(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電池制御装置と通信可能に構成された停止監視装置が、前記電池制御装置の停止中の前記温度を検出し、前記電池制御装置の停止時刻及び再起動時刻から前記停止時間を検出し、前記電池制御装置の再起動後に前記電池制御装置に対して前記停止時間及び前記温度を通知する請求項1の劣化推定方法。
前記電池制御装置は、前記電池の自己放電量速度情報及び停止前の電池の電圧と再起動後の電池の電圧との差分電圧に基づき前記停止時間を検出する請求項1の劣化推定方法。
前記電池制御装置は、前記電池の充放電による充電状態変動範囲を計算し前記温度を検出し、設定充電状態変動範囲及び設定温度に応じた電池の劣化を示す第2の劣化情報データベースに基づき、前記電池から計算された計算充電状態変動範囲及び前記温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記電池の充放電中の劣化を推定する請求項1乃至4の何れか一つの劣化推定方法。
前記電池制御装置は、前記劣化の推定を含む前記電池の劣化傾向を検出し、検出された劣化傾向に基づき前記電池の寿命を予測する請求項1乃至6の何れか一つの劣化推定方法。
前記電池制御装置は、前記計算充電状態及び前記温度に応じた一定期間における電池の使用条件を解析し、前記使用条件及び前記第1の劣化情報データベースに基づき、前記電池の劣化を推定する請求項1乃至7の何れか一つの劣化推定方法。
前記電池制御装置は、前記電池の充放電による前記電池の内部抵抗の変化に基づき充放電中の前記電池の温度上昇値を推定し、推定された温度上昇に基づき、前記電池の劣化を推定する請求項9の劣化推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図中の同一名称のブロックは実質的に同一の動作が実行可能である。
【0009】
(各実施形態に共通の概念)
図1Aは、電池制御システムの一例を示すブロック図である。
図1Aに示すように、電池制御システムは、電池制御装置110、電圧検出器111、温度検出器112、電流検出器113を備える。電池制御装置110は、電圧測定部121、温度測定部122、電流測定部123、SOC算出部124、平均SOC算出部125、平均温度算出部126、サイクル数算出部127、記憶装置128、劣化計算部129を備える。
【0010】
なお、電池101は、ひとつのセルで構成されても良いし、セルを複数個直列、並列に接続した電池パックで構成されてもよい。
【0011】
電池制御装置110は、電池101の充放電を制御する。電池制御装置110は、電池101の電圧、温度、電流を計測する電圧検出器111、温度検出器112、電流検出器113を通して電池101の電圧、温度、電流を取得する。つまり、電圧測定部121が、電圧検出器111からの電圧検出値に基づき電圧値を測定し、温度測定部122が、温度検出器112からの温度検出値に基づき温度値を測定し、電流測定部123が、電流検出器113からの電流検出値に基づき電流値を測定する。なお、電圧検出器111、温度検出器112、電流検出器113は電池制御装置内部に搭載されていても良い。
【0012】
SOC算出部124は、取得した電池101の電圧、温度および電流からSOCを計算(推定)する。この計算方法には、電流積算や電圧からの推定計算などの手法を適用することができる。なお、SOCは、充電状態(充電量又は充電率等)を意味する。
【0013】
記憶装置128は、電池101の劣化を計算(推定)するための係数(劣化情報)を保持し、劣化計算部129は、前記係数と、平均温度算出部126により計算(検出)される平均温度、平均SOC算出部125により計算された平均SOC、及びサイクル数算出部127により計算されたサイクル数などから電池101の劣化を計算(推定)する。本実施形態では、電池の劣化計算は、電池の劣化推定に相当する。記憶装置128は、電池制御装置110内のマイクロコンピュータ上のメモリでも良いし、マイクロコンピュータの電源ON/OFFをまたいでデータを保持したい場合はEEPROMなどのような不揮発性メモリでも良い。
【0014】
電池の劣化を計算するための係数(第1の劣化情報データベース)
ここでは電池の劣化として、容量の低下、抵抗の上昇、厚みの増加を例に挙げる。これらは電池の置かれた状況(温度と充電率)に応じて劣化速度が変わり、それぞれを係数として保持する。記憶装置122内に保持される係数は係数テーブルにまとめて保持される。複数の係数テーブルにより、電池101があるSOCとある温度であった場合の、単位時間当たりの電池容量・抵抗・厚みそれぞれの変化の組み合わせと、電池101の充放電1回当たりの電池容量・抵抗・厚みそれぞれの変化の組み合わせについて求めることができる。
【0015】
図1Bは、電池容量の変化を計算するための係数テーブル(第1の劣化情報データベース)の一例を示す図である。
図1Bに示すように、係数テーブルは、任意に設定された複数の設定充電状態及び設定温度に応じた電池の劣化を示す係数を含む。
図1Bに示す係数テーブルに無い値の場合(たとえば温度15度、SOC:20%など)、劣化傾向の数値は近似式により計算することができる。近似式は直線近似でも良いし、多項式近似のような曲線を近似しても良い。
【0016】
図1B中の値は変化のため単位を[mAh/hour](1時間あたりに減る容量の絶対値)としたが、[%/hour](初期値に対する1時間あたりに減る容量の比率)にしても良い。
【0017】
なお、記憶装置128は、電池101の抵抗、厚みについても同様に変化を計算するための係数テーブルを保持する。
【0018】
電池の特性の変化の計算
電池容量を例に取り、係数テーブルからどのように容量低下を計算するか記述する。電池制御装置110は、上述のように平均温度と平均SOCを計算する。たとえば、電池制御装置110が1時間に1回容量低下を計算するとき、あるときの1時間辺りの平均温度が20度、平均SOCが90%となったとき、劣化計算部129は、
