【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の撮像レンズは、光学全長は5.4mm程度であり、比較的低背化が実現できている。しかし、4枚構成のため収差補正が十分ではない。また、最大画角が70°から75°程度で、比較的広角化が図られているが、近年の更なる広角化の要求に対応することは困難である。さらに、F値は2.8程度で、近年要求される明るいレンズ系に対応することは困難である。
【0009】
上記特許文献2に記載の撮像レンズは、光学全長は7.8mm程度であり、撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも長く、低背化に不利な構成である。5枚構成として諸収差を良好に補正しつつ、F値は2.0から2.5程度の明るいレンズ系を実現しているが、最大画角は62°程度であり、これ以上の広角化に対応するには課題がある。
【0010】
このように、従来の技術においては、高解像度、小型化、低背化に対応し、かつ広角化の要求を満足することは困難であった。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、広角でありながら、諸収差を良好に補正しつつ、十分な明るさに対応し、5枚構成でありながら、小型、低背の撮像レンズを低コストで提供することにある。
【0012】
なお、ここでいう低背とは光学全長が撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも短いレベルを指しており、広角とは全画角で70°以上のレベルを指している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の撮像レンズは、固体撮像素子上に被写体の像を結像する撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りと、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、像面側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有する第2レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状で両面が非球面の正または負の屈折力を有する第3レンズと、像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で物体側および像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第5レンズとから成り、全てのレンズはプラスチック材料で構成され、
全てのレンズのd線における屈折率は、1.50より大きく、かつ1.65より小さい範囲であり、以下の条件式(1)から(
3)を満足するよう構成した。
(1) 2.928≦r7/r8
≦4.080
(2) −1.35<f4/f5<−0.8
(3) TLA/2ih≦0.747
ただし、
r7:第4レンズの物体側の面の曲率半径
r8:第4レンズの像面側の面の曲率半径
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
TLA:フィルタ類を取り外した際の最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から像面までの光軸上の距離(光学全長)
ih:最大像高
本発明の他の一態様の撮像レンズは、固体撮像素子上に被写体の像を結像する撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りと、物体側および像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状で両面が非球面の正または負の屈折力を有する第3レンズと、像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で物体側および像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第5レンズとから成り、全てのレンズはプラスチック材料で構成され、
全てのレンズのd線における屈折率は、1.50より大きく、かつ1.65より小さい範囲であり、以下の条件式(
1b)、(2)、(3)および(9)を満足するよう構成した。
(
1b) 2.0<r7/r8≦3.390
(2) −1.35<f4/f5<−0.8
(3) TLA/2ih≦0.747
(9) 0.50<r4/f≦0.726
ただし、
r7:第4レンズの物体側の面の曲率半径
r8:第4レンズの像面側の面の曲率半径
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
TLA:フィルタ類を取り外した際の最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から像面までの光軸上の距離(光学全長)
ih:最大像高
r4:第2レンズの像面側の面の曲率半径
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【0014】
上記構成の撮像レンズは、パワー配列がテレフォトタイプに近い構成となっているため、光学全長の短縮が図られる。正の屈折力の第1レンズで発生する球面収差及び色収差の補正を第2レンズが良好に補正する。また、両面が非球面の弱い正または負の屈折力の第3レンズが、軸上色収差及び高次の球面収差やコマ収差を小さく抑える。強い正の屈折力の第4レンズで低背化を維持しながら、非点収差及び像面湾曲の補正を行う。さらに、負の屈折力の第5レンズが第4レンズで発生した球面収差を補正するとともに、像面湾曲を良好に補正する。
【0015】
条件式(1)は第4レンズの近軸における形状を適切な範囲に規定するものである。条件式(1)の上限を上回る場合は第4レンズの正の屈折力が強くなり過ぎるため、球面収差の補正が困難になる。一方、条件式(1)の下限値を下回る場合は第4レンズの屈折力が弱くなり過ぎるため、非点収差および像面湾曲の補正が困難になる。
