(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226486
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】複合部品の製造における複合部品の横方向の電気伝導率を改善する貫通工程の使用
(51)【国際特許分類】
B29C 39/10 20060101AFI20171030BHJP
B29C 70/40 20060101ALI20171030BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20171030BHJP
B29C 70/88 20060101ALI20171030BHJP
B32B 5/12 20060101ALI20171030BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20171030BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20171030BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20171030BHJP
B64D 45/02 20060101ALI20171030BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
B29C39/10
B29C70/40
B29C70/54
B29C70/88
B32B5/12
B32B7/02 104
B32B27/12
B64C1/00 B
B64D45/02
B29K105:08
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-507583(P2015-507583)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公表番号】特表2015-521120(P2015-521120A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】FR2013050894
(87)【国際公開番号】WO2013160604
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】1253927
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509341374
【氏名又は名称】ヘクセル ランフォルセマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアール、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】デュカレ、ジャック
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−508192(JP,A)
【文献】
特表2005−534826(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0028896(US,A1)
【文献】
特開2002−158051(JP,A)
【文献】
特開2011−213991(JP,A)
【文献】
特開2011−110796(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/048340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00−39/44
B29C 70/00−70/88
B29C 43/00−43/58
B32B 1/00−43/00
C08J 5/04− 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維からなる少なくとも2つの強化層のスタックを形成し、その間に熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又は熱可塑性材料及び熱硬化性材料の混合物の非導電層が挟まれて形成される複合部品の製造方法であって、当該方法は、さらに硬化されていない樹脂と前記スタックとを組み合わせて樹脂が注入されたスタックを形成し、そして当該樹脂が注入されたスタックを硬化させて前記複合部品を形成するステップからなり、
前記方法は、前記複合部品の横方向の電気伝導率を改善するように、前記強化層に設けられた炭素繊維を用いて当該強化層の間に電気的接続を形成する穿孔工程を含み、
前記穿孔工程は、前記強化層および前記非導電層を針で横方向に貫通させた後、当該針を除去して穿孔を形成する工程からなり、
前記穿孔工程は、前記強化層のスタックが張力を受けている間に行われ、前記針によって形成された穿孔はスロット形状である、方法。
【請求項2】
前記強化層の表面上の前記穿孔の密度は、40,000〜250,000穿孔/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記穿孔工程は、前記強化層の開口率が2〜5%となるように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記穿孔工程は、前記熱可塑性材料の少なくとも部分的な溶融、又は前記熱硬化性材料の部分的な又は完全な重合を生じさせる加熱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記穿孔工程は、60〜300S/mの横方向の電気伝導率を得るように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記穿孔は、互いに平行に延びるライン上に位置決めされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スタックが、炭素繊維に基づく強化層からなる中間材料から形成され、それらの面の少なくとも1つに熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