特許第6226476号(P6226476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 協和発酵キリン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000037
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000038
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000039
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000040
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000041
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000042
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000043
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000044
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000045
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000046
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000047
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000048
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000049
  • 特許6226476-カチオン性脂質 図000050
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226476
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】カチオン性脂質
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/12 20060101AFI20171030BHJP
   C07C 271/16 20060101ALI20171030BHJP
   C07D 207/08 20060101ALI20171030BHJP
   C07D 211/22 20060101ALI20171030BHJP
   C07D 295/088 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20171030BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171030BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20171030BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   C07C271/12CSP
   C07C271/16ZNA
   C07D207/08
   C07D211/22
   C07D295/088
   A61K47/18
   A61K47/44
   A61K48/00
   A61K31/7088
   A61P35/00
   A61P29/00
   !C12N15/00 G
   !C12N15/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2014-523819(P2014-523819)
(86)(22)【出願日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2013068682
(87)【国際公開番号】WO2014007398
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】61/789,466
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】特願2012-152423(P2012-152423)
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-92327(P2013-92327)
(32)【優先日】2013年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和発酵キリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】窪山 剛之
(72)【発明者】
【氏名】江良 公宏
(72)【発明者】
【氏名】直井 智幸
(72)【発明者】
【氏名】八木 香機
(72)【発明者】
【氏名】細江 慎太郎
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−501699(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/136368(WO,A1)
【文献】 Arsalan Mirjafari et al.,Structure-based tuning of Tm in lipid-like ionic liquids. Insights from Tf2N- salts of gene transfection agents,Chemical Communications,2012年 6月13日,v.48,p.7522-7524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 271/12
A61K 31/7088
A61K 47/18
A61K 47/44
A61K 48/00
A61P 29/00
A61P 35/00
C07C 211/21
C07C 215/08
C07C 217/08
C07C 271/16
C07D 207/06
C07D 207/08
C07D 211/06
C07D 211/22
C07D 223/04
C07D 225/02
C12N 15/09
C12N 15/113
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)
【化1】
(式中、R1は炭素数8〜24の直鎖状のアルキルもしくはアルケニルであり、
R2は炭素数8〜24の直鎖状のアルキルもしくはアルケニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチルまたはアルケニルオキシプロピルであり、
R3およびR4は、同一または異なって炭素数1〜3のアルキルであるか、または一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成するか、またはR3はR5と一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成し、
R5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、アミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイルまたは同一もしくは異なって1〜3つのアミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイルもしくはジアルキルカルバモイルで置換された炭素数1〜6のアルキルもしくは炭素数3〜6のアルケニルであるか、またはR3と一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成し、
X1は、炭素数1〜6のアルキレンであり、
X2は、単結合であるか、または炭素数1〜6のアルキレンであり、ただし、X1とX2の炭素数の和は7以下であり、R5が、水素原子の場合、X2は単結合であり、R5がR3と一緒になって炭素数2〜6のアルキレンを形成する場合、X2は単結合であるか、またはメチレンもしくはエチレンである)で表されるカチオン性脂質。
【請求項2】
R1が、アルケニルである請求項1記載のカチオン性脂質。
【請求項3】
R1およびR2、それぞれテトラデシル、ヘキサデシル、(Z)-テトラデカ-9-エニル、(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(E)-オクタデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-11-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエニル、(Z)-イコサ-11-エニル、(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルまたは(Z)-ドコサ-13-エニルである請求項1記載のカチオン性脂質。
【請求項4】
R1およびR2、それぞれヘキサデシル、(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(Z)-イコサ-11-エニルまたは(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルである請求項1記載のカチオン性脂質。
【請求項5】
X1が、炭素数1〜3のアルキレンであり、X2が、単結合またはメチレンである請求項1〜4のいずれかに記載のカチオン性脂質。
【請求項6】
R3およびR4が、同一もしくは異なってメチルもしくはエチル、または一緒になってn-ペンチレンまたはn-ヘキシレンを形成する請求項1〜5のいずれかに記載のカチオン性脂質。
【請求項7】
R3およびR5が、一緒になってn-プロピレンまたはn-ブチレンを形成し、R4が、メチルまたはエチルである請求項1〜6のいずれかに記載のカチオン性脂質。
【請求項8】
R5が水素原子またはメチルである請求項1〜7のいずれかに記載のカチオン性脂質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のカチオン性脂質および核酸を含有する組成物。
【請求項10】
該カチオン性脂質と該核酸とが複合体を形成しているか、または該カチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと該核酸とが複合体を形成している、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
該カチオン性脂質と該核酸とが複合体を形成しているか、または該カチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと該核酸とが複合体を形成しており、該複合体を封入する脂質膜を含有する請求項9記載の組成物。
【請求項12】
核酸がRNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有する核酸である請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
標的遺伝子が、肝臓、肺、腎臓または脾臓において発現する遺伝子である請求項12記載の組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の組成物を含む、医薬。
【請求項15】
静脈内投与用である請求項14記載の医薬。
【請求項16】
請求項13に記載の組成物を含む、肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療剤。
【請求項17】
静脈内投与用である請求項16記載の肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸を、例えば、細胞内等に導入することを容易にするカチオン性脂質、該カチオン性脂質を含有する組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン性脂質は、一つまたは複数の炭化水素基を含む脂質親和性領域と、少なくとも一つのプラスに帯電した極性ヘッドグループを含む親水性領域を有する両親媒性分子である。カチオン性脂質と核酸等の巨大分子が、総荷電としてプラスに帯電する複合体を形成することにより、核酸等の巨大分子が細胞の原形質膜を通過して細胞質に入りやすくなるため、カチオン性脂質は有用である。インビトロおよびインビボにおいて行うことのできるこのプロセスは、トランスフェクションとして知られている。
特許文献1および2は、インビボにて核酸を細胞内に送達するために、および疾患の治療に好適な核酸-脂質粒子組成物に使用するために有利である陽イオン性脂質および該脂質を含む脂質粒子を開示している。特許文献1には、例えば、
【0003】
【化1】
2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(2,2-dilinoleyl-4-(2-dimethylaminoethyl)-[1,3]-dioxolane;
DLin-KC2-DMA)等、特許文献2には、例えば、
【0004】
【化2】
(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノアート((6Z,9Z,28Z,31Z)-heptatriaconta-6,9,28,31-tetraen-19-yl 4-(dimethylamino)butanoate;DLin-MC3-DMA)等のカチオン性脂質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/042877号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/054401号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、核酸を、例えば、細胞内等に導入することを容易にするカチオン性脂質、該カチオン性脂質を含有する組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の(1)〜(22)に関する。
(1) 式(A)
【0008】
【化3】
(式中、R1は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、
R2は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルであり、
R3およびR4は、同一または異なって炭素数1〜3のアルキルであるか、または一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成するか、またはR3はR5と一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成し、
R5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、アミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイルまたは同一もしくは異なって1〜3つのアミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイルもしくはジアルキルカルバモイルで置換された炭素数1〜6のアルキルもしくは炭素数3〜6のアルケニルであるか、またはR3と一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成し、
X1は、炭素数1〜6のアルキレンであり、
X2は、単結合であるか、または炭素数1〜6のアルキレンであり、ただし、X1とX2の炭素数の和は7以下であり、R5が、水素原子の場合、X2は単結合であり、R5がR3と一緒になって炭素数2〜6のアルキレンを形成する場合、X2は単結合であるか、またはメチレンもしくはエチレンである)、
式(B)
【0009】
【化4】
(式中、R6は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、
R7は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルである)、または
式(C)
【0010】
【化5】
(式中、R8は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、
R9は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルであり、
X3は、炭素数1〜3のアルキレンであり、
R10は、水素原子または炭素数1〜3のアルキルである)で表されるカチオン性脂質。
(2) R1、R2、R6、R7、R8およびR9が、それぞれテトラデシル、ヘキサデシル、(Z)-テトラデカ-9-エニル、(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(E)-オクタデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-11-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエニル、(Z)-イコサ-11-エニル、(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルまたは(Z)-ドコサ-13-エニルである前記(1)記載のカチオン性脂質。
(3) R1、R2、R6、R7、R8およびR9が、それぞれ(Z)-オクタデカ-9-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルまたは(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルである前記(1)記載のカチオン性脂質。
(4) X1が、炭素数1〜3のアルキレンであり、X2が、単結合またはメチレンである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のカチオン性脂質。
(5) X3が、メチレンまたはエチレンである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のカチオン性脂質。
(6) R3およびR4が、同一もしくは異なってメチルもしくはエチル、または一緒になってn-ペンチレンまたはn-ヘキシレンを形成する前記(1)〜(5)のいずれかに記載のカチオン性脂質。
(7) R3およびR5が、一緒になってn-プロピレンまたはn-ブチレンを形成し、R4が、メチルまたはエチルである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のカチオン性脂質。
(8) R5およびR10が、それぞれ水素原子またはメチルである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のカチオン性脂質。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかに記載のカチオン性脂質および核酸を含有する組成物。
(10) 該カチオン性脂質と該核酸とが複合体を形成しているか、または該カチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと該核酸とが複合体を形成している、前記(9)記載の組成物。
(11) 該カチオン性脂質と該核酸とが複合体を形成しているか、または該カチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと該核酸とが複合体を形成しており、該複合体を封入する脂質膜を含有する前記(9)記載の組成物。
(12) 核酸がRNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有する核酸である前記(9)〜(11)のいずれかに記載の組成物。
(13) 標的遺伝子が、肝臓、肺、腎臓または脾臓において発現する遺伝子である前記(12)記載の組成物。
(14) 前記(9)〜(13)のいずれかに記載の組成物を用いて該核酸を細胞内に導入する方法。
(15) 細胞が、ほ乳類の肝臓、肺、腎臓または脾臓にある細胞である前記(14)記載の方法。
(16) 細胞内に導入する方法が、該組成物の静脈内投与によって細胞内に導入する方法である前記(14)または(15)に記載の方法。
(17) 前記(13)に記載の組成物を哺乳動物に投与するする工程を含む、肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療方法。
(18) 投与する方法が、静脈内投与である前記(17)記載の方法。
(19) 前記(12)に記載の組成物を含む、疾患の治療に用いるための医薬。
(20) 静脈内投与用である前記(19)記載の医薬。
(21) 前記(13)に記載の組成物を含む、肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療剤。
(22) 静脈内投与用である前記(21)記載の肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカチオン性脂質および核酸を含有する組成物を、ほ乳類等に投与することにより、該核酸を、例えば細胞内等に容易に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例49で得られた製剤(化合物A-1,3〜5のそれぞれを用いた製剤)および比較例1で得られた製剤(DLin-KC2-DMAおよび化合物XI-1〜3のそれぞれを用いた製剤)を、ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞内に導入後の、標的遺伝子のmRNAの発現率を示す。縦軸は陰性対照を1とした場合の標的遺伝子のmRNAの発現率を示し、横軸は核酸濃度(nM)、使用したカチオン性脂質の化合物番号を示す。
図2】実施例49で得られた製剤(化合物A-1〜5のそれぞれを用いた製剤)および比較例1で得られた製剤(DLin-KC2-MDAを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血清中コレステロールの値を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血清中コレステロール値の相対値を示す。
図3】実施例49で得られた製剤(化合物A-1〜5のそれぞれを用いた製剤)および比較例1で得られた製剤(DLin-KC2-MDAおよび化合物XI-1〜3のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 3 mg/kg相当量を投与48時間後の血清中コレステロールの値を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血清中コレステロール値の相対値を示す。
図4】実施例50もしくは51で得られた製剤(化合物A-6、A-1、A-7およびA-8のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。
図5】実施例51で得られた製剤(化合物A-9〜12、B-1、B-8およびC-1のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。
図6】実施例51で得られた製剤(化合物A-5およびA-13〜21のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。
図7】実施例51で得られた製剤(化合物A-28〜36のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。
図8】実施例51で得られた製剤(化合物C-2〜5のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。
図9】比較例2で得られた製剤(化合物XI-4〜8のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。
図10】実施例52もしくは53で得られた製剤(化合物A-1、A-6、A-7、A-10、A-12、B-8およびC-1のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3または0.1 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。■は0.3mg/kg投与群、□は0.1mg/kg投与群を示す。
図11】実施例53で得られた製剤(化合物A-5およびA-13〜21のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3または0.03 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。■は0.3mg/kg投与群、□は0.03mg/kg投与群を示す。
図12】実施例53で得られた製剤(化合物A-28〜36のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3または0.03 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。■は0.3mg/kg投与群、□は0.03mg/kg投与群を示す。
図13】実施例53で得られた製剤または実施例52もしくは53と同様にして得られた製剤(化合物A-1、A-6、A-10およびC-1〜5のそれぞれを用いた製剤)および比較例3で得られた製剤(化合物XI-9を用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3または0.03 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。■は0.3mg/kg投与群、□は0.03mg/kg投与群を示す。
図14】実施例54で得られた製剤(化合物A-1、A-7およびA-10のそれぞれを用いた製剤)につき、それぞれマウスにsiRNA 0.3または0.1 mg/kg相当量を投与48時間後の血漿中Factor VIIタンパクの濃度を示す。縦軸は生理食塩水投与群を100とした場合の血漿中Factor VIIタンパクの濃度の相対値を示す。■は0.3mg/kg投与群、□は0.1mg/kg投与群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のカチオン性脂質は、
式(A)
【0014】
【化6】
(式中、R1は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、
R2は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルであり、
R3およびR4は、同一または異なって炭素数1〜3のアルキルであるか、または一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成するか、またはR3はR5と一緒になって炭素数2〜6のアルキレンを形成し、
R5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、アミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイルまたは同一もしくは異なって1〜3つのアミノ、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイルもしくはジアルキルカルバモイルで置換された炭素数1〜6のアルキルもしくは炭素数3〜6のアルケニルであるか、またはR3と一緒になって炭素数2〜8のアルキレンを形成し、
X1は、炭素数1〜6のアルキレンであり、
X2は、単結合であるか、または炭素数1〜6のアルキレンであり、ただし、X1とX2の炭素数の和は7以下であり、R5が、水素原子の場合、X2は単結合であり、R5がR3と一緒になって炭素数2〜6のアルキレンを形成する場合、X2は単結合であるか、またはメチレンもしくはエチレンである)、
式(B)
【0015】
【化7】
(式中、R6は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、
R7は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルである)、または
式(C)
【0016】
【化8】
(式中、R8は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、
R9は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、アルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルであり、
X3は、炭素数1〜3のアルキレンであり、
R10は、水素原子または炭素数1〜3のアルキルである)で表されるカチオン性脂質である。
以下、式(A)で表される化合物を化合物(A)ということもある。他の式番号の化合物についても同様である。
【0017】
炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキルとしては、例えばオクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、2,6,10-トリメチルウンデシル、ペンタデシル、3,7,11-トリメチルドデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、6,10,14-トリメチルペンタデカン-2-イル、ノナデシル、2,6,10,14-テトラメチルペンタデシル、イコシル、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル等があげられる。
炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルケニルとしては、1以上の2重結合を含む炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルケニルであればよく、例えば(Z)-テトラデカ-9-エニル、(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(E)-オクタデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-11-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエニル、(Z)-イコサ-11-エニル、(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル、3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカ-2-エニル、(Z)-ドコサ-13-エニル等があげられ、好ましくは(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(Z)-イコサ-11-エニル、(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル、(Z)-ドコサ-13-エニル等があげられる。
炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキニルとしては、1以上の3重結合を含む炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキニルであればよく、例えばドデカ-11-イニル、テトラデカ-6-イニル、ヘキサデカ-7-イニル、ヘキサデカ-5,7-ジイニル、オクタデカ-9-イニル等があげられる。
