(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記精製工程は、前記クロマトグラフィーの実行後に前記放射性フッ素標識化合物の溶液を陰イオン交換樹脂に通液する二次精製工程を含む、請求項1乃至3いずれか一項に記載の放射性医薬組成物の製造方法。
前記放射性フッ素標識化合物と、アスコルビン酸又はマンニトールとを混合する安定化工程を更に含む、請求項1乃至4いずれか一項に記載の放射性医薬組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、上記一般式(1)で表される、1−(2,2−ジヒドロキシメチル−3−[
18F]フルオロプロピル)−2−ニトロイミダゾール([
18F]HIC101)又はその塩を有効成分として含有する放射性医薬組成物を製造する方法である。
【0020】
本発明において「放射性医薬組成物」とは、[
18F]HIC101を生体内への投与に適した形態で含む処方物であると定義することができる。この放射性医薬組成物は、非経口的に、即ち注射によって投与することが好ましく、水溶液であることがより好ましい。
【0021】
[
18F]HIC101は塩を形成していてもよい。塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機塩や、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸塩が挙げられる。
【0022】
本発明において「有効成分として含有する」とは、[
18F]HIC101が薬効を発揮できる程度に含有されていればよく、具体的には、[
18F]HICが所定範囲の放射能濃度で含有されていればよい。例えば、使用時における[
18F]HIC101の放射能濃度を10〜1000MBq/mLとすることが好ましく、より好ましくは50〜500MBq/mLである。
【0023】
本発明の製造方法は、上記式(2)で表される、2,2−ジメチル−5−[(2−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−5−(p−トルエンスルホニルオキシメチル)−1,3−ジオキサン(標識前駆体化合物)から[
18F]HIC101の粗生成物を得る合成工程と、[
18F]HIC101を精製する精製工程とを含む。そして、精製工程において、オクタデシルシリル化シリカゲルを固定相とし、水とエタノールとの混液を溶離液として用いたクロマトグラフィーにより、[
18F]HIC101とトシル酸との分離を実行する。
【0024】
[合成工程]
合成工程は、具体的には、以下の[
18F]フッ素化工程と、脱保護工程とを含む。
([
18F]フッ素化工程):標識前駆体と[
18F]フッ化物イオンとを反応させて、下記式(4)で表される、2,2−ジメチル−5−[2−(2−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−5−([
18F]フルオロメチル)−1,3−ジオキサン([
18F]HIC101保護体)を得る。
(脱保護工程):酸存在下に[
18F]HIC101保護体からアセトナイド保護基を除去して[
18F]HIC101の粗生成物を得る。
【0026】
標識前駆体化合物は、2−ブロモメチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを出発物質とし、ジオールをアセトナイド保護した後、2−ニトロイミダゾール及びトシル基を導入して得ることができる。具体的には、例えば、特許文献1記載の方法により合成することができる。
【0027】
[
18F]フッ化物イオンは、公知の方法により調製することができるが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、サイクロトロンにより[
18O]水から[
18F]フッ化物イオンを製造し、これを炭酸型の陰イオン交換樹脂に捕集する。次いで、炭酸カリウム水溶液を通液して[
18F]フッ化物イオンを溶出する。これにより、[
18F]フッ化物イオンを[
18F]フッ化カリウム水溶液として得ることができる。
【0028】
得られた[
18F]フッ化物イオンは、[
18F]フッ素化標識効率を向上させるため、以下の操作を加え、活性化させることが好ましい。すなわち、[
18F]フッ化物イオンの溶出液にクリプトフィックス222(商品名。1,10−ジアザ−4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン)を加え、アセトニトリルを用いて共沸する。これにより、[
