特許第6226487号(P6226487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226487位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226487
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/10 20060101AFI20171030BHJP
   F16L 33/03 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F16L33/10
   F16L33/03
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-544709(P2015-544709)
(86)(22)【出願日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】JP2013079505
(87)【国際公開番号】WO2015063906
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151597
【氏名又は名称】株式会社東郷製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕司
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/095990(WO,A1)
【文献】 特開2003−90474(JP,A)
【文献】 特開2013−145048(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101347103(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/02 − 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ばね材の両端部を周面上で交差させつつ円環状に回曲させてなるクランプ本体部と、
前記クランプ本体部の両端部においてそれぞれが径方向外方に一本ずつ起立して形成された摘み片と、
前記クランプ本体部あるいは前記摘み片に一体に形成され前記両摘み片の摘み操作に伴う両摘み片が前記クランプ本体部の軸方向への相対的な移動により、前記クランプ本体部に対する拡径状態の保持あるいはその解除が可能な拡径状態保持手段とを備え、
前記摘み片のうちの一方側の先端部は他方側の先端部よりも幅広に形成されるとともに、両摘み片の先端部は周方向外方へ曲げられて互いに離間する曲げ部となっており、かつこの曲げ部は摘み工具の対向面に形成された位置決め凹所に差し込み可能であり、
かつ幅広側の前記曲げ部は、前記軸方向に関する幅寸法が前記摘み工具の前記両位置決め凹所の幅に対応して形成され、前記両位置決め凹所に対し前記軸方向に関して位置決めされた状態で差し込み可能であり、幅狭側の前記曲げ部は、前記軸方向に関する幅寸法が前記両位置決め凹所の幅寸法より狭く設定されていることを特徴とする位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ。
【請求項2】
一方の前記摘み片には他方の前記摘み片に向けて規制片が形成され、この規制片は、前記拡径状態保持手段による拡径状態を解除可能な状態で、前記他方の摘み片に当接することを特徴とする請求項1に記載の位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ。
【請求項3】
前記規制片は、前記両摘み操作片のうちの幅広側のものに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ。
【請求項4】
前記拡径状態保持手段は、
前記クランプ本体部において幅狭側の前記摘み片が形成されている側の端部寄りの部位に径方向外方へ向けて突出して形成された係止爪と、
幅広側の前記摘み片において前記クランプ本体部から径方向外方へ起立した起立部に形成され前記係止爪と解除可能に係止して前記クランプ本体部を拡径状態に保持する係止受け部とからなる一方、
