。しかしながら、発光面積(光束の断面積)と放射角(立体角)の積(エタンデュ)が非常に小さいレーザー光源からのコヒーレント光は、光パワー密度が局所的に大きくなる可能性を持っている。そのようなコヒーレント光を、人間が直視する可能性がある車両用ヘッドライト等の照明装置に応用する際には、安全性を確保する必要がある。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、コヒーレント光を使って所望の領域を安全に照明可能な照明装置を簡素な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、コヒーレント光を発するコヒーレント光源と、コヒーレント光源からのコヒーレント光を拡散する光拡散素子と、光拡散素子からのコヒーレント光を照明領域において走査させる光走査装置であって、照明領域の一部領域を構成する要素照明領域にコヒーレント光を導く光走査装置と、を備える照明装置に関する。
【0010】
本態様によれば、簡素な構成の照明装置により、コヒーレント光を使って所望の要素照明領域を安全に照明することができる。
【0011】
照明装置は、コヒーレント光の光拡散素子への入射タイミング、または照明領域の照明タイミングを制御するコントローラを備えてもよい。
【0012】
照明装置は、光走査装置によるコヒーレント光の走査に応じて、コヒーレント光の発光タイミングを制御するタイミング制御部を備えてもよい。
【0013】
光走査装置は、光拡散素子からのコヒーレント光が照射され当該コヒーレント光の光路を変える照射面部と、照射面部の配置を調整する走査駆動部と、を有し、光拡散素子によるコヒーレント光の拡散角度は、照射面部を基準とした要素照明領域の角度よりも小さくてもよい。
【0014】
本態様によれば、「光拡散素子によるコヒーレント光の拡散角度」が「照射面部を基準とした要素照明領域の角度」に応じた適切な範囲に含まれるように規定される。
【0015】
光拡散素子によるコヒーレント光の拡散角度は、0.05°より大きく2°より小さくてもよい。
【0016】
本態様によれば、光拡散素子によるコヒーレント光の拡散を適度な範囲に抑えつつ、広がりを持つ要素照明領域を適切に照明することが可能である。したがって、光拡散素子によって増大したコヒーレント光の拡散角度を低減するための光学素子の設置を省略することが可能であり、照明装置を簡素且つコンパクトに構成できる。
【0017】
光走査装置の照射面部を基準とした要素照明領域の角度は、0.1°より大きく5°より小さくてもよい。
【0018】
本態様によれば、光拡散素子によって適度な範囲に拡散が抑えられたコヒーレント光により、要素照明領域を適切に照射することが可能である。
【0019】
光走査装置は、光拡散素子からのコヒーレント光の結像位置に基づく位置に配置されてもよい。
【0020】
光走査装置は、光拡散素子からのコヒーレント光の結像位置に一致する位置に配置されてもよいし、当該結像位置の近傍に配置されてもよい。光拡散素子からのコヒーレント光の結像位置に一致する位置に光走査装置が配置される場合、光走査装置の位置に光拡散素子が仮想的に配置されていると考えることも可能である。
【0021】
光拡散素子は、ホログラムであってもよい。
【0022】
光拡散素子は、マイクロレンズアレイであってもよい。
【0023】
本態様によれば、光拡散素子におけるコヒーレント光の拡散を適度な範囲に抑えることが容易である。
【0024】
照明装置は、光拡散素子と光走査装置との間に配置されるリレー光学系を更に備え、光拡散素子からのコヒーレント光は、リレー光学系を介して光走査装置に導かれてもよい。
【0025】
本態様によれば、リレー光学系によって光走査装置の配置位置及びコヒーレント光の照射エリアをコントロールでき、上述の照明装置を様々なタイプの光走査装置に対して柔軟に適用できる。
【0026】
照明装置は、コヒーレント光源と光拡散素子との間に配置され、コヒーレント光源からのコヒーレント光の径を拡大するビームエクスパンダーを更に備えてもよい。
【0027】
本態様によれば、ビームエクスパンダーによって光拡散素子に対するコヒーレント光の入光エリアを最適化できる。
【0028】
照明装置は、ビームエクスパンダーと光拡散素子との間に配置され、ビームエクスパンダーからのコヒーレント光を平行化するコリメート光学系を更に備えてもよい。
【0029】
本態様によれば、光拡散素子によるコヒーレント光の拡散を容易に適度な範囲に抑えることができる。
【0030】
相互に異なる波長を有するコヒーレント光を発する複数のコヒーレント光源が設けられ、複数のコヒーレント光源のそれぞれに対応するように設けられる複数の光拡散素子であって、対応のコヒーレント光源からのコヒーレント光を拡散する複数の光拡散素子が設けられ、照明装置は、複数の光拡散素子からの相互に異なる波長を有するコヒーレント光を光走査装置に導く光学ガイドユニットを更に備えてもよい。
【0031】
光学ガイドユニットは、複数の光拡散素子のうちの1つの光拡散素子と光走査装置との間に設置される第1光学ガイド体と、複数の光拡散素子のうちの他の光拡散素子からのコヒーレント光を第1光学ガイド体に導く第2光学ガイド体と、を含み、第1光学ガイド体は、1つの光拡散素子からのコヒーレント光及び他の光拡散素子からのコヒーレント光を光走査装置に導いてもよい。
【0032】
相互に異なる波長を有するコヒーレント光を発する複数のコヒーレント光源が設けられ、照明装置は、複数のコヒーレント光源からの相互に異なる波長を有するコヒーレント光を光拡散素子に導く光学ガイドユニットを更に備えてもよい。
【0033】
