特許第6226238号(P6226238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226238
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】カバー付き注出キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/24 20060101AFI20171030BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B65D47/24 110
   B65D47/08 130
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-72781(P2014-72781)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193404(P2015-193404A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝之
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−251697(JP,A)
【文献】 特開2012−030872(JP,A)
【文献】 特開2011−111167(JP,A)
【文献】 特開2010−126191(JP,A)
【文献】 特開2012−140146(JP,A)
【文献】 特開2012−030864(JP,A)
【文献】 実開平05−044852(JP,U)
【文献】 特開2011−251695(JP,A)
【文献】 実開平02−135467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/24
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)の口筒部(2)に装着される装着部(11)、頭部に内容液を注出するノズル(12)と側壁に形成されたフランジ(16)とが設けられた注出筒(13)及び前記装着部(11)の頂部(11a)に反転可能に設けられて前記注出筒(13)を上下方向に移動させる反転部(14)を有するキャップ本体(10)と、前記注出筒(13)の上端に設けられたインナーシール部(17)内に挿入可能に立設されると共に前記注出筒(13)の上下動に応じて前記インナーシール部(17)の開栓及び閉栓を行う中栓(23)を備えた固定栓体(20)と、前記注出筒(13)全体を覆うカバー(30)と、前記カバー(30)を前記装着部(11)に対して回動自在に支持するヒンジ(40)を備えた注出キャップであって、
前記カバー(30)の下面に、下端内面に形成されたアンダーカット状の掛止部(33)を有すると共に前記カバー(30)を開いたときに前記掛止部(33)が前記フランジ(16)を両側から掛止して前記注出筒(13)を上方に引き上げて前記注出筒(13)を開栓状態に設定する一対の引き上げ板(32)が垂下設され、
前記フランジ(16)が、前記掛止部(33)によって掛止される拡幅部(16b)と、前記ヒンジ(40)側に前記拡幅部(16b)よりも幅寸法の狭い狭幅部(16a)とを有する略正方形状に形成されると共に、前記引き上げ板(32)の形成位置が、前記ヒンジ(40)から離れる正面側に寄った位置に形成されており、前記カバー(30)の開栓時の開き角度が大きくなると、前記拡幅部(16b)を掛止する前記掛止部(33)の掛止位置が前記拡幅部(16b)側に位置ずれすることを特徴するカバー付き注出キャップ。
【請求項2】
カバー(30)の下面中央に、カバー(30)を閉じたときに注出筒(13)を下方に押し込んで前記注出筒(13)を閉栓状態にする押圧突起(31)が垂下設されている請求項1記載のカバー付き注出キャップ。
【請求項3】
注出筒(13)の頭部に、押圧突起(31)を受ける凹部(13a)を設けた請求項記載のカバー付き注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカバー付き注出キャップ、特には注出時の操作性を向上させたヒンジ開閉式のカバー付き注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップの天面部分に注出用のノズルを備えた注出キャップとして、例えば以下の特許文献1が存在する。
