(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226145
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-25111(P2015-25111)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-148756(P2016-148756A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】武内 利充
【審査官】
中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−31402(JP,A)
【文献】
特開2014−153565(JP,A)
【文献】
特開2013−235157(JP,A)
【文献】
特開2000−214689(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0311253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段により加熱される定着ローラーと、該定着ローラーに対して所定荷重で圧接される加圧ローラーと、該加圧ローラーの外周面から離間して該加圧ローラーの軸方向に沿って設けられ、該加圧ローラーの外周面の電荷を除電する除電シートと、該加圧ローラーの外周面を囲むように配置され、該加圧ローラーから外部への放熱を抑制する保温板とを備えた定着装置であって、
上記除電シートは、上記保温板に対して上記加圧ローラー側とは反対側に配置され、
上記保温板における上記除電シートに隣接する部分には開口部が形成されている、定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
上記開口部は、上記加圧ローラーの軸方向に互いに間隔を空けて複数設けられている、定着装置。
【請求項3】
請求項2記載の定着装置において、
上記各開口部における上記軸方向の端部は、隣接する開口部と該軸方向において重なっている、定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着ローラーと加圧ローラーとを圧接させ、この両ローラーの間に、未定着のトナー画像を担持した用紙を通過させることによりトナー画像を当該用紙に定着させる定着装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この定着装置において、加圧ローラーの周囲には、その外周面に沿う形状の金属板からなる保温板が設けられている。これにより、加熱ローラーからの放熱によるエネルギー損失を抑制できるとされている。上記加圧ローラーは、芯金と芯金の外周に設けられた弾性層と弾性層の外周に設けられた離型層とを有している。この弾性層と離型層とは絶縁性であるため、加圧ローラーの表面が用紙との摩擦帯電によってマイナス数千ボルトまで帯電する場合がある。ここで、用紙上の未定着トナーがマイナス帯電のトナーである場合には、このトナーとマイナス帯電した加圧ローラー表面との間に斥力が発生して、定着ローラーにトナーが付着するいわゆる静電オフセットが発生する。
【0003】
この問題を解決するべく、例えば特許文献2に示す定着装置では、加圧ローラーの表面から所定距離だけ離間した位置に、加圧ローラーの軸方向に沿って除電シートを配置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−235157号公報
【特許文献2】特開2005−31402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す保温板を備えた定着装置に対して特許文献2に示す除電シートを適用するようにした場合、除電シートを加圧ローラーと保温板との隙間に配置する必要がある。このため、除電シートと加圧ローラーとの離間距離を十分に確保することができず、除電シートの表面にトナーや紙粉が付着してしまう。この結果、除電シートの除電性能が劣化したり、除電シートに付着したトナーが加圧ローラーに再付着したりして、定着画像の画像品質が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加圧ローラーからの放熱によるエネルギー損失を抑制しながら、定着画像の画像品質を低下させることなく加圧ローラーの外周面の除電を確実に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る定着装置は、加熱手段により加熱される定着ローラーと、該定着ローラーに対して所定荷重で圧接される加圧ローラーと、該加圧ローラーの外周面から離間して該加圧ローラーの軸方向に沿って設けられ、該加圧ローラーの外周面の電荷を除電する除電シートと、該加圧ローラーの外周面を囲むように配置され、該加圧ローラーから外部への放熱を抑制する保温板とを備えている。