【0018】
アルコキシエチルおよびアルコキシプロピルにおけるアルキル部分としては、例えば前記炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキルの例示であげた基等があげられる。
アルケニルオキシエチルおよびアルケニルオキシプロピルにおけるアルケニル部分としては、例えば前記炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルケニルの例示であげた基等があげられる。
アルキニルオキシエチルおよびアルキニルオキシプロピルにおけるアルキニル部分としては、例えば前記炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキニルの例示であげた基等があげられる。
【0019】
なお、R1およびR2は、同一または異なって炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキルまたはアルケニルであることがより好ましく、同一または異なって炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルケニルであることがさらに好ましく、同一または異なって炭素数8〜24の直鎖状のアルケニルであることがさらに好ましい。また、R1およびR2は、同一であることがより好ましく、その場合には、炭素数12〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであることがより好ましく、炭素数12〜24の直鎖状のアルケニルであることがさらに好ましい。
【0020】
R1およびR2が、異なる場合には、R1が炭素数16〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、R2が炭素数8〜12の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであることも本発明の好ましい形態のひとつである。この場合、R1が炭素数16〜24の直鎖状のアルケニルであり、R2が炭素数8〜12の直鎖状のアルキルであることがより好ましく、R1が(Z)-オクタデカ-9-エニルまたは(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルであり、R2がオクチル、デシルまたはドデシルであることが最も好ましい。また、R1およびR2が、異なる場合には、R1が、炭素数12〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、R2がアルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルであることも本発明の好ましい形態のひとつである。この場合、R1が、炭素数16〜24の直鎖状のアルケニルであり、R2が、アルケニルオキシエチルであることがより好ましく、R1が、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルまたは(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルであり、R2が、(Z)-オクタデカ-9-エニルオキシエチル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシエチルまたは(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルオキシエチルであることがさらに好ましく、R1が、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルであり、R2が、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシエチルであることが最も好ましい。
【0021】
R1および/またはR2が、同一または異なって炭素数8〜24の直鎖状もしくは分枝状のアルキル、アルケニルである場合には、同一または異なってテトラデシル、ヘキサデシル、(Z)-テトラデカ-9-エニル、(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(E)-オクタデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-11-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエニル、(Z)-イコサ-11-エニル 、(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルまたは(Z)-ドコサ-13-エニルであることが好ましく、同一または異なってヘキサデシル、(Z)-ヘキサデカ-9-エニル、(Z)-オクタデカ-6-エニル、(Z)-オクタデカ-9-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル、(Z)-イコサ-11-エニルまたは(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルであることがより好ましく、同一または異なって(Z)-オクタデカ-9-エニル、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルまたは(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニルであることがさらに好ましく、同一に(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルであることが最も好ましい。
【0022】
R6およびR7は、それぞれR1およびR2と同義である。ただし、R7が、炭素数16〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである場合、R6およびR7は、同一に(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルであることが好ましい。
【0023】
R8およびR9は、それぞれR1およびR2と同義である。ただし、R8およびR9は、同一に炭素数16〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであることが好ましく、同一に(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルであることがより好ましい。
【0024】
R3およびR4における、炭素数1〜3のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびシクロプロピルがあげられ、好ましくはメチルおよびエチルがあげられ、さらに好ましくはメチルがあげられる。
【0025】
R3とR4が一緒になって形成する、炭素数2〜8のアルキレンとしては、例えばエチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン、n-オクチレン等があげられ、好ましくはn-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン等があげられ、より好ましくはn-ペンチレン、n-ヘキシレン等があげられ、さらに好ましくはn-ヘキシレンがあげられる。
【0026】
なお、R3は、メチルもしくはエチルであるか、R4と一緒になって炭素数5〜7のアルキレンを形成するか、またはR5と一緒になって炭素数3〜5のアルキレンを形成することが好ましく、但し、R3がR4と一緒になって炭素数5〜7のアルキレンを形成しない場合には、R4はメチルまたはエチルであることが好ましく、メチルであることがより好ましい。さらに、R3は、メチルであるか、R4と一緒になってn-ペンチレンもしくはn-ヘキシレンを形成するか、またはR3がR5と一緒になってエチレン、n-プロピレンを形成することがより好ましく、但し、R3がR4と一緒になってn-ペンチレンもしくはn-ヘキシレンを形成しない場合には、R4はメチルであることがより好ましい。
【0027】
R5における、炭素数1〜6のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等があげられ、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等があげられ、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル等があげられる。
【0028】
R5における、炭素数3〜6のアルケニルとしては、例えばアリル、1-プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等があげられ、好ましくはアリル等があげられる。
【0029】
R5における、モノアルキルアミノとしては、1つの、例えば炭素数1〜6のアルキル(前記と同義)で置換されたアミノであればよく、例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ等があげられ、好ましくはメチルアミノ、エチルアミノ等があげられる。
R5における、アミノおよびモノアルキルアミノは、それぞれ、窒素原子上の孤立電子対に、水素イオンが配位して、アンモニオおよびモノアルキルアンモニオを形成していてもよく、アミノおよびモノアルキルアミノは、それぞれアンモニオおよびモノアルキルアンモニオを包含する。
本発明において、アミノおよびモノアルキルアミノの窒素原子上の孤立電子対に、水素イオンが配位したアンモニオおよびモノアルキルアンモニオは、製薬上許容し得る陰イオンと塩を形成していてもよい。
【0030】
R5における、アルコキシとしては、例えば炭素数1〜6のアルキル(前記と同義)で置換されたヒドロキシであればよく、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等があげられ、好ましくはメトキシ、エトキシ等があげられる。
【0031】
R5における、モノアルキルカルバモイルおよびジアルキルカルバモイルとしては、それぞれ1つおよび同一または異なって2つの、例えば炭素数1〜6のアルキル(前記と同義)で置換されたカルバモイルがあげられ、より具体的にはメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、プロピルカルバモイル、ブチルカルバモイル、ペンチルカルバモイル、ヘキシルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイル、メチルプロピルカルバモイル、ブチルメチルカルバモイル、メチルペンチルカルバモイル、ヘキシルメチルカルバモイル等があげられ、好ましくはメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル等があげられる。
【0032】
R5とR3が一緒になって形成する、炭素数2〜6のアルキレンとしては、例えばエチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン等があげられ、好ましくはn-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン等があげられ、より好ましくはn-プロピレン、n-ブチレン等があげられ、さらに好ましくはn-プロピレンがあげられる。
【0033】
なお、R5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル、モノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたは同一もしくは異なって1〜3つのアミノ、モノアルキルアミノ、またはヒドロキシもしくはアルコキシで置換された炭素数1〜6のアルキルであるか、またはR3と一緒になって炭素数2〜6のアルキレンを形成することが好ましく、水素原子、メチル、アミノ、メチルアミノ、ヒドロキシ、メトキシ、または同一もしくは異なって1〜3つのアミノもしくはヒドロキシで置換されたメチルであるか、またはR3と一緒になって炭素数3〜5のアルキレンを形成することがより好ましく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル、またはヒドロキシであるか、またはR3と一緒になってn-プロピレンまたはn-ブチレンを形成することがさらに好ましく、水素原子またはR3と一緒になってn-プロピレンを形成することが最も好ましい。
【0034】
R10における、炭素数1〜3のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル等があげられ、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、等があげられ、より好ましくはメチル、エチル等があげられる。なお、R10としては、水素原子またはメチルがさらに好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0035】
X1およびX2における、炭素数1〜6のアルキレンとしては、例えばメチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン等があげられる。
【0036】
また、X1は、炭素数1〜3のアルキレンであることが好ましく、メチレンまたはエチレンであることが最も好ましく、X2は、単結合、メチレンまたはエチレンであることが好ましく、単結合またはメチレンであることがより好ましい。X1とX2の炭素数の和は、1〜3が好ましく、2が最も好ましい。これらいずれの場合にも、R3およびR4は、同一または異なってメチルもしくはエチルであり、R5は、水素原子、メチル、アミノ、メチルアミノ、ヒドロキシ、メトキシ、または同一もしくは異なって1〜3つのアミノもしくはヒドロキシで置換されたメチルであるか、R3とR4は一緒になって炭素数5〜7のアルキレンを形成し、R5は、水素原子、メチル、アミノ、メチルアミノ、ヒドロキシ、メトキシ、または同一もしくは異なって1〜3つのアミノもしくはヒドロキシで置換されたメチルであるか、またはR3とR5は一緒になって炭素数3〜5のアルキレンを形成し、R4はメチルまたはエチルであることが好ましく、R3およびR4は、メチルであり、R5は、水素原子であるか、R3とR4は一緒になってn-ペンチレンもしくはn-ヘキシレンを形成し、R5は、水素原子であるか、またはR3とR5は一緒になってn-プロピレンを形成し、R4はメチルであることがより好ましい。
【0037】
X3における、炭素数1〜3のアルキレンとしては、例えばメチレン、エチレン、n-プロピレン等があげられ、好ましくはメチレン、エチレン等があげられる。
【0038】
式(A)における酸素原子は、それぞれ硫黄原子で置き換わっていてもよい。
式(A)における酸素原子の1つを硫黄原子に置き換えた式(Aa)
【0039】
【化9】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X1およびX2はそれぞれ前記と同義)で表される化合物Aaは、対応する化合物Aにローソン試薬(Lawesson’s Reagent、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド)等の1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド誘導体を作用させることで得ることができる。
【0040】
本発明のカチオン性脂質は、いずれかの窒素原子上の孤立電子対に、水素イオンが配位した場合に、製薬上許容し得る陰イオンと塩を形成していてもよい。
本発明において、製薬上許容し得る陰イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、安息香酸イオン、メタンスルホン酸イオン等の有機酸イオン等があげられる。
【0041】
次に本発明のカチオン性脂質の製造法について説明する。なお、以下に示す製造法において、定義した基が該製造法の条件下で変化するかまたは該製造法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される保護基の導入および除去方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第3版(Protective Groups in Organic Synthesis, third edition)、グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley&Sons Inc.(1999年)等に記載の方法]等を用いることにより、目的化合物を製造することができる。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
【0042】
製造法
化合物(A)のうち、R2が炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである、化合物(Ia)は以下の方法によって製造することができる。
【0043】
【化10】
(式中、R1、R3、R4、R5、X1およびX2はそれぞれ前記と同義であり、R11は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、Yは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ等の脱離基を表し、Arはp-ニトロフェニル、o-ニトロフェニル、p-クロロフェニル等の置換フェニル基または無置換フェニル基を表す)
【0044】
工程1および2
化合物(IIa)は、アンモニアと化合物(IIIa)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。さらに、化合物(IIb)は、化合物(IIa)と化合物(IIIb)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ピリジン、水等があげられ、これらは単独でまたは混合して用いられる。
塩基としては、例えば炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム tert-ブトキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等があげられる。
化合物(IIIa)および化合物(IIIb)は、市販品としてまたは公知の方法(例えば、「第5版 実験化学講座13 有機化合物の合成I」、第5版、p.374、丸善(2005年))もしくはそれに準じた方法で得ることができる。
R1とR11が同一の場合の化合物(IIb)は、工程1において、2当量以上の化合物(IIIa)を用いることで得ることができる。
【0045】
工程3
化合物(VI)は、化合物(IV)を、化合物(V)と、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等があげられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。
添加剤としては、例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-ジメチルアミノピリジン等があげられる。
塩基としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
化合物(IV)は、市販品として得ることができる。
化合物(V)は、市販品としてまたは公知の方法(例えば、「第5版 実験化学講座14 有機化合物の合成II」、第5版、p.1、丸善(2005年))もしくはそれに準じた方法で得ることができる。
【0046】
工程4
化合物(Ia)は、化合物(IIb)を、化合物(VI)と、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することができる。
溶媒および添加剤としては、それぞれ工程3で例示したものがあげられる。
塩基としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
化合物(IIb)は以下の方法によってもまた製造することができる。
【0047】
【化11】
(式中、R1、R11およびYはそれぞれ前記と同義であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示し、Nsは2-ニトロベンゼンスルホニル基を表す)
【0048】
工程5
化合物(IIc)は、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ニトロベンゼンスルホンアミドと化合物(IIIa)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
添加剤としては、例えばヨウ化n-テトラブチルアンモニウム、ヨウ化ナトリウム等があげられる。
塩基としては、例えば炭酸セシウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム tert-ブトキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、DBU等があげられる。
【0049】
工程6
化合物(IId)は、化合物(IIc)を、1当量〜大過剰量の酸で、無溶媒または溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間処理することにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸等があげられる。
添加剤としては、例えばチオアニソール、ジメチルスルフィド、トリイソプロピルシラン等があげられる。
工程7
化合物(IIe)は、化合物(IIIb)と化合物(IId)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
添加剤および塩基としては、それぞれ工程5で例示したものがあげられる。
工程8
化合物(IIb)は、化合物(IIe)とチオール化合物を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
チオール化合物としては、例えばメタンチオール、エタンチオール、ドデカンチオール、チオフェノール、メルカプト酢酸等があげられる。
塩基としては、工程5で例示したものがあげられる。
【0050】
化合物(A)のうち、R2がアルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルである、化合物(Ib)は以下の方法によって製造することができる。
【0051】
【化12】
(式中、R1、R3、R4、R5、X1、X2、YおよびArはそれぞれ前記と同義であり、R12はアルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルであり、Msはメタンスルホニル基を表す)
【0052】
工程9
化合物(IIf)は、化合物(IIa)と化合物(IIIc)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
塩基としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
【0053】
工程10
化合物(Ib)は、化合物(IIf)を、化合物(VI)と、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することができる。
溶媒および添加剤としては、それぞれ工程3で例示したものがあげられる。
塩基としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
【0054】
化合物(IIIc)は、以下の方法によって製造することができる。
【0055】
【化13】
(式中、R13は炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、X4はエチレンまたはn-プロピレンを表し、Msはメタンスルホニル基を表す)
【0056】
工程11
化合物(VIIb)は、化合物(VIIa)を、化合物(VIII)と、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程3で例示したものがあげられる。
塩基としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
化合物(VIIa)は、市販品としてまたは公知の方法(例えば、「第5版 実験化学講座14 有機化合物の合成II」、第5版、p.1、丸善(2005年))もしくはそれに準じた方法で得ることができる。
化合物(VIII)は、市販品として得ることができる。
【0057】
工程12
化合物(IIIc)は、化合物(VIIb)を、メシル化試薬と、無溶媒でまたは溶媒中、好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程3で例示したものがあげられる。
塩基としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
メシル化試薬としては、例えば無水メシル酸、メシル酸クロリド等があげられる。
化合物(IIf)は以下の方法によってもまた製造することができる。
【0058】
【化14】
(式中、R1、R12、Y、NsおよびMsはそれぞれ前記と同義である)
【0059】
工程13
化合物(IIg)は、化合物(IIIc)と化合物(IId)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
添加剤および塩基としては、それぞれ工程5で例示したものがあげられる。
工程14
化合物(IIf)は、化合物(IIg)とチオール化合物を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
チオール化合物としては、工程8で例示したものがあげられる。
塩基としては、工程5で例示したものがあげられる。
【0060】
式(A)における酸素原子が硫黄原子である式(Aa)〜(Ac)
【0061】
【化15】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X1およびX2はそれぞれ前記と同義である)で表される化合物Aa〜Acは、それぞれ工程4および工程10において、式(VI)における酸素原子が硫黄原子である式(VIa)〜(VIc)
【0062】
【化16】
(式中、R3、R4、R5、X1、X2およびArはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物VIa〜VIcを用いることで得ることができる。
【0063】
化合物(B)のうち、R7が炭素数8〜24の直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである化合物(Ba)は、化合物(IIb)の製造方法で得ることができる。
化合物(B)のうち、R7がアルコキシエチル、アルコキシプロピル、アルケニルオキシエチル、アルケニルオキシプロピル、アルキニルオキシエチルまたはアルキニルオキシプロピルである化合物(Bc)は、化合物(IIf)の製造方法で得ることができる。
【0064】
化合物(C)は、以下の方法によって製造することができる。
【0065】
【化17】
(式中、R8、R9、R10、X3およびYはそれぞれ前記と同義である)
工程15
化合物(C)は、化合物(IIh)と化合物(Xa)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒および塩基としては、それぞれ工程1および2で例示したものがあげられる。
添加剤としては、工程5で例示したものがあげられる。
化合物(IIh)は化合物(B)の製造方法で得ることができる。
化合物(Xa)は市販品としてまたは公知の方法(例えば、「第5版 実験化学講座13 有機化合物の合成I」、第5版、p.374、丸善(2005年))もしくはそれに準じた方法で得ることができる。
【0066】
化合物(C)のち、R10が水素原子である、化合物(Ca)は、以下の方法によっても製造することができる。
【0067】
【化18】
(式中、R8、R9、X3およびYはそれぞれ前記と同義であり、Proはトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリtert-ブチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリルまたはトリフェニルシリル等のシリル型保護基を表す)
【0068】
工程16
化合物(IXa)は、化合物(IIh)と化合物(Xb)を、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、および/または必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒および塩基としては、それぞれ工程1および2で例示したものがあげられる。
添加剤としては、工程5で例示したものがあげられる。
化合物(IIh)は化合物(B)の製造方法で得ることができる。
化合物(Xb)は市販品としてまたは公知の方法(例えば、「第5版 実験化学講座18 有機化合物の合成VI」、第5版、p.171-172、丸善(2005年))もしくはそれに準じた方法で得ることができる。
【0069】
工程17
化合物(Ca)は、化合物(IXa)と脱保護試薬を、無溶媒でまたは溶媒中、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1および2で例示したものがあげられる。
脱保護試薬としては、例えばフッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化水素ピリジン複合体、フッ化水素酸等のフッ素化合物等、酢酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム、塩酸等の酸等があげられる。
【0070】
化合物(C)のうち、R10が水素原子であり、X3が炭素数2のアルキレンである化合物(Cb)は、以下の方法によっても製造することができる。
【化19】
(式中、R8およびR9はそれぞれ前記と同義である)
【0071】
工程18
化合物(IXb)は、化合物(IIh)を、好ましくは1〜大過剰量のアクリル酸エチルと、無溶媒でまたは溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の塩基の存在下、室温と200℃の間の温度で、5分間〜100時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、工程1で例示したものがあげられる。
塩基としては、例えば炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert-ブトキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、DBU等があげられる。
【0072】
工程19
化合物(Cb)は、化合物(IXb)と、好ましくは1〜10当量の還元剤を、溶媒中、必要により好ましくは1〜10当量の添加剤の存在下、-20℃と150℃の間の温度で、5分間〜72時間反応させることにより製造することができる。
溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、トルエン等があげられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。
還元剤としては、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、ボラン等があげられる。
添加剤としては、例えば塩化アルミニウム、塩化セリウム、塩化鉄、酢酸、塩酸等があげられる。
【0073】
