特許第6226344号(P6226344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6226344
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】セキュリティナット
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/02 20060101AFI20171030BHJP
   F16B 23/00 20060101ALI20171030BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F16B31/02 C
   F16B23/00 H
   F16B37/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-163402(P2016-163402)
(22)【出願日】2016年8月24日
【審査請求日】2016年9月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167211
【氏名又は名称】イイファス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝夫
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−254312(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/028161(WO,A1)
【文献】 特公昭43−023570(JP,B1)
【文献】 実公昭45−020582(JP,Y1)
【文献】 特開2001−227519(JP,A)
【文献】 特開2015−224781(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0092352(US,A1)
【文献】 米国特許第04756652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 31/02
F16B 39/12
F16B 41/00
F16B 23/00
F16B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐台形状に形成されたテーパナット部と、六角ナット状の締付ナット部と、前記締付ナット部の下面と前記テーパナット部の上底とを破断分離可能に連結してなる破断分離部とを有するセキュリティナットであって、
前記テーパナット部の上底の直径が前記締付ナット部の対角線の長さ以上の大きさに形成されており、前記破断分離部が前記締付ナット部の相対する二つの側面の上下方向と直交する横方向の略中央位置下方であって前記締付ナット部の下面にのみ設けられているとともに、当該破断分離部が前記テーパナット部の上底と締付ナット部の下面との間に上下方向に隙間をあけつつ前記テーパナット部および前記締付ナット部と一体成形されてなる、前記セキュリティナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な締結工具による取り外しを防止したセキュリティナットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なナットは、六角形等の多角形状に形成されており、ソケットレンチやスパナ等の一般的な工具を使用することで容易に弛めることができる。このため、金属製品、各種機械や器具等をはじめ、例えば、ソーラーパネル、エアコン室外機、監視カメラ等の施設の盗難が多発している。よって、このような場合に用いられるナットには、単なる取り外し難いというばかりでなく、完璧な盗難防止対策が求められている。
【0003】
このような問題を解決するため、ナットを円錐台形状に形成することで一般的な工具による取り外しを防止したセキュリティナットに関する発明が提案されている。例えば、特開2012−17832号公報では、ナットが円錐台部分と角状部分とで構成されており、前記ナットの回転操作力が所定のトルク値に達したときに前記角状部分が破断されるように、前記円錐台部分と前記角状部分との連結部分が全周にわたって環状に形成された凹溝を有する、締結構造が提案されている(特許文献1)。この特許文献1によれば、凹溝の破断トルク値を一定にコントロールすることにより安定した締結力を得ることができ、また、角状部分が破断されるのでナットを逆回転操作できなくなって盗難防止機能を奏することができるとされている。また、前記角状部分の回転中心位置には、雌ネジ溝のない挿通穴が形成されており、前記凹溝を低トルク値で破断させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−17832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、ボルトサイズ6〜50mmまでの対応が求められ、さらに防振防音(ゴム座)、樹脂ベース等に対して低トルクによる締結が要求される場合、薄い凹溝部の加工精度が必要となるためコストが高くなる。また、輸送中に凹溝部が変形する等の問題が有る。さらに、角状部分を破断除去した後には鋭利な破断面が露出してしまうため、怪我などの危険があるし、意匠的にも美しくない。