幅広側の前記摘み片は前記起立部の先端部から板幅方向へ延出し、かつその延出端部から幅狭側の前記摘み片に向けて曲げ形成されて前記規制片が形成されており、前記起立部と前記規制片との間には幅狭側の前記摘み片に向けて開口するガイド溝が形成されるとともに、このガイド溝は前記クランプ本体部が拡径状態から縮径状態へと移行する際に、前記係止爪の先端部を通過させることで、クランプ本体部の縮径動作を案内可能な構成であることを特徴とする請求項3に記載の位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ。
【請求項5】
拡径状態での前記クランプ本体部の内径は、締め付け相手の外径より小径であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の位置決め凹所を備えた摘み工具用のホースクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1におけるホースクランプは板ばね材を円環状に回曲させ、両端部が周面上で交差するようにして形成されている。ホースクランプの両端部には摘み工具で摘んでホースクランプを拡径するための一対の摘み片が起立している。一方の摘み片は門形状の開口溝を設けた二本脚形状に形成してあり、他方の摘み片は開口のない一本脚形状としてある。一本脚側の摘み片の根元近辺には径方向外方へ突出する係止爪があり、二本脚側の摘み片には前記係止爪と係止可能な係止受け部が形成され、これらが係止することによってホースクランプを拡径状態に保持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−256142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のホースクランプにおいては、両摘み片が共に平板状に形成されている。また、これらを摘むための摘み工具側の摘み面も平面状に形成されているため、摘み操作時には両者は単に面当たり状態となっているに過ぎない。したがって、摘み工具が摘み片の全面を正しく摘んでいる保証はなく、部分的にしか摘んでいない状況がありうる。また、当初は正しく摘んでいたとしても摘み操作中に平面方向にずれてしまうことも想定しうる。
【0005】
このように、従来のものでは、ホースクランプの摘み姿勢が不安定になる虞がある。ホースクランプの摘み姿勢が不安定化すると、斜め姿勢のままホースを締め付けてしまう可能性があり、そうなると充分なシール性が得られない、という事態が懸念された。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ホースクランプの摘み姿勢を安定化させ、正しい姿勢で締め付け相手に組み付けることができるホースクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板ばね材の両端部を周面上で交差させつつ円環状に回曲させてなるクランプ本体部と、クランプ本体部の両端部においてそれぞれが径方向外方に一本ずつ起立して形成された摘み片と、クランプ本体部あるいは摘み片に一体に形成され両摘み片の摘み操作に伴う両摘み片がクランプ本体部の軸方向への相対的な移動により、クランプ本体部に対する拡径状態の保持あるいはその解除が可能な拡径状態保持手段とを備え、摘み片のうちの一方側の先端部は他方側の先端部よりも幅広に形成されるとともに、両摘み片の先端部は周方向外方へ曲げられて互いに離間する曲げ部となっており、かつこの曲げ部は摘み工具の対向面に形成された位置決め凹所に差し込み可能であり、かつ幅広側の前記曲げ部は、前記軸方向に関する幅寸法が前記摘み工具の前記両位置決め凹所の幅に対応して形成され、前記両位置決め凹所に対し前記軸方向に関して位置決めされた状態で差し込み可能であり、幅狭側の前記曲げ部は、前記軸方向に関する幅寸法が前記両位置決め凹所の幅寸法より狭く設定されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、拡径状態保持手段に対する係止あるいはその解除の際に、両曲げ部の先端を摘み工具の位置決め凹所に差し込むようにしているため、曲げ部が摘み工具の摘み操作面上で位置ずれしてしまうのを規制することができる。
