(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226384
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ハイブリッド浴槽保温システム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20171030BHJP
F24H 1/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
A47K3/00 E
F24H1/00 602G
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-178715(P2014-178715)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-52376(P2016-52376A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514224013
【氏名又は名称】株式会社アラキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祐之
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−120782(JP,A)
【文献】
特開2007−255775(JP,A)
【文献】
特開2013−185786(JP,A)
【文献】
特開昭56−023662(JP,A)
【文献】
特開平03−194354(JP,A)
【文献】
特開平02−302568(JP,A)
【文献】
特開2010−223446(JP,A)
【文献】
特開2008−101906(JP,A)
【文献】
特開昭60−144575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18−1/20
F24H 4/00−4/06,
F24H 9/00
F24D 17/00
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環水路と、熱媒体路とを有するハイブリッド浴槽保温システムであって、
浴槽から排出された循環水を加熱するための熱交換器と、
前記熱交換器と熱媒体路で接続されているヒートポンプと、
前記熱交換器と循環水路で直列に接続された、循環水を加熱するためのボイラーと、を
含み、
前記熱媒体路は、第一熱媒体路と第二熱媒体路とに分岐され、第一熱媒体路中の熱媒体を前記ヒートポンプで加熱し、第二熱媒体路中の熱媒体をボイラーの煙突の熱で加熱する、ハイブリッド浴槽保温システム。
【請求項2】
前記分岐に電動三方弁が設けられており、熱媒体が第一熱媒体路及び第二熱媒体路のい
ずれかを通る、請求項1に記載のハイブリッド浴槽保温システム。
【請求項3】
前記ボイラーは、浴槽に供給される水を直接加熱する直接加熱方式のボイラーである、請求項1又は2に記載のハイブリッド浴槽保温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ないエネルギーで浴槽を保温できるハイブリッド保温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽、特に、1000リットルから2000リットルのような大きな浴槽を有する入浴施設においては、大量の水を使用することから、大きな熱量を出すことができるオイルを使用するボイラー又はガスを使用する熱源で水を温めている(例えば、特許文献1)。しかしながら、いずれの熱源も燃料費が高いため、ランニングコストの低い浴槽保温システムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−314260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、燃料費を抑えつつ、適切に浴槽内のお温を加熱及び保温することができる浴槽保温システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題に鑑み、本発明者は、鋭意研究の末、下記する本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、循環水路と、熱媒体路とを有するハイブリッド浴槽保温システムであって、浴槽から排出された循環水を加熱するための熱交換器と、前記熱交換器と熱媒体路で接続されているヒートポンプと、前記熱交換器と循環水路で直列に接続された、循環水を加熱するためのボイラーと、を含
み、前記熱媒体路は、第一熱媒体路と第二熱媒体路とに分岐され、第一熱媒体路中の熱媒体を前記ヒートポンプで加熱し、第二熱媒体路中の熱媒体をボイラーの煙突の熱で加熱するハイブリッド浴槽保温システム、に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハイブリッド浴槽保温システムでは、ヒートポンプとボイラーの両方を備えている。そのため、浴槽のお湯を保温する際は、ヒートポンプによる加熱を行い、低温から加熱する場合または急激に温度を上げるような場合等の大きな熱量を使用する際は、ボイラーにより加熱することができるため、全体として燃料費を抑えつつ、熱量が比較的小さいというヒートポンプの短所をボイラーで補うことができる。また、2種類の熱源があるため、トラブルで一方の熱源が利用できなくなったとしても、入浴できる湯温を保つことができる。さらには、ボイラーのみの既存の保温システムにも、ヒートポンプおよび熱交換器を組み込むことができるため、設置に多くの費用がかかることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のハイブリット浴槽保温システムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
[浴槽2の水又はお湯の循環について]