18F]フッ化物イオンを、炭酸カリウムとクリプトフィクス222との混合物として得ることができる。なお、クリプトフィックス222は、炭酸カリウム水溶液とともに陰イオン交換樹脂に通液させてもよい。
【0029】
このようにして得られた[
18F]フッ化物イオンと標識前駆体化合物とを混合させて、[
18F]フッ素化反応を行う。反応は、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのような非プロトン性溶媒等の適当な溶媒中に、20〜120℃の温度下に行うことが好ましい。反応終了後、溶媒を蒸散させることで、[
18F]HIC101保護体を得る。
【0030】
脱保護工程において使用できる酸は特に限定されないが、塩酸が好ましい。反応条件は、反応時間を短縮できる観点から、室温より高温下で行うことが好ましく、例えば、50〜100℃の温度下に行うことができる。
【0031】
アセトナイド保護基の脱保護終了後は、酢酸ナトリウムなどの塩基を用いて中和をし、[
18F]HIC101の粗生成物を得る。本明細書において「粗生成物」とは、未精製の[
18F]HIC101であればよく、不純物として、少なくとも一種の無機化合物、又は、[
18F]HIC101以外の有機化合物を含むものである。[
18F]HIC101以外の有機化合物として、トシル酸や1−(2,2−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル)−2−ニトロイミダゾール(OH体)が挙げられる。この粗生成物は、[
18F]HIC101の溶液であることが好ましく、水溶液がより好ましい。
【0032】
[精製工程]
精製工程では、合成工程で粗生成物として得られた[
18F]HIC101の精製を行う。具体的には、オクタデシルシリル化シリカゲルを固定相とし、水とエタノールとの混液を溶離液として用いたクロマトグラフィーにより、[
18F]HIC101とトシル酸との分離を実行する。そして、[
18F]HIC101の画分を回収して、[
18F]HIC101溶液を得る。これにより、トシル酸とともにOH体が除去された放射性医薬組成物を得ることができる。また、[
18F]HIC101とトシル酸との分離度をさらに高めることにより、ロット間のばらつきなく安定して、OH体、トシル酸及びその他の非放射性不純物を除去することができる。
【0033】
本発明において「クロマトグラフィー」とは、前述のとおり、固定相としてオクタデシルシリル化シリカゲルを使用し、溶離液として水とエタノールとの混液を使用するものであれば限定されないが、カラムクロマトグラフィーが好ましく、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)がより好ましい。
【0034】
オクタデシルシリル化シリカゲルの粒子径は、2〜5μmのものを用いることができる。また、オクタデシルシリル化シリカゲルを充填するカラムは、内径が1mm〜20mmであり、長さが50〜250mmのものを使用することができる。
【0035】
本発明においては、溶離液として、水とエタノールとの混液を用いる。エタノールは医薬品の残留溶媒ガイドラインにおいてクラス3の残留溶媒であり、安全性の観点から好ましい。溶離液の流速は、例えば、0.5〜5mL/分とすることができる。
【0036】
溶離液中、水とエタノールとの比率は、制限されず、[
18F]HIC101とトシル酸とが分離できる条件を設定すればよい。溶離液として水/エタノールの混液を用いた場合、トシル酸は、[
18F]HIC101やOH体よりも保持時間が短い一方、テーリングの現象を起こす。そのため、HIC101とトシル酸との分離度を基準とし、クロマトグラフィー条件を設定することにより、トシル酸を除去しつつ、HIC101とOH体との分離を容易にすることができる。
【0037】
好ましくは、HIC101の保持時間(T
1)とトシル酸の保持時間(T
2)との差が5分以上の条件(|T
1―T
2|≧5分)とする。これにより、OH体及びその他の非放射性不純物が除去された放射性医薬組成物を得ることができる。より好ましくは|T
1―T
2|≧10分とし、さらに好ましくは|T
1―T
2|≧20分とする。これにより、ロット間のばらつきなく安定して、OH体及びその他の非放射性不純物の除去が可能になる。|T
1―T
2|の上限は特に制限はないが、フッ素−18の崩壊による収量低下の防止の観点からは、|T
1―T