又はこれら2つの混合物の層が付随している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スタックが、炭素繊維に基づく強化層からなる中間材料から形成され、各々の面上に熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又はこれらの2つの混合物の層が付随している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又はこれら2つの混合物の2つの層が、炭素繊維に基づく2つの強化層の間に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又はこれらの2つの混合物の単一の層が、炭素繊維に基づく2つの連続する強化層の間に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記穿孔は、前記スタックが既に形成された後に当該スタックに対して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記強化層が、炭素繊維の一方向シートからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一方向炭素繊維の少なくとも2つのシートが、異なる方向に延びる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又は熱可塑性材料及び熱硬化性材料の混合物の層が、不織布の熱可塑性繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記不織布の層が、0.2〜20g/m2の範囲の面密度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記不織布の層が、3〜35ミクロンの厚さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
熱可塑性材料は、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミド−ブロックエーテル又はエステル、ポリフタルアミド、ポリエステル、コポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、C2−C8ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、フェノキシ、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート・コポリマーなどのブロック・コポリマー、メチルメタクリレート−アクリル酸ブチル−メチルメタクリレート、及びそれらの混合物のグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性材料、又は熱硬化性材料、又は両方の混合物の前記層が、前記スタックの総重量の1〜3%に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記硬化されていない樹脂が、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、ベンゾオキサジン、シアン酸エステル、及びそれらの混合物のグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品の作製に適合させた強化材料の技術分野に関する。より具体的には、本発明は、得られた複合部品の横方向の電気伝導率を改善するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
複合部品又は製品、すなわち、第1に、1つ又は複数の強化材若しくは繊維シート、第2に、ほとんどの場合、主に熱硬化性(「樹脂」)タイプであり、熱可塑性物質を含むこともあるマトリクスを含むものの製造は、例えば「直接型」又は「LCM」(「液体複合成形」:Liquid Composite Moulding)と呼ばれるプロセスによって実現することができる。直接型プロセスは、1つ又は複数の繊維強化材を(最終的なマトリクスを伴わない)「乾燥」状態で組み込むことによって定義され、樹脂又はマトリクスは、例えば繊維強化材を含む型の中に射出すること(「RTM」−樹脂移送成形(Resin Transfer Moulding)プロセス)、繊維強化材の厚みを通して注入すること(「LRI」―液体樹脂注入(Liquid Resin Infusion)プロセス、又は「RFI」―樹脂フィルム注入(Resin Film Infusion)プロセス)、或いは型に対して連続的に適用される繊維強化材の各単位層の上に、ローラ又はブラシを用いて手動でコーティング/含浸することによって別々に組み込まれる。
【0003】
RTM、LRI又はRFIプロセスの場合、一般的には、最初に所望の完成品の型の繊維プリフォームを造り、次いで、このプリフォームに樹脂を含浸させる必要がある。樹脂をある温度で差圧によって射出又は注入し、次いで、必要な樹脂の全量をプリフォームの中に含ませた後、組立体をより高い温度にして重合/架橋サイクルを完了し、したがって樹脂を硬化させる。
【0004】
自動車、航空機又は海軍産業に用いられる複合部品は特に、とりわけその機械的特性について、きわめて厳しい要求を受ける。燃料を節約するために、航空機産業は、多くの金属材料をより軽い複合材料で置き換えてきた。さらに、多くの油圧式操縦装置が、やはり軽量化のために電子制御装置に置き換えられている。
【0005】
部品の作製中、とりわけ射出又は注入によって、最終的に一方向性の強化シートと結合させる樹脂は、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂とすることができる。炭素繊維の様々な層のスタックからなるプリフォームを通る適切な流れを可能にするために、ほとんどの場合、樹脂は流動性が高く、例えば注入/射出温度において約50〜200mPa・sの粘性を有する。このタイプの樹脂の主な不都合は、重合/架橋後の脆さであり、そのために、製造された複合部品の耐衝撃性が不十分になる。