【0008】
上記除電シートは、上記保温板に対して上記加圧ローラー側とは反対側に配置され、上記保温板における上記除電シートに隣接する部分には開口部が形成されている。
【0009】
この構成によれば、除電シートを保温板における加圧ローラー側とは反対側に設けるようにしている。したがって、除電シートと加圧ローラーとの間の狭いスペースに除電シートを配置するようにした場合に比べて、除電シートと加圧ローラーとの距離を十分に確保することができる。これにより、除電シートの表面に紙粉やトナーが付着するのを防止することができる。よって、除電シートの表面にトナーが付着することに起因する定着画像の画質低下を防止することができる。また保温板における除電シートに隣接する部分には開口部が形成されているので、この開口部を通じて除電シートによる加圧ローラーの除電を行うことができる。よって、加圧ローラーからの放熱を保温板により抑制しつつ、加圧ローラーの外周面の除電を除電シートによって確実に行うことができる。
【0010】
上記開口部は、上記加圧ローラーの軸方向に互いに間隔を空けて複数設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、相隣接する開口部の間に位置する部分が保温板の強度を補強する補強部として機能するので、保温板に開口部を形成することによる保温板の強度低下を防止することができる。
【0012】
上記各開口部における上記軸方向の両端部は、隣接する開口部と該軸方向において重なっていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、加圧ローラーの外周面のうち保温板の相隣接する開口部の間に位置する部分において除電シートによる除電効果が得られなくなるのを防止することができる。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、上記定着装置を備えている。
【0015】
この構成によれば、加圧ローラーからの放熱が抑制されることにより画像形成装置全体の省エネ性が向上する。また、除電シートへのトナーや紙粉の付着が抑制されることで、画像形成装置による印刷画像の画像品質が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧ローラーからの放熱によるエネルギー損失を抑制しながら、定着画像の画像品質を低下させることなく加圧ローラーの外周面の除電を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態における画像形成装置の内部構造を示す概略図である。
【
図2】
図2は、定着装置を加圧ローラーの軸方向から見た概略図である。
【
図4】
図4は、加圧ローラーの外周面の電位の時間変化を示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、実施形態2を示す
図4相当図であって、相隣接する開口部の間隔が5mmの場合を示している。
【
図6B】
図6Bは、実施形態2を示す
図4相当図であって、相隣接する開口部の間隔が14mmの場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
《実施形態1》
図1は、本実施形態における画像形成装置1の一例であるレーザープリンターを示す概略図である。この画像形成装置1は、
図1に示すように、箱状のプリンタ本体2と、手差し給紙部6と、カセット給紙部7と、画像形成部8と、定着装置9と、排紙部10とを備えている。そうして、画像形成装置1は、プリンタ本体2内の搬送路Lに沿って用紙を搬送しながら、不図示の端末等から送信される画像データに基づいて用紙に画像を形成するように構成されている。
【0020】
手差し給紙部6は、プリンタ本体2の1つの側部に開閉可能に設けられた手差しトレイ4と、プリンタ本体2の内部に回転可能に設けられた手差し用の給紙ローラー5とを有している。
【0021】
カセット給紙部7は、プリンタ本体2の底部に設けられている。カセット給紙部7は、互いに重ねられた複数の用紙を収容する給紙カセット11と、給紙カセット11内の用紙を1枚ずつ取り出すピックローラ12と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して搬送路Lへと送り出すフィードローラ13及びリタードローラ14とを備えている。
【0022】
