【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを配置して構成される。第1レンズ群は、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズとから構成される。第2レンズ群は、第4レンズと第5レンズとから構成され、第3レンズ群は、第6レンズと第7レンズとから構成される。このうち第4レンズは、曲率半径が負となる物体側の面を有し、第5レンズは、曲率半径が正となる像面側の面を有する。また、第1レンズのアッベ数をνd1、第2レンズのアッベ数をνd2、第3レンズのアッベ数をνd3としたとき、本発明に係る撮像レンズは次の条件式(1)〜(3)を満足する。
40<νd1<75 (1)
20<νd2<35 (2)
40<νd3<75 (3)
【0012】
本発明の撮像レンズは、第1レンズ群から第3レンズ群までの3つのレンズ群から構成されており、各レンズ群の屈折力の配列は物体側から正負負となる。このうち第1レンズ群および第2レンズ群では屈折力の配列が正負となるため、これらレンズ群において色収差が良好に補正されることになる。したがって、本発明の撮像レンズによれば、諸収差のうち特に色収差が良好に補正され、高解像度の撮像レンズに必要な良好な結像性能を得ることが可能となる。また、本発明の撮像レンズでは第3レンズ群が負の屈折力を有することから、撮像レンズの小型化が好適に図られる。
【0013】
上記第1レンズ群は、屈折力の配列が正負正となる3枚のレンズから構成される。これら3枚のレンズは条件式(1)〜(3)を満足するレンズ材料からそれぞれ形成される。こうした各レンズの屈折力の配列とアッベ数の並びによって、第1レンズ群においては色収差の発生が好適に抑制されるとともに、発生した色収差については良好に補正される。また、第2レンズ群においては、物体側に配置された第4レンズが、曲率半径が負の物体側の面を有し、像面側に配置された第5レンズが、曲率半径が正の像面側の面を有するため、像面湾曲が好適に補正される。よって、本発明の撮像レンズによれば、良好な結像性能を得ることができる。
【0014】
上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズが正の屈折力を有し、第5レンズが負の屈折力を有するとともに、第4レンズのアッベ数をνd4、第5レンズのアッベ数をνd5としたとき、次の条件式(4)および(5)を満足することが望ましい。
20<νd4<35 (4)
20<νd5<35 (5)
【0015】
本発明に係る撮像レンズにおいて第2レンズ群を正負2枚のレンズから構成することにより、第1レンズ群にて発生した諸収差のうち特に色収差がより良好に補正されることになる。一般的に、高解像度の撮像レンズを実現するためには、諸収差のうちでも特に色収差を良好に補正する必要がある。本発明の撮像レンズによれば、第1レンズ群から第3レンズ群までの各レンズ群の屈折力の配列、第1レンズ群を構成する3枚のレンズの屈折力の配列およびアッベ数の並び、そして第2レンズ群を構成する2枚のレンズの屈折力の配列およびアッベ数の並びによって、従来の撮像レンズよりも良好に色収差が補正される。
【0016】
上記構成の撮像レンズにおいては、第6レンズおよび第7レンズが、光軸の近傍で負の屈折力を有するとともにレンズ周辺部に向かうにつれて正の屈折力が強くなる形状に形成されることが望ましい。
【0017】
第3レンズ群は、負の屈折力を有する2枚のレンズから構成され、これら2枚のレンズは共に、光軸の近傍では負の屈折力を有するとともにレンズ周辺部に向かうにつれて正の屈折力が強くなる形状に形成される。このため、軸上の色収差のみならず軸外の倍率色収差が良好に補正されることになる。また、周知のように、CCDセンサーやCMOSセンサー等の撮像素子には、センサーに取り込むことのできる光線の入射角度の範囲、いわゆる主光線角度(CRA:Chief Ray Angle)が予め定められているところ、第6レンズおよび第7レンズの上述のレンズ形状により、撮像レンズから出射した光線の像面への入射角度はCRAの範囲内に好適に抑制されるようになる。これにより、画像の周辺部が暗くなる現象であるシェーディングの発生が好適に抑制される。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第6レンズのアッベ数をνd6、第7レンズのアッベ数をνd7としたとき、さらに次の条件式(6)および(7)を満足することが望ましい。
40<νd6<75 (6)
40<νd7<75 (7)
【0019】
上記構成の撮像レンズにおいては、レンズ系全体の焦点距離をf、第3レンズと第4レンズとの間の光軸上の距離をD34としたとき、次の条件式(8)を満足することが望ましい。
0.05<D34/f<0.2 (8)
【0020】
条件式(8)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、バックフォーカスを確保するための条件である。また、条件式(8)は、非点収差および像面湾曲を良好に補正するための条件でもある。上限値「0.2」を超えると、撮像レンズの小型化には有利となるものの、非点収差のうちタンジェンシャル像面が像面側に湾曲して非点隔差が増大するとともに、結像面がプラス方向(像面側)に湾曲するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。また、バックフォーカスが短くなるため、赤外線カットフィルタ等の挿入物を配置するための空間の確保が困難になる。