【0006】
この問題を解決するために、従来技術の文書は、炭素繊維の一方向層を、樹脂ベースの中間層、特に熱可塑性繊維の不織布に結合することを提案している。こうした解決策は特に、特許出願又は特許、EP1125728、米国特許第6,828,016号、WO00/58083、WO2007/015706、WO2006/121961及び米国特許第6,503,856号に記載されている。この不織布などの樹脂の中間層を加えることによって、構造体の耐衝撃性を特徴付けるために一般的に用いられる衝撃後残留圧縮強度(CAI:compression after impact)試験における機械的特性を向上させることが可能になる。
【0007】
またこれまでの特許出願WO2010/046609及びWO2010/061114において、出願人は、その面のそれぞれでの接着によって熱可塑性繊維の不織布(不織布とも呼ぶ)と結合させた一方向繊維、特に炭素のシートを用いた特定の中間材料、並びにその製造プロセスを提案している。そうした複合材料は、炭素の層及び熱硬化性材料又は熱可塑性材料の層からなる。炭素繊維は、熱硬化性材料又は熱可塑性材料と異なり、電気を伝導する。したがって、これらの2つの材料のスタックは、導電材料と絶縁材料のスタックである。したがって、樹脂層が存在するため、横方向の伝導率はゼロに近い。
【0008】
しかしながら、機体又は翼に当たる雷のエネルギーを消散させるために、またリターン電流の機能を保証するために、航空機に使用される複合部品の横方向の電気伝導率は高くなければならない。燃料の予備が飛行機の翼に配置されるため、電気エネルギーを連続的に消散させ、したがって、z軸と呼ばれる部品の表面に直交する軸に沿って適切な伝導率を得ることがきわめて重要である。航空機の構造では、電気伝導率はこれまで材料自体によって提供され、材料はほとんどアルミニウム・ベースであった。新しい航空機モデルは、主に炭素ベースの複合材料をますます多く組み込むようになっているため、リターン電流の機能及び雷に対する耐性を保証するために、さらに高い伝導率を提供することがきわめて重要になってきている。この伝導率は現在、炭素繊維ベースの複合部品に関しては、部品を互いに結合する金属性のリボン又はロービングを局所的に使用することによって得られている。そうした解決策は、複合材料の解決策の重量及び費用を著しく高め、したがって満足のいくものではない。
【0009】
特許出願WO2011/048340も、場合により穿孔を伴うスポット接着によって互いに付着させた、交互の熱可塑性不織布及び一方向シートのスタックの実装形態を記載している。特許出願EP2,505,342(WO2011/065437に対応)も、層間結合強さを改善して層間剥離を抑制するように、プリプレグのスタックの中に孔を作製することを想定している。その文書は、プリプレグから作製される積層物を固定するように、形成された孔の中に炭素繊維の鋲を挿入することも想定している。それは、この孔に挿入された鋲の存在によって、炭素繊維の異なる層間の電気伝導特性が改善されると説明している。したがって、その文書では、この改善が前もって作製された孔の中に後で鋲を導入することによって得られるため、最終部品の横方向の電気伝導率を改善するために、孔の作製を用いているわけでは決してないことが明らかである。本発明の文脈の中で、発明者は、そうした部品が、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料、又は熱可塑性材料及び熱硬化性材料の混合物の少なくとも1つの層がその間に挟まれた炭素繊維ベースの強化材料のスタックからなる場合でも、特に部品を構成するプライに平行ではない部品の厚みにおいて、満足のいく電気伝導率を有する複合部品を得るための新しい手段を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP1125728
【特許文献2】米国特許第6,828,016号
【特許文献3】WO00/58083
【特許文献4】WO2007/015706
【特許文献5】WO2006/121961
【特許文献6】米国特許第第6,503,856号
【特許文献7】WO2010/046609
【特許文献8】WO2010/061114
【特許文献9】WO2011/048340
【特許文献10】EP2,505,342(WO2011/065437)
【特許文献11】WO2011/086266
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「ASM Handbook」、ISBN 0―87170−703−9、ASM International 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料、又は熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料の混合物の少なくとも1つの層がその間に挟まれた炭素繊維強化材料のスタックから得られる複合部品の製造における、重ね合わせた位置に配置された少なくとも1つの強化材料、及び熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料、又は熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料の混合物の少なくとも1つの層を連続的に横断して、得られる複合部品の横方向の電気伝導率を改善するように、スタックを構成し、スタック中で隣接するものとして位置決めされた少なくとも2つの層にスポット的な(spot)横方向の力を加える工程の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
横方向の電気伝導率は、抵抗率の逆数として定義することができ、抵抗率自体は、面によって増大し、部品の厚みによって分割される抵抗に等しい。換言すれば、横方向の電気伝導率は、その厚みの中で電流を伝達及び伝導する部品の能力であり、実例に詳述する方法によって測定することができる。
【0014】