【0003】
図5は従来例の注出キャップの一例を示す半断面図であり、特許文献1の図1に相当するものである。特許文献1に記載の技術では、図5に示すように、容器101の口筒部102に装着されているキャップ補助部材111を下げると、栓119が注出筒110上端開口を密閉する状態となり、この状態からキャップ補助部材111を引き上げることで注出筒110とノズル118とが連通し、またキャップ補助部材111を回動させることでノズル118突出方向を自由に変えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−40484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1に記載の技術の場合、常にノズル118が外部に露出される構成であるため、ノズル118の出口付近に残った内容物が固化しやすいという問題がある。そこで、そのような問題を解消するための一例として、ノズル118全体を覆うヒンジ式のカバーを設けることが考えられる。
【0006】
しかしながら、単にカバーを備えるだけの構成では、注出時にカバーを開ける操作に続いてキャップ補助部材111を引き上げる操作を行う必要があり、操作性に欠けるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、ヒンジ開閉式のカバー付き注出キャップにおいて、一つの操作を行うことで他の操作も自動的に行われるようにすることにより、注出時の操作性を向上させたカバー付き注出キャップを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
容器の口筒部に装着される装着部、頭部に内容液を注出するノズルと側壁に形成されたフランジとが設けられた注出筒及び装着部の頂部に反転可能に設けられて注出筒を上下方向に移動させる反転部を有するキャップ本体と、注出筒の上端に設けられたインナーシール部内に挿入可能に立設されると共に注出筒の上下動に応じてインナーシール部の開栓及び閉栓を行う中栓を備えた固定栓体と、注出筒全体を覆うカバーと、カバーを装着部に対して回動自在に支持するヒンジを備えた注出キャップであって、
カバーの下面に、下端内面に形成されたアンダーカット状の掛止部を有すると共にカバーを開いたときに掛止部がフランジを両側から掛止して注出筒を上方に引き上げて注出筒を開栓状態に設定する一対の引き上げ板が垂下設され、
フランジが、掛止部によって掛止される拡幅部と、ヒンジ側に拡幅部よりも幅寸法の狭い狭幅部とを有する略正方形状に形成されると共に、引き上げ板の形成位置が、ヒンジから離れる正面側に寄った位置に形成されており、カバーの開栓時の開き角度が大きくなると、拡幅部を掛止する掛止部の掛止位置が拡幅部側に位置ずれすることを特徴する、と云うものである。
【0009】
本発明の主たる構成では、一つの操作としてカバーを開く操作を行うと、注出筒が上方に引き上げられ、このとき他の操作として中栓がインナーシール部から相対的に抜け出ることになり、内容液を注出可能な開栓状態に自動的に設定し得る。
またカバーを閉じたときに、掛止部が注出筒に設けられたフランジを乗り越えて確実に掛止し得る。
またカバーを開いたときに、掛止部の傾き角度が大きくなると共にヒンジ側に寄った位置を掛止するようになることで、掛止部によるフランジの掛止を容易に解除し得る。
更にカバーを開いた際に掛止部が拡幅部を掛止するときにはフランジを確実に引き上げることが可能となる。またカバーの開き角度が大きくなると、掛止部による掛止位置が拡幅部からヒンジ側の狭幅部寄りに位置ずれするので掛かり量が減少し、掛止状態が容易に解除されてカバーを簡単に開くことが可能となる。
【0010】
また本発明の他の構成は、上記主たる構成に、カバーの下面中央に、カバーを閉じたときに注出筒を下方に押し込んで注出筒を閉栓状態にする押圧突起が垂下設されている、との構成を加えたものである。
【0011】
上記構成では、一つの操作としてカバーを閉じる操作を行うと、注出筒が下方に押し下げられ、このとき他の操作として中栓がインナーシール部内に挿入されて密嵌合し、内容液の注出を不能とする閉栓状態に自動的に設定し得る。
【0013】
上記構成では、カバーを閉じたときに、掛止部が注出筒に設けられたフランジを乗り越えて確実に掛止し得る。
【0015】
上記構成では、カバーを開いたときに、掛止部の傾き角度が大きくなると共にヒンジ側に寄った位置を掛止するようになることで、掛止部によるフランジの掛止を容易に解除し得る。