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
【0074】
本発明のカチオン性脂質において、構造中の窒素原子上の孤立電子対に水素イオンが配位してもよく、その場合には、製薬上許容し得る陰イオン(前記と同義)と塩を形成していてもよく、本発明のカチオン性脂質には、該窒素原子上の孤立電子対に水素イオンが配位した化合物も包含される。
本発明のカチオン性脂質の中には、幾何異性体、光学異性体等の立体異性体、互変異性体等が存在し得るものもあるが、本発明のカチオン性脂質は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
本発明のカチオン性脂質中の各原子の一部またはすべては、それぞれ対応する同位体原子で置き換わっていてもよく、化合物(A)、化合物(B)または化合物(C)は、これら同位体原子で置き換わった化合物も包含する。例えば、化合物(A)、化合物(B)または化合物(C)中の水素原子の一部またはすべては、原子量2の水素原子(重水素原子)であってもよい。
本発明のカチオン性脂質中の各原子の一部またはすべてが、それぞれ対応する同位体原子で置き換わった化合物は、市販のビルディングブロックを用いて、上記各製造法と同様な方法で製造することができる。また、化合物(A)、化合物(B)または化合物(C)中の水素原子の一部またはすべてが重水素原子で置き換わった化合物は、例えば、イリジウム錯体を触媒として用い、重水を重水素源として用いてアルコール、カルボン酸等を重水素化する方法[ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.), Vol.124,No.10,2092(2002)参照]等を用いて合成することもできる。
【0075】
本発明によって得られる本発明のカチオン性脂質の具体例を第1〜7表に示す。ただし、本発明のカチオン性脂質はこれらに限定されるものではない。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
また、本発明で用いられる核酸としては、例えばヌクレオチドおよび/またはヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であれば、いかなる分子であってもよく、例えばリボヌクレオチドの重合体であるリボ核酸(RNA)、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるデオキシリボ核酸(DNA)、RNAとDNAとからなるキメラ核酸、およびこれらの核酸の少なくとも一つのヌクレオチドが該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子で置換されたヌクレオチド重合体等があげられる。また、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子の構造を少なくとも一部に含む誘導体も、本発明の核酸に含まれる。なお、本発明において、ウラシルUと、チミンTとは、それぞれ読み替えることができる。
【0084】
ヌクレオチドと同等の機能を有する分子としては、例えばヌクレオチド誘導体等があげられる。
ヌクレオチド誘導体としては、例えばヌクレオチドに修飾を施した分子であればいかなる分子であってもよいが、例えばRNAまたはDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性を向上させるかもしくはその他の分解因子から安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーをあげるため、細胞透過性をあげるため、または可視化させるために、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドに修飾を施した分子等が好適に用いられる。
ヌクレオチド誘導体としては、例えば糖部修飾ヌクレオチド、リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド、塩基修飾ヌクレオチド等があげられる。
糖部修飾ヌクレオチドとしては、例えばヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよいが、2’-修飾ヌクレオチドが好ましく用いられる。
【0085】
糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基としては、例えば、2’-シアノ、2’-アルキル、2’-置換アルキル、2’-アルケニル、2’-置換アルケニル、2’-ハロゲン、2’-O-シアノ、2’-O-アルキル、2’-O-置換アルキル、2’-O-アルケニル、2’-O-置換アルケニル、2’-S-アルキル、2’-S-置換アルキル、2’-S-アルケニル、2’-S-置換アルケニル、2’-アミノ、2’-NH-アルキル、2’-NH-置換アルキル、2’-NH-アルケニル、2’-NH-置換アルケニル、2’-SO-アルキル、2’-SO-置換アルキル、2’-カルボキシ、2’-CO-アルキル、2’-CO-置換アルキル、2’-Se-アルキル、2’-Se-置換アルキル、2’-SiH2-アルキル、2’-SiH2-置換アルキル、2’-ONO2、2’-NO2、2’-N3、2’-アミノ酸残基(アミノ酸のカルボン酸から水酸基が除去されたもの)、2’-O-アミノ酸残基(前記アミノ酸残基と同義)等があげられる。
また、糖部修飾ヌクレオチドとして、例えば2’位の修飾基が4’位の炭素原子に架橋した構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)、より具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、およびエチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175(2004)]等もあげられ、これらは2’-修飾ヌクレオチドに含まれる。
さらに糖部修飾ヌクレオチドとして、ペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624(1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am. Chem. Soc., 123, 4653(2001)]、ペプチドリボ核酸(PRNA)[J. Am. Chem. Soc., 122, 6900(2000)]等もあげられる。
【0086】
糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基として、2’-シアノ、2’-ハロゲン、2’-O-シアノ、2’-アルキル、2’-置換アルキル、2’-O-アルキル、2’-O-置換アルキル、2’-O-アルケニル、2’-O-置換アルケニル、2’-Se-アルキル、2’-Se-置換アルキル等が好ましく、2’-シアノ、2’-フルオロ、2’-クロロ、2’-ブロモ、2’-トリフルオロメチル、2’-O-メチル、2’-O-エチル、2’-O-イソプロピル、2’-O-トリフルオロメチル、2'-O-[2-(メトキシ)エチル]、2'-O-(3-アミノプロピル)、2'-O-[2-(N,N-ジメチルアミノオキシ)エチル]、2'-O-[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]、2'-O-{2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ]エチル}、2'-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル]、2’-Se-メチル等がより好ましく、2’-O-メチル、2’-O-エチル、2’-フルオロ等がさらに好ましく、2’-O-メチルおよび2’-O-エチルが最も好ましい。
また、糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基は、その大きさから好ましい範囲を定義することもでき、フルオロの大きさから-O-ブチルの大きさに相当するものが好ましく、-O-メチルの大きさから-O-エチルの大きさに相当するものがより好ましい。
【0087】
糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基におけるアルキルは、本発明のカチオン性脂質の定義における炭素数1〜6のアルキルと同義である。
糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基におけるアルケニルとしては、炭素数3〜6のアルケニルがあげられ、例えばアリル、1-プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等があげられる。
糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基におけるハロゲンとしては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。
アミノ酸残基におけるアミノ酸としては、例えば脂肪族アミノ酸(具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等)、ヒドロキシアミノ酸(具体的には、セリン、トレオニン等)、酸性アミノ酸(具体的には、アスパラギン酸、グルタミン酸等)、酸性アミノ酸アミド(具体的には、アスパラギン、グルタミン等)、塩基性アミノ酸(具体的には、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン等)、含硫アミノ酸(具体的には、システイン、シスチン、メチオニン等)、イミノ酸(具体的には、プロリン、4-ヒドロキシプロリン等)等があげられる。
糖部修飾ヌクレオチドにおける修飾基における置換アルキルおよび置換アルケニルにおける置換基としては、例えば、ハロゲン(前記と同義)、ヒドロキシ、スルファニル、アミノ、オキソ、-O-アルキル(該-O-アルキルのアルキル部分は前記アルキルと同義)、-S-アルキル(該-S-アルキルのアルキル部分は前記アルキルと同義)、-NH-アルキル(該-NH-アルキルのアルキル部分は前記アルキルと同義)、ジアルキルアミノオキシ(該ジアルキルアミノオキシの2つのアルキル部分は同一または異なって前記アルキルと同義)、ジアルキルアミノ(該ジアルキルアミノの2つのアルキル部分は同一または異なって前記アルキルと同義)、ジアルキルアミノアルキルオキシ(該ジアルキルアミノアルキルオキシの2つのアルキル部分は同一または異なって前記アルキルと同義であり、アルキレン部分は前記アルキルから水素原子が1つ除かれたものを意味する)等があげられ、置換数は好ましくは1〜3である。
【0088】
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、リン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホロジチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がアルキルホスホネート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホロアミデート結合に置換されたヌクレオチド等があげられる。
塩基修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの塩基の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、塩基内の酸素原子が硫黄原子で置換されたもの、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基で置換されたもの、メチル基が水素原子もしくは炭素数2〜6のアルキル基で置換されたもの、アミノ基が炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルカノイル基等の保護基で保護されたもの等があげられる。
さらに、ヌクレオチド誘導体として、ヌクレオチドまたは糖部、リン酸ジエステル結合もしくは塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド誘導体に脂質、リン脂質、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、色素等、別の化学物質を付加したものもあげられ、具体的には、5’-ポリアミン付加ヌクレオチド誘導体、コレステロール付加ヌクレオチド誘導体、ステロイド付加ヌクレオチド誘導体、胆汁酸付加ヌクレオチド誘導体、ビタミン付加ヌクレオチド誘導体、緑色蛍光色素(Cy3)付加ヌクレオチド誘導体、赤色蛍光色素(Cy5)付加ヌクレオチド誘導体、フルオロセイン(6-FAM)付加ヌクレオチド誘導体、およびビオチン付加ヌクレオチド誘導体等があげられる。
また、本発明で用いられる核酸においては、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体が、該核酸内の他のヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体とアルキレン構造、ペプチド構造、ヌクレオチド構造、エーテル構造、エステル構造、およびこれらの少なくとも一つを組み合わせた構造等の架橋構造を形成してもよい。
【0089】
本発明で用いられる核酸としては、好ましくは標的遺伝子の発現を抑制する核酸があげられ、より好ましくはRNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有する核酸があげられる。
【0090】
本発明における標的遺伝子としては、mRNAを産生して発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、腫瘍または炎症に関連する遺伝子が好ましく、例えば血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、以下VEGFと略す)、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor、以下VEGFRと略す)、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、クルッペル様因子(Kruppel-like factor、以下KLFと略す)、エクスプレスドシーケンスタグ(Ets)転写因子、核因子、低酸素誘導因子、細胞周期関連因子、染色体複製関連因子、染色体修復関連因子、微小管関連因子、増殖シグナル経路関連因子、増殖関連転写因子、アポトーシス関連因子等のタンパク質をコードする遺伝子等があげられ、具体的にはVEGF遺伝子、VEGFR遺伝子、線維芽細胞増殖因子遺伝子、線維芽細胞増殖因子受容体遺伝子、血小板由来増殖因子遺伝子、血小板由来増殖因子受容体遺伝子、肝細胞増殖因子遺伝子、肝細胞増殖因子受容体遺伝子、KLF遺伝子、Ets転写因子遺伝子、核因子遺伝子、低酸素誘導因子遺伝子、細胞周期関連因子遺伝子、染色体複製関連因子遺伝子、染色体修復関連因子遺伝子、微小管関連因子遺伝子(例えば、CKAP5遺伝子等)、増殖シグナル経路関連因子遺伝子(例えば、KRAS遺伝子等)、増殖関連転写因子遺伝子、アポトーシス関連因子(例えば、BCL-2遺伝子等)等が挙げられる。
【0091】
また、本発明における標的遺伝子としては、例えば、肝臓、肺、腎臓または脾臓において発現する遺伝子が好ましく、肝臓において発現する遺伝子がより好ましく、例えば前記の腫瘍または炎症に関連する遺伝子、B型肝炎ウイルスゲノム、C型肝炎ウイルスゲノム、アポリポタンパク質(APO)、ヒドロキシメチルグルタリル(HMG)CoA還元酵素、ケキシン 9 型セリンプロテアーゼ(PCSK9)、第12因子、グルカゴン受容体、グルココルチコイド受容体、ロイコトリエン受容体、トロンボキサンA2受容体、ヒスタミンH1受容体、炭酸脱水酵素、アンギオテンシン変換酵素、レニン、p53、チロシンホスファターゼ(PTP)、ナトリウム依存性グルコース輸送担体、腫瘍壊死因子、インターロイキン、ヘプシジン、トランスサイレン、アンチトロンビン、プロテインC、マトリプターゼ酵素(例えば、TMPRSS6遺伝子等)等のタンパク質をコードする遺伝子等があげられる。
【0092】
標的遺伝子の発現を抑制する核酸としては、例えば蛋白質等をコードする遺伝子(標的遺伝子)のmRNAの一部の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含み、かつ標的遺伝子の発現を抑制する核酸であれば、例えばsiRNA(short interference RNA)、miRNA(micro RNA)等の二本鎖核酸、shRNA(short hairpin RNA)、アンチセンス核酸、リボザイム等の一本鎖核酸等、いずれの核酸を用いてもよいが、二本鎖核酸が好ましい。
標的遺伝子のmRNAの一部の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む核酸をアンチセンス鎖核酸といい、アンチセンス鎖核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む核酸をセンス鎖核酸ともいう。センス鎖核酸は、標的遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸そのもの等、アンチセンス鎖核酸と対合して二重鎖形成部ができる核酸をいう。
二本鎖核酸とは、二本の鎖が対合し二重鎖形成部を有する核酸をいう。二重鎖形成部とは、二本鎖核酸を構成するヌクレオチドまたはその誘導体が塩基対を構成して二重鎖を形成している部分をいう。二重鎖形成部を構成する塩基対は、通常15〜27塩基対であり、15〜25塩基対が好ましく、15〜23塩基対がより好ましく、15〜21塩基対がさらに好ましく、15〜19塩基対が特に好ましい。
【0093】
二重鎖形成部のアンチセンス鎖核酸としては、例えば標的遺伝子のmRNAの一部配列からなる核酸、または該核酸において1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつ標的蛋白質の発現抑制活性を有する核酸が好適に用いられる。二本鎖核酸を構成する一本鎖の核酸は、通常15〜30塩基(ヌクレオシド)の連なりからなるが、15〜29塩基が好ましく、15〜27塩基がより好ましく、15〜25塩基がさらに好ましく、17〜23塩基が特に好ましく、19〜21塩基が最も好ましい。
二本鎖核酸を構成するアンチセンス鎖、センス鎖のいずれか一方、または両方の核酸は、二重鎖形成部に続く3’側または5’側に二重鎖を形成しない追加の核酸を有してもよい。この二重鎖を形成しない部分を突出部(オーバーハング)ともいう。
突出部を有する二本鎖核酸としては、例えば少なくとも一方の鎖の3’末端または5’末端に1〜4塩基、通常は1〜3塩基からなる突出部を有するものが用いられるが、2塩基からなる突出部を有するものが好ましく用いられ、dTdTまたはUUからなる突出部を有するものがより好ましく用いられる。突出部は、アンチセンス鎖のみ、センス鎖のみ、およびアンチセンス鎖とセンス鎖の両方に有することができるが、アンチセンス鎖とセンス鎖の両方に突出部を有する二本鎖核酸が好ましく用いられる。
また、二重鎖形成部に続いて標的遺伝子のmRNAの塩基配列と一部または全てが一致する配列、または、二重鎖形成部に続いて標的遺伝子のmRNAの相補鎖の塩基配列と一部または全てが一致する配列を用いてもよい。さらに、標的遺伝子の発現を抑制する核酸としては、例えばDicer等のリボヌクレアーゼの作用により前記の二本鎖核酸を生成する核酸分子(国際公開第2005/089287号パンフレット)や、3’末端や5’末端の突出部を有していない二本鎖核酸等を用いることもできる。
【0094】
また、前記の二本鎖核酸がsiRNAである場合、好ましくはアンチセンス鎖は、5’末端側から3’末端側に向って少なくとも1〜17番目の塩基(ヌクレオシド)の配列が、標的遺伝子のmRNAの連続する17塩基の配列と相補的な塩基の配列であり、より好ましくは、該アンチセンス鎖は、5’末端側から3’末端側に向って1〜19番目の塩基の配列が、標的遺伝子のmRNAの連続する19塩基の配列と相補的な塩基の配列であるか、1〜21番目の塩基の配列が、標的遺伝子のmRNAの連続する21塩基の配列と相補的な塩基の配列であるか、1〜25番目の塩基の配列が、標的遺伝子のmRNAの連続する25塩基の配列と相補的な塩基の配列である。
【0095】
さらに、本発明で用いられる核酸がsiRNAである場合、好ましくは該核酸中の糖の10〜70%、より好ましくは15〜60%、さらに好ましくは20〜50%が、2’位において修飾基で置換されたリボースである。本発明における2’位において修飾基で置換されたリボースとは、リボースの2’位の水酸基が修飾基に置換されているものを意味し、リボースの2’位の水酸基と立体配置が同じであっても異なっていてもよいが、好ましくはリボースの2’位の水酸基と立体配置が同じである。2’位において修飾基で置換されたリボースにおける修飾基としては、糖部修飾ヌクレオチドにおける2’-修飾ヌクレオチドにおける修飾基の定義で例示したものおよび水素原子があげられ、2’-シアノ、2’-ハロゲン、2’-O-シアノ、2’-アルキル、2’-置換アルキル、2’-O-アルキル、2’-O-置換アルキル、2’-O-アルケニル、2’-O-置換アルケニル、2’-Se-アルキル、2’-Se-置換アルキル等が好ましく、2’-シアノ、2’-フルオロ、2’-クロロ、2’-ブロモ、2’-トリフルオロメチル、2’-O-メチル、2’-O-エチル、2’-O-イソプロピル、2’-O-トリフルオロメチル、2'-O-[2-(メトキシ)エチル]、2'-O-(3-アミノプロピル)、2'-O-[2-(N,N-ジメチル)アミノオキシ]エチル、2'-O-[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]、2'-O-{2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ]エチル}、2'-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル]、2’-Se-メチル、水素原子等がより好ましく、2’-O-メチル、2’-O-エチル、2’-フルオロ、水素原子等がさらに好ましく、2’-O-メチルおよび2’-O-フルオロが最も好ましい。
【0096】
本発明で用いられる核酸には、核酸の構造中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等が、例えば硫黄原子等の他の原子に置換された誘導体を包含する。
【0097】
また、アンチセンス鎖およびセンス鎖の5’末端の塩基に結合する糖は、それぞれ5’位の水酸基が、リン酸基もしくは前記の修飾基、または生体内の核酸分解酵素等でリン酸基もしくは前記の修飾基に変換される基によって修飾されていてもよい。
また、アンチセンス鎖およびセンス鎖の3’末端の塩基に結合する糖は、それぞれ3’位の水酸基が、リン酸基もしくは前記の修飾基、または生体内の核酸分解酵素等でリン酸基もしくは前記の修飾基に変換される基によって修飾されていてもよい。
【0098】
一本鎖の核酸としては、例えば標的遺伝子の連続する15〜27塩基(ヌクレオシド)、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは15〜23塩基、さらに好ましくは15〜21塩基、特に好ましくは15〜19塩基からなる配列の相補配列からなる核酸、または該核酸において1〜3塩基、好ましくは1〜2塩基、より好ましくは1塩基が置換、欠失もしくは付加され、かつ標的蛋白質の発現抑制活性を有する核酸であればいずれでもよい。該一本鎖の核酸は、15〜30塩基(ヌクレオシド)の連なりからなることが好ましく、より好ましくは15〜27塩基、さらに好ましくは15〜25塩基、特に好ましくは15〜23塩基の一本鎖核酸が好適に用いられる。
一本鎖核酸として、上記の二本鎖核酸を構成するアンチセンス鎖およびセンス鎖を、スペーサー配列(スペーサーオリゴヌクレオチド)を介して連結したものを用いてもよい。スペーサーオリゴヌクレオチドとしては6〜12塩基の一本鎖核酸分子が好ましく、その5’末端側の配列は2個のUであるのが好ましい。スペーサーオリゴヌクレオチドの例として、UUCAAGAGAの配列からなる核酸があげられる。スペーサーオリゴヌクレオチドによってつながれるアンチセンス鎖およびセンス鎖の順番はどちらが5’側になってもよい。該一本鎖核酸としては、例えばステムループ構造によって二重鎖形成部を有するshRNA等の一本鎖核酸であることが好ましい。shRNA等の一本鎖核酸は、通常50〜70塩基長である。
リボヌクレアーゼ等の作用により、上記の一本鎖核酸または二本鎖核酸を生成するように設計した、70塩基長以下、好ましくは50塩基長以下、さらに好ましくは30塩基長以下の核酸を用いてもよい。
【0099】
なお、本発明で用いられる核酸は、既知のRNAまたはDNA合成法、およびRNAまたはDNA修飾法を用いて製造することができる。
【0100】
本発明の組成物は、本発明のカチオン性脂質および核酸を含有する組成物であり、例えば本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体を含有する組成物、該複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有する組成物等があげられる。該脂質膜は、脂質一重膜(脂質1分子膜)でも脂質二重膜(脂質2分子膜)であってもよい。なお、該脂質膜に、本発明のカチオン性脂質、中性脂質および/または高分子を含有していてもよい。また、該複合体および/または該脂質膜に、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を含有していてもよい。
また、本発明の組成物としては、例えば本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物等もあげられる。この場合の脂質膜も、脂質一重膜(脂質1分子膜)でも脂質二重膜(脂質2分子膜)であってもよい。また、該脂質膜に、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質、中性脂質および/または高分子を含有していてもよい。
【0101】
本発明の組成物において、本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体を含有する組成物、本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物、ならびに本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物がより好ましく、本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体を含有する組成物、ならびに本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物がさらに好ましく、本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物が最も好ましい。なお、いずれの場合も該脂質膜に、中性脂質および/または高分子を含有していてもよい。また、該複合体および/または該脂質膜に、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を含有していてもよい。
【0102】
複合体の形態としては、例えば核酸と脂質一重(一分子)層からなる膜(逆ミセル)との複合体、核酸とリポソームとの複合体、核酸とミセルとの複合体等があげられ、好ましくは核酸と脂質一重層からなる膜との複合体または核酸とリポソームとの複合体があげられる。
複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有する組成物としては、例えば該複合体および該複合体を脂質二重膜で封入するリポソーム等があげられる。
なお、本発明の組成物には、本発明のカチオン性脂質を一種または複数種を使用してよく、また本発明のカチオン性脂質には、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を混合してもよい。
本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質としては、例えば、特開昭61-161246号公報(米国特許5049386号明細書)中で開示される、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセノイルオキシ))-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)等、国際公開第91/16024号パンフレットおよび国際公開第97/019675号パンフレット中で開示される、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)等、国際公開第2005/121348号パンフレット中で開示される、DLinDMA等、国際公開第2009/086558号パンフレット中で開示される、DLin-K-DMA、国際公開第2011/136368号パンフレット中で開示される、(3R,4R)-3,4-ビス((Z)-ヘキサデカ-9-エニルオキシ)-1-メチルピロリジン、N-メチル-N,N-ビス(2-((Z)-オクタデカ-6-エニルオキシ)エチル)アミン等があげられ、好ましくはDOTMA、DOTAP、DORIE、DOSPA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)等の2つの非置換アルキル基を有する3級アミン部位または3つの非置換アルキル基を有する4級アンモニウム部位を有するカチオン性脂質があげられ、より好ましくは、該3級アミン部位を有するカチオン性脂質があげられる。該3級アミン部位および該4級アンモニウム部位の非置換アルキル基はメチル基であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物は、核酸を含有することができるが、核酸と化学的に近似した化合物も含有することもできる。
【0103】
本発明の組成物は、公知の製造方法またはそれに準じて製造することができ、いかなる製造方法で製造されたものであってよい。例えば、組成物の1つであるリポソームを含有する組成物の製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[“ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)”,1965年,第13巻,p.238-252参照]、エタノール注入法[“ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)”,1975年,第66巻,p.621-634参照]、フレンチプレス法[“エフイービーエス・レターズ(FEBS Lett.)”,1979年,第99巻,p.210-214参照]、凍結融解法[“アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.)”,1981年,第212巻,p.186-194参照]、逆相蒸発法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)”,1978年,第75巻, p.4194-4198参照]またはpH勾配法(例えば特許第2572554号公報、特許第2659136号公報等参照)等があげられる。リポソームの製造の際にリポソームを分散させる溶液としては、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理食塩水またはアミノ酸輸液等を用いることができる。また、リポソームの製造の際には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システインまたはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の抗酸化剤、例えばグリセリン、ブドウ糖または塩化ナトリウム等の等張化剤等の添加も可能である。また、例えば、本発明のカチオン性脂質、または本発明のカチオン性脂質と本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質との混合物等を例えばエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒を留去した後、生理食塩水等を添加、振とう攪拌し、リポソームを形成させることによってもリポソームを製造することができる。