光学ガイドユニットは、複数のコヒーレント光源のうちの1つのコヒーレント光源と光拡散素子との間に設置される第1光学ガイド体と、複数のコヒーレント光源のうちの他のコヒーレント光源からのコヒーレント光を第1光学ガイド体に導く第2光学ガイド体と、を含み、第1光学ガイド体は、1つのコヒーレント光源からのコヒーレント光及び他のコヒーレント光源からのコヒーレント光を光拡散素子に導いてもよい。
【0034】
照明装置は、複数のコヒーレント光源のそれぞれに対応するように設けられる複数のコリメート光学系であって、対応のコヒーレント光源からのコヒーレント光を平行化する複数のコリメート光学系を更に備え、光学ガイドユニットは、複数のコヒーレント光源から発せられて複数のコリメート光学系を通過した後の相互に異なる波長を有するコヒーレント光を、光拡散素子に導いてもよい。
【0035】
照明装置は、相互に異なる波長を有するコヒーレント光を平行化するコリメート光学系を更に備え、光学ガイドユニットは、複数のコヒーレント光源からの相互に異なる波長を有するコヒーレント光を、コリメート光学系に向けて出射して光拡散素子に導いてもよい。
【0036】
照明装置は、コヒーレント光の径を拡大するビームエクスパンダーを更に備え、光学ガイドユニットは、複数のコヒーレント光源からの相互に異なる波長を有するコヒーレント光を、ビームエクスパンダー及びコリメート光学系を介して光拡散素子に導いてもよい。
【0037】
本発明の他の態様は、コヒーレント光を発するコヒーレント光源と、コヒーレント光源からのコヒーレント光の進行方向を変える光走査装置と、光走査装置からのコヒーレント光を拡散する光拡散素子と、を備え、光走査装置は、光拡散素子を通過したコヒーレント光を照明領域において走査させ、照明領域の一部領域を構成する要素照明領域にコヒーレント光を導く照明装置に関する。
【0038】
光走査装置によって進行方向が変えられるコヒーレント光は、相互に異なる波長を有する光成分を含み、光走査装置と光拡散素子との間には分光ユニットが設けられており、光走査装置からのコヒーレント光は、分光ユニットを介して光拡散素子に入射し、分光ユニットは、光走査装置からのコヒーレント光を分光して相互に異なる波長を有する複数の光成分に分離し、当該複数の光成分を光拡散素子に向けて出射してもよい。
【0039】
分光ユニットは、第1の波長域の光成分を透過して光拡散素子に導くとともに、他の波長域の光成分を反射する第1分光ガイド体と、第1分光ガイド体によって反射された他の波長域の光成分を光拡散素子に導く第2分光ガイド体と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、照明装置を簡素に構成することができる。また、コヒーレント光を使って所望の領域を安全に照明することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0043】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待しうる程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0044】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。
【0045】
本実施形態に係る照明装置1では、レーザー光源11、ビームエクスパンダー12、コリメート光学系13、光拡散素子14、リレー光学系18及び光走査装置21が順次配置される。
【0046】
レーザー光源11は、レーザー光、すなわち、コヒーレント光Lを発する光源であり、典型的には半導体レーザー光源をレーザー光源11として用いることができる。レーザー光源11を構成する光源の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。複数の光源によってレーザー光源11が構成される場合、当該複数の光源から発せられるレーザー光Lの波長域は、互いに同じであってもよいし、互いに相違してもよい。レーザー光源11から発せられるレーザー光Lの発光強度を高めるためには、複数の光源から発せられるレーザー光Lの波長域が重複していることが好ましい。レーザー光源11を構成する複数の光源から発せられるレーザー光Lの波長域がそれぞれ相違する場合、複数の光源は、互いに独立して設けられてもよいし、共通の基板上に並べられて光源モジュールを形成してもよい。例えばレーザー光源11を構成する複数の光源が赤色波長域、緑色波長域及び青色波長域のレーザー光Lを発光可能な場合には、これらの3種類のレーザー光Lを重ね合わせることで、白色の照明光を生成することも可能である。
【0047】
なお、レーザー光源11は、レーザー光の発光をコントロールする発光制御部(図示省略)を含んでもよい。当該発光制御部は後述の発光タイミング制御部25によって制御される。発光制御部は、例えば、発光波長域がそれぞれ相違する複数のレーザー光の発光タイミングを個別独立に制御してもよい。すなわち、発光波長域がそれぞれ相違する複数のレーザー光に対応して複数の光源が設けられている場合、発光制御部は、複数の光源からレーザー光を発光させる発光タイミングを、光源毎に制御できる。したがってレーザー光源11が赤緑青の3つのレーザー光を発光可能である場合、各レーザー光の発光タイミングを制御することで、赤緑青のうち任意の色の照明光又は赤緑青のうち任意の2色以上の色を混ぜ合わせた色の照明光を生成可能となる。また発光制御部は、各光源におけるレーザー光の発光強度を制御してもよく、各光源から発光強度の強いレーザー光や弱いレーザー光を発光させることもできる。
【0048】
ビームエクスパンダー12は、レーザー光源11と光拡散素子14との間、本例ではレーザー光源11とコリメート光学系13との間に配置され、レーザー光源11からのレーザー光Lの径を拡大する。またコリメート光学系13は、ビームエクスパンダー12と光拡散素子14との間に配置され、ビームエクスパンダー12からの光を平行化(コリメート)する。このように、レーザー光源11から発せられた小さな径を有するレーザー光Lは、ビームエクスパンダー12及びコリメート光学系13によって拡径されて平行光に整えられ、後段に設けられる光拡散素子14の入光部のサイズに最適化されて光拡散素子14に入射する。なお図示及び理解を容易にするため、