加えて、本発明では両曲げ部の軸方向に関する幅について広狭が設定されている。そして、幅広側での軸方向に関する幅寸法は位置決め凹所の幅に対応して形成されているものの、幅狭側での軸方向に関する幅寸法は位置決め凹所の幅寸法より狭く設定されている。これは、本発明のホースクランプでは拡径状態の保持あるいは解除の際にクランプ本体部が軸方向に相対移動を伴う形式であることから、軸方向に関し曲げ部の幅を位置決め凹所より小幅に設定して摘み工具による摘み操作の際に、曲げ部が位置決め凹所内で軸方向への変位が許容されるようにしておかないと、上記の形式は実現できないからである。この場合において、双方の曲げ部を位置決め凹所に対して共に小幅にすることも考えられる。しかし、そのようにしてしまうと、共に摘み工具との接触幅が狭くなってしまい、摘み操作が不安定化しやすくなる。そこで、本発明では一方の曲げ部については位置決め凹所の幅に対応させるべく広幅にして摘み工具との接触幅を十分に確保するようにし、もって摘み操作の安定化を達成している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】拡径状態におけるホースクランプを示す斜視図
図2】同じく正面図
図3】同じく側面図
図4】同じく平面図
図5】縮径状態のホースクランプを示す斜視図
図6】同じく正面図
図7】拡径状態から摘み操作されて拡径状態が解除された様子を示す平面図
図8】ホースクランプの展開図
図9】拡径状態が解除された直後の状態を示す平面図
図10】係止爪がガイド溝に入り込んで縮径動作を案内されている様子を示す拡大斜視図
図11】規制片による拡径規制がされている状態を示す正面図
図12】同じく平面図
図13】摘み工具を示す正面図
図14】摘み工具の位置決め凹所に、第2摘み部の曲げ部が差し込まれている状態を示す拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明のホースクランプは、一方の摘み片において他方の摘み片に向けて規制片が形成され、この規制片は、前記拡径状態保持手段による拡径状態を解除可能な状態で、他方の前記摘み片に当接する構成とするとよい。
【0012】
このような構成によれば、ホースクランプが拡径状態にあるときに両摘み片を摘まむと、両摘み片が接近して規制片が他方の摘み片に当接する。この時点で拡径状態保持手段による拡径状態が解除されるため、以後、ホークランプは自動的に縮径して締め付け相手を締め付け固定することができる。すなわち、作業者は規制片が他方の摘み片に当接することを目安として拡径状態の解除をなしうる。したがって、作業の熟練を必要としない。また、規制片と摘み片との当接により過剰な摘み操作も回避することができる。
【0013】
(2)前記規制片は、前記両摘み操作片のうちの幅広側のものに形成されるとよい。
このような構成によれば、幅広側の摘み片においては、規制片を設ける幅方向のスペースが確保し易く、その分、規制片の形成自由度が高まる。
【0014】
(3)前記拡径状態保持手段は、前記クランプ本体部において幅狭側の前記摘み片が形成されている側の端部寄りの部位に径方向外方へ向けて突出して形成された係止爪と、幅広側の前記摘み片において前記クランプ本体部から径方向外方へ起立した起立部に形成され前記係止爪と解除可能に係止して前記クランプ本体部を拡径状態に保持する係止受け部とからなる一方、幅広側の前記摘み片は前記起立部の先端部から板幅方向へ延出し、かつその延出端部から幅狭側の前記摘み片に向けて曲げ形成されて前記規制片が形成されており、前記起立部と前記規制片との間には幅狭側の前記摘み片に向けて開口するガイド溝が形成されるとともに、このガイド溝は前記クランプ本体部が拡径状態から縮径状態へと移行する際に、前記係止爪の先端部を通過させることで、クランプ本体部の縮径動作を案内可能な構成としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、クランプ本体部の拡径状態において両摘み片を摘み操作すると、両摘み片が軸方向へ相対移動するため、係止爪と係止受け部との係止が解除されてクランプ本体部が縮径状態に移行する。このとき、係止爪は幅広側の摘み片において起立部と規制片との間に形成されたガイド溝を通過する。つまり、係止爪はガイド溝を構成する起立部と規制片との間で軸方向への移動が規制可能となるため、クランプ本体部がねじれた状態で締め付け相手に組み付いてしまう事態を回避して正規の組付け姿勢を確保することに寄与する。
(4)拡径状態での前記クランプ本体部の内径は、締め付け相手の外径より小径としてもよい。
【0016】
拡径状態でのクランプ本体部の内径を締め付け相手の外径より大きくした場合と比較すると、クランプ本体部に作用する応力が小さくてすむため、ホースクランプのへたりを緩和することができる。