しかも除去した角状部分は産業廃棄物として処理しなければならず、処理の手間やコストがかかるし、そもそも貴重な素材を無駄に廃棄しているという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、冷間圧造による安価な製造を可能とし、高い軸力による締結力を保持しつつ、破断させた六角部を廃棄せずに弛み止め効果を向上させることに利用し、ソケットレンチによる締結操作時の不具合を防ぎ、容易に破断トルク値の調整や寸法管理ができる、セキュリティナットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセキュリティナットは、冷間圧造による安価な製造方法による製造し、高い締結力を保持しながら六角部を容易に破断しつつも廃棄せずに弛み止め効果を向上させるという課題を解決するために、円錐台形状に形成されたテーパナット部と、六角ナット状の締付ナット部と、前記締付ナット部を前記テーパナット部の上底に破断分離可能に連結してなる破断分離部とを有するセキュリティナットであって、前記テーパナット部の上底の直径が前記締付ナット部の対角線の長さ以上の大きさに形成されているとともに、前記破断分離部が前記締付ナット部の相対する二辺にのみ設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷間圧造による安価な製造を可能とし、高い軸力による締結力を保持しつつ、破断させた六角部を廃棄せずに弛み止め効果を向上させることに利用し、ソケットレンチによる締結操作時の不具合を防ぎ、容易に破断トルク値の調整や寸法管理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るセキュリティナットの一実施形態を示す斜視図である。
図2】本実施形態のセキュリティナットを示す正面図である。
図3】本実施形態のセキュリティナットを示す平面図である。
図4図4におけるA−A断面図である。
図5】本実施形態のセキュリティナットを示す側面図である。
図6】本実施形態のセキュリティナットの使用例を示す図であって(a)被締結部材に挿通された固定ボルトに締結させる場合の使用状態、(b)被締結部材に挿通された寸切りボルトに締結させる場合の使用状態、および(c)2つの被締結部材に挿通された寸切りボルトに両側から締結させる場合の使用状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るセキュリティナットの一実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
本実施形態のセキュリティナット1は、図1および図2に示すように、円錐台形状に形成されたテーパナット部2と、六角ナット状の締付ナット部3と、前記締付ナット部3を前記テーパナット部2の上底に破断分離可能に連結してなる破断分離部4とを有する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0012】
テーパナット部2は、被締結部材5側のボルト6等に締結されるナットであって、図3および図4に示すように、回転中心位置に雌ネジ溝が形成されており、外周部は円錐台形状に形成されている。このテーパナット部2は、締結後において一般的な締結工具によって取り外すことのできない傾斜角度に形成されており、例えば、図2に示すように、下底縁部からの垂直線(図2の一点鎖線)に対して約30度の角度を有することが好ましい。
【0013】
また、テーパナット部2の上底の直径は、高精度の切削加工に比べて安価に製造可能な冷間圧造によって製造できるように、図2図3および図5に示すように、締付ナット部3の対角線の長さ以上の大きさに形成されている。冷間圧造とは、常温において金属を圧力により成形する加工方法であり、主に、金属部材に圧力を加えるパンチと、金型であるダイスとの組み合わせにより製品を作り出すものである。つまり、本実施形態のテーパナット部2は、前記パンチと前記ダイスとにより形成可能とするため、上底側の締付ナット部3よりも大きくかつ下底に向けて拡径するように形成されている。
【0014】
締付ナット部3は、テーパナット部2にトルクを伝達するためのものであり、一般的なソケットレンチやスパナ等に嵌合可能または係止可能な六角ナット状に形成されている。締付ナット部3は、テーパナット部2から破断分離後に被締結部材5側のボルト6に残留可能とするため、図3および図4に示すように、回転中心位置に前記テーパナット部2の雌ネジ溝と連続する雌ネジ溝が形成されている。
【0015】
破断分離部4は、締付ナット部3をテーパナット部2の上底に連結するとともに所定以上のトルクがかかることにより破断して前記テーパナット部2から前記締付ナット部3を分離させるものである。この破断分離部4は、締付ナット部3から伝達されるトルクによる応力を集中させるため、前記締付ナット部3の相対する二辺にのみ設けられている。本実施形態における破断分離部4は、破断分離後にテーパナット部2の上底に残る破断分離部4の残留凸状部によってソケットレンチ等による締結を妨げないように、相互の間隔が最も短くなる締付ナット部3の側面の略中央位置に形成されている。つまり、このような相対する二辺にのみ破断分離部4を形成することにより、破断後の残留凸状部が締付ナット部3の角部下方に収まり、外方向に飛び出てしまう可能性が低いため、ソケットレンチ等の締め付け操作の妨げになることを未然に防ぐことができる。