添付図面を参照しながら、以下の説明によって本発明をより適切に理解することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の1つの実施方法を示す概略図である。
【
図3】横方向の力、貫通又は穿孔が加えられる、一連の加力ポイントの概略図である。
【
図4】本発明の文脈において使用されることがある、穿孔された中間材料の写真である(全体図及び穿孔部の拡大像)。
【
図5】スポット的な横方向の力を加えるためのデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の文脈の中で、スポット的な横方向の力を加える工程は、異なる加力ポイント又は貫通ポイントにおける貫通工程に相当する。以下の説明において、横方向の力をスポット的に加える工程、又は異なる貫通ポイントにおいて貫通する工程は、強化材料の少なくとも2つの隣接する層、及び熱可塑性材料又は熱硬化性材料の層を横断することからなるステップを等しく示す。
【0017】
スタックは、お互いに積み重ねられた炭素繊維強化材料の層、及び熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はそうした材料の混合物の層で構成される。熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はそうした材料の混合物の少なくとも1つの層が、炭素繊維強化材料の2つの層の間に挟まれる。炭素繊維強化材料の層に最も近い熱可塑性材料又は熱硬化性材料の層は、炭素繊維強化材料の層の隣接層と呼ばれる。隣接層とは、特に2つの直接隣り合う層、換言すれば、スタック中で連続的に、一方が他方に接するように位置決めされた層を意味する。
【0018】
スポット的な横方向の力を加える工程は、針又は一連の針の貫通によって行われることが好ましく、それにより、横方向の力を適切に制御することが可能になる。それにもかかわらず、そうした工程を、空気又は水の噴射を用いてきわめて上手く行うことが可能である。
【0019】
もちろん、貫通工程のために用いられるデバイス又は手段は、スタック若しくはスタックの貫通工程が行われる部分を通過した後に、又は二方向の経路をたどることによって引き出される。出願EP2,505,342の教示とは異なり、任意のタイプのものとすることが可能なそうしたデバイス又は手段を取り除いた後でも、電気伝導率の改善が得られる。
【0020】
この貫通の目的及び結果は、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又は2つの混合物の層の厚みに、強化材料の炭素繊維の一部を貫通させ、最終的な部品において、これらの炭素繊維が、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料の層の他方の側に存在する強化材料の炭素繊維に接触することができるようにし、したがって、得られる最終的な複合部品の横方向の電気伝導率を高めることである。その理由は、この工程が、複合部品の製造に用いられる最終的なスタック内で貫通される層が有する重ね合わせの位置において、炭素繊維強化材料の層、及びそれに隣接する熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はそうした材料の混合物の少なくとも1つの層を、連続的に貫通するように行われることにある。本発明の文脈において、それは、伝導率を改善するために用いられる横方向の力を加える工程だけである。本発明による使用では、出願EP2,505,342で行われることと異なり、こうして横方向の力を加えた後、電気伝導率の改善を得る目的で加力ポイントに外部デバイスを挿入しない。
【0021】
有利には、貫通工程は、得られる複合部品について、少なくとも15S/m、好ましくは少なくとも20S/m、より好ましくは60〜300S/mの横方向の電気伝導率を得るように行われる。
【0022】
好ましくは、貫通工程は、横断させる層の表面に対して横断する方向に行われる。
【0023】
40,000〜250,000/m
2の貫通ポイントの密度により、横方向の電気伝導率について特に満足のいく結果を得ることが可能であることが確かめられている。開口部又は穿孔部を、貫通工程によって作製しても作製しなくてもよい。実施の変形形態すべてにも適合させた本発明の特定の実施例において、横方向の力をスポット的に加える工程は、横断させた層の中に穿孔部を残す。穿孔工程によって作製された開口部は、ほとんどの場合、横断させた層の平面内で、目又は
スロットの形の円形断面又はある程度細長い断面を呈する。結果として生じる穿孔部は、例えば横断させた面に平行に測定すると、1〜10mmの範囲の大きい寸法を有する。特に、横方向の力をスポット的に加える工程は、0超8%以下、好ましくは2〜5%の開口率を生じさせる。開口率は、材料によって占有されていない表面と、材料の下面からの照明によって材料の上から観察可能な観察される全領域との間の比として定義することができる。それは例えば、出願WO2011/086266に記載された方法によって測定することが可能であり、%で表される。
【0024】
横方向の力をスポット的に加える工程は、横方向の力の加力ポイントにおいて、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の少なくとも部分的な溶融を生じさせる加熱を伴うことが好ましい。好ましくは、この溶融は、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の横断させた層すべてで行われる。このために、例えば加熱された貫通デバイスが使用される。そうした工程によって、特に溶接の実施が可能になり、それによって、横方向の力を加えるために使用される貫通のデバイス又は手段を引き出した後にも穿孔部が残るように、穿孔部を固定する。そうした加熱がない場合、強化材料、及び熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層は、使用される貫通のデバイス又は手段を引き出した後、貫通ポイントのまわりで締まる傾向を示す可能性があり、したがってその場合、得られる開口率が、貫通工程前の開口率に一致することがある。
