(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226449
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】窓
(51)【国際特許分類】
E05F 17/00 20060101AFI20171030BHJP
E05D 15/28 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
E05F17/00 A
E05D15/28
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-95860(P2013-95860)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-214592(P2014-214592A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】野村 吉和
(72)【発明者】
【氏名】堀 剛文
(72)【発明者】
【氏名】河端 之雄
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−281115(JP,A)
【文献】
特開2001−032620(JP,A)
【文献】
特開2007−170138(JP,A)
【文献】
特開2010−270587(JP,A)
【文献】
特開2014−043721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 17/00
E05D 15/28−15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠と、上下の障子と、窓枠に沿ってスライドするスライド部と、スライド部を動かす操作部とを備え、窓枠は、上下の障子の間に無目を有し、上下の障子は、左右逆に開くものであり、スライド部は、縦枠の無目より上側に沿ってスライドする上縦スライド部と、縦枠の無目より下側に沿ってスライドする下縦スライド部と、無目の上面に沿ってスライドする上横スライド部と、無目の下面に沿ってスライドする下横スライド部とを有し、上縦スライド部と上横スライド部とを連結し、下縦スライド部と下横スライド部とを連結して構成してあり、上縦スライド部及び下縦スライド部には、障子をロックするロック部材を有し、上横スライド部及び下横スライド部には、障子の開閉アームと係合する係合部を有し、操作部を操作したときに、上横スライド部と下横スライド部とを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部の操作で上下の障子の開閉とロックの係脱が行えることを特徴とする窓。
【請求項2】
窓枠と、上下の障子と、窓枠に沿ってスライドするスライド部と、スライド部を動かす操作部とを備え、上下の障子は、左右逆に開くものであり、スライド部は、縦枠に沿ってスライドする縦スライド部と、上枠に沿ってスライドする横スライド部と、下枠に沿ってスライドする横スライド部とを連結して構成してあり、縦スライド部には、障子をロックするロック部材を有し、横スライド部には、障子の開閉アームと係合する係合部を有し、操作部を操作したときに、上枠に沿ってスライドする横スライド部と下枠に沿ってスライドする横スライド部とを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部の操作で上下の障子の開閉とロックの係脱が行えることを特徴とする窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下の障子が左右逆に開く窓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窓開口部を上下に隣接して形成し、各窓開口部に取付けた障子を左右逆に開くようにした窓が記載されている。このようにすると、一方の窓開口部より室外から室内に風が入り、他方の窓開口部より室内から室外に風が出ていくので、四方の壁のうちの一箇所にしか窓を設置できない場合でも、効率のよい換気が行える利点がある。
しかしこの種の従来の窓は、上下の障子にロック機構がそれぞれ設けられ、また上下の障子を別々のハンドルを操作して開閉するようになっているため、窓を開閉するのに4回の操作が必要で、開閉操作が煩わしいものであった。また、この窓は上下どちらか一方の障子のみを開けることも可能であるが、そうするとこの窓本来の換気効率が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−170138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、上下の障子が左右逆に開く窓の操作性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による窓は、窓枠と、上下の障子と、窓枠に沿ってスライドするスライド部と、スライド部を動かす操作部とを備え、
