(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
回折格子の種類は様々なものがあるが、溝の断面形状が鋸歯状である回折格子はブレーズド回折格子と呼ばれ、紫外から可視光領域の特定の波長の光に対して高い回折効率を示すため、可視・紫外の分光器等によく使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
ブレーズド回折格子の製造方法として、フォトレジストをマスクとしてイオンビームを所定の入射角で入射して基板を削るイオンビームエッチング法やルーリングエンジンにより一本ずつ溝を加工する機械切り法が知られている。機械切り法は溝間隔の精度が低く、加工端部に迷光の原因となる切り残り片が生じる場合があるため、精度を要求される回折格子の作製ではイオンビームエッチング法を用いることが多い。
【0004】
イオンビームエッチング法によるブレーズド回折格子の製造方法を
図1により説明する。まず、石英、ガラスなどの平板状の基板1の表面にホトレジストを塗布してホトレジスト層2を形成する(
図1(a))。このホトレジスト層2に二光束干渉による干渉縞を露光・現像し、
図1(b)に示すように平行線状のレジストパターン3を形成する(ホログラフィック露光)。それから、このレジストパターン3をマスクとして、基板1に所望のブレーズ角θBが形成されるように斜め上方向からレジストパターン3が消失するまでイオンビームによるエッチングを行い、基板1上に断面鋸歯状の格子溝4を形成する(
図1(c)〜(e))。その後、
図1(f)に示すように、アルミニウムや金等の金属膜5を格子溝4の表面にコーティングし、ブレーズド回折格子が完成する。
【0005】
通常、上述のエッチング工程では、基板1に対するエッチング速度がレジストパターン3に対するエッチング速度よりも速いような、即ち、選択比(=基板の材料(例えばガラス)に対するエッチング速度/ホトレジストに対するエッチング速度)が1よりも大きなエッチングガスを用いてイオンビームエッチングを行う。
【0006】
これにより、マスターブレーズド回折格子が製造される。このマスター回折格子の格子面に離型剤層を形成し、その上に金属薄膜を形成する。続いてこの金属薄膜上に接着剤を介してガラス基板を接着し、接着剤が硬化した後、ガラス基板をマスター回折格子から剥離させる。これにより、格子溝が形成された金属薄膜が裏返し状態でガラス基板側に移り、レプリカ回折格子が得られる。このレプリカ回折格子を母型として、製品としての回折格子を製造する(特許文献1参照)。
【0007】
分光分析装置における分析対象の拡大等に伴い、回折格子で回折される光の波長はますます短くなってきている。回折波長を短波長化するためには、格子間隔を短くするとともに、ブレーズ角を小さくしなければならない。
【0008】
上述のイオンビームエッチング法を用いて小さいブレーズ角のブレーズド回折格子を製造するためには、イオンビームの入射角αを大きくする必要がある。このとき、
図2に示すように、1つのブレーズ面11と隣接のブレーズ面11の間の段差面12が深くエッチングされ、段差面12がブレーズ面11の下に入り込むようになり(すなわち、ブレーズ面11と段差面の間の角度βが鋭角となり)、ブレーズ面11の端が隣接するブレーズ面11を覆うような、ひさし状の形状になる(これをオーバーハングと呼ぶ)。このようなオーバーハングが生じたマスター回折格子からは、レプリカ回折格子を製造することができない。
【0009】
また、回折格子が凹面回折格子である場合、イオンビームの入射角αを小さくすると、周辺にエッチングされない部分が生じる。例えば、曲率半径Rの凹面回折格子の場合、基板の直径をDとすると、基板端部は
図3に示すように水平方向からθ=sin
