(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水溶解性又は水分散性のポリアミド、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記ポリアミドが、ジアミン及びジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を30〜90モル%含有すること、及び前記脂環族構造単位のうち脂環族ジカルボン酸より得られる脂環族構造単位が前記ポリアミド中20モル%以上であることを特徴とする凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
脂環族構造単位となる脂環族ジアミンが、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルニルジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン及びN−(2−アミノエチル)ピペラジンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジアミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
脂環族ジカルボン酸が、イソホロンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
前記ポリアミドが、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸より得られる構造単位を10〜70モル%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
通常、印刷版に用いられる感光性樹脂組成物は、一般に、可溶性高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有し、必要に応じて、安定剤、可塑剤等の添加剤が配合されている。
【0003】
従来から、この感光性樹脂組成物層に透明な画像部を有するネガフィルムを通して活性光線を照射し、露光部の感光層を硬化させた後、非露光部の感光層を適当な溶剤で溶解除去して乾燥及び後露光する製版工程により、印刷用のレリーフ版を作成することは広く知られている。
【0004】
前記の感光性樹脂組成物の可溶性高分子化合物には、可溶性ポリアミド、ポリエーテルウレアウレタン、完全鹸化または部分鹸化ポリ酢酸ビニルなどを使用することが提案されている。このうち、可溶性ポリアミドやポリエーテルウレアウレタンを用いた凸版印刷版は、耐摩耗性に優れるため、特に好ましく使用されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
最近では、凸版印刷原版に対するユーザーの要求は、超微細なパターンを再現する方向へ進んでおり、写真物の印刷に使用される最小ハイライト部については、200線の5%以下が、ネガサイズに近い印刷サイズでスムーズに明るさを変化する再現性を有すること(ハイライト部網点の階調性)が要求されるようになっている。
【0006】
微細なハイライト部網点印刷性の要求に対応する従来技術としては、感光性樹脂層を光透過率の異なる多層構造にすることで画像再現性を向上させた凸版印刷原版(特許文献3参照)、感光性樹脂層の多層化によりレリーフ形状をシャープにした凸版印刷原版(特許文献4参照)などが挙げられるが、いずれの凸版印刷原版もハイライト部網点の階調性を十分に満足できるものではなく、また多層化により製造コストの増大をもたらしていた。
【0007】
また、コンピューター上で処理された情報を凸版印刷原版上に直接描画し、ネガフィルムの作成工程を必要とせずに印刷版を得る方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法では、ネガフィルムによる光の散乱が無くなることによりレリーフ形状がシャープになり、線画の印刷性には大きな改善がみられるものの、ハイライト部網点の階調性に関しては十分に満足できるものではない。また、製版に高価なレーザー照射装置が必要である。
【0008】
ところで、凸版印刷版では、印刷中に版にクラックが発生し、それが不良印刷物を生じさせる問題がしばしば起きている。この耐刷性を改善するために、部分ケン化PVAとポリアミド化合物を併用する方法(特許文献6参照)や特定の架橋剤を使用する方法(特許文献7参照)が提案されている。これらの方法で一定の改善はあるものの、十分に満足できる耐刷性に達していないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立でき、更に版面粘着性が低い凸版印刷原版用感光性樹脂組成物、及びそれを使用した凸版印刷原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために、凸版印刷原版に使用する感光性樹脂組成物の水溶解性又は水分散性のポリアミドについて鋭意検討した結果、ポリアミドが、脂環族ジカルボン酸を特定量以上含むジカルボン酸から重合され、かつ脂環族ジアミンと脂環族ジカルボン酸の合計量を特定量の範囲にすることにより、ハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立でき、更に低い版面粘着性を達成できることを見い出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)の構成を有するものである。