図1では、コリメート光学系13〜光走査装置21におけるレーザー光Lの図示を省略する。
【0049】
光拡散素子14は複数の単位拡散要素15の集合によって構成され、レーザー光源11からのレーザー光Lを拡散する。後述のように、本実施形態において光拡散素子14は比較的緩やかな角度でレーザー光Lを拡散させることができる指向性の高い光学素子であることが好ましい。そのような光拡散素子14は典型的にはマイクロレンズアレイによって構成可能であり、各単位拡散要素15はマイクロレンズアレイを構成する個々のマイクロレンズによって構成可能である。また、光拡散素子14は、ホログラム記録媒体を用いてもよい。具体的には、ホログラム記録媒体は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)や、フーリエ変換ホログラムが挙げられる。さらに、ホログラム記録媒体は、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム記録媒体でもよいし、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラム記録媒体でもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体でもよい。
【0050】
なお、光拡散素子14の詳細な構成及び作用については、後述する。
【0051】
リレー光学系18は、光拡散素子14と光走査装置21との間に配置され、本実施形態では第1リレーレンズ16及び第2リレーレンズ17を含む。光拡散素子14からのレーザー光Lは、リレー光学系18を介して光走査装置21に導かれ、光走査装置21の照射面部19上で結像される。したがって、本実施形態では、光拡散素子14に相当する像、すなわち、仮想マイクロレンズアレイ31が光走査装置21の照射面部19に結像される。光走査装置21の照射面部19上に形成されるそのような仮想マイクロレンズアレイ31を仮想的な光源として扱うことも可能であり、当該仮想マイクロレンズアレイ31からのレーザー光Lによって、
図3に示すように、照明領域40を構成する要素照明領域41が照射されると考えてもよい。
【0052】
リレー光学系18の具体的な構成は特に限定されないが、リレー光学系18を構成する光学素子群の光学性能、すなわち、第1リレーレンズ16及び第2リレーレンズ17の焦点距離を調整することで、等倍光学系、拡大光学系或いは縮小光学系としてリレー光学系18を機能させることができる。例えば、同じ焦点距離を持った2枚のレンズ、第1リレーレンズ16及び第2リレーレンズ17によってリレー光学系18を構成することで、リレー光学系18の光学倍率を等倍(1倍)にすることも可能である。一方、焦点距離の異なる2枚のレンズ、第1リレーレンズ16及び第2リレーレンズ17によってリレー光学系18を構成することで、レンズ同士の焦点距離の比に応じた光学倍率(拡大又は縮小)をリレー光学系18に持たせることも可能である。以上のように、リレー光学系18をアフォ―カルリレー光学系とすることにより、両側テレセントリックとなり、射出側での像高さを一定とすることができる。これにより、遠方視野での照明領域については、光拡散素子14上の照射面積の影響が極めて小さくなるため、非常に高精細な照明を行うことが可能となる。なおリレー光学系18が縮小光学系を構成する場合には、レーザー光Lの光走査装置21からの拡散角度は相対的に大きくなり、リレー光学系18が拡大光学系を構成する場合には、レーザー光Lの光走査装置21からの拡散角度は相対的に小さくなる。
【0053】
本実施形態では、後述のように、光拡散素子14からのレーザー光Lを光走査装置21の照射面部19に照射することで照明領域40を構成する要素照明領域41がレーザー光Lにより照明される。したがって、光拡散素子14からのレーザー光Lの「光走査装置21の照射面部19における照射範囲(照射面積)」をリレー光学系18によって調整することで、照射面部19上の適切な範囲(面積)にレーザー光Lが照射される。
【0054】
光走査装置21は、光拡散素子14からのレーザー光Lが照射される照射面部19と、照射面部19の配置を調整する走査駆動部20とを有している。
図3に示すように、光拡散素子14からのレーザー光Lを照明領域40において走査させ、照明領域の一部領域を構成する要素照明領域41にレーザー光Lを導く。すなわち、照射面部19は、照射されるレーザー光Lの光路を変えて、照明領域40を構成する要素照明領域41にレーザー光Lを導く。走査駆動部20はコントローラ22に接続され、コントローラ22の制御下で、照射面部19の向きを調整することでレーザー光Lによって照射される照明領域40内の要素照明領域41を変えられる。照射面部19は典型的にはミラーによって構成され、例えばポリゴンミラー、2軸ガルバノミラー、共振ミラーなどのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、或いは数十ミリメートル(mm)の径の反射面を有する大口径型の2軸共振ミラー等が挙げられる。
【0055】
また、上記のように、ミラーを持った光走査装置の他に、レンズ等のレーザー光を透過させる部材を振動させてレーザー光を走査させてもよい。具体的には、フレネルレンズ等が挙げられる。フレネルレンズに入射したレーザー光はフレネルレンズを透過して、照射領域内を走査する。なお、フレネルレンズを用いた光走査装置の場合、レーザー光の出射面を照射面部19とすることができる。