-1(D/2R)の角度だけ反っている。したがって、イオンビームの入射角αが、(90−θ)°以上になると、基板表面にイオンビームが入射しない部分(影の部分)が生じ、エッチングができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、既存のブレーズ角より小さいブレーズ角を有するブレーズド回折格子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係るブレーズド回折格子は、
a)断面形状が鋸歯状であり、基礎ブレーズ面と基礎段差面を一方向に交互に繰り返し配置して成る支持体と、
b)前記支持体の前記基礎ブレーズ面と前記基礎段差面を覆い、前記基礎ブレーズ面上で厚さが前記一方向に単調変化する樹脂層と、
c)前記樹脂層の表面を覆う
反射性の金属コーティング膜と
を備える。
【0013】
本発明に係るブレーズド回折格子では、
図4に示すように、支持体の基礎ブレーズ面を覆う樹脂層の「樹脂層ブレーズ面」において、樹脂層の厚さが前記一方向に単調変化しているため、支持体の基礎ブレーズ面のブレーズ角θB1にかかわらず、樹脂層ブレーズ面のブレーズ角θB2を任意に定めることができる。例えば、
図4に示すように、支持体の谷の方(基礎ブレーズ面の深い方)において樹脂層の厚さt1を大きく、支持体の山の方(基礎ブレーズ面の浅い方)において樹脂層の厚さt2を小さくすることにより、樹脂層ブレーズ面のブレーズ角θB2を基礎ブレーズ面のブレーズ角θB1よりも小さくすることができる。逆に、t1<t2とすることにより、基礎ブレーズ面のブレーズ角θB1よりも大きいブレーズ角を有するブレーズド回折格子を得ることができる。
なお、金属コーティング膜は、樹脂層の厚さに何ら影響を与えない程度の薄い膜である。
【0014】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係るブレーズド回折格子の製造方法は、
a)断面形状が鋸歯状であり、基礎ブレーズ面と基礎段差面を一方向に交互に繰り返し配置して成る支持体を用意する工程と、
b)前記支持体上に、前記基礎ブレーズ面と前記基礎段差面を覆う樹脂層を、前記基礎ブレーズ面上において厚さが前記一方向に単調変化するように形成する工程と、
c)前記樹脂層の表面を覆う
反射性の金属コーティング膜を形成する工程と、
を含む。
【0015】
樹脂層を、前記基礎ブレーズ面上において厚さが前記一方向に単調変化するように形成する方法としては、揮発性溶剤の揮発を利用する方法および外力を利用する方法の2通りの方法がある。
【0016】
揮発性溶剤の揮発を利用する方法は、揮発性溶剤に樹脂層を構成する樹脂を溶解させて溶剤樹脂を作成し、該溶剤樹脂を塗布後の溶剤樹脂表面が平坦になるように支持体上に塗布し、塗布後に、揮発性溶剤を揮発させ、樹脂を固化する工程を経て樹脂層を形成する方法である。溶剤樹脂を支持体上に塗布し、最表面を平坦面とした状態では、その平坦面から基礎ブレーズ面までの深さが基礎ブレーズ面の各部で異なる。従って、溶剤樹脂からの溶剤の揮発量も異なり、樹脂が固化した後は基礎ブレーズ面とは異なるブレーズ角の樹脂層ブレーズ面が得られる。
【0017】
外力を利用する方法は、樹脂層を構成する液状樹脂を支持体上にコーティングする際に、前記一方向に外力を加えることにより、基礎ブレーズ面にコーティングされる樹脂層の厚さを単調変化させるものである。ここで用いる外力には、遠心力、支持体を傾斜させることによる重力、表面に空気等を吹き付けて付与する風力等がある。ここで、外力の強さを調整する他、溶剤樹脂の粘度を調節することによっても、製造されるブレーズド回折格子のブレーズ角の調整が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るブレーズド回折格子の製造方法を用いると、断面形状が鋸歯状であり、基礎ブレーズ面と基礎段差面を一方向に交互に繰り返し配置して成る支持体上に、前記基礎ブレーズ面と前記基礎段差面を覆う樹脂層を、前記基礎ブレーズ面上において厚さが前記一方向に単調変化するように形成し、該樹脂層の表面を覆う金属コーティング膜を形成するという簡便な製造方法によって、任意のブレーズ角を有するブレーズド回折格子を製造することができる。従って、既存のブレーズド回折格子よりもブレーズ角の小さいブレーズド回折格子を作製することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1の実施例を