【0017】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図面を参照して説明する。本実施例のホースクランプ1は金属製の板ばね材にて一体に形成されている。図8に示すように、ホースクランプ1は長尺の帯板状に形成されている。以下では、ホースクランプ1において長手方向の中心軸4を境にして図示下側の領域を第1領域R1と呼び、図示上側の領域を第2領域R2と呼ぶ。図8に示すように、ホースクランプ1において、長手方向の中心軸4から所定の等距離ずつ離れた部位に至るまでの領域は最も広い均一幅の領域R3となっていて、ホースクランプ1が円環状に曲げ加工されたときに円形部分の略下1/3領域を構成するようになっている。
【0018】
また、上記した中央の均一幅の領域R3とこれより端部側に連続する部位との境界部分であって、相互に反対側となる側縁には互いに平行な傾斜面をもった段縁31が形成されている。段縁31が形成されていない側の側縁は共に上記均一幅領域R3から先端に至るまで真っ直ぐに延びているが、段縁31が形成されている側の側縁(以下、徐肉側の側縁という)は均一幅領域R3から先端側に向かう所定長さ範囲に亘って幅を漸減させるように形成されている。すなわち、第1領域R1と第2領域R2は中心軸4を基準として略点対称形状に形成されている。
【0019】
第1・第2領域R1,R2における先端部寄りであって、徐肉側の側縁には共に凹部33が形成されている。ホースクランプ1は図8に示す展開状態から長手方向の中心軸4が曲げの起点となるようにして円環状に回曲され、円環状部分によってクランプ本体部3が構成されるようにしている。ホースクランプ1が回曲される際には、両端部がクランプ本体部3の周面上で交差するようにしてある。図8に示すように、両凹部33の長手方向の両側縁は共に外方へ向けて末広がりとなるような傾斜面となっていて、このうち先端側に位置する傾斜面が摺動案内縁32とされる。後述するホースクランプ1の拡径状態を解除するときには、次述する両摘み片51,52の摘み操作により、両凹部33の摺動案内縁32同士が摺接することで、ホースクランプ1の両端部を軸方向へ変位(両摘み片51,52が離れる方向)させることができる。
【0020】
ホースクランプ1の両端部は共に径方向外方へ曲げ起こされて、第1摘み片51と第2摘み片52とがそれぞれ一本ずつ起立形成されている。ホースクランプ1が後述する拡径状態にあるときには、図4に示すように、両摘み片51,52の根元部分が、それらが形成されていない側の領域の凹部33に互いに嵌り合うことができるようになっている。
【0021】
第1領域R1において凹部33より先端側は均一幅に形成されている。このため、同凹部33から僅かに先端側に形成された第1摘み片51もまた全体は均一幅に形成される。図1等に示すように、第1摘み片51はクランプ本体部3から径方向外方へ起立する第1起立部5Aと、この第1起立部5Aの先端部から周方向外方(第2摘み片52と反対方向)へ略直角(正確には僅かに鈍角)に曲げられた第1曲げ部61とから形成されている。
【0022】
また、図1等に示すように、第1領域R1の凹部33において摺動案内縁32と反対側の傾斜面に連続して係止爪34が配されている。この係止爪34は徐肉側の側縁に沿いつつ切起こしによって形成されており、凹部33側の端部が自由端となっている。係止爪34は第2摘み片52側に設けられた係止受け部35と共に拡径状態保持手段を構成し、係止受け部35に係止することで、ホースクランプ1を拡径状態に保持することができる(図1等に示す状態)。なお、本実施例においては、拡径状態にあるときのクランプ本体部3の内径は締め付け相手となるホースの外径より僅かに大径に設定されている。
【0023】
図8に示すように、第2領域R2において、凹部33より先端側には第2摘み片52が形成されている。図1等に示すように、第2摘み片52はクランプ本体部3から径方向外方へ起立する第2起立部5Bを有している。この第2起立部5Bにおける周方向外面側には小さな窪みが形成されていて、係止爪34の先端部が解除可能に係止する係止受け部35が形成されている。
【0024】
また、第2起立部5Bの先端からは幅方向(徐肉側の側縁に向かう方向)に向けて拡幅部5Cが延出している。そして、拡幅部5Cの延出端部からは折り返し状に規制片7が形成されている。こうして、第2摘み片52の先端部の幅、つまり第2起立部5Bの外側縁から規制片7の外側縁に至るまでの幅(図10に示すW2寸法)は第1摘み片51の幅(同図に示すW1寸法)よりも広幅に形成されている(W2>W1)。かくして、図4に示すように、拡径状態に保持されているときのホースクランプ1においては、平面視で第1・第2摘み片51、52は幅方向に関して重複する位置関係となり、本実施例では第1摘み片51は第2摘み片52の幅範囲内に位置するようにしてある。
