特許第6226473号(P6226473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226473ネットワーク品質監視装置、プログラムおよびネットワーク品質監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226473
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ネットワーク品質監視装置、プログラムおよびネットワーク品質監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/26 20060101AFI20171030BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20171030BHJP
【FI】
   H04L12/26
   H04L12/70 100Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-44377(P2014-44377)
(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-170983(P2015-170983A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】渡里 雅史
(72)【発明者】
【氏名】阿野 茂浩
(72)【発明者】
【氏名】北辻 佳憲
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−011683(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0117820(US,A1)
【文献】 特開2008−131198(JP,A)
【文献】 特開2005−018745(JP,A)
【文献】 特開2013−187629(JP,A)
【文献】 特開2008−193482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/28,12/44−12/955
H04B7/24−7/26,H04W4/00−99/00
H04M3/00,3/16−3/20,3/38−3/58,7/00−7/16,11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視装置であって、
いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得するメッセージ取得部と、
前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化するメッセージ特徴抽出部と、
前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定するメッセージマッピング部と、
前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定する応答時間測定部と、を備えることを特徴とするネットワーク品質監視装置。
【請求項2】
前記メッセージマッピング部は、前記いずれか一つのリクエストメッセージおよび前記特定された応答メッセージの組み合わせが予め定められた時間間隔内に出現する頻度を特定し、
前記応答時間測定部は、前記頻度が第1の閾値以上である場合に、前記応答時間を測定することを特徴とする請求項1記載のネットワーク品質監視装置。
【請求項3】
前記メッセージ特徴抽出部は、前記予め定められた時間間隔内に出現する前記リクエストメッセージおよび前記応答メッセージの頻度をそれぞれ特定し、前記各頻度が第2の閾値以下であるリクエストメッセージまたは応答メッセージを前記リストから除外することを特徴とする請求項2記載のネットワーク品質監視装置。
【請求項4】
ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視装置のプログラムであって、
いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得する処理と、
前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化する処理と、
前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定する処理と、
前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定する処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視方法であって、
いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得するステップと、
前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化するステップと、
前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定するステップと、
前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定するステップと、を少なくとも含むことを特徴とするネットワーク品質監視方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視装置、プログラムおよびネットワーク品質監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ネットワークの品質を管理する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、SIP(Session Initiation Protocol)のネットワークを対象として、ネットワーク品質監視装置およびネットワーク品質監視方法が提案されている。この技術は、具体的には、SIPネットワーク内に設置したキャプチャ装置において、SIPのシグナリングメッセージをキャプチャした上で、キャプチャ区間毎に、リクエスト送信から応答受信までの応答時間を測定し、これらを統計処理した結果、異常と判断される上限値を越えた場合に該当区間で異常が発生したと判定する。