図5および
図6を参照して説明する。
図5はブレーズド回折格子上にディップコートにより揮発性溶剤を混ぜた溶剤樹脂を塗布した場合における、溶剤樹脂塗布後の断面模式図である。
図6はブレーズド回折格子上にディップコートにより揮発性溶剤を混ぜた溶剤樹脂を塗布した場合における、揮発性溶剤の揮発後の断面模式図である。
【0022】
第1の実施例は、樹脂層を、基礎ブレーズ面上において厚さが一方向に単調変化するように形成する方法として、揮発性溶剤の揮発を利用する方法を用いる場合の例である。
【0023】
第1の実施例では、第1のブレーズ角を有するブレーズド回折格子20を支持体として用いる。一例として、ブレーズド回折格子20は、溝本数が900本/mm、溝の深さが0.30μm、第1のブレーズ角が14°であり、イオンビームエッチング法で製造されたマスター回折格子を使用する。
【0024】
ブレーズド回折格子20の基礎ブレーズ面21と基礎段差面22で構成される溝を複数有する面上に、揮発性溶剤に溶解させた樹脂(溶剤樹脂)を塗布する。溶剤樹脂の塗布にはディップコート法を用い、
図5に示すように、塗布後の樹脂表面が平坦となるように塗布する。ここにおける樹脂層26の厚さは、最も薄い箇所(溝の山部分)でブレーズド回折格子20の溝深さの1/2〜3倍程度とする。なお、この樹脂層26の厚さは、溶剤樹脂中の溶剤の割合にも依存する。上記ブレーズド回折格子20の場合、塗布後の溶剤樹脂の厚さが最も厚いところで約1μmとなるように塗布する。
【0025】
任意の光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を本発明における樹脂として用いることができる。また、これらの樹脂と反応を起こさなければ、エタノール、ベンゼン、アセトン等の任意の揮発性有機溶剤を本発明における揮発性溶剤として用いることができる。本実施例では、揮発性有機溶剤としてエタノールを用いる。
【0026】
次に、溶剤樹脂中のエタノールを揮発させる。揮発を促進させるため、溶剤樹脂が塗布されたブレーズド回折格子20全体を加熱しても良いし、揮発性溶剤が時間経過とともに自然に揮発するのを待っても良い。
図6中に矢印で示したように溶剤樹脂中のエタノールが揮発するにつれて、溶剤樹脂の厚さは薄くなるとともに溶剤樹脂の表面はブレーズド回折格子20の溝の形状を反映した凹凸を有するようになる。
【0027】
その後、樹脂を所定の方法で固化させると、
図6に示したようにブレーズド回折格子20の表面に当該ブレーズド回折格子20の溝の形状を反映した凹凸を有する樹脂層36が形成される。ただし、樹脂層36の厚さは一様ではなく、基礎ブレーズ面21上で一方向に単調変化し、ブレーズド回折格子20の山(凹凸の凸部)の上の厚さ(
図4のt2)はブレーズド回折格子20の谷(凹凸の凹部)の上の厚さ(
図4のt1)より小さくなる。その結果、樹脂層36の溝はブレーズド回折格子20の溝より浅くなる。上述の例では、樹脂層36の厚さは最も薄いところで100nm乃至200nm程度となる。
【0028】
樹脂層36の厚さが一様ではなく、ブレーズド回折格子20の山の上の厚さはブレーズド回折格子20の谷の上の厚さより小さくなる理由は、以下のように考えられる。
図5に示したように、塗布後の樹脂表面が平坦となるように塗布するディップコート法では、塗布後の溶剤樹脂の厚さは、ブレーズド回折格子20の山の上で薄く、ブレーズド回折格子20の谷の上で厚くなる。溶剤樹脂に含まれる揮発性溶剤の割合は等しいため、溶剤樹脂の塗布直後の溶剤樹脂の厚さの一定の割合(たとえば半分)が揮発すると仮定すると、上記塗布後の溶剤樹脂の厚さの関係を維持しつつ、膜厚がそれぞれ一定の割合だけ減少する。その結果、樹脂層36の厚さは一様ではなく、ブレーズド回折格子20の山の上の厚さはブレーズド回折格子20の谷の上の厚さより小さくなる。