まず、浴槽2の水又はお湯の循環について説明する。本発明の浴槽保温システムにおいて、新たに補給された水は、給水路を通り、浴槽2に導入され、浴槽2中のお湯と混合される。浴槽2のお湯は、浴槽2の吸込口3から吸い込まれ、温度センサー4を経由し、自動薬品注入装置5により薬品が注入される。ヘアーキャッチャー6、浴槽循環ポンプ7、ろ過タンク8を経由し、熱交換器9に導入される。熱交換器9において、お湯は加熱される。その後、灯油ボイラー10を経由して、浴槽2に戻る。灯油ボイラー10では、灯油ボイラー10が稼働している場合は、灯油ボイラー10から大きな熱量を得ることができ、お湯は加熱される。水又はお湯は循環水路16を通って、上記システムを循環する。このように、本発明の浴槽保温システムは、熱交換器9と灯油ボイラー10の2つの加熱手段を有する。なお、本願明細書において、新たに浴槽2給水路17から供給される水を供給水、浴槽2の吸込口3から出て、浴槽2に戻ってくるお湯又は水を循環水とする。
【0010】
[熱交換器9の加熱について]
本発明における熱交換器9による加熱について説明する。本発明の熱交換器9は、ヒートポンプ11又は灯油ボイラーの煙突19近傍を通過して加熱された熱媒体が循環水に熱を伝達することによって、循環水を加熱する機能を有する。
【0011】
より詳細に説明すると、熱交換器9を出た熱媒体は、熱媒体路13を通る。熱媒体路13は、電動三方弁12によって、第一熱媒体路14と第二熱媒体路15とに分離される。第一熱媒体路14中の熱媒体は、ヒートポンプ11を通過することによって熱を得る。ここで、ヒートポンプ11は特に限定されるものではないが、一般的な空冷熱交換手段を有するものを使用する。一方、第二熱媒体路15の熱媒体は、灯油ボイラー10の排熱によって熱せられた、灯油ボイラーの煙突19から熱を得ることができる。ここで第二熱媒体路15は、効率良く熱を伝達する観点から、第二熱媒体路15を煙突19に巻き付けてある。なお、この熱交換のシステム中にさらに灯油ボイラー等を設置することもできる。なお、熱媒体は、熱媒体循環ポンプ20により循環される。
【0012】
ここで、熱交換器9、ヒートポンプ11、灯油ボイラー、電動三方弁12等の操作は、循環水と設定温度との差を考慮して制御ボックス18で電気制御される。
【0013】
[機能]
本発明のハイブリッド浴槽保温システムでは、温度を急速に上げたい場合や、設定温度と循環水との温度が大きい場合などは、灯油ボイラー10を作動させ、ヒートポンプ11を停止させることができる。この場合、熱交換器9を出た熱媒体は、電動三方弁12により、第二熱媒体路15側、すなわち、作動している灯油ボイラーの煙突19側に流れる。灯油ボイラー10の排熱により、煙突19が加熱されている。第二熱媒体路15を通る熱媒体は、加熱された煙突19より熱を得て、熱交換器9において、循環水を加熱することができ、灯油ボイラー10に入る前に予熱することができる。
【0014】
一方、浴槽2のお湯を保温するとき等、熱量をそれほど多く必要としない場合は、ヒートポンプ11が作動し、灯油ボイラー10は停止することができる。この際、電動三方弁12が作動し、熱媒体を第一熱媒体路14に導き、熱媒体をヒートポンプ11に導入する。熱交換器9で熱を得た循環水は、停止している灯油ボイラー10を経由して、浴槽2に戻される。
【0015】
ヒートポンプ11の種類は、急激に水の温度を上昇させる必要もないことから、比較的熱量の低いものでも使用することでき、例えば、業務用空気熱ヒートポンプAC200V、3相タイプでもよいし、家庭用空気加熱ヒートポンプAC200V、単相タイプも使用することができる。
【0016】
使用される灯油ボイラー10の代わりに、その他の加熱ボイラーを使用することができる。灯油ボイラー10の熱は別途熱交換器9を設けて、熱交換により循環水を温める関節加熱方式を採用してもよいが、酸性、塩基性が強くない循環水の場合は、図面に示しているような循環水を直接加熱する直接加熱方式を採用する方が、省エネルギー化、省スペース化の観点で好ましい。
【0017】
本発明の効果について説明する。
[1] 循環水路16と、熱媒体路とを有するハイブリッド浴槽保温システムであって、浴槽2から排出された循環水を加熱するための熱交換器9と、前記熱交換器9と熱媒体路13で接続されているヒートポンプ11と、前記熱交換器9と循環水路16で直列に接続された、循環水を加熱するためのボイラー10と、を含むハイブリッド浴槽保温システムは、ヒートポンプ11とボイラー10の両方を備えている。そのため、浴槽2のお湯を保温する際は、ヒートポンプ11による加熱を行い、低温から加熱する場合または急激に温度を上げるような場合等の大きな熱量を使用する際は、ボイラーにより加熱することができるため、全体として燃料費を抑えつつ、熱量が比較的小さいというヒートポンプ11の短所をボイラー10で補うことができる。また、2種類の熱源があるため、トラブルで一方の熱源が利用できなくなったとしても、入浴できる湯温を保つことができる。さらには、ボイラー10のみの既存の保温システムにも、ヒートポンプ11および熱交換器9を組み込むことができるため、設置に多くの費用がかかることもない。
【0018】
[2]熱媒体路13は、第一熱媒体路14と第二熱媒体路15とに分岐され、第一熱媒体路14中の熱媒体を前記ヒートポンプ11で加熱し、第二熱媒体路15中の熱媒体をボイラーの煙突19の熱で加熱する態様であれば、ボイラー10の運転によって、加熱された煙突19から熱量を得ることができるため、さらなる省エネが期待できる。また、ヒートポンプ11及び熱交換機を通る熱媒体路13から分岐して取り付けることができるので、さらなる熱交換器9を設置する必要もなく、省スペース化になる。
【0019】
[3]前記分岐に電動三方弁12が設けられており、熱媒体が第一熱媒体路14及び第二熱媒体路15のいずれかを通る態様にすることにより、熱量を供給できない熱媒体路13に熱媒体が通過しないため、熱交換の効率が極めてよいものとなる。
【0020】
[4]前記ボイラー10は、浴槽2に供給される水を直接加熱する直接加熱方式のボイラー10である場合は、ボイラー10の熱を熱交換器9によって加熱する間接加熱方式のボイラー10よりも、省エネ化になり、また別の熱交換器9も必要ないことから省スペース化になる。
【0021】
以上、図面を参照して説明するが、本発明にはこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
1 ハイブリット浴槽保温システム
2 浴槽
3 吸込口
4 温度センサー
5 自動薬品注入装置
6 ヘアーキャッチャー
7 浴槽循環ポンプ
8 濾過タンク
9 熱交換器
10 灯油ボイラー
11 ヒートポンプ
12 電動三方弁
13 熱媒体路
14 第一熱媒体路
15 第二熱媒体路
16 循環水路
17 給水路
18 制御ボックス
19 灯油ボイラーの煙突
20 熱媒体循環ポンプ