【0056】
光走査装置21、特に照射面部19は、光拡散素子14からのレーザー光Lの結像位置に基づく位置に配置される。本実施形態では上述のように、光拡散素子14の単位拡散要素15から発せられたレーザー光Lは、リレー光学系18を介して光走査装置21の照射面部19に照射される。したがって本実施形態では、光拡散素子14の各単位拡散要素15の光学性能(焦点距離)及びリレー光学系18の光学性能(焦点距離)に応じて決まる結像位置に基づいて、光走査装置21の配置位置が定まる。なお、リレー光学系18が設けられない場合には、光拡散素子14の各単位拡散要素15の光学性能(焦点距離)に応じて決まる結像位置に基づいて、光走査装置21の照射面部19の配置位置を定めることが好ましい。
【0057】
なお、ここでいう「光拡散素子14からのレーザー光Lの結像位置に基づく位置」は、典型的には結像位置と一致する位置を指すが、必ずしも結像位置と厳密に一致している必要はない。結像性能に対する影響を許容可能な範囲、例えば「光拡散素子14からのレーザー光Lの結像位置」の近傍範囲に、光走査装置21の照射面部19が配置されてもよい。
【0058】
コントローラ22は、レーザー光源11及び光走査装置21、特に光走査装置21の走査駆動部20に接続され、レーザー光源11からのレーザー光Lの発光のオン−オフ制御及び光走査装置21の照射面部19によるレーザー光Lの走査の制御を行う。なお、レーザー光源11を発光させるか否かは、上記のレーザー光源11の発光のオン−オフ制御の他に、レーザー光源11と光拡散素子14との間に不図示の光シャッタ部を設けて、この光シャッタ部でレーザー光の通過/遮断を切り替えてもよい。したがって、コントローラ22は、レーザー光の光拡散素子14への入射タイミング、または照明領域の照明タイミングを制御する。
【0059】
図2は、コントローラ22の機能構成例を示すブロック図である。本例のコントローラ22は、レーザー光源11を制御する発光タイミング制御部25と、光走査装置21の走査駆動部20を制御する光走査制御部26とを含む。
【0060】
特に本実施形態の発光タイミング制御部25は、光走査制御部26と協働し、光走査装置21によるレーザー光Lの走査に応じて、レーザー光Lの発光タイミングを制御する。これにより、
図3に示すように、照明領域40のうちの一部領域のみを、選択的にレーザー光Lによって照明したり、照明しなかったりすることができる。
【0061】
図3は、光走査装置21によってガイドされるレーザー光Lの照明領域40を説明するための概念図である。
【0062】
本実施形態では、光走査装置21によってガイドされるレーザー光Lによって照明領域40の一部領域を構成する要素照明領域41が照射される。すなわち、瞬間的には、照明領域40のうちの単一の要素照明領域41のみが光走査装置21からのレーザー光Lによって照明される。照明領域40の全域にわたって照明を行う場合、光走査装置21によってレーザー光Lが照明領域40内で高速に走査される。光走査装置21によるレーザー光Lの走査方式は特に限定されず、例えば、
図3の符号「S」のように、ラスタースキャン方式であってもよいし、リサージュスキャン方式やベクタースキャン方式であってもよい。
【0063】
なお、照明領域40における各要素照明領域41の区画方式は特に限定されない。光走査装置21からのレーザー光Lによって瞬間的に照明可能な範囲が要素照明領域41として定められる。そのため各要素照明領域41は、コントローラ22によって制御されるレーザー光源11からのレーザー光Lの発光タイミング及び光走査装置21によるレーザー光Lの走査位置に応じて定められる。したがって、例えば、
図3に示すように、要素照明領域41同士が相互に重ならないように各要素照明領域41が設定されてもよいし、要素照明領域41同士が相互に重なるように各要素照明領域41が設定されてもよいし、相互に重なる要素照明領域41と相互に重ならない要素照明領域41とが照明領域40において混在してもよい。
【0064】
このように光走査装置21からのレーザー光Lによって照らされる要素照明領域41は、レーザー光Lの拡散角度に応じて、光走査装置21から離れるに従って徐々に大きく広がる。そのため照明装置1によって照明される照明領域を構成する各要素照明領域41は、光走査装置21から相対的に近い位置(ニアフィールド)よりも相対的に遠い位置(ファーフィールド)の方が広い領域となる。したがって要素照明領域の大きさは、要素照明領域の実際の寸法で表現されるよりも、角度空間における角度分布で表現された方が便利なことが多い。本明細書における「照明領域」という用語は、実際のレーザー光Lによる被照射面積及び照明範囲に加え、角度空間における照明領域の角度範囲も包含しうる。
【0065】
次に、
図1に示す光拡散素子14の詳細な構成及び作用について説明する。
【0066】
光拡散素子14により拡散されて光拡散素子14から出射されるレーザー光Lに関し、光拡散素子14を構成する単位拡散要素15の各々は仮想的な光源としての役割を果たす。すなわち、光拡散素子14から出射されるレーザー光Lは、仮想的な複数の光源から出射されるレーザー光Lとして考えることも可能である。
【0067】
一般に、照明領域(要素照明領域)において要求されるレーザー光Lの照射強度が同じであれば、複数光源から発せられるレーザー光Lの方が単一点光源から発せられるレーザー光Lよりも各光源の光パワー密度を下げることができ、安全性が高い。すなわち、レーザー光L全体の照射強度が同じであれば、単一点光源から発せられるレーザー光Lを人間の目で直視する場合よりも、複数光源から発せられるレーザー光Lを人間の目で直視する場合の方が、光源像を網膜に結像させたときの、人間の目に対する悪影響の程度は小さい。したがって、本実施形態のようにレーザー光源11の後段に複数の単位拡散要素15を含む光拡散素子14を設けることで、光拡散素子14を通過したレーザー光Lを使って照明領域を構成する要素照明領域41を安全に照明できる。