【0025】
貫通工程は、既に形成されたスタックに対して、又は次いで積み重ねられ、複合部品の製造に必要なスタックを形成する中間材料に対して行うことができる。
【0026】
第1のケースでは、貫通工程は、各貫通ポイントでスタックの厚み全体を横断するように行われる。横方向の力をスポット的に加える工程の前には、スタックを構成する異なる層を、互いに結合させずに積み重ねて置くだけでもよく、或いはスタックの構成層の一部又はすべてを、例えば熱接着、スティッチング又は同様の工程によって互いに結合させてもよい。
【0027】
中間材料を用いるとき、貫通工程は、積み重ねられる前の中間材料に対して、又は既に形成されたスタックに対して行うことができる。
【0028】
貫通工程が中間材料に対して行われる場合、そうした工程は、スタック内で重ね合わされる中間材料それぞれに対して、且つ/又は各貫通ポイントで各中間材料の厚み全体を横断するように行われることが好ましい。もちろん、選択された貫通の手段又はデバイスの導入を可能にするように、貫通工程の間、動作中のほとんどにおいて、特に1.10
−3〜2.10
−2N/mmの十分な張力が、特に中間材料に加えられる。中間材料のスタック上で、貫通ポイントを重ね合わせる必要はない。
【0029】
本発明の文脈における好ましい実施例によれば、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層とその面の少なくとも1つにおいて結合させた、炭素繊維ベースの強化材料からなる中間材料を重ね合わせることによってスタックを形成することが可能である。そうした中間材料は、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層とその面の1つのみ又はその面のそれぞれにおいて結合させた、炭素繊維ベースの強化材料からなることができる。そうした中間材料は、それ自体の結合力を有し、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層の1つ又は双方が、層の熱可塑性又は熱硬化性の性質により、好ましくは熱圧縮によって強化材料と結合される。
【0030】
熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の単一の層を、2つの連続する炭素繊維ベースの強化材料の間に配置することができる。この場合、スタックは、(CM/R)
nの順序に対応することができ、CMは熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層を表し、Rは炭素繊維ベースの強化材料を表し、nは整数を表し、特にスタック内に存在する熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物のすべての層は、同じグラメージを有する。スタックは、(CM/R)
n/CMの順序に対応することができ、CMは熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層を表し、Rは炭素繊維ベースの強化材料を表し、nは整数を表し、特に熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の外側の層のグラメージは、塑熱可性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の内側の層のそれぞれのグラメージの2分の1に等しい。
図1は、そうしたスタックを有し、スタックの形成後、スタックに対して横方向の力をスポット的に加える工程が行われる場合の本発明を示している。
【0031】
出願WO11/048340は、貫通/穿孔工程を受ける、炭素の一方向シートと不織布の熱可塑性繊維を交互にしたものからなるそうしたスタックについて記載している。さらに詳しくは、この特許出願を参照されたい。しかしながら、本発明では、貫通又は穿孔の工程が、得られる最終的な複合部品の横方向の伝導率を改善するために行われ、一方、この特許出願では、複合部品の製造の間、その工程がスタックの浸透性を改善するために用いられ、スタック内での樹脂の拡散を実施する。
【0032】
熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の2つの層を、2つの連続した炭素繊維ベースの強化材料の間に配置することも可能である。これは特に、スタックが、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層とその面のそれぞれにおいて結合させた、炭素繊維ベースの強化材料からなる中間材料の重ね合わせによって形成される場合である。
【0033】
図2は、スタックが、積み重ねる前に横方向の力をスポット的に加える工程を受けた、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層CMとその面のそれぞれにおいて結合させた、炭素繊維ベースの強化材料Rから形成される場合の本発明を示している。
【0034】
強化材料が一方向シートである場合、貫通ポイントは、例えば平行なラインのネットワークを形成するように位置決めされることが好ましく、有利には、2組のラインS1及びS2上に、
− S1列及びS2列のそれぞれにおいて、ラインが互いに平行になり、
− 列S1のラインが、炭素シートの一方向繊維の方向Aに垂直になり、
− 2つの列S1及びS2のラインが交差し、その間に90°以外の、特に
図3に示す実例では約60°である50〜85°程度の角度αを形成する
ように位置決めされる。
【0035】
そうした構成を
図3に示す。貫通ポイント10において、針などのデバイスの貫通によって孔ではなく
図4に示すような
スロットを形成するとすれば、貫通ポイントでは炭素繊維が互いに間隔をおいて延びているため、それにより、
スロットの互いに対するシフトが得られる。これにより、互いに近すぎる間隔で配置された2つの
スロットの合体によって、過度に大きい開口部が生じるのを避けることが可能になる。