2|≦30分が実用的である。
【0038】
より具体的には、溶離液中のエタノールの含有率を8体積%以下にすることが好ましい。これにより、OH体及びその他の非放射性不純物が除去された放射性医薬組成物を得ることができる。また、溶離液中のエタノールの含有率を5体積%以下にすることがより好ましく、3体積%以下にすると更に好ましい。これにより、ロット間のばらつきなく安定して、OH体及びその他の非放射性化合物が除去された放射性医薬組成物を得ることができる。保持時間の上限は特に制限はないが、フッ素‐18の崩壊による収量低下の防止の観点からは、溶離液中のエタノールの含有率は3〜8体積%、好ましくは3〜5体積%の範囲が実用的である。
【0039】
クロマトグラフィーの実行後、得られた[
18F]HIC101溶液は、陰イオン交換樹脂に通液してもよい(二次精製工程)。これにより、トシル酸が確実に除去された放射性医薬組成物を得ることができる。陰イオン交換樹脂は、特に限定されないが、四級アンモニウム基が固定化されたものが好ましく、トリメチルアンモニウム基が固定化されたものがより好ましい。この場合において、四級アンモニウム基のカウンターアニオンは、塩化物イオンや炭酸イオンにすることができる。陰イオン交換樹脂に通液にする[
18F]HIC101溶液の溶媒は、水とエタノールとの混液が好ましい。これにより、クロマトグラフィーで分取した[
18F]HIC101画分を利用して、この二次精製工程を行うことができる。この場合、分取した[
18F]HIC101画分をそのまま陰イオン交換樹脂に通液してもよいし、水又はエタノールを加えて、溶媒の極性を調整してもよい。
【0040】
[調製工程]
調製工程では、精製工程で得られた[
18F]HIC101溶液の濃縮を行い、クロマトグラフィーで使用したエタノール及び水などの溶媒を蒸散させる。本発明の放射性医薬組成物を注射剤として調製する場合は、濃縮後の残渣に、注射用水や生理食塩水を加えて[
18F]HIC101の放射能濃度を調整してもよい。その後、メンブレンフィルターで滅菌濾過を行うことにより、[
18F]HIC101を注射剤として得ることができる。
【0041】
調製工程では、[
18F]HIC101とアスコルビン酸、又は、マンニトールとを混合する安定化工程を更に含んでいてもよい。これにより、[
18F]HIC101の放射線分解を抑制し、使用時においても放射性不純物の少ない放射性医薬組成物を得ることができる。この安定化工程は、精製工程の後[
18F]HIC101溶液の濃縮前に実行することが好ましい。
【0042】
アスコルビン酸及びマンニトールの濃度は、本発明の製造方法により得られる放射性医薬組成物中、5〜70μmol/mLの範囲が好ましい。アスコルビン酸の濃度は、50〜70μmol/mLの範囲がより好ましく、マンニトールの濃度は、5〜15μmol/mLの範囲がより好ましい。
【0043】
アスコルビン酸及びマンニトールの添加方法は特に限定されないが、精製工程において、クロマトグラフィーの実行により得た[
18F]HIC101画分、又は、二次精製工程の実行により得た、陰イオン交換樹脂からの溶出液に対し、アスコルビン酸及びマンニトールの溶液(好ましくは水溶液)を添加することができる。
【0044】
なお、安定化工程は、調製工程以外の工程で実行することもできる。
【0045】
〔放射性医薬組成物〕
上記の製造方法を用いることにより、[
18F]HIC101を有効成分として含有し、トシル酸を実質的に含有しない、放射性医薬組成物を提供することができる。
【0046】
本発明において、「実質的に含有しない」とは、医薬として許容される不純物量であることをいう。好ましくは、高速液体クロマトグラフィー法で紫外可視吸光光度計により検出したとき、トシル酸の含量が検出限界値未満であればよい。検出波長は、200〜350nmを使用することが好ましい。固体相はオクタデシルシリル化シリカゲルを用いることが好ましい。溶離液としては、例えば、炭酸アンモニウム水溶液とアセトニトリルとの混液を用いることができる。トシル酸の分析条件の一例としては、以下が挙げられる。
・カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(内径4.6mm×長さ150mm,粒子径5μm)
・溶離液:50mmol/L炭酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=9/1
・流速:1mL/分
・検出器:紫外可視吸光光度計(波長220nm)
・トシル酸の保持時間:6〜7分
【0047】