【0017】
上記構成では、カバーを開いた際に掛止部が拡幅部を掛止するときにはフランジを確実に引き上げることが可能となる。またカバーの開き角度が大きくなると、掛止部による掛止位置が拡幅部からヒンジ側の狭幅部寄りに位置ずれするので掛かり量が減少し、掛止状態が容易に解除されてカバーを簡単に開くことが可能となる。
【0018】
また本発明の他の構成は、上記構成に、注出筒の頭部に、押圧突起を受ける凹部を設けたとの構成を加えたものである。
【0019】
上記構成では、押圧突起の下端が凹部に嵌ることにより、注出筒を確実に押圧して押し下げることを達成し得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明では、一つの操作として注出キャップを覆うカバーを開く操作を行うと、ノズルを有する注出筒が引き上げられ、他の操作として中栓によるインナーシール部の閉栓が解除されて自動的に開栓状態とすることができる。またフランジを掛止する掛止部が外れ易くなってカバーを簡単に開くことが可能となる。その結果、注出時の操作性に優れた注出キャップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のカバー付き注出キャップの一実施例であり、Aはカバーを閉じた状態を側方から示す断面図、Bはフランジと引き上げ板との関係をAのa−a線矢視方向から見た場合に相当する平面図である。
図2図1のカバー付き注出キャップを正面方向から示す断面図である。
図3】Aはカバーを開いた状態を示すカバー付き注出キャップの側方からの部分断面図、Bはフランジと引き上げ板との関係をAのb−b線矢視方向から見た場合に相当する平面図である。
図4】カバーを開いた状態を示すカバー付き注出キャップの側方から示す断面図である。
図5】従来例の注出キャップの一例を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明のカバー付き注出キャップの一実施例を示し、図1Aはカバーを閉じた状態を側方から示す断面図、図1Bはフランジと引き上げ板との関係を図1Aのa−a線矢視方向から見た場合に相当する平面図である。図2図1のカバー付き注出キャップを正面方向から示す断面図、図3Aはカバーを開いた状態を示すカバー付き注出キャップの側方からの部分断面図、図3Bはフランジと引き上げ板との関係を図3Aのb−b線矢視方向から見た場合に相当する平面図、図4はカバーを開いた状態を示すカバー付き注出キャップを側方から示す断面図である。
【0023】
なお、以下においては、図1B及び図3Bに示す中心軸Oを通り一方の側面から他方の側面に沿って延びる仮想線Lを挟んで図示右側をヒンジ側又は背面側とし、仮想線Lを挟んで図示左側をヒンジの逆側又は正面側として説明する。
【0024】
図1乃至図4に示すカバー付き注出キャップ(以下、適宜「注出キャップ」という。)は、例えば洗剤、シャンプー、リンス等の内容液を収容したボトル型の容器1の口筒部2に装着して使用するものであり、主としてキャップ本体10、固定栓体20及びカバー30を有して構成される。
【0025】
キャップ本体10は合成樹脂成製であり、口筒部2の外側に螺合する円筒状の装着部11を有し、その中央には略有頂筒形状からなる注出筒13が立設されている。装着部11の頂部11aの内縁と注出筒13の基端との間には、頂壁を肉薄状に形成してなる反転部14が設けられている。注出筒13は、この反転部14が反転変形することにより上下方向に移動可能に支持されている。注出筒13の頭部には傾斜状に延びるノズル12が設けられ、注出筒13頭部の下面には流路15内に延びる短円筒状のインナーシール部17が垂下設されている。また図1Bに示すように、注出筒13の側壁にフランジ16が形成され、注出筒13の頭部には後述するカバー30に設けられた押圧突起31を受けるための凹部13aが形成されている。
【0026】
図1Bに示すように、フランジ16は4辺を有する略正方形状であるが、より詳しくは正面側(又は背面側)から見たフランジ16の両サイドのうち、仮想線Lを挟んで図示右側(背面側)のヒンジ40側に幅寸法W1からなる狭幅部16aを有し、これとは逆となる図示左側(正面側)であるヒンジ40の逆側に幅寸法W2からなる拡幅部16bを有する形状である。狭幅部16aの幅寸法W1は、拡幅部16bの幅寸法W2に比較して若干狭い寸法で形成されている。そして、狭幅部16aと拡幅部16bの境目には傾斜部16c,16cが形成されている。