図1Bの係数テーブルにより、60mAhだけ容量が低下すると計算することができる。また、平均温度が15℃、平均SOCが55%となったときは、劣化計算部129は、
図1Bの係数テーブルにより、10℃,20℃と50%,75%の値から直線近似により15度,55%の係数を計算することができる。たとえば、20度,55%の値は、「(((20度,75%の値)-(20度,50%の値))/(75-50))*(55-50)+(20度,50%の値)」すなわち22となる。この種の計算を繰り返し、15度,55%の値として「16」を得ることができる。よって16mAhだけ容量が低下すると計算することができる。
【0019】
劣化計算部129は、セル厚みや抵抗に関しても同様に計算することができる。
【0020】
上記の通り、前提条件として電池制御装置110が、電池101のSOC/温度の分布に応じた劣化速度を係数テーブルや式として持っていること、および電池101が使われたSOC/温度に応じて電池101の劣化を計算する機能を持っている。
【0021】
SOC100%について補足する。たとえば、電池101の性能上の最大SOCをSOC100%と定義してもよいし、最大SOCより低い任意の値をSOC100%と定義してもよい。同様に、電池101の性能上の最小SOCをSOC0%と定義してもよいし、最小SOCより高い任意の値をSOC0%と定義してもよい。たとえば、電池101の第1の電圧値(>0)〜第2の電圧値(>第1の電圧値)をSOC0%〜SOC100%と定義することができる。
【0022】
(実施形態1−1)電池監視機能を備えた上位システム(停止監視装置又は停止時間検出装置に相当)で情報を補完
図2に示すように、実施形態1−1に係る電池制御システムの一例を示すブロック図である。
図2に示すように、電池制御システムは、電池制御装置210、上位システム240を備える。電池制御装置210は、電圧検出器211、温度検出器212、電流検出器213、電圧測定部221、温度測定部222、電流測定部223、SOC算出部224、平均SOC算出部225、平均温度算出部226、サイクル数算出部227、記憶装置228、劣化計算部229、通信IF230を備える。上位システム240は、時間計算部241、温度測定部242、通信IF243を備える。
【0023】
電池制御システムでは、上位システム240が、電池制御装置210が停止中の時間と温度を計測し、電池制御装置210が再起動したときに、上位システム240が、電池制御装置210に対して、電池制御装置210の停止中の時間と温度の計測結果を送信する。これにより、電池制御装置210は、停止中の時間と温度の計測結果を取得することができ、取得した計測結果を劣化計算に反映させることができる。
【0024】
停止時間については、たとえば上位システム240の時間計算部241が、電池制御装置210の停止時刻を記録し、電池制御装置210が再起動したときの再起動時刻と前記停止時刻との差分から停止時間を計算する。上位システム240は、電池制御装置210が稼動しているかどうかについて、電池制御装置210からの通信(応答)を監視しても良いし、電池制御装置210への電源ラインの状態を監視しても良い。また、温度については、上位システム240は、電池201に温度ロガー等を付けて電池温度を監視、記録しても良いし、電池制御装置210が停止中すなわち充放電されない場合、電池温度は環境温度とほぼ同一のため、電池201が置かれる環境の温度を監視、記録しても良い。上位システム240が計測した電池制御装置210の停止時間および停止中の温度は通信IF243を介して電池制御装置210の通信IF230に通知する。なお、通知の際、温度については計測した温度の平均値や最大値、最小値にしてもよい。
【0025】
電池制御装置210は、停止後の再起動時に通信IF230を介して上位システム240から停止時間と温度を取得する。劣化計算部229は、通信IF230を介して取得した停止時間と停止中の温度データに基づき、電池201の劣化を計算する。
【0026】
電池制御装置210の停止中のSOCに関しては、電池の自己放電量が小さい場合は、次のように電池201の劣化を計算する。
【0027】
(1)電池制御装置210の記憶装置228が停止時点のSOCを記録しておき、再起動時に、劣化計算部229は、停止時点のSOCを平均SOCとして、電池201の劣化を計算する。
【0028】
(2)電池制御装置210の通信IF230が停止時点のSOCを上位システム240に通知し、上位システム240は通知された停止時点のSOCを記録し、再起動時に、電池制御装置210は、上位システム240で記録された停止時点のSOCを受信し、劣化計算部229は、受信した停止時点のSOCを平均SOCとして、電池201の劣化を計算する。
【0029】
電池の自己放電量が大きい場合は、劣化計算部229は、停止時点のSOCと再起動時のSOCの平均値を平均SOCとして採用し劣化計算する、あるいは停止時点のSOCと再起動時のSOCのうちの大きい値を平均SOCとして採用し劣化計算する、あるいは小さい値を平均SOCとして採用し劣化計算する。たとえば、再起動時のSOCは、「再起動時の電池の電圧」と「あらかじめ持っている電圧とSOCの関係」から電池制御装置210が計算しても良いし、「停止時のSOC」と「上位取得した温度と自己放電量の関係」から電池制御装置210が計算しても良い。
【0030】
(実施形態1−2)
電池制御装置210の停止中の温度の平均化や最大値を上位システム240で計算せずに電池制御装置210で停止中の温度の平均化や最大値を計算してもよい。この場合は、上位システム240は計測した複数の温度データを(たとえば上位システム内の記憶装置内に)保持し、電池制御装置210の再起動後に、その全温度データを電池制御装置210へ送信し、電池制御装置210の平均温度算出部226は、受信した複数の温度データに基づき平均温度を算出し、劣化計算部229は、平均温度に基づき劣化計算する。なお、電池制御装置210が、最大温度計算部や最小温度計算部を備えてもよい。