【0025】
規制片7は、ホースクランプ1の拡径状態において第1・第2摘み操作片51、52が摘み操作されたときに、第1摘み片51と当接することによって、これ以上の摘み操作をなしえないようにする。なお、規制片7が第1摘み片51と当接するときには、係止爪34と係止受け部35との係止が解除されるとともに、両凹部33の摺動案内縁32同士の摺接により、ホースクランプ1の両端部を軸方向へ移動(両摘み片51,52が離れる方向)させて係止爪34を第2摘み片52の軸方向外方へずらすことができる。
【0026】
さらに、本実施例においては、第2起立部5Bの先端部から規制片7にかけての全幅範囲は周方向外方(第1摘み片51と反対方向)へ略直角(正確には僅かに鈍角)に曲げられて第2曲げ部62が形成されている。さらにまた、規制片7が第2起立部5Bから拡幅部5Cを介してU字状に折り返し形成されることで、規制片7と第2起立部5Bとの間には、第1摘み片51側に向けて開口するガイド溝76が形成されている。このガイド溝76の溝幅は係止爪34の厚みよりもやや大きめに形成されている。そして、図10に示すように、ガイド溝76はクランプ本体部3の拡径状態が解かれて縮径状態へと移行する過程で、係止爪34の先端部を通過させ得るようになっている。すなわち、クランプ本体部3が縮径状態へ移行する際に、係止爪34は第2起立部5Bと規制片7との対向面によって軸方向への移動が規制されるため、縮径動作を案内してクランプ本体部3がねじれを伴うことなく正規の状態で縮径動作を行うことができるようにしている。この場合において、係止爪34の先端にはテーパ面34Aが形成されているから、ガイド溝76への進入を案内することができる。
【0027】
次に、上記ホースクランプ1に対する摘み工具8について説明する(図13図14参照)。摘み工具8は一対のアーム部材8Aを有し、これらを先端側において連結ピン8Bによって回動可能に連結した構成となっている。両アーム部材8Aの一端側は操作部81となっていて、他端側は摘み部82となっている。摘み部82の対向面には摘みブロック83がそれぞれ配されている。各摘みブロック83は摘み部82の先端において、取付け軸85周りに回転可能に取り付けられている。また、図14に示すように、各摘みブロック83の対向面には位置決め凹所84が凹み形成されている。両位置決め凹所84は略正方形状に形成され、各辺の寸法は第2摘み片52の曲げ部62の幅寸法より僅かに大きく形成され、第2摘み片52の曲げ部62の先端を所定深さまで差し込んで位置決めすることができる。
【0028】
また、一方のアーム部材8A(図13では右側のアーム部材8A)にリリースレバー95が一体に形成されたリリースレバー付きロック爪9が設けられ、他方のアーム部材にはロック爪9が引っ掛けられる係止ピン91が取付けられていて、この係止ピン91にロック爪9が引っ掛けられることで、両摘みブロック83の間を一定距離に保持することができる。つまり、ホースクランプ1を一定径の拡径状態に保持することができる。
【0029】
より詳しくは、ロック爪9は支持ピン93によって一方のアーム部材8Aに回動可能に取り付けられるとともに、支持ピン93にはトーションばね94が巻き付けられている。トーションバネ94の一端側はアーム部材8Aに係止され、他端側はロック爪9に取付けられており、これによってロック爪9は係止ピン91に係止する方向に付勢されている。また、ロック爪9の先端には鋸刃状に二カ所の爪部92が形成されている。爪部92と係止ピン91とによってラチェット機構が構成され、選択的に係止ピン91と係止させうる。これにより、両摘みブロック83間の間隔を二段階(ファーストポジションとセカンドポジション)に調整することができ、ホースクランプ1の拡径した内径を二段階に選択することができる。
【0030】
但し、両アーム部材8Aを摘んで両爪部92のうち先端側に位置する爪部92に係止ピン91を係止させたとき(ファーストポジション)の両摘みブロック83間の間隔(正確には両位置決め凹所84の底面同士の間隔)は、拡径状態での両摘み片51,52の曲げ部61,62の先端同士の間隔とほぼ同じとなるように設定されている。したがって、摘み工具8がファーストポジションで係止されているときには、ホースクランプ1を、拡径状態が解除されることなく保持することができる。