【0016】
条件式(1)については、以下の条件式(1a)がより好ましい範囲である。
(1a) 2.5<r7/r8<4.5
【0017】
条件式(2)は第4レンズと第5レンズの屈折力の関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(2)の範囲内に規定することで、色収差および像面湾曲の良好な補正が可能になる。
【0018】
条件式(2)については、以下の条件式(2a)がより好ましい範囲である。
(2a) −1.25<f4/f5<−0.9
【0019】
条件式(3)は光学全長と最大像高との関係を規定し、低背化を図るための条件である。条件式(3)の上限値を上回る場合は、光学全長が増大し、低背化が困難になる。
【0020】
条件式(3)については、以下の条件式(3a)がより好ましい範囲である。
(3a) TLA/2ih<0.78
【0021】
条件式(4)は撮像レンズを構成するそれぞれのレンズの屈折率を規定している。条件式(4)の範囲に規定することで、低コストでありながら性能の良い撮像レンズを提供することが可能になる。
【0022】
また、本発明の第5レンズは、光軸近傍で両凹形状、または光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状であることが望ましい。光軸近傍で両凹形状を採る場合は、第4レンズで発生する収差を第5レンズで補正しやすくなる分、正の屈折力を強く設定することが可能になるため、より低背化に有利な構成となる。また、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状にすれば、より像面湾曲を好適に補正することができる。
【0023】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5) 0.7<ih/f<1.0
ただし、
ih:最大像高
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【0024】
条件式(5)は最大像高と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(5)の上限値を上回る場合、低背化には有利になるが、画角が広くなり過ぎるため、特に画面周辺部における諸収差の補正が困難になる。一方、条件式(5)の下限値を下回る場合、焦点距離が長くなり過ぎるため、低背化が困難になる。
【0025】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(6)、(7)を満足することが望ましい。
(6) 0.9<TLA/f<1.45
(7) 0.24<bf/f<0.41
ただし、
TLA:フィルタ類を取り外した際の最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から像面までの光軸上の距離(光学全長)。
bf:フィルタ類を取り外した際の第5レンズの像面側の面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス)。
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【0026】
条件式(6)は光学全長と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(6)の上限値を上回ると光学全長が長くなり過ぎるため低背化が困難になる。一方、条件式(6)の下限値を下回ると、光学全長が短くなり過ぎて低背化には有利になるが、諸収差の補正が困難になるとともに、製造時の誤差感度が上昇するため好ましくない。
【0027】
なお、条件式(6)については、以下の条件式(6a)がより好ましい範囲である。
(6a) 1.0<TLA/f<1.30
【0028】
条件式(7)はバックフォーカスと撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の範囲に設定することで、IRカットフィルタ等のフィルタを配置するスペースが確保できる。
【0029】
なお、条件式(7)については、以下の条件式(7a)がより好ましい範囲である。
(7a) 0.27<bf/f<0.38
【0030】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8) f4<f1
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
【0031】
条件式(8)は第1レンズと第4レンズとの屈折力の大きさの関係を規定するものである。
本発明の撮像レンズでは、正の屈折力を有する第1レンズと第4レンズによって低背化が図られるが、条件式(8)に示すように、第4レンズの屈折力を第1レンズの屈折力よりも大きく設定することでより低背化が可能になる。
【0032】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9) 0.50<r4/f<1.0
ただし、
r4:第2レンズの像面側の面の曲率半径
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【0033】
条件式(9)は第2レンズの像面側の面の曲率半径と撮像レンズ全系の焦点距離との関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(9)の上限値を超える場合、第2レンズの像面側の面における負の屈折力が弱くなり過ぎるため、色収差の補正が不十分になり易い。一方、条件式(9)の下限値を下回る場合、第2レンズの像面側の面の負の屈折力が強くなり過ぎ、当該レンズ面の誤差感度が上昇するため、安定した性能を維持しながらの大量生産が困難になる。
【0034】
なお、条件式(9)については、以下の条件式(9a)がより好ましい範囲である。
(9a) 0.55<r4/f<0.90