【0036】
出願WO2010/046609は、熱可塑性繊維の不織布とその面のそれぞれにおいて結合させた一方向性の炭素シートからなり、前もって貫通/穿孔を受けたそうした中間材料について記載している。この特許出願は、本発明の一部として用いることができる中間材料及び複合部品を製造するためのプロセスについて詳細に記載しているため、より詳しくは、この特許出願を参照されたい。やはりこの特許出願でも、複合部品の製造の間、スタックの浸透性を改善するために、貫通又は穿孔の工程が行われる。本発明の一部として、そうした工程は、得られる最終的な複合部品の横方向の電気伝導率を改善するために用いられる。そうした改善を、以下の実例において説明する。
【0037】
本発明の文脈の中では、実施される変形形態にかかわらず、横方向の力をスポット的に加える工程は、任意の適切な、好ましくは自動化された貫通手段によって、特に一群の針、ピン又は他のものによって行われる。(先端の後の変わらない部分の)針の直径は、特に0.8〜2.4mmである。ほとんどの場合、加力ポイントは、5〜2mmだけ間隔をおいて配置される。
【0038】
ほとんどの場合、横断させた領域の中に形成された開口部を硬化させ、したがって穿孔部を得るように、貫通手段のところ又はそのまわりで加熱を生じさせる。例えば、発熱抵抗体を針状の貫通手段に直接組み込むことができる。したがって、貫通手段のまわりに、及び横断させた熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物のすべての層を通して、熱可塑性材料の溶融、又は熱硬化性材料の場合には部分的な若しくは完全な重合が形成され、それによって、冷却後に、穿孔部のまわりに一種のアイレットが生じる。貫通手段を引き出すと即時に冷却され、それにより、得られた穿孔部を硬化させることが可能になる。好ましくは、発熱デバイスは、貫通手段自体が加熱されるように、貫通手段に直接組み込まれる。
【0039】
貫通の間、中間材料又はスタックは、貫通手段のまわりの局所的な加熱を得るために、次いで貫通手段のまわりで局所的に加熱を受けることが可能な面に当接することができ、或いは逆に、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の最も近い層の軟化をそれらの面全体にわたって回避するように、完全に分離することができる。
図5は、間隔をあけずに、選択された貫通ラインに沿って整列させた針の組立体を備える加熱/貫通手段を示している。
【0040】
本発明の文脈において使用されるスタックは、多数の強化材料、一般的には少なくとも4つ、場合によっては100超、さらには200超を含むことができる。スタックは、好ましくは単に炭素繊維強化材料、並びに熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料、又は熱可塑性材料及び熱硬化性材料の混合物の層からなる。好ましくは、スタック中に存在する炭素繊維強化材料はすべて同じであり、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料、又は熱可塑性材料及び熱硬化性材料の混合物の層もすべて同じである。
【0041】
本発明の文脈では、実施される変形形態にかかわらず、スタックを製造するために使用される炭素繊維からなる強化材料は、好ましくは炭素繊維の一方向シートである。こうした可能性が優先されなくても、織物、縫い合わされたもの、不織布(マット型)などの強化材料を使用することができる。
【0042】
本発明の文脈において、「炭素繊維の一方向シート」とは、本質的に互いに平行に延びるように、完全に又はほぼ完全に、同じ方向に配置された炭素繊維からなるシートを意味する。特に本発明の特定の実施例によれば、一方向シートは、炭素繊維を絡み合わせる緯糸も、それを熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層と積み重ねる、或いは結合する前に、一方向シートへの密着を提供するためのスティッチングも含まない。特にこれによって、一方向シートの座屈を回避することが可能になる。
【0043】
一方向シートでは、炭素繊維は、好ましくは重合結合剤と結合させず、したがって、ドライ(dry)と称されるが、それは、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料、又は熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料の混合物の層と結合する前に、重合結合剤による含浸、被覆、結合を施されないことを意味する。しかしながら、炭素繊維は、ほとんどの場合、多くてその重量の2%に相当し得る、標準的なサイズ剤(sizing)の高い重量比を特徴とする。これは、当業者によく知られている直接的なプロセスによる、樹脂拡散による複合部品の製造に特に適している。
【0044】
一方向シートの構成繊維は、連続的であることが好ましい。一方向シートは、1つ、好ましくは複数の炭素繊維からなることができる。炭素繊維は、一群のフィラメントからなり、一般的には1000〜80000のフィラメント、好ましくは12000〜24000のフィラメントを有する。本発明の文脈における使用に特に好ましいのは、1〜24K、例えば3K、6K、12K又は24K、好ましくは12及び24Kの炭素繊維である。例えば、一方向シート中に存在する炭素繊維は、60〜3800tex、優先的には400〜900texを数える。一方向シートは、任意のタイプの炭素繊維、例えば、引張弾性率が220〜241GPaの間であり、引張における応力破断が3450〜4830MPaの間である高抵抗(HR:High Resistance)繊維、引張弾性率が290〜297GPaの間であり、引張における応力破断が3450〜6200MPaである中間弾性率(IM:Intermediate Modulus)繊維、及び引張弾性率が345〜448GPaの間であり、引張における応力破断が3450〜5520Paである高弾性率(HM:High Modulus)繊維によって作製することができる(「ASM Handbook」、ISBN 0―87170−703−9、ASM International 2001に基づく)。