かかる組成物は、適宜、pH調節剤、製薬学的に許容される可溶化剤、安定剤又は酸化防止剤などの追加成分を含んでいてもよい。例えば、この放射性医薬組成物は、アスコルビン酸、又は、マンニトールを含有していてもよい。これらの濃度は、好ましくは、前述の調製工程で採用できる範囲とすることができる。
【0048】
本発明の方法で得られた放射性医薬組成物は、精製工程で、有害なトリフルオロ酢酸を使用しておらず、OH体やトシル酸その他の非放射性不純物が除去されている。したがって、本発明の放射性医薬組成物は、安全性が高く、人体への投与が可能である。投与後、体内から放出される放射線をPET装置で検出することにより、体内の低酸素領域を非侵襲的に検出することができ、がんなどの疾患の診断や治療方針の決定を行うことが可能になる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を記載して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0050】
以下実施例で使用する2,2−ジメチル−5−[(2−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−5−(p−トルエンスルホニルオキシメチル)−1,3−ジオキサン(化合物1,標識前駆体化合物)、及び、2,2−ジメチル−5−ヒドロキシメチル−5−[(2−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−1,3−ジオキサン(化合物3)は、特許文献1(WO2013/042668)の実施例1の方法に従い合成した。
また、トシル酸は、和光純薬株式会社製のものを使用した。
実施例中、各化合物のNMRスペクトルによる分子構造は、NMRスペクトルは、NMR装置として、JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)を使用して得た。共鳴周波数は、
1H−NMRでは500MHz、
19F−NMRでは470MHzとした。溶媒は重クロロホルム又は重水を用い、重クロロホルムの場合はテトラメチルシランのシグナルδ0.00を参照として使用した。全ての化学シフトはデルタスケール(δ)上のppmであり、そしてシグナルの微細分裂については、略号(s:シングレット、d:ダブレット、m:マルチプレット)を用いて示した。
【0051】
[製造例1]非放射性1−(2,2−ジヒドロキシメチル−3−フルオロプロピル)−2−ニトロイミダゾール(HIC101)の合成
HIC101は、
図1に示すスキームに従い合成した。
【0052】
(ステップ1−1)2,2−ジメチル−5−フルオロメチル−5−[(2−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−1,3−ジオキサン(化合物2)の合成
化合物1(100mg,0.235mmol)をテトラヒドロフラン(3.5mL)に溶解し、テトラブチルアンモニウムフロリド・テトラフラン溶液(1.0mol/L溶液,0.24mL,0.24mmol)と、フッ化カリウム(17mg,0.293mmol)とを加え、加熱還流下で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1(v/v))にて精製を行い化合物2(57mg,収率89%)を得た。
【0053】
化合物2の
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ 7.23(d,J=0.9Hz,1H),7.18(d,J=0.9Hz,1H),4.80(s,2H),4.36(d,J
H−F=47.2Hz,2H),3.83(d,J=12.6Hz,2H),3.64(d,J=12.6Hz,2H),1.45(s,3H),1.44(s,3H)。
【0054】
(ステップ1−2)HIC101の合成
ステップ1−1で得た化合物2(57mg,0.209mmol)をメタノール(2mL)に溶解し、1mol/L塩酸(2mL)を加え、80℃で2時間加熱した。反応終了後、反応液を室温(25℃)まで冷却した後、溶媒を留去し、得られた粗生成物を酢酸エチルで洗浄することでHIC101(44mg,収率90%)を得た。
【0055】
HIC101の
1H−NMR(溶媒:重水):δ 7.44(d,J=1.0Hz,1H),7.16(d,J=1.0Hz,1H),4.74(s,2H),4.48(d,JH−F=46.8Hz,2H),3.59−3.57(m,4H)。
【0056】