窓枠は、上下の障子の間に無目を有し、上下の障子は、左右逆に開くものであり、スライド部は、縦枠
の無目より上側に沿ってスライドする
上縦スライド部と、
縦枠の無目より下側に沿ってスライドする下縦スライド部と、無目の上面に沿ってスライドする
上横スライド部と、
無目の下面に沿ってスライドする下横スライド部とを有し、上縦スライド部と上横スライド部とを連結し、下縦スライド部と下横スライド部とを連結して構成してあり、
上縦スライド部及び下縦スライド部には、障子をロックするロック部材を有し、
上横スライド部及び下横スライド部には、障子の開閉アームと係合する係合部を有し、
操作部を操作したときに、上横スライド部と下横スライド部とを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部の操作で上下の障子の開閉とロックの係脱が行えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による窓は、窓枠と、上下の障子と、窓枠に沿ってスライドするスライド部と、スライド部を動かす操作部とを備え、上下の障子は、左右逆に開くものであり、スライド部は、縦枠に沿ってスライドする縦スライド部と、上枠に沿ってスライドする横スライド部と、下枠に沿ってスライドする横スライド部とを連結して構成してあり、縦スライド部には、障子をロックするロック部材を有し、横スライド部には、障子の開閉アームと係合する係合部を有し、操作部を操作したときに、上枠に沿ってスライドする横スライド部と下枠に沿ってスライドする横スライド部とを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部の操作で上下の障子の開閉とロックの係脱が行えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による窓は、
操作部を操作したときに、上横スライド部と下横スライド部とを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部を操作するだけで、左右逆に開く障子の開閉とロックの係脱が行えるので、操作性が良い。また、上下の障子が必ず一緒に開くので、窓を開けたときに常に換気効率の良い状態にできる。
【0008】
請求項2記載の発明による窓は、操作部を操作したときに、上枠に沿ってスライドする横スライド部と下枠に沿ってスライドする横スライド部とを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部を操作するだけで、左右逆に開く障子の開閉とロックの係脱が行えるので、操作性が良い。また、上下の障子が必ず一緒に開くので、窓を開けたときに常に換気効率の良い状態にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の窓の一実施形態を示す室内側正面図である。
【
図6】障子を開閉・ロックする機構を抜き出して示す室内側正面図である。
【
図7】
図1のC−C位置における横断面図であって、障子を開けたときの状態を示す。
【
図9】障子を開閉・ロックする機構を抜き出して示す斜視図である。
【
図10】本発明の窓の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【
図11】本発明の窓のさらに別の実施形態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図9は、本発明に係る窓の一実施形態を示している。この窓は縦方向に長い段窓で、
図1に示すように、上枠14と、下枠15と、左右の縦枠5,5と、左右の縦枠5,5の中間に架設した無目6とにより窓枠1が構成され、窓枠1の上下の開口部に上障子2と下障子3をそれぞれ蝶番16で室外側に開くように取付けてある。上障子2と下障子3は、左右逆に開くように取付けてある。窓枠1には、窓枠1に沿ってスライドするスライド部4が設けてある。
【0011】
室内側から見て左側の縦枠5の内周側面の無目6より上側には、
図1,3に示すように、上縦スライド部7aが縦枠5の長手方向にスライド可能に設けてあり、上縦スライド部7aには上障子2の戸先部に設けられたロック受け17と係合して上障子2を閉鎖状態にロックするロック部材10が取付けてある。
無目6の上面には、
図1,2に示すように、上横スライド部8aが無目6の長手方向にスライド可能に設けてあり、上横スライド部8aには上障子2を開閉する開閉アーム11と係合する係合部12が設けてある。開閉アーム11は、
図4に示すように、平面視略平行四辺形状に形成されており、左側の端部を無目6に取付具18で軸支してあり、右側の端部を連結具19で上障子2に連結してあり、中間部に前記係合部12と係合する係合溝20が形成してある。係合溝20は、右側の端部に無目6の長手方向と平行なストレート部20aを有し、ストレート部20aから室内側の左方向に傾斜して傾斜部20bが形成してあり、上障子2を閉鎖した状態で係合部12はストレート部20aの先端部に位置している。