(1)水溶解性又は水分散性のポリアミド、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分として含有する凸版印刷原版用感光性樹脂組成物であって、前記ポリアミドが、ジアミン及びジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を30〜90モル%含有すること、及び前記ポリアミドが、ジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を20モル%以上含有することを特徴とする凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(2)前記ポリアミドは、動的粘弾性測定装置によって測定した貯蔵弾性率が500〜4000Mpaであることを特徴とする(1)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(3)脂環族構造単位となる脂環族ジアミンが、イソホロンジアミン、1,4−シクロへキサンジアミン、1,3−シクロへキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルニルジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン及びN−(2−アミノエチル)ピペラジンからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジアミンであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(4)脂環族構造単位となる脂環族ジカルボン酸が、イソホロンジカルボン酸、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の脂環族ジカルボン酸であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(5)前記ポリアミドが、第3級窒素原子を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(6)前記ポリアミドが、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸より得られる構造単位を10〜70モル%含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を設けてなる凸版印刷原版。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1〜5%のハイライト部の階調印刷再現性と耐刷性を両立でき、また版面粘着性の低い凸版印刷原版のための感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の凸版印刷原版用感光性樹脂組成物は、水溶解性又は水分散性のポリアミド、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤を必須成分とするものである。
【0015】
本発明に用いるポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を30〜90モル%含有し、且つジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を20モル%以上含有するポリアミドである。
【0016】
ポリアミド中のジアミン及びジカルボン酸より得られる脂環族構造単位の含有割合が上記範囲未満では、ハイライト部の階調印刷再現性に劣り、また版面粘着性に劣る問題がある。一方、上記範囲を超えるとポリマーの耐刷性、特にハイライト網点の耐欠け性が劣る。また、ジカルボン酸より得られる脂環族構造単位の含有割合が上記範囲未満の場合もハイライト部の階調印刷再現性に劣り、また版面粘着性に劣る問題があり、上記範囲を超える場合は耐刷性、特にハイライト網点の耐欠け性が劣る。
【0017】
脂環族ジアミンとしては、例えばイソホロンジアミン、1,4−シクロへキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、メチルシクロヘキサンジアミン、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミンが挙げられる。これらの中では、ハイライト部の階調印刷性再現性の点で、イソホロンジアミン、及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0018】
脂環族ジカルボン酸としては、例えばイソホロンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、1,3−シクロへキサンジカルボン酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジエチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジプロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸が挙げられる。これらの中では、ハイライト部の階調印刷性再現性の点で、1,4−シクロへキサンジカルボン酸が好ましい。
【0019】