[製造例2]1−(2,2−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル)−2−ニトロイミダゾール(OH体)の合成
HIC101は、
図2に示すスキームに従い合成した。
化合物3(50mg,0.184mmol)をメタノール(2mL)に溶解し、1mol/L塩酸(2mL)を加え、80℃で2時間加熱した。反応終了後、反応液を室温(25℃)まで冷却した後、溶媒を留去し、得られた粗生成物を酢酸エチルで洗浄することでOH体(56mg,定量)を得た。
OH体の
1H−NMR(溶媒:重水):δ 7.50(d,J=1.4Hz,1H),7.20(d,J=1.4Hz,1H),4.76(s,2H),3.59(s,6H)。
【0057】
[実施例1]HIC101の精製条件の検討
製造例1で合成したHIC101、製造例2で合成したOH体、及びトシル酸を用い、以下の条件で、HPLCによる精製条件を検討した。
カラム:XBrigdeC18(内径3.0mm×長さ50mm,2.5μm)
カラム温度:25℃付近の一定温度(室温)
溶離液:水/エタノール混液。体積比は表1に示す。
流速: 3mL/分
検出波長:220nm、325nm
注入量:100μg/mL
HPLC装置:e2695型(セパレーションモジュール,ウォーターズ社製),2489型(UV検出器,ウォーターズ社製)
なお、比較のため、特許文献1の実施例9に示す精製条件の結果も併せて示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1で示すように、溶離液として、エタノールの含有率が8体積%以下の水/エタノール混液を用いることで、HIC101とOH体とトシル酸とが分離できることが示された。
【0060】
[実施例2]コールドランによるHIC101の精製
炭酸カリウム水溶液(7mg/mL、0.3mL)及びクリプトフィックス222(商品名、メルク社製)のアセトニトリル溶液(20mg/mL,0.7mL)を混合した。これをアルゴンガスの通気下110℃7.5分加熱して水を蒸発させた後、アセトニトリル(0.5mL×2)を加えて共沸、乾固した。ここに標識前駆体化合物(5mg,11.4μmol)を溶解したアセトニトリル溶液(0.3mL)を加え、110℃で10分加熱した。反応終了後、1mol/L塩酸(0.6mL)を加え、85℃で3分間加熱した。反応終了後、1mol/L酢酸ナトリウム水溶液(0.6mL)を加えた後、製造例1で合成したHIC101(1mg)を加え、実施例1のNo.2の条件下でHPLCを実行した。
【0061】
得られたクロマトグラムを
図3に示す。
図3で示すとおり、保持時間11分のHIC101のピークが、トシル酸、OH体、及びその他の不純物のピークと明確に分離することが確認できた。
【0062】
[実施例3][
18F]HIC101製剤の製造[1]
サイクロトロン(製品名HM‐18,住友重機械社製,照射条件25μA,20分)から取り出した[
18F]フッ化物イオン含有[
18O]水を、陰イオン交換カラム(Sep―Pak(登録商標) Accell Plus QMA Plus Light(商品名),日本ウォーターズ株式会社製)を炭酸カリウム水溶液で前処理したものに通液し、[
18F]フッ化物イオンを吸着捕集した。次いで、該カラムに炭酸カリウム水溶液(7mg/mL、0.2mL)及びクリプトフィックス222(商品名、メルク社製)のアセトニトリル溶液(20mg/mL,0.7mL)を通液して、[
18F]フッ化物イオンを溶出した。これを窒素の通気下120℃1分、140℃1分×3加熱して水を蒸発させた後、アセトニトリル(0.3mL×2)を加えて共沸、乾固した。ここに標識前駆体化合物(5mg,11.4μmol)を溶解したアセトニトリル溶液(0.9mL)を加え、110℃で10分加熱した。85℃で1分加熱して濃縮した後、1mol/L塩酸(0.6mL)加え、85℃で1分間加熱した。反応終了後、1mol/L酢酸ナトリウム水溶液(1.5mL)を加えた後、95℃で1分間加熱した。得られた残渣を用い、実施例1のNo.2の条件下(ただし、カラムは、XBrigdeC18のサイズが内径10mm×長さ250mm,粒子径が5μmのものを使用し、検出は、UV220nm、及び、放射線検出器(OKEN社製)を用いた。)でHPLC精製を行い、
図4に示す保持時間11分のピークを[
18F]HIC101画分として分取した。当該画分にアスコルビン酸水溶液(製品名ビタシミン注射液500mg(武田薬品社製、以下、「ビタシミン注射液」と省略することもある。)、0.4mL、アスコルビン酸100mg相当)を加えた後、濃縮し、残渣を生理食塩水で希釈して、[