【0012】
無目6の上部室内側面には、
図1,2,4に示すように、操作部13が設けてある。操作部13は、従前のオペレーターハンドルを利用したものであり、ハンドル軸に取付けられたウォームギア(図示省略)がハスバ歯車21と噛み合っており、ハスバ歯車21から室外側にのびるアーム22が連結アーム23を介して上横スライド部8aの係合部12に連結してあり、ハンドル24を回すと係合部12及び上横スライド部8aが無目6の長手方向に沿ってスライドするようになっている。
【0013】
上縦スライド部7aと上横スライド部8aとは、
図1,2に示すように、縦枠5と無目6とのコーナー部に配置されたコーナー連結具9で連結し、連動するようにしてある。コーナー連結具9は、
図6に示すように、L形に曲がった筒状のガイド部材9aと、ガイド部材9a内に挿通した摺動部材9bとを有するもので、摺動部材9bがガイド部材9aにガイドされた状態で摺動することで、押す力と引き力を直角に伝達できるものである。コーナー連結具9は、
図2,9に示すように、上横スライド部8aの室内側に隣接し、上横スライド部8aと見込み方向に重なるように配置されている。
【0014】
室内側から見て右側の縦枠5の内周側面の無目6より下側には、
図1に示すように、下縦スライド部7bが縦枠5の長手方向にスライド可能に設けてあり、下縦スライド部7bには下障子3の戸先部に設けられたロック受け17と係合して下障子3を閉鎖状態にロックするロック部材10が取付けてある。
無目6の下面には、
図1,2に示すように、下横スライド部8bが無目6の長手方向にスライド可能に設けてあり、下横スライド部8bには下障子3を開閉する開閉アーム11と係合する係合部12が設けてある。開閉アーム11は、
図5に示すように、上障子2用の開閉アーム11とは左右逆になっている。
下縦スライド部7bと下横スライド部8bとは、縦枠5と無目6とのコーナー部に配置されたコーナー連結具9で連結し、連動するようにしてある。コーナー連結具9は、
図2,9に示すように、下横スライド部8bの室内側に隣接し、下横スライド部8bと見込み方向に重なるように配置されている。
【0015】
上横スライド部8aと下横スライド部8bの間の無目6内には、
図1,2,9に示すように、ギア25が配置してあり、上横スライド部8aと下横スライド部8bにはギア25の歯と噛み合うラックギア部26がそれぞれ設けてある。したがって、操作部13を操作することで上横スライド部8aがスライドすると、下横スライド部8bはこれに連動して上横スライド部8aと逆方向にスライドする。さらに、上横スライド部8aは上縦スライド部7aと、下横スライド部8bは下縦スライド部7bと、それぞれコーナー連結具9により連結されているため、上縦スライド部7aと下縦スライド部7bも横スライド部8a,8bと連動してスライドする。
上横スライド部8aと下横スライド部8bは、
図2に示すように、無目6とは別の形材で形成したレール材31a,31bに案内してあり、レール材31a,31bはギア25の上部及び下部が臨む切欠きが形成してあって、レール材31a,31bの窪みの中央部を無目6にビス止めしてある。ギア25は、無目6に上方又は下方より(図示のものは上方より)挿入され、横スライド部8a,8bを予め保持させたレール材31a,31bを無目6の上下面に取付けることで、レール材31a,31bと横スライド部8a,8bとでギア25が隠れるようにしている。ギア25は、保持部材32に回転自在に保持し、無目6の上側から着脱自在に取付けてあって、交換可能である。
【0016】
操作部13を障子開き側に操作すると、
図6に示すように、上横スライド部8aが左方向にスライドし、下横スライド部8bはギア25を介して上横スライド部8aの動きが伝達されて右方向にスライドする。また、上縦スライド部7aはコーナー連結具9により上横スライド部8aの動きが伝達されて上方にスライドし、下縦スライド部7bはコーナー連結具9により下横スライド部8bの動きが伝達されて下方にスライドする。スライドし始めの段階では、
図4,5に示すように、上下横スライド部8a,8bに設けた係合部12が開閉アーム11の係合溝20のストレート部20aの範囲に位置するため、障子2,3は閉じたままになっており、この間に上下縦スライド部7a,7bがスライドしてロック部材10が障子のロック受け17から外れ、障子2,3のロックが解除される。その後、
図7に示すように、係合部12が開閉アーム11の係合溝20の傾斜部20bに移行することで、開閉アーム11が取付具18を支点に室外側に回動し、それにつれて上下の障子2,3が開く。こうして上下の障子2,3が左右逆に開くと、