【0068】
なお、光学系における光の特性としてエタンデュ(Etendue)の法則が一般に成り立つ。このエタンデュは、光束の断面積(発光面積)と拡散光の立体角(放射角)との積が一定値に保存されることを定め、光の面積及び角度がどのような広がりを持つかを示す。本実施形態のようにレーザー光Lの光路上に光拡散素子14が配置される場合、レーザー光Lの進行方向に関して光拡散素子14よりも下流側に関し、エタンデュの法則は、光拡散素子14によって形成される「見掛け上の光源(Apparent Light Source)」を基準に考えることができる。
【0069】
そして、光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度は、要素照明領域41の角度空間範囲、すなわち、光走査装置21の照射面部19を基準とした要素照明領域41の角度よりも小さくなる。
【0070】
上述のように、安全上は光源の面積が大きいほど好ましいが、大きな光源面積から発せられるレーザー光Lを使った照明において要素照明領域41の緻密化を進めるには、レーザー光Lの光束の断面積を絞る必要がある。しかしながら、エタンデュの法則下では、レーザー光Lの光束の断面積を小さくすると、レーザー光Lの拡散角度が大きくなってしまい、適切な光強度で広範囲を照明することが難しくなる。すなわち、レーザー光Lの拡散角度が大きくなるほど、限られた範囲の要素照明領域41を照明するために必要とされるレーザー光Lの拡散角度を調整する光学機構が巨大化及び複雑化する傾向がある。また、光走査装置21によって導かれたレーザー光Lの進行方向に関し、適切な光強度で広範囲を照明するには、見掛け上の光源を形成する光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度が小さいことが好ましい。したがって、限られたある大きさの範囲の要素照明領域41を適切な光強度で広範囲にわたって照明するには、光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度は、適度な角度範囲に含まれることが好ましく、そのような適度な角度範囲は要素照明領域41の角度範囲に応じて決められる。
【0071】
具体的には、光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度は、0.05°より大きく2°より小さいことが好ましい。ここで、「本実施形態の光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度」は、光拡散素子14を構成する個々の単位拡散要素15によるレーザー光Lの拡散角度によって定まり、各単位拡散要素15は0.05°より大きく2°より小さい拡散角度を有することが好ましい。また、各要素照明領域41の照射面部19を基準とした光走査装置21の角度は、0.1°より大きく5°より小さいことが好ましい。これらの範囲に光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度及び要素照明領域41の角度範囲が含まれる場合に、要素照明領域41を適切な光強度で広範囲にわたって照明することができる。
【0072】
なお、「光拡散素子14によるレーザー光Lの拡散角度」は、レーザー光Lを光拡散素子14に照射して計測される値であり、平行光のレーザー光Lが光拡散素子14によって拡散される角度によって表される。また、「光走査装置21の照射面部19を基準とした要素照明領域41の角度(要素照明領域41の角度範囲)」は、光走査装置21の照射面部19の代表位置と要素照明領域41の代表位置とを結ぶラインによって形成される角度であり、例えば照射面部19上の1又は2以上の代表位置と要素照明領域41の2以上の代表位置とを結ぶ複数のラインによって形成される角度で表現可能である。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の照明装置1によれば、所定範囲の光拡散角度を有する光拡散素子14及び照明領域40においてレーザー光Lを走査させるスキャン光走査装置21を介し、レーザー光Lによる要素照明領域41の照明が行われる。これにより、レーザー光Lを使って照明領域40中の要素照明領域41を安全に照明可能な照明装置1を実現できる。さらに、複雑で高価な装置を用いることなく簡素な構成の照明装置とすることができる。
【0074】
<第1変形例>
図4は、
図1に示す照明装置1の第1変形例に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本変形例では、リレー光学系18の第2リレーレンズ17と光走査装置21の特に照射面部19との間に折り返しミラー45が設けられている。他の構成は、
図1に示す上述の照明装置1と同様である。
【0075】
折り返しミラー45は、リレー光学系18の第2リレーレンズ17からのレーザー光Lを反射して、光走査装置21の特に照射面部19に反射後の当該レーザー光Lを導く。折り返しミラー45を用いることによって、レーザー光Lの進行方向を所望方向に変えることができ、レーザー光Lの進路を設置スペース等の空間要求に応じて柔軟に最適化することができる。したがって、
図1に示す照明装置1のように光走査装置21の照射面部19によってレーザー光Lの光軸を直角等の比較的大きな角度で曲げる場合に比べ、本変形例のように折り返しミラー45を使ってレーザー光Lを適宜調整する場合の方が光学系をコンパクトに配置することが可能である。
【0076】