【0104】
また、本発明の組成物は、例えば、本発明のカチオン性脂質、または本発明のカチオン性脂質と本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質との混合物をクロロホルムに予め溶解し、次いで核酸の水溶液とメタノールを加えて混合してカチオン性脂質/核酸の複合体を形成させ、さらにクロロホルム層を取り出し、これにポリエチレングリコール化リン脂質と中性の脂質と水を加えて油中水型(W/O)エマルジョンを形成し、逆相蒸発法で処理して製造する方法(特表2002-508765号公報参照)や、核酸を、酸性の電解質水溶液に溶解し、例えば、本発明のカチオン性脂質、または本発明のカチオン性脂質と本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質との混合物(エタノール中)を加え、エタノール濃度を20v/v%まで下げて前記核酸内包リポソームを調製し、サイジングろ過し、透析によって、過剰のエタノールを除去した後、試料をさらにpHを上げて透析して組成物表面に付着した核酸を除去して製造する方法(特表2002-501511号公報およびバイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),2001年,第1510巻,p.152-166参照)等によって製造することができる。
【0105】
本発明の組成物のうち、本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入した脂質二重膜を含有するリポソームを含有する組成物は、例えば、国際公開第02/28367号パンフレットおよび国際公開第2006/080118号パンフレット等に記載の製造方法に従って製造することができる。
【0106】
また、本発明の組成物のうち、例えば本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入した脂質膜を含有する組成物、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物等は、国際公開第02/28367号パンフレットおよび国際公開第2006/080118号パンフレット等に記載の製造方法に従って、それぞれの複合体を製造し、水または0〜20%エタノール水溶液中に、該複合体を溶解させずに分散させ(A液)、別途、それぞれの脂質膜成分を、例えばエタノール水溶液中に溶解させ(B液)、等量のA液とB液を混合し、さらに適宜に水を加えることで得ることができる。なお、A液およびB液中のカチオン性脂質としては、一種または複数種の本発明のカチオン性脂質または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を使用してよく、また本発明のカチオン性脂質と本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を組み合わせて混合して使用してもよい。
なお、本発明において、本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入した脂質膜を含有する組成物、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物等の製造中および製造後に、複合体中の核酸と脂質膜中のカチオン性脂質との静電相互作用や、複合体中のカチオン性脂質と脂質膜中のカチオン性脂質との融合によって、複合体および膜の構造が変位したものも、それぞれ本発明のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入した脂質膜を含有する組成物、または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質と核酸との複合体、または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質に中性脂質および/もしくは高分子を組み合わせたものと核酸との複合体ならびに該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜に本発明のカチオン性脂質を含有する組成物等に包含される。
【0107】
国際公開第02/28367号および国際公開第2006/080118号等に記載の製造方法に従って、核酸(前記と同義)、好ましくは二本鎖核酸と本発明のカチオン性脂質および/または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を含有するリポソームとの複合体を製造し、水または0〜20%エタノール水溶液中に、該複合体を溶解させずに分散させ(A液)、別途、本発明のカチオン性脂質および/または本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質を、エタノール水溶液中に溶解させ(B液)、等量または体積比1:1のA液とB液を混合すること、または、さらに適宜に水を加えることでも、該核酸と該カチオン性脂質を含有する組成物を得ることができる。該組成物は、好ましくはカチオン性脂質と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有する組成物であり、より好ましくは該核酸と該カチオン性脂質を含有する脂質一重層からなる膜(逆ミセル)との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有する組成物である。これらの場合の脂質膜は、脂質一重膜(脂質1分子膜)でも脂質二重膜(脂質2分子膜)であってもよい。
また、本開示の該核酸と該リポソームとの複合体中のリポソームは、予め大きさを、平均粒子径10nm〜400nm、より好ましくは30nm〜110nm、さらに好ましくは40nm〜80nmに調節したリポソームが好ましい。また、該複合体および/または脂質膜に、中性脂質および/または高分子を含有していてもよい。また、A液は、リポソームと該核酸との複合体を形成させることができれば、エタノール濃度は、20〜40%であってもよい。
また、等量のA液とB液を混合する代わりに、A液とB液を混合後に複合体が溶解せず、かつB液中のカチオン性脂質が溶解しないエタノール濃度、好ましくは複合体が溶解せず、B液中のカチオン性脂質が溶解せず、かつエタノール濃度が30〜60%のエタノール水溶液になるような比でA液とB液を混合することに代えてもよく、あるいはA液とB液を混合後に複合体が溶解しないようなエタノール濃度になるような比でA液とB液を混合し、さらに水を加えることで、B液中のカチオン性脂質が溶解しなくなるエタノール濃度にすることにしてもよい。
本開示の該A液中での核酸とリポソームとの複合体は、A液とB液を混合し、さらに適宜に水を加えた後には、カチオン性脂質を含有する脂質一重層からなる膜(逆ミセル)と核酸との複合体に形態が変化している。本開示の製造方法で得られる該核酸と該カチオン性脂質を含有する組成物は、好ましくはカチオン性脂質と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有する組成物であり、より好ましくは、カチオン性脂質を含有する脂質一重層からなる膜(逆ミセル)と核酸との複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有し、該脂質膜にカチオン性脂質を含有する組成物であり、その製造性(収率および/または均一性)は優れている。
【0108】
本発明の組成物において、複合体中の本発明のカチオン性脂質の分子の総数は、該核酸のリン原子の数に対して0.5〜4倍であるのが好ましく、1.5〜3.5倍であるのがより好ましく、2〜3倍であるのがさらに好ましい。また、該複合体中の本発明のカチオン性脂質および本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質の分子の総数は、該核酸のリン原子の数に対して0.5〜4倍であるのが好ましく、1.5〜3.5倍であるのがより好ましく、2〜3倍であるのがさらに好ましい。
本発明の組成物において、複合体および該複合体を封入する脂質膜を含有する組成物中の本発明のカチオン性脂質の分子の総数は、該核酸のリン原子の数に対して1〜10倍であるのが好ましく、2.5〜9倍であるのがより好ましく、3.5〜8倍であるのがさらに好ましい。また、該組成物中の本発明のカチオン性脂質および本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質の分子の総数は、該核酸のリン原子の数に対して1〜10倍であるのが好ましく、2.5〜9倍であるのがより好ましく、3.5〜8倍であるのがさらに好ましい。
【0109】
中性脂質としては、単純脂質、複合脂質または誘導脂質のいかなるものであってもよく、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイドまたはステロール等があげられるがこれらに限定されない。
本発明の組成物において中性脂質を含有する場合には、中性脂質の分子の総数は、本発明のカチオン性脂質および本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質の分子の総数に対して0.1〜1.8倍であるのが好ましく、0.3〜1.2倍であるのがより好ましく、0.4〜1.0倍であるのがさらに好ましい。本発明の組成物は、いずれも中性脂質を、複合体に含有してもよく、複合体を封入する脂質膜に含有していてもよく、少なくとも複合体を封入する脂質膜に含有していることがより好ましく、複合体および該複合体を封入する脂質膜のどちらにも含有していることがさらに好ましい。
【0110】
中性脂質におけるリン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(具体的には大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)等)、ホスファチジルエタノールアミン(具体的にはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、16-0-モノメチルPE、16-0-ジメチルPE、18-1-トランスPE、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、1 -ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)等)、グリセロリン脂質(具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、リゾホスファチジルコリン等)、スフィンゴリン脂質(具体的にはスフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等)、グリセロホスホノ脂質、スフィンゴホスホノ脂質、天然レシチン(具体的には卵黄レシチン、大豆レシチン等)または水素添加リン脂質(具体的には水素添加大豆ホスファチジルコリン等)等の天然または合成のリン脂質があげられる。
【0111】
中性脂質におけるグリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリドまたはグリコシルジグリセリド等があげられる。
【0112】
中性脂質におけるスフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシドまたはガングリオシド等があげられる。
【0113】
中性脂質におけるスフィンゴイドとしては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシンまたはそれらの誘導体等があげられる。誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガンまたはスフィンゴシン等の-NH2を-NHCO(CH2)xCH3(式中、xは0〜18の整数であり、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
【0114】
中性脂質におけるステロールとしては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロールまたは3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)等があげられる。
【0115】
高分子としては、例えばタンパク質、アルブミン、デキストラン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン、デキストラン硫酸、例えばポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド-アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸またはポリエチレングリコール化ポリ乳酸等の高分子またはそれらの塩の1以上からなるミセル等があげられる。
【0116】
ここで、高分子の塩は、例えば金属塩、アンモニウム塩、酸付加塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩または亜鉛塩等があげられる。アンモニウム塩としては、例えばアンモニウムまたはテトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩またはクエン酸塩等の有機酸塩があげられる。有機アミン付加塩としては、例えばモルホリンまたはピペリジン等の付加塩があげられる。アミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸またはリジン等の付加塩があげられる。
【0117】
また、本発明の組成物はいずれも、例えば糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体、または界面活性剤等を含有することが好ましく、複合体に含有していてもよく、複合体を封入する脂質膜に含有していてもよく、複合体および該複合体を封入する脂質膜ともに含有していることがより好ましい。
本発明の組成物が、糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体を含有する場合には、糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体および脂肪酸誘導体の分子の総数は、本発明のカチオン性脂質および本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質の分子の総数に対して0.05〜0.3倍であるのが好ましく、0.07〜0.25倍であるのがより好ましく、0.1〜0.2倍であるのがさらに好ましい。
【0118】
糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体、または界面活性剤としては、好ましくは、糖脂質、または水溶性高分子の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体があげられ、より好ましくは、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体、または界面活性剤は、分子の一部が組成物の他の構成成分と例えば疎水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質をもち、他の部分が組成物の製造時の溶媒と例えば親水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質をもつ、2面性をもつ物質であるのが好ましい。
【0119】
糖、ペプチドまたは核酸の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばショ糖、ソルビトール、乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチド、グルタチオン等のペプチド、または例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等の核酸と、前記組成物の定義の中であげた中性脂質もしくは本発明のカチオン性脂質または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられる。
【0120】
また、糖の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えば前記組成物の定義の中であげたグリセロ糖脂質またはスフィンゴ糖脂質等も含まれる。
【0121】
水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ-L-リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体と、前記組成物の定義の中であげた中性脂質もしくは本発明のカチオン性脂質、または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸またはラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの、それらの塩等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコールまたはポリグリセリン等の脂質誘導体または脂肪酸誘導体およびそれらの塩があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコールの脂質誘導体または脂肪酸誘導体およびそれらの塩があげられる。
【0122】
ポリエチレングリコールの脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール化脂質[具体的にはポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-DSPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-DMPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等]、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類(具体的にはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)またはポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール化脂質があげられる。
【0123】
ポリグリセリンの脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリグリセリン化脂質(具体的にはポリグリセリン-ホスファチジルエタノールアミン等)またはポリグリセリン脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリグリセリン化脂質があげられる。
【0124】
界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸エステル(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)、グリセリン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられる。
【0125】
また、本発明の組成物中の複合体および脂質膜には、例えば水溶性高分子等による表面改質も任意に行うことができる[ラジック(D.D.Lasic)、マーティン(F.Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc),1995年,p.93-102参照]。表面改質に使用し得る水溶性高分子としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ-L-リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等があげられ、好ましくはデキストラン、プルラン、マンナン、アミロペクチンまたはヒドロキシエチルデンプン等があげられる。また、表面改質には、糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体または脂肪酸誘導体(前記と同義)等を用いることができる。該表面改質は、本発明の組成物中の複合体および脂質膜に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体、または界面活性剤を含有させる方法の1つである。
また、標的化リガンドを、本発明の組成物の脂質成分の極性ヘッド残基に共有結合することにより本発明の組成物の表面に直接結合させることも任意に行うことができる(国際公開第2006/116107号パンフレット参照)。
【0126】
本発明の組成物中の複合体または複合体を封入する脂質膜の平均粒子径は、所望により自由に選択できるが、下記する平均粒子径とするのが好ましい。平均粒子径を調節する方法としては、例えばエクストルージョン法、大きな多重膜リポソーム(MLV)等を機械的に粉砕(具体的にはマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用)する方法[ミュラー(R.H.Muller)、ベニタ(S.Benita)、ボーム(B.Bohm)編著,“エマルジョン・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソラブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs)”,ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267-294参照]等があげられる。
【0127】
本発明の組成物中の複合体の大きさは、平均粒子径が約5nm〜200nmであるのが好ましく、約20nm〜150nmであるのがより好ましく、約30nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
本発明の組成物(複合体を封入する脂質膜)の大きさは、平均粒子径が約10nm〜300nmであるのが好ましく、約30nm〜200nmであるのがより好ましく、約50nm〜150nmであるのがさらに好ましい。
本発明の組成物中の複合体または複合体を封入する脂質膜の平均粒子径は、例えば動的光散乱法で測定することができる。
【0128】
本発明の組成物を、ほ乳類の細胞に導入することで、本発明の組成物中の核酸を細胞内に導入することができる。
【0129】
インビボにおける本発明の組成物のほ乳類の細胞への導入は、インビボにおいて行うことのできる公知のトランスフェクションの手順に従って行えばよい。例えば、本発明の組成物を、人を含む哺乳動物に静脈内投与することで、例えば腫瘍または炎症の生じた臓器または部位へ送達され、送達臓器または部位の細胞内に本発明の組成物中の核酸を導入することができる。腫瘍または炎症の生じた臓器または部位としては、特に限定されないが、例えば胃、大腸、肝臓、肺、脾臓、膵臓、腎臓、膀胱、皮膚、血管、眼球等があげられる。また、本発明の組成物を、人を含む哺乳動物に静脈内投与することで、例えば肝臓、肺、脾臓および/または腎臓へ送達され、送達臓器または部位の細胞内に本発明の組成物中の核酸を導入することができる。肝臓、肺、脾臓および/または腎臓の細胞は、正常細胞、腫瘍もしくは炎症に関連した細胞またはその他の疾患に関連した細胞のいずれでもよい。
本発明の組成物中の核酸が、RNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有する核酸であれば、インビボでほ乳類の細胞内に、標的遺伝子の発現を抑制する該核酸等を導入することができ、標的遺伝子の発現の抑制ができる。投与対象は、人であることが好ましい。
また、本発明における標的遺伝子が、例えば肝臓、肺、腎臓または脾臓において発現する遺伝子、好ましくは肝臓において発現する遺伝子であれば、本発明の組成物を、肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療剤または予防剤、好ましくは肝臓に関連する疾患の治療剤または予防剤として使用することができる。
即ち、本発明は、上記説明した本発明の組成物を哺乳動物に投与する肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療方法も提供する。投与対象は、人であることが好ましく、肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患に罹患している人がより好ましい。
また、本発明の組成物は、肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患の治療剤または予防剤に関するインビボの薬効評価モデルにおいて、標的遺伝子を抑制することの有効性を検証するためのツールとして使用することもできる。
【0130】
本発明の組成物は、例えば血液成分等の生体成分(例えば血液、消化管等)中での前記核酸の安定化、副作用の低減または標的遺伝子の発現部位を含む組織または臓器への薬剤集積性の増大等を目的とする製剤としても使用できる。
【0131】
本発明の組成物を、医薬品の肝臓、肺、腎臓または脾臓に関連する疾患等の治療剤または予防剤として使用する場合、投与経路としては、治療に際し最も効果的な投与経路を使用するのが望ましく、例えば口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内または静脈内等の非経口投与または経口投与をあげることができ、好ましくは静脈内投与または筋肉内投与をあげることができ、より好ましくは静脈内投与があげられる。
投与量は、投与対象の病状や年齢、投与経路等によって異なるが、例えば核酸に換算した1日投与量が約0.1μg〜1000mgとなるように投与すればよい。
【0132】
静脈内投与または筋肉内投与に適当な製剤としては、例えば注射剤があげられ、上述の方法により調製した組成物の分散液をそのまま例えば注射剤等の形態として用いることも可能であるが、該分散液から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して使用することも、該分散液を凍結乾燥して使用する、および/または例えばマンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトースもしくはグリシン等の賦形剤を加えた分散液を凍結乾燥して使用することもできる。
注射剤の場合、前記の組成物の分散液または前記の溶媒を除去または凍結乾燥した組成物に、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理食塩水またはアミノ酸輸液等を混合して注射剤を調製することが好ましい。また、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システインもしくはEDTA等の抗酸化剤またはグリセリン、ブドウ糖もしくは塩化ナトリウム等の等張化剤等を添加して注射剤を調製することも可能である。また、例えばグリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存することもできる。
【0133】
次に、実施例、参考例および試験例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例、参考例および試験例に限定されるものではない。
なお、実施例および参考例に示されたプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)は、270MHz、300MHz、400MHzまたは500MHzで測定されたものであり、化合物および測定条件によっては交換性プロトンが明瞭には観測されないことがある。なお、シグナルの多重度の表記としては通常用いられるものを用いているが、brとは見かけ上幅広いシグナルであることを表す。
【実施例1】
【0134】
ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミン (化合物B-1)
アンモニア(東京化成工業社製、約2 mol/Lメタノール溶液、18.0 mL、36.0 mmol)に、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル メタンスルホナート(ニューチェック・プレップ・インク(Nu-Chek Prep,Inc)社製、1.55 g、4.50 mmol)を加え、マイクロ波反応装置を用いて130℃で3時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで5回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮することで(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルアミンの粗生成物を得た。
得られた粗生成物に(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル メタンスルホナート(Nu-Chek Prep,Inc社製、1.24 g、3.60 mmol)および50%水酸化ナトリウム水溶液(1.44 g、18.0 mmol)を加え、油浴上110℃で60分間攪拌した。室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、水、ついで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜95/5)で精製することにより、化合物B-1(0.838 g、収率36.2%)を得た。
ESI-MS m/z: 515(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9Hz, 6H), 1.30(br s, 33H), 1.41-1.54(m, 4H), 2.01-2.09(m, 8H), 2.59(t, J= 7.2 Hz, 4H), 2.77(t, J= 5.6 Hz, 4H), 5.28-5.43(m, 8H).
【実施例2】
【0135】
ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)アミン (化合物B-2)
参考例1と同様の方法で、アンモニア(東京化成工業社製、約2 mol/Lメタノール溶液、12.0 mL、24.0 mmol)および(Z)-オクタデカ-9-エニル メタンスルホナート(Nu-Chek Prep,Inc社製、1.87 g、5.40 mmol)を用い、化合物B-2(0.562 g、収率36.2%)を得た。
ESI-MS m/z: 519(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.7 Hz, 6H), 1.29(br s, 45H), 1.41-1.52(m, 4H), 1.97-2.05(m, 8H), 2.58(t, J= 7.2 Hz, 4H), 5.28-5.40(m, 4H).