【0045】
本発明の文脈では、実施される変形形態にかかわらず、スタックは、好ましくは強化材料としての一方向炭素繊維の複数のシートからなり、一方向炭素繊維の少なくとも2つのシートが、異なる方向に延びる。一方向シートのすべて又はそのいくつかのみが、異なる方向を有することもできる。他の点では、その異なる向きを除き、一方向シートが同じ特徴を有することが好ましい。好ましい向きは、ほとんどの場合、作製される部品の主軸に対して、0°、+45°又は−45°(+135°に等しく一致する)、及び+90°の角度のものである。0°の向きは、スタックを製造する機械の軸、すなわち、その形成中のスタックの移動方向に対応する軸に相当する。一般的には部品の最大の軸である部品の主軸は、通常0°に一致する。例えば、擬似等方性であるか、対称であるか、又はプライの向きを選択することによって方向付けられるスタックを形成することが可能である。擬似等方性の積み重ねの実例は、45°/0°/135°/90°又は90°/135°/0°/45°の角度に沿って積み重ねることを含む。対称な積み重ねの実例は、0°/90°/0°又は45°/135°/45°の角度を含む。特に、4超の一方向シート、例えば10〜300の一方向シートを含むスタックを形成することができる。こうしたシートは、2、3、4、5又はそれより多くの異なる方向に向けることができる。
【0046】
有利には、炭素繊維の一方向シートは、100〜280g/m
2のグラメージを有する。
【0047】
本発明の文脈では、実施される変形形態にかかわらず、スタックを形成するために使用される熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の1つ又は複数の層が、熱可塑性繊維の不織布であることが好ましい。こうした可能性が優先されなくても、織物、多孔性フィルム、格子、編物又は粉末付着物などの熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又はその2つの混合物の層を使用することができる。
【0048】
「ウェブ」とも呼ばれることもある不織布は、従来から、一群の連続的に又は短くランダムに位置決めされた繊維を意味すると理解されている。こうした不織布又はウェブは、例えば当業者によく知られている、乾式プロセス(「ドライレイド(Drylaid)」)、湿式プロセス(「ウェットレイド(Wetlaid)」)によって、溶融(「スパンレイド(Spunlaid)」)によって、例えば押出し(「スパンボンド(Spunbond)」)によって、押出し及びブローイング(「メルトブローン(Meltblown)」)によって、又は溶媒を用いた紡糸(「電界紡糸(Electrospinning)」、「フラッシュ紡糸(Flashspinning)」)によって製造することができる。特に、不織布を含む繊維は、0.5〜70μm、優先的には0.5〜20μmの平均直径を有する。不織布は、短繊維、又は好ましくは連続繊維からなることができる。短繊維の不織布の場合、繊維は、例えば1〜100mmの長さを有することができる。不織布は、ランダムな、且つ好ましくは等方的なカバレージをもたらし、最終部品に対して最適な機械的性能を実現するのに寄与する。
【0049】
有利には、スタック内で使用される不織布のそれぞれが、0.2〜20g/m
2の範囲の面密度を有する。好ましくは、スタック内に存在する不織布のそれぞれが、0.5〜50ミクロン、好ましくは3〜35ミクロンの厚さを有する。
【0050】
スタック内に存在する熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料の1つ又は複数の層、特に不織布は、好ましくは、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミド−ブロックエーテル又はエステル、ポリフタルアミド、ポリエステル、コポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、C2−C8ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、フェノキシ、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート・コポリマーなどのブロック・コポリマー、メチルメタクリレート−アクリル酸ブチル−メチルメタクリレート、及びそれらの混合物の中から選択される熱可塑性材料である。
【0051】
複合部品を製造するために使用される他のステップは、当業者には全く一般的なものである。特に複合部品の製造は、最終段階として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂若しくはそうした樹脂の混合物のスタック内への注入又は射出による拡散ステップ、その後の所定の温度及び圧力のサイクルにおける重合/架橋ステップによって所望の部品を硬化させるステップ、並びに冷却ステップを実施する。本発明に関して記載される実施の変形形態すべてにも適合させた特定の実施例において、拡散、硬化及び冷却のステップは、密閉型の中で実施される。
【0052】
特に、スタック内に拡散させる樹脂は、スタックを構成する熱可塑性材料について先に挙げたものなどの熱可塑性樹脂、又は好ましくはエポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、ベンゾオキサジン、シアン酸エステル、及びそれらの混合物から選択される熱硬化性樹脂である。そうした樹脂は、選択された熱硬化性ポリマーとの使用に関して当業者によく知られている、1つ又は複数の硬化剤を含むこともできる。
【0053】