【0027】
固定栓体20も合成樹脂製であり、円板状の支持部21と、支持部21の中央に設けられた有底筒状のカップ部22と、このカップ部22の底部中央に立設された中栓23を有して構成され、カップ部22の側面には断面逆L字形状に開口する通過孔24が周方向に一定の間隔を有して複数形成されている。容器内1の内容液はこの通過孔24を介して注出筒13内の流路15に導かれる。固定栓体20は、支持部21の縁部が装着部11と口筒部2の先端との間に挟み込まれて、不動の状態で支持されている。中栓23は注出筒13内の流路15中に挿入されており、その先端はインナーシール部17に挿入可能となっている。
【0028】
カバー30は、ヒンジ40を介してキャップ本体10の装着部11の上縁部に回動自在に連結されている。カバー30の頂部下面の中央の位置には、押圧突起31が垂下設され、またカバー30の頂部下面には互いに平行に設けられた一対の引き上げ板32,32が垂下設されている。一対の引き上げ板32は、図1Aに示す側方から見て中央の押圧突起31よりも正面側(ヒンジ40から離れる側)に寄った位置で、且つ図2に示す正面側から見て押圧突起31を挟んで左右対称の位置に垂下設されている。一対の引き上げ板32の先端内側には、アンダーカット状の掛止部33,33がそれぞれ形成されている。
【0029】
上記構成からなる注出キャップの動作について説明する。
(1)カバー閉鎖時の動作
カバー30を閉じると、押圧突起31の下端が注出筒13の頭部に形成された凹部13aに当接して注出筒13を下方に押し下げる。この押し下げにより反転部14が下方に反転するため、注出筒13全体が図1A及び図2に示す下方位置に移動させられる。
【0030】
この下方位置では、図1Aに示すように中栓23の先端がインナーシール部17に密嵌合し、流路15とノズル12との連通を遮断して注出キャップを閉栓状態に設定する。同時に、一対の引き上げ板32,32が広がる方向に弾性変形し、一対の掛止部33,33がフランジ16の拡幅部16b,16bを下方に乗り越えてフランジ16下面の両サイドを掛止する(図2参照)。この下方位置では、掛止部33が略水平姿勢にあるのでフランジ16を掛止する掛かり量が最大の状態にある。
【0031】
(2)カバー開放時の動作
次に、カバー30を開けると、一対の掛止部33,33がフランジ16の拡幅部16b,16bを掛止しながら上方に引き上げるため、反転部14が上方に反転して注出筒13は図3A及び図4に示す上方位置に移動させられる。このとき、図4に示すように、中栓23がインナーシール部17から相対的に抜け出し、流路15とノズル12とが連通することで注出キャップを開栓状態に設定する。
【0032】
またこの際には、カバー30はヒンジ40を支点として回動することになるが、図3Aに点線で示すように、掛止部33の傾き角度が大きくなって傾斜姿勢でフランジ16を掛止することになる。また図3Bに示すように、カバーの開き角度が大きくなると、拡幅部16bを掛止していた掛止部33の掛止位置が若干狭幅部16a側(ヒンジ側)に寄った位置に位置ずれするため、掛止部33がフランジ16を掛止する掛かり量が減少することになる。よって、さらにカバー30を開くと、一対の掛止部33,33によるフランジ16の両サイドの掛止が容易に外れ、カバー30を簡単に開けることができるようになる。その結果、注出キャップの注出時の操作性を向上させることができる。
【0033】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のカバー付き注出キャップでは、容器の口筒部に装着されて内容液の注出を行う注出キャップの分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 : 容器
2 : 口筒部
10 : キャップ本体
11 : 装着部
11a: 頂部
12 : ノズル
13 : 注出筒
13a: 凹部
14 : 反転部
15 : 流路
16 : フランジ
16a: 狭幅部
16b: 拡副部
16c: 傾斜部
17 : インナーシール部
20 : 固定栓体
21 : 支持部
22 : カップ部
23 : 中栓
24 : 通過孔
30 : カバー
31 : 押圧突起
32 : 引き上げ板
33 : 掛止部
40 : ヒンジ
図1
図2
図3
図4
図5