このようなネットワーク品質監視装置およびネットワーク品質監視方法は、SIPネットワークに限らず、LTE(Long Term Evolution)のシグナリングメッセージを定義することで、LTEのネットワークにも適用が可能であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、監視区間を流れるリクエストメッセージとその応答メッセージを特定するために、DPI(Deep Packet Inspection)技術を用いてメッセージの深掘り解析を行ない、シーケンス番号を抽出した上で、リクエストメッセージと応答メッセージのマッピングを取る必要がある。このため、ネットワークを監視するにあたり、膨大なメッセージを高速にDPI解析できる装置が必要となる。また、これらのメッセージが暗号化された場合は、メッセージの種別の特定やマッピングをすることができず、ネットワークの監視ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、品質を測定する処理の高速化を図ると共に、メッセージが暗号化された場合であってもネットワークの品質を監視することができるネットワーク品質監視装置、プログラムおよびネットワーク品質監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のネットワーク品質監視装置は、ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視装置であって、いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得するメッセージ取得部と、前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化するメッセージ特徴抽出部と、前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定するメッセージマッピング部と、前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定する応答時間測定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように、各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化し、このリストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定し、いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定するので、DPI(Deep Packet Inspection)をすることなく、ネットワークの品質を監視することが可能となる。その結果、メッセージが暗号化されている場合であっても、ネットワークの品質を監視することが可能となる一方、メッセージが暗号化されていない場合であっても、DPIが不要であるため、1個1個のメッセージの解析処理が軽減化され、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。なお、“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有する”とは、“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズよりも小さいメッセージサイズを有すること”、または“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズと同一のメッセージサイズを有すること”を意味する。
【0008】
(2)また、本発明のネットワーク品質監視装置において、前記メッセージマッピング部は、前記いずれか一つのリクエストメッセージおよび前記特定された応答メッセージの組み合わせが予め定められた時間間隔内に出現する頻度を特定し、前記応答時間測定部は、前記頻度が第1の閾値以上である場合に、前記応答時間を測定することを特徴とする。
【0009】
このように、いずれか一つのリクエストメッセージおよび特定された応答メッセージの組み合わせが予め定められた時間間隔内に出現する頻度を特定し、頻度が第1の閾値以上である場合に、応答時間を測定するので、リクエストに対する応答の組み合わせが成立していないものを除外し、真に測定すべき組み合わせのみを対象とすることができる。その結果、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。
【0010】
(3)また、本発明のネットワーク品質監視装置において、前記メッセージ特徴抽出部は、前記予め定められた時間間隔内に出現する前記リクエストメッセージおよび前記応答メッセージの頻度をそれぞれ特定し、前記各頻度が第2の閾値以下であるリクエストメッセージまたは応答メッセージを前記リストから除外することを特徴とする。
【0011】
このように、予め定められた時間間隔内に出現するリクエストメッセージおよび応答メッセージの頻度をそれぞれ特定し、各頻度が第2の閾値以下であるリクエストメッセージまたは応答メッセージをリストから除外するので、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。すなわち、予め定められた時間間隔内の出現頻度が低いメッセージについては、応答時間の測定が困難となるため、予めこれを除外しておくのである。
【0012】
(4)また、本発明のプログラムは、ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視装置のプログラムであって、いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得する処理と、前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化する処理と、前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定する処理と、前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定する処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