【0031】
(実施形態2)電池制御装置のタイマー(停止時間検出装置に相当)で時間計測(上位システムに頼らない)
図
3に示すように、実施形態2に係る電池制御システムの一例を示すブロック図である。図
3に示すように、電池制御システムは、電池制御装置310を備え、電池制御装置310は、電圧検出器311、温度検出器312、電流検出器313、電圧測定部321、電流測定部323、SOC算出部324、平均SOC算出部325、平均温度算出部326、サイクル数算出部327、記憶装置328、劣化計算部329、タイマー340、時間計算部341を備える。
【0032】
実施形態2では、上位システムに頼らず、電池制御装置310単体で電池制御装置310の停止中の電池301の劣化を計算する。このため電池制御装置310は、時間を計測可能なタイマー340を持つ。また、電池制御装置310の停止時にタイマー340も停止してしまうと停止中の時間を計算できなくなるため、タイマー340は停止しない。タイマーは、電池制御装置310の停止中も動作可能である。つまり、電池制御装置310の停止中とは、電池制御装置310の全体を停止するのではなく、低消費電力モード(スリープモード)による動作中を意味し、低消費電力モードによる動作中には、消費電力の大きな機器(ex.マイクロコンピュータ)を停止し、タイマー340を含む消費電力の小さい機器を停止しない。タイマー340は、電池制御装置が通常モードから低消費電力モードへ移行する場合、低消費電力モードの開始時間を記憶装置328へ記録する。たとえば、記憶装置328は、低消費電力モードの実行中にデータが失われないよう不揮発性メモリ(ex. EEPROM)であることが望まれる。低消費電力モードから通常モードへの復帰に対応し、時間計算部341は、タイマー340から復帰時間を取得し、記憶装置328に記録された開始時間と復帰時間との差分から停止時間(低消費電力モードの実行時間)を計算する。低消費電力モードから復帰したときの温度とSOCを劣化計算のための温度やSOCとして採用して良いし、低消費電力モードに移行したときの温度とSOCを記憶装置328に記録しておき、復帰したときの温度とSOC、及び移行したときの温度とSOCの平均値、最大値、最小値を劣化計算のための温度やSOCとして採用して良い。
【0033】
(実施形態3)電池制御装置で計算により停止時間算出(上位システムに頼らない)
実施形態3では、上位システムに頼らず、電池制御装置が停止時間を算出する。たとえば、電池制御装置のソフトウェアで停止時間を算出する。よって、タイマーが無くても、時間計算部341が停止時間を計算することができる。
【0034】
あらかじめ、記憶装置328は、電池301の特性として取得しておいた「電圧とSOCの関係」と「温度とSOCと自己放電速度の関係」を保持する。電池制御装置310(記憶装置328)は、停止時に電池301の電圧を記録し、電池制御装置310(時間計算部341)は、再起動時に電池の電圧、およびあらかじめ記憶装置328に保持された「電圧とSOCの関係」と「温度とSOCと自己放電速度の関係」とを用いる。たとえば、再起動時に、時間計算部341が以下の手順により停止時間を算出する。
【0035】
(1)停止時の電圧と「電圧とSOCの関係」から停止時のSOCを計算
(2)再起動時の電圧と「電圧とSOCの関係」から再起動時のSOCを計算
(3)(1)と(2)で計算した停止時のSOCと再起動時のSOCとの差分と、「温度とSOCと自己放電速度の関係」から、「SOC差分÷自己放電速度」により停止時間を計算
(実施形態4−1)充放電SOC範囲が異なることによる劣化速度の違いを考慮
図4Aに示すように、実施形態4−1に係る電池制御システムの一例を示すブロック図である。
図4Aに示すように、電池制御システムは、電池制御装置410を備え、電池制御装置410は、電圧検出器411、温度検出器412、電流検出器413、電圧測定部421、温度測定部422、電流測定部423、SOC算出部424、平均SOC算出部425、平均温度算出部426、サイクル数算出部427、記憶装置428、劣化計算部429、最大/最小SOC計算部451、充放電判定部452を備える。
【0036】
たとえば、記憶装置428は、
図4Bに示す充放電停止中の劣化係数テーブル(温度/SOCごとの係数を集めたテーブル)及び
図4Cに示す充放電時の劣化係数テーブル(第2の劣化情報データベース)を記憶する。
図4Cに示すように、劣化係数テーブルは、任意に設定された複数の設定充電状態変動範囲及び設定温度に応じた電池の劣化を示す係数を含む。電池制御装置410は、充放電中かどうかに応じた劣化計算方法を選択する。充放電判定部452は、充放電中かどうかを判定する。たとえば、充放電判定部452は、計測した電流値が一定値以上の場合、電流が流れている(=充放電中)と判定し、計測した電流値が一定値未満の場合、電流が流れていない(=充放電停止中)と判定する。
【0037】
充放電停止している場合、劣化計算部429は、実際の電池の温度/SOC分布と、あらかじめ計算しておいた温度/SOC分布ごとの劣化係数(
図4B)に基づき劣化を計算する。
【0038】
充放電中の場合の劣化計算について説明する。劣化計算部429は、充放電されるSOC範囲に応じて劣化計算に用いる劣化係数を選択する。最大/最小SOC計算部451は、充放電判定部452により充放電中と判定された場合に、SOC算出部424が算出したSOCの最大値と最小値を計算する。たとえば、以下の通り計算する(SOC:SOC算出部424が算出したSOC、SOCmax:SOC最大値、SOCmin:SOC最小値)。
【0039】
(1)充放電判定部452が充放電停止から充放電中への遷移を検出したことに対応して、最大/最小SOC計算部451は、SOCmax=SOC、SOCmin=SOCとして初期化する。
【0040】