なお折り返しミラー45の具体的な構成は特に限定されず、平面鏡によって折り返しミラー45を構成してもよいし、凹面鏡によって折り返しミラー45を構成し、リレー光学系18の一部として折り返しミラー45が設けられてもよい。また折り返しミラー45によるレーザー光Lの折り返し方向も特に限定されない。
【0077】
図5及び
図6は、
図4に示す変形例における折り返しミラー45と光走査装置21の照射面部19との配置例を示す図であり、正面方向(
図4の矢印「X」参照)から折り返しミラー45及び照射面部19を見た図である。
図5は、折り返しミラー45によって上下方向にレーザー光Lを折り返す場合の構成例を示し、
図6は、折り返しミラー45によって左右方向(サイド方向)にレーザー光Lを折り返す場合の構成例を示す。このように折り返しミラー45によってレーザー光Lを折り返す方向は特に限定されず、折り返しミラー45は所望方向にレーザー光Lを導くことができる。また折り返しミラー45は複数設けられてもよく、相互に異なる方向にレーザー光Lを折り返すことができる複数の折り返しミラー45がリレー光学系18の第2リレーレンズ17と光走査装置21の照射面部19との間に設けられてもよい。
【0078】
<第2変形例>
図7は、
図1に示す照明装置1の第2変形例に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本変形例では、ビームエクスパンダー12の代わりに、光ファイバー48がレーザー光源11とコリメート光学系13との間に設けられている。他の構成は、
図1に示す上述の照明装置1と同様である。
【0079】
本例では、レーザー光源11から発せられたレーザー光Lは、レーザー光源11から光ファイバー48内にダイレクトに進行し、光ファイバー48からコリメート光学系13に向かってレーザー光Lが出射される。光ファイバー48から出射されるレーザー光Lは、拡散光の状態でコリメート光学系13に入射し、コリメート光学系13によって平行化(コリメート)される。
【0080】
この構成では、光ファイバー48のコア径(レーザー光Lの進行路の径)に対して、コリメート光学系13によるコリメート後のレーザー光Lのビーム径を大きくするほど、レーザー光Lがより高度に平行化され、光線の平行度を上げることができる。
【0081】
<第3変形例>
図8は、
図1に示す照明装置1の第3変形例に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本変形例では、レーザー光源11が複数設けられ、コリメート光学系13が複数設けられている。またビームエクスパンダー12の代わりに、複数の光ファイバー48が各レーザー光源11と各コリメート光学系13との間に設けられている。他の構成は、
図1に示す上述の照明装置1と同様である。
【0082】
本例では、各レーザー光源11に対して固有の光ファイバー48及び固有のコリメート光学系13が割り当てられており、各レーザー光源11から発せられたレーザー光Lは、割り当てられている光ファイバー48内に各レーザー光源11からダイレクトに進行し、その後、割り当てられているコリメート光学系13に向かって光ファイバー48からレーザー光Lが出射される。本変形例においても、上述の第2変形例と同様に、各光ファイバー48から出射されるレーザー光Lは、拡散光の状態で各コリメート光学系13に入射し、各コリメート光学系13によって平行化(コリメート)される。
【0083】
本例のように複数のレーザー光源11から発せられるレーザー光Lを複数の光ファイバー48を介して出射することで、トータル出力が一定であれば各光ファイバー48のコア径を小径化することが可能である。そのため、コリメート光学系13(コリメート光学系アレイ)を通過した各レーザー光L、すなわち、コリメート後の各レーザー光Lの角度ばらつきが低減され、より平行光に近いレーザー光Lを各コリメート光学系13から出射することができる。
【0084】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は類似の要素については、同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。なお図示及び理解を容易にするため、
図9では、コリメート光学系13a、13b、13c〜光走査装置21におけるレーザー光Lの図示を省略する。
【0085】
本実施形態では、複数のレーザー光源として第1レーザー光源11a、第2レーザー光源11b及び第3レーザー光源11cが設けられている。第1レーザー光源11a、第2レーザー光源11b及び第3レーザー光源11cは、それぞれ、相互に異なる波長を有するレーザー光Lを発する。
【0086】
複数の光拡散素子として第1光拡散素子14a、第2光拡散素子14b及び第3光拡散素子14cが設けられている。第1光拡散素子14a、第2光拡散素子14b及び第3光拡散素子14cは、ホログラムによって構成され、第1レーザー光源11a、第2レーザー光源11b及び第3レーザー光源11cのそれぞれに対応するように設けられており、対応のレーザー光源からのレーザー光Lを拡散する。
【0087】
また照明装置1は、第1光拡散素子14a、第2光拡散素子14b及び第3光拡散素子14cからのレーザー光Lであって、相互に異なる波長を有するレーザー光Lを光走査装置21に導く光学ガイドユニット50を更に備える。光学ガイドユニット50は、第1光学ガイド体51及び第2光学ガイド体52を含む。
【0088】
第1光学ガイド体51は、上記の複数の光拡散素子14a〜14cのうちの1つの光拡散素子、
図9では第1光拡散素子14a、と光走査装置21との間に設置され、ダイクロイックミラーを有する。ダイクロイックミラーを有する第1光学ガイド体51はダイクロイックキューブとも呼ばれ、第1光拡散素子14aからのレーザー光Lを透過する一方で、他の波長を有するレーザー光Lを反射する特性を有する。一方、第2光学ガイド体52は、上記の複数の光拡散素子14a〜14cのうちの他の光拡散素子、