18F]HIC101製剤を放射能量2.05GBq,放射能濃度268MBq/mL,製造時間65分で得た。
【0063】
得られた[
18F]HIC101製剤のHPLC分析結果を
図5に示す。分析条件は、以下のとおりである。
・カラム:XBrigdeC18(内径10mm×長さ250mm,2.5μm)
・溶離液:50mmol/L炭酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=9/1
・流速:0.5mL/分
・検出器:紫外可視吸光光度計(波長220nm,製品名SPD-10ATvp,島津製作所社製),放射線検出器(製品名RLC−700,アロカ社製)
【0064】
図5(a)がUV220nmで検出した結果であり、
図5(b)がRIで検出した結果である。
図5(a)において保持時間0.7分はアスコルビン酸であり、保持時間12.7分は、ビタシミン注射液中に含まれる安定化剤のp−ヒドロキシ安息香酸メチルである。
図5(a)で示すように、OH体及びトシル酸は検出されておらず、OH体及びトシル酸を実質的に含まない[
18F]HIC101製剤が得られたことが示された。また、
図5(b)の結果から、放射化学的純度が98.4%の[
18F]HIC101製剤が得られたことが示された。
【0065】
[実施例4][
18F]HIC101製剤の製造[2]
実施例3と同様な方法で、[
18F]フッ素化反応及び脱保護反応を行った。反応終了後、1mol/L酢酸ナトリウム水溶液(1.5mL)を加えた後、95℃で1分間加熱した。得られた残渣を用い、実施例1のNo.4の条件下(ただし、カラムは、XBrigdeC18のサイズが内径10mm×長さ250mm,粒子径が5μmのものを使用し、検出は、UV325nm、及び、放射線検出器(製品名RLC−700,アロカ社製)で行った。)でHPLC精製を行い、
図6に示す保持時間25分の[
18F]HIC101画分を分取した。次いで、陰イオン交換カラム(Sep―Pak(登録商標) Accell Plus QMA Plus Light(商品名),日本ウォーターズ株式会社製)を炭酸カリウム水溶液で前処理したものに通液し、溶出液にアスコルビン酸水溶液(ビタシミン注射液500mg(武田薬品社製)、0.4mL、アスコルビン酸100mg相当)を加えた後、濃縮し、残渣を生理食塩水で希釈して、[
18F]HIC101製剤を放射能量3.70GBq,放射能濃度334.8MBq/mL,製造時間70分で得た。
【0066】
得られた[
18F]HIC101製剤のHPLC分析結果を
図7、8に示す。分析条件は、紫外可視吸光光度計の波長を325nm以外にした以外は実施例3と同様にした。
【0067】
図7(a)がUV325nmで検出した結果であり、
図7(b)は
図7(a)の拡大図である。
図8は、RIで検出した結果である。
図7において保持時間1.5分はアスコルビン酸であり、保持時間1.6分及び2.4分はビタシミン注射液由来成分であり、保持時間7.6分は[
18F]HIC101であり、保持時間15.1分は、ビタシミン注射液中に含まれる安定化剤のp−ヒドロキシ安息香酸メチルである。アスコルビン酸以外の保持時間2.6分のピークはブランク(溶離液由来のピーク)である。実施例3の方法では、ロットにより、トシル酸のピークや[
18F]HIC101の近傍に構造未知の不純物ピークが確認される場合があったが、本実施例では、ロット間のばらつきなく
図7で示すように、トシル酸は検出されず、[
18F]HIC101の近傍にもピークは見られなかった。また、
図8の結果から、放射化学的純度が97%以上の[
18F]HIC101製剤が得られたことが示された。
【0068】
[実施例5]安定化剤検討
実施例3と同様に製造した[
18F]HIC101製剤(ロットA)、アスコルビン酸水溶液に代えてマンニトール水溶液(製品名マンニットT注15%(テルモ社製))を用いる以外は実施例3と同様にして製造した[
18F]HIC101製剤(ロットB)、アスコルビン酸水溶液を添加しない以外は実施例3と同様にして製造した[
18F]HIC101製剤(ロットC)をそれぞれ用意した。そして、実施例3と同様なHPLC条件で、製造直後及び製造2時間後の放射化学的純度を分析した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2の結果から、アスコルビン酸又はマンニトールを用いることで、放射性不純物の発生を抑制できることが示された。