【0029】
その後、図示しないが、樹脂層36の表面を保護するため、アルミニウム等の金属コーティング膜を、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成し、ブレーズド回折格子の製造を完成させる。金属コーティング膜の厚さは数十nm程度であり、前記樹脂層36の表面の形状には影響を与えない。
【0030】
樹脂層36は、基礎ブレーズ面21上にブレーズ面31と、基礎段差面22上に段差面32とを有し、ブレーズ面31と段差面32の傾きはそれぞれ基礎ブレーズ面21および基礎段差面22より緩やかになっている。したがって、ブレーズ面31と段差面32の間の角度γ
1は、基礎ブレーズ面21と基礎段差面22の間の角度β'
1より大きくなる。このようにして製造されたブレーズド回折格子のブレーズ角(第2のブレーズ角)はブレーズド回折格子20のブレーズ角(第1のブレーズ角)より小さい。上述の例では、溝本数が900本/mm、溝の深さが0.15μm、第2のブレーズ角が7°のブレーズド回折格子が得られる。
【0031】
本実施例のように、厚さが不均一である溶剤樹脂からの溶剤の均等揮発により残留樹脂層の厚さが不均一になることを利用して、樹脂層を支持体であるブレーズド回折格子20の基礎ブレーズ面上で一方向に単調変化し、回折格子20の山の上の樹脂層の厚さがブレーズド回折格子20の谷の上の厚さより小さくなるように形成することで、製造されるブレーズド回折格子のブレーズ角を支持体として用いたブレーズド回折格子20より小さくできる。そのため、従来の回折格子の製造方法では困難であった、小さいブレーズ角のブレーズド回折格子を製造することができる。
【0032】
また、製造されたブレーズド回折格子のブレーズ角が所望の角度となっていなかった場合、形成された樹脂層を剥がし、もう一度樹脂層の形成をやり直せばよい。したがって、加工に失敗しても加工対象材料の廃棄は必要なく、製造コストの低減が図れる。
【実施例2】
【0033】
本発明の第2の実施例を
図7および
図8を参照しつつ説明する。
図7は遠心力を加えるユニットの概略模式図である。
図8は遠心力が加わっている際のブレーズド回折格子40上の液状樹脂の断面模式図である。以下の第2の実施例の説明では液状樹脂を用いているが、第1の実施例と同じ揮発性溶剤により液状化した樹脂を用いてもよい。以下、第1の実施例の繰り返しとなる説明は省略し、第1の実施例と異なるところを中心に説明する。
【0034】
第2の実施例は、樹脂層を、基礎ブレーズ面上において厚さが一方向に単調変化するように形成する方法として外力を利用する方法を用いる場合の例であり、外力として遠心力を用いる場合の例である。
【0035】
第2の実施例では、支持体である、基礎ブレーズ面41と基礎段差面42で構成される溝を複数有するブレーズド回折格子40の表面上に液状樹脂を塗布する。液状樹脂の塗布方法は任意であり、ディップ法でもよいし、遠心法(スピンコーティング)でも良い。ただし、スピンコーティングの場合は、スピン回転数をそう高くすることなく、コーティングの厚みを十分大きなものとしておく。
【0036】
こうして表面に液状樹脂を塗布したブレーズド回折格子40に、そのブレーズ方向(溝に垂直な方向)に遠心力を与えるように、ブレーズド回折格子40を遠心装置にセットする。具体的には、
図7のように、円盤状の回転板60の中心からできるだけ外れた周縁部にブレーズド回折格子40を固定する。その際、ブレーズド回折格子40は、そのブレーズ方向が回転板60の径方向と一致するように固定する。基礎ブレーズ面41のブレーズ角よりも小さいブレーズ角を有する樹脂層を形成したい場合は、基礎ブレーズ面41が回転板60の外側を向くようにブレーズド回折格子40を固定する。逆に、基礎ブレーズ面41のブレーズ角よりも大きいブレーズ角を有する樹脂層を形成したい場合は、基礎ブレーズ面41が回転板60の中心を向くようにする。固定には、ブレーズド回折格子40が帯電した際にその静電気を回転板60の方に逃がすため、導電性を有する接着剤又はテープ(例えば、銅テープ等)を用いることが望ましい。