このように、各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化し、このリストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定し、いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定するので、DPI(Deep Packet Inspection)をすることなく、ネットワークの品質を監視することが可能となる。その結果、メッセージが暗号化されている場合であっても、ネットワークの品質を監視することが可能となる一方、メッセージが暗号化されていない場合であっても、DPIが不要であるため、1個1個のメッセージの解析処理が軽減化され、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。なお、“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有する”とは、“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズよりも小さいメッセージサイズを有すること”、または“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズと同一のメッセージサイズを有すること”を意味する。
【0014】
(5)また、本発明のネットワーク品質監視方法は、ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視方法であって、いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得するステップと、前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化するステップと、前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定するステップと、前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0015】
このように、各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化し、このリストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定し、いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定するので、DPI(Deep Packet Inspection)をすることなく、ネットワークの品質を監視することが可能となる。その結果、メッセージが暗号化されている場合であっても、ネットワークの品質を監視することが可能となる一方、メッセージが暗号化されていない場合であっても、DPIが不要であるため、1個1個のメッセージの解析処理が軽減化され、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。なお、“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有する”とは、“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズよりも小さいメッセージサイズを有すること”、または“いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズと同一のメッセージサイズを有すること”を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、DPI(Deep Packet Inspection)をすることなく、ネットワークの品質を監視することが可能となる。その結果、メッセージが暗号化されている場合であっても、ネットワークの品質を監視することが可能となる一方、メッセージが暗号化されていない場合であっても、DPIが不要であるため、1個1個のメッセージの解析処理が軽減化され、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るネットワーク品質監視装置が適用されるLTE(Long Term Evolution)ネットワークの一例を示す図である。
図2】MME装置とSGW装置とがメッセージの送受信を行なう様子を示す図である。
図3】本実施形態に係るネットワーク品質監視装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係るネットワーク品質監視装置の動作の一部を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係るネットワーク品質監視装置10の監視に関する動作を示すフローチャートである。
図6】メッセージリストの一例を示す図である。
図7】メッセージリストのうち、出現頻度が3以上であるものを抽出した状態を示す図である。
図8】更新したメッセージリストを示す図である。
図9】メッセージリストの一例を示す図である。
図10】本実施形態に係るアルゴリズムを用いた場合のメッセージのマッピング結果および測定された応答時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、メッセージが暗号化されている場合は、従来から行なわれてきたDPI技術を用いたネットワークの監視をすることができないことに着目し、一定時間内に出現するリクエストメッセージと応答メッセージとの組み合わせが所定の条件を満たすかどうかを判定し、所定の条件を満たした場合は、リクエストから応答までの応答時間を測定することによって、ネットワークの異常を検出することができることを見出し、本発明をするに至った。
【0019】