(2)充放電判定部452が充放電中を検出したことに対応して、最大/最小SOC計算部451は、SOCmax<SOCのときSOCmax=SOCとし(SOCminは更新しない)、SOCmin>SOCのときSOCmin=SOC(SOCmaxは更新しない)とする。
【0041】
(3)充放電判定部452が充放電中から充放電停止への遷移を検出したことに対応して、最大/最小SOC計算部451は、充放電におけるSOCmaxとSOCminを決定する。
【0042】
サイクル数算出部427は、充放電判定部452により充放電停止から充放電中への遷移を検出してから、充放電中から充放電停止への遷移を検出するまでの間の充電量または放電量をサイクル数に変換する。たとえば、サイクル数算出部427が、以下により計算する(I:電流計測値、t:電流計測間隔、SOCch:充電量、SOCdh:放電量)。
【0043】
(1)充放電判定部452が充放電停止から充放電中への遷移を検出したことに対応して、サイクル数算出部427はSOCch=0、SOCdh=0として初期化する。
【0044】
(2)充放電判定部452が充電中を検出したことに対応して、サイクル数算出部427はSOCch=SOCch(前回値) + I × t ÷ 係数 を計算する。充放電判定部452が放電中を検出したことに対応して、サイクル数算出部427はSOCdh=SOCdh(前回値) + I × t ÷ 係数を計算とする。ここで係数は電流計測間隔tに依存し、充放電量の単位を[Ah]、tの単位を[秒]とすると、係数は3600となる。
【0045】
(3)充放電判定部452が充放電中から充放電停止への遷移を検出したことに対応して、サイクル数算出部427は充放電におけるSOCchとSOCdhを決定する。
【0046】
(4)また、サイクル数算出部427はSOCmaxとSOCminの差分を1サイクルの充放電量とし、SOCchもしくはSOCdhを割ることでサイクル数を計算する。
【0047】
記憶装置428は、
図4Bに示す充放電停止中の劣化係数テーブル(温度/SOCごとの係数を集めたテーブル)及び
図4Cに示す充放電時の劣化係数テーブルを記憶するが、これら劣化係数テーブルは、温度の違いに応じたテーブルだけでなく、充放電時の最大SOCと最小SOCに応じたテーブルも含む。
【0048】
たとえば、
図4Cに示すように、記憶装置428は、充放電中の最大SOCが80%以上かどうか、最小SOCが20%未満かどうかにより3パターンの劣化係数テーブルを記憶する(もちろん他の組み合わせの劣化係数テーブルを記憶するようにしても良い)。
図4Cに示す劣化係数テーブルにおいては、単位は%/cycleとする(1サイクルあたり何%劣化するか)。
【0049】
劣化計算部429は、最大/最小SOC計算部451により計算された最大SOCおよび最小SOCに対応する劣化係数テーブルを選択し、平均温度算出部426により算出された充放電中の平均温度から劣化係数を選択し、サイクル数算出部427により計算されたサイクル数を乗じて劣化率(%)を計算する。平均温度については最大温度や最小温度などでも良い。
【0050】
(実施形態4−2)
サイクル数算出部427はサイクル数を算出し、記憶装置428に記憶されている劣化係数の単位は[%/cycle]としたが、サイクル数の変わりに充放電時間としても良い。電池制御装置410はタイマーを備え、タイマーが充放電時間を検出する。また、劣化係数の単位は[%/day]や[%/hour]等の時間による劣化率を表す単位となる。
【0051】
(実施形態5−1)電池の劣化が閾値に到達したときに警告を通知
図5に示すように、実施形態5−1に係る電池制御システムの一例を示すブロック図である。
図5に示すように、電池制御システムは、電池制御装置510を備え、電池制御装置510は、電圧検出器511、温度検出器512、電流検出器513、電圧測定部521、温度測定部522、電流測定部523、SOC算出部524、平均SOC算出部525、平均温度算出部526、サイクル数算出部527、記憶装置528、劣化計算部529、寿命判定部561、通信IF562を備える。
【0052】
電池制御装置510は、電池の劣化が閾値に到達したとき(電池が寿命に到達したとき)に警告を通知する機能を備える。ここで説明する警告通知機能は、これまでに説明した何れの実施形態にも組み合わせることができる。
【0053】
寿命判定部561は、劣化計算部529の計算結果を受け取り、計算結果があらかじめ設定された閾値(寿命)に到達していたとき、寿命に到達したと判定し、通信IF562は、寿命に到達したことを外部(上位システムなど)に通知する。これは寿命到達通知機能の一例であり、通信IF562の代わりに「パトランプ」や「ブザー」などを具備し、それを点灯、音を発生するなどして寿命到達を通知しても良い。
【0054】
(実施形態6−1)寿命予測機能1
図6Aに示すように、実施形態6−1に係る電池制御システムの一例を示すブロック図である。
図6Aに示すように、電池制御システムは、電池制御装置610を備え、電池制御装置610は、電圧検出器611、温度検出器612、電流検出器613、電圧測定部621、温度測定部622、電流測定部623、SOC算出部624、平均SOC算出部625、平均温度算出部626、サイクル数算出部627、記憶装置628、劣化計算部629、寿命予測部660、寿命判定部661、通信IF662、タイマーIC663を備える。
【0055】
電池制御装置610は、電池の現在の劣化を計算することに加えて、電池の使用継続に応じた電池の寿命予測を計算する寿命予測機能を備える。ここで説明する寿命予測機能は、これまでに説明した何れの実施形態にも組み合わせることができる。
【0056】
たとえば、電池制御装置610は、電池の使用開始から現在までの劣化傾向に基づき、将来の劣化を予測し寿命を予測する。たとえば、以下のようにして寿命を予測する。
【0057】
(1)記憶装置628は、劣化計算部629の計算結果を計算時刻とともに記憶する。つまり、記憶装置628は、<計算時刻,計算結果>の組み合わせの計算結果を複数記憶する。タイマーIC663によりカウントされた時刻を計算時刻として採用する。
【0058】
(2)寿命予測部660は、予測タイミングになったら記憶装置628から1の組み合わせを読み出し、その計算時刻と計算結果の関係を回帰分析する(関係を表す近似式を求める)。
【0059】
(3)さらに、寿命予測部660は、あらかじめ定められた予測期間(ex. 1年後)と(2)で求めた回帰分析結果から、現在から予測時期経過後の劣化を計算する。
【0060】
(4)寿命判定部661は、寿命予測部660の計算した予測結果と、あらかじめ定められた閾値を比較し、閾値に達していれば寿命が近いと判定し、通信IF662が、寿命が近いことを外部へ通知する。
【0061】
寿命予測部660の予測タイミングは、タイマーIC663からの入力に基づいて、たとえば1ヵ月ごととしても良いし、あるいは上位システムから通信IF662を介して予測タイミングの指示を受け取っても良い。さらには、上位システムから通信IFを介して、予測期間や寿命と判定する閾値を受け取っても良い。
【0062】
(実施形態6−2)寿命予測機能2
電池制御装置610は、電池の使用条件(温度と充放電パターン)から将来の劣化を予測し寿命判定する。実施形態6−1との違いは寿命予測部660の処理とそれに付随する記憶装置628に記録するデータである。以降ではその違いについて説明する(予測タイミングの処理や寿命予測結果に対する判定や通知の処理は実施形態6−1と同じになる)。
【0063】
(実施形態6−2−1)使用条件=電池の温度/SOCごとの使用条件マップの場合
図6Bに示すように、使用条件が電池の温度/SOCごとの使用条件マップの場合、そのマップはたとえば温度/SOCの組み合わせごとに、単位時間当たりにどの程度の比率で電池が存在するかのテーブルとなる。
【0064】
(1)単位時間は1時間、1日、1ヶ月等が挙げられる。
【0065】
(2)SOCと温度の滞在比率は、たとえば「SOC:10%刻み」、「温度:10度刻み」のような分類をする。
【0066】
図6Bは、単位時間を1時間としたときの、1日あたりの使用方法表を記述した使用条件マップの一例を示す。なお、ここでは滞在時間とし、
図6B中の値の単位は[時間]としたが、比率[%]であらわしても良い。充放電回数は別途「回数」として用意する。ただし、期間はSOCと温度の滞在比率に合わせ、たとえば上記のように1日あたりの滞在比率の場合、充放電回数は「1日あたりの充放電回数」とする。
【0067】
図6Bに示す使用条件マップが与えられたとき、たとえば電池容量の場合は、
図1Bの係数テーブルと組み合わせて1日=24時間あたりの係数を以下のようにして計算する。
【0068】
(1)使用条件マップにおいて0時間の部分は変化の計算対象外である。
【0069】
(2)使用条件マップにおいて0時間で無い部分の変化の合計が、1日あたりの電池容量の減少値になる。
【0070】
たとえば温度が11〜20℃、SOC:51〜60%に3時間あるとき、
図1Bの係数テーブルより電池容量の減少幅は以下のように計算する。
【0071】
(1)温度とSOCをそれぞれの範囲の中央である15度、55%とする。
【0072】
(2)
図1Bの係数テーブルの10,20℃と50,75%の値から直線近似により15度,55%の係数を計算する。たとえば、20度,55%の値は、「(((20度,75%の値)-(20度,50%の値))/(75-50))*(55-50)+(20度,50%の値)」すなわち22となる。この種の計算を繰り返し、15度,55%の値として「16」を得る。
【0073】
(3)
図1Bの係数テーブルの値の単位は[mAh/day]であるため、1日あたりの変化量は16*3/24=2mAhとなる。
【0074】
(4)使用条件マップの他の領域にも0以外の数字があれば、それらについても同様に計算し、それらの計算結果の合計値を1日あたりの電池容量の変化(減少値)とする。
【0075】
劣化計算部629は、上記の通り、使用条件マップに基づき劣化を計算する。セル厚みや抵抗に関しても同様に計算する。
【0076】
寿命予測部660は、使用条件マップで定義される使用方法を繰り返した場合に劣化がどのように進むか(ex. 容量がどのように低下していくか)を繰り返し計算する。さらに寿命判定部661と連携し、あらかじめ定められた閾値に到達する期間を計算し、通信IF662が、寿命予測を上位システムに通知する。
【0077】
たとえば、劣化計算部629が1日あたり電池容量が48mAh減ると計算した場合、寿命予測部660は2日で48x2=96mAh、3日で48x3=144mAh電池容量が減ると計算する。寿命判定部661は、この計算結果を毎回受け取り、たとえばあらかじめ定められた閾値が「容量が10,000mAh低下したとき」であれば、209日後に容量低下が10,000mAhを超えるため、208日間使用可能であると判定し(209日後に寿命に到達すると判定し)、通信IF662は、208日使用可能であること(209日後に寿命に到達すること)を上位システムに通知する。
【0078】
(実施形態6−2−2)使用条件=環境温度と充放電パターンの場合
図7は、実施形態6−2−2に係る電池制御システムの一例を示すブロック図である。
図7に示すように、電池制御システムは、電池制御装置710を備え、電池制御装置710は、電圧検出器711、温度検出器712、電流検出器713、電圧測定部721、温度測定部722、電流測定部723、SOC算出部724、平均SOC算出部725、平均温度算出部726、サイクル数算出部727、記憶装置728、劣化計算部729、寿命予測部760、寿命判定部761、通信IF762、タイマーIC763、使用条件作成部764を備える。
【0079】
実施形態6−2−2では、使用条件が環境温度と充放電パターンの場合について記述する。なお、劣化計算部729の計算以降(寿命予測部760と寿命判定部761)については、実施形態6−2−1と同じため、ここでは記述を省略する。言い換えると、ここでは、環境温度と充放電パターンからどのようにして実施形態6−2−1に挙げたような使用条件マップを作成するかについて記述する。