複合部品の製造が、スタック内での熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂若しくはそうした樹脂の混合物の注入又は射出による拡散を使用する場合、それは本発明の一部と想定される主な適用であるが、この外部からの樹脂の追加の前に形成されるスタックは、10%以下の熱可塑性材料又は熱硬化性材料を含む。特に、熱可塑性材料若しくは熱硬化性材料又は両方の混合物の層は、この外部からの樹脂の追加の前、スタックの総重量の0.5〜10%、好ましくはスタックの総重量の1〜3%に相当する。本発明は、特に直接的なプロセスの実施に適合しているが、プリプレグ・タイプの材料を伴う間接的なプロセスにも等しく適用可能である。
【0054】
好ましくは、本発明の一部として、スタックは自動化された方式で形成される。
【0055】
本発明は、複合部品の製造について、密閉型内での減圧下における、特に大気圧より低い圧力、とりわけ1バール未満、好ましくは0.1〜1バールの間の圧力下における、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂又はそうした樹脂の混合物のスタック内への注入を使用することが好ましい。
【0056】
最終的な複合部品は、熱処理ステップの後に得られる。特に、複合部品は一般的に、使用されるポリマーの従来型の硬化サイクルによって、すなわち、こうしたポリマーの供給業者により推奨され、当業者に知られている熱処理の実施によって得られる。所望の部品の硬化段階は、所定の温度及び圧力のサイクルによる重合/架橋、その後の冷却によって行われる。熱硬化性樹脂の場合には、ほとんどにおいて、その硬化前に樹脂のゲル化ステップが行われる。処理サイクル中に加えられる圧力は、減圧下の注入の場合には低く、RTMの型内への射出の場合にはより高い。
【0057】
有利には、得られる複合部品は、とりわけ航空分野において満足のいく特性をもたらす、55〜70%、特に60〜65%の体積繊維比を有する。複合部品の体積繊維比(VFR:volume fibre ratio)は、一方向炭素シートの面密度及び炭素繊維の特性が分っているとき、以下の式を用いて複合部品の厚さの測定値から計算される。
【0058】
【数1】
上式において、e
plaqueはmm単位のプレートの厚さであり、ρ
carbon fibreはg/cm
3単位の炭素繊維の密度であり、面密度UD
carbonはg/m
2単位である。
【0059】
以下の実例は本発明を説明するものであるが、限定する性質のものではない。
【0060】
初期材料の説明
− Protechnic社(フランス、セルネ)によって品目1R8D06として販売されている、厚さ118μm及び6g/m
2を有するコポリアミド・ウェブ、
− Protechnic社(フランス、セルネ)によって品目1R8D03として販売されている、厚さ59μm及び3g/m
2を有するコポリアミド・ウェブ、
− 面密度194g/m
2が得られるように、Hexcel Corporation製の繊維IMA 12K及び446を用いて得られた一方向シート。
【0061】
中間材料の作製
出願WO2010/046609の27〜30頁に記載されるプロセスを用いて、ポリアミド・ウェブ/炭素シート/ポリアミド・ウェブのスタックを形成し、熱接着する。
【0062】
次いで、そうして得られた中間材料を、
図5に示されるものなどの針組立体を用いて穿孔する。それぞれの針は、その元の円筒部において1.6mmの直径を有し、250℃の温度まで加熱される。得られる孔の密度は、
図3に示す構成に対応し、2つの穿孔部の間の距離は、一方向繊維に垂直なライン(S1列)上では3mm、交差ライン(S2列)上では3.5mmである。穿孔中に中間材料に加えられる張力は、1.7 10
−3N/mmである。
【0063】
複合部品の作製
次いで、その材料を用いて積層体を16プライのスタック(すなわち、16の中間材料)として作製し、次いで、樹脂をRTMプロセスによって密閉型の中に射出する。目標とするVFRが60%の場合、パネルの大きさは、340×340×3mmである。選択されるスタックは、[0/90]4sである。
【0064】
16プライのスタックをアルミニウム型の中に入れ、次いで、型を10バールでのプレス下に置く。次いで、組立体の温度を120℃まで上げる。射出される樹脂は、Hexcel社のRTM6エポキシ樹脂である。樹脂を射出機で80℃まであらかじめ加熱し、次いで、樹脂用の入力部及び1つの出力部を有する型の中に射出する。樹脂を出力部で回収した後、射出を中止し、型の温度を2時間の間180℃まで上げる。この間、型を10バールの圧力に維持する。
【0065】
比較のために、孔のない中間材料を用いて作製される多層体も製造する。
【0066】
複合部品の横方向の伝導率の測定
パネルから3〜4つの40mm×40mmのサンプルを切り出す。各サンプルの表面を砂で磨き、炭素繊維の面を露出させる。部品の作製に剥離プライを用いた場合、この研磨ステップは不要である。次いで、各サンプルの前面及び裏面を、スパッタリング、プラズマ処理又は真空蒸着によって、伝導性の金属、通常は金の層の堆積させることにより処理する。金又は任意の他の金属の堆積物は、サンプル領域から研磨又は研削によって除去しなければならない。この伝導性の金属の堆積物によって、サンプルと測定デバイスの間の接触抵抗が小さくなる。
【0067】
電流及び電圧を変えることができる電力源(30V/2A TTi EL302Pプログラマブル電源、Thurlby Thandar Instruments、英国、ケンブリッジ)を用いて抵抗を決める。クランプを用いてサンプルを電源の2つの電極と接触させるが、電極は、互いに又は任意の他の金属性の物と接触してはならない。1Aの電流を印加し、ボルト/オーム・メータに接続させた2つの電極によって抵抗を測定する。試験は、測定される各サンプルに対して行う。次いで、サンプルの寸法及び以下の式:
抵抗率(オーム・m)=抵抗(オーム)×面積(m
2)/厚さ(m)
伝導率(S/m)=1/抵抗率
を用いて、抵抗値を伝導率の値に変換する。得られた結果を以下の表1に示す。
【0069】
ミクロ穿孔の有無によって結果を比較すると、穿孔により、得られる複合部品の所望の横方向の伝導率が著しく高まる(2倍)ことが示される。
【0070】
ウェブのグラメージは2つの実例の間で異なるが、増加率は実質的に同じである。