すなわち、本発明の本発明のネットワーク品質監視装置は、ネットワークの品質を監視するネットワーク品質監視装置であって、いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得するメッセージ取得部と、前記取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化するメッセージ特徴抽出部と、前記リストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、前記いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定するメッセージマッピング部と、前記いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、前記特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定する応答時間測定部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、本発明者らは、DPI(Deep Packet Inspection)をすることなく、ネットワークの品質を監視することを可能とした。その結果、メッセージが暗号化されている場合であっても、ネットワークの品質を監視することが可能となる一方、メッセージが暗号化されていない場合であっても、DPIが不要であるため、1個1個のメッセージの解析処理が軽減化され、品質を測定する処理の高速化を図ることを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るネットワーク品質監視装置が適用されるLTE(Long Term Evolution)ネットワークの一例を示す図である。図1に示すように、LTEネットワークは、無線ネットワークのeUTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Network)と呼ばれる無線ネットワークと、EPC(Evolved Packet Core)と呼ばれるコアネットワークから構成されている。
【0022】
eUTRANは、基地局装置1(eNodeB)のみで構成され、EPCは、MME(Mobility Management Entity)装置3、SGW(Serving Gateway)装置5、PGW(PDN:Packet data network Gateway)装置7、HSS(Home Subscriber System)装置9など、複数の装置群よって構成されている。
【0023】
ネットワーク品質監視装置10は、例えば、MME装置3とSGW装置5の区間に設置され、MME装置3とSGW装置5との間で送受信されるシグナリングメッセージをキャプチャし、監視を行なう。例えば、ユーザ操作によりLTE端末の電源がオンとなった場合では、該当端末はLTEネットワークに初めて接続され、MME装置3はセッション確立要求(Create Session Request)メッセージをSGW装置5に対して送信し、SGW装置5は、必要な処理を行なった上で、MME装置3に対して、セッション確立応答(Create Session Response)メッセージを返答する。
【0024】
このとき、従来技術では、図2に示すように、本監視区間において、初めにセッション確立要求メッセージとセッション確立応答メッセージを特定し、シグナリングメッセージ内のシーケンス番号を抽出した上で、シーケンス番号が一致するシグナリングメッセージから応答時間の測定を行なっていた。その後、一定時間毎に測定した応答時間を統計処理し、閾値越えしているか否かで該当区間の異常判定を行なっていた。
【0025】
しかしながら、MME装置3とSGW装置5の区間を流れるシグナリングメッセージが暗号化されている場合、従来技術では、シグナリングメッセージ種別の特定およびシーケンス番号を抽出することができず、該当区間におけるネットワーク品質を計測することができなかった。そこで、本実施形態では、以下のように、図2と同じ監視区間を流れるシグナリングメッセージを用いて、ネットワーク品質を監視する。
【0026】
図3は、本実施形態に係るネットワーク品質監視装置の概略構成を示すブロック図である。ネットワーク品質監視装置10において、メッセージ取得部13は、いずれか一組のネットワーク装置間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得する。ここでは、MME装置3とSGW装置5との間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得することとするが、本発明は、これに限定されるわけではない。メッセージ特徴抽出部15は、メッセージ取得部13が取得した各メッセージの送信元を示す情報、宛先を示す情報およびメッセージサイズを示す情報を、取得した順序でリスト化し、メッセージリストデータベース17に格納する。
【0027】
メッセージマッピング部19は、メッセージ特徴抽出部15が作成したリストから、いずれか一つのリクエストメッセージのメッセージサイズ以下のメッセージサイズを有すると共に、いずれか一つのリクエストメッセージに対して、所定時間内に送信された応答メッセージを特定する。応答時間測定部21は、いずれか一つのリクエストメッセージを取得してから、特定された応答メッセージを取得するまでの応答時間を測定する。
【0028】
図4は、本実施形態に係るネットワーク品質監視装置の動作の一部を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態に係るネットワーク品質監視装置は、メッセージ取得部13において、MME装置3とSGW装置5との間で送受信されるリクエストメッセージおよび応答メッセージを取得する(ステップS1)。
【0029】
次に、メッセージ特徴抽出部15において、収集したMME装置3からSGW装置5向けのメッセージと、SGW装置5からMME装置3向けのメッセージを、観測した順に並べてリストを作成し(ステップS2)、メッセージリストデータベース17に格納する(ステップS3)。このようにして得られた一定時間のメッセージ群を“メッセージリスト”と呼ぶ。図6は、メッセージリストの一例を示す図である。メッセージリストで扱う情報は、各メッセージの送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、メッセージサイズとしてバイト数である。ここでは、これを“メッセージタイプ”と呼ぶ。なお、これらの情報は、すべてIPヘッダから取得できるため、IPパケットにおけるトランスポート層以降の解析は不要である。また、図6では、一例としてMME装置3のIPアドレスを192.168.0.1とし、SGW装置5のIPアドレスを192.168.0.2としている。これによりメッセージの方向を把握することができる。
【0030】