本発明のポリアミドは、脂環族アミノカルボン酸を一部に用いても良い。脂環族アミノカルボン酸としては、例えば、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、3−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、2−アミノメチルシクロプロパンカルボン酸などが挙げられる。
【0020】
本発明の凸版印刷原版より得られる印刷版は、特定量以上の脂環族構造単位を有するポリアミドを用いることにより、ハイライト部の印刷再現性を向上することができる。これは、脂環族構造単位により分子鎖の自由度が低下し、ポリマーの弾性率が向上したことに起因すると考えられる。ポリマーの弾性率が向上したことにより、印圧がかかったときのハイライト網点の変形が抑制され、印刷再現性が向上したと推察される。
【0021】
本発明に用いるポリアミドは、動的粘弾性測定装置によって測定した貯蔵弾性率が500〜4000MPaであることが好ましい。さらに好ましくは1000〜3500MPaである。貯蔵弾性率を上記範囲にする方法としては、例えば分子鎖に芳香族環又は脂肪環などの環構造を導入することが挙げられる。
【0022】
貯蔵弾性率が上記範囲であるポリアミドを用いることにより、版面粘着性も低減できる。貯蔵弾性率が上記範囲未満では、版の粘着性が高く、そのため印刷時に印刷版表面に印刷紙より発生する紙粉の付着が増加し、その結果、ベタ部に付着した紙粉が引き起こすインキ乗りムラが起きることがある。一方、貯蔵弾性率が上記範囲を超えると、分子鎖の自由度が無くなり、耐刷性が損なわれる。高分子化合物の貯蔵弾性率が上記範囲で粘着性が低減する理由としては、貯蔵弾性率が上記範囲であれば高分子化合物の分子鎖が凍結状態であり、分子運動が抑制されているためと考えられる。
【0023】
本発明に用いるポリアミドは、示差走査熱量計によって測定したガラス転移点(Tg)が80〜150℃であることが好ましい。さらに好ましい範囲は90〜140℃である。Tgを上記範囲にする方法としては、例えば分子鎖に芳香族環又は脂肪環などの環構造を導入することが挙げられる。Tg以上の温度では、分子鎖のミクロブラウン運動が可能となり、弾性率が大幅に低下すること、また、ポリアミドのTgは水分の吸湿等により低下することが知られている。従って、印刷中の摩擦熱等で版が暖められた場合や吸湿した場合でも高い弾性率を保持するために、Tgは80℃以上であることが好ましい。一方、Tgが150℃を超えると、ポリアミド重合時の溶融粘度が高くなりすぎ、製造上好ましくない。
【0024】
本発明に用いるポリアミドは、水溶解性又は水分散性(水現像性)であることが必要である。この条件を満足させるためには、極性基を有するジアミン又はジカルボン酸を選択すれば良い。ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、複素環ジアミン、及び脂環族ジアミンから選択すればよい。このうち、ピペラジン環を有するジアミンやメチルイミノビスプロピルアミン等の第3級窒素原子を含むジアミンが水現像性の面から好ましい。更に、ポリマーの弾性率の観点より、ピペラジン環を有するジアミンを用いることが特に好ましい。ピペラジン環を有するジアミンとしては、1,4−ビス(3−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0025】
ポリアミドが水溶解性または水分散性であるかどうかは、ポリアミドを単独で30℃の水または酸性水に浸漬してブラシ等で擦ることで判定することができる。ブラシ等で物理的に擦った後、ポリアミドが水または酸性水に均一に混合している場合、このポリアミドは水溶解性であると判定される。一方、ブラシ等で物理的に擦った後、ポリアミドの一部又は全面が膨潤して水中に分散し、ポリアミドが不均一に混合されている場合、このポリアミドは水分散性であると判定される。
【0026】
本発明のポリアミドは、ポリアミドの特性に影響を及ぼさない範囲で脂環族ジアミン又は脂環族ジカルボン酸以外に公知のジアミン又はジカルボン酸を使用することができる。脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2,2,4、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、又はポリエーテルアミンJEFFAMINE ED900などが挙げられる。芳香族ジアミンとしては、メタ又はパラキシリレンジアミン、メタ又はパラフェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0027】
本発明に用いるジカルボン酸としては、脂環族ジカルボン酸以外の公知の脂肪族ジカルボン酸を使用することができる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などが挙げられる。又、脂環族アミノカルボン酸以外のアミノカルボン酸も使用可能である。
【0028】
好ましくは、本発明のポリアミドは、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸より得られる構造単位を10〜70モル%含有する。これにより、得られるポリアミドの弾性率を好適に制御することができる。
【0029】
本発明のポリアミド中の脂環族構造単位のモル%とは、アミノカルボン酸、ジアミン及びジカルボン酸より得られる全構造単位の総モル数に対する脂環族構造単位のモル数の比率を示したものである。脂環族構造単位のモル%は、原料仕込み段階のモル数またはH−NMRの測定結果より計算することができる。H−NMRによる分析は、一般的に行われている分析方法であり、積分値より各構造単位のモル%を計算する方法である。