【0080】
充放電パターンとしては、たとえば「充放電SOC範囲」、「充放電時間」および「休止時間」の組合せとする。
図8に示すように、使用条件作成部764が、使用条件マップを作成する。
【0081】
たとえば、使用条件作成部764は、使用条件マップをクリアし(ST1)、温度番号を初期値「1」に設定し(ST2)、環境温度が使用条件マップの範囲内であれば(ST3、YES)、充放電開始SOCから充放電終了SOCまでを充放電時間だけ平均的に加算し(ST4)、使用方法マップの充放電終了SOCに充放電休止時間を加算する(ST5)。後続の充放電パターンが有れば(ST6、YES)、使用条件作成部764は、ST4、ST5を繰り返し、無ければ(ST6、NO)、温度番号をインクリメントし(+1)(ST7)、温度番号が温度水準数に達するまで、ST3−ST7を繰り返し、温度番号が温度水準数に達したら(ST8、NO)、使用条件マップの生成を終了する。
【0082】
例えば、
図9に示す使用条件が与えられた場合、使用条件作成部764が1日あたりの電池の使用条件として
図10に示す使用条件マップを作成する。
図9に示す使用条件は、SOC:50%から100%に1時間かけて充電し、休止11時間後に1時間かけてSOC:100%から50%に放電し、休止11時間をとる充放電パターンの繰り返しを示す。
【0083】
SOC:100%と50%で休止が11時間あるため、使用条件作成部764は、
図10に示す使用条件マップ内にも11時間を記録する。また、使用条件作成部764は、SOC:50%→100%の充電では、充電時間1時間を平均的にSOCに割り振り、10%刻みごとに1時間/5分割=0.2時間ずつ割り振る。放電側についても同様。充放電中は環境温度よりも電池温度が上昇するため、50→100%、100→50%は環境温度よりも高い部分に0.2+0.2=0.4時間ずつ割り振る。温度上昇幅はあらかじめ実験して得た電池の温度上昇特性を元に計算可能である。
【0084】
なお、充放電電流が変わる場合は充放電時間に反映させることができる。たとえば、50%→75%を1時間、75%→100%を0.5時間などとすることにより実現可能である。
【0085】
なお、使用条件作成部764が、記憶装置728に記憶された使用条件マップを参照するケースについて説明したが、使用条件作成部764が、通信IF762を介して外部から与えられる使用条件マップを参照するようにしてもよい。この場合、使用条件が変わる場合に寿命がどのように変わるのかも推定可能になる。
【0086】
(実施形態6−2−2−1)使用条件として環境温度の代わりに使用都市名が与えられる場合
電池制御装置710は、使用条件として使用都市名が与えられる場合に、使用都市名に基づき使用条件マップを作成することができる。この場合、記憶装置728は、使用都市ごとの温度データを保持し、使用条件作成部764は、使用都市名から温度データを検索する。これにより、使用都市名(使用地区)から使用環境温度への変換が可能となる。
【0087】
たとえば、記憶装置728は、
図11に示すような気温データ(http://weather.time-j.net/Climate/Chart/tokyoより)を使用都市名(使用地区)ごと保持し、使用条件作成部764は、使用都市名(使用地区)ごとの記憶データと、与えられた使用都市名(使用地区)とに基づき、与えられた使用都市名(使用地区)を使用環境温度に置換する。
【0088】
たとえば、使用条件作成部764は、
図9の使用条件と
図11に示す気温データに基づき、
図12に示す使用条件マップを作成する。たとえば8月であれば最高気温が31.1度であるため、環境温度をその温度として使用条件マップが作成される。電池の劣化は高温ほど大きいことを考慮して最高気温=環境温度としたが、平均気温=環境温度としても良いし、最高気温、平均気温、最低気温を時系列に並べても良い。
【0089】
ここで、
図16を参照し、実施形態6−2−1、実施形態6−2−2、実施形態6−2−2−1で使用可能な使用条件マップの別例について説明する。
【0090】
上記説明した使用条件マップでは、温度とSOCの分布を一定間隔(温度:10℃、SOC:10%)としていたが、電池の性能等に応じて使用条件表上の温度とSOCの分布を一定間隔ではないように定義しても良い。たとえば、低温や低SOCで劣化速度が小さく、ほとんど絶対値が変わらないのであれば、低温や低SOCの領域をマージしても良い。また、高温や高SOCで劣化の傾向が細かく変わるのであれば、その領域を分割しても良い。
【0091】
例えば、
図16は、温度0℃以下をマージ、SOC:20%以下をマージし、温度41℃以上、SOC:81%以上を分割した使用条件マップの一例を示す。マージすることにより使用条件マップの作成コスト低減や処理量軽減、分割することにより使用条件マップに基づく劣化推定精度を向上させることができる。
【0092】
(実施形態6−2−2−2)電池の使用による劣化(抵抗上昇)を加味して寿命予測する場合
電池制御装置710は、電池の使用による劣化(抵抗上昇)を加味して寿命予測する。記憶装置728は、内部抵抗マップを保持する。また、電池制御装置710は、内部抵抗から温度上昇を計算する温度上昇計算部を備え、温度上昇計算部は、劣化計算ごとに内部抵抗マップを更新し、寿命予測時の(将来の劣化進行による)内部抵抗上昇から温度上昇を計算する。
【0093】
内部抵抗マップは、電池の出荷初期の内部抵抗マップ(評価データ)であり、記憶装置728は、この内部抵抗マップを保持する。たとえば、内部抵抗マップは、SOCと温度の組み合わせごとに用意する。
図13は、内部抵抗マップの一例を示す図である。
【0094】
内部抵抗から温度上昇幅を計算する場合、記憶装置728に記録された温度上昇係数と、充放電パターンから計算できる電流値(充放電SOC範囲と充放電時間から計算)を用いる。これは電池の充放電による温度上昇はジュールの法則(電流値の二乗と内部抵抗値の積に比例)に従うためである。