【実施例3】
【0136】
ジ((Z)-ヘキサデカ-9-エニル)アミン (化合物B-3)
参考例1と同様の方法で、アンモニア(シグマ・アルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製、約7 mol/Lメタノール溶液、1.66 mL、11.6 mmol)および(Z)-ヘキサデカ-9-エニル メタンスルホナート(Nu-Chek Prep,Inc社製、0.488 g、1.46 mmol)を用い、化合物B-3(0.243 g、収率36.0%)を得た。
1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.24-1.37(m, 37H), 1.43-1.52(m, 4H), 1.98-2.05(m, 8H), 2.58(t, J= 7.2 Hz, 4H), 5.31-5.38(m, 4H).
【実施例4】
【0137】
ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)アミン (化合物B-4)
参考例1と同様の方法で、アンモニア(SIGMA-ALDRICH社製、約7 mol/Lメタノール溶液、1.60 mL、11.2 mmol)および(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル メタンスルホナート(Nu-Chek Prep,Inc社製、0.521 g、1.40 mmol)を用い、化合物B-4(0.292 g、収率36.6%)を得た。
1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.24-1.39(m, 41H), 1.43-1.51(m, 4H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.58(t, J= 7.3 Hz, 4H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 5.30-5.41(m, 8H).
【実施例5】
【0138】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-1)
実施例1で得られる化合物B-1(1.35 g、2.63 mmol)をクロロホルム(18 mL)に溶解させ、“ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)”,1981年,第103巻,p.4194-4199記載の方法に準じた方法で合成した3-(ジメチルアミノ)プロピル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩(化合物VI-1)(1.20 g、3.94 mmol)およびトリエチルアミン(1.47 mL、10.5 mmol)を加え、マイクロ波反応装置を用いて110℃で60分間攪拌した。反応液に化合物VI-1(200 mg、0.658 mmol)を加え、マイクロ波反応装置を用いて110℃で20分間攪拌した。反応液に化合物VI-1(200 mg、0.658 mmol)を加え、マイクロ波反応装置を用いて110℃で20分間攪拌した。反応液に化合物VI-1(200 mg、0.658 mmol)を加え、マイクロ波反応装置を用いて110℃で20分間攪拌した。反応液をクロロホルムで希釈し、1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、ついで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を少量のn-ヘキサン/酢酸エチル(1/4)に溶解してアミノ修飾シリカゲルのパッドに吸着させ、n-ヘキサン/酢酸エチル(1/4)で溶出し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜95/5)で精製することで化合物A-1(1.39 g、収率82.2%)を得た。
ESI-MS m/z: 644(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.7 Hz, 6H), 1.29(br s, 32H), 1.45-1.56(m, 4H), 1.74-1.85(m, 2H), 2.00-2.09(m, 8H), 2.23(s, 6H), 2.35(t, J= 7.4 Hz, 2H), 2.77(t, J= 5.8 Hz, 4H), 3.13-3.23(m, 4H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.28-5.43(m, 8H).
【実施例6】
【0139】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)カルバマート
(化合物A-2)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例2で得られる化合物B-2(0.156 g、0.301 mmol)を用い、化合物A-2(0.267 g、収率88.7%)を得た。
ESI-MS m/z: 648(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.6 Hz, 6H), 1.28(br s, 44H), 1.45-1.55(m, 4H), 1.75-1.85(m, 2H), 1.97-2.04(m, 8H), 2.23(s, 6H), 2.34(t, J= 7.6 Hz, 2H), 3.13-3.24(m, 4H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.28-5.40(m, 4H).
【実施例7】
【0140】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ジ((Z)-ヘキサデカ-9-エニル)カルバマート
(化合物A-3)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例3で得られる化合物B-3(0.164 g、0.355 mmol)を用い、化合物A-3(0.116 g、収率55.2%)を得た。
ESI-MS m/z: 592(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.38(m, 36H), 1.47-1.54(m, 4H), 1.75-1.83(m, 2H), 2.00-2.04(m, 8H), 2.22(s, 6H), 2.34(t, J= 7.4 Hz, 2H), 3.11-3.24(m, 4H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.30-5.38(m, 4H).
【実施例8】
【0141】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)カルバマート (化合物A-4)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例4で得られる化合物B-4(0.288 g、0.505 mmol)を用い、化合物A-4(0.290 g、収率82.2%)を得た。
ESI-MS m/z: 700(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.21-1.40(m, 40H), 1.46-1.54(m, 4H), 1.76-1.83(m, 2H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.23(s, 6H), 2.35(t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.10-3.24(m, 4H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 8H).
【実施例9】
【0142】
2-(ジメチルアミノ)エチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-5)
実施例5と同様の方法で、実施例1で得られる化合物B-1(0.215 g、0.418 mmol)および、化合物VI-1の代わりに2-(ジメチルアミノ)エチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩(化合物VI-2)(0.162 g、0.557 mmol)を用いて、化合物A-5(0.184 g、収率70.0%)を得た。
ESI-MS m/z: 630(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.12-1.39(m, 32H), 1.45-1.54(m, 4H), 2.00-2.07(m, 8H), 2.28(s, 6H), 2.57(t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.11-3.24(m, 4H), 4.17(t, J= 6.7 Hz, 2H), 5.28-5.41(m, 8H).
【0143】
参考例1 5-アミノ-N,N-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)ペンタンアミド (化合物XI-1)
実施例1で得られる化合物B-1(150 mg、0.292 mmol)をクロロホルム(4 mL)に溶解させ、5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン酸(東京化成工業社製、95 mg、0.438 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.255 mL、1.46 mmol)およびHATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)(アルドリッチ社製、222 mg、0.584 mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜97/3)で精製することでtert-ブチル 5-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)-5-オキソペンチルカルバマートを得た。
tert-ブチル 5-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)-5-オキソペンチルカルバマートをジクロロメタン(4 mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(0.450 mL、5.84 mmol)を加え室温で4時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水層をクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜90/10)で精製することで化合物XI-1(124 mg、収率96.1%)を得た。
ESI-MS m/z: 614(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.28-1.38(m, 32H), 1.43-1.57(m, 6H), 1.63-1.73(m, 2H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.30(t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.71(t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.2 Hz, 4H), 3.19(t, J= 7.7 Hz, 2H), 3.28(t, J= 7.7 Hz, 2H), 5.28-5.43(m, 8H).
【0144】
参考例2 5-(ジメチルアミノ)-N,N-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)ペンタンアミド (化合物XI-2)
参考例1で得られる化合物XI-1(90.0 mg、0.147 mmol)を1,2-ジクロロエタン(2 mL)とメタノール(2 mL)に溶解させ、ホルムアルデヒド(0.219 mL、2.94 mmol)およびナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(アクロス・オーガニクス(Acros Organics)社製、311 mg、1.47 mmol)を加え室温で5時間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜75/25)で精製することで化合物XI-2(88.2 mg、収率93.9%)を得た。
ESI-MS m/z: 642(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.26-1.38(m, 32H), 1.46-1.71(m, 8H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.22(s, 6H), 2.29(q, J= 7.0 Hz, 4H), 2.77(t, J= 6.2 Hz, 4H), 3.19(t, J= 7.9 Hz, 2H), 3.28(t, J= 7.7 Hz, 2H), 5.28-5.42(m, 8H).
【0145】
参考例3 3-アミノプロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物XI-3)
実施例1で得られる化合物B-1(146 mg、0.284 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解させ、“ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)”,1981年,第103巻,p.4194-4199記載の方法に準じた方法で合成したtert-ブチル 3-((4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシ)プロピルカルバマート(145 mg、0.426 mmol)およびトリエチルアミン(0.158 mL、1.14 mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応混合物に水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜98/2)で精製することで3-((N-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマートを得た。
3-((N-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマートをジクロロメタン(4 mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(0.242 mL、3.13 mmol)を加え室温で8時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水層をクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール=100/0〜90/10)で精製することで化合物XI-3(75.6 mg、収率43.3%)を得た。
ESI-MS m/z: 616(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.26-1.38(m, 32H), 1.46-1.54(m, 4H), 1.73-1.82(m, 2H), 2.05(q, J= 6.6 Hz, 8H), 2.76-2.80(m, 6H), 3.18(br s, 4H), 4.15(t, J= 6.2 Hz, 2H), 5.29-5.43(m, 8H).
【0146】
参考例4 2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-3)
クロロぎ酸4-ニトロフェニル(東京化成工業社製、1.761 g、8.56 mmol)のジエチルエーテル(20 mL)溶液に、2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エタノール(東京化成工業社製、1.0 mL、7.13 mmol)のジエチルエーテル(20 mL)溶液を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をエタノール/ジエチルエーテル(1/1)より結晶化させ、濾取することで化合物VI-3(1.27 g、収率54%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 1.59-1.77(m, 2H), 1.82-2.09(m, 3H), 2.15-2.26(m, 1H), 2.76(s, 3H), 2.93-3.05(m, 2H), 3.61-3.20(m, 3H), 4.80(br s, 1H), 6.95(d, J= 9.2 Hz, 2H), 8.11(d, J= 9.2 Hz, 2H)
【0147】
参考例5 4-ニトロフェニル 3-(ピペリジン-1-イル)プロピル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-4)
クロロぎ酸4-ニトロフェニル(1.58 g、7.67 mmol)のジエチルエーテル(32 mL)溶液に、3-(ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オール(SIGMA-ALDRICH社製、1.00 mL、6.39 mmol)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をエタノールより結晶化させ、濾取することで化合物VI-4(1.86 g、収率84%)を得た。
ESI-MS m/z: 309(M + H)+; 1H-NMR(DMSO-d6)δ: 1.28-1.49(m, 1H), 1.62-1.89(m, 5H), 2.10-2.26(m, 2H), 2.76-2.96(m, 2H), 3.04-3.19(m, 2H), 3.36-3.49(m, 2H), 4.33(t, J= 6.1 Hz, 2H), 7.58(d, J= 9.2 Hz, 2H), 8.33(d, J= 9.2 Hz, 2H), 10.37(br s, 1H).
【0148】
参考例6 4-ニトロフェニル 3-(ピロリジン-1-イル)プロピル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-5)
クロロぎ酸4-ニトロフェニル(596 mg、2.84 mmol)のジエチルエーテル(10 mL)溶液に、3-(ピロリジン-1-イル)プロパン-1-オール(ABCR社製、386 mg、2.84 mmol)ジエチルエーテル(10 mL)溶液を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をエタノールより結晶化させ、濾取することで化合物VI-5(498 mg、収率53%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 1.76-1.84(m, 2H), 1.85-2.00(m, 4H), 3.11-3.16(m, 2H), 3.30-3.44(m, 4H), 3.47(t, J= 6.0 Hz, 2H), 4,77(br s, 1H), 6.95(d, J= 9.2 Hz, 2H), 8.11(d, J= 9.2 Hz, 2H)
【実施例10】
【0149】
2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-6)
実施例1で得られる化合物B-1(0.161 g、0.314 mmol)をアセトニトリル(3.0 mL)に溶解させ、参考例4で得られる化合物VI-3(0.156 g、0.470 mmol)およびトリエチルアミン(0.219 mL、1.57 mmol)を加え、80℃で2時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 80/20)で精製することにより、化合物A-6(0.172 g、収率82%)を得た。
ESI-MS m/z: 670(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.20-1.40(m, 32H), 1.45-1.57(m, 6H), 1.62-1.83(m, 2H), 1.94-2.18(m, 12H), 2.31(s, 3H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.03-3.26(m, 5H), 4.06-4.17(m, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【実施例11】
【0150】
3-(ピペリジン-1-イル)プロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-7)
実施例5と同様の方法で、化合物VI-1の代わりに参考例5で得られる化合物VI-4を用いて、化合物A-7(0.387 g、収率81%)を得た。
ESI-MS m/z: 684(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.62(m, 42H), 1.79-1.86(m, 2H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.32-2.42(m, 6H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.10-3.43(m, 4H), 4.09(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【実施例12】
【0151】
3-(ピロリジン-1-イル)プロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-8)
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに参考例6で得られる化合物VI-5(0.168 g、0.508 mmol)を用い、化合物A-8(0.225 g、収率99%)を得た。
ESI-MS m/z: 670(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.40(m, 32H), 1.46-1.55(m, 4H), 1.76-1.80(m, 4H), 1.82-1.89(m, 2H), 2.01-2.08(m, 8H), 2.47-2.55(m, 6H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.11-3.24(m, 4H), 4.11(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【0152】
参考例7 2-ニトロ-N-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)ベンゼンスルホンアミド (化合物IId-1)
(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル メタンスルホナート(Nu-Chek Prep,Inc社製、2.85 g、8.27 mmol)のアセトニトリル(30 ml)溶液に、炭酸セシウム(6.74 g、20.67 mmol)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(東京化成工業社製、3.05 g、8.27 mmol)およびN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-ニトロベンゼンスルホンアミド(東京化成工業社製、2.50 g、8.27 mmol)を加え、3時間加熱還流下反応させた。反応液を室温まで冷却し、水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 91/9〜70/30)で精製することにより、tert-ブチル(2-ニトロフェニル)スルホニル((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート(3.21 g、収率70.5%)を得た。
tert-ブチル(2-ニトロフェニル)スルホニル((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート(3.21 g、5.83 mmol)のジクロロメタン(22.5 ml)溶液にトリフルオロ酢酸(9.63 ml、126 mmol)を加え、室温で0.5時間攪拌した。反応液にジクロロメタンおよび水酸化ナトリウム水溶液(1 mol/L、100 mL)を加え、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて水層のpHを8以上に調整した。得られた混合物をジクロロメタンで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/クロロホルム = 50/50〜0/100)で精製し、化合物IId-1(2.48 g、収率94%)を得た。
ESI-MS m/z: 451(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 7.0 Hz, 3H), 1.22-1.39(m, 16H), 1.52(m, 2H), 2.01-2.05(m, 4H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.09(q, J= 6.7 Hz, 2H), 5.23(m, 1H), 5.31-5.42(m, 4H), 7.71-7.76(m, 2H), 7.78-7.87(1H), 8.13-8.15(m, 1H).
【実施例13】
【0153】
ドデシル((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)アミン (化合物B-5)
参考例7で得られる化合物IId-1(0.714 g、1.584 mmol)と1-ブロモドデカン(東京化成工業製、0.474 g、1.90 mmol)のアセトニトリル(6 ml)溶液にヨウ化テトラブチルアンモニウム(東京化成工業社製、0.585 g、1.58 mmol)および炭酸セシウム(1.03 g、3.17 mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。反応液に水を加え、n-ヘキサンで3回抽出した。抽出液をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 94/6〜84/16)で精製してN-ドデシル-2-ニトロ-N-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド(0.750 g、収率76%)を得た。
N-ドデシル-2-ニトロ-N-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド(0.748 g、1.21 mmol)のアセトニトリル(7 ml)溶液に1-ドデカンチオール(東京化成工業社製、0.611 g、3.02 mmol)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(ナカライテスク社製、0.460 g、3.02 mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=80:20、ついでクロロホルム/メタノール = 100/0〜88/12)で精製することで化合物B-5(0.534 g、定量的収率)を得た。
ESI-MS m/z: 434(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 3H), 0.89(t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.24-1.38(m, 35H), 1.49-1.54(m, 4H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 4H), 2.62(t, J= 7.4 Hz, 4H), 2.77(t, J= 6.8 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 4H).
【実施例14】
【0154】
デシル((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)アミン (化合物B-6)
実施例13と同様の方法で、参考例7で得られる化合物IId-1(0.619 g、1.37 mmol)および、1-ブロモドデカンの代わりに1-ブロモデカン(東京化成工業社製、0.365 g、1.65 mmol)を用い、化合物B-6(0.423 g、収率76%)を得た。
ESI-MS m/z: 406(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 7.1 Hz, 3H), 0.89(t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.25-1.38(m, 31H), 1.46-1.50(m, 4H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 4H), 2.59(t, J= 7.2 Hz, 4H), 2.77(t, J= 6.9 Hz, 2H), 5.31-5.40(m, 4H).
【実施例15】
【0155】
((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)(オクチル)アミン (化合物B-7)
実施例13と同様の方法で、参考例7で得られる化合物IId-1(0.714 g、1.58 mmol)および、1-ブロモドデカンの代わりに1-ブロモオクタン(東京化成工業社製、0.367 g、1.90 mmol)を用い、化合物B-7(0.519 g、収率87%)を得た。
ESI-MS m/z: 378(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 7.1 Hz, 3H), 0.89(t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.24-1.39(m, 27H), 1.48-1.54(m, 4H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 4H), 2.62(t, J= 7.4 Hz, 4H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 4H).
【実施例16】
【0156】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ドデシル((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-9)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例13で得られる化合物B-5(0.260 g、0.600 mmol)を用い、化合物A-9(0.309 g、収率91%)を得た。
ESI-MS m/z: 563(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 3H), 0.89(t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.23-1.38(m, 34H), 1.48-1.53(m, 4H), 1.77-1.82(m, 2H), 2.05(q, J= 7.1 Hz, 4H), 2.23(s, 6H), 2.34(t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.13-3.22(m, 4H), 4.10(t, J= 6.5 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 4H).
【実施例17】
【0157】
3-(ジメチルアミノ)プロピル デシル((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-10)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例14で得られる化合物B-6(0.185 g、0.456 mmol)を用い、化合物A-10(0.228 g、収率93%)を得た。
ESI-MS m/z: 535(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.8 Hz, 3H), 0.89(t, J= 6.7 Hz, 3H), 1.24-1.38(m, 30H), 1.48-1.53(m, 4H), 1.77-1.82(m, 2H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 4H), 2.22(s, 6H), 2.34(t, J= 7.5 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.14-3.22(m, 4H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.31-5.40(m, 4H).
【実施例18】
【0158】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)(オクチル)カルバマート (化合物A-11)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例15で得られる化合物B-7(0.227 g、0.600 mmol)を用い、化合物A-11(0.275 g、収率90%)を得た。
ESI-MS m/z: 507(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 3H), 0.89(t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.22-1.39(m, 26H), 1.47-1.54(m, 4H), 1.76-1.82(m, 2H), 2.05(q, J= 6.0 Hz, 4H), 2.23(s, 6H), 2.34(t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.12-3.22(m, 4H), 4.10(t, J= 6.5 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 4H).
【0159】
参考例8 2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル メタンスルホナート (化合物IIIc-1)
(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル メタンスルホナート(983 mg、2.85 mmol)にエチレングリコール(3.16 ml、57.1 mmol)および1,4-ジオキサン(5 ml)を加え、1日間加熱還流下攪拌した。反応液を室温まで冷却後、水酸化ナトリウム水溶液(0.5 mol/L)を加えてn-ヘキサンで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム100%)で精製することで2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エタノール(668 mg、収率75%)を得た。
2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エタノール(660 mg、2.13 mmol)とトリエチルアミン(0.444 mL、3.19 mmol)のジクロロメタン(9 ml)溶液に、0℃で無水メシル酸(SIGMA-ALDRICH社製、0.247 ml、3.19 mmol)を加え、室温で40分間攪拌した。反応液に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を、塩酸(1 mol/L)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮して化合物IIIc-1を得た。
【実施例19】
【0160】
(9Z,12Z)-N-(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)オクタデカ-9,12-ジエン-1-アミン (化合物B-8)
実施例13と同様の方法で、参考例7で得られる化合物IId-1(0.798 g、1.77 mmol)および、1-ブロモドデカンの代わりに参考例8で得られる化合物IIIc-1(0.826 g、2.13 mmol)を用い、化合物B-8(0.676 g、収率68%)を得た。
ESI-MS m/z: 558(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.27-1.38(m, 32H), 1.46-1.52(m, 2H), 1.54-1.60(m, 3H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.61(t, J= 7.3 Hz, 2H), 2.77(t, J= 5.5 Hz, 6H), 3.42(t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.52(t, J= 5.4 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 8H).