【0030】
本発明のポリアミドの重合は公知の方法で実施することができる。
【0031】
本発明のポリアミドを重合するためのジアミンとジカルボン酸のモル比率(アミノ基/カルボキシル基)は、1.0以上、好ましくは1.01以上である。モル比率を上記範囲とすることで、重合が平衡となった後にポリマーを取り出すことが可能となり、分子量の変動を抑えることができる。
【0032】
本発明に用いるポリアミドは、塩基性第3級窒素原子を分子内に有するジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸を用いて共重合することが好ましい。その場合は四級化剤と反応させ、アンモニウム塩型窒素原子を有する可溶性高分子化合物とすることが水溶性の面から好ましい。四級化剤としては、公知の有機酸の使用が可能であり、脂肪族有機酸、芳香族有機酸が使用可能である。有機酸の具体例は、脂肪族有機酸としては、メタクリル酸、アクリル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グリコール酸、乳酸など、芳香族有機酸としては、安息香酸、イソフタル酸などが挙げられるが、水溶性の面から脂肪族有機酸が好ましい。
【0033】
本発明で用いるポリアミドの使用量は、全感光性樹脂組成物中45〜65重量%であることが好ましい。使用量が45重量%未満では、十分な物性が得られず、65重量%を超えると、光硬化性が悪くなり、画像再現性が低下する場合がある。物性と画像再現性の両者を満足するためには、さらに好ましくは50〜65重量%である。
【0034】
本発明に用いる光重合性不飽和化合物は、分子内に光重合可能な不飽和基を1個以上含有する化合物であり、公知のものが使用できる。分子内に光重合可能な不飽和基を1個含有する化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド−n−ブチルエーテル、ジアセトアクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとモノアルコールとの開環付加反応物、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の1個の不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。分子内に光重合可能な不飽和基を2個以上含有する化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェイト、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸と(メタ)アクリル酸とのトリエステル、多価アルコールのポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との開環付加反応生成物、例えば(ポリ)エチレングリコールジグシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、(ポリ)プロピレングリコールのジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサメチレングリコールのジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、グリセリンジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、イソフタル酸ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、イソプレンオリゴマーのジカルボン酸のジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、その他の活性水素化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとの開環付加反応生成物、例えば(ポリ)エチレングリコールとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、(ポリ)プロピレングリコールとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、グリセリンとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、トリメチロールエタンとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、脂肪族多価カルボン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、芳香族多価カルボン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、第1級または第2級アミノ基を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応によって得られる2個以上の不飽和基を有する化合物、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−m−フェニレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−m−キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、ジ(メタ)アクリルアミド−N−メチルエーテル、1,3−ビス[(メタ)アクリロイルアミノメチル]尿素、およびその誘導体、1,3−[ビス(メタ)アクリロイルアミノメチル]−1,3−ジメチル尿素およびその誘導体、1,3−[ビス(メタ)アクリロイルアミノメチル]エチレン尿素およびその誘導体、1,3−[ビス(メタ)アクリロイルアミノメチル]トリメチレン尿素およびその誘導体、トリアクリルホルマール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート、1,3−ジグリシジル,5−メチル,5エチルヒダントインなどの不飽和結合を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0035】
光重合性不飽和化合物は単独で使用しても良いが、2種以上を併用してもよい。光重合性不飽和化合物の使用量は、全感光性樹脂組成物中25〜50重量%が好ましい。光重合性不飽和化合物の使用量が50重量%を越えると、十分な機械的強度が得られず、25重量%未満では、光硬化性が悪くなることで画像再現性が低下する場合がある。
【0036】
本発明に用いる光重合開始剤としては、公知のものが使用可能であり、具体的には、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アンスラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。好適な具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、アンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。光重合開始剤の使用量は、全感光性樹脂組成物中0.05〜5重量%が好ましい。0.05重量%未満では、光重合開始能力に支障をきたし、5重量%を越えると、印刷用レリーフを作成する場合に印刷原版の感光樹脂層の厚み方向の光硬化性が低下し、画像の欠けが起こりやすくなる。
【0037】
また、必要により公知の熱重合禁止剤を添加してもよい。熱重合禁止剤は、感光性樹脂組成物の調合、製造、成形加工時などの加熱による予定外の熱重合、あるいは該組成物の保存中の暗反応を防止するために添加する。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのハイドロキノン類、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン類、フェノール類、カテコール、p−tert−ブチルカテコールなどのカテコール類、芳香族アミン化合物類、ビクリン酸類、フェノチアジン、α−ナフトキノン類、アンスラキノン類、ニトロ化合物類、イオウ化合物類などが挙げられる。熱重合禁止剤の使用量は、全感光性樹脂組成物中0.001〜2重量%が好ましく、特に好ましくは0.005〜1重量%である。これらの化合物は2種以上併用してもよい。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶融成形法の他、例えば、熱プレス、注型、或いは、溶融押出し、溶液キャストなど公知の任意の方法により目的とした積層体の構成で成形することによって、感光性樹脂層を設けた凸版印刷用原版を得ることができる。
【0039】
凸版印刷用原版は、シート状に成形した成形物(未露光樹脂)を公知の接着剤を介して、或いは、介さずに支持体に積層して使用することができる。支持体としては、スチール、アルミニウム、ガラス、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムなど任意のものが使用でき、50〜500μmの範囲の厚みのフィルムが使用される。シート状成形物(未露光樹脂)を支持体上に積層した積層体にして供給する場合には、シート状成形物(未露光樹脂)に接して保護フィルムをさらに積層することが好ましい。保護フィルムは、フィルム状のプラスチックが使用でき、例えば125μm厚みのポリエステルフィルムが使用される。また、感光性樹脂層と保護フィルムとの間に粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子を0.5〜3μmの厚みで塗布した粘着防止層を設けてもよい。感光性樹脂層表面に粘着防止層を設けることで、表面粘着性が強い場合であっても次の露光操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる。
【0040】
本発明の凸版印刷用原版は、感光性樹脂層と粘着防止層の間に、厚みが1〜30μmのキャップ層を設けてもよい。キャップ層は、現像工程で除去されず印刷版上に残るため、キャップ層を設けることで印刷版表面特性や耐久性を調整することができる。キャップ層としては、公知のキャップ層を使用できる。
【0041】
