【実施例】
【0019】
[実験例I]
<各種金属イオン添加時のイオン会合体の生成反応によるイオン液体の形状の検討>
本実験の操作フローを
図2に示す。
本実験で使用した試薬は以下のとおり。
・1-Butyl-3-methylimidazolium Chloride [BMIm
+Cl
-]:関東化学株式会社
・Lithium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide [Li
+TFSI
-]:関東化学株式会社
・アンモニア水:関東化学株式会社 特級
・塩化アンモニウム:和光純薬工業株式会社 鹿特級
・各種金属イオン:市販の原子吸光用試薬1000ppmのもの
また、本実験で使用した機器は以下のとおり。
・pHメーター:堀場製作所,pHメーター F-51
・顕微鏡:株式会社マツザワ,ビッカーズ硬度計PVT-X7
サンプル管に陽イオン物質[BMIm
+Cl
-],金属試料溶液(各種金属終濃度20ppm),pH緩衝溶液[NH
3/NH
4C1]を加え軽く混合して均一状態とする。ここに,陰イオン物質[Li
+TFSI
-] を加えると溶液全体が白濁する。その後,相分離完了するまで約90分静置した。相分離後,イオン液体相の形状に関して検討を行った。
【0020】
アンモニア系緩衝溶液と各種金属イオンの共存によるイオン液体の形状を
図3に示す。このように、金属イオンの違いによってイオン液体の形状に変化が見られた。周期表上の第4周期ではSc,Feが粒子状となり、それ以外では一つにまとまり、粒子状にはならなかった。しかし、Feに関しては、目視で確認できる水酸化物の沈澱が生成し、イオン液体相の粒径が大きいものであった。第3族においては、Sc,Y,La,Ce,Nd,Eu,Gd,Dy,Luが粒子状になり、検討を行ったもの全てが粒子状になった。
これらには、イオン液体相の粒子サイズが大きいものもあり、粒子状であっても形状に関しては一様ではなかった。
【0021】
[実験例2]
<金属イオンの濃度変化によるイオン液体相の粒子サイズの検討>
アンモニア系緩衝溶液において、アンモニア濃度一定で金属イオンの濃度を増やしていくことによって、イオン液体相の粒子サイズが小さくなるであろうと考え実験を行なった。
本実験では、実験例1と同様な実験を、金属イオンとしてNdを使用し、その濃度を10〜1000ppmの範囲で変化させて行った。この操作フローを
図4に示す。
【0022】
金属イオンの濃度変化によるイオン液体相の粒子サイズの検討に関する結果を
図5、
図6、
図7に示す。Ndが0ppmの時、粒径は約7mmであった。Ndが40ppmの時、粒径の平均は65μmであり、約100分の1に変化した。
図7によれば、40ppm以上の濃度とすることにより、更に微細なイオン液体粒子を生成させることができ、ナノサイズのイオン液体粒子を得ることも可能である。
【0023】
イオン液体粒子を顕微鏡で観察した写真が
図8である。様々な金属イオン濃度に対する球状ビーズが観察できる。
【0024】
[実験例3]
サンプル管に0.4M塩化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム[BMIm
+][Cl
-]2mL、金属試料溶液10mL、NH
3 / NH
4Cl緩衝溶液6mLを加え、混合し均一状態とした。ここに、0.4Mリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[Li
+][TFSI
-]2mLを加えると溶液全体が白濁し、相分離現象が起こる。相分離が完了するまで静置し、相分離後、上澄み液をサンプル溶液とし高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)にて金属濃度を測定し,抽出率を算出した。この時,溶液の総体積は20mLとなった。その後、イオン液体を含む残りの溶液を濾過,さらに濃度1M硝酸1mLを通液し、溶離液中の金属イオン濃度をICP-OESにて測定し、回収・濃縮率を算出した。
得られた溶離液をICP-OESにてNdの濃度を測定した。金属試料溶液の総濃度を表1に示す。金属試料溶液の総濃度10ppb−1ppm間における添加濃度と回収濃度との関係を
図9(a)、1ppm−50ppm間における添加濃度と回収濃度との関係を
図9(b)に示す。また,濃縮倍率は10倍であった。
【0025】
【表1】
【0026】
以上の実験により、BMIm
+/TFSI
-系の生成反応を用いて、アンモニア系緩衝溶液において各種金属イオン添加時のイオン液体相の形状の検討、金属イオンの濃度変化によるイオン液体相の粒子サイズの検討、Ndイオンの添加・回収を行った場合の濃縮倍率の測定を行なった。実験例1からは各種金属イオンにおいて、粒子状になるものとそうでないものがあった。実験例2からは金属イオン濃度を高くしていくことによって、イオン液体相の粒子サイズが小さくなっていくことが確認でき、実験例3からは、本発明のイオン液体微粒子を利用すれば、高倍率で金属イオンを濃縮できることが確認できた。