【0021】
一方、条件式(8)において下限値「0.05」を下回ると、バックフォーカスを確保し易くなるものの、非点収差のうちタンジェンシャル像面が物体側に湾曲して非点隔差が増大するとともに、結像面がマイナス方向(物体側)に湾曲する。また、画像周辺部において軸外光線に対する倍率色収差が補正不足(基準波長の結像点に対して短波長の結像点が光軸に近づく方向に移動)となり、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0022】
上記構成の撮像レンズにおいては、レンズ系全体の焦点距離をf、第1レンズの焦点距離をf1としたとき、次の条件式(9)を満足することが望ましい。
0.5<f1/f<2.0 (9)
【0023】
条件式(9)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、色収差、コマ収差、および歪曲収差を好ましい範囲内にバランスよく抑制するための条件である。上限値「2.0」を超えると、レンズ系全体の屈折力に対して第1レンズの屈折力が相対的に弱くなるため、バックフォーカスを確保し易くなるものの、撮像レンズの小型化が困難となる。また、軸外光線に対して内方コマ収差が増大するとともに歪曲収差がプラス方向に増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「0.5」を下回ると、撮像レンズの小型化には有利となるものの、バックフォーカスの確保が困難となる。また、軸外光線に対して内方コマ収差が発生するとともに、軸上および軸外共に色収差が補正不足となり、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0024】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの焦点距離をf1、第2レンズの焦点距離をf2としたとき、次の条件式(10)を満足することが望ましい。
−4<f2/f1<−0.5 (10)
【0025】
条件式(10)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、非点収差、色収差、および歪曲収差を好ましい範囲内に抑制するための条件である。上限値「−0.5」を超えると、第1レンズの正の屈折力に対して第2レンズの負の屈折力が相対的に強くなるため、バックフォーカスを確保し易くなるものの、撮像レンズの小型化が困難となる。収差の補正については、基準波長に対する短波長側の色収差の補正が軸上および軸外共に有利となるものの、非点収差のうちサジタル像面が物体側に湾曲して非点隔差が増大する。また、歪曲収差がプラス方向に増大する。このため、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0026】
一方、下限値「−4」を下回ると、撮像レンズの小型化には有利となるものの、軸上の色収差が補正不足(基準波長の焦点位置に対して短波長の焦点位置が物体側に移動)になるとともに軸外の倍率色収差が補正不足となる。また、結像面が物体側に湾曲するとともに歪曲収差がマイナス方向に増大する。よって、この場合も良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0027】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの焦点距離をf1、第3レンズの焦点距離をf3としたとき、次の条件式(11)を満足することが望ましい。
0.5<f3/f1<4 (11)
【0028】
条件式(11)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、像面湾曲、色収差、および歪曲収差を良好に補正するための条件である。上限値「4」を超えると、第3レンズの屈折力が相対的に弱くなるため、基準波長に対する短波長側の色収差の補正には有利となるものの、結像面が像面側に湾曲するとともに歪曲収差がプラス方向に増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。また、撮像レンズの小型化も困難になる。一方、下限値「0.5」を下回ると、第3レンズの屈折力が相対的に強くなるため、非点収差や歪曲収差の補正には有利となるものの、軸上色収差および軸外の倍率色収差が補正不足となり、良好な結像性能を得ることが困難となる。また、バックフォーカスの確保が困難となる。
【0029】
上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズおよび第5レンズの合成焦点距離をf45、第6レンズおよび第7レンズの合成焦点距離をf67としたとき、次の条件式(12)を満足することが望ましい。
0.5<f45/f67<5 (12)
【0030】
条件式(12)は、像面湾曲、歪曲収差、および色収差を好ましい範囲内にバランスよく抑制するための条件である。上限値「5」を超えると、基準波長に対する短波長側の軸上および軸外の色収差の補正には有利となるものの、結像面が物体側に湾曲するとともに歪曲収差がプラス方向に増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「0.5」を下回ると、歪曲収差の補正には有利となるものの、結像面側が像面側に湾曲するとともに非点隔差が増大する。このため、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0031】