画像形成部8は、プリント本体2内におけるカセット給紙部7の上方に設けられている。画像形成部8は、プリンタ本体2内に回転可能に設けられた像担持体である感光ドラム16と、感光ドラム16の周囲に配置された帯電器17と、現像部18と、転写ローラー19及びクリーニング部20と、感光ドラム16の上方に配置された光走査装置であるレーザスキャナユニット(LSU)30と、トナーホッパー21とを備えている。そうして、画像形成部8は、手差し給紙部6又はカセット給紙部7から供給された用紙に画像を形成するようになっている。
【0023】
尚、搬送路Lには、送り出された用紙を、一時的に待機させた後に所定のタイミングで画像形成部8に供給する一対のレジストローラ15が設けられている。
【0024】
定着装置9は、画像形成部8の側方に配置されている。定着装置9は、互いに圧接されて回転する定着ローラー22及び加圧ローラー23を備えている。そうして、定着装置9は、画像形成部8で用紙に転写されたトナー像を当該用紙に定着させるように構成されている。
【0025】
排紙部10は、定着装置9の上方に設けられている。排紙部10は、排紙トレイ3と、排紙トレイ3へ用紙を搬送するための一対の排紙ローラー対24と、排紙ローラー対24へ用紙を案内する複数の搬送ガイドリブ25とを備えている。排紙トレイ3は、プリンタ本体2の上部に凹状に形成されている。
【0026】
画像形成装置1が画像データを受信すると、画像形成部8において、感光ドラム16が回転駆動されると共に、帯電器17が感光ドラム16の表面を帯電させる。
【0027】
そして、画像データに基づいて、レーザ光がレーザスキャナユニット30から感光ドラム16へ出射される。感光ドラム16の表面には、レーザ光が照射されることによって静電潜像が形成される。感光ドラム16上に形成された静電潜像は、現像部18で帯電したトナーが現像されることにより、トナー像として可視像となる。
【0028】
その後、用紙は、転写ローラー19により感光ドラム16の表面に押し付けられると同時にトナーと逆帯電極性のバイアスが印可され、感光ドラム16のトナー像が用紙へ転写される。トナー像が転写された用紙は、定着装置9において定着ローラー22と加圧ローラー23とにより加熱及び加圧される。その結果、トナー像が用紙に定着する。
【0029】
図2は、定着装置9を拡大して示す概略図である。同図に示すように、定着ローラー22の内部には、加熱手段としてのヒーター29が設けられている。ヒーター29は、不図示の電圧供給部からの電圧印加によって昇温される。定着ローラー22は、アルミの芯金にPFAのコートを施して形成されている。加圧ローラー23は、芯金の外周にシリコンゴム等からなる弾性層を設け、さらにその外周にPFAチューブ等からなる離型層を設けてなる。
【0030】
用紙が定着ローラー22と加圧ローラー23との間を通過する際、加圧ローラー23の外周面が用紙との摩擦帯電によってマイナス数千ボルトまで帯電する場合がある。この結果、用紙に担持されたマイナス耐電の未定着トナーと加圧ローラー23の外周面との間に斥力が発生して、定着ローラー22にトナーが付着する虞がある。これを防止するべく、本実施形態では、加圧ローラー23の外周面から離間した位置に除電シート27を設けるようにしている。
【0031】
除電シート27は、後述する保温板26に対して加圧ローラー23側とは反対側に設けられている。除電シート27は、加圧ローラー23の軸方向に長い矩形状のシート体からなる。除電シート27は、本実施形態では加圧ローラー23の側方にて鉛直に配置されている。除電シート27は、プリンタ本体2に固定された板金フレーム28の表面に導電性の両面テープを用いて固定されている。除電シート27として、本実施形態ではオカモト株式会社製「No.7784C」を使用し、導電性両面テープには、株式会社 寺岡製作所製「No.791」を使用している。除電シート27は、これに限らず、例えば、不織布、織物、編物などを導電性ポリマーで被覆したシートや、金属繊維やカーボン繊維を混入させたシート等であってもよい。
【0032】
加圧ローラー23の周囲には保温板26が設けられている。保温板26は、加圧ローラー23の放射熱を反射して定着装置9の外部への放熱を抑制する。保温板26は、例えば金属製の板材を折り曲げて形成されている。保温板26は、加圧ローラー23の軸方向から見てその外周面を下方から囲むように断面略U字状に形成されている。保温板26は、加圧ローラー23の軸方向の全体に亘って形成されている。保温板26と加圧ローラー23の外周面との間には隙間が存在している。この隙間は例えば2mm〜6mmの範囲とすることが好ましいい。保温板26を構成する金属板としては、アルミ板、亜鉛メッキ鋼板、SUS(ステンレス)等が挙げられる。
【0033】
上記保温板26における除電シート27に隣接する部分には開口部26a(