【0031】
また、両爪部92のうち基部側に位置するものを係止ピン91に係止させるセカンドポジションは、より大径のホース及びより大径のホースクランプに適用する場合に選択されるポジションである。
【0032】
次に、上記のように構成された本実施例の作用効果を説明する。まず、ホースを配管に接続する作業について説明すると、摘み工具8の操作部81を握りながら両摘みブロック83の位置決め凹所84に第1・第2摘み片51、52の曲げ部61、62の先端をそれぞれ差し込む。このとき、位置決め凹所84の幅は第1摘み片51の曲げ部61の幅より広いものの、第2摘み片52の曲げ部62の幅とほぼ同じであるため、第2摘み片52が幅方向に位置決めされた状態で差し込まれる。そして、摘み工具8の操作部81を握ることで、ラチェット機構を利用してロック爪9における先端側の爪部92を係止ピン91に引っ掛ける。こうすることで、作業者はファーストポジションでロックされた摘み工具8にてホースクランプ1を保持することができる。このときには、前述したように、ホースクランプ1は拡径状態保持手段によって拡径状態のままであり、したがって作業者は安全にホースクランプ1をホースの端部から嵌め込むことができる。
【0033】
その状態で、ホースを配管(図示しない)に差し込んだ後、ホースクランプ1を配管との接続部位に移動させる。続いて、摘み工具8の操作部81を握ると、ロック爪9と係止ピン91との係止がラチェット機構の作用により解除される。
【0034】
そして、規制片7が第1摘み片51に当接するまで両アーム部材8Aを握って拡径状態を解除するのであるが、この間、第1・第2摘み片51、52は曲げ部61、62の先端が位置決め凹所84内に突っ込まれていること、及び第2摘み片52は位置決め凹所84とほぼ同幅に形成されていることから、摘み部82に対してずれを生じることがないため、第1・第2摘み片51、52に対して安定した姿勢で摘み操作を行うことができる。
【0035】
こうして両摘み片51,52同士が接近すると、規制片7が第1摘み片51に当接するようになる。この間には、係止爪34と係止受け部35との係止が外れるとともに、第1摘み片51側及び第2摘み片52側の両摺動案内縁32同士が摺動し合う。このため、第1摘み片51側及び第2摘み片52側はクランプ本体部3の軸方向へ離れるように変位する。その結果、係止爪34は第2摘み片52に対し軸方向外方へずれて位置する。かくして、摘み工具8の握り操作を緩めれば、ホースクランプ1は自らの弾性にて縮径方向へ変位する。縮径方向の変位の途中にトーションバネ94の作用で爪部92と係止ピン91とを係止させ、摘み工具8のファーストポジションの位置でホースクランプ1を中途の縮径状態で一旦保持する。その後、リリースレバー95を操作して爪部92と係止ピン91との係止を解除すればホースの縮径を再開させることができる。この縮径の結果、ホースと配管との接続部位が緊締される。なお、状況に応じて縮径と同時にリリースレバー95を操作して爪部92と係止ピン91の係止を回避しながら縮径を行うことも勿論可能である。
【0036】
本実施例のホースクランプ1による効果は次の通りである。
(1)ホースクランプの拡径状態を解除する際に、両曲げ部61、62の先端を摘み工具8の位置決め凹所84に所定深さまで差し込むようにしているため、曲げ部61、62が摘み工具8の対向面上で位置ずれするのを規制することができる。
【0037】
(2)また、本実施例では両曲げ部61、62の軸方向に関する幅について広狭が設定されている。すなわち、幅広側での軸方向に関する幅寸法は位置決め凹所84の幅に対応して形成されているものの、幅狭側での軸方向に関する幅寸法は位置決め凹所84の幅寸法より狭く設定されている。これは、本実施例のホースクランプ1では拡径状態の解除の際に両摘み片51、52がクランプ本体部3の軸方向へ相対移動する形式であることから、軸方向に関し曲げ部61の幅を位置決め凹所84より小幅に設定して摘み工具8による摘み操作の際に、曲げ部61が位置決め凹所84内で軸方向への変位が許容されるようにしておかないと、上記の形式は実現できない。この場合において、双方の曲げ部61、62を位置決め凹所84に対して共に小幅にすることも考えられる。しかし、そのようにしてしまうと、共に摘み工具8との接触幅が狭くなってしまい、摘み操作が不安定化しやすくなる。このことに鑑み、一方の曲げ部62については位置決め凹所84の幅に対応させるべく広幅にして摘み工具8に対する位置決めを図り、もって摘み操作の安定化を達成している。