【0095】
温度上昇係数の例としては、電流値と温度により決まるテーブルが考えられる。
図14は、温度上昇係数を示すテーブルの一例を示す図である。
【0096】
たとえば、25℃環境でSOC:30%で20Aで充電・放電する場合、温度上昇計算部は、温度上昇値として、電流×電流×内部抵抗×係数を計算する(20 x 20 x 12 x 4 = 19200 → 1.92℃上昇する)。これは温度上昇の計算方法の一例であり、他の方法を採用しても良い。
【0097】
電池制御装置710は、劣化計算により内部抵抗が上昇した場合、上記内部抵抗マップを更新する。これにより温度上昇幅も増えることになり、劣化による内部抵抗上昇→温度上昇→劣化の加速の推定が可能になり、寿命予測の精度が上がる。
【0098】
なお、実施形態6−2−2−1と実施形態6−2−2−2とを組み合わせ、使用都市を入力として受け付けた上で内部抵抗マップを使用するようにしても良い。
【0099】
図13に示す内部抵抗マップでは、SOCの分布を10%で一定間隔としていたが、電池の性能等に応じて内部抵抗マップ上のSOCの分布を一定間隔ではないように定義しても良い。例えばSOCの変化に応じて内部抵抗が同じであったり、内部抵抗の変化が一定の割合であったりすれば近似式により計算できる。
【0100】
例えば、上記再掲した表では、SOC:0,10,20%で内部抵抗の値が同じであるため、SOC:10%は省略できる(SOC:0と20%の値から近似計算できるため)。このようにすることで、内部抵抗マップのサイズ、すなわち内部抵抗マップを格納するための電池制御装置上のメモリサイズを削減できるため、電池制御装置の低コスト化できる。
【0101】
一方、内部抵抗の劣化による変化が一律ではない可能性を考慮し、あえて内部抵抗マップの温度とSOCの分布を最初から一定間隔にしておくことも考えられる。この場合、低コスト化はできないが、内部抵抗が変化しても劣化推定精度を維持できる。
【0102】
(実施形態6−3)
上記において、電池制御装置710が寿命を予測するケースについて説明したが、上位システムが寿命を予測しても良い。この場合、上位システムが、寿命予測部、寿命判定部、使用条件作成部、および記憶装置等を備え、上位システム内の各部が協働して寿命を予測する。
【0103】
(実施形態7)劣化計算および寿命推定の外部プログラム化
電池制御装置内で劣化計算および寿命推定等の処理を実行しても良いし、これらの処理をプログラム化し、プログラムをコンピュータ(外部PC等)へインストールし、コンピュータ上で実行するようにしてもよい。
【0104】
図15は、上記コンピュータの概略構成の一例を示す図である。
【0105】
図15に示すように、上記コンピュータは、処理装置1501、記憶装置1502、入力装置1503、出力装置1504を備える。処理装置1501はCPU等のプロセッサーにより構成され、記憶装置1502はHDD等により構成され、入力装置1503はキーボード、マウス等により構成され、出力装置1504はディスプレイ、プリンタ等により構成される。記憶装置1502は上記プログラムを記憶し、処理装置1501はプログラムを実行する。
【0106】
また、記憶装置1502は劣化計算および寿命推定に必要な情報(係数テーブル、使用条件マップ)を記憶する。或いは、上記コンピュータは通信装置を備え、通信装置がネットワークを介して劣化計算および寿命推定に必要な情報を送受信する。
【0107】
上記コンピュータによれば比較的容易に劣化計算および寿命推定を実現可能であり、また、上記コンピュータの使用都市や使用充放電パターンが分かっている場合、電池の寿命を推定できるため、寿命を延ばすための充放電パターンの見直し(検討)にも用いることができる。
【0108】
上記説明した少なくとも一つの実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0109】
(1)電池を監視する装置が停止しているときまで考慮して計算することができる。
電池を監視する装置が停止→再起動となったとき、下記(1-1)〜(1-3)のいずれかの方法で記録した停止時間、および停止中の電池の温度とSOCを元に、再起動時に電池制御装置が劣化を計算する。
【0110】
(1-1)電池制御装置の停止中の時間と温度を上位システム側で監視しておく。停止中のSOCは装置停止もしくは再起動時のSOCとする。
【0111】
(1−2)電池制御装置の停止を監視装置の低消費電力モードに置き換え、装置内に別途設けたタイマー等で計測した時間を停止時間とする。停止中の電池温度とSOCは停止時もしくは再起動時のものとする。
【0112】
(1−3)電池制御装置の停止中の時間は、停止と再開時の電池の電圧差と自己放電量速度マップから監視装置が計算する。停止中の温度は装置停止もしくは再起動時の温度とする。
【0113】
(2)充放電SOC範囲が異なることによる劣化速度の違いを考慮して計算することができる。
【0114】
電池制御装置が電流を計測しておき、電流の大きさに応じて充放電中か充放電停止中かを判定する。さらに、充放電中は、充放電量からサイクル数もしくは充放電時間を計算し、かつ充放電中の最大、最小、平均SOC等を記録する。充放電中のSOC範囲に応じて劣化計算用のテーブルを変更することにより、充放電範囲が異なる場合に対応する。
【0115】
(3)抵抗上昇に伴う温度上昇幅の増大による劣化の加速も考慮して劣化推定することで、劣化推定精度が向上する。
【0116】
二次電池の使用環境温度や充放電範囲・回数に応じて変化する電池の劣化の進み方を計算することができ、電池を使用するシステム稼動への電池劣化の影響を減らすことができる。
【0117】
なお、電池制御装置110、210、310、410、510、610、710、及び上位システム240の各部の各処理をプロセッサーが実行してもよい。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下、本願の出願当初の請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]電池の充電状態を計算可能に構成された電池制御装置の停止時間を検出し、