【実施例20】
【0161】
3-(ジメチルアミノ)プロピル ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)カルバマート (化合物A-12)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例19で得られる化合物B-8(0.184 g、0.330 mmol)を用い、化合物A-12(0.208 g、収率92%)を得た。
ESI-MS m/z: 687(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.25-1.38(m, 32H), 1.50-1.57(m, 4H), 1.77-1.83(m, 2H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.22(s, 6H), 2.34(t, J= 7.4 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.23-3.54(m, 8H), 4.11(t, J= 6.5 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 8H).
【0162】
参考例9 N,N-ビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)アミン (化合物XI-4)
水素化ナトリウム(油性、60%、1.69 g、42.2 mmol)に、N-ベンジルジエタノールアミン(東京化成工業社製、1.65 g、8.44 mmol)のトルエン(10 mL)溶液を攪拌しながらゆっくりと添加した後、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル メタンスルホナート(Nu-Chek Prep,Inc社製、6.69 g、19.4 mmol)のトルエン(10 mL)溶液を滴下した。得られた混合物を加熱還流下4時間攪拌した。室温まで冷却後、反応をエタノールで停止させた。得られた混合物に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 100/0〜99/1)で精製することによりN-ベンジル-N,N-ビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)アミン(4.01 g、収率69%)を得た。
N-ベンジル-N,N-ビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)アミン(4.01 g、5.89 mmol))を1,2-ジクロロエタン(29 mL)に溶解させ、クロロぎ酸1-クロロエチル(東京化成工業社製、1.90 mL、17.4 mmol)を加え130℃で1時間攪拌した。反応溶液にメタノール(29 mL)を加え、130℃でさらに1時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 90/10〜75/25)で精製することにより化合物XI-4(5.56 g、収率92%)を得た。
ESI-MS m/z: 621(M+ H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.27-1.30(m, 33H), 1.53-1.59(m, 4H), 2.05(q, J= 7.1 Hz, 8H), 2.77(t, J= 6.8 Hz, 4H), 2.80(t, J= 5.4 Hz, 4H), 3.42(t, J= 6.8 Hz, 4H), 3.53(t, J= 5.4 Hz, 4H), 5.30-5.41(m, 8H).
【0163】
参考例10 3-(ジメチルアミノ)プロピル ビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)カルバマート
(化合物XI-5)
実施例5と同様の方法で、化合物B-1の代わりに参考例9で得られる化合物XI-4(1.20 g、1.99 mmol)を用い、化合物XI-5(1.32 g、収率91%)を得た。
ESI-MS m/z: 732(M+ H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.27-1.30(m, 30H), 1.51-1.57(m, 4H), 1.77-1.83(m, 4H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.23(s, 6H), 2.34(t, J= 7.5 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.38-3.54(m, 12H), 4.12(t, J= 6.5 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 8H).
【0164】
参考例11 3-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)プロピオン酸エチル (化合物XI-6)
実施例1で得られる化合物B-1(0.788 g、1.53 mmol)をエタノール(8 mL)に溶解させ、アクリル酸エチル(東京化成工業社製、1.67 mL、15.3 mmol)およびナトリウムエトキシド(和光純薬工業社製、0.0520 g、0.767 mmol)を加え、加熱還流下、3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 85/15)で精製することにより、化合物XI-6(0.699 g、収率74%)を得た。
ESI-MS m/z: 615(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.45(m, 39H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.35-2.44(m, 6H), 2.75-2.80(m, 6H), 4.12(q, J= 7.0 Hz, 2H), 5.30-5.42(m, 8H).
【実施例21】
【0165】
3-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)プロパン-1-オール (化合物C-1)
参考例11で得られる化合物XI-6(0.199 g、0.324 mmol)をテトラヒドロフラン(2 mL)に溶解させ、氷冷下、水素化リチウムアルミニウム(純正化学社製、0.012 g、0.324 mmol)を加え、3時間攪拌した。反応液に水(0.0600 mL、3.33 mmol)およびフッ化ナトリウム(ナカライテスク社製、0.408 g、9.72 mmol)を加え、室温にて0.5時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除去した。ろ液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 98/2)で精製することにより、化合物C-1(0.181 g、収率98%)を得た。
ESI-MS m/z: 573(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.40(m, 32H), 1.42-1.51(m, 4H), 1.64-1.71(m, 2H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.40(t, J= 7.3 Hz, 4H), 2.64(t, J= 5.3 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.79(t, J= 5.3 Hz, 2H), 5.30-5.42(m, 8H).
【0166】
参考例12 3-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)プロパン-1,2-ジオール (化合物XI-7)
実施例1で得られる化合物B-1(0.228 g、0.444 mmol)をジクロロエタン(2 mL)に溶解させ、メタノール(2 mL)および2,3-ジヒドロキシプロパナール(ナカライテスク社製、0.400 g、4.44 mmol)を加え、室温にて0.5時間攪拌した。反応液にトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(東京化成工業社製、0.470 g、2.22 mmol)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液に2,3-ジヒドロキシプロパナール(0.400 g、4.44 mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応液にトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(0.470 g、2.22 mmol)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで2回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 50/50)で精製することにより、化合物XI-7(0.0449 g、収率17%)を得た。
ESI-MS m/z: 589(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.19-1.51(m, 36H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.38-2.62(m, 6H), 2.77(t, J= 6.7 Hz, 4H), 3.46-3.50(m, 1H), 3.69-3.77(m, 2H), 5.30-5.42(m, 8H).
【0167】
参考例13 3-((3R,4R)-3,4-ビス((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)ピロリジン-1-イル)プロパン-1-オール (化合物XI-8)
化合物XI-8は、国際公開第2011/136368号パンフレットに記載の方法で合成した。
【実施例22】
【0168】
4-(ジメチルアミノ)ブチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-13)
工程1
クロロぎ酸4-ニトロフェニル(0.867 g、4.21 mmol) のジクロロメタン(20 mL) 溶液に、4-(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ-1-ブタノール(SIGMA-ALDRICH社製、1.0 mL、4.21 mmol) とトリエチルアミン(0.881 mL, 6.32 mmol) を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで2回抽出した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 90/10)で精製することにより、4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブチル 4-ニトロフェニル カルボナート(1. 44 g、収率92%) を得た。
工程2
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに工程1で得られる4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブチル 4-ニトロフェニル カルボナート(0.640 g、1.733 mmol) を用いて、4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマートの粗精製物を得た。得られた 4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマートの粗精製物をテトラヒドロフラン(10 mL) に溶解し、フッ化テトラブチルアンモニウム(東京化成工業社製、約
1 mol/L テトラヒドロフラン溶液、2.14 mL、2.14 mmol)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(約 1 mol/L テトラヒドロフラン溶液、2.14 mL、2.14 mmol) を加え、室温で2時間攪拌後、50℃で1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで2回抽出した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 95/5)で精製することにより、4-ヒドロキシブチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート(0.652 g、収率73%) を得た。
工程3
工程2で得られた 4-ヒドロキシブチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート(0.193 g、0.306 mmol)のジクロロメタン(2 mL)溶液に、氷冷下、メシル酸クロリド(純正化学社製、0.0360 mL、0.460 mmol)とトリエチルアミン(0.0930 mL、0.919 mmol)を加え、0℃にて30分間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで2回抽出した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をテトラヒドロフラン(1 mL)に溶解し、ジメチルアミン(アルドリッチ社製、約 2 mol/L テトラヒドロフラン溶液、1.53 mL、3.06 mmol)を加え、マイクロ波反応装置を用いて100℃で1時間攪拌後、マイクロ波反応装置を用いて130℃で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 80/20)で精製することにより、化合物A-13(0.159 g、収率79%)を得た。
ESI-MS m/z: 658(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3)δ: 0.90(q, J= 6.5 Hz, 6H), 1.20-1.38(m, 32H), 1.45-1.56(m, 6H), 1.61-1.69(m, 2H), 2.01-2.08(m, 8H), 2.21(s, 6H), 2.28(t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.12-3.23(m, 4H), 4.07(t, J= 6.6 Hz, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【0169】
参考例14 (1-メチルピペリジン-4-イル)メチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-6)
クロロぎ酸4-ニトロフェニル(1.50 g、7.28 mmol)のテトラヒドロフラン(32 mL)溶液に、1-メチル-4-ピペリジンメタノール(東京化成工業社製、1.0 mL、7.28 mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。析出した結晶を濾取することで化合物VI-6(1.55 g、収率64%)を得た。
ESI-MS m/z: 295(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3)δ: 1.93-2.19(m, 4H), 2.68-2.82(m, 3H), 3.51-3.62(m, 5H), 4.21(d, J= 6.0 Hz, 2H), 7.38(d, J= 9.1 Hz, 2H), 8.27(d, J= 9.1 Hz, 2H), 12.44(br s, 1H).
【0170】
参考例15 (1-メチルピペリジン-3-イル)メチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-7)
参考例14と同様の方法で、1-メチル-4-ピペリジンメタノールの代わりに 1-メチル-3-ピペリジンメタノール(東京化成工業社製、1.0 mL、7.21 mmol)を用い、化合物VI-7(2.32 g、収率97%)を得た。
ESI-MS m/z: 295(M + H)+.
【0171】
参考例16 (1-メチルピペリジン-2-イル)メチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-8)
参考例14と同様の方法で、1-メチル-4-ピペリジンメタノールの代わりに 1-メチル-2-ピペリジンメタノール(東京化成工業社製、1.0 mL、7.43 mmol)を用い、化合物VI-8(2.37 g、収率96%)を得た。
1H-NMR(CDCl3) δ: 1.51-1.63(m, 1H), 1.81-2.38(m, 5H), 2.85-2.99(m, 4H), 3.21-3.30(m, 1H), 3.49-3.60(m, 1H), 4.66(dd, J= 13.1, 2.4 Hz, 1H), 4.78-4.86(m, 1H), 7.47(d, J= 9.1 Hz, 2H), 8.28(d, J== 9.1 Hz, 2H), 12.40(br s, 1H).
【0172】
参考例17 3-(アゼパン-1-イル)プロピル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-9)
参考例14と同様の方法で、1-メチル-4-ピペリジンメタノールの代わりに3-(アゼパン-1-イル)プロパノール(ケンブリッジ(CHEMBRIDGE)社製, 0.700 g, 4.45 mmol)を用いて、化合物VI-9(1.47 g、収率92%)を得た。
ESI-MS m/z: 323(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 1.60-1.75(m, 2H), 1.79-1.94(m, 5H), 2.15-2.27(m, 2H), 2.44-2.53(m, 2H), 2.90-3.02(m, 2H), 3.14-3.24(m, 2H), 3.55-3.65(m, 2H), 4.41(t, J= 5.9 Hz, 2H), 7.37-7.43(m, 2H), 8.25-8.32(m, 2H), 12.48(br s, 1H).
【0173】
参考例18 1-メチルピペリジン-4-イル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩
(化合物VI-10)
参考例14と同様の方法で、1-メチル-4-ピペリジンメタノールの代わりに1-メチルピペリジン-4-オール(シグマ・アルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製, 0.300 g, 2.60 mmol)を用いて、化合物VI-10(0.740 g、収率90%)を得た。
ESI-MS m/z: 281(M + H)+ .
【0174】
参考例19 1-メチルピペリジン-3-イル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-11)
参考例14と同様の方法で、1-メチル-4-ピペリジンメタノールの代わりに1-メチルピペリジン-3-オール(シグマ・アルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製, 0.305 g, 2.65 mmol)を用いて、化合物VI-11(0.410 g、収率49%)を得た。
ESI-MS m/z: 281(M + H)+ .
【0175】
参考例20 (1-メチルピロリジン-3-イル)メチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩 (化合物VI-12)
参考例14と同様の方法で、1-メチル-4-ピペリジンメタノールの代わりに(1-メチル-3-ピロリジニル)メタノール(マトリックス サイエンティフィック(Matrix Scientific)社製、0.500 g、7.43 mmol)を用い、化合物VI-12(0.943 g、収率69%)を得た。
ESI-MS m/z: 281(M + H)+ .
【実施例23】
【0176】
(1-メチルピペリジン-4-イル)メチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート
(化合物A-14)
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに参考例14で得られた化合物VI-6(0.228 g、0.689 mmol)を用い、化合物A-14(0.258 g、収率84%)を得た。
ESI-MS m/z: 670(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.22-1.39(m, 32H), 1.46-1.54(m, 4H), 1.56-1.66(m, 3H), 1.67-1.74(m, 2H), 1.88-1.95(m, 2H), 2.05(q, J= 6.9 Hz, 8H), 2.26(s, 3H), 2.77(t, J= 6.8 Hz, 4H), 2.85(d, J= 11.7 Hz, 2H), 3.13-3.23(m, 4H), 3.92(d, J= 6.3 Hz, 2H), 5.30-5.42(m, 8H).
【実施例24】
【0177】
(1-メチルピペリジン-3-イル)メチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート
(化合物A-15)
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに参考例15で得られた化合物VI-7(0.238 g、0.719 mmol)を用い、化合物A-15(0.239 g、収率74%)を得た。
ESI-MS m/z: 670(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 0.92-1.02(m, 1H), 1.22-1.39(m, 32H), 1.46-1.54(m, 4H), 1.55-1.65(m, 1H), 1.66-1.74(m, 3H), 1.82-1.89(m, 1H), 1.91-2.00(m, 1H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.26(s, 3H), 2.74-2.80(m, 5H), 2.84-2.89(m, 1H), 3.12-3.23(m, 4H), 3.87(dd, J= 10.7, 7.6 Hz, 1H), 3.97(dd, J= 10.7, 5.4 Hz, 1H), 5.30-5.41(m, 8H).
【実施例25】
【0178】
(1-メチルピペリジン-2-イル)メチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート
(化合物A-16)
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに参考例16で得られた化合物VI-8(0.256 g、0.774 mmol)を用い、化合物A-16(0.313 g、収率91%)を得た。
ESI-MS m/z: 670(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.22-1.39(m, 32H), 1.46-1.64(m, 8H), 1.71-1.76(m, 2H), 2.02-2.12(m, 10H), 2.32(s, 3H), 2.77(t, J= 6.8 Hz, 4H), 2.79-2.84(m, 1H), 3.11-3.24(m, 4H), 4.05(dd, J= 11.1, 4.9 Hz, 1H), 4.17(dd, J= 11.1, 4.9 Hz, 1H), 5.30-5.42(m, 8H).
【実施例26】
【0179】
2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)カルバマート (化合物A-17)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例2で得られる化合物B-2(0.300 g、0.579 mmol)を用い、化合物A-17(0.360 g、収率92%)を得た。
ESI-MS m/z: 674(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.38(m, 44H), 1.45-1.85(m, 8H), 1.93-2.18(m, 12H), 2.32(s, 3H), 3.03-3.26(m, 5H), 4.05-4.18(m, 2H), 5.30-5.39(m, 4H).
【実施例27】
【0180】
(1-メチルピぺリジン-3-イル)メチル ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)カルバマート (化合物A-18)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例2で得られる化合物B-2(0.300 g、0.579 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例15で得られた化合物VI-7(0.287 g、0.896 mmol)を用い、化合物A-18(0.390 g、収率100%)を得た。
ESI-MS m/z: 674(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.85-1.04(m, 7H), 1.20-1.38(m, 44H), 1.46-1.74(m, 8H), 1.82-2.06(m, 10H), 2.26(s, 3H), 2.74-2.82(m, 1H), 2.83-2.89(m, 1H), 3.10-3.25(m, 4H), 3.87(dd, J= 10.5, 7.3 Hz, 1H), 3.98(dd, J= 10.5, 5.3 Hz, 1H), 5.30-5.39(m, 4H).
【実施例28】
【0181】
2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)カルバマート (化合物A-19)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例4で得られる化合物B-4(0.300 g、0.526 mmol)を用い、化合物A-19(0.369 g、収率97%)を得た。
ESI-MS m/z: 726(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.21-1.40(m, 40H), 1.44-1.85(m, 8H), 1.93-2.18(m, 12H), 2.32(s, 3H), 2.77(t, J= 6.4 Hz, 4H), 3.04-3.27(m, 5H), 4.05-4.18(m, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【実施例29】
【0182】
(1-メチルピぺリジン-3-イル)メチル ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)カルバマート (化合物A-20)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例4で得られる化合物B-4(0.300 g、0.526 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例15で得られた化合物VI-7(0.261 g、0.789 mmol)を用い、化合物A-20(0.374 g、収率98%)を得た。
ESI-MS m/z: 726(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.85-1.04(m, 7H), 1.21-1.40(m, 40H), 1.45-1.75(m, 8H), 1.82-2.09(m, 10H), 2.26(s, 3H), 2.74-2.90(m, 6H), 3.11-3.24(m, 4H), 3.87(dd, J= 10.5, 7.5 Hz, 1H), 3.98(dd, J= 10.5, 5.5 Hz, 1H), 5.29-5.43(m, 8H).
【実施例30】
【0183】
(1-メチルピロリジン-2-イル)メチル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート (化合物A-21)
実施例1で得られる化合物B-1(0.0831 g、0.162 mmol)をジクロロエタン(1 mL)に溶解させ、1,1'-カルボニルジイミダゾール(ナカライテスク社製、0.0394g、0.243 mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液にヨードメタン(東京化成工業社製、0.101 mL、1.62 mmol)を加え、60℃で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮した。得られた残渣をテトラヒドロフラン(1 mL)に溶解し、1-メチルピロリジン-2-メタノール(和光純薬工業社製、0.0372 g、0.323 mmol)とトリエチルアミン(0.0563 mL、0.404 mmol)を加え、室温で終夜攪拌した後、反応液を60℃で3時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてn-ヘキサンで2回抽出した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 90/10)で精製することにより、化合物A-21(0.0318 g、収率30%)を得た。
ESI-MS m/z: 656(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3)δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.24-1.39(m, 32H), 1.46-1.67(m, 5H), 1.67-1.85(m, 2H), 1.89-2.00(m, 1H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.21-2.30(m, 1H), 2.42(s, 3H), 2.43-2.51(m, 1H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.03-3.08(m, 1H), 3.11-3.25(m, 4H), 4.00(dd, J= 10.5, 6.0 Hz, 1H), 4.08(dd, J= 10.5, 5.5 Hz, 1H), 5.29-5.42(m, 8H).
【実施例31】
【0184】
(1-メチルピロリジン-3-イル)メチル ジ(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルカルバマート
(化合物A-22)
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに参考例20で得られる化合物VI-12(0.277 g、0.876 mmol)を用い、化合物A-22(0.263 g、収率66%)を得た。
ESI-MS m/z: 656(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.20-1.40(m, 32H), 1.44-1.78(m, 5H), 1.92-2.09(m, 9H), 2.24(dd, J= 9.4, 6.2 Hz, 1H), 2.34(s, 3H), 2.39-2.63(m, 3H), 2.68-2.80(m, 5H), 3.10-3.25(m, 4H), 3.95(dd, J= 10.5, 7.8 Hz, 1H), 4.03(dd, J= 10.5, 6.4 Hz, 1H), 5.28-5.42(m, 8H).