図9では第2光拡散素子14b及び第3光拡散素子14cの各々、からのレーザー光Lを第1光学ガイド体51に導くミラーを有する。第1光学ガイド体51は、第1光拡散素子14aからのレーザー光L、及び第2光拡散素子14b及び第3光拡散素子14cの各々から第2光学ガイド体52を介して進行してくるレーザー光Lを、リレー光学系18を介して光走査装置21に導く。
【0089】
なお、ビームエクスパンダー及びコリメート光学系も複数設けられている。すなわち第1レーザー光源11aと第1光拡散素子14aとの間には第1ビームエクスパンダー12a及び第1コリメート光学系13aが設けられ、第2レーザー光源11bと第2光拡散素子14bとの間には第2ビームエクスパンダー12b及び第2コリメート光学系13bが設けられ、第3レーザー光源11cと第3光拡散素子14cとの間には第3ビームエクスパンダー12c及び第3コリメート光学系13cが設けられている。複数のレーザー光源11a〜11cのそれぞれに対応するように設けられる複数のコリメート光学系13a〜13cは、対応のレーザー光源からのレーザー光Lを平行化する。
【0090】
複数の光拡散素子14a〜14cはそれぞれ対応のレーザー光源11a〜11cからのレーザー光Lの波長に応じた光拡散特性を有し、各波長のレーザー光Lの拡散角度が光拡散素子14a〜14cによって一致させられる。その後、各波長のレーザー光Lは、第1光学ガイド体51及び第2光学ガイド体52によって合成され、リレー光学系18を介して光走査装置21に導かれる。光走査装置21の照射面部19は、複数の光拡散素子14a〜14cの各々からのレーザー光Lの結像位置に基づく位置に配置される。そして、コントローラ22は、光走査装置21の走査制御と連動して、各レーザー光源からのレーザー光Lの発光のタイミングを制御する。
【0091】
上述の照明装置1によれば、複数種類の波長のレーザー光Lによって照明領域40の所望要素照明領域41を安全に照らすことができる。したがって、例えば赤色波長、緑色波長及び青色波長のレーザー光Lをレーザー光源11a〜11cから出射させることで、照明領域40をフルカラーの光で照らすことも可能である。
【0092】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本実施形態において、上述の第2実施形態と同一又は類似の要素については、同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。なお図示及び理解を容易にするため、
図10では、コリメート光学系13a、13b、13c〜光走査装置21におけるレーザー光Lの図示を省略する。
【0093】
本実施形態では、光拡散素子14が一つのみ設けられており、この光拡散素子14はマイクロレンズアレイによって構成されている。光学ガイドユニット50は、複数のレーザー光源11a〜11cからの相互に異なる波長を有するレーザー光Lを、光拡散素子14に導くように配置されている。
【0094】
具体的には、ダイクロイックミラーを有する第1光学ガイド体51が、複数のレーザー光源のうちの1つのレーザー光源、
図10では第1レーザー光源11a、と光拡散素子14との間に設置されている。また第2光学ガイド体52が、他のレーザー光源、
図10に示す例では第2レーザー光源11b及び第3レーザー光源11cの各々、からのレーザー光Lを第1光学ガイド体51に導く位置に配置されている。より具体的には、第1コリメート光学系13aと光拡散素子14との間に第1光学ガイド体51が配置されている。また第2光学ガイド体52は、第2コリメート光学系13b及び第3コリメート光学系13cの各々からのレーザー光Lを第1光学ガイド体51に導く位置に配置されている。第1光学ガイド体51は、第1レーザー光源11aからのレーザー光L、及び第2レーザー光源11b及び第3レーザー光源11cから第2光学ガイド体52を介して進行してくるレーザー光Lを、光拡散素子14に導く。
【0095】
このように光学ガイドユニット50は、複数のレーザー光源11a〜11cから発せられて複数のビームエクスパンダー12a〜12c及び複数のコリメート光学系13a〜13cを通過した後の相互に異なる波長を有するレーザー光Lを、光拡散素子14に導く。
【0096】
本実施形態では、光拡散素子14よりも前段で、複数のレーザー光源11a〜11cからのレーザー光Lが合成される。そして、コントローラ22により、光走査装置21の走査制御と連動して、各レーザー光源からのレーザー光Lの発光のタイミングが制御される。
【0097】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本実施形態において、上述の第3実施形態と同一又は類似の要素については、同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。なお図示及び理解を容易にするため、
図11では、レーザー光源11a、11b、11c〜光走査装置21におけるレーザー光Lの図示を省略する。
【0098】
本実施形態では、ビームエクスパンダー12及びコリメート光学系13の各々が1つのみ設けられており、光学ガイドユニット50がビームエクスパンダー12よりも前段に設けられている。第1光学ガイド体51は、第1レーザー光源11aとビームエクスパンダー12との間に配置されている。第2光学ガイド体52は、第2レーザー光源11b及び第3レーザー光源11cの各々からのレーザー光Lを第1光学ガイド体51に導く位置に配置されている。第1光学ガイド体51及び第2光学ガイド体52は、ビームエクスパンダー12よりも前段で複数のレーザー光源11a〜11cからのレーザー光Lを合成する。合成されたレーザー光Lは、第1光学ガイド体51からビームエクスパンダー12に向けて出射される。