【0016】
また、各破断分離部4は、図2および図4に示すように締付ナット部3の側面に対して周方向に、それぞれ所定の幅となるように形成されており、当該幅の寸法を適宜設定することで破断するトルクの値の大きさを調整するようになっている。なお、破断分離部4は、例えばテーパナット部2の上底と締付ナット部3との間に平行に設置した一対の回転式カッターで切削加工することにより形成できるが、ナットのサイズに応じてその一対の回転式カッターの間の隙間や各回転式カッターの厚さ等を調整することにより、破断分離部4の破断トルク値を調整し、寸法管理がなされる。
【0017】
つぎに、本実施形態のセキュリティナット1における各構成の作用について説明する。
【0018】
図6に示すように、被締結部材5に挿通されたボルト6に本実施形態のセキュリティナット1を締結する。具体的には、締付ナット部3にソケットレンチやスパナ等の締結工具を嵌合または係合させ、当該締結工具により回転させつつ前記ボルト6に螺合させる。
【0019】
セキュリティナット1は、テーパナット部2が被締結部材5に当接するまで螺進される。そして、この状態で締付ナット部3にさらにトルクをかけると前記テーパナット部2は螺進できないため、当該トルクはセキュリティナット1にかかる。このとき、破断分離部4は、締付ナット部3の相対する二辺にのみ設けられているとともに前記テーパナット部2や前記締付ナット部3に比べて小さな寸法に形成されているため、前記トルクによる応力が集中する。
【0020】
そして、破断分離部4は、破断トルク値以上のトルクがかかると破断し、テーパナット部2と締付ナット部3とは分離する。このとき前記テーパナット部2は、締付ナット部3が分離されるまでの締結力によって確実に被締結部材5に締結される。
【0021】
また、本実施形態では、分離した締付ナット部3はさらにトルクを与えてテーパナット部2側に締め付けて被締結部材5に挿通させたボルト6に残留させる。このとき、仮に分離された破断分離部4が前記テーパナット部2の上底に凸状に残留したとしても、破断分離部4が前記締付ナット部3側面の相対する二辺の略中央位置に形成されているため、前記残留凸状部が締付ナット部3の角部下方に収まりやすく、ソケットレンチ等の締結工具に当接して回転を妨げたり、ソケットレンチ等を傷つけたりすることがない。
【0022】
また、ボルト6に残留した締付ナット部3は、テーパナット部2の雌ネジと締付ナット部3の雌ネジとに段差が生じることで、二重ナットと同様の効果、つまり雌ネジと雄ネジの接触面積が増え、弛み止め効果が発揮される。よって、残留された締付ナット部3は、産業廃棄物として処理する必要がないばかりでなく、テーパナット部2の弛み止めとしても機能する。
【0023】
一方、仮に当該締付ナット部3が逆方向に回転されて弛められてもテーパナット部2とは分離されているため、前記テーパナット部2に回転力は伝達されない。また、前記テーパナット部2は、一般的な締結工具では締結作業を行うことができないため、従来のセキュリティナットと同様、金属製品、各種機械や器具、ソーラーパネル施設等の盗難を防止することができる。
【0024】
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
1.破断分離部4を締付ナット部3の相対する二辺にのみ設けたことにより、高い軸力による締結力を保持しつつ、当該破断分離部4にトルクによる応力を集中させて適切に破断させることができる。
2.破断後の残留凸状部がソケットレンチ等の締め付け操作を妨げない。
3.破断するトルクの値を定める破断分離部4の寸法管理が容易になるため、破断トルク値の調整を簡単に行うことができる。
4.テーパナット部2の上底側を締付ナット部3よりも大きく形成するとともに、下底に向けて拡径するように形成することで、比較的安価な製造方法である冷間圧造により製造することができる。
5.締付ナット部3をボルト6に残留させることで産業廃棄物として処理する無駄がなくなる。
6.残留させた締付ナット部3によって弛み止めナットとしての機能を高められるとともに、破断面による怪我を防止し、締結後の意匠的にも美しい。
【0025】
なお、本発明に係るセキュリティナットは、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 セキュリティナット
2 テーパナット部
3 締付ナット部
4 破断分離部
5 被締結部材
6 ボルト
【要約】
【課題】 冷間圧造による安価な製造を可能とし、高い軸力による締結力を保持しつつ、破断させた六角部を廃棄せずに弛み止め効果を向上させることに利用し、ソケットレンチによる締結操作時の不具合を防ぎ、容易に破断トルク値の調整や寸法管理ができる、セキュリティナットを提供する。
【解決手段】 円錐台形状に形成されたテーパナット部2と、六角ナット状の締付ナット部3と、前記締付ナット部3を前記テーパナット部2の上底に破断分離可能に連結してなる破断分離部4とを有するセキュリティナット1であって、前記テーパナット部2の上底の直径が前記締付ナット部3の対角線の長さ以上の大きさに形成されているとともに、前記破断分離部4が前記締付ナット部3の相対する二辺にのみ設けられている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6