上記構成の撮像レンズにおいては、レンズ系全体の焦点距離をf、第4レンズおよび第5レンズの合成焦点距離をf45としたとき、次の条件式(13)を満足することが望ましい。
−7<f45/f<−1.5 (13)
【0032】
条件式(13)は、結像面の平坦性を確保しつつ、色収差および非点収差を良好に補正するための条件である。上限値「−1.5」を超えると、色収差の補正には有利となるものの、結像面の平坦性の確保が困難になる。一方、下限値「−7」を下回ると、非点隔差が増大するとともに、結像面の平坦性を確保することが困難となる。また、色収差の補正が難しくなり、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0033】
上記構成の撮像レンズにおいて、結像面の平坦性を確保しつつ色収差および非点収差をより良好に補正するためには、次の条件式(13A)を満足することが望ましい。
−5<f45/f<−1.5 (13A)
【0034】
上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズの焦点距離をf4、第5レンズの焦点距離をf5としたとき、次の条件式(14)を満足することが望ましい。
−8<f4/f5<−1.5 (14)
【0035】
条件式(14)は、像面湾曲、非点収差、色収差、および歪曲収差を好ましい範囲内にバランスよく抑制するための条件である。上限値「−1.5」を超えると、軸上色収差および軸外の倍率色収差が増大するとともに非点隔差が増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「−8」を下回ると、第5レンズの負の屈折力に対して第4レンズの正の屈折力が相対的に弱くなるため、軸上および軸外の色収差の補正には有利となるものの、軸外光束に対する非点隔差が増大するとともに、歪曲収差がプラス方向に増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0036】
上記構成の撮像レンズにおいては、レンズ系全体の焦点距離をf、第4レンズの焦点距離をf4としたとき、次の条件式(15)を満足することが望ましい。
2<f4/f<15 (15)
【0037】
上記条件式(15)は、色収差および像面湾曲を良好に補正するための条件である。上限値「15」を超えると、レンズ系全体の屈折力に対して第4レンズの屈折力が相対的に弱くなるため、軸外光線に対する倍率色収差の補正には有利となるものの、結像面が物体側に湾曲するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「2」を下回ると、軸上色収差および倍率色収差が共に補正不足になるとともに、結像面が像面側に湾曲するため、この場合も良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0038】
上記構成の撮像レンズにおいて第5レンズは、曲率半径が負となる物体側の面と曲率半径が正となる像面側の面とを有し、物体側の面の曲率半径をR5f、像面側の面の曲率半径をR5rとしたとき、次の条件式(16)を満足するように構成されることが望ましい。
−15<R5f/R5r<−3 (16)
【0039】
条件式(16)は、結像面の平坦性を確保しつつ、倍率色収差および非点収差を良好に補正するための条件である。上限値「−3」を超えると、画像の周辺部において非点収差のうちサジタル像面が物体側に湾曲するため、結像面の平坦性を確保することが困難となる。また、倍率色収差が補正不足となるため、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「−15」を下回ると、倍率色収差の補正には有利となるものの、非点収差のうちタンジェンシャル像面が像面側に湾曲するため、非点隔差が増大することとなり、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0040】
上記構成の撮像レンズにおいては、レンズ系全体の焦点距離をf、第7レンズの焦点距離をf7としたとき、次の条件式(17)を満足することが望ましい。
−8<f7/f<−1 (17)
【0041】
条件式(17)は、コマ収差、色収差、および歪曲収差を好ましい範囲内にバランスよく抑制するための条件である。上限値「−1」を超えると、軸上色収差の補正には有利となるものの、軸外光束に対して内方コマ収差が増大するとともに、倍率色収差が増大するため、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、下限値「−8」を下回ると、倍率色収差の補正には有利となるものの、軸外光束のタンジェンシャル像面に対して外方コマ収差が増大するとともに、歪曲収差がプラス方向に増大する。このため、この場合も良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0042】
上記構成の撮像レンズにおいて、コマ収差、色収差、および歪曲収差をより良好に補正するためには、次の条件式(17A)を満足することが望ましい。
−6<f7/f<−1 (17A)