【0038】
(3)拡径状態を解除する場合には、両摘み片51,52を摘んで、規制片7を第1摘み片51に当接させればよい。厳密には規制片7が第1摘み片51に当接するまでの間に拡径状態の解除はなされているが、規制片7が第1摘み片51に当接した状態では確実に拡径状態の解除がなされている。したがって、作業者は規制片7の当接により拡径状態の解除が保証されるため、拡径解除の作業に何らの熟練が必要とされない。また、規制片7の当接により過剰な摘み操作も未然に回避される。
【0039】
(4)本実施例では規制片7を幅広側である第2摘み片52に形成している。つまり、第2摘み片52には規制片7を設けるに必要な幅方向の寸法を確保しやすいから、規制片7設置のための設計上の自由度が高くなる、という優位性がある。
【0040】
(5)規制片7を形成するにあたり、第2起立部5Bとの間でガイド溝76が形成されるようにしている。このようにして形成されたガイド溝76は、ホースクランプ1が拡径状態から縮径状態へと移行する過程で、係止爪34の通過を案内することで、係止爪34を正規軌道で変位させることができる。したがって、クランプ本体部3がねじれることなく縮径状態となるため、ホースを正規の状態、つまりねじれによってシール性を低下させることのない状態で緊締することができる。
【0041】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)上記実施例では、拡径状態におけるクランプ本体部3の内径は締め付け相手(ホース)の外径よりも大きく設定されているため、ホースクランプ1はそのままホースへ差し込み可能であったが、拡径状態におけるクランプ本体部3の内径を締め付け相手の外径より小さく設定してもよい。
【0043】
このようにすれば、拡径状態でのクランプ本体部3の内径を締め付け相手の外径より大きくした場合と比較すると、クランプ本体部3に作用する応力が小さくてすむため、ホースクランプ1のへたりを緩和することができる、という効果が得られる。
【0044】
そのような設定とした場合の作業としては、拡径状態にあるホースクランプ1を摘み工具8で摘んで一旦拡径状態を解除し、さらにホースへ挿通できる内径にまでさらに拡径させる必要がある。その場合に、摘み工具8を用いてリリースレバー95付きロック爪9の爪部92を係止ピン91に引っ掛けておけば、クランプ本体部3をホースにそのまま差し込むことができる内径にロックすることができるため、従来どおり、ホースへの差し込みを円滑に行うことができる。
【0045】
(2)上記実施例では、拡径状態保持手段としての係止爪34をクランプ本体部3の周面上に形成したが、拡径状態保持手段は種々の形態が考えられ、例えば第1・第2摘み片51、52の一方に係止側を、他方に受け側を形成するようなものであってもよい。
【0046】
(3)上記実施例では、規制片7を幅広側である第2摘み片52に形成したが、幅狭側である第1摘み片51に形成することも可能である。
【0047】
(4)上記実施例では、摘み工具がファーストポジションにあるときにはホースクランプの拡径状態が解除されない設定であったが、解除される設定としてもよい。その場合には、ホースクランプは摘み工具によって拡径状態が解除された状態で保持されるが、ロック爪9の爪部92と係止ピン91とはトーションバネ94のばね力にて係止方向に付勢された状態でファーストポジションにロックされているため、作業の安全性は確保される。
【0048】
(5)上記実施例では、拡径状態のホースクランプ1を摘み工具8で保持した状態でホースの端部から嵌め込んだが、拡径状態のホースクランプ1をホースに手等で嵌め込み、その後にホースクランプ1を摘み工具8で保持してもよい。また、予めホースに嵌め込まれて所定の接続部位に保持されている拡径状態のホースクランプ1を摘み工具8で操作して拡径状態を解除することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…ホースクランプ
3…クランプ本体部
7…規制片
8…摘み工具
32…摺動案内縁
34…係止爪(拡径状態保持手段)
34A…テーパ面
35…係止受け部(拡径状態保持手段)
51…第1摘み片
52…第2摘み片
61…第1曲げ部
62…第2曲げ部
76…ガイド溝
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