本発明の凸版印刷用原版は、感光性樹脂層の表面に感熱マスク層を設けることでネガフィルムを使用しないCTP(Computer to Plate)版を製造できる。感熱マスク層としては、公知の感熱マスク層を使用できる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物より得られた凸版印刷用原版は、感光性樹脂層に透明画像部を有するネガフィルムを密着して重ね合せ、その上方から活性光線を照射して露光を行い、活性光線が透過した露光部のみを不溶化した原版を作成する。活性光線は、通常300〜450nmの波長を中心とする高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、ケミカルランプなどの光源を用いる。一方、CTP版の場合には、感熱マスク層をIRレーザにより画像様に照射して、感光性樹脂層上にマスク(ネガフィルムと同じ機能)を形成する。画像情報を感熱マスク層に書き込んだ後、感光性印刷原版にマスクを介して活性光線を全面照射し、活性光線が透過した露光部のみを不溶化した原版を作成する。
【0043】
次いで、適当な溶剤、特に本発明では中性水により非露光部分を溶解除去するが、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などの現像方式で非露光部分を溶解除去できる。その後、非露光部分を溶解除去した印刷版は、水切り、乾燥、後露光工程を行い、最終の印刷版が得られる。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物より得られた凸版印刷原版を用いると、ハイライト部の階調印刷性と耐刷性のいずれにも優れ、更に版面の粘着性が非常に低いことが見出された。このため、本発明の凸版印刷原版を用いると、高品位の印刷を一枚の版で多量の部数を印刷することができる。また、版面粘着性が低減したことにより、印刷前や印刷中に埃や紙粉の付着が低減され、付着物を除去するための版の洗浄回数を大幅に削減することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中(本文)の部数は質量部を表わす。また、表1のポリアミド組成はmol%を表す。ポリアミド組成のmol%はH−NMRの測定により確定した。なお、実施例中の特性値の評価は以下の方法に依った。
【0046】
(1)ハイライト部印刷性(ハイライト部階調印刷再現性)
まず、感光層厚みが685μmの凸版印刷原版に、画像として網点200線1%〜95%、最小独立点直径50〜600μm、最小独立線幅が10〜150μm、ベタ画像(幅1cm×長さ5cm)を含む印刷評価ネガを用い、200線−1%が再現する最小露光時間を最適露光時間として、照度を25W/m
2に調整したケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で25℃の水道水で現像し、レリーフ画像を得た。更に60℃で10分間、温風乾燥した後に超高圧水銀灯で30秒間後露光して印刷版を得た。200線−1%の画像再現性は10倍のルーペを使い、肉眼で判定した。得られた印刷版を用いてハイライト印刷性の評価を行った。印刷機には、輪転印刷機P−20(三條機械製)を用い、インキにはベストキュア藍(T&K TOKA製)、被印刷物にはグロスPW−8K(リンテック製)を用いた。印圧(版と被印刷物間の圧力)を段階的に高め、ベタ箇所のカスレが無くなる箇所を適性圧として印刷評価を実施した。また、ベタ箇所のインキ濃度が1.7absになるようにインク送り量を調整した。適性圧での200線1%〜5%の網点濃度を、CCDOT4(エス・デェイ・ジー株式会社製)を用いて測定し、その結果を%で表して表1にまとめた。ハイライト部印刷性は、印刷物の網点濃度がネガフィルムの網点濃度に近く、また、ネガフィルム網点が5%から1%へ減少するのに応じて印刷物の網点濃度がスムーズに減少していく場合には優れるとの評価になる。
【0047】
(2)版面粘着性
(1)のハイライト部印刷性評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、得られた印刷版を用いて印刷版表面の粘着性評価を行った。粘着性は、被印刷物であるコート紙(グロスPW−8K、(株)リンテック製)を版に押し付けて、コート紙の滑り度合いから以下の基準で評価した。
○:コート紙が抵抗なく滑る。
△;コート紙と版が粘着するが、力を入れると滑る。
×:コート紙と版が粘着して滑らない。
【0048】
(3)耐刷性(ベタのひび割れ)
(1)のハイライト部印刷性評価用レリーフを作成した時と同じ方法で印刷版を製造し、適性印圧から50μm加圧した状態で1万ショットの印刷を行い、1万ショット印刷後に印刷物と版を200倍に拡大した顕微鏡で観察し、以下の判定基準で評価した。
◎:印刷物に欠点なく、かつ版にもクラックなし。
○:印刷物に欠点はないが、版に軽微なクラックあり。
△:印刷物に目視で欠点は確認できないが、200倍に拡大した顕微鏡の観察では不良がみられる。
×:目視で印刷物に不良が確認できる。
【0049】
(4)耐刷性(1%網点の欠け)
(3)の評価で得られた版の1%網点を顕微鏡で200倍に拡大し、以下の判定基準で評価した。
○:印刷前後で1%網点に変化なし。
△:印刷後では、1%網点の2割未満に欠けが起きる。
×:印刷後では、1%網点の2割以上に欠けが起きる。
【0050】
(5)弾性率
アイティー計測制御株式会社製、動的粘弾性装置DVA220を用い、引っ張りモードで測定した。空気雰囲気下において、昇温速度4℃/分、周波数10Hz、サンプル形状15mm×4mmで測定した。30℃での弾性率を貯蔵弾性率とした。
【0051】
(6)ガラス転移温度(Tg)
TAインスツルメンツ社製DSC100を用いて測定した。ポリアミド樹脂10.0mgをアルミパンに入れ、20℃/分の昇温温度で300℃まで加熱し、300℃に達してから3分間保持した後即座に、液体窒素中でクエンチした。その後、室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)を求めた。Tgはベースラインと変曲点での接線の交点の温度とした。