設定充電状態及び設定温度に応じた電池の劣化を示す第1の劣化情報データベースに基づき、前記電池から計算された計算充電状態及び前記電池から検出された検出温度に対応する劣化情報、又は前記計算充電状態及び環境温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記停止時間の前記電池の劣化を推定する劣化推定方法。
[C2]前記電池制御装置と通信可能に構成された停止監視装置が、前記電池制御装置の停止中の前記環境温度を検出し、前記電池制御装置の停止時刻及び再起動時刻から前記停止時間を検出し、前記電池制御装置の再起動後に前記電池制御装置に対して前記停止時間及び前記環境温度を通知し、
前記電池制御装置は、停止前及び再起動後のうちの少なくとも一方で電池の充電状態を計算し、前記第1の劣化情報データベースに基づき、前記計算充電状態及び前記環境温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記停止時間の前記電池の劣化を推定するC1の劣化推定方法。
[C3]前記電池制御装置は前記電池制御装置の停止中に動作可能なタイマーを備え、前記タイマーが前記停止時間を検出し、
前記電池制御装置は、停止前及び再起動後のうちの少なくとも一方で電池の充電状態及び温度を検出し、前記第1の劣化情報データベースに基づき、前記計算充電状態及び前記検出温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記停止時間の前記電池の劣化を推定するC1の劣化推定方法。
[C4]前記電池制御装置は、前記電池の自己放電量速度情報及び停止前の電池の電圧と再起動後の電池の電圧との差分電圧に基づき前記停止時間を検出し、停止前及び再起動後のうちの少なくとも一方で電池の充電状態を計算し温度を検出し、前記第1の劣化情報データベースに基づき、前記計算充電状態及び前記検出温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記停止時間の前記電池の劣化を推定するC1の劣化推定方法。
[C5]前記電池制御装置は、前記電池の充放電による充電状態変動範囲を計算し温度を検出し、設定充電状態変動範囲及び設定温度に応じた電池の劣化を示す第2の劣化情報データベースに基づき、前記電池から計算された計算充電状態変動範囲及び前記電池から検出された検出温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記電池の充放電中の劣化を推定するC1乃至C4の何れか一つの劣化推定方法。
[C6]前記電池制御装置は、前記劣化の推定に基づき劣化が閾値に到達した場合、電池劣化を示す情報を出力するC1乃至C5の何れか一つの劣化推定方法。
[C7]前記電池制御装置は、前記劣化の推定を含む前記電池の劣化傾向を検出し、検出された劣化傾向に基づき前記電池の寿命を予測するC1乃至C6の何れか一つの劣化推定方法。
[C8]前記電池制御装置は、前記計算充電状態及び前記検出温度に応じた一定期間における電池の使用条件を解析し、前記使用条件及び前記第1の劣化情報データベースに基づき、前記電池の劣化を推定するC1乃至C7の何れか一つの劣化推定方法。
[C9]前記電池制御装置は、前記電池の充放電時間、充放電による充電状態変動範囲の最大値と最小値、充放電中の環境温度、及び充放電休止時間を含む電池の使用条件を解析し、前記使用条件と前記検出温度に対応する前記電池の内部抵抗の変化を示す内部抵抗データベースから充放電中の前記検出温度の上昇を推定し、前記使用条件及び前記第1の劣化情報データベースに基づき、前記電池の劣化を推定するC1乃至C7の何れか一つの劣化推定方法。
[C10]都市名と環境温度との対応データに基づき、前記都市名の入力に対応して、前記都市名に対応する前記環境温度を設定するC9の劣化推定方法。
[C11]前記電池制御装置は、前記電池の充放電による前記電池の内部抵抗の変化に基づき充放電中の前記電池の温度上昇値を推定し、推定された温度上昇に基づき、前記電池の劣化を推定するC9の劣化推定方法。
[C12]電池の充電状態を計算可能に構成された電池制御装置と、
前記電池制御装置の停止時間を検出可能に構成された停止時間検出装置と、を備え、
前記電池制御装置は、設定充電状態及び設定温度に応じた電池の劣化を示す第1の劣化情報データベースに基づき、前記電池から計算された計算充電状態及び前記電池から検出された検出温度に対応する劣化情報、又は前記計算充電状態及び環境温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記停止時間の前記電池の劣化を推定する劣化推定システム。
[C13]電池の充電状態を計算可能に構成された電池制御装置の停止時間を検出する手順と、
設定充電状態及び設定温度に応じた電池の劣化を示す第1の劣化情報データベースに基づき、前記電池から計算された計算充電状態及び前記電池から検出された検出温度に対応する劣化情報、又は前記計算充電状態及び環境温度に対応する劣化情報を取得し、取得された劣化情報に基づき前記停止時間の前記電池の劣化を推定する手順と、をコンピュータに実行させるための劣化推定プログラム。
[C14]電池の充放電時間、充放電による充電状態変動範囲の最大値と最小値、充放電中の環境温度、及び充放電休止時間を含む電池の使用条件を解析する手順と、
充放電中の環境温度から電池温度を計算する手順と、
使用条件に基づいて劣化推定した内部抵抗を前記電池温度を計算する手順に反映させる手順と、
前記使用条件と前記計算した電池温度から使用条件マップを作成する手順と、
前記使用条件マップと電池の劣化を示す第1の劣化情報データベースに基づき前記電池の劣化を推定する手順と、
をコンピュータに実行させるための劣化推定プログラム。