図8に示すように、一方の障子3が横風27をキャッチして室内に風が流れ込み、他方の障子2側の開口部より室内から室外に風28が出ていくので、四方の壁のうちの一箇所にしか窓を設置できない場合でも、効率のよい換気が行える。
操作部13を障子閉じ側に操作すると、各スライド部7a,7b,8a,8bがそれぞれ上記とは逆方向にスライドし、これに伴って開閉アーム11により障子2,3が閉鎖され、閉鎖後にロック部材10がロック受け17に係合して障子2,3がロックされる。
【0017】
以上に述べたように本窓は、一つの操作部13を操作するだけで、左右逆に開く障子2,3の開閉とロックの係脱が行えるので、操作性が良い。特に、強風が吹き付けたり、急に雨が降ったりして、上下の障子2,3を急いで閉めたい場合でも、一つの操作で短時間で閉めることができ、都合がよい。また、上下の障子2,3が必ず一緒に開くので、窓を開けたときに常に換気効率の良い状態にできる。本窓は、無目6に内蔵したギア25を介して上横スライド部8aと下横スライド部8bを逆向きにスライドさせることで、一つの操作部13の操作で左右逆に開く障子2,3の開閉が行え、ギア25は外部に露出しないので意匠性も良い。さらに、無目6に両横スライド部8a,8bを設けることで、コーナー連結具9の数を少なくすることができるので、操作が重くならず操作性が良い。また、スライド部4(縦スライド部7a,7b及び横スライド部8a,8b)の長さも短くすることができるので、コストがかからない。操作部13が無目6に設けてあることで、操作性が良い。コーナー連結具9を横スライド部8a,8bと見込み方向に重なるように配置したことで、重ねた寸法分、窓の寸法も小さくできるので、開口部の幅の狭い縦長のスリット型の窓にも対応することができ(具体的には、有効開口幅110mmの極小W寸法まで対応可能)、防犯性に配慮しつつ換気効率の良い窓を実現できる。
【0018】
図10は、本発明の窓の他の実施形態を示しており、スライド部4を動かすための操作部13を下障子3の戸先側に位置する縦枠5下部に設けている点が先の実施形態とは異なる。腰壁等に取付ける場合は、このように操作部13を縦枠5の下部側に設けることで、操作性がよい。
【0019】
図11は、本発明の窓のさらに別の実施形態を示しており、これまでに説明した実施形態とはスライド部4の構成が異なる。この窓は、上枠14と下枠15とに横スライド部29a,29bが設けてあり、下障子3の戸先側に位置する縦枠5の下半分と上障子2の戸先側に位置する縦枠5の全長とに縦スライド部30a,30bが設けてあり、窓枠1のコーナー部に配置されたコーナー連結具9で横スライド部29a,29bと縦スライド部30a,30bを1本に繋げている。横スライド部29a,29bには、上下の障子2,3の開閉アーム11と係合する係合部12を有し、縦スライド部30a,30bには上下の障子2,3のロック受け17に係合するロック部材10を有している。操作部13は、下障子3の戸先側に位置する縦枠5下部に設けている。
本実施形態の窓は、ギア等を介在させることなく上下の横スライド部29a,29bと左右の縦スライド部30a,30bがそれぞれ逆方向にスライドし、一つの操作部13を操作するだけで、左右逆に開く障子2,3の開閉とロックの係脱が行える。本実施形態によれば、上障子2と下障子3の間に嵌め殺し障子を有する窓にも対応できる。操作部13は、スライド部4が設けてある窓枠1の任意の位置に設けることができ、例えば下枠15に設けることもできる。
【0020】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。障子2,3の窓枠1への取付け方は適宜変更することができ、部品蝶番で取付けたものに限らず、ピボットヒンジで取付けたり、形材の通し蝶番で取付けることもできる。また障子2,3は、室外側にすべり出して開くもの(たてすべり出し窓)であってもよい。障子2,3の構成は任意であり、パネル障子、ガラス障子のいずれであってもよい。スライド部4や操作部13の構成は、適宜変更することができ、例えば操作部13はギア25を回転させてスライド部4をスライドさせるものであってもよい。また、上下横スライド部8a,8bを相反する方向にスライドさせる機構は、ギア25を用いたものに限らず、例えば上下横スライド部8a,8b間で軸支したアームを上下横スライド部8a,8bと係合させ、該アームを介して上下横スライド部8a,8bを相反する方向にスライドさせるものであってもよい。幅の狭い窓に対応するために、コーナー連結具9を横スライド部8a,8bの上下方向に重ねて配置することもできる。
【符号の説明】
【0021】
1 窓枠
2 上障子
3 下障子
4 スライド部
5 縦枠
6 無目(横枠)
7a 上縦スライド部(縦スライド部)
7b 下縦スライド部(縦スライド部)
8a 上横スライド部(横スライド部)
8b 下横スライド部(横スライド部)
9 コーナー連結具
10 ロック部材
11 開閉アーム
12 係合部
13 操作部
29a,29b 横スライド部
30a,30b 縦スライド部