【0052】
実施例1
ε−カプロラクタム339部、シクロヘキサンジカルボン酸596部、メチルイミノビスプロピルアミン514部、50%次亜リン酸水溶液5部、及び水1000部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が0.4MPaに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、ガラス転移温度90℃、弾性率1000MPa、相対粘度2.10のポリアミドを得た。ポリアミドの組成をH−NMRで測定し、仕込み組成とポリマー組成に差異がないことを確認した。
【0053】
このようにして得られたポリアミド55.0部を、メタノール62部と水10部の混合物に添加し、それを65℃で加熱して溶解し、ジエチレングリコール9.0部、四級化剤としての乳酸5.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加してさらに30分撹拌溶解させ、ポリアミドをアンモニウム塩化して、水溶解性にした。その後、グリシジルメタクリレート(GMA)2.5部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1.0部、グリセリンジメタクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステルG101P)13部、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート(共栄社化学工業製ライトエステルG201P)14.5部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。
【0054】
次に、接着剤層を有する支持体を作成した。接着剤層を有する支持体は、紫外線吸収材を含む接着剤組成物を250μm厚みのポリエステルフィルム上に、塗膜厚さ20μmでコートすることによって得た。得られた支持体を用いて、この支持体の接着剤層面に上記の感光性樹脂組成物を流延し、厚み2μmのポリビニルアルコール(AH−24、日本合成化学(株)製)の被膜をコートした厚み125μmのポリエステルフイルムの被膜側を感光性樹脂組成物に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状積層体の生版を成形した。
【0055】
生版を7日間以上保管した後に、ハイライト部印刷性、版面粘着性、耐刷性の評価を行った。これらの評価結果を実施例1のポリアミドの詳細とともに表1に示した。
【0056】
実施例2〜18、比較例1〜4
実施例1と同様にして水溶解性のポリアミドを合成した。ポリアミドの弾性率とガラス転移温度(Tg)は、実施例1と同様にして測定した。得られたポリアミドを用いて実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作成し、印刷原版を得た。得られた印刷版を実施例1と同様の評価を行った。これらの評価結果を実施例2〜18と比較例1〜4のポリアミドの詳細とともに表1に示した。
【0057】
実施例19
紫外線吸収材を含む接着剤組成物を250μm厚みのポリエステルフィルムにコートした塗膜20μmの接着剤層を有する支持体を用いて、この支持体の接着剤層面に実施例2の感光性樹脂組成物を流延し、厚み125μmのポリエステルフイルムを感光性樹脂組成物に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状積層体の生版を成形した。得られた版を25W/m
2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。続いて、レーザー彫刻装置にLuescher Flexo社製の300W炭酸ガスレーザーを搭載したFlexPose ! directを用いてレーザー彫刻(直彫り)を実施した。彫刻カスや粘着物の付着が少なく、またシャープで微細なレリーフドットを再現できた。実施例2と同様にハイライト印刷性、版面粘着性、耐刷性の評価を行なったところ、いずれも優れた結果が得られた。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から分かるように、実施例1〜18に示すように、ジアミン及びジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を30〜90モル%含有し、且つジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を20モル%以上含有するポリアミドを用いた場合、1〜5%のハイライト網点の階調性、粘着性、耐刷性に優れている。一方、比較例1や2に示すように、ジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を含有しないポリアミドを用いると、ハイライト網点の印刷性及び版面粘着性に劣り、比較例3に示すようにジカルボン酸より得られる脂環族構造単位を含有するポリアミドを用いても、その含有割合が20モル%未満であれば、ハイライトの網点階調性及び版面粘着性に劣る。比較例4に示すようにポリアミド中のジアミン及びジカルボン酸より得られる脂環族構造単位の含有割合が90モル%以上では、ハイライトの網点階調性には優れるものの耐刷性(1%網点の欠け)が著しく劣る。