図5は、本実施形態に係るネットワーク品質監視装置10の監視に関する動作を示すフローチャートである。上記のステップS1からステップS3に示したように、メッセージリストを作成すると(ステップS4)、作成したメッセージリストから、送信元IPアドレス・宛先IPアドレス・メッセージサイズの出現頻度を集計し、出現頻度が低い(例えば、閾値をαとし、α未満のもの)メッセージを対象外とする(ステップS5)。一定時間内の出現頻度が低いものは、応答時間の測定が困難となるからである。図7は、図6に示したメッセージリストのうち、出現頻度が3以上であるものを抽出した状態を示す図である。ここでは、仮にα=3とした結果、図7では、上位4つのメッセージタイプが抽出された。
【0031】
次に、α=3を閾値とした場合について、メッセージリストを更新する。図8は、更新したメッセージリストを示す図である。ここでは、図6におけるNo.6とNo.10が対象外とされた。次に、以下のアルゴリズムに従って、リクエストメッセージと応答メッセージのマッピングを行なう。
(A)メッセージリストの先頭メッセージを初期メッセージとする。
(B)初期メッセージの送信元IPアドレスおよび宛先IPアドレスに対し、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスが逆になる以降メッセージのうち、次の条件にあてはまるメッセージを探索する(ステップS6)。
【0032】
(ア)初期メッセージのメッセージサイズよりもメッセージサイズが小さいメッセージ。なお、初期メッセージのメッセージサイズとメッセージサイズが同一であるメッセージを対象とすることも可能である。
(イ)初期メッセージの観測時刻からβミリ秒以内(例えば、β=5)に観測するメッセージ。
【0033】
上記(B)の結果、該当するメッセージが存在しない場合は(ステップS6で、NOの場合)、初期メッセージをメッセージリストから削除し、メッセージリストを更新する。これらのメッセージは片方向の応答がないメッセージである可能性が高いと考えられるためである。メッセージリストにメッセージが残っている場合は、上記(A)に戻る。
【0034】
上記(B)の結果、該当するメッセージが存在する場合は、初期メッセージを仮のリクエストメッセージとし、該当メッセージを仮の応答メッセージとする(ステップS7)。
【0035】
(ウ)メッセージリスト内に、仮のリクエストメッセージと仮の応答メッセージが、上記(B)と同じ条件で、γ回以上存在するか探索する。(例えば、γ=3)(ステップS8)。ここでは、例えば、1分から5分のトラフィックに限定し、その時間間隔内での出現頻度を測定しても良い。
【0036】
ステップS8において、γ回以上存在しない場合は、誤ったマッピングと判断し、上記(B)に戻り、他のメッセージを探索する。ステップS8において、γ回以上存在する場合は、それらのメッセージタイプを真のリクエストメッセージと真の応答メッセージと判断し、メッセージリスト内から一致するすべてのメッセージから応答時間を測定する(ステップS9)。また、これらのメッセージを測定済みとし、メッセージリストを更新する。図8は、更新したメッセージリストを示す図である。
【0037】
最後に、メッセージリストが空であるか否かを判断し(ステップS10)、メッセージリストにメッセージが残っている場合は、ステップS5に遷移する一方、メッセージリストが空である場合は、終了する。
【0038】
このように、上記アルゴリズムによって、図8に示す例では、初めにNo.1およびNo.2のメッセージが抽出される。しかしながら、以降のメッセージリストにおいて、同じ条件でγ回以上のマッピングが取れないため、これらのメッセージは誤ったマッピングと判断され、次にNo.1およびNo.5が抽出される。以降のメッセージリストでもγ回以上のマッピングが取れるため、これらの条件で応答時間が計測される。
【0039】
次に、これらのメッセージタイプを除いた図9に示すメッセージリストにおいて、同様にマッピングを行なう。初めにNo.2では、メッセージサイズがそれよりも小さいメッセージが存在しないため、対象外となる。続いて、No.3を初期メッセージとして、No.4がマッピングされ、これらもγ回以上のマッピングが取れるため、これらの条件で応答時間が計測される。
【0040】
図10は、上記アルゴリズムを用いた場合のメッセージのマッピング結果および測定された応答時間を示す図である。例えば、応答時間が5ミリ秒以下のパケットが99%以上であれば、正常とすることができる。また、それ以外の場合、例えば、応答時間が5ミリ秒を超えるパケットが存在したり、応答時間が5ミリ秒以下のパケットが99%未満であったりした場合は、異常と判定することが可能である。
【0041】
なお、ネットワーク上に本発明に係る機能を有する制御装置を設け、キャプチャ装置が各ネットワーク装置間で取得したメッセージを用いて、制御装置においてネットワークの品質を一元的に監視する構成を取ることも可能である。
【0042】
以上のように、MME装置3とSGW装置5の区間で送受信されるセッション確立要求(Create Session Request)メッセージとセッション確立応答(Create Session Response)メッセージを例にとって説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。同様にMME装置3とSGW装置5の区間で送受信されるシグナリングメッセージに限定されるものでもない。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、DPI(Deep Packet Inspection)をすることなく、ネットワークの品質を監視することが可能となる。その結果、メッセージが暗号化されている場合であっても、ネットワークの品質を監視することが可能となる一方、メッセージが暗号化されていない場合であっても、DPIが不要であるため、1個1個のメッセージの解析処理が軽減化され、品質を測定する処理の高速化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 基地局装置
3 MME装置
5 SGW装置
7 PGW装置
9 HSS装置
10 ネットワーク品質監視装置
13 メッセージ取得部
15 メッセージ特徴抽出部
17 メッセージリストデータベース
19 メッセージマッピング部
21 応答時間測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10