【実施例32】
【0185】
2-(1-メチルピペリジン-2-イル)エチル ジ(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルカルバマート (化合物A-23)
工程1
クロロぎ酸4-ニトロフェニル(0.844 g、7.19 mmol)のテトラヒドロフラン(12 mL)溶液に、2-(1-メチルピペリジン-2-イル)エタノール(Matrix Scientific社製、0.500 g、3.49 mmol)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、2-(1-メチルピペリジン-2-イル)エチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩の粗精製物を得た。
工程2
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに工程1で得られた 2-(1-メチルピペリジン-2-イル)エチル 4-ニトロフェニル カルボナート塩酸塩の粗精製物(0.302 g、0.876 mmol)を用い、化合物A-23(0.299 g、収率75%)を得た。
ESI-MS m/z: 684(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J=6.9 Hz, 6H), 1.19-1.40(m, 32H), 1.45-1.75(m, 11H), 1.93-2.11(m, 11H), 2.27(s, 3H), 2.74-2.86(m, 5H), 3.10-3.24(m, 4H), 4.06-4.19(m, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【実施例33】
【0186】
3-(アゼパン-1-イル)プロピル ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)カルバマート
(化合物A-24)
実施例10と同様の方法で、化合物VI-3の代わりに参考例17で得られる化合物VI-9を用いて、化合物A-24(0.136 g、収率67%)を得た。
ESI-MS m/z: 698(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.86-0.94(m, 6H), 1.22-1.41(m, 36H), 1.45-1.67(m, 8H), 1.75-1.85(m, 2H), 2.00-2.11(m, 8H), 2.55(t, J= 7.5 Hz, 2H), 2.62(t, J= 5.1 Hz, 4H), 2.77(t, J= 5.9 Hz, 4H), 3.13-3.23(m, 4H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.28-5.45(m, 8H).
【実施例34】
【0187】
3-(ピペリジン-1-イル)プロピル ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)カルバマート (化合物A-29)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例19で得られる化合物B-8(0.150 g、0.269 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例5で得られる化合物VI-4(0.201 g、0.672 mmol)を用いて、化合物A-29(0.170 g、収率87%)を得た。
ESI-MS m/z: 728(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.22-1.40(m, 32H), 1.40-1.63(m, 14H), 1.78-1.87(m, 2H), 2.05(q, J= 6.6 Hz, 8H), 2.33-2.41(m, 6H), 2.77(t, J= 6.0 Hz, 4H), 3.20-3.31(m, 2H), 3.40(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.46-3.57(m, 2H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.27-5.45(m, 8H).
【実施例35】
【0188】
2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)カルバマート (化合物A-30)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例19で得られる化合物B-8(0.120 g、0.215 mmol)を用いて、化合物A-30(0.140 g、収率91%)を得た。
ESI-MS m/z: 714(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.21-1.40(m, 32H), 1.45-1.59(m, 6H), 1.64-1.82(m, 2H), 1.93-2.17(m, 12H), 2.31(s, 3H), 2.70-2.81(m, 4H), 3.06(t, J= 7.8 Hz, 1H), 3.20-3.31(m, 2H), 3.40(t, J= 5.9 Hz, 4H), 3.46-3.58(m, 2H), 4.06-4.17(m, 2H), 5.28-5.44(m, 8H).
【実施例36】
【0189】
3-(アゼパン-1-イル)プロピル ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)カルバマート
(化合物A-31)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例19で得られる化合物B-8(0.150 g、0.269 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例17で得られる化合物VI-9(0.145 g、0.403 mmol)を用いて、化合物A-31(0.170 g、収率85%)を得た。
ESI-MS m/z: 742(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.21-1.39(m, 32H), 1.48-1.65(m, 12H), 1.72-1.85(m, 2H), 2.05(q, J= 6.6 Hz, 8H), 2.55(t, J= 7.5 Hz, 2H), 2.61(t, J= 5.3 Hz, 4H), 2.77(t, J= 5.9 Hz, 4H), 3.21-3.30(m, 2H), 3.40(t, J= 6.8 Hz, 4H), 3.46-3.55(m, 2H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.26-5.42(m, 8H).
【実施例37】
【0190】
(1-メチルピペリジン-3-イル)メチル ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)エチル)カルバマート (化合物A-32)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例19で得られる化合物B-8(0.150 g、0.269 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例15で得られる化合物VI-7(0.133 g、0.403 mmol)を用いて、化合物A-32(0.145 g、収率76%)を得た。
ESI-MS m/z: 714(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.91(t, J= 6.8 Hz, 6H), 1.23-1.45(m, 32H), 1.49-1.77(m, 9H), 1.83-2.03(m, 2H), 2.07(q, J= 6.6 Hz, 8H), 2.28(s, 3H), 2.76-2.91(m, 2H), 2.80(t, J= 5.9 Hz, 4H), 3.21-3.33(m, 2H), 3.43(t, J= 6.4 Hz, 4H), 3.48-3.58(m, 2H), 3.85-4.05(m, 2H), 5.30-5.47(m, 8H).
【0191】
参考例21 2-((Z)-オクタデカ-9-エニルオキシ)エチル メタンスルホナート (化合物IIIc-2)
実施例8と同様の方法で、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル メタンスルホナートの代わりに(Z)-オクタデカ-9-エン-1-イル メタンスルホナート(2.00 g、5.77 mmol)を用いて、化合物IIIc-2(1.29 g、収率57%)を得た。
ESI-MS m/z: 391(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.6 Hz, 3H), 1.22-1.38(m, 22H), 1.50-1.62(m, 2H), 1.97-2.05(m, 4H), 3.06(s, 3H), 3.48(t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.67-3.72(m, 2H), 4.36-4.39(m, 2H), 5.35(t, J= 5.5 Hz, 2H).
【0192】
参考例22 2-((Z)-ヘキサデカ-9-エニルオキシ)エチル メタンスルホナート (化合物IIIc-3)
実施例8と同様の方法で、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル メタンスルホナートの代わりに(Z)-ヘキサデカ-9-エン-1-イル メタンスルホナート(2.00 g、6.28 mmol)を用いて、化合物IIIc-3(1.52 g、収率67%)を得た。
ESI-MS m/z: 363(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.90(t, J= 6.6 Hz, 3H), 1.25-1.38(m, 18H), 1.53-1.62(m, 2H), 1.98-2.06(m, 4H), 3.07(s, 3H), 3.49(t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.68-3.72(m, 2H), 4.36-4.40(m, 2H), 5.36(t, J= 5.5 Hz, 2H).
【実施例38】
【0193】
(9Z,12Z)-N-(2-((Z)-オクタデカ-9-エニルオキシ)エチル)オクタデカ-9,12-ジエン-1-アミン (化合物B-9)
実施例13と同様の方法で、参考例7で得られる化合物IId-1(0.800 g、1.78 mmol)および、1-ブロモドデカンの代わりに参考例21で得られる化合物IIIc-2(0.728 g、1.86 mmol)を用い、化合物B-9(0.600 g、収率60%)を得た。
ESI-MS m/z: 560(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.86-0.94(m, 6H), 1.24-1.39(m, 40), 1.51-1.62(m, 2H), 1.96-2.10(m, 8H), 2.68(t,
J= 7.3 Hz, 2H), 2.78(t, J= 6.0 Hz, 2H), 2.85(t, J= 5.1 Hz, 2H), 3.45(t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.57(t, J= 5.1 Hz, 2H), 5.30-5.44(m, 6H).
【実施例39】
【0194】
(9Z,12Z)-N-(2-((Z)-ヘキサデカ-9-エニルオキシ)エチル)オクタデカ-9,12-ジエン-1-アミン (化合物B-10)
実施例13と同様の方法で、参考例7で得られる化合物IId-1(0.610 g、1.35 mmol)および、1-ブロモドデカンの代わりに参考例22で得られる化合物IIIc-3(0.589 g、1.62 mmol)を用い、化合物B-10(0.550 g、収率76%)を得た。
ESI-MS m/z: 532(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.85-0.93(m, 6H), 1.23-1.38(m, 34H), 1.45-1.54(m, 4H), 1.94-2.11(m, 8H), 2.60(t, J= 7.3 Hz, 2H), 2.77(t, J= 5.4 Hz, 4H), 3.43(t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.53(t, J= 5.4 Hz, 2H), 5.29-5.44(m, 6H).
【実施例40】
【0195】
3-(ピペリジン-1-イル)プロピル (2-((Z)-オクタデカ-9-エニルオキシ)エチル)((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-33)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例38で得られる化合物B-9(0.130 g、0.232 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例5で得られる化合物VI-4(0.120 g、0.348 mmol)を用いて、化合物A-33(0.137 g、収率81%)を得た。
ESI-MS m/z: 729(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.84-0.92(m, 6H), 1.20-1.36(m, 38H), 1.40-1.62(m, 10H), 1.77-1.87(m, 2H), 1.96-2.09(m, 8H), 2.37(t, J= 7.5 Hz, 6H), 2.77(t, J= 5.9 Hz, 2H), 3.20-3.31(m, 2H), 3.40(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.45-3.56(m, 2H), 4.10(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.28-5.44(m, 6H).
【実施例41】
【0196】
2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル (2-((Z)-オクタデカ-9-エニルオキシ)エチル)((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-34)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例38で得られる化合物B-9(0.130 g、0.232 mmol)を用いて、化合物A-34(0.131 g、収率79%)を得た。
ESI-MS m/z: 716(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.85-0.92(m, 6H), 1.20-1.39(38H, m), 1.47-1.61(m, 8H), 1.66-1.83(m, 2H), 1.93-2.18(10H, m), 2.32(s, 3H), 2.78(t, J= 5.9 Hz, 2H), 3.07(t, J= 8.4 Hz, 1H), 3.21-3.31(m, 2H), 3.41(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.47-3.56(m, 2H), 4.08-4.19(m, 2H), 5.29-5.43(m, 6H).
【実施例42】
【0197】
3-(ジメチルアミノ)プロピル (2-((Z)-オクタデカ-9-エニルオキシ)エチル)((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-35)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例38で得られる化合物B-9(0.130 g、0.232 mmol)および、化合物VI-3の代わりに化合物VI-1(0.106 g、0.348 mmol)を用いて、化合物A-35(0.100 g、収率63%)を得た。
ESI-MS m/z: 690(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.85-0.92(m, 6H), 1.20-1.39(m, 38H), 1.45-1.59(m, 4H), 1.74-1.84(m, 2H), 1.96-2.09(m, 8H), 2.23(s, 6H), 2.34(t, J= 7.5 Hz, 2H), 2.77(t, J= 5.7 Hz, 2H), 3.21-3.30(m, 2H), 3.35-3.44(m, 4H), 3.45-3.55(m, 2H), 4.11(t, J= 6.4 Hz, 2H), 5.26-5.44(m, 6H).
【実施例43】
【0198】
3-(ジメチルアミノ)プロピル (2-((Z)-ヘキサデカ-9-エニルオキシ)エチル)((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-36)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例39で得られる化合物B-10(0.150 g、0.282 mmol)および、化合物VI-3の代わりに化合物VI-1( 0.095 g, 0.310 mmol)を用いて、化合物A-36(0.148 g、収率79%)を得た。
ESI-MS m/z: 662(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.85-0.94(m, 6H), 1.21-1.39(m, 34H), 1.47-1.59(m, 4H), 1.76-1.84(m, 2H), 1.94-2.09(m, 8H), 2.23(s, 6H), 2.34(t, J= 7.3 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.3 Hz, 2H), 3.20-3.31(m, 2H), 3.31-3.45(m, 4H), 3.45-3.57(m, 2H), 4.11(t, J= 6.3 Hz, 2H), 5.27-5.46(m, 6H).
【実施例44】
【0199】
3-(ピペリジン-1-イル)プロピル (2-((Z)-ヘキサデカ-9-エニルオキシ)エチル)((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)カルバマート (化合物A-37)
実施例10と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例39で得られる化合物B-10(0.150 g、0.282 mmol)および、化合物VI-3の代わりに参考例5で得られる化合物VI-4(0.107 g、0.310 mmol)を用いて、化合物A-37(0.148 g、収率75%)を得た。
ESI-MS m/z: 702(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.82-0.96(m, 6H), 1.23-1.39(m, 34H), 1.39-1.48(m, 2H), 1.49-1.61(m, 8H), 1.79-1.86(m, 2H), 1.95-2.09(m, 8H), 2.33-2.42(m, 6H), 2.78(t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.21-3.32(m, 2H), 3.34-3.44(m, 4H), 3.46-3.56(m, 2H), 4.10(t, J= 6.3 Hz, 2H), 5.29-5.44(m, 6H).
【実施例45】
【0200】
3-(ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)アミノ)プロパン-1-オール (化合物C-2)
工程1
参考例11と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例2で得られる化合物B-2(500 mg、0.965 mmol)を用い、3-(ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)アミノ)プロピオン酸エチル(548 mg、収率92%)を得た。
工程2
実施例21と同様の方法で、化合物XI-6の代わりに3-(ジ((Z)-オクタデカ-9-エニル)アミノ)プロピオン酸エチル(548 mg、0.887 mmol)を用い、化合物C-2(0.445 g, 収率87%)を得た。
ESI-MS m/z: 577(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.24-1.42(m, 44H), 1.42-1.50(m, 4H), 1.65-1.70(m, 2H), 2.01(q, J= 6.4 Hz, 8H), 2.40(t, J= 7.5 Hz, 4H), 2.63(t, J= 5.5 Hz, 2H), 3.79(t, J= 5.3 Hz, 2H), 5.30-5.39(m, 4H).
【実施例46】
【0201】
3-(ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)アミノ)プロパン-1-オール (化合物C-3)
工程1
参考例11と同様の方法で、化合物B-1の代わりに実施例4で得られる化合物B-4(400 mg、0.702 mmol)を用い、3-(ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)アミノ)プロピオン酸エチル(548 mg、収率90%)を得た。
工程2
実施例21と同様の方法で、化合物XI-6の代わりに3-(ジ((11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエニル)アミノ)プロピオン酸エチル(424 mg、0.633 mmol)を用い、化合物C-3(352 mg, 収率88%)を得た。
ESI-MS m/z: 629(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.24-1.40(m, 40H), 1.42-1.50(m, 4H), 1.64-1.70(m, 2H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.40(t, J= 7.5 Hz, 4H), 2.63(t, J= 5.3 Hz, 2H), 2.78(t, J= 6.4 Hz, 4H), 3.79(t, J= 5.0 Hz, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【実施例47】
【0202】
2-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)エタノール (化合物C-4)
工程1
実施例1で得られる化合物B-1(600 mg, 1.17 mmol)の1,2-ジクロロエタン(2.0 mL)溶液に炭酸カリウム(243 mg, 1.76 mmol)およびブロモ酢酸エチル(195 μL, 1.76 mmol)を加え、85℃で終夜攪拌した。得られた混合物に水を加えてヘプタンで2回抽出した。有機層を合わせて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル = 100/0〜95/5)で精製することにより2-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)酢酸エチル(527 mg, 収率75%)を得た。
工程2
実施例21と同様の方法で、化合物XI-6の代わりに2-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)酢酸エチル(527 mg、0.878 mmol)を用い、化合物C-4(433 mg, 収率88%)を得た。
ESI-MS m/z: 559(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.24-1.39(m, 32H), 1.39-1.46(m, 4H), 2.02-2.08(m, 8H), 2.43(t, J= 7.5 Hz, 4H), 2.57(t, J= 5.3 Hz, 2H), 2.77(t, J= 6.2 Hz, 4H), 3.52(t, J= 5.5 Hz, 2H), 5.29-5.41(m, 8H).
【実施例48】
【0203】
4-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミノ)ブタン-1-オール (化合物C-5)
工程1
実施例1で得られる化合物B-1(500 mg, 0.973 mmol)の1,2-ジクロロエタン(2.0 mL)溶液に炭酸カリウム(202 mg, 1.46 mmol)およびtert-ブチル(4-ヨードブトキシ)ジメチルシラン(SIGMA-ALDRICH社製, 378 μL, 1.46 mmol)を加え、85℃で4時間攪拌した。得られた混合物に水を加えてヘプタンで2回抽出した。有機層を合わせて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル = 95/5〜80/20)で精製することにより(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブチル)ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミン(233 mg, 収率34%)を得た。
工程2
(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブチル)ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)アミン(233 mg, 0.333 mmol)のテトラヒドロフラン(5 mL)溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(1 mol/L テトラヒドロフラン溶液, 0.666 mL, 0.666 mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。得られた混合物に飽和食塩水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=90/10)で精製し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール = 100/0〜90/10)で精製することにより化合物C-5(160 mg, 収率82%)を得た。
ESI-MS m/z: 587(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3) δ: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 6H), 1.23-1.40(m, 32H), 1.43-1.51(m, 4H), 1.62-1.68(m, 4H), 2.05(q, J= 7.0 Hz, 8H), 2.41-2.45(m, 6H), 2.77(t, J= 6.6 Hz, 4H), 3.53-3.56(m, 2H), 5.29-5.42(m, 8H).
【0204】
参考例23 3-(ジメチルアミノ)プロピル 2,3-ビス((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)プロピル(メチル)カルバマート (化合物XI-9)
工程1
国際公開第2009/129395号パンフレット記載の方法で合成した2,3-ビス((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルオキシ)プロパン-1-オール(0.303 g, 0.514 mmol)のジクロロメタン(4 ml)溶液に、0℃でトリエチルアミン(0.108 ml, 0.772 mmol)とメシル酸クロリド(0.060 ml, 0.772 mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応液に飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。
得られた残渣をジクロロメタン(4 mL)に溶解し、メチルアミン(7 mol/L メタノール溶液, 2.20 mL)を加えて、マイクロ波反応装置を用いて110℃で5分間攪拌した。反応液に水を加え、n-ヘキサンで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 95/5〜70/30)で精製して、N-メチル-2,3-ビス((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ)プロパン-1-アミン(0.278 g, 収率90%)を得た。
ESI-MS m/z: 603(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3)δ: 0.89(t, J = 7.1 Hz, 6H), 1.27-1.39(m, 34H), 1.51-1.58(m, 3H), 2.05(q, J= 7.1 Hz, 8H), 2.44(s, 3H), 2.64-2.70(m, 2H), 2.77(t, J = 6.9 Hz, 4H), 3.41-3.50(m, 5H), 3.54-3.58(m, 1H), 3.61-3.65(m, 1H), 5.30-5.41(m, 8H).
工程2
N-メチル-2,3-ビス((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ)プロパン-1-アミン(0.220 g, 0.365 mmol)のアセトニトリル(2 mL)懸濁液に化合物VI-1(0.167 g, 0.548 mmol)とトリエチルアミン0.255 mL, 1.827 mmol)を加えて、80℃で終夜攪拌した。反応液を飽和重曹水で希釈して酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧濃縮した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル = 80/20〜65/35)で精製して化合物XI-9(0.178 g, 収率67%)を得た。
ESI-MS m/z: 732(M + H)+; 1H-NMR(CDCl3)δ: 0.89(t, J = 6.9 Hz, 6H), 1.26-1.38(m, 32H), 1.51-1.59(m, 4H), 1.77-1.83(m, 2H), 2.05(q, J = 7.0 Hz, 8H), 2.22(s, 6H), 2.34(t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.77(t, J = 6.8 Hz, 4H), 2.97(s, 3H), 3.19-3.25(m, 1H), 3.38-3.65(m, 8H), 4.12(t, J = 6.3 Hz, 2H), 5.30-5.41(m, 8H).