【0037】
次に、回転板60を数千rpmの高速で回転し、ブレーズド回折格子40の表面の液状樹脂に、ブレーズ方向に力(遠心力)を加える(
図8中の矢印)。これにより、液状樹脂は基礎ブレーズ面41上を流れ、前記のように、基礎ブレーズ面41が外側を向いている場合は樹脂層56のブレーズ角が基礎ブレーズ面41のそれよりも小さくなり、基礎ブレーズ面41が中心側を向いている場合は樹脂層56のブレーズ角は基礎ブレーズ面41のブレーズ角よりも大きくなる。
【0038】
このような高速回転によって、液状樹脂は自然に固化するが、回転面に対する光照射や回転板60を加熱することで、さらに固化を促進しても良い。
【0039】
このような工程により、液状樹脂に遠心力を加えつつ該液状樹脂を固化させることで、支持体表面にブレーズド回折格子40の溝の形状を反映し、それとは異なるブレーズ角を有する樹脂層56が形成される。
【0040】
その後、図示しないが、樹脂層56の表面を覆う金属コーティング膜として、アルミニウムを真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて、樹脂層56のブレーズ形状を維持するように(例えば、数十nmの厚さとなるように)形成し、ブレーズド回折格子を完成させる。
【0041】
図8では、樹脂層56は、基礎ブレーズ面41上にブレーズ面51と、基礎段差面42上に段差面52とを有し、ブレーズ面51と段差面52の傾きはそれぞれ基礎ブレーズ面41および基礎段差面42より緩やかになっている。したがって、ブレーズ面51と段差面52の間の角度γ
2は、基礎ブレーズ面41と基礎段差面42の間の角度β'
2より大きくなる。
【0042】
本実施例のように、樹脂層を支持体であるブレーズド回折格子40の基礎ブレーズ面上で一方向に単調変化し、ブレーズド回折格子40の山の上の樹脂層の厚さ(
図4のt2)がブレーズド回折格子40の谷の上の厚さ(
図4のt1)より小さくなるように形成することで、製造されるブレーズド回折格子のブレーズ角を支持体として用いたブレーズド回折格子40のブレーズ角より小さくできる。そのため、従来の回折格子の製造方法では困難であった、小さいブレーズ角のブレーズド回折格子を製造することができる。
【0043】
また、製造されたブレーズド回折格子のブレーズ角が所望の角度となっていなかった場合、形成された樹脂層を剥がし、もう一度樹脂層の形成をやり直せばよい。したがって、加工に失敗しても加工対象材料の廃棄は必要なく、製造コストの低減が図れる。
【0044】
本実施例を用いれば、回転板60の回転速度や塗布する液状樹脂の粘度の調節によって、製造されるブレーズド回折格子のブレーズ角の調整が可能である。液状樹脂は実施例1に挙げた揮発性溶剤を混ぜて粘度の調節を行っても良い。したがって、ブレーズド回折格子の製造段階でパラメータの調節をする自由度が高い。
【0045】
本実施例では、遠心力を液状樹脂に加える外力として用いる例を示したが、本発明はこれに限定されない。一例として、
図8中に矢印で示した方向に重力が加わるように、液状樹脂を塗布した支持体を傾斜させても良い。また、
図8中に矢印で示した方向に窒素ガスなどの不活性ガスや空気を吹き付けることで、風力を外力として用いても良い。
【0046】
なお、上記実施例では、支持体に用いるブレーズド回折格子として、マスター回折格子を使用する例で説明したが、本発明はこれに限定されない。支持体に用いるブレーズド回折格子として、レプリカ回折格子を使用しても良い。また、上記実施例で製作したブレーズド回折格子からレプリカ回折格子を製作することもできる。