【0099】
このように光学ガイドユニット50は、複数のレーザー光源11a〜11cからの相互に異なる波長を有するレーザー光Lを、ビームエクスパンダー12及びコリメート光学系13に向けて出射して光拡散素子14に導く。コリメート光学系13は、複数のレーザー光源11a〜11cからの相互に異なる波長を有するレーザー光Lを平行化する。そして、コントローラ22により、光走査装置21の走査制御と連動して各レーザー光源からのレーザー光Lの発光のタイミングが制御される。
【0100】
[第5実施形態]
図12は、本発明の第5実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は類似の要素については、同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。なお図示及び理解を容易にするため、
図12では、レーザー光源11からコリメート光学系13に至るまでのレーザー光Lのみを図示し、他の箇所におけるレーザー光Lの図示を省略する。
【0101】
本実施形態では、リレー光学系18が省略され、光拡散素子14が光走査装置21と照明領域40との間に設けられている。光走査装置21は、レーザー光源11からビームエクスパンダー12及びコリメート光学系13を介して進行してくるレーザー光Lの進行方向を変え、光拡散素子14は光走査装置21からのレーザー光Lを拡散する。
【0102】
レーザー光源11からのレーザー光Lは、ビームエクスパンダー12及びコリメート光学系13によってビーム径が拡大されて平行光に調整された後、光走査装置21に当てられる。そして光走査装置21は、光拡散素子14を通過したレーザー光Lを照明領域40において走査させ、照明領域40の一部領域を構成する要素照明領域41にレーザー光Lを導く。
【0103】
[第6実施形態]
図13は、本発明の第6実施形態に係る照明装置1の概略構成を示す概念図である。本実施形態において、上述の第5実施形態と同一又は類似の要素については、同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。なお図示及び理解を容易にするため、
図13では、レーザー光源11からコリメート光学系13に至るまでのレーザー光Lのみを図示し、他の箇所におけるレーザー光Lの図示を省略する。
【0104】
本実施形態において、レーザー光源11から出射されて光走査装置21により進行方向が変えられるレーザー光Lは、相互に異なる波長を有する複数種類の光成分を含む。光走査装置21と光拡散素子14との間には分光ユニット60が設けられている。光走査装置21からのレーザー光Lは、分光ユニット60を介して光拡散素子14に入射する。分光ユニット60は、光走査装置21から分光ユニット60に入射するレーザー光Lを分光し、当該レーザー光Lを相互に異なる波長を有する複数の光成分に分離し、当該複数の光成分を光拡散素子14に向けて出射する。
【0105】
図13に示す分光ユニット60は、第1分光ガイド体61及び第2分光ガイド体62を含む。第1分光ガイド体61は、第1の波長域の光成分を透過して光拡散素子14に導くとともに他の波長域の光成分を反射するダイクロイックミラーを有する。第2分光ガイド体62は、第1分光ガイド体61のダイクロイックミラーによって反射された他の波長域の光成分を光拡散素子14に導く。第1分光ガイド体61及び第2分光ガイド体62により導かれる波長の異なる光成分は、光拡散素子14のうちの異なる箇所に導かれ、例えばホログラムにより構成される対応の光拡散素子14に入射する。そして、各光成分は、対応の光拡散素子14により拡散され、照明領域40のうちの所望の要素照明領域41を照らす。
【0106】
例えば赤色波長域の光成分、緑色波長域の光成分及び青色波長域の光成分がレーザー光源11からのレーザー光Lに含まれている場合、分光ユニット60に入射したレーザー光Lは各波長域の光成分に分離される。そして、赤色波長域の光成分は、赤色波長域の光成分に最適化された光拡散素子14に入射するように分光ユニット60によって導かれる。同様に緑色波長域の光成分及び青色波長域の光成分も、それぞれに最適化された光拡散素子14に入射するように分光ユニット60によって導かれる。なお本実施形態においても、コントローラ22により、光走査装置21の走査制御と連動して各レーザー光源からのレーザー光Lの発光のタイミングが制御される。
【0107】
<他の変形例>
本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されず、他の変形が加えられてもよい。
【0108】
例えば、ビームエクスパンダー12、コリメート光学系13及びリレー光学系18のうちの1又は2以上の要素は省略されてもよく、
図1に示す要素の一部を含まない照明装置1に対しても、本発明は有効に適用可能である。例えば、リレー光学系18を設置しない場合、光拡散素子14の直近、例えば、光拡散素子14の焦点距離だけ光拡散素子14から離れた位置又は当該位置の近傍位置に光走査装置21の照射面部19を配置して、照明領域40をレーザー光Lによって照明してもよい。さらに、リレー光学系18に加えて、光走査装置21の上流側、すなわち、レーザー光源側にコンデンサレンズを追加してもよい。また、光走査装置21の下流側、すなわち、レーザー光源側とは反対側にコンデンサレンズを設けてもよい。
【0109】
なお上述の照明装置1の適用対象は特に限定されず、例えば、車両、航空機等の飛行体、列車、船舶、潜水物などの乗り物やその他の移動体に照明装置1が搭載されてもよいし、特定の場所に照明装置1が設置されてもよい。
【0110】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。