【実施例49】
【0205】
実施例5〜9で得られた化合物(化合物A-1〜5)を用いて、以下のように組成物を調製した。用いた核酸は、センス鎖[5'-rGmUrCrAmUrCrArCrArCmUrGrArAmUrArCrCrArAmU-3'(rおよびmが付された塩基に結合する糖は、それぞれリボースおよび2’位の水酸基が-O-メチルで置換されているリボースである)]と、アンチセンス鎖[5'-rArUrUrGrGrUrArUrUrCrArGrUrGrUrGrArUrGrArCrArC-3'(塩基に結合する糖はいずれもリボースであり、5’末端をリン酸化してある)]からなる、アポリポプロテインB(Apolipoprotein-B、以下apo-bと表す)遺伝子の発現を抑制する抗APO-B siRNAであり、ジーンデザイン社から入手した(以下apo-b siRNAという)。
化合物A-1〜5のそれぞれ/1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)ナトリウム塩(PEG-DMPE Na、N-(カルボニルメトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン=ナトリウム塩、日油社製)/ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、日油社製)/コレステロール(日油社製)=8.947/1.078/5.707/13.698 mmol/Lとなるように、各試料を秤量し90 vol%エタノールに溶解させ、脂質膜の構成成分の溶液を調製した。一方、apo-b siRNA/蒸留水(24 mg/mL)をTris-EDTA緩衝液(200 mM Tris-HCl、20 mM EDTA、インヴィトロジェン(Invitrogen)製)および、20 mMクエン酸緩衝液(pH5.0)で希釈し、1.5 mg/mLのapo-b siRNA水溶液(2 mM Tris-EDTA緩衝液、20 mMクエン酸緩衝液、pH5.0)を調製した。
得られた脂質溶液を37℃に加温した後、500 μLを製剤調製用の容器に移し、得られたapo-b siRNA水溶液500 μLを攪拌下で加えた。得られた脂質核酸混合懸濁液1000 μLに、20 mM クエン酸緩衝液(300 mM NaCl含有、pH6.0)1000 μLを攪拌下で加え、さらにDPBS(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、Invitrogen製)3310 μLを滴下して粗製剤を得た。得られた粗製剤はアミコンウルトラ(Millipore社製)を用いて濃縮後、DPBSで希釈し、0.2 μmのフィルター(東洋濾紙社製)を用いてクリーンベンチ内でろ過した。得られた組成物のsiRNA濃度を測定し、siRNA濃度で0.3または0.03 mg/mLとなるようにDPBSを用いて希釈することで、製剤(化合物A-1〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)を得た。
粒子径測定装置(Zetasizer Nano ZS、マルバーン(Malvern)社製、以下同じ)で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第8表に示す。
【0206】
【表8】
【0207】
比較例1
化合物1を、特許文献1記載の方法に準じた方法で合成したDLin-KC2-DMAおよび参考例1〜3で得られた化合物(化合物XI-1〜3)にした以外、実施例49と同様にして製剤を得た。
比較例で用いた化合物(DLin-KC2-DMAおよび化合物XI-1〜3)の構造式を第9表に示す。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第10表に示す。
【0208】
【表9】
【0209】
【表10】
【0210】
試験例1
実施例49で得られた各製剤(化合物A-1,3〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)および比較例1で得られた各製剤(DLin-KC2-DMAおよび化合物XI-1〜3のそれぞれ、ならびに核酸を含有する組成物)につき、それぞれ以下の方法により、ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞(HB-8065)に導入した。
核酸の最終濃度が3-100nMとなるように、オプティメム(Opti-MEM、ギブコ(GIBCO)社、31985)で希釈した各製剤を、96ウェルの培養プレートに、20μLずつ分注した後、1.25%ウシ胎仔血清(FBS、SAFCバイオサイエンス(SAFC Biosciences)社、12203C)を含むOpti- MEMに懸濁させたHepG2細胞を、細胞数6250/80μL/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO2条件下で培養することで、各製剤をHepG2細胞内に導入した。また陰性対照の群として何も処理しない細胞を播種した。
各製剤を導入した細胞を37℃の5%CO2インキュベーター内で24時間培養し、氷冷したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、GIBCO社、14190)で洗浄し、Cells-to-Ct Kit(アプライドバイオサイエンス(ABI)社、AM1728)を用いて、製品に添付された説明書に記載された方法に従い、全RNAの回収と、得られた全RNAを鋳型とする逆転写反応によるcDNAの作製とを行った。
得られたcDNAを鋳型とし、ユニバーサルプローブライブラリ(Universal Probe Library、ロシュ アプライドサイエンス(Roche Applied Science)社、04683633001)をプローブとして、ABI7900HT Fast(ABI社製)を用い、添付された使用説明書に記載された方法に従ってPCR反応させることにより、apo-b遺伝子および構成的発現遺伝子であるグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(D-glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、以下gapdhと表す)遺伝子をPCR反応させてmRNA増幅量をそれぞれ測定し、gapdhのmRNA増幅量を内部対照として、apo-bのmRNAの準定量値を算出した。同様に測定した陰性対照におけるapo-bのmRNAの準定量値を1として、apo-bのmRNAの準定量値から、apo-bのmRNAの発現率を求めた。得られたapo-bのmRNAの発現率の結果を、図1に示す。
【0211】
図1から明らかなように、実施例49で得られた製剤(化合物A-1,3〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)ならびに比較例1で得られた各製剤のうちDLin-KC2-DMA、化合物XI-1および化合物XI-3のそれぞれ、ならびに核酸を含有する組成物は、ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞内に導入後のapo-b遺伝子のmRNAの発現を抑制した。一方で、比較例1で得られた各製剤のうち化合物XI-2および核酸を含有する組成物は、ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞内に導入後のapo-b遺伝子のmRNAの発現を抑制しなかった。
【0212】
試験例2
実施例49で得られた各製剤(化合物A-1〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)および比較例1で得られた各製剤(DLin-KC2-DMAおよび化合物XI-1〜3のそれぞれ、ならびに核酸を含有する組成物)につき、それぞれ以下の方法によりインビボ薬効評価試験を実施した。なお、各製剤は、試験に合わせてDPBSで希釈して用いた。
マウス(Balb/c、日本クレアより入手)を馴化飼育後、各製剤を、siRNA濃度で3ないし0.3 mg/kgでマウスに静脈内投与した。投与から48時間後に採血し、採取した血液を小型冷却遠心機(05PR-22:日立社製)を用いて3000 rpm、20分間、4℃で遠心分離した。Cholesterol Assay Kit(Cayman Chemical社製、Cat#:10007640)を用いて、製品の説明書に記載された方法に従い、標準液および、血清サンプル中の蛍光度をARVO(530 nm/595 nm)もしくはEnVision(531 nm/595 nm)で測定した。得られた蛍光度から検量線を作成し、血清中のコレステロール濃度を算出した。
算出された血清中のコレステロール濃度の結果を、図2および3に示す。
【0213】
図2および3から明らかなように、実施例49で得られた製剤(apo-b遺伝子の発現を抑制する抗APO-B siRNAと、化合物A-1〜5のそれぞれとを含有する組成物)につき、インビボで薬効評価試験した、コレステロール濃度の測定結果は、比較例1で得られた各製剤のうち化合物XI-1〜3および核酸を含有する組成物での測定結果と比較して低く、実施例22で得られた製剤を投与することによって、apo-b遺伝子の発現が強く抑制されていることを示している。
よって、本発明の組成物は、核酸を細胞内等に導入することができ、本発明のカチオン性脂質は、インビボで細胞内に核酸を送達することを容易にするカチオン性脂質であることが明らかとなった。
【実施例50】
【0214】
実施例10で得られた化合物(化合物A-6)を用いて、以下のように組成物を調製した。用いた核酸は、センス鎖[5'-rGrGrAfUfCrAfUfCfUfCrArArGfUfCfUfUrAfCdTdT-3'(r、dおよびfが付された塩基に結合する糖は、それぞれリボース、デオキシリボースおよび2’位の水酸基がフッ素で置換されているリボースであり、5’末端側から3’末端側に向って 20番目の塩基に結合するデオキシリボースと21番目の塩基に結合するデオキシリボースとの結合がホスホロチオエート結合である)]と、アンチセンス鎖[5'-rGfUrArArGrAfCfUfUrGrArGrAfUrGrAfUfCfCdTdT-3'(r、dおよびfが付された塩基に結合する糖は、それぞれリボース、デオキシリボースおよび2’位の水酸基がフッ素で置換されているリボースであり、5’末端側から3’末端側に向って 20番目の塩基に結合するデオキシリボースと21番目の塩基に結合するデオキシリボースとの結合がホスホロチオエート結合である)]からなる、血液凝固第7因子(Coagulation Factor VII、以下f7と表す)遺伝子の発現を抑制する抗f7 siRNAであり、ジーンデザイン社から入手した(以下f7 siRNAという)。
化合物A-6/PEG-DMPE Na(日油社製)/DSPC(日油社製)/コレステロール(日油社製)=3.532/0.270/1.156/2.401 mmol/Lとなるように、各試料を秤量し100 vol%エタノールに溶解させ、脂質膜の構成成分の溶液を調製した。一方、f7 siRNA/蒸留水(24 mg/mL)をTris-EDTA緩衝液(200 mM Tris-HCl、20 mM EDTA、インヴィトロジェン(Invitrogen)製)および、20 mMクエン酸緩衝液(pH4.0)で希釈し、0.375 mg/mLのf7 siRNA水溶液(2 mM Tris-EDTA緩衝液、20 mMクエン酸緩衝液、pH4.0)を調製した。
得られた脂質溶液を37℃に加温した後、800 μLを製剤調製用の容器に移し、得られたf7 siRNA水溶液800 μLを攪拌下で加えた。得られた脂質核酸混合懸濁液1600 μLに、20 mM クエン酸緩衝液(300 mM NaCl含有、pH6.0)1600 μLを攪拌下で加え、さらにDPBS(Invitrogen製)7086 μLを滴下して粗製剤を得た。得られた粗製剤はアミコンウルトラ(Millipore社製)を用いて濃縮後、DPBSで希釈し、0.45 μmのフィルター(東洋濾紙社製)を用いてクリーンベンチ内でろ過した。得られた組成物のsiRNA濃度を測定し、siRNA濃度で0.03 mg/mLとなるようにDPBSを用いて希釈することで、製剤(化合物A-6および核酸を含有する組成物)を得た。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第11表に示す。
【実施例51】
【0215】
実施例1〜48で得られた化合物のうち、化合物A-1、A-5、A-7〜21、A-28〜36、B-1、B-8およびC-1〜5のそれぞれ用いて、実施例50と同様にして製剤(化合物A-1、A-5、A-7〜21、A-28〜36、B-1、B-8およびC-1〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)を得た。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第11表に示す。
【0216】
【表11】
【0217】
比較例2
化合物A-6を、参考例9〜13で得られた化合物(化合物XI-4〜8)にした以外、実施例50と同様にして製剤を得た。
比較例2で用いた化合物(化合物XI-4〜8)の構造式を第12表に示す。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第13表に示す。
【0218】
【表12】
【0219】
【表13】
【0220】
試験例3
実施例50および51で得られた各製剤(化合物A-1、A-5〜21、A-28〜36、B-1、B-8およびC-1〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)および比較例2で得られた各製剤(化合物XI-4〜8および核酸を含有する組成物)につき、それぞれ以下の方法によりインビボ薬効評価試験を実施した。なお、各製剤は、試験に合わせてDPBSまたは生理食塩水で希釈して用いた。
マウス(Balb/c、日本クレアより入手)を馴化飼育後、各製剤を、siRNA濃度で0.3、0.1および/または0.03mg/kgとでマウスに静脈内投与した。投与から48時間後に採血し、採取した血液を微量高速冷却遠心機(TOMY MX305:トミー精工社製)を用いて8000rpm、8分間、4℃で遠心分離した。BIOPHEN VII kit(ANIARA社製 cat#: A221304)を用いて、製品の説明書に記載された方法に従い、標準液および、血漿サンプル中の吸光度をARVO(405nm)で測定した。得られた吸光度から検量線を作成し、血漿中のFactor VIIタンパク濃度を算出した。なお例数は各群3匹とした。
算出された血漿中のFactor VIIタンパク濃度の結果を、図4〜9に示す。
【0221】
図4〜8から明らかなように、実施例50および51で得られた各製剤(Factor VII遺伝子の発現を抑制する抗Factor VII siRNAと、化合物A-6、A-1、A-7〜12、B-1、B-8、C-1、A-5、A-13〜21、A-28〜26、およびC-2〜5のそれぞれとを含有する組成物)につき、インビボで薬効評価試験した、血漿中Factor VIIタンパク濃度の測定結果は、実施例50および51で得られた各製剤を投与することによって、Factor VII遺伝子の発現が強く抑制されていることを示している。
よって、本発明の組成物は、核酸を細胞内等に導入することができ、本発明のカチオン性脂質は、インビボで細胞内に核酸を送達することを容易にするカチオン性脂質であることが明らかとなった。
【実施例52】
【0222】
実施例5で得られた化合物A-1を用いて、以下のように組成物を調製した。
核酸としては、実施例50で用いたものと同じ核酸を、蒸留水で24 mg/mLに調製して用いた。
化合物A-1/PEG-DMPE Na(日油社製)=57.3/5.52 mmol/Lとなるように、各試料を秤量し、塩酸およびエタノールを含有する水溶液に懸濁させ、vortex攪拌ミキサーで攪拌および、加温を繰り返して均一な懸濁液を得た。この懸濁液を室温下で、0.2 μmのポリカーボネートメンブランフィルターに通し、さらに0.05 μmのポリカーボネートメンブランフィルターに通し、化合物A-1/PEG-DMPE Naの粒子(リポソーム)の分散液を得た。粒子径測定装置で得られたリポソームの平均粒子径を測定し、30 nmから100 nmの範囲内であることを確認した。得られたリポソームの分散液と、f7 siRNA溶液を、リポソームの分散液:f7 siRNA 溶液=3:1の割合で混合し、さらに3倍量の蒸留水を加えて混合することで化合物A-1/PEG-DMPE Na/ f7 siRNA複合体の分散液を調製した。
一方、A-1/PEG-DMPE Na(日油社製)/DSPC(日油社製)/コレステロール(日油社製)= 8.947/1.078/5.707/13.698 mmol/Lとなるように、各試料を秤量し90 vol%エタノールに溶解させ、脂質膜構成成分の溶液を調製した。
得られた脂質膜構成成分の溶液を加温した後、得られた化合物A-1/PEG-DMPE Na/ f7 siRNA複合体の分散液と、1:1の割合で混合し、さらに数倍量の蒸留水を混合し、粗製剤を得た。
得られた粗製剤はアミコンウルトラ(Millipore社製)を用いて濃縮後、生理食塩水で希釈し、0.2 μmのフィルター(東洋濾紙社製)を用いてクリーンベンチ内でろ過した。得られた組成物のsiRNA濃度を測定し、siRNA濃度で0.03、0.01または0.003 mg/mLとなるように生理食塩水を用いて希釈することで、製剤(化合物A-1および核酸を含有する組成物)を得た。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第14表に示す。
【実施例53】
【0223】
実施例1〜48で得られた化合物のうち、化合物A-5〜7、A-10、A-12〜21、A-28〜36、B-8およびC-1〜5のそれぞれ用いて、実施例52と同様にして製剤(化合物A-5〜7、A-10、A-12〜21、A-28〜36、B-8およびC-1〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)を得た。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第14表に示す。
【0224】
【表14】
【0225】
比較例3
化合物A-1を、参考例23で得られた化合物XI-9にした以外、実施例52と同様にして製剤を得た。
比較例3で用いた化合物(化合物XI-9)の構造式を第12表に示す。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第13表に示す。
【0226】
試験例4
実施例52および53で得られた各製剤または実施例52もしくは53と同様にして得られた製剤(化合物A-1、A-5〜7、A-10、A-12〜21、A-28〜36、B-8およびC-1〜5のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)、および比較例3で得られた製剤(化合物XI-9および核酸を含有する組成物)につき、試験例3と同様の方法によりインビボ薬効評価試験を実施した。算出された血漿中のFactor VIIタンパク濃度の結果を、図10〜13に示す。
【実施例54】
【0227】
実施例5、11および17で得られた化合物(化合物A-1、A-7およびA-10)をそれぞれ用いて、以下のように組成物を調製した。核酸としては、実施例50で用いたものと同じ核酸を用いた。
化合物A-1、A-7またはA-10のそれぞれ/PEG-DMPE Na(日油社製)/DSPC(日油社製)/コレステロール(日油社製)=7.030/0.755/2.038/4.892 mmol/Lとなるように、各試料を秤量し100 vol%エタノールに溶解させ、脂質膜の構成成分の溶液を調製した。一方、f7 siRNA/蒸留水(24 mg/mL)をTris-EDTA緩衝液(200 mM Tris-HCl、20 mM EDTA、インヴィトロジェン(Invitrogen)製)および、20 mMクエン酸緩衝液(pH4.0)で希釈し、0.536 mg/mLのf7 siRNA水溶液(2 mM Tris-EDTA緩衝液、20 mMクエン酸緩衝液、pH4.0)を調製した。
得られた脂質溶液を37℃に加温した後、560 μLを製剤調製用の容器に移し、得られたf7 siRNA水溶液560 μLを攪拌下で加えた。得られた脂質核酸混合懸濁液1120 μLに、20 mM クエン酸緩衝液(300 mM NaCl含有、pH6.0)1120 μLを攪拌下で加え、さらにDPBS(Invitrogen製)4960 μLを滴下して粗製剤を得た。得られた粗製剤はアミコンウルトラ(Millipore社製)を用いて濃縮後、DPBSで希釈し、0.45 μmのフィルター(東洋濾紙社製)を用いてクリーンベンチ内でろ過した。さらに得られた組成物のsiRNA濃度を測定し、siRNA濃度で0.03または0.01 mg/mLとなるようにDPBSを用いて希釈することで、製剤(化合物A-1、A-7およびA-10のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)を得た。
粒子径測定装置で製剤(組成物)の平均粒子径を測定した。結果を第15表に示す。
【0228】
【表15】
【0229】
試験例5
実施例54で得られた各製剤(化合物A-1、A-7もしくはA-10のそれぞれ、および核酸を含有する組成物)につき、試験例3と同様の方法によりインビボ薬効評価試験を実施した。算出された血漿中のFactor VIIタンパク濃度の結果を、図14に示す。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明のカチオン性脂質および核酸を含有する組成物を、ほ乳類等に投与することにより、該核酸を、例えば細胞内等に容易に導入することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0231】
配列番号1-アポリポプロテインB siRNA センス鎖
配列番号2-アポリポプロテインB siRNA アンチセンス鎖
配列番号3-血液凝固第7因子 siRNA センス鎖
配列番号4-血液凝固第7因子 siRNA アンチセンス鎖
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]