図3参照)が形成されている。開口部26aは、加圧ローラー23の軸心と除電シート27の上端縁とを通る面S1(
図2参照)と、加圧ローラー23の軸線と除電シート27の下端縁とを通る面S2との間に位置している。開口部26aにおけるローラー軸方向(加圧ローラ23の軸方向)の両端は、除電シート27における該軸方向の両端よりも外側に位置している。除電シート27における該軸方向の両端は、加圧ローラー23の軸方向の両端よりも外側に位置している。
【0034】
上記除電シート27による加圧ローラー23の外周面の除電は上記開口部26aを通じて行われる。したがって、本実施形態では、加圧ローラー23からの放熱を保温板26により抑制しつつ、加圧ローラー23の外周面の除電を除電シート27によって確実に行うことができる。
図4は、加圧ローラー23の外周面の電位の時間変化を測定した結果を示すグラフである。加圧ローラー23の外周面の電位は、仮に除電が行われない場合−10kVを下回る。これに対して、本実施形態では、加圧ローラー23の外周面の電位が−4kV〜−6kVに抑えられており、除電シート27による加圧ローラー23の除電が十分に行わされていることがわかる。
【0035】
また、上記実施形態では、除電シート27は、保温板26に対して加圧ローラー23側とは反対側に配置されている。したって、除電シート27と加圧ローラー23との間の狭いスペースに除電シート27を配置するようにした場合に比べて、除電シート27と加圧ローラー23との距離を十分に確保することができる。これにより、除電シート27の表面に紙粉やトナーが付着するのを防止することができる。よって、除電シート27の表面にトナーが付着することに起因する定着画像の画質低下を防止することができる。
【0036】
《実施形態2》
図5は、実施形態2を示している。この実施形態は、開口部26aの形状及び数が上記実施形態1とは異なっている。尚、以下の説明において、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0037】
すなわち、本実施形態では、開口部26aは、加圧ローラー23の軸方向に間隔を空けて複数(本実施形態では4つ)設けられている。各開口部26aは、加圧ローラー23の軸方向に長い矩形状に形成されている。
【0038】
したがって本実施形態2では、相隣接する開口部26aの間に位置する部分が保温板26の強度を補強する補強部26bとして機能するので、保温板26に開口部26aを形成することによる保温板26の強度低下を防止することができる。また、各開口部26aを通じて除電シート27の外周面の除電を行うことができるので、除電シート27による除電効果が低下することもない。
図6A及び
図6Bはそれぞれ、相隣接する開口部26aの間隔が5mm、14mmの場合における加圧ローラー23の外周面の電位の時間変化を示している。いずれの場合も、加圧ローラー23の外周面の電位が、除電シート27による除電が行われない場合(−10kV以下であって図示省略)に比べて高くなっている、つまり除電シート27による除電が行われていることがわかる。
【0039】
《実施形態3》
図7は、実施形態3を示している。この実施形態は、各開口部26aの形状が実施形態2とは異なっている。
【0040】
すなわち、本実施形態では、各開口部26aにおけるローラー軸方向の端部は、隣接する開口部26aと該軸方向において重なっている。換言すると、相隣接する開口部26aは、加圧ローラー23の軸方向において重なり代aを有している。相隣接する開口部26aの間に位置する補強部26bは、加圧ローラー23の軸方向に直交する方向に対して傾斜している。
【0041】
したがって本実施形態3では、加圧ローラー23の外周面のうち相隣接する開口部26aの間に位置する部分において除電シート27による除電効果が得られなくなるのを防止することができる。
【0042】
《他の実施形態》
上記実施形態では、画像形成装置1がレーザープリンターである例について説明したが、これに限ったものではなく、画像形成装置1は複写器や複合機等であってもよい。
【0043】
また、本発明は上記実施形態1〜3に限定されるものでなく、本発明には、これらの実施形態1〜3を適宜組み合わせた構成が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は、定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置について有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 画像形成装置
9 定着装置
22 定着ローラー
23 加圧ローラー
26 保温板
26a 開口部
27 除